(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ねじ部を成形する前の中間成形体のねじ部成形予定部にねじ部を形成するための右ねじ状凸部を外周に有する中子と、該右ねじ状凸部と対応する左ねじ状凸部を外周に有する外子とを備えるねじ成形ツールを用いて、前記ねじ部成形予定部に前記ねじ部を形成するねじ部形成工程を有し、
該ねじ部形成工程は、
前記中子及び前記外子の円周方向の向きが所定の開始位置に配置され、前記中子と前記外子との間に前記ねじ部成形予定部が挿入された状態で、前記中子と前記外子の互いの間隔を狭める方向に該中子と該外子とを移動させるねじ部成形開始作業と、
前記中子と前記外子とによって前記ねじ部成形予定部を挟み込み、その挟み込み状態で前記中子と前記外子とを転動させながら、前記中間成形体の軸線回りに回転させることにより、前記ねじ部成形予定部に前記ねじ部を形成するねじ部成形作業と、
前記ねじ部を形成した後に、前記中子と前記外子とを互いの間隔を広げる方向に移動するとともに、前記中子と前記外子の円周方向の向きが前記開始位置からずれている場合にこれらを前記開始位置に復帰させるねじ部成形終了作業とを有することを特徴とするねじ付きボトル缶の製造方法。
ねじ部を成形する前の中間成形体のねじ部成形予定部にねじ部を形成するための右ねじ状凸部を外周に有する中子と、該右ねじ状凸部と対応する左ねじ状凸部を外周に有する外子とを備えるねじ部形成機構を有し、
前記ねじ部形成機構は、前記中子と前記外子とが、前記ねじ部成形予定部を挟み込みながら前記中間成形体の軸心回りに回転することにより、前記ねじ部成形予定部の外周に対して前記ねじ部を成形する機構であって、
前記中子と前記外子の円周方向の向きが所定の開始位置からずれている場合に、前記ねじ部の形成開始前に、前記中子と前記外子の向きを前記開始位置に復帰させる開始位置復帰手段を備えることを特徴とするねじ付きボトル缶の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の方法により、ねじ部の寸法安定性の改善が図られたものの、まだ不十分であり、依然として寸法のばらつきが生じている。このため、再度のシール操作時のトルクが高くなる不具合が生じており、さらなる改善が求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ねじ部の寸法安定性が良く、再度のシール操作性も向上させたねじ付きボトル缶の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ボトル缶のねじ部は、中子と外子との間にねじ成形加工前の中間成形体のねじ部成形予定部(筒状部)を挟み込み、これら中子と外子とを缶の軸心回りに回転させながら転動させることにより形成することから、ねじ部成形予定部の全周に隙間を残すことなく確実にねじ部が成形されるように、ねじ部の一部をオーバーラップさせて一周以上加工が行われる。このため、ねじ部の成形を繰り返す度に、中子と外子の円周方向の成形終了位置及び成形開始位置(中子と外子の向き)が円周方向に徐々にずれていくことになり、その結果、ねじ部のオーバーラップ形成位置(二回加工位置)がボトル缶毎に異なって形成される。また、ねじ部の成形開始位置の違いによって、成形中に中子及び外子とねじ部成形予定部の素材とがスリップを引き起こすことがあり、この場合には、一回目の成形とオーバーラップして成形が行われる二回目の成形との間にずれが生じることで、ねじ部が歪んで成形されることがある。そして、ねじ部に歪みが生じると、開栓したねじ付きボトル缶を再度シールする際のトルクが大きくなり、消費者において、完全に閉栓されていない状態にもかかわらず閉栓されたと勘違いを起こすことにより、内容物の液漏れを生じさせるおそれがあった。
このように、本発明者は、ねじ部のオーバーラップ形成位置がボトル缶毎に円周方向にずれて形成されることで、ねじ部の円周方向の寸法に、ばらつきを生じさせていることに鑑み、以下の解決方法とした。
【0010】
本発明のねじ付きボトル缶の製造方法は、ねじ部を成形する前の中間成形体のねじ部成形予定部にねじ部を形成するための右ねじ状凸部を外周に有する中子と、該右ねじ状凸部と対応する左ねじ状凸部を外周に有する外子とを備えるねじ成形ツールを用いて、前記ねじ部成形予定部に前記ねじ部を形成するねじ部形成工程を有し、該ねじ部形成工程は、前記中子及び前記外子の円周方向の向きが所定の開始位置に配置され、前記中子と前記外子との間に前記ねじ部成形予定部が挿入された状態で、前記中子と前記外子の互いの間隔を狭める方向に該中子と該外子とを移動させるねじ部成形開始作業と、前記中子と前記外子とによって前記ねじ部成形予定部を挟み込み、その挟み込み状態で前記中子と前記外子とを転動させながら、前記中間成形体の軸線回りに回転させることにより、前記ねじ部成形予定部に前記ねじ部を形成するねじ部成形作業と、前記ねじ部を形成した後に、前記中子と前記外子とを互いの間隔を広げる方向に移動するとともに、前記中子と前記外子の円周方向の向き
が前記開始位置からずれている場合にこれらを前記開始位置に復帰させるねじ部成形終了作業とを有することを特徴とする。
【0011】
ねじ部成形終了作業時において、中子と外子の向きを所定の開始位置に復帰させておき、ねじ部の形成を開始する前に、中子と外子の向きを所定の開始位置に配置するので、ねじ部の成形を常に所定の開始位置から開始することができる。すなわち、異なる中間成形体についてねじ部の成形を繰り返す度に、中子及び外子の向きを復帰させて所定の開始位置で揃えられた状態でねじ部の成形が開始される。このため、それぞれの中間成形体のねじ部の成形開始位置がずれることがないので、異なる中間成形体において、ねじ部のオーバーラップ形成位置を円周方向の同じ位置に形成することができる。したがって、中間成形体の個体ごとに円周方向の寸法のばらつきを生じさせることなく、ねじ部を形成することができるので、ねじ部の寸法安定性を図ることができる。また、ねじ部の成形を円周方向の所定の開始位置から開始することで、一定の再現性のもとに成形を行うことができるので、ねじ歪みのばらつきを低減することができ、再度のシール操作性を向上させることができる。
【0012】
本発明のねじ付きボトル缶の製造装置は、ねじ部を成形する前の中間成形体のねじ部成
形予定部にねじ部を形成するための右ねじ状凸部を外周に有する中子と、該右ねじ状凸部と対応する左ねじ状凸部を外周に有する外子とを備えるねじ部形成機構を有し、前記ねじ部形成機構は、前記中子と前記外子とが、前記ねじ部成形予定部を挟み込みながら前記中間成形体の軸心回りに回転することにより、前記ねじ部成形予定部の外周に対して前記ねじ部を成形する機構であって、前記中子と前記外子の円周方向の向き
が所定の開始位置からずれている場合に、前記ねじ部の形成開始前に、
前記中子と前記外子の向きを前記開始位置に
復帰させる開始位置復帰手段を備えることを特徴とする。
【0013】
中子と外子の向きを所定の開始位置に配置し、ねじ部の成形を円周方向の所定の開始位置から開始することで、異なる中間成形体の個体ごとに円周方向の寸法のばらつきを生じさせることなく、ねじ部を形成することができる。したがって、一定の再現性のもとに成形を行うことができるので、ねじ部の寸法安定性を図ることができるとともに、ねじ歪みのばらつきを低減することができ、再度のシール操作性を向上させることができる。
【0014】
本発明のねじ付きボトル缶の製造装置において、前記外子と同時に前記中間成形体の軸心回りに回転する支持部材を備え、前記開始位置復帰手段は、前記外子に取り付けられた内側磁石と、前記支持部材に取り付けられて前記開始位置において該内側磁石と引き合う磁極を対向させた外側磁石とを有する磁石機構により構成されるとよい。
内側磁石と外側磁石との引き合いと反発を利用し、開始位置からずれた位置にある外子を開始位置に復帰させるとともに、中子も開始位置に復帰させることができる。
【0015】
本発明のねじ付きボトル缶の製造装置において、前記外子と同時に前記中間成形体の軸心回りに回転する支持部材を備え、前記開始位置復帰手段は、前記外子と前記支持部材とを接続する伸縮ばねにより構成されるとよい。
伸縮ばねの復元力を利用して、開始位置からずれた向きで配置された外子を開始位置に復帰させることができ、それに伴って中子も開始位置に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、個々のねじ付きボトル缶のねじ部の寸法の安定化を図ることができるので、再度のシール操作を容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
ボトル缶1は、アルミニウム又はアルミニウム合金の薄板金属からなり、有底円筒状の胴部2に、
図1に示すように、上方に向けて漸次縮径する肩部3と、この肩部3の上端から上方に延びる筒状小径の首部4と、この首部4の上端に口金部5とが形成されている。口金部5は、外周に形成されたねじ部6と、ねじ部6より下方に形成されキャップのスカート端部を固定する顎部7と、ねじ部6より上方に形成されたカール部8とを有する。
【0019】
このボトル缶1を製造するには、まず、アルミニウム板材を打ち抜いて絞り加工することにより、
図2(a)に示すように比較的大径で浅いカップ10を成形した後、このカップ10に再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて、
図2(b)に示すように所定高さの筒体11を成形し、その上端をトリミングにより切り揃える。このDI加工により、筒体11の底部は最終のボトル缶1としての底部形状に成形される。
【0020】
次いで、
図4及び
図5に示すねじ付きボトル缶の製造装置20(以下、単にボトル缶製造装置と称す。)により、ボトル缶1を製造する。このボトル缶製造装置20について次に説明する。なお、このボトル缶製造装置20は、前述のようにして形成した筒体11を最終形状のボトル缶1に加工するためのものであり、加工の進捗に応じて缶の形状が変化していくが、以下では、この筒体11からボトル缶1に至るまでの間で缶の形状を特に限定しない場合は、中間成形体19として説明する。
【0021】
このボトル缶製造装置20は、複数の中間成形体19を保持するワーク保持部30と、これら中間成形体19に各種成形加工を施す複数の成形ツール42を保持するツール保持部40と、両保持部30、40を駆動する駆動部22とを備えている。中間成形体19を保持するワーク保持部30のワーク保持側と、成形ツール42を保持するツール保持部40のツール保持側とが対向して配置されている。
【0022】
ワーク保持部30は、支持軸21に支持された円盤31におけるツール保持部40と対向する表面に、中間成形体19を保持する複数の保持装置32が周方向に沿う環状に配列された構成とされている。この円盤31が駆動部22によって支持軸21を中心として間欠的に回転されることにより、供給部33から供給側スターホイール34を介して供給された中間成形体19が保持装置32に1個ずつ保持されて円盤31の周方向に搬送される。中間成形体19は、円盤31による搬送中にツール保持部40の各成形ツール42によって成形された後、成形後のボトル缶1として排出側スターホイール35を介して排出部36に順次排出される。
【0023】
ここで、保持装置32は、中間成形体19の底面に当接するパッド部37と、底部の外周面を保持可能なエアチャック等を有するリング部38とを備えており(
図6参照)、中間成形体19の底部から胴部の缶軸方向下部にかけた部分を把持して、中間成形体19を保持する。なお、
図4では、円盤31の全周に設けられた複数の保持装置32の一部を図示し、残りの保持装置32の図示を省略している。
また、中間成形体19は、供給部33にはDI成形により形成された筒体11が供給されるが、加工により順次変形され、排出部36では最終形状のボトル缶1となる。
【0024】
ツール保持部40は、支持軸23に支持された円盤41におけるワーク保持部30と対向する表面に、複数の各種成形ツール42が周方向に沿う環状に配列され、駆動部22によって円盤41が支持軸23の軸方向に進退する構成とされている。支持軸23は支持軸21の内部に同軸上に設けられる。
【0025】
このツール保持部40には、中間成形体19の開口部を縮径(ネックイン加工)するための複数の肩部ネッキング型や、縮径された開口部を一部拡径した後縮径して後述の筒状部18を形成する成形型、この筒状部18の上方にテーパ部17及び開口端部16を形成する口部ネッキング型、ねじ部6を形成するためのねじ成形ツール、カール部8を形成するためのカール部成形ツール等の、各加工段階に応じた加工を行うための成形ツール42が複数備えられている。これらの成形ツール42は、工程順に円盤41上に周方向に並んで環状に配置されている。
【0026】
支持軸21の軸線を回転中心とするワーク保持部30(円盤31)の間欠的な回転停止位置は、開口部をツール保持部40側に向けた各中間成形体19の缶軸が各成形ツール42の中心軸にそれぞれ一致するように設定される。そして、駆動部22による円盤31の間欠的回転によって、各中間成形体19は次工程用の各成形ツール42に対向する位置に回転移動されて、次の段階の加工が施される。
【0027】
すなわち、ツール保持部40が前進してワーク保持部30とツール保持部40とが互いに接近したときに、各成形ツール42が各工程に応じた加工を中間成形体19に施し、両保持部30、40が互いに離間した状態のときに各中間成形体19に次工程の成形ツール42が対向するようにワーク保持部30が回転移動される。このように、両保持部30、40が接近して加工を行い、離間及び回転するという動作が繰り返されることにより、中間成形体19に肩部3、ねじ部6等が形成されてボトル缶1が形成される。
【0028】
これら各成形ツール42は、ツール保持部40がワーク保持部30に向けて
図4の左方向に前進した際に、ワーク保持部30に保持された各中間成形体19に対して各別に加工を施す。以下では、これら成形ツールについて、特定のツールを限定しない場合は、符号42を用いて説明する。
【0029】
次に、このボトル缶製造装置20の細部構成を説明しながら、ボトル缶1を製造する方法について工程順に説明する。
アルミニウム合金等の薄板の絞り加工及びしごき加工(DI成形)により
図2(b)に示す状態まで形成した筒体11の上部を
図2(c)に示すように縮径して小径部12を形成した後、
図3に示すように小径部12に縮径及び拡径加工を施してねじ加工する前の中間成形体19を製造する。
【0030】
具体的には、まず、ツール保持部40の周方向に並ぶ複数の成形ツール42を順次使用しながらダイネッキング加工により筒体11の開口部を徐々に縮径して、
図2(c)に示すように、肩部3及び肩部3から上方に延びる筒状の小径部12を成形し、段付き成形体13を形成する。この肩部3及び小径部12を形成するために用いられる成形ツール42は、加工前後の径が異なるだけで基本構成は同じものが複数備えられており、隣の成形ツール42に中間成形体19を移送しながら順次加工する。この肩部3及び小径部12を形成するための一連の成形ツール42を、肩部ネッキング型と称す。
【0031】
次に、この小径部12について、拡径加工と縮径加工を繰り返して、
図3に示すように、上端に向かって縮径した開口端部16と、これに連なるテーパ部17とが形成された中間成形体19を形成する。そして、この開口端部16とテーパ部17の加工により、その下方で加工されなかった部分が筒状部18となる。なお、この筒状部18の厚さは0.25〜0.4mmに形成される。
【0032】
なお、この筒状部18の先端側にテーパ部17と縮径した開口端部16とを成形する成形ツールを口部ネッキング型と称している。また、前述の肩部ネッキング型等の種々の成形ツール42及びこれらを駆動する駆動部22により、缶上部形成機構が構成される。
【0033】
この一連の製造工程において、中間成形体19は、
図3にも示したように、カール部8を成形するために必要な上端からの寸法分を有するストレート状に形成された開口端部16と、その開口端部16の下端から下方に向けて漸次拡径するテーパ部17と、このテーパ部17の下端に形成された筒状部18とを有している。この筒状部18はストレートの円筒状に形成され、筒状部18の下端部には筒状部18よりも外径の大きい顎部7が設けられている。その顎部7の下端に、縮径された首部4、首部4の下端から拡径する肩部3が連続して形成されている。
【0034】
中間成形体19において、開口端部16の外径D1は、成形すべきねじ部6のねじ谷径D2よりも小さく設定される。また、筒状部18の外径D3は、ねじ山径D4と谷径D2との中間の径に設定される。例えば、ねじ山径D4が37mmで、ねじ谷径D2が36.3mmで、ねじの一段目と二段目の間隔が2.5mm〜4.5mmである場合、筒状部18の外径D3は36.5mm〜36.8mmに設定される。筒状部18と開口端部16との間を連絡するテーパ部17は、缶軸方向に対して10°〜30°の傾斜角θで、缶軸方向に沿う長さHが2.0〜6.0mmに設定される。
【0035】
次に、
図6〜
図8に示すねじ成形ツールを用いてねじ部6を成形する。
ねじ部6を成形するねじ成形ツール42Cは、円盤41に取り付けられた第1ハウジング61と、第1ハウジング61に対して
図6の矢印Bで示すように進退自在に取り付けられた第2ハウジング62とを有する。このねじ成形ツール42Cは、全体が駆動部22によって回転軸心51を中心として矢印Cで示すように回転駆動される。
【0036】
第2ハウジング62は、図示しない付勢部材によって第1ハウジング61に対して先端側(
図6の下方)に付勢保持されており、その内側に中間成形体19の筒状部18の内周面に当接される中子64Aと外周面に当接される外子64Bとを備えている。
【0037】
中子64Aは、
図9に示すように、略円柱状の先端部外周面に、右ねじ状のねじ部6を形成するための右ねじ状の凹凸形状(ねじ形成用凸部91及びねじ形成用凹部93)を有し、軸65(軸線65a)を中心として回転自在に支持されている。
【0038】
外子64Bは、
図10に示すように、略円柱状の先端部外周面に、右ねじ状のねじ部6を形成するための左ねじ状の凹凸形状(ねじ形成用凸部92及びねじ形成用凹部94)を有し、軸66(軸線66a)を中心として回転自在に支持されている。
なお、これら中子64A及び外子64Bの外周面に形成されたねじ形成用凸部91,92及びねじ形成用凹部93,94は、螺旋状に、かつ互いに対応する形状でそれぞれに形成されている。
【0039】
中子64Aの軸65は、ギアボックスを兼ねたブロック体67に回転自在に収容される。ブロック体67は、第2ハウジング62内を、支持軸69を中心に軸65と直交する方向に揺動自在に支持されている。外子64Bの軸66は、ギアボックスを兼ねたブロック体68に回転自在に収容される。ブロック体68は、第2ハウジング62内を、支持軸70を中心に軸66と直交する方向に揺動自在に支持されている。
【0040】
ブロック体67の支持軸69にはギヤ71が設けられ、ブロック体68の支持軸70にはギヤ72が設けられている。ギヤ71とギヤ72とは、相互に噛み合っている。また、中子64Aの軸65にはギヤ73が設けられているとともに、外子64Bの軸66にもギヤ74が設けられおり、これらギヤ71〜74が順次噛み合っている。
【0041】
具体的には、中子64Aのギヤ73、この中子64Aを収容するブロック体67内のギヤ71、他方のブロック体68内のギヤ72、そのブロック体68に収容されている外子64Bのギヤ74の順にギヤが噛み合っている。これにより、中子64Aと外子64Bとが同期して回転する。そして、両ブロック体67,68の各ギヤ71,72の噛み合い状態が維持されたまま、ブロック体67,68が、それぞれの支持軸69,70を中心に軸65,66と直交する方向に揺動できる。
【0042】
なお、中子64Aと外子64Bとの同期した回転は、例えば、外子64Bの1回転に対して中子64Aが1回転、あるいは2回転、3回転というように、外子64Bの回転数に対して中子64Aの回転数が整数倍に設定される。
【0043】
また、これら中子64A及び外子64Bは、
図8に矢印で示したように、このねじ成形ツール42Cの下端側から見て、中子64Aは反時計回り(左回り)、外子64Bは時計回り(右回り)にそれぞれ回転しながら、中子64A及び外子64Bを有するねじ成形ツール42Cが第2ハウジング62により回転軸心51を中心に時計回り(右回り)に公転する。換言すると、中間成形体19の開口端から底部に向かう方向に見て、中子64Aは右回りに自転、外子64Bは左回りに自転、中子64A及び外子64Bを含むねじ成形ツール42Cが回転軸心51回りに左回りに公転する。
これら各ギヤ71〜74により、ねじツール回転機構が構成される。
【0044】
また、中子64Aを支持しているブロック体67には補助ブロック体81が軸82により連結されている。この補助ブロック体81は、第2ハウジング62内に、中子64Aの軸65及び外子64Bの軸66と直交する方向に移動自在に支持されている。この補助ブロック体81の外側部に、カムローラ83が第2ハウジング62の進退方向と直交する軸85により回転自在に支持されている。また、外子64Bを支持しているブロック体68の外側部に、カムローラ84が第2ハウジング62の進退方向と直交する軸85により回転自在に支持されている。
【0045】
これらカムローラ83,84は、それぞれ第1ハウジング61内面のカム面86,87に接触している。カムローラ83,84は、駆動部22による第1ハウジング61と第2ハウジング62との相対位置の変化に応じて、第2ハウジング62の径方向に移動する。これらカムローラ83,84が第1ハウジング61内面のカム面86,87によって
図7の矢印で示すように第2ハウジング62の内方に押込まれたときに、中子64Aと外子64Bとが接近して互いの外周面の凹凸間に中間成形体19の筒状部18の壁を挟み込み変形させることができる。
【0046】
これらカムローラ83,84、第1ハウジング61のカム面86,87、駆動部22により、ねじツール挟持機構が構成される。そして、前述したねじツール回転機構及びこのねじツール挟持機構により、ねじ部形成機構が構成される。
【0047】
また、第2ハウジング62の先端には、カバー部材63(本発明でいう、支持部材)を介して中間成形体19の胴部2に沿う円筒面88aを有するリング部材88が回転自在に設けられる。そして、リング部材88には、弾性部材39が取り付けられており、中間成形体19に対してねじ成形ツール42Cが前進した際に、リング部材88が弾性部材39を介して中間成形体19に押し付けられるようになっている。
【0048】
一方、ワーク保持部30側には、ストッパ部材89が設けられる。中間成形体19に対してツール保持部40(ねじ成形ツール42C)が前進した際に、このストッパ部材89にリング部材88が当接することにより、第2ハウジング62の最前進位置が中間成形体19に対して一定になる。また、第2ハウジング62が回転軸心51回りに回転すると、カバー部材63は第2ハウジング62と一体となって回転するが、カバー部材63に回転自在に設けられたリング部材88は、ストッパ部材89に当接して中間成形体19を静止状態に保持する。
【0049】
また、ねじ成形ツール42Cには、中子64Aと外子64Bの円周方向の向きを、中間成形体19へのねじ部6の形成開始前に、所定の開始位置に配置する開始位置復帰手段45が備えられる。
この開始位置復帰手段45は、
図6に示すように、外子64Bの軸66の外周面に取り付けられた内側磁石46Aと、軸66を挿通するカバー部材63の挿通穴の内周面に取り付けられた外側磁石46Bとを有する磁石機構により構成される。この内側磁石46Aと外側磁石46Bとは、中子64Aと外子64Bとによりねじ部6の成形を開始する所定の開始位置(中子64Aと外子64Bとで筒状部18を挟み込む最初の位置)において、
図8及び
図12に示すように、互いに引き合う磁極を対向させた向きに配置される。具体的には、
図13(b)に示すように、中子64Aと外子64Bとを開始位置に配置した状態では、これら中子64A及び外子64Bの向きは、内側磁石46AのN極(正極)と外側磁石46BのS極(負極)とが対向した配置とされる。
【0050】
なお、内側磁石46Aと外側磁石46Bとの間で引き合い及び反発する磁力は、中子64Aと外子64Bとで筒状部18を挟持してねじ部6を成形する際の摩擦力よりも十分に小さい。このため、ねじ部6の成形時において、内側磁石46Aと外側磁石46Bとの磁力の影響を受けることなく、中子64A及び外子64Bを円滑に回転させることができる。
【0051】
一方、ねじ部6の成形後において、中子64Aと外子64Bとを互いの間隔を広げる方向に揺動して、これら中子64A及び外子64Bと筒状部18との接触が解かれると、中子64A及び外子64Bと筒状部18との摩擦力による抵抗がなくなるので、内側磁石46Aと外側磁石46Bとが反発又は引き合う磁力によって、内側磁石46AのN極と外側磁石36BのS極とが対向する配置(開始位置)まで、外子64Bが軸66(軸線66a)回りに回転する。この際、外子64Bと中子64Aとは、ギヤ71〜74によって回転が同期されていることから、外子64Bの回転とともに中子64Aも軸65周りに回転して、外子64B及び中子64Bの向きが、所定の開始位置まで復帰する。これにより、開始位置の向きからずれた向きで中子64A及び外子64Bが停止した場合、すなわち、
図13(a)に示すように、内側磁石46Aと外側磁石46Bとが互いに引き合う向きからずれて停止した場合であっても、中子64Aと外子64Bの円周方向の向きは、開始位置復帰手段45によってねじ部6の成形を繰り返す度に、
図13(b)に示すように開始位置に復帰して揃えられる。
【0052】
次に、このねじ成形ツール42Cの中子64Aと外子64Bの細部構成、及びこのねじ成形ツール42Cを用いて中間成形体19の筒状部18にねじ部6を形成するねじ部成形工程の詳細について説明する。
これら中子64A及び外子64Bの外周面には、
図9及び
図10に示すように、中間成形体19の筒状部18(本発明でいう、ねじ部形成予定部)に右ねじ状のねじ部6を形成するためのねじ形成用凸部91,92及びねじ形成用凹部93,94が螺旋状に、かつ互いに対応する形状でそれぞれに形成されている。これら中子64A及び外子64Bが前述したように相互に接近して、互いの凹凸部間に中間成形体19の筒状部18を挟み込み、中間成形体19の軸心O回りに回転することにより、筒状部18にねじ部6が成形される。中子64Aのねじ形成用凸部91は右ねじ状に形成され(以下、右ねじ状凸部91という)、外子64Bのねじ形成用凸部92は左ねじ状に形成される(以下、左ねじ状凸部92という)。
【0053】
図10は、筒状部18の壁を介して中子64Aと外子64Bとが対峙した状態を示しており、中子64A及び外子64Bは、
図13(b)に示すように、開始位置復帰手段45によって所定の開始位置に配置された状態とされる。
図11は、中子64Aと外子64Bとが接近して筒状部18を挟み込んだ状態を示している。また、便宜上、
図10においては中子64Aは正面視したものを示すとともに、外子64Bは半分を正面視して示し、残り半分の図示を省略した。
図11においては、中子64A、外子64Bとも外形線のみ示した。そして、この
図10に示す状態から中子64A及び外子64Bが接近して、筒状部18を挟み込んでねじ成形加工がなされる。
【0054】
まず、ねじ部成形開始作業において、中子64A及び外子64Bの円周方向の向きは、
図13(b)に示すように、三角印P1,P2が対向する所定の開始位置に配置された状態とされる。この状態で、中間成形体19に対してねじ成形ツール42Cを前進させると、まず、リング部材88の円筒面88aが中間成形体19の肩部3から缶胴部2に嵌め込まれ、次いで、リング部材88がストッパ部材89に当接して、中子64Aと外子64Bとの間に中間成形体19の筒状部18が挿入される。そして、さらにねじ成形ツール42Cが前進すると、第1ハウジング61と第2ハウジング62との軸方向の間隔が狭められる。このとき、第1ハウジング61のカム面86,87によって
図7の矢印で示すように、カムローラ83,84が押し込まれ、それに伴って所定の開始位置に配置された中子64A及び外子64Bが互いの間隔を狭める方向に移動する。
【0055】
そして、さらに中子64Aと外子64Bとが移動して、中子64Aが筒状部18の内周面に当接するとともに、外子64Bが筒状部18の外周面に当接することにより、中子64Aと外子64Bとで筒状部18が挟み込まれる。この挟み込み状態で、ねじ成形ツール42Cの全体(第1ハウジング61及び第2ハウジング62)を、回転軸心51を中心として矢印Cで示すように回転駆動することで、中子64A及び外子64Bが筒状部18の周りを回転して、
図11に示すように、ねじ部成形作業が行われる。
つまり、中子64Aの右ねじ状の凹凸形状(ねじ形成用凸部91及びねじ形成用凹部93)と外子64Bの左ねじ状の凹凸形状(ねじ形成用凸部92及びねじ形成用凹部94)とが互いに噛み合うように筒状部18を挟み込み、回転軸心51を中心に中子64A及び外子64Bが回転(公転)するとともに、摩擦によって中子64Aが筒状部18の内周面に沿って軸線65aを中心に転動(自転)し、外子64Bが筒状部18の外周面に沿って軸線66aを中心に転動(自転)することで、筒状部18にねじ部6が形成される。なお、ねじ部6は一部をオーバーラップさせて筒状部18に一周以上の加工が行われる。
【0056】
そして、ねじ部6を形成した後、ねじ部成形終了作業において、中子64Aと外子64Bとが互いの間隔を広げる方向に移動する。この際、外子64Bは、筒状部18の周りを一周以上回転した状態であるから、中子64A及び外子64Bの向きは、例えば
図13(a)に示すように、三角印P1,P2が、互いの対向位置からずれた位置にある。
ところが、中子64Aと外子64Bとは、筒状部18との当接によって生じる摩擦による抵抗が解かれた状態であるから、軸66に取り付けられた内側磁石46Aが、カバー部材63に設けられた外側磁石46Bとの間で引き合い又は反発することにより、外子64Bが軸線66aを中心に回転して、内側磁石46Aと外側磁石46Bとが互いに引き合う位置、すなわち
図13(b)に示す開始位置まで復帰する。この際、外子64Bと中子64Aとは、ギヤ71〜74によって回転が同期していることから、外子64Bの回転とともに中子64Aも回転して、外子64Bと中子64Aとは、三角印P1,P2が対向する開始位置まで復帰する。
【0057】
このように、ねじ部成形終了作業時において、内側磁石46Aと外側磁石46Bとから構成される開始位置復帰手段45により、中子64A及び外子64Bの向きを所定の開始位置に復帰させておき、次の中間成形体19にねじ部6を加工する前に、中子64Aと外子64Bとの向きを所定の開始位置に配置しておくことができる。このため、異なる中間成形体19について、ねじ部6の成形を繰り返す度に、中子64A及び外子64Bの向きが所定の開始位置で揃えられた状態で、ねじ部6の成形を開始することができる。これにより、中間成形体19毎にねじ部6の成形開始位置がずれることがなく、同じ位置から成形を開始することができ、複数の中間成形体19において、ねじ部6のオーバーラップ形成位置を円周方向の同じ位置に形成することができる。
【0058】
したがって、中間成形体19の個体ごとに円周方向の寸法のばらつきを生じさせることなく、ねじ部6を形成することができ、ねじ部6の寸法安定性を図ることができる。また、ねじ部6の成形を円周方向の所定の開始位置から開始することで、一定の再現性のもとに成形を行うことができるので、ねじ歪みのばらつきを低減することができ、再度のシール操作性を向上させることができる。
【0059】
なお、このようにしてねじ成形加工した後、開口端部16をさらに縮径し、この縮径した開口端部16に対してカーリング加工してカール部8を形成することにより、ボトル缶1が製造される。このカール部8を形成するための成形ツール42Dは、
図14に示すように、中間成形体19の開口端部16を折り返しながら丸める丸め型97と、丸めた後の開口端部を半径方向内方に押しつぶす押しつぶし型98とを有しており、それぞれロール状に形成され、中間成形体19の周囲を回転しながら成形する。この場合、ねじ成形加工した後にカーリング加工を行うので、開口端部16の剛性が低い状態でねじ成形できる。
【0060】
一方、このボトル缶1に被せられるキャップ111は、円形の天板部112と円筒状のスカート部113とを有している。このキャップ111は、ボトル缶1の口金部5に被せた後、キャッピングロールによってスカート部113を口金部5のねじ部6及び顎部7に倣うように成形することにより、スカート部113にねじ条114が形成されるとともに口金部5に螺着した状態となる。また、スカート部113の下端部115を顎部7に巻き込むことにより、
図15の左半分に示したようにキャップ111とボトル缶1とは螺着状態に固定される。
【0061】
そして、
図15の左半分に示した螺着状態からキャップ111を緩めるように回転すると、スカート部113に形成されていたスリット116の部分で下端部115とその上部との間が破断して、下端部115が帯状に顎部7に残され、キャップ111の上部を口金部5から外すことができる。またその外したキャップ111を再度シールするため口金部5に被せると、
図15の右半分に示すように、キャップ111の内周面のねじ条114の最下端が口金部5のテーパ部17上を滑りながら下降する。
【0062】
なお、このボトル缶1のねじ部6は、ねじ部6の成形を円周方向の所定の開始位置から開始した一定の再現性のもとに成形を行われており、ねじ部6の寸法安定性が図られたものである。このため、ねじ歪みのばらつきの低減が図られており、複数のボトル缶1において、差異なく再度のシール操作を円滑に行うことができる。
【0063】
図16〜
図19は、本発明の第2実施形態のねじ付きボトル缶の製造装置のねじ成形ツール42Cを示している。
第1実施形態の製造装置20では、
図6に示すように、開始位置復帰手段45を内側磁石46Aと外側磁石46Bとからなる磁石機構により構成していたが、第2実施形態では、
図16に示すように、開始位置復帰手段47を、外子64Bとカバー部材63とを接続する伸縮ばね48により構成する。
なお、第2実施形態において、開始位置復帰手段47以外の他の構成要素は第1実施形態の製造装置と同じものが用いられているので、各図において、第1実施形態と共通要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
この第2実施形態においても、ねじ部成形作業において中子64Aと外子64Bとで筒状部18(ねじ部成形予定部)を挟み込み、ねじ部6を形成した後では、外子64Bは、筒状部18の周りを一周以上回転した状態であるから、中子64A及び外子64Bの向きは、例えば
図19(a)に示すように、三角印P1,P2が、
図19(b)に示す開始位置からずれた位置で停止する。この状態では、伸縮ばね48は、中子64A及び外子64Bの向きが所定の開始位置に配置されているときよりも引っ張られ、伸びた状態となっている。このため、ねじ部成形終了作業において、中子64Aと外子64Bとを互いの間隔を広げる方向に移動して、筒状部18と中子64A及び外子64Bとの当接によって生じる摩擦による抵抗が解かれると、外子64Bとカバー部材63との間を接続する伸縮ばね48は、縮んで元の長さに戻ろうとする(復元力)。これにより、外子64Bは軸線66aを中心に回転して、伸縮ばね48が最も短くなる位置、すなわち
図19(b)に示す開始位置まで復帰する。この際、外子64Bと中子64Aとは、ギヤ71〜74によって回転が同期していることから、外子64Bの回転とともに中子64Aも回転して、外子64Bと中子64Aとは、三角印P1,P2が対向する開始位置まで復帰する。
【0065】
このように、伸縮ばね48を利用した開始位置復帰手段47を用いた第2実施形態においても、伸縮ばね48の復元力を利用して、開始位置からずれた向きで配置された外子64Bを所定の開始位置に復帰させることができ、それに伴って中子64Aも開始位置に復帰させることができる。このため、ねじ部6の成形を繰り返す度に、ねじ部6の成形開始位置がずれることがなく、同じ位置から成形を開始することができる。
したがって、中間成形体19の個体ごとに円周方向の寸法のばらつきを生じさせることなく、ねじ部6を形成することができ、ねじ部6の寸法安定性を図ることができる。また、ねじ部6の成形を円周方向の所定の開始位置から開始することで、一定の再現性のもとに成形を行うことができるので、ねじ歪みのばらつきを低減することができ、再度のシール操作性を向上させることができる。
【0066】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。