特許第6383585号(P6383585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383585建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383585
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   E04H9/02 331Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-132761(P2014-132761)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11508(P2016-11508A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大堀 太志
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆史
(72)【発明者】
【氏名】平川 恭章
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−146659(JP,A)
【文献】 特開平01−097767(JP,A)
【文献】 米国特許第04593501(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物に設けられ、上部構造物を支持する複数の既存免震部材のうち、前記下部構造物の中央部、及び、角部を除いた外周部に配置された前記既存免震部材を、前記既存免震部材よりせん断剛性が低い低剛性免震部材と交換する、免震部材の水平剛性変更方法。
【請求項2】
下部構造物に設けられ、上部構造物を支持する複数の既存免震部材のうち、前記下部構造物の角部及び外周部に配置された前記既存免震部材を、前記既存免震部材よりせん断剛性が高い高剛性免震部材と交換する、免震部材の水平剛性変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震建物の完成後の用途変更等により、免震建物の振動周期の調整が必要となる場合がある。この場合、既存の免震建物を支持する免震装置の大幅な改修工事を伴わず、免震建物の振動周期を調整する方法が望まれている。
免震建物の振動周期を調整する技術には、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1は、免震建物の上層部に増築部を増築する際に、増築された免震建物に対応させて、振動周期を調整する方法である。
具体的には、免震建物を新築する際に、免震装置として、予め上段免震装置と下段免震装置を上下に重ねた2段免震装置を設置しておき、2段免震装置により、新築時の免震建物に適した振動周期に設定しておく。その後、免震建物の上層部に増築部を増築する際には、2段免震装置の上段免震装置又は下段免震装置のいずれか一方を、作動不能に拘束する。これにより、増築後の免震建物の水平剛性が変更され、増築後の免震建物に適した振動周期に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−214968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、事前に、免震建物の水平剛性が変更できるように、せん断剛性が可変とされた免震装置を配置しておく必要があり、用途変更が必要となった既存の免震建物には適用できない。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑み、用途変更が必要になった既存の建物を支持する免震部材の水平剛性を変更する変更方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法は、下部構造物に設けられ、上部構造物を支持する複数の既存免震部材の一部を、前記既存免震部材とせん断剛性の異なる新規免震部材に交換することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、既存免震部材の一部を、既存免震部材よりせん断剛性が低い新規免震部材に交換することにより、既存の免震建物の水平剛性が低くされる。また、既存免震部材の一部を、既存免震部材よりせん断剛性が高い新規免震部材に交換することにより、既存の免震建物の水平剛性が高くされる。更に、交換する新規免震部材の数量を増減することにより、免震建物の水平剛性が変更される。
これにより、免震建物の振動周期を調整することができる。
【0009】
請求項1に記載の発明は、下部構造物に設けられ、上部構造物を支持する複数の既存免震部材のうち、前記下部構造物の中央部、及び、角部を除いた外周部に配置された前記既存免震部材を、前記既存免震部材よりせん断剛性が低い低剛性免震部材と交換することを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、免震建物の中央部に、既存免震部材よりせん断剛性が低くされた新規免震部材を設けることにより、既存免震部材と新規免震部材を組み合わせた免震部材全体の水平剛性が低くされる。これにより、免震建物の振動周期を、現状より長周期化することができる。
このとき、外周部の既存免震部材のせん断剛性は、中央部の新規免震部材より相対的に高いので、免震部材全体の振動周期を現状より長周期化しても、免震建物のねじり剛性を確保することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、下部構造物に設けられ、上部構造物を支持する複数の既存免震部材のうち、前記下部構造物の角部及び外周部に配置された前記既存免震部材を、前記既存免震部材よりせん断剛性が高い高剛性免震部材と交換することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、免震建物の外周部に、既存免震部材よりせん断剛性が高くされた新規免震部材を設けることにより、既存免震部材と新規免震部材を組み合わせた免震部材全体のせん断剛性が高くされる。これにより、免震建物の振動周期を、現状より短周期化することができる。
このとき、中央部の既存免震部材のせん断剛性は、外周部の新規免震部材より相対的に低いので、免震部材全体の振動周期を現状より短周期化しても、免震建物のねじり剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成としてあるので、用途変更が必要になった既存の建物を支持する免震部材の水平剛性を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る免震建物の水平剛性変更方法を説明するための既存の免震建物を模式的に示す正面図であり、(B)は、既存の免震装置の配置を示す図1(A)のZ1−Z1線断面図である。
図2】は本発明の第1実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法で変更した免震装置の配置を示す図1(A)のZ1−Z1線断面図である。
図3】は本発明の第2実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法で変更した免震装置の配置を示す図1(A)のZ1−Z1線断面図である。
図4】は本発明の第3実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法で変更した免震装置の配置を示す図1(A)のZ1−Z1線断面図である。
図5】は本発明の第4実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法で変更した免震装置の配置を示す図1(A)のZ1−Z1線断面図である。
図6】は本発明の第5実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法で変更した免震装置の配置を示す図1(A)のZ1−Z1線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1(A)、(B)、図2を用いて、第1実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法について説明する。なお、本実施形態は、既存の免震建物10の水平剛性を小さくする適用例である。
ここに、図1(A)は既存の免震建物10の正面図であり、図1(B)は水平剛性変更前の免震装置14の配置を示す断面図であり、図2は水平剛性変更後の免震装置14、16の配置を示す平面図である。
【0016】
図1(A)に示すように、既存の免震建物10は基礎部(下部構造物)12を有し、基礎部12には、上部建物(上部構造物)13を支持する、複数の免震装置(既存免震部材)14が設けられている。
図1(B)に示すように、免震装置14は、格子状の交差部に複数個配置され、X軸方向及びY軸方向のいずれにも、ほぼ等間隔とされている。免震装置14は、いずれも、同じせん断剛性を有し、設計時に設定された振動周期で、上部建物13を免震支持している。
【0017】
なお、既存の免震建物10の免震装置14の配置やせん断剛性の大きさは、説明のための例示であり、これに限定されない。即ち、後述するように、コンピュータシミュレーションにより、既存の免震装置14の配置やせん断剛性を用いて、既存の免震特性を把握した上で、免震装置14の一部を他の免震装置に交換した後の免震特性を算出する。このとき、既存の免震装置14の配置やせん断剛性は本質的な問題でなく、既存の免震特性の把握と、一部を他の免震装置に交換した後の免震特性の算出に必要な情報が入手できればよい。
【0018】
本実施形態の建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法では、免震装置14の一部を他の免震装置16と交換するが、交換にあたり、基礎部12の中央部に配置された免震装置14を、交換対象としている。
即ち、図2に示すように、二点鎖線で示す境界線L1で囲まれた中央部(網掛け部)を交換ゾーン22とし、交換ゾーン22の内部の免震装置14を交換する。一方、境界線L1の外側の外周部は、免震装置14の交換を行わない非交換ゾーン24とする。
【0019】
このとき、非交換ゾーン24は、基礎部12の外周に沿って連続して設け、交換ゾーン22を囲む構成とする。また、非交換ゾーン24の内部では、免震装置14を、基礎部12の外周に沿って少なくとも1つは連続して残す構成とする。
【0020】
次に、交換ゾーン22の免震装置14を全て取り外し、新規の免震装置(新規免震部材)16と交換する。ここに、免震装置16は、免震装置14より、せん断剛性が低い低剛性免震装置である。なお、境界線L1の外側の既存の免震装置14は、交換せずに、そのまま継続使用する。
【0021】
これにより、免震装置14、及び免震装置14よりせん断剛性が低い免震装置16で上部建物13を支持する構成となり、免震建物20の振動周期を、既存の免震建物10の振動周期より長周期化することができる。
また、免震建物20への地震入力を低減させることができるので、免震建物20の補強強度を下げることができる。
また、既存の免震装置14のせん断剛性が、新規の免震装置16のせん断剛性より相対的に高いので、せん断剛性が高い免震装置14が、せん断剛性が低い免震装置16を連続して囲む構成となる。この結果、免震建物20が地震時に、ねじり変形を受けても、免震建物20のねじり剛性が確保され、ねじり変形が抑制される。
【0022】
交換対象の決定においては、既存の免震装置14と新規の免震装置16との数量割合や、交換後のせん断剛性の大きさ等は、既存の免震建物10の新たな用途等、必要な条件に基づいて決定される。この際、適切に交換対象を決定するには、コンピュータ上でシミュレーションを行い、最適な交換範囲等を求めておくのが望ましい。
【0023】
免震建物10の水平剛性を小さくした結果、上部建物13の移動量が大きくなり過ぎる場合には、移動量を制限するストッパーの設置や、後述するダンパー42の設置等で対応すればよい。
ここに、既存の免震装置14及び新規の免震装置16は、いずれも市販されている標準的な免震装置であり、詳細な説明は省略する。また、免震装置14、16に替えて、すべり支承を用いてもよい。
【0024】
上記したように、基礎部12に設けられ、上部建物13を支持する複数の既存の免震装置14の一部を、既存の免震装置14とせん断剛性の異なる、新規の免震装置16に交換することで、用途変更が必要になった既存の免震建物10の水平剛性を変更することができる。
【0025】
また、本実施形態では、免震建物10が、建物の基礎部12に免震装置14が設けられた基礎免震の場合を例に説明した。しかし、これに限定されることはなく、免震建物10が、建物の中間層に免震装置14が設けられた中間層免震の建物であってもよい。
更に、本実施形態では、免震装置14は、格子状の交点に全て配置されている構成で説明した。しかし、これに限定されることはなく、格子状の交点の一部の免震装置14が欠けた配置であってもよい。また、上部建物13の形状から、免震装置14が格子状の交点に配置されていなくてもよい。
【0026】
(第2実施形態)
図3を用いて、第2実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法について説明する。
第2実施形態は、既存の免震建物10の水平剛性を大きくする適用例である点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0027】
本実施形態の建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法では、免震建物10の免震装置14の一部を交換するにあたり、基礎部の外周部に配置された免震装置14を、交換対象に選択する。
即ち、図3に示すように、二点鎖線で示す境界線L1と基礎部12の外周で囲まれた外周部(網掛け部)を交換ゾーン28とし、交換ゾーン28の内部の免震装置14を、新規の免震装置18と交換する。一方、境界線L1の内側を非交換ゾーン26とし、非交換ゾーン26の免震装置14は交換しない。
このとき、交換ゾーン28は、基礎部12の外周に沿って連続して非交換ゾーン26を囲む構成とし、交換ゾーン28の内部では、免震装置14を、基礎部12の外周に沿って少なくとも1つは交換する構成とする。
【0028】
次に、交換ゾーン28の免震装置14を取り外し、新規の免震装置18に交換する。一方、非交換ゾーン26の既存の免震装置14はそのまま継続使用する。ここに、新規の免震装置18は、既存の免震装置14より、せん断剛性が高い高剛性免震装置である。
【0029】
これにより、免震装置14、及び免震装置14よりせん断剛性が高い免震装置18で上部建物13を免震支持する構成となり、免震建物30の振動周期を、既存の免震建物10より短周期化することができる。
このとき、交換ゾーン28の新規免震部材18のせん断剛性は、非交換ゾーン26の既存免震装置14より相対的に高くされているので、免震装置全体の振動周期を、既存の免震建物10より短周期化しても、免震建物10のねじり剛性を確保することができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0030】
(第3実施形態)
図4を用いて、第3実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法について説明する。
第3実施形態における免震建物40は、基礎部12と上部建物13の間に、上部建物13の振動を減衰させるダンパー42を取付けた点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0031】
図4に示すように、免震建物40は、第1実施形態で説明した建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法に加えて、外周部の非交換ゾーン24に、ダンパー42を取り付ける水平剛性変更方法である。ダンパー42は、基礎部12と上部建物13の間に取付けられ、地震時に、X軸方向呼びY軸方向の振動を減衰させ、免震建物40の移動を抑制すると共に、免震建物40にねじれや変形が生じたとき、免震建物40のねじれや変形を減衰させる。
【0032】
ここに、ダンパー42は、オイルダンパー等の粘弾性系のダンパーであればよく、種類や形状等は問わない。また、ダンパー42の取り付け位置は、外周部の非交換ゾーン24に限定されず、中央部の交換ゾーン22でもよいし、非交換ゾーン24と交換ゾーン22両方に取付けてもよい。
【0033】
また、ダンパー42は、図3で説明した免震建物30、及び後述する免震建物50、免震建物60に適用してもよい。これにより、地震時に、X軸方向呼びY軸方向の振動を減衰させると共に、免震建物30、50、60にねじれや変形が生じたとき、免震建物30、50、60のねじれや変形を減衰させることができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0034】
(第4実施形態)
図5を用いて、第4実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法について説明する。
第4実施形態は、免震建物10の水平剛性を低くする低剛性の免震装置16を、外周部まで入り込ませた配置とした点において、第1実施形態とは相違する。相違点を中心に説明する。
【0035】
本実施形態の建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法では、免震建物10免震装置14の一部を交換するにあたり、基礎部12の4つの角部の免震装置14を除いた、残りの免震装置14を、交換対象に選択する。
即ち、図5に示すように、二点鎖線で示す境界線L2で囲まれた4つの角部を非交換ゾーン54とし、非交換ゾーン54の免震装置14は交換しない。一方、非交換ゾーン54を除いた、残りの中央部及び外周部(網掛け部)の一部を、免震装置14を交換する交換ゾーン52とする。
【0036】
続いて、非交換ゾーン54の免震装置14はそのまま継続使用し、交換ゾーン52の免震装置14を取り外し、新規の免震装置16に交換する。ここに、新規の免震装置16は、既存の免震装置14よりせん断剛性が低い、低剛性免震装置である。
【0037】
これにより、免震装置14、及び免震装置14よりせん断剛性が低い免震装置16で上部建物13を免震支持する構成となり、免震建物50の振動周期を、既存の免震建物10より長周期化することができる。
このとき、角部の既存免震装置14のせん断剛性は、中央部及び外周部の一部の新規免震装置14より相対的に高いので、免震部材全体の振動周期を現状より長周期化しても、免震建物50のねじり剛性を確保することができ、ねじり変形を抑制できる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0038】
なお、本実施形態の展開例として、図5に示す交換ゾーン52と、非交換ゾーン54を入れ替えた構成としてもよい。
即ち、図示は省略するが、境界線L2で囲まれた、角部の非交換ゾーン54の既存の免震装置14を取り外し、新規の免震装置18に交換する。一方、境界線L2の外側の交換ゾーン52の免震装置14を、そのまま継続使用する。ここに、新規の免震装置18は、既存の免震装置14よりせん断剛性が高い高剛性免震装置である。
【0039】
これにより、免震建物10の振動周期を、既存の免震建物10より短周期化することができる。このとき、角部の既存免震装置18のせん断剛性は、中央部の免震装置14より相対的に高いので、免震部材全体の振動周期を、既存の免震建物10より長周期化しても、免震建物50のねじり剛性を確保することができ、ねじり変形を抑制できる。
【0040】
(第5実施形態)
図6を用いて、第5実施形態に係る建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法について説明する。
第5実施形態は、免震建物10の水平剛性を低くする低剛性の免震装置16の位置を、基礎部12の中央部及び角部とした点において第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0041】
本実施形態の建物を支持する免震部材の水平剛性変更方法では、免震建物10の免震装置14の一部を交換するにあたり、基礎部の4つの角部、及び中央部の免震装置14を交換対象に選択する。
即ち、図6に示すように、二点鎖線で示す境界線L3で囲まれた、基礎部12の4辺の各中央部を、免震装置14の交換を行わない非交換ゾーン64とする。一方、非交換ゾーン64を除いた、残りの基礎部12の中央部及び角部(網掛け部)を、免震装置14を交換する交換ゾーン62とする。
【0042】
続いて、非交換ゾーン64の既存の免震装置14は、交換せずそのまま継続使用し、交換ゾーン62においては、既存の免震装置14を取り外し、新規の免震装置16に交換する。ここに、免震装置16は、既存の免震装置14よりせん断剛性が低い、低剛性免震装置である。
【0043】
これにより、免震装置14、及び免震装置14よりせん断剛性が低い免震装置16で上部建物13を免震支持する構成となり、免震建物60の振動周期を、既存の免震建物10より長周期化することができる。このとき、基礎部12の4辺の中央部に残された既存の免震装置14のせん断剛性が、中央部の新規免震部材16より相対的に高くなる。この結果、免震装置全体の振動周期を既存の免震建物10より長周期化しても、免震建物60のねじり剛性を確保することができ、ねじり変形を抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態の展開例として、図6に示す交換ゾーン62と、非交換ゾーン64を入れ替えた構成としてもよい。
即ち、図示は省略するが、境界線L3で囲まれた、非交換ゾーン64の既存の免震装置14を取り外し、新規の免震装置18に交換する。一方、交換ゾーン62の免震装置14は、交換せずそのまま継続使用する。ここに、免震装置18は、既存の免震装置14よりせん断剛性が高い高剛性免震装置である。
【0045】
これにより、免震建物60の振動周期を、既存の免震建物10より短周期化することができる。このとき、外周部の免震装置18のせん断剛性は、中央部及び角部の免震装置14より相対的に高いので、免震部材全体の振動周期を既存の免震建物10より短周期化しても、免震建物10のねじり剛性を確保することができ、ねじり変形を抑制できる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【符号の説明】
【0046】
10、20、30、40、50、60 免震建物
12 基礎部(下部構造物)
13 上部構造物
14 免震装置(既存免震部材)
16 免震装置(新規免震部材)
18 免震装置(新規免震部材)
22、28、52、62 交換ゾーン
24、26、54、64 非交換ゾーン
L1、L2、L3 境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6