(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、支持具と基材とを切り離す際にセラミック被膜のバリが発生し、傷、パーティクルの原因となる有害な突起となって残留しやすくなる。また、支持具と基材とを切り離す際に微少なクラックが発生する。微少なクラックは、まれにセラミック部材の基材に到達し、セラミック部材の寿命を短くする原因となる。このため、支持点の周囲にバリあるいは微少なクラックの無いセラミック部材が望まれる。
【0007】
本発明は、前記課題を鑑み、セラミック部材製造時における支持点の周囲に、バリある
いは微少なクラックが発生するのを防止できるセラミック部材の製造方法および支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明のセラミック部材の製造方法は、支持具を用いて基材を支持した後、前記基材の表面にCVD法によりセラミック被膜を形成するセラミック部材の製造方法において、前記支持具は、前記基材の前記表面に接触する支持部と、前記基材の前記表面に対して隙間を有するように前記支持部を囲むカバー部とからなる。
【0009】
本発明のセラミック部材の製造方法によれば、支持具を用いて基材を支持し、この状態でCVD法により基材の表面にセラミック被膜を形成する。このとき、支持具は、基材の表面に接触する支持部と、基材の表面に対して隙間を有するように支持部を囲むカバー部とを有する。
【0010】
このため、カバー部によって支持部へのCVDの原料ガスの侵入を防止することができ、支持部と基材とが形成されたセラミック被膜によって固着することを防止することができる。また、カバー部は、基材との間に隙間を有するように配置されるので、カバー部と基材とがセラミック被膜によって固着することを防止することができる。
このため、支持具に載置された基材をCVD後に、取り外す際に、セラミック被膜によって固着されていないので、支持点の周囲に有害なバリの発生、微少なクラックの発生を防止することができる。
【0011】
さらに、本発明のセラミック部材の製造方法は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記支持具は、前記支持部と前記カバー部とが一体的に構成されている。
支持具は支持部とカバー部とが一体的に構成されているので、基材を支持具に載置する際に、基材を傾けて載置しようとすると、基材はカバー部から先に接触する。例えば基材が平面である場合、複数(例えば3点)の支持部の先端が形成する載置面と、基材とが平行となった時にはじめて支持部が基材と接触できるようになる。このため、支持部の先端を損傷しにくくことができる。また、基材とカバー部との隙間の間隔を、確保することができる。
【0012】
(2)前記支持部における最外縁と、前記カバー部における最外縁との距離は、前記隙間の間隔の4〜20倍である。
支持具における支持部とカバー部との距離が、隙間の間隔の4倍以上であると、隙間から侵入した原料ガスが、支持部と基材との接触点に到達しにくくすることができるので、支持部と基材との固着が起きにくくすることができる。また、支持部とカバー部との距離が、隙間の間隔の20倍以下であると、基材にセラミック被膜の形成されていない開口部を小さくすることができるので、基材を保護しやすくすることができる。
【0013】
(3)前記セラミック被膜は、SiCである。
セラミック被膜が、SiCであると以下のメリットがある。すなわち、SiCは、化学的に安定であるため、基材の消耗を防止することができる。また、SiCは、硬く、耐摩耗性のあるセラミック材料であるので、基材の摩耗、損傷を防止することができる。
【0014】
(4)前記基材あるいは基材の芯材は黒鉛で構成される。
黒鉛は、結晶に劈開面を有するので、基材あるいは基材の芯材が黒鉛で構成されると、容易に加工することができ、様々な形状のセラミック部材を得ることができる。基材の芯材が黒鉛であるとは、基材の大部分が黒鉛からなり、例えば黒鉛にセラミック被膜が形成されている場合を含む。
【0015】
(5)前記セラミック部材の製造方法は、前記基材に対する支持具の位置を変え複数回にわたって繰り返される。
本発明のセラミック部材の製造方法を、基材に対する支持具の位置を変えて複数回にわたって繰り返すことにより、基材の中心部の露出を防ぐことができる。例えば、基材が黒鉛である場合、1回目のセラミック被膜の形成では、支持部が当接する近傍は、黒鉛からなる基材が露出する。しかしながら、支持具の位置を変えて、セラミック被膜の形成された基材であるセラミック部材を、新たな基材として2回目のセラミック被膜の形成を行うことにより、露出した黒鉛の基材を2層目のセラミック被膜で覆い隠すことができる。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の支持具は、基材の表面にCVD法によりセラミック被膜を形成する際にセラミック部材を支持するための支持具であって、前記基材の前記表面に接触する支持部と、前記基材の前記表面に対して隙間を有するように前記支持部を囲むカバー部とからなる。
【0017】
本発明の支持具によれば、カバー部によって支持部へのCVDの原料ガスの侵入を防止することができ、支持部と基材とが形成されたセラミック被膜によって固着することを防止することができる。また、カバー部は、基材との間に隙間を有するように配置されるので、カバー部と基材とがセラミック被膜によって固着することを防止することができる。
このため、支持具に載置された基材をCVD後に、取り外す際に、セラミック被膜によって固着されていないので、支持点の周囲に有害なバリの発生、微少なクラックの発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、支持具が、基材を支持する支持部と、基材との間に隙間を有するように支持部を囲むカバー部とからなるので、カバー部によって支持部へのCVDの原料ガスの侵入を防止することができる。このため、支持部および基材が、形成されたセラミック被膜によって固着することを防止することができる。また、カバー部は、基材との間に隙間を有するように配置されるので、カバー部と基材とがセラミック被膜によって固着することを防止することができる。これにより、支持具に載置された基材をCVD後に取り外す際に、セラミック被膜によって固着することがなく、有害なバリの発生、微少なクラックの発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のセラミック部材の製造方法および支持具について説明する。
【0021】
本発明のセラミック部材の製造方法は、支持具を用いて基材を支持した後、前記基材の表面にCVD法によりセラミック被膜を形成するセラミック部材の製造方法において、前記支持具は、前記基材の前記表面に接触する支持部と、前記基材の前記表面に対して隙間
を有するように前記支持部を囲むカバー部とからなる。
【0022】
本発明のセラミック部材の製造方法によれば、支持具を用いて基材を支持し、この状態でCVD方により基材の表面にセラミック被膜を形成する。このとき、支持具は、基材の表面に接触する支持部と、基材の表面に対して隙間を有するように支持部を囲むカバー部とを有する。
【0023】
このため、カバー部によって支持部へのCVDの原料ガスの侵入を防止することができ、支持部と基材とが形成されたセラミック被膜によって固着することを防止することができる。また、カバー部は、基材との間に隙間を有するように配置されるので、カバー部と基材とがセラミック被膜によって固着することを防止することができる。
このため、支持具に載置された基材をCVD後に、取り外す際に、セラミック被膜によって固着することがなく、支持点の周囲に有害なバリの発生、微少なクラックの発生を防止することができる。
【0024】
さらに、本発明のセラミック部材の製造方法は、以下の態様であることが望ましい。
(1)前記支持具は、前記支持部と前記カバー部とが一体的に構成されている。
支持具は支持部とカバー部とが一体的に構成されているので、基材を支持具に載置する際に、基材を傾けて載置しようとすると、基材はカバー部から先に接触する。例えば基材が平面である場合、複数(例えば3点)の支持部の先端が形成する載置面と、基材とが平行となった時にはじめて支持部が基材と接触できるようになる。このため、支持部の先端を損傷しにくくことができる。また、基材とカバー部との隙間の間隔を、確保することができる。
【0025】
(2)前記支持部における最外縁と、前記カバー部における最外縁との距離は、前記隙間の間隔の4〜20倍である。
支持具における支持部とカバー部との距離が、隙間の間隔の4倍以上であると、隙間から侵入した原料ガスが、支持部と基材との接触点に到達しにくくすることができるので、支持部と基材との固着が起きにくくすることができる。また、支持部とカバー部との距離が、隙間の間隔の20倍以下であると、基材にセラミック被膜の形成されていない開口部を小さくすることができるので、基材を保護しやすくすることができる。
【0026】
(3)前記セラミック被膜は、SiCである。
セラミック被膜が、SiCであると以下のメリットがある。すなわち、SiCは、化学的に安定であるため、基材の消耗を防止することができる。また、SiCは、硬く、耐摩耗性のあるセラミック材料であるので、基材の摩耗、損傷を防止することができる。
【0027】
(4)前記基材あるいは前記基材の芯材は黒鉛で構成される。
黒鉛は、結晶に劈開面を有するので、基材あるいは基材の芯材が黒鉛で構成されると、容易に加工することができ、様々な形状のセラミック部材を得ることができる。基材の芯材が黒鉛であるとは、基材の大部分が黒鉛からなり、例えば黒鉛にセラミック被膜が形成されている場合を含む。
【0028】
(5)前記セラミック部材の製造方法は、前記基材に対する支持具の位置を変え複数回にわたって繰り返される。
本発明のセラミック部材の製造方法を、基材に対する支持具の位置を変えて複数回にわたって繰り返すことにより、基材の中心部の露出を防ぐことができる。例えば、基材が黒鉛である場合、1回目のセラミック被膜の形成では、支持部が当接する近傍は、黒鉛からなる基材が露出する。しかしながら、支持具の位置を変えて、セラミック被膜の形成された基材であるセラミック部材を新たな基材として、2回目のセラミック被膜の形成を行う
ことにより、露出した黒鉛の基材を2層目のセラミック被膜で覆い隠すことができる。
【0029】
本発明の支持具は、基材の表面にCVD法によりセラミック被膜を形成する際にセラミック部材を支持するための支持具であって、前記基材の前記表面に接触する支持部と、前記基材の前記表面に対して隙間を有するように前記支持部を囲むカバー部とからなる。
【0030】
本発明の支持具によれば、カバー部によって支持部へのCVDの原料ガスの侵入を防止することができ、支持部と基材とが形成されたセラミック被膜によって固着することを防止することができる。また、カバー部は、基材との間に隙間を有するように配置されるので、カバー部と基材とがセラミック被膜によって固着することを防止することができる。
このため、支持具に載置された基材をCVD後に、取り外す際に、セラミック被膜によって固着されていないので、支持点の周囲に有害なバリの発生、微少なクラックの発生を防止することができる。
【0031】
(第1実施形態)
第1実施形態のセラミック部材の製造方法および支持具30について説明する。第1実施形態のセラミック部材の製造方法では、支持具30を用いて基材20にセラミック被膜21を形成することによってセラミック部材10Aを製造する。
まず、
図1(A)に示すように、基材20を支持具30で支持する。支持具30の数は特に限定されない。基材20の重心を支持部32の先端の支持面322より下にできれば、支持具30は1個でも安定してCVD法によってセラミック被膜21(第1のセラミック被膜22、第2のセラミック被膜23)を形成することができる。また、後述する支持部32の面積が充分に大きく、支持部32の支持面322の上に基材20の重心が入るように配置することによって、CVD法によってセラミック被膜21を形成することができる。
ここでは、複数個(3個以上)の支持具30の上に基材20を略水平に載置する場合について説明する。
【0032】
基材20は、特に限定されない。たとえば、金属、セラミックなどどのようなものでも利用することができる。セラミックは耐熱性を有しているので適している。中でも、セラミックとしては、ALN、Al
2O
3、黒鉛、BN、SiO
2、Si
3N
4などが利用でき、なかでも黒鉛は、加工性に優れているので好適に利用できる。
基材20の形状は特に限定されない。基材20にセラミック被膜21を形成することによってセラミック部材10Aを製造するので、基材20は目的のセラミック部材10Aの形状に加工しておく。セラミック部材10Aは、用途に合わせて様々な形状に製造される。例えば、円盤、リング、筒、板、箱などどのようなものでもよく特に限定されない。
【0033】
図2(A)および
図2(B)に示すように、支持具30は、例えば円柱形状の支持具本体31を有しており、本体上面311の中央に、基材20の表面201に接触する支持部32を有する。支持部32は全体円錐台形状を呈しており、側面321と、支持面322を有する。支持面322は、ある程度の面積を有する平面状になっているが、先端が尖る形状(円錐形状)とすることも可能である。
本体上面311の外周部に沿って、カバー部33が上方に突出して設けられている。カバー部33は、支持部32を同心円状に囲むように形成することができ、上面331が平面状になっている。カバー部33の高さは、支持部32の高さよりも低い。
【0034】
すなわち、
図2(B)に示すように、支持部32は、カバー部33の上面331よりも上方に突出しており、支持部32の支持面322が基材20を支持した際に、基材20とカバー部33との間に、隙間Sが形成される。
また、支持部32における最外縁323と、カバー部33における最外縁332との距離Lは、隙間Sの間隔(S)の4〜20倍である。
【0035】
支持具30は、支持具本体31、支持部32およびカバー部33が一体的に形成される。例えば、支持具本体31、支持部32およびカバー部33を削り出しや金型により一体成形で形成することができる。また、支持具本体31、支持部32およびカバー部33を接着剤等で接着して一体化することもできる。あるいは、支持具本体31とカバー部33が一体成形されたものに、支持部32を接着して形成することもできる。
なお、
図3(A)および
図3(B)に示すように、カバー部33の先端を尖った形状とした支持具30Aを採用することも可能である。また、
図3(C)および
図3(D)に示すように、支持具本体31を四角柱状に形成して、カバー部33を四角形に形成した支持具30Bを採用することも可能である。いずれの場合にも、支持部32の形状や、支持部32がカバー部33よりも上方に突出していることは同様である。
【0036】
図1(B)に示すように、支持具30により支持された基材20の表面に、CVD法により第1のセラミック被膜22(セラミック被膜21)を形成する。このとき、支持具30のカバー部33が、被膜の原料ガスのカバー部33の内側への流入を制限し、カバー部33と基材20との間の隙間Sから僅かの原料ガスのみが流入する。
その結果、第1のセラミック被膜22は、支持具30のカバー部33の上面331が対向する位置において、支持部32側に向かって基材20側に傾斜する傾斜部221が形成される。そして、傾斜部221の内側には、第1のセラミック被膜22が形成されない開口部222が形成される。
なお、カバー部33と支持部32とを平面視同心円状とすることにより、原料ガスが到達する距離に偏りが小さく、基材20と固着することを方向によらず、等しく防止することができる。
【0037】
なお、セラミック被膜21(第1のセラミック被膜22および後述する第2のセラミック被膜23)は、特に限定されない。例えば、SiC、TaC、TiNなどが利用できる。SiCは加工性に優れた黒鉛と熱膨張係数も同等であるので剥離しにくく、黒鉛よりも硬く、耐蝕性を有しているので、黒鉛の基材と組み合わせて使用することが望ましい。
【0038】
続いて、
図1(C)に示すように、基材20における支持具30により支持される部位を変更して再び支持具30に載置して、CVD法により第2のセラミック被膜23(セラミック被膜21)を形成する。ここでは、例えば基材20の上下面を反転させて支持具30に載置した場合が示されている。この他、上下面はそのままで基材20を回転させ、下面における支持具30による支持部位を変えることもできる。
【0039】
次に、以上のようにして製造されたセラミック部材10Aについて説明する。セラミック部材10Aは、2回にわたってCVDが行われ、2つのセラミック被膜21(第1のセラミック被膜22、第2のセラミック被膜23)を有している。
図1(C)において製造されたセラミック部材10Aは、基材20が第1のセラミック被膜22および第2のセラミック被膜23により覆われている。
ここで、1回目のCVDにおいて、基材20が、本発明の「基材」に相当し、第1のセラミック被膜22は、本発明の「セラミック被膜」に相当する。2回目(最後)のCVDにおいて、基材20と第1のセラミック被膜22とが、本発明の「基材」に相当し、第2のセラミック被膜23は、本発明の「セラミック被膜」に相当する。なお、1回目の2回目のCVDにおいて、基材に対する支持具の位置は変えられており、基材20は、第1のセラミック被膜及び/または第2のセラミック被膜で覆われている。
【0040】
第1のセラミック被膜22には、第1のセラミック被膜22を形成する際に支持した支
持具30により、傾斜部221および開口部222よりなる支持領域220が形成されている(
図1(B)参照)。
第1のセラミック被膜22を形成する際に生じた開口部222および傾斜部221は、
図1(C)に示すように2回目(最後)のCVDにより第2のセラミック被膜23で覆われる。すなわち、1回目のCVDにより形成された開口部222および傾斜部221は、2回目(最後)のCVDにより開口部であった部分222’および傾斜部であった部分221’となり、支持領域220は第2のセラミック被膜23で覆われて支持領域であった部分220’となる。
【0041】
また、
図4(A)および
図4(B)にも示すように、2回目のCVDにおいて第2のセラミック被膜23を形成する際に支持具30で支持された部位には、第2のセラミック被膜23が形成されずに第1のセラミック被膜22が露出する開口部222を有する。開口部222の周囲には、第2のセラミック被膜23の表面から第1のセラミック被膜22との界面232まで漸次膜厚が薄くなる傾斜部221が形成される。なお、開口部222と、傾斜部221とは支持領域220を構成する。
開口部221の面積は、支持領域220の面積の10%〜60%である。なお、開口部221および支持領域220は、支持具30のカバー部33が円形である場合でも、作業の状態によって必ずしも円形とはならず、偏心したり、楕円形等に変形する場合もある。
【0042】
次に、第1実施形態のセラミック部材の製造方法の作用、効果について説明する。
第1実施形態のセラミック部材の製造方法によれば、支持具30を用いて基材20を支持し、この状態でCVD法により基材20の表面にセラミック被膜21を形成する。このとき、支持具30は、基材20の表面201に接触する支持部32と、基材20の表面201に対して隙間Sを有するように支持部32を囲むカバー部33とを有する。
【0043】
このため、カバー部33によって支持部32へのCVDの原料ガスの侵入を防止することができ、支持部32と基材20とが形成されたセラミック被膜21によって固着することを防止することができる。また、カバー部33は、基材20との間に隙間Sを有するように配置されるので、カバー部33と基材20とがセラミック被膜21によって固着することを防止することができる。
このため、支持具30に載置された基材20をCVD後に、取り外す際に、セラミック被膜21によって固着することがなく、支持点の周囲に有害なバリの発生、微少なクラックの発生を防止することができる。
【0044】
第1実施形態のセラミック部材の製造方法によれば、支持具30は支持部32とカバー部33とが一体的に構成されているので、基材20を支持具30に載置する際に、基材20を傾けて載置しようとすると、基材20はカバー部33から先に接触する。例えば基材20が平面である場合、複数(例えば3点)の支持部32の先端が形成する載置面と、基材20とが平行となった時にはじめて支持部32が基材20と接触できるようになる。
このため、支持部32の先端を損傷しにくくことができる。また、基材20とカバー部33との隙間Sの間隔を、確保することができる。
【0045】
第1実施形態のセラミック部材の製造方法によれば、支持具30における支持部32の最外縁323とカバー部33の最外縁332との距離Lが、隙間Sの間隔の4倍以上であると、隙間Sから侵入した原料ガスが、支持部32と基材20との接触点に到達しにくくすることができる。このため、支持部32と基材20との固着が起きにくくすることができる。
また、支持部32の最外縁323とカバー部33の最外縁332との距離Lが、隙間Sの間隔の20倍以下であると、基材20にセラミック被膜21の形成されていない開口部222を小さく、すなわち、セラミック被膜21に覆われる面積を大きくすることができ
るので、基材20を保護しやすくすることができる。
【0046】
第1実施形態のセラミック部材の製造方法によれば、セラミック被膜21が、SiCであると以下のメリットがある。すなわち、SiCは、化学的に安定であるため、基材20の消耗を防止することができる。また、SiCは、硬く、耐摩耗性のあるセラミック材料であるので、基材20の摩耗、損傷を防止することができる。
【0047】
第1実施形態のセラミック部材の製造方法によれば、1回目のCVDにおいて、基材20は黒鉛で構成される。黒鉛は、結晶に劈開面を有するので、基材20の中心部が黒鉛で構成されると、容易に加工することができ、様々な形状のセラミック部材10Aを得ることができる。また、2回目のCVDにおいては、セラミック被膜21(第1のセラミック被膜22)に覆われた黒鉛を芯材とする基材が用いられる。黒鉛が芯材であるので、同様に容易に加工することができ、様々な形状のセラミック部材10Aを得ることができる。
【0048】
第1実施形態のセラミック部材の製造方法によれば、基材20に対する支持具30の位置を変えて複数回にわたって繰り返すことにより、基材20の中心部の露出を防ぐことができる。例えば、基材20が黒鉛である場合、1回目のセラミック被膜21(第1のセラミック被膜22)の形成では、支持部32が当接する近傍は、黒鉛からなる基材20が露出する。しかしながら、支持具30の位置を変えて、セラミック被膜21の形成された基材20であるセラミック部材10Aを、新たな基材20として2回目のセラミック被膜21(第2のセラミック被膜23)の形成を行う。これにより、露出した黒鉛の基材20を2層目のセラミック被膜21(第2のセラミック被膜23)で覆い隠すことができる。
【実施例】
【0049】
以下、第1実施形態に係る実施例1〜3および比較例について、説明する。実施例1〜3および比較例においては、セラミック部材10Aを製造する際の支持具30における支持部32は同一であり、カバー部33がそれぞれ異なっている。実施例1〜3は、それぞれ異なる直径のカバー部33を有し、比較例ではカバー部33を有していない。
実施例1〜3では、表面にセラミック被膜21(第1のセラミック被膜22)が形成された黒鉛を基材20として用い、その上にさらにセラミック被膜21(第2のセラミック被膜23)を形成する。実施例1〜3では、第2のセラミック被膜23の形成に関して説明するが、基材20を黒鉛のみとすれば、第1のセラミック被膜22の形成においても第1実施形態の製造方法が適用できる。
【0050】
<実施例1〜3>
黒鉛にセラミック被膜21(第1のセラミック被膜22)を有する基材20を、3個の支持具30に載置し、CVD炉でMTS(メチルトリクロロシラン)を原料ガスとして使用し、SiCからなるセラミック被膜21を形成した。支持部32の先端の平坦部と、カバー部33と、隙間との関係、セラミック被膜を形成した際の固着、切り離しの状況、クラック、バリの有無を表1に示す。
また、用いた支持具30の形状について以下に説明する。
支持部32の先端に円形の平坦部(支持面322)を有し、リング状のカバー部33を有する支持具30を使用した。カバー部33は、先端が尖った回転体(
図3(A)参照)である。
黒鉛にセラミック被膜21(第1のセラミック被膜22)を有する基材20には、第1のセラミック被膜22の形成時に支持部32に形成された支持領域220を有し支持領域220の中心には開口部222を有している。
【0051】
<比較例>
実施例1〜3と同様な支持部32のみからなり、カバー部を有していない支持具を用い
、同様にセラミック部材10Aを形成した。
以下に、実施例1〜3および比較例の測定結果を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
以上の結果から、カバー部33を設けた実施例1〜3では切り離しが容易で著しいクラ
ック、バリが無く本発明の効果が見られた。特に、実施例1および実施例2ではさらに固着は確認されず、クラック、バリの発生はなくさらに望ましいことがわかる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のセラミック部材の製造方法および支持具について、図を用いながら説明する。
なお、前述した第1実施形態のセラミック部材の製造方法および支持具30と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、
図6に示すように、第2実施形態のセラミック部材の製造方法では、基材20を立てかけた状態で第1のセラミック被膜22および第2のセラミック被膜23を形成する。
【0055】
図5(A)および
図6に示すように、基材20を縦にして、下端部を支持具40で支持するとともに、基材20の上端部を支持具30で支持する。
支持具30は、第1実施形態で用いたものと同じものである。支持具40は、支持具30と同様の構成をしており、支持具本体41、支持部42およびカバー部43を有する。カバー部43は、支持部42を囲んで基材の外表面から隙間Sを有するように備えられる。このようにカバー部が備えられることによって、CVD後に、カバー部43の先端が当接する基材20の表面には、基材20の側面及び2つの底面に及ぶ開口部422および傾斜部421からなる支持領域420が形成される。
【0056】
図5(B)に示すように、第1のセラミック被膜22の形成時には、支持具30で支持された部位には、第1実施形態で説明したものと同様に開口部222および傾斜部221からなる支持領域220が形成される。
また、支持具40で支持された部位には、カバー部43で覆われた面に、開口部422および傾斜部421よりなる支持領域420が形成される。
【0057】
図5(C)に示すように、第2のセラミック被膜23の形成時には、支持具30で支持する位置が変わるように、基材20を反転あるいは回転させる。支持具30で支持された部位には、第1実施形態で説明したものと同様に開口部222および傾斜部221よりなる支持領域220が形成される。
また、支持具40で支持された部位には、カバー部43で覆われた面に、開口部421および傾斜部421よりなる支持領域420が形成される。第2のセラミック被膜23の形成によって、第1のセラミック被膜22の形成における開口部222、422、傾斜部221、421はそれぞれ第2のセラミック被膜23によって覆われ、開口部であった部分222’、422’、傾斜部であった部分221’、421’となる。
【0058】
このようなセラミック部材の製造方法で製造されたセラミック部材10Bでは、第1実施形態のセラミック部材の製造方法で製造したセラミック部材10Aと同様の作用、効果を得ることができる。
【0059】
本発明のセラミック部材の製造方法およびセラミック部材10A、10Bは、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、上述したセラミック部材の製造方法においては、基材20に対する支持具30の位置を変えて、2回にわたってセラミック被膜21を形成した。この他、基材20に対する支持具30、40の位置を変えて、複数回(3回以上)にわたってセラミック被膜21を形成することにより、セラミック部材10A、10Bを製造することができる。この場合には、回数に応じた数のセラミック被膜層ができる。
【0060】
また、前述した各実施形態においては、支持具30の支持部32とカバー部33を一体
で形成した場合を例示した。この他、例えば、カバー部33を別の部材で形成することも可能である。この場合には、支持部32の上に基材20を載置した後に、カバー部33を取り付ける支持具が利用できる。