【実施例】
【0023】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0024】
図において、符号1は、複数本の可撓性長尺材2から一本ずつ長尺材2´を次々と取り出し可能とするための個別取出装置である。上記長尺材2は、具体的には、細い可撓性の金属ワイヤーであり、医療用カテーテルを体内の所望部位に案内するためのガイドワイヤーの芯材を構成する。上記各長尺材2は、それぞれ横断面が互いに同形同大の円形とされて、直径は0.2〜0.4mmとされ、長さは4m程度とされる。また、上記ガイドワイヤーは、上記長尺材2の外面に全体的に樹脂3をコーティングしたもので、これにより形成されたガイドワイヤーの外径は0.25〜0.45mmとされる。
【0025】
上記個別取出装置1は、固定部材側5に支持される載置台6を備える。上記固定部材側5は、作業用床面、建築物、架台のような構造物などである。
【0026】
上記載置台6の上面は、ほぼ水平な一方向Aに向かってそれぞれ延びる複数本の長尺材2を載置可能とする載置面7とされる。ここで、上記一方向Aを、説明の便宜上、前方とし、下記する左右とは上記前方に向かっての水平方向をいうものとする。
【0027】
上記載置面7は、左、右傾斜面7a,7bと、これら左、右傾斜面7a,7bの互いの対向縁部間で上方に向かって開口するよう形成され、上記長尺材2の一本のみをその上方から嵌脱可能に嵌入させる嵌入溝部7cとを有している。上記左、右傾斜面7a,7bは、その一方の面から他方の面に向かうに従い下方に向かうよう傾斜し、かつ、上記一方向Aに直交する直交方向に向かって傾斜している。上記左、右傾斜面7a,7bの各下端縁部は、上記嵌入溝部7cの左、右上端縁部に一体的に結合され、この嵌入溝部7cは、上記左、右傾斜面7a,7bの各下端縁部に連設される上記載置面7の底部を構成する。
【0028】
なお、上記載置面7上に各長尺材2を載置させたとき、これら各長尺材2の各前端部は前後方向で互いにほぼ同じところに位置していることが好ましい。そこで、上記載置面7上に載置される上記各長尺材2の各前端部を位置決めする位置決め突起を上記載置面7の前端部から上方に向けて突設してもよい。
【0029】
上記左、右傾斜面7a,7b上に載置された各長尺材2は、その自重により、上記一方向Aに直交する直交方向に向かって平行移動するよう摺動や転動可能とされる。また、この移動により上記左、右傾斜面7a,7bの底部である上記嵌入溝部7cに長尺材2が一本のみ嵌入可能とされる。上記左、右傾斜面7a,7bの水平面に対する傾斜角は互いに相違させられている。これにより、上記左、右傾斜面7a,7b間において、上記複数本の長尺材2の互いの連携によるブリッジの形成が防止され、もって、上記左、右傾斜面7a,7b上から嵌入溝部7c内に対する一本ずつの長尺材2の嵌入が円滑にできることとされる。
【0030】
上記載置面7の一部である上記嵌入溝部7cの長手方向の一部分に上記載置台6を上下に貫通し、上方に向かって開口する開口11が形成され、この開口11は上記一方向Aに長い長孔形状とされる。上記開口11に上、下方移動可能となるよう嵌入される押し上げ体12が設けられる共に、上記固定部材側5に支持され、上記押し上げ体12を上、下方移動可能とさせるエアシリンダであるアクチュエータ13が設けられる。
【0031】
上記押し上げ体12は、上下方向かつ一方向A(前後方向)に延びる板形状をなし、その上端縁部には、上方に向かって開口すると共に上記一方向Aに向かって延び、上記一本の長尺材2´の長手方向の少なくとも一部分2aのみを嵌脱可能に嵌入させる嵌入溝16が形成される。
【0032】
そして、上記アクチュエータ13の作動により上記押し上げ体12が上方移動させられ
たとき(
図1,2中二点鎖線)、上記嵌入溝16に嵌入された長尺材2の一部分2aが、他の長尺材2に対し押し上げられて、上記一本の長尺材2´の一部分2aが他の長尺材2から離間可能とされる。一方、上記押し上げ体12が下方移動させられたとき(
図1〜3中実線)、この押し上げ体12の嵌入溝16の内面は、上記載置面7の嵌入溝部7cの内面と面一とされ、上記載置面7上の複数本の長尺材2から一本の長尺材2が上記嵌入溝16に嵌入可能とされる。
【0033】
上記の場合、長尺材2の一部分2aは、この長尺材2の長手方向の端部である前端部とされる。
【0034】
上記押し上げ体12により押し上げられた一本の長尺材2´を次工程装置19である押出成形装置に移送してこの装置に供給可能とする供給装置20が設けられる。
【0035】
上記次工程装置19である押出成形装置は、上記供給装置20により供給された各長尺材2の外周面にそれぞれ樹脂3をコーティングすると共に、所定長さに切断するための所定の作業をして前記カテーテル案内用のガイドワイヤーを形成するものである。
【0036】
具体的には、上記押出成形装置は、電動スクリューにより熱溶融樹脂3を押し出す押出機23と、上記押し上げ体12の前方に配置され、上記供給装置20により供給される長尺材2を、その一端部側(前端部側)から受け入れる一方、この長尺材2の外周面に上記押出機23から押し出される樹脂3をコーティングするダイ24と、このダイ24により形成されたガイドワイヤーの中間品25を前方に向けて引き取る不図示の引取機と、上記ダイ24と引取機との間に介設され、上記中間品25を水冷して樹脂3を硬化させる冷却硬化装置26とを備えている。
【0037】
上記供給装置20は、上記載置面7の前部の上方域を前、後移動可能となるよう固定部材側5に支持される可動体30と、この可動体30を高速で前後移動させるリニアモータであるアクチュエータ31と、上記可動体30から前方に向かって突設され、上記押し上げ体12により押し上げられた一本の長尺材2´の一部分2aを所定高さに位置決めする位置決めローラ32と、上記可動体30から下方に向かって突設され、上記押し上げ体12により押し上げられて位置決めローラ32により位置決めされた上記長尺材2´の一部分2aを着脱可能に把持するチャック33と、このチャック33の前方に配置され、このチャック33に把持されたまま上記可動体30の前方移動により前方移動させられた上記一本の長尺材2´の一部分2aを解除可能に挟み、上記チャック33の把持の解除後に上記ダイ24に送り込む上下一対の送りローラ34,34とを備えている。
【0038】
なお、図示しないが、上記押し上げ体12のアクチュエータ13、次工程装置19の押出機23、供給装置20の可動体30のアクチュエータ31、チャック33、および送りローラ34と電気的に接続され、これらをそれぞれ電子的に制御する制御装置が設けられる。
【0039】
上記個別取出装置1を用いてガイドワイヤーを形成する場合には、まず、上記載置面7上に複数の長尺材2を載置させる。この際、これら各長尺材2がそれぞれほぼ上記一方向Aに向かってそれぞれ延びるよう載置させる。この場合、各長尺材2は互いに厳密に平行な整列状態で載置させる必要はなく、ある程度ランダムな整列状態で載置させれば足りる。また、この場合、これら各長尺材2の前端部である各一部分2aが前後方向で互いにほぼ同じところに位置するよう載置させる。一方、上記次工程装置19の押出機23の作動により、熱溶融樹脂3が上記ダイ24に供給される。
【0040】
また、上記押し上げ体12のアクチュエータ13の作動により上記押し上げ体12が上
方移動させられる。すると、上記載置面7上の複数本の長尺材2から上記押し上げ体12の上端縁部の嵌入溝16に嵌入された一本の長尺材2´の一部分2aが押し上げられ、この長尺材2´の一部分2aは、他の長尺材2から離間させられる(
図1,2中二点鎖線)。
【0041】
次に、上記チャック33の作動により、上記押し上げられた一本の長尺材2´の一部分2aが上記チャック33により把持される。この状態で、上記アクチュエータ31の作動により上記可動体30は上記チャック33および一本の長尺材2´と共に前方移動させられる(
図2中一点鎖線)。この場合、上記アクチュエータ31はリニアモータであるため、上記可動体30は上記チャック33および一本の長尺材2´と共に高速で前方移動させられる。このため、上記一本の長尺材2´の後部側と他の長尺材2の後部側との間の動摩擦係数が小さく抑制され、よって、上記一本の長尺材2´の前方移動に対し他の長尺材2が連れ動くことは防止される。
【0042】
そして、上記チャック33と可動体30のアクチュエータ31との作動により一本の長尺材2´が前方移動させられると、次に、上記送りローラ34,34の作動により、これら両送りローラ34,34に上記一本の長尺材2´の一部分2aが挟み付けられる(
図2中一点鎖線)。上記チャック33の把持が解除された後、上記両送りローラ34,34の作動により、上記一本の長尺材2´が更に前方移動させられる。すると、この長尺材2´の一部分2aは上記次工程装置19のダイ24の開口に供給される。このダイ24において、上記一本の長尺材2´の外周面に上記押出機23から押し出される樹脂3がコーティングされて、上記ガイドワイヤーの中間品25が連続的に形成される。その後、この中間品25は所定長さに切断されて、ガイドワイヤーが形成される。
【0043】
上記構成によれば、それぞれがほぼ水平な一方向Aに向かって延びると共にそれぞれの横断面が互いに同形同大とされる複数本の長尺材2を載置可能とする載置面7と、この載置面7の一部に形成され、上方に向かって開口する開口11と、この開口11に上、下方移動可能となるよう嵌入され、この上方移動により上記複数本の長尺材2から一本の長尺材2´の長手方向の少なくとも一部分2aを押し上げ可能とする押し上げ体12とを備えている。
【0044】
このため、各長尺材2に対しそれぞれ所定の作業をしようとする場合には、まず、上記載置面7上に複数本の長尺材2を上記一方向Aに向かってそれぞれ延びるよう載置させる。この場合、各長尺材2は互いに厳密に平行な整列状態で載置させる必要はなく、ある程度ランダムな整列状態で載置させれば足りる。そして、この状態で、上記押し上げ体12を上方移動させる。すると、この押し上げ体12により、複数本の長尺材2から一本の長尺材2´の一部分2aが押し上げられる。よって、この一本の長尺材2´の一部分2aを把持するなどして他の長尺材2から引き離してやれば、上記載置面7上の複数本の長尺材2から、その一本ずつを次々と取り出すことがより確実にできる。この結果、その後の上記所定の作業は、より容易かつ円滑に達成することができる。
【0045】
また、前記したように、載置面7を、上記一方向Aに直交する直交方向に向かって上記各長尺材2をその各自重により移動可能とさせる傾斜面となるよう形成し、この傾斜面の底部に上記開口11を形成している。
【0046】
このため、上記したように載置面7上に複数本の長尺材2を載置して上記押し上げ体12を上、下方移動させることにより一本の長尺材2´を次々と取り出したとき、上記載置面7上に残された各長尺材2は、上記開口11に嵌入されて上、下方移動する上記押し上げ体12に向かうよう自動的に載置面7上を移動させられる。よって、上記押し上げ体12の上方移動による長尺材2の一本ずつの取り出しは、より確実にすることができる。
【0047】
また、前記したように、押し上げ体12の上端縁部に、上方に向かって開口すると共に上記一方向Aに向かって延び、上記一本の長尺材2´の上記一部分2aのみを嵌脱可能に嵌入させる嵌入溝16を形成している。
【0048】
このため、上記したように載置面7上に複数本の長尺材2を載置して上記押し上げ体12を上方移動させるとき、この押し上げ体12の嵌入溝16に嵌入された長尺材2´は、上記押し上げ体12から不意に脱落することなく、より確実に押し上げられる。よって、複数本の長尺材2から、その一本ずつを次々と取り出すことは更に確実にできる。
【0049】
また、前記したように、一本の長尺材2´の上記一部分2aがこの長尺材2´の長手方向の端部であるとしている。
【0050】
ここで、上記載置面7上に載置された複数本の長尺材2が互いに厳密には平行でない整列状態である場合や、長尺材2が細いワイヤーのような可撓性のものである場合には、上記押し上げ体12の上方移動により複数本の長尺材2から一本の長尺材2´の長手方向の中途部における一部分2aを押し上げるとき、隣接する長尺材2同士の互いの干渉や、長尺材2の撓みによる互いの絡み合いにより、上記一本の長尺材2´の一部分2aを他の長尺材2から離間させ難くなるおそれがある。
【0051】
しかし、上記したように一本の長尺材2´の一部分2aをこの長尺材2´の長手方向の端部としたことから、上記押し上げ体12の上方移動により上記長尺材2´の一部分2aである端部を押し上げたときには、隣接する長尺材2同士が互いに干渉したり絡み合ったりすることは抑制されて、上記一本の長尺材2´の一部分2aである端部を他の長尺材2から、より確実に離間させることができる。よって、複数本の長尺材2から、その一本ずつを更に確実に次々と取り出すことができる。
【0052】
また、前記したように、押し上げ体12により押し上げられた一本の長尺材2´を次工程装置19に供給可能とする供給装置20を備えている。
【0053】
このため、上記したように載置面7上の複数本の長尺材2から一本ずつ長尺材2´を取り出すことがより確実にできることに加えて、この長尺材2´を上記次工程装置19に供給することが上記供給装置20により機械的に円滑に達成される。よって、その分、次工程における所定の作業は、更に容易かつ円滑に達成することができる。
【0054】
なお、長尺材2は金属や樹脂パイプなど剛性のものであってもよく、数mから10〜20cmなど細長状であるが長さの短いものであってもよい。また、押し上げ体12により押し上げられる長尺材2の一部分2aは、この長尺材2の長手方向の中途部もしくは全部であってもよい。また、上記アクチュエータ13,31や、チャック33および送りローラ34の各アクチュエータは、空気圧、油圧、電動シリンダ、電動機、電磁器、リニアモータなどいずれの種類のものであってもよい。