(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383583
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 43/14 20180101AFI20180820BHJP
F21S 43/236 20180101ALI20180820BHJP
F21S 43/31 20180101ALI20180820BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20180820BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20180820BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180820BHJP
【FI】
F21S43/14
F21S43/236
F21S43/31
F21W103:10
F21W103:35
F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-131283(P2014-131283)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-9648(P2016-9648A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】大島 研介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 良彦
【審査官】
河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−203111(JP,A)
【文献】
特開2004−152764(JP,A)
【文献】
米国特許第01888995(US,A)
【文献】
特開2013−058325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/14
F21S 43/236
F21S 43/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源と、
前記LED光源からの光が入射する入射部および内部を導光された光が出射方向前方に向けて出射される出射部を有する導光体と、を備える車両用照明装置であって、
前記LED光源は、光源基板および当該光源基板に円環状に配置された複数のLEDチップを有し、
前記導光体は、軸が前記出射方向に延び且つ一端の端面が前記入射部をなす短筒状の筒状部、当該筒状部の他端に繋がり且つ前記出射方向に交差する方向に広がる底部およびこの底部から前記出射方向前方に向かうほど断面形状が大となる錘形状部を有しており、
前記複数のLEDチップは、前記出射方向視において前記入射部に重なるように前記入射部に正対しており、
前記底部の前記出射方向後方側には、前記出射方向視において前記複数のLEDチップおよび前記入射部に囲まれた位置に配置されており、且つ前記入射部から導光された光を出射方向前方に拡散させつつ出射させる再起反射部材によって構成された拡散発光領域が設けられていることを特徴とする、車両用照明装置。
【請求項2】
前記錘形状部を外側から覆う錘形状反射面を有するリフレクタ部材を備える、請求項1に記載の車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED光源を備える車両用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキランプをはじめとする用途に種々の車両用照明装置が提案されている。特許文献1,2には、LED光源を備える車両用照明装置が開示されている。これらの文献に開示された車両用照明装置においては、点光源であるLED光源からの光を反射または導光の手段によって、より広い発光領域を実現することが意図されている。
【0003】
しかしながら、単純な反射または導光のみによっては、発光領域の拡大を十分に達成することは困難である。また、近年の車両意匠の多様化に伴い、車両用照明装置にもより多彩な外観を呈することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−311162号公報
【特許文献1】特開2008−84699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、発光領域を拡大することが可能な車両用照明装置を提供することをその課題とする。また、本発明は、より多彩な外観を呈することが可能な車両用照明装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面によって提供される車両用照明装置は、LED光源と、前記LED光源からの光が入射する入射部および内部を導光された光が出射方向前方に向けて出射される出射部と、を備える車両用照明装置であって、前記導光体は、前記出射方向に交差する方向に広がる底部およびこの底部から前記出射方向前方に向かうほど断面形状が大となる錘形状部を有しており、前記底部には、前記入射部から導光された光を出射方向前方に拡散させつつ出射させる拡散発光領域が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明の第二の側面によって提供される車両用照明装置は、LED光源と、前記LED光源からの光が入射する入射部および内部を導光された光が出射方向前方に向けて出射される出射部と、を備える車両用照明装置であって、前記導光体は、前記出射方向に交差する方向に広がる底部およびこの底部から前記出射方向前方に向かうほど断面形状が大となる錘形状部を有しており、前記錘形状部を外側から覆う錘形状反射面を有するリフレクタ部材を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の第三の側面によって提供される車両用照明装置は、LED光源と、前記LED光源からの光が入射する入射部および内部を導光された光が出射方向前方に向けて出射される出射部と、を備える車両用照明装置であって、前記導光体は、前記出射方向に交差する方向に広がる底部およびこの底部から前記出射方向前方に向かうほど断面形状が大となる錘形状部を有しており、前記底部には、前記入射部から導光された光を出射方向前方に拡散させつつ出射させる拡散発光領域が設けられており、前記錘形状部を外側から覆う錘形状反射面を有するリフレクタ部材を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第一の側面によれば、前記拡散発光領域によって面状に発光する領域を実現可能であり、前記車両用照明装置の発光領域を拡大することができる。また、本発明の第二の側面によれば、実物として存在する前記錘形状反射面よりも出射方向後方に立体的な発光物体が存在するかのような外観を呈することが可能であり、より多彩な外観を実現することができる。本発明の第三の側面によれば、上述した第一の側面および第二の側面の双方の効果を奏することができる。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に基づく車両用照明装置を示す要部斜視図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿う要部断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に基づく車両用照明装置を示す要部断面図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に基づく車両用照明装置を示す要部断面図である。
【
図5】本発明の第四実施形態に基づく車両用照明装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1および
図2は、本発明の第一実施形態に基づく車両用照明装置を示している。本実施形態の車両用照明装置A1は、LED光源1、導光体2、リフレクタ部材3およびカバー4を備えている。車両用照明装置A1の主な用途としては、ブレーキランプが挙げられるが、これに限定されず、たとえば車幅灯など様々な用途に適用することができる。なお、
図2における図中下方が、本発明で言う出射方向前方に相当する。また、
図1においては、理解の便宜上、カバー4を省略している。
【0014】
LED光源1は、車両用照明装置A1の光源であり、
図2に示すように光源基板11および複数のLEDチップ12を有する。
【0015】
光源基板11は、たとえば配線パターンが形成された絶縁基板である。なお、LED光源1は、光源基板11を有する構成に限定されず、1つまたは複数のLEDチップ12が所望に配置された構成であればよい。
【0016】
複数のLEDチップ12は、直流電力により各々が発光する半導体素子である。本実施形態の車両用照明装置A1がブレーキランプに用いられる場合、LEDチップ12は、赤色光を発するものを用いればよい。複数のLEDチップ12は、光源基板11上に円環状に配置されている。なお、LEDチップ12は、いわゆるベアチップと称されるチップ単体の構成であってもよいし、チップが透光性を有する樹脂によって覆われたモジュールタイプの構成であってもよい。この場合、前記透光性を有する樹脂は、レンズの役目を果たす場合もある。
【0017】
導光体2は、LED光源1からの光を所望の経路および範囲に導光するものである。本実施形態においては、導光体2は、筒状部21、入射部22、底部23、拡散発光領域24、錘形状部25および出射部26を有する。導光体2は、透明な材質からなり、たとえば透明なアクリル樹脂からなる。
【0018】
筒状部21は、軸が出射方向に延びる比較的短い筒状であり、たとえば円筒形状や多角筒形状とされる。入射部22は、筒状部21の一端に位置する端面でありLED光源1の複数のLEDチップ12に正対している。複数のLEDチップ12の配置直径と筒状部21の直径とが略同一とされていることにより、複数のLEDチップ12からの光が入射部22に入射する。
【0019】
底部23は、出射方向に交差する方向に広がる板状部であり、筒状部21の他端に繋がっている。本実施形態においては、底部23は、出射方向に対して直角である方向に広がっている。出射方向に対する底部23が広がる方向は、後述する本発明が意図する効果を奏する範囲であれば、適宜設定可能である。底部23は、平面視円形状または多角形状などとされる。底部23には、拡散発光領域24が形成されている。拡散発光領域24は、入射部22に入射し、筒状部21および底部23内を導光された光を、拡散させつつ出射方向前方へと向かわせるものである。本実施形態においては、拡散発光領域24は、底部23の出射方向後方側に設けられた再帰反射部材によって構成されている。
【0020】
錘形状部25は、底部23から出射方向前方に向かうほど断面形状が大となる部位であり、円錐筒形状または多角錘筒形状などとされる。錘形状部25の出射方向後方部分の大きさは、底部23と略同一されている。錘形状部25の出射方向前方に位置する端面が、出射部26とされている。出射部26は、錘形状部25内を導光された光が、出射方向前方へと出射される部位である。出射部26は、鏡面仕上とされてもよいし、微小な凹凸を有するいわゆるシボ面とされてもよい。
【0021】
リフレクタ部材3は、導光体2の錘形状部25を外側から覆う様に設けられており、錘形状反射面31および鍔部32を有している。
【0022】
錘形状反射面31は、出射方向において導光体2の底部23付近から出射方向前方に向かうほど断面形状が大となる錘形状の反射面である。錘形状反射面31は、導光体2の各所から出射された光を反射し、出射方向前方へと向かわせるためのものである。このような錘形状反射面31を有するために、リフレクタ部材3は、たとえば高反射率を有する金属、または高反射率を有するメッキ層が施された樹脂などからなる。錘形状反射面31は、円錐形状または多角錘形状などとされる。
【0023】
本実施形態においては、錘形状反射面31は、導光体2の出射部26よりも出射方向前方に延出している。なお、図示された構成においては、錘形状反射面31は、導光体2の錘形状部25に対して若干の隙間をおいて配置されているが、錘形状反射面31は、錘形状部25と接触していてもよいし、たとえば透明な充填剤(図示略)によって隙間が埋められていてもよい。
【0024】
鍔部32は、錘形状反射面31の出射方向前方端から図中水平方向に延びる部分である。鍔部32は、錘形状反射面31と同様に反射に好適な材料からなることにより、環状に反射する外観を構成しうる。
【0025】
カバー4は、導光体2およびリフレクタ部材3の全体を車両方向前方から覆う部材であり、導光体2から出射された光を透過させる樹脂などからなる。車両用照明装置A1がブレーキランプとして用いられる場合、カバー4は、典型的には赤色の透過性樹脂からなる。
【0026】
次に、車両用照明装置A1の作用について説明する。
【0027】
本実施形態によれば、LED光源1からの光が錘形状部25を有する導光体2によってより広い領域に導光されて出射方向前方に出射されることに加えて、拡散発光領域24からも光が出射される。拡散発光領域24は、出射方向に交差する方向、特に直角である方向に広がる底部23に形成されているため、たとえば
図1に示すように、車両用照明装置A1の中央奥方において面状に発光する領域が形成されることとなる。したがって、車両用照明装置A1の発光領域を拡大することができる。
【0028】
特に、拡散発光領域24として再帰反射部材を用いた場合、拡散発光領域24は、LED光源1からの光を拡散させて上述した面状の発光領域を構成することに加えて、車両用照明装置A1が搭載された車両の外部から向かってきた光を、向かってきた方向へと反射する機能を果たす。車両用照明装置A1がブレーキランプとして用いられる場合、このような反射機能の実装が法律によって義務付けられる。車両用照明装置A1によれば、このような反射機能を果たす領域と発光機能を果たす領域とを兼用させることが可能であり、車両用照明装置A1の小型化を図ることができる。
【0029】
また、錘形状反射面31を有するリフレクタ部材3を備えることにより、導光体2からの光、特に拡散発光領域24によって拡散された光の一部が、錘形状反射面31によって反射される。たとえば、
図2に示すように、拡散発光領域24の図中左端である点Aから発せられた光が錘形状反射面31によって反射されると、これを視認する者には、あたかも仮想点A’が光っているように観察される。次に、点Bから発せられた光が点A側の錘形状反射面31によって反射されると、あたかも仮想点B’さらには仮想点B’’が光っているように観察される。この結果、車両用照明装置A1は、実物として存在する錘形状反射面31だけでなく。この錘形状反射面31よりも出射方向後方に立体的な発光物体が存在するかのような外観を呈する。したがって、車両用照明装置A1によれば、より多彩な外観を実現することができる。
【0030】
図3〜
図5は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0031】
図3は、本発明の第二実施形態に基づく車両用照明装置を示している。本実施形態の車両用照明装置A2においては、拡散発光領域24の構成が上述した実施形態と異なっている。本実施形態の拡散発光領域24は、底部23の出射方向前方に設けられたシボ面によって構成されている。このような実施形態によっても、車両用照明装置A2の発光領域拡大や外観の多彩化を達成することができる。また、拡散発光領域24は、シボ面のほかに、複数の溝や複数の凹部あるいは複数の凸部などからなる構成を適宜採用できる。
【0032】
図4は、本発明の第三実施形態に基づく車両用照明装置を示している。本実施形態の車両用照明装置A3においては、拡散発光領域24の構成が上述した実施形態と異なっている。本実施形態の拡散発光領域24は、底部23の出射方向後方に設けられたシボ面によって構成されている。このような実施形態によっても、車両用照明装置A3の発光領域拡大や外観の多彩化を達成することができる。また、拡散発光領域24は、シボ面のほかに、複数の溝や複数の凹部あるいは複数の凸部などからなる構成を適宜採用できる。
【0033】
図5は、本発明の第四実施形態に基づく車両用照明装置を示している。本実施形態の車両用照明装置A4は、導光体2の形状が上述した実施形態と異なっている。本実施形態の導光体2は、鍔部27を有している。鍔部27は、錘形状部25の出射方向前方端に繋がっており、出射方向と直角である方向において外方に延出している。本実施形態においては、錘形状部25を導光された光は、錘形状部25と鍔部27との結合部分近辺において出射され、本実施形態においてはこの部位が出射部26となる。このような実施形態によっても、車両用照明装置A4の発光領域拡大や外観の多彩化を達成することができる。また、本実施形態によれば、LED光源1が非点灯である状態において、出射部26がほとんど視認されない外観を呈することができる。
【0034】
本発明に係る車両用照明装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る車両用照明装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0035】
拡散発光領域24を有する導光体2を備える構成であれば、必ずしも錘形状反射面31を有するリフレクタ部材3を備える構成でなくとも発光領域の拡大を図ることができる。一方、錘形状反射面31を有するリフレクタ部材3を備える構成であれば、必ずしも拡散発光領域24を有する構成でなくとも外観の多彩化を図ることができる。また、底部23の外周付近に複数のLEDチップ12が配置された構成に限定されず、たとえば、中央にLEDチップ12が配置され、これを囲むように円環状の底部23や拡散発光領域24が配置された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
A1〜A4車両用照明装置
1 LED光源
11 光源基板
12 LEDチップ
2 導光体
21 筒状部
22 入射部
23 底部
24 拡散発光領域
25 錘形状部
26 出射部
27 鍔部
3 リフレクタ部材
31 錘形状反射面
32 鍔部
4 カバー