(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0025】
〔反射板用ポリアミド樹脂組成物〕
本実施形態の反射板用ポリアミド樹脂組成物(以下、「ポリアミド樹脂組成物」と記載する場合がある。)は、
(A)ポリアミドと、
(B)酸化チタンと、
(D)シリコーン化合物と、
を、含有する。
前記(A)ポリアミドは、(a)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸からなる単位と、(b)脂肪族ジアミンを含むジアミンからなる単位と、を、含有するポリアミドである。
「反射板用」とは、LED、プロジェクタなどの各種光源、照明器具や自動車のヘッドランプの反射板に用いられることを意味する。
【0026】
((A)ポリアミド)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において用いられる(A)ポリアミド(以下、(A)成分、(A)、ポリアミドと記載する場合がある。)は、下記(a)及び(b)からなる単位を有するポリアミドである。
(a)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸(以下、単に(a)ジカルボン酸と記載する場合がある。)。
(b)脂肪族ジアミンを含むジアミン(以下、単に(b)ジアミンと記載する場合がある。)。
すなわち、(A)ポリアミドは、(a)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)脂肪族ジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドである。
【0027】
(A)ポリアミドにおいて、上記(a)及び(b)からなる単位の割合は、耐熱性、流動性、靭性、及び剛性等の観点から、(A)ポリアミドの全構成単位100モル%中、50〜100モル%であることが好ましく、65〜100モル%であることがより好ましく、80〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0028】
(A)ポリアミドにおいて、上記(a)及び(b)からなる単位以外の構成単位としては、特に限定されないが、例えば、後述の(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位が挙げられる。
【0029】
なお、本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
【0030】
以下、上記成分(a)及び(b)について詳細に説明する。
【0031】
<(a)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれる(A)ポリアミドに用いられる(a)ジカルボン酸は、(a−1)脂環族ジカルボン酸を含む。
【0032】
(a−1)脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂環構造の炭素数が3〜10の脂環族ジカルボン酸、好ましくは脂環構造の炭素数が5〜10の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
このような脂環族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
【0033】
(a−1)脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
前記置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
【0034】
(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドの耐熱性、低吸水性、及び剛性等の観点で、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のようなシクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、1,4−シクロへキサンジカルボン酸がさらに好ましい。(a−1)脂環族ジカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(a−1)脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。
原料モノマーとしての(a−1)脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体とのどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体との種々の比率の混合物として用いてもよい。
【0036】
(a−1)脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることや、シス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いという特性を有する。このことから、本実施形態において用いる原料モノマーとしての(a−1)脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
【0037】
(a−1)脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
【0038】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いられる(a)ジカルボン酸は、(a−2)前記(a−1)以外のジカルボン酸を含んでいてもよい。
(a−2)前記(a−1)以外のジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0039】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0040】
前記芳香族ジカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0041】
前記種々の置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びその塩(ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0042】
(a−2)前記(a−1)以外のジカルボン酸としては、ポリアミドの耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等の観点で、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸を用いる。
【0043】
中でも、(a−2)前記(a−1)以外のジカルボン酸としては、ポリアミドの耐熱性及び低吸水性等の観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸等が挙げられる。中でも、ポリアミドの耐熱性等の観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
【0044】
(a−2)前記(a−1)以外のジカルボン酸は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(a)ジカルボン酸成分としては、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸をさらに含んでもよい。多価カルボン酸は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、ジカルボン酸全モル数を基準として、50〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合が、50モル%以上であることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等に優れるポリアミドが得られる。
【0047】
(a)ジカルボン酸中の(a−2)前記(a−1)以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であることが好ましく、0〜40モル%であることがより好ましい。
【0048】
(a)ジカルボン酸成分として、(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が0.1〜50モル%であることが好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が5〜40モル%であることがより好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が80〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が5〜20モル%であることがさらに好ましい。
【0049】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(a)ジカルボン酸としては、前記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、前記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。ジカルボン酸と等価な化合物としては、前記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物等が挙げられる。
【0050】
<(b)脂肪族ジアミンを含むジアミン>
(A)ポリアミドを構成する(b)ジアミンは、脂肪族ジアミンを含む。
脂肪族ジアミン以外のジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
(b)ジアミンは、前記脂肪族ジアミンとして、(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むことが好ましい。前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む(b)ジアミンを用いることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、流動性、靭性及び剛性等を同時に満足できる。
【0051】
前記主鎖から分岐した置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
【0052】
前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
【0053】
前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、耐熱性及び剛性等の観点で、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンが好ましい。前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いられる(b)ジアミンの(b−2)前記(b−1)以外のジアミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族ジアミン(ただし、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを除く。)、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0055】
前記脂肪族ジアミン(ただし、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを除く。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。中でも、耐熱性、低吸水性、強度及び剛性の観点から、デカメチレンジアミンであることが好ましい。
【0056】
前記脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
【0057】
前記芳香族ジアミンとしては、芳香族を含有するジアミンであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0058】
(b−2)前記(b−1)以外のジアミンとしては、ポリアミドの耐熱性、低吸水性、強度及び剛性等の観点で、好ましくは脂肪族ジアミン(ただし、前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを除く。)及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンであり、さらに好ましくは、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンであり、さらにより好ましくはデカメチレンジアミンである。(b−2)前記(b−1)以外のジアミンは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(b)ジアミン成分は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミン等の3価以上の多価脂肪族アミンを、さらに含んでもよい。前記多価脂肪族アミンは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(b)ジアミン中の、脂肪族ジアミンの割合は、強度及び靭性の観点から50〜100モル%であることが好ましく、60〜100モル%であることがより好ましく、80〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0061】
(b)ジアミン中の前記(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合(モル%)は、以下に限定されるものではないが、好ましくは50〜100モル%であり、より好ましくは60〜100モル%であり、さらに好ましくは85〜100モル%であり、さらにより好ましくは90〜100モル%であり、よりさらに好ましくは100モル%である。
(b)ジアミン中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、及び剛性に優れるポリアミドとすることができる。
【0062】
(b)ジアミン中の(b−2)前記(b−1)以外のジアミンの割合(モル%)は、0〜50モル%であることが好ましく、0〜40モル%であることがより好ましい。
【0063】
(A)ポリアミドを製造する際に、(a)ジカルボン酸の添加量と(b)ジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0064】
<(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれる(A)ポリアミドは、ポリアミドの靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位をさらに含有してもよい。
なお、本実施形態に用いる(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
【0065】
(A)ポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、並びに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を重合させたポリアミドである場合には、前記(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、靭性の観点から、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いることが好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いることがより好ましい。
【0066】
前記ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。中でも、ラクタムとしては、ポリアミドの靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
【0067】
前記アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸等が挙げられる。
前記アミノカルボン酸としては、熱安定性の観点から、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましい。このようなアミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
【0068】
前記(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位を含有させる場合には、該(c)からなる単位の含有量は、例えば、0.5モル%以上であることが好ましい。(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からなる単位の含有量を、0モル%以上20モル%以下の範囲とすることにより、耐熱性、低吸水性、強度及び離型性などに優れる共重合ポリアミドとすることができる。
【0069】
<末端封止剤>
本実施形態のポリアミドは、上述した(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、さらに必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いて重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤を用いてもよく、(A)ポリアミドは、分子末端に当該末端封止剤の残基を有していてもよい。
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン;並びにピロリジン、ピペリジン、3−メチルピペリジン等の環状アミン;等が挙げられる。
モノアミンは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
<(A)ポリアミドのポリマー末端>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いられる(A)ポリアミドのポリマー末端は、以下のように分類し、定義することができる。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボン酸末端、3)環状アミノ末端、4)封止剤による末端、5)その他の末端である。
【0073】
1)アミノ末端は、ポリマー末端に結合したアミノ基(−NH
2基)であり、原料のジアミンに由来する。
【0074】
2)カルボン酸末端は、ポリマー末端に結合したカルボキシル基(−COOH基)であり、原料のジカルボン酸に由来する。
【0075】
3)環状アミノ末端は、ポリマー末端に結合した環状アミノ基(下記(式I)で表される基)である。
下記(式I)中でRはピペリジン環を構成する炭素に結合する置換基を示す。
Rとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、t−ブチル基等が挙げられる。また、例えば、原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの脱アンモニア反応により環化したピペリジンがポリマー末端に結合してもこの環状アミノ基の末端となる。環状アミノ末端の構造は、モノマーとして、ペンタメチレンジアミン骨格を有するものを含む場合にとることがある。
【0077】
4)封止剤による末端は、重合時に封止剤を添加した場合に形成される。
封止剤としては、カルボン酸又はアミンが挙げられる。当該封止剤によりポリマー末端が封止される。
【0078】
5)その他の末端は、前記1)〜4)に分類されないポリマー末端であり、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端やカルボン酸末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
【0079】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、(A)ポリアミド中、前記3)環状アミノ末端の量は30μ当量/g以上65μ当量/g以下であることが好ましく、また、30μ当量/g以上60μ当量/g以下であることがより好ましく、35μ当量/g以上55μ当量/g以下であることがさらに好ましい。環状アミノ末端の量が上記の範囲であることにより、(A)ポリアミドの靭性、耐加水分解性、及び加工性の向上を図ることができる。
【0080】
前記3)環状アミノ末端の量は、1H−NMRを用いて測定することができる。
例えば、窒素の複素環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素との積分比を基に算出することができる。
【0081】
前記3)環状アミノ末端は、環状アミンとカルボン酸末端とが脱水反応することによって生成するか、アミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによっても生成する。
【0082】
前記3)環状アミノ末端は、環状アミンを末端封止剤として添加することによっても生成可能であるし、ポリアミドの原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンが脱アンモニア反応して環化して反応系中で生成することも可能である。
本実施形態において、前記3)環状アミノ末端は、原料のジアミンに由来することが好ましい。
環状アミンを末端封止剤として重合初期に添加することは、低分子量のカルボン酸末端を重合初期の段階で封止することになるため、ポリアミドの重合反応速度を低くし結果として高分子量体が得られにくい原因になる。
これに対して、反応の途中で環状アミンが生成する場合、重合後期の段階で環状アミンによりカルボン酸末端を封止することになるため、ポリアミドの高分子量体が得られ易くなる。
【0083】
前記3)環状アミノ末端を生成する環状アミンは、ポリアミドの重合反応の際に副生物として生成する。この環状アミンの生成反応において、反応温度が高いほど反応速度も向上する。よって、本実施形態に用いる(A)ポリアミドの環状アミノ末端を一定量にするためには、環状アミンの生成を促すことが好ましい。そのため、(A)ポリアミドの重合の反応温度は300℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがさらに好ましい。
【0084】
これら環状アミノ末端をある一定量に調整する方法としては、重合温度、重合工程中の上記300℃以上の時間や、環状構造を形成するアミンの添加量等を適宜調整することで制御する方法が挙げられる。
【0085】
((A)ポリアミドの製造方法)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれる(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、(a)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む方法が挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれる(A)ポリアミドは、重合工程の少なくとも一部において固相重合工程を経て得られるポリアミドであることが好ましい。
(A)ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0086】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含まれる(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものでははく、例えば、以下に例示する方法等が挙げられる。
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)。
4)ジカルボン酸・ジアミン塩又は、その混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)。
5)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物を固体状態に維持したまま、一段で重合させる方法(以下、「一段固相重合法」と略称する場合がある)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライドとジアミンとを用いて重合させる方法(以下、「溶液法」と略称する場合がある。)。
【0087】
(A)ポリアミドの製造方法としては、前記3)プレポリマー・押出重合法、4)プレポリマー・固相重合法、及び5)一段固相重合法が好ましく、より好ましくは、前記4)プレポリマー・固相重合法、及び5)一段固相重合法である。
(A)ポリアミドの製造方法においては、ポリアミドの分子量を向上させる観点から、固相重合法を実施することが好ましく、また、固相重合法を実施し、ポリアミドの分子量を向上させる方法は、熱溶融重合法で分子量を向上させるよりも、ポリアミドの環状アミノ末端量を所定の量に制御することができる観点から好適である。
【0088】
(A)ポリアミドの製造工程において、重合を行う際に、添加物を加えておくことが好適である。
重合時に加える添加物としては、(A)ポリアミドの原料である(b)ジアミンが挙げられる。この場合の(b)ジアミンは、等モル量のジカルボン酸・ジアミン塩の製造すなわち(A)ポリアミドの製造に用いる(b)ジアミンとは別に、さらに添加する(b)ジアミンを意味し、当該添加物としての(b)ジアミンの添加量は、前記(b)ジアミンを100モル%としたとき、好ましくは0.1〜10モル%であり、より好ましくは0.5〜5.0モル%であり、さらに好ましくは1.5〜4.5モル%であり、よりさらに好ましくは2.6〜4.0モル%である。
さらに添加する(b)ジアミンの添加量を上記範囲内とすることにより、上述した前記3)環状アミノ末端量や、前記1)アミノ末端量を、所望の数値範囲に制御することができる。
【0089】
(A)ポリアミドの重合時の添加物としては、前記ジアミンのほか、蟻酸及び酢酸等の有機酸等が挙げられる。
有機酸等を加えることにより、ポリマー末端の環状アミノ末端量が減少する傾向があるため、環状アミノ末端量を目的の値に制御するための方法として有効である。
【0090】
(A)ポリアミドの製造工程における重合形態は、バッチ式でも連続式でもよい。
また、固相重合法以外の方法により用いる反応器に関しては、以下に限定されるものではないが、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及び、ニーダー等の押出機型反応器等が挙げられ、これら用いて各種重合反応を行うことができる。
【0091】
(A)ポリアミドの製造方法としての前記固相重合法は、例えば、タンブラー型の反応器、振動乾燥機型の反応器、ナウターミキサー型の反応器、及び攪拌型の反応器等を用いて実施することができる。
具体的には、(A)ポリアミドのペレット、フレーク、又は粉体を上記反応器に入れ、ポリアミドを重合する。このとき、窒素、アルゴン、及びヘリウム等の不活性ガスの気流下又は減圧下で行ってもよく、また、反応器上部で減圧に内部気体を引きながら反応器下部から不活性ガスを供給してもよく、(A)ポリアミドの融点以下の温度で加熱することによって、ポリアミドの分子量を向上させることができる。
固相重合の反応温度は、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは120〜300℃であり、さらに好ましくは150〜270℃である。
重合後、加熱を停止し、好ましくは0〜100℃、より好ましくは室温から60℃に反応温度が低下してから、反応器より(A)ポリアミドを取り出して得ることができる。
【0092】
(A)ポリアミドの製造工程においては、上述した「プレポリマー・固相重合法」、「一段固相重合法」、「溶液法」のいずれにおいても、(A)ポリアミドの融点以下の反応温度で(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン(必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を含む)とを重合させることが好ましい。なお、プレポリマーを製造する場合、当該プレポリマーの製造工程においては、(A)ポリアミドの融点以上の反応温度で行い、その後、急冷することによりプレポリマーを得てもよい。
なお、重合工程においては、最高到達圧力を10kg/cm
2以上とすることが好ましく、より好ましくは12kg/cm
2以上とする。これにより、(b)ジアミンの逃散を抑制することができ、目的とする(A)ポリアミドを高分子量化することができる。
さらには、重合の最終温度を(A)ポリアミドの融点以下とすることが好ましい。これにより、環状アミン化合物の生成を抑制する効果が得られる。
(A)ポリアミドの製造工程においては、前記「プレポリマー・固相重合法」及び「一段固相重合法」を用いることにより、環状アミノ末端の量を容易に制御しながら、高分子量化でき、耐熱性、高温安定性、耐熱色調安定性、及び耐熱リフロー性に優れる高い融点を有する(A)ポリアミドが得られる。
【0093】
(A)ポリアミドの製造工程においては、上述した(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン、必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いて重合する際に、分子量調節のために、上述した公知の末端封止剤をさらに添加して重合を行ってもよい。
【0094】
((A)ポリアミドの特性)
<硫酸相対粘度>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミドの分子量については、25℃の硫酸相対粘度ηrを指標とすることができる。本実施形態に用いる(A)ポリアミドは、靭性及び剛性等の機械物性並びに成形性等の観点で、JIS−K6920に従って測定される98%硫酸中濃度1%、25℃の硫酸相対粘度ηrが、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。なお、25℃の硫酸相対粘度ηrは、下記実施例に記載する方法により測定することができる。
【0095】
<融点Tm2>
(A)ポリアミドの融点Tm2は、耐熱性及び溶融工程での熱分解等を抑制する観点から、270〜350℃であることが好ましい。(A)ポリアミドの融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。また、(A)ポリアミドの融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。(A)ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形等の溶融加工でのポリアミドの熱分解等を抑制することができる。
【0096】
<融解熱量ΔHm>
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの融解熱量ΔHmは、耐熱性の観点から、好ましくは5J/g以上であり、より好ましくは10J/g以上である。
【0097】
<結晶化熱量ΔHc>
本実施形態に用いる(A)ポリアミドの結晶化熱量ΔHcは、成形流動性の観点から、好ましくは30J/g以下であり、より好ましくは20J/g以下である。
【0098】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミドの融点Tm2、融解熱量ΔHm及び結晶化熱量ΔHcの測定は、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点Tm2、融解熱量ΔHm及び結晶化熱量ΔHcの測定装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
【0099】
<ガラス転移温度Tg>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に用いる(A)ポリアミドのガラス転移温度Tgは、90〜170℃であることが好ましい。
(A)ポリアミドのガラス転移温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、よりさらに好ましくは120℃以上であり、最も好ましくは130℃以上である。また、(A)ポリアミドのガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。(A)ポリアミドのガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドのガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観のよい成形品を得ることができる。
【0100】
ガラス転移温度の測定は、JIS−K7121に準じて行うことができる。
【0101】
ガラス転移温度の測定装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
【0102】
((B)酸化チタン)
本実施形態の反射板用ポリアミド樹脂組成物は、(B)酸化チタンを含有する。
本実施形態に用いる(B)酸化チタンとしては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti
2O
3)、及び二酸化チタン(TiO
2)等が挙げられる。特に、初期反射率や熱や光に対し優れた耐変色性の向上の観点から二酸化チタンが好ましい。
【0103】
(B)酸化チタンの結晶構造は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂組成物の耐光性の観点から、好ましくはルチル型である。
【0104】
(B)酸化チタンは粒子状であり、(B)酸化チタンの数平均粒子径は、ポリアミド樹脂組成物の靭性及び押出加工性の観点から、好ましくは0.1〜0.8μmであり、より好ましくは0.15〜0.4μmであり、さらに好ましくは0.15〜0.3μmである。
(B)酸化チタンの数平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により測定することができる。例えば、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、ポリアミド樹脂組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば任意に選択した100個以上の酸化チタンを、電子顕微鏡で観察して、これらの粒子径を測定し、平均値を算出することにより、(B)酸化チタンの数平均粒子径が得られる。
【0105】
(B)酸化チタンは、特に限定されないが、例えば、硫酸チタン溶液を加水分解するいわゆる硫酸法や、ハロゲン化チタンを気相酸化するいわゆる塩素法により得られる。
【0106】
(B)酸化チタンの粒子の表面は、コーティングされていることが好ましい。
(B)酸化チタン粒子の表面は、最初に無機コーティング、次いで無機コーティング上に適用される有機コーティングでコーティングされることが好ましい。
(B)酸化チタン粒子は公知のいかなる方法を使用してコーティングされてもよい。
前記無機コーティングとしては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物を含むことが好ましい。
前記有機コーティングとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸類、ポリオール類、アルカノールアミン類及び/又は有機ケイ素化合物の1つ又は複数を含んでいることが好ましい。中でもポリアミド樹脂組成物の耐光性及び押出加工性の観点から、(B)酸化チタン粒子の表面は、ポリオール類、有機ケイ素化合物を使用してコーティングされることがより好ましく、ポリアミド樹脂組成物の加工時の発生ガスの低減の観点から、有機ケイ素化合物を使用してコーティングされることがさらに好ましい。
【0107】
なお、(B)酸化チタンは、1種のみを単独を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(B)酸化チタンの含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対し、好ましくは25質量%〜65質量%であり、より好ましくは35〜60質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。含有量が上記範囲であることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物において優れた初期反射率
と、熱や光に対し優れた耐変色性が得られる。
【0109】
((C)無機充填材)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、強度剛性等の機械物性の観点から、上述した(B)酸化チタン、リン化合物、金属水素化物、金属酸化物、造核剤以外の(C)無機充填材をさらに含有してもよい。
【0110】
(C)無機充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維のような繊維状充填剤;フレーク状ガラス、ハイドロタルサイト、炭酸亜鉛、ウォラストナイト、ゼオライト、ベーマイト、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイト等が挙げられる。
これらの中でも、(C)無機充填材は、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
このような(C)無機充填材を含むことにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、機械的強度、外観、白色度等がより優れる傾向にある。(C)無機充填材は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
前記ガラス繊維等の繊維類(以下、繊維類と記載する場合がある。)の形状としては、特に限定されず、断面が真円状であっても、扁平状であってもよい。
扁平状の断面としては、特に限定されず、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型等が挙げられる。
前記繊維類は、優れた機械的強度特性をポリアミド樹脂組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであることが好ましく、重量平均繊維長が100〜750μmであることが好ましく、重量平均繊維長Lと数平均繊維径Dとのアスペクト比(L/D)が10〜100であることが好ましい。
【0112】
また、前記繊維類は、扁平率が1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.5〜10.0、さらに好ましくは2.5〜10.0であり、さらにより好ましくは3.1〜6.0である。
扁平率が前記範囲内である繊維類を含むことにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を用いた板状成形品の反りの低減、耐熱性、靭性、低吸水性、耐熱エージング性により優れる傾向にある。また、他の成分との混合の他、混練、成形等の処理の際に、破砕され難い傾向にあり、所望する効果を発揮し易くなる。
ここで「扁平率」とは、繊維断面の長径をD2、繊維の断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される比率をいう。なお、真円状の場合、扁平率は約1となる。
【0113】
扁平率が1.5以上の繊維類の太さは、特に限定されるものではないが、繊維の断面の短径D1が0.5〜25μm、繊維の断面の長径D2が1.25〜250μmであることが好ましい。繊維類の太さが前記範囲内であることにより、繊維の紡糸がし易く、また、(A)ポリアミドとの接触面積の増加等により成形品の強度がより向上する傾向にある。
【0114】
繊維の断面の短径D1は3〜25μmが好ましい。
さらには、繊維の断面の短径D1が3〜25μmで且つ繊維の扁平率が3より大きい値であることが好ましい。
繊維の太さが前記範囲内であることにより、繊維の紡糸がし易く、また、(A)ポリアミドとの接触面積の増加等により成形品の強度がより向上する傾向にある。
【0115】
上述した扁平率が1.5以上の繊維類は、例えば、特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報等に記載の方法で製造することができる。
特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、当該オリフィスプレート底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、又は、単数若しくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップを使用して製造された扁平率が1.5以上のガラス繊維が好ましい。
これらの上述した繊維状の(C)無機充填材は、繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
【0116】
ここで、本明細書における「数平均繊維径」は、例えば、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、ポリアミド樹脂組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば任意に選択した100本以上のガラス繊維を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維の繊維径を測定し、平均値を算出することにより求めることができる。
また、「重量平均繊維長」は、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより求めることができる。
また、「繊維の断面の短径D1」及び「長径D2」も、上記数平均繊維径及び重量平均繊維長の測定方法と同様にして測定することができる。
【0117】
上記の繊維類は、シランカップリング剤等により表面処理されたものでもよい。
前記シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、アミノシラン類が好ましい。
シランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
また、上記の繊維類については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物基含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物基含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含むカルボン酸無水物基含有共重合体;エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー;並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等を含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
中でも、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の機械的強度の観点から、集束剤としては、カルボン酸無水物基含有共重合体、エポキシ化合物、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物基含有共重合体、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
【0120】
繊維類は、公知の繊維類の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、公知の集束剤を繊維類に付与して繊維ストランドを製造し、乾燥することによって連続的に反応させて得られる。
前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
【0121】
前記集束剤は、繊維類100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。
繊維類の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、繊維類100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。
一方、該集束剤の添加量は、ポリアミド樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0122】
上述したガラス繊維や炭素繊維等の繊維類以外の無機充填材としては、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の強度、剛性及び表面外観の観点から、ウォラストナイト、カオリン、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、クレーも好ましく使用できる。より好ましくは、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、であり、さらに好ましくは、ウォラストナイト、マイカであり、さらに好ましくはウォラストナイトである。
【0123】
繊維類以外の(C)無機充填材の平均粒子径は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の靭性、表面外観の観点から、0.01〜38μmが好ましく、0.03〜30μmがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.1〜20μmがさらにより好ましく、0.15〜15μmがよりさらに好ましい。
繊維類以外の(C)無機充填材の平均粒子径を38μm以下とすることにより、靭性、表面外観に優れるポリアミド樹脂組成物が得られる。
また、繊維類以外の(C)無機充填材の平均粒子径を0.01μm以上にすることにより、コスト面と、粉体のハンドリング面と、物性とのバランスにより優れる傾向にある。
なお、前記平均粒子径は、例えば、SEMにより測定することができる。
【0124】
また、(C)無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような針状の形状を持つ無機充填材に関しては、数平均繊維径を平均粒子径とする。さらに、断面が円でない無機充填材の場合はその長さの最大値を繊維径とする。
【0125】
針状の形状を持つ(C)無機充填材の重量平均繊維長Lと数平均繊維径Dとのアスペクト比(L/D)に関しては、成形品外観、射出成形機等の金属性パーツの磨耗の観点から、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がさらに好ましく、2.5〜4がよりさらに好ましい。
【0126】
また、前記繊維類以外の(C)無機充填材は、通常の表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤等で表面処理を施したものを使用することもできる。
シラン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、ポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との混合物、ポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との反応物を好ましく使用することができる。このような表面処理剤は、予め(C)無機充填材の表面に添加することもできるし、(A)ポリアミドと(C)無機充填材とを混合する際に添加することもできる。また、好ましい表面処理剤の添加量は、(C)無機充填材に対して0.05質量%〜1.5質量%の範囲である。
【0127】
(金属水酸化物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、金属水酸化物を含有してもよい。金属水酸化物は、一般式M(OH)xで表される。ここで、Mは金属原子を表し、xは金属原子に応じた多価を示す。
【0128】
金属元素Mとしては、1価以上の金属であることが好ましい。1価以上の金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属元素Mとしては、アルカリ土類金属が望ましい。
【0129】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含有されている金属水酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マンガンなどが挙げられる。これらの中でも、耐リフロー性、押出加工安定性、成形加工安定性に優れるという観点から、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが好ましく、水酸化カルシウムがより好ましい。
【0130】
各金属水酸化物は一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の混合物として用いてもよい。また、これらの金属酸化物は、密着性及び分散性を向上させるために表面処理を施したものを使用してもよい。
【0131】
表面処理剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
【0132】
(金属酸化物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、金属酸化物を含有してもよい。金属酸化物は、一般式MxOyで表される。ここで、Mは金属原子を表し、x及びyはそれぞれ、0<x≦5、0<y≦5である。
【0133】
金属元素Mは、1価以上の金属であることが好ましい。1価以上の金属としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属元素としては、アルカリ土類金属が望ましい。
【0134】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含有されている金属酸化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱変色性、押出加工安定性、成形加工安定性に優れるという観点から酸化カルシウム、酸化マグネシウムが好ましく、より好ましくは酸化カルシウムである。
【0135】
前記金属酸化物は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上の混合物として用いてもよい。また、これらの金属酸化物は、密着性および分散性を向上させるために表面処理を施したものを使用してもよい。
【0136】
表面処理剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
【0137】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の金属水酸化物及び/又は金属酸化物は通常粒子であり、その平均粒子径は0.05〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。また、粒子全部に対する30μm以上の粒子の質量割合が、好ましくは1質量%以下でありより好ましくは0.1質量%以下である。
【0138】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の金属水酸化物及び/又は金属酸化物の純度は好ましくは99%以上であり、より好ましくは99.5%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。純度が高いことにより、ポリアミド樹脂組成物の白色度、耐リフロー性、耐光変色性は優れたものとなる傾向がある。
【0139】
上述した金属水酸化物及び/又は金属酸化物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、0.1〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜5質量%である。金属水酸化物及び/又は金属酸化物の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物は耐熱変色性、押出加工安定性、成形加工安定性により優れる傾向にある。
【0140】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、白色度、耐熱変色性の観点から、金属酸化物、金属水酸化物以外の金属化合物をさらに含有していてもよい。金属酸化物、金属水酸化物以外の金属化合物として、金属炭酸塩、金属ハロゲン化物等が挙げられる。金属水酸化物以外の金属化合物の金属元素として、特定の元素を有する金属酸化物を用いることが重要である。金属元素として、1価以上の金属であり、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムバリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム等を挙げることができる。金属元素として、アルカリ土類金属が望ましい。
【0141】
金属水酸化物及び/又は金属酸化物は、(A)ポリアミドの重合時に添加してもよいが、(A)ポリアミドの重合後、当該(A)ポリアミドと混合するポリアミド樹脂組成物の製造時に添加することが好ましい。ポリアミド樹脂組成物の製造時に添加することで、熱履歴を少なくすることができ、後述するリン系化合物の分解等を抑制することができ、白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0142】
(造核剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、離型性の観点から、造核剤をさらに含有することが好ましい。「造核剤」とは、添加により熱示差走査分析(DSC)で測定される結晶化温度を上昇させる効果や、得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化に効果が得られる物質のことを意味する。
【0143】
前記造核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、カーボンブラック、チタン酸カリウム、及び二硫化モリブデンなどが挙げられる。造核剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0144】
前記造核剤の中でも、造核剤効果の観点で、タルク、窒化ホウ素、及びカーボンブラックが好ましく、より好ましくはタルク、窒化ホウ素であり、さらに好ましくはタルクである。
【0145】
また、造核剤効果が高いため、数平均粒径が0.01〜10μmである造核剤が好ましく、より好ましくは0.5〜5μmであり、さらに好ましくは0.5〜3μmである。
【0146】
造核剤の数平均粒径の測定は、成形品をギ酸などのポリアミドが可溶な溶媒で溶解し、得られた不溶成分の中から、例えば100個以上の造核剤を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
【0147】
造核剤の配合量は、(A)ポリアミド100質量%に対して、0.001〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%であり、さらに好ましくは0.01〜7.5質量%であり、よりさらに好ましくは0.05〜7.5質量%であり、最も好ましくは1.0〜6.0質量%である。
【0148】
配合量を0.001質量%以上とすることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱性が良好に向上し、また、配合量を15質量%以下とすることにより、靭性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0149】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(C)無機充填材の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0〜50質量%であり、より好ましくは0〜30質量%であり、さらに好ましくは0〜20質量%であり、よりさらに好ましくは0〜10質量%である。
(C)無機充填材の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物の強度、剛性及び靭性をよりバランス良く保つことができる。
【0150】
上述した(B)酸化チタンと、上述した(C)無機充填材との合計含有量は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは55質量%以上である。合計含有量が上記範囲内であることにより、熱や光に対し優れた耐変色性の向上の効果が得られる傾向にある。
【0151】
((D)シリコーン化合物)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(D)シリコーン化合物を含有する。(D)シリコーン化合物は、シロキサン結合を主骨格とし有機基を有するオリゴマー又はポリマーである。(D)シリコーン化合物は、反応性官能基を有してもよい。
【0152】
反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基又は低級(例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、エポキシシクロアルキル基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基等)、水酸基、イソシアネート基が挙げられる。
【0153】
(D)シリコーン化合物が反応性官能基を有する場合は、反応性官能基当量は、1〜10000g/molであり、好ましくは100〜8000g/molであり、より好ましくは200〜6000g/molであり、さらに好ましくは300〜5000g/molであり、よりさらに好ましくは500〜3000g/molであり、最も好ましくは1000〜2000g/molである。反応性官能基当量がこの範囲にあると、溶融混合時にポリアミド樹脂との相容性を高くできるため均一分散しやすくなる。
【0154】
(D)シリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表される単位を有するオリゴマー又はポリマーである。
[R
1R
2SiO]
m ・・・(1)
(式(1)中、R
1、R
2はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、R
1とR
2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。mは任意の整数を示す。)
【0155】
また、本実施形態で使用するシリコーン化合物は、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(シランカップリング剤)を加水分解縮合して製造することができる。
R
3nSi(OR
4)
4-n ・・・(2)
(式(2)中、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、R
3はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、R
3が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよく、R
4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0156】
前記式(1)、(2)中、R
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基としては、直鎖又は分岐状の、炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
以下に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数2〜4のアルキル基である。
前記アルキル基は、任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0157】
前記式(1)、(2)中、R
1、R
2及びR
3で示されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。
以下に限定されるものではないが、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基である。
前記シクロアルキル基は、任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0158】
前記式(1)、(2)中、R
1、R
2及びR
3で示されるアルケニル基としては、直鎖又は分岐状の炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
以下に限定されるものではないが、例えば、ビニル基、1−プロぺニル基、2−プロぺニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル、ヘプテニル基等が挙げられる。
好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基である。
前記アルケニル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0159】
前記式(1)、(2)中、R
1、R
2及びR
3で示されるシクロアルケニル基としては、炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
以下に限定されるものではないが、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基である。
前記シクロアルケニル基は、任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0160】
前記式(1)、(2)中、R
1、R
2及びR
3で示されるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
以下に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6〜9のアリール基である。
前記アリール基は、任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0161】
上述したR
1、R
2及びR
3で示される基は、それぞれ置換基を有していてもよい。
当該置換基としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アリール基(例えば、フェニル基等)又はアミノ低級(例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、エーテル基、エポキシシクロアルキル基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基等)、水酸基、イソシアネート基、エステル基(例えば、炭素数1〜20アルコキシカルボニル基等)、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基(−NHCONH
2)、カルバモイル基(−CONH
2)、アルカノイルアミノ基(例えば、炭素数1〜20のアルカノイルアミノ基等)、アルカノイルオキシ基(例えば、炭素数1〜20のアルカノイルオキシ基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基等)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等が挙げられる。
【0162】
これらの置換基のうち、本実施形態のポリアミド樹脂組成物のマトリックスである(A)ポリアミドとの親和性の観点から、(A)ポリアミドのアミド基、アミノ基又はカルボキシル基と反応し得る反応性官能基が好ましく、例えば、フェニル基又は低級(例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、エポキシシクロアルキル基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基等)、水酸基、イソシアネート基等が好適なものとして挙げられる。
【0163】
上述したR
1、R
2及びR
3で示される基のうち、好ましい基としては、フェニル基又はアミノ低級(炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1〜3個の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0164】
上述したR
1、R
2及びR
3で示される基のうち、より好ましい基としては、フェニル基又はアミノ低級(炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1又は2個(特に1個)の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0165】
上述したR
1、R
2及びR
3で示される基のうち、さらに好ましい基としては、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1個の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0166】
前記一般式(1)で示されるシリコーン化合物として、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル;直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造をもつシリコーンゴム;シロキサン結合が(CH
3SiO
3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造をもつポリメチルシルセスキオキサン;3官能シロキサン単位を主成分とした3次元網目構造のシリコーンレジン等が挙げられる。
【0167】
これらのシリコーン化合物は、商業的に入手可能な公知の化合物、及び当業者が公知の方法を用いて製造できる化合物のいずれをも包含する。
【0168】
これらのシリコーン化合物の典型例として、一般式(3)
(式中、R
4、R
5及びR
6はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、R
4、R
5及びR
6は互いに同一であっても異なっていてもよく、l及びmは1以上の任意の整数を示し、括弧内の各繰り返し単位構造の結合の順番は特に限定はない。)で表される化合物が挙げられる。
【0169】
ここで、R
4、R
5及びR
6で示される基は、前記式(1)、(2)中、R
1、R
2及びR
3として列挙された基を採用することができる。
【0170】
R
4、R
5及びR
6で示される基としては、好ましくは、アミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる基で置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、フェニル基が挙げられ、より好ましくは、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、エポキシ基、及びカルボキシル基からなる群より選ばれる1個の基で置換されたアルキル基が挙げられ、さらに好ましくは、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、及びカルボキシル基からなる群より選ばれる1個の基で置換されたアルキル基が挙げられ、最も好ましくは、カルボキシル基で置換されたアルキル基が挙げられる。アルキル基の置換基数は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2であり、さらに好ましくは1である。
【0171】
ここで、R
4、R
5及びR
6で示される基のうち少なくとも1つは反応性官能基であることが好ましく、R
4、R
5及びR
6のうち2つが反応性官能基であることがより好ましく、R
4、R
5及びR
6のうち1つが反応性官能基であることが最も好ましい。
【0172】
R
4、R
5及びR
6で示される基のうち少なくとも1つが反応性官能基である場合、シリコーン化合物は、異なる場所に反応性官能基を持つ化合物の混合物であることが特に好ましい。具体的には、少なくともR
4で示される基が反応性官能基であるシリコーン化合物、少なくともR
5で示される基が反応性官能基であるシリコーン化合物、及び少なくともR
6で示される基が反応性官能基であるシリコーン化合物からなる群より選ばれる2種以上のシリコーン化合物の混合物であることが好ましい。
【0173】
シリコーン化合物は、溶融混合時に1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
一般式(3)で示されるシリコーン化合物が反応性官能基を持つ場合は、反応性官能基当量は通常1〜10000g/molであり、好ましくは100〜8000g/molであり、より好ましくは200〜6000g/molであり、さらに好ましくは300〜5000g/molであり、よりさらに好ましくは500〜3000g/molであり、最も好ましくは1000〜2000g/molである。反応性官能基当量がこの範囲にあると、溶融混合時にポリアミド樹脂との相容性を高くできるため均一分散しやすくなる。
【0175】
lは好ましくは1〜20,000の整数であり、より好ましくは1〜10,000の整数であり、mは好ましくは1〜20,000の整数であり、より好ましくは1〜10,000の整数である。
【0176】
一般式(3)で示されるシリコーン化合物が液状物の場合(例えば、シリコーンオイル等)は、粘度(25℃)は通常10〜2,000mm
2/s、好ましくは10〜1,000mm
2/sであり、より好ましくは10〜500mm
2/sであり、さらに好ましくは10〜250mm
2/sであり、よりさらに好ましくは20〜200mm
2/sであり、最も好ましくは20〜100mm
2/sである。粘度がこの範囲にあると、溶融混合時にポリアミド樹脂との粘度差を小さくできるため均一分散しやすくなる。粘度は、動粘度測定装置で測定することができる。
【0177】
一般式(3)で示されるシリコーン化合物が固体の場合(例えば、シリコーンゴム、ポリメチルシルセスキオキサン、シリコーンレジン等)は、粉末状が好ましく、その平均粒子径は、通常、0.1〜20μmであり、好ましくは0.5〜10μmである。平均粒子径がこの範囲にあると、溶融混合時により樹脂組成物中に分散しやすくなる。平均粒子径は、レーザー回折法で測定することができる。
【0178】
前記一般式(2)で示される化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルエトキシシラン等が挙げられる。
本実施形態で使用するシリコーン化合物は、高温安定性の観点で、反応性の官能基を持たないシリコーン化合物が好ましい。反応性の官能基とは、アミノ低級(例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、エーテル基、エポキシシクロアルキル基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基等)、水酸基、イソシアネート基、エステル基(例えば、炭素数1〜20アルコキシカルボニル基等)、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基(−NHCONH
2)、カルバモイル基(−CONH
2)、アルカノイルアミノ基(例えば、炭素数1〜20のアルカノイルアミノ基等)等が挙げられる。反応性の官能基を持たないシリコーン化合物を用いることでポリアミド樹脂組成物の高温安定性、表面平滑性を高くすることができる。
【0179】
(D)シリコーン化合物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.05〜10.0質量%であり、より好ましくは0.075〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.2〜2.5質量%であり、よりさらに好ましくは0.3〜2.0質量%であり、最も好ましくは0.3〜1.0質量%である。(D)シリコーン化合物の含有量が上記の範囲内であることにより、モールドデポジットの低減及び高温安定性の向上の観点で好ましく、本実施形態のポリアミド樹脂組成物から反射板を成形する際の成形性も良好であり、かつ反射板において、良好なバランスの性能を実現できる傾向にある。
【0180】
(リン化合物)
本実施形態におけるポリアミド樹脂組成物は、熱安定性の観点から、リン系化合物をさらに含有していてもよい。
リン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物、2)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類等が挙げられる。なお、リン系化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
前記1)のリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸等が挙げられる。
【0182】
前記2)のリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、並びにそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、前記1)のリン化合物と周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムとの塩等が挙げられる。
【0183】
より好ましいリン系化合物としては、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれる1種以上である。このようなリン系化合物を用いることにより、耐熱変色性、耐光変色性により優れる傾向にある。
【0184】
さらに好ましいリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族(アルカリ金属)及び第2族(アルカリ土類金属)、マンガン、亜鉛並びにアルミニウムから選ばれる金属と、を含む金属塩、あるいは、これら金属塩の分子内縮合物又はこれら金属塩の分子間縮合物が挙げられる。
【0185】
さらにより好ましいリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族から選ばれる金属と、を含む金属塩が挙げられる。
【0186】
前記金属塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム等が挙げられ、これらの無水塩、水和物も挙げられる。
これらの中でも、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムが好ましく、アルカリ土類金属塩である次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウムがより好ましい。
【0187】
上述したリン系化合物を用いることにより、耐熱変色性、耐光変色性及び押出加工性により優れる傾向にある。
【0188】
上述したリン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物は、次亜リン酸金属塩であることがより好ましい。リン系化合物が次亜リン酸金属塩であることにより、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0189】
リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物の金属種は、金属水酸化物及び/又は金属酸化物の金属種と同一であることが好ましい。特に、前記リン系化合物の金属種としては、アルカリ土類金属であることが好ましい。金属種が同一であることにより、熱安定性が高まり、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。さらに、リン系化合物の金属種としてアルカリ土類金属を用いることにより、上記特性において、より一層優れた効果が得られる。
【0190】
リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物は、無水塩や水和物を含まない金属塩であることが好ましい。リン系化合物として、無水塩、水和物を含まない金属塩を使用することにより、加工時に発生する水分量を抑えることができ、ポリアミドの分子量低下やガス発生を抑制することができる。また、リン系化合物として、無水塩、水和物を含まない金属塩を用いることにより、白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0191】
リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、次亜リン酸金属塩、これら金属塩の分子内縮合物、及びこれら金属塩の分子間縮合物からなる群より選ばれるリン系化合物としては、潮解性の低いものが好ましく、潮解性の無いものがより好ましい。リン系化合物として潮解性の低い金属塩を用いることにより、ポリアミド樹脂組成物の製造時に各原料成分を混合する際に作業性が低下や原料成分中の水分量が高くなることによる、加工時のポリアミドの分子量低下やガス発生を抑制することができる。潮解性の低い金属塩を用いることにより、白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0192】
前記リン系化合物は、有機リン系化合物を含んでもよい。
有機リン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)−ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ,ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))−1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。
本実施形態では、有機リン系化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の列挙した有機リン系化合物の中でも、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱エージング性の一層の向上及び発生ガスの低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物がより好ましい。
【0193】
リン系化合物の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜20.0質量%であり、より好ましくは0.2〜7.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3.0質量%であり、よりさらに好ましくは0.5〜2.5質量%ある。リン系化合物の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物は白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、高温安定性、押出加工安定性、成形加工安定性に優れる傾向にある。
【0194】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、リン系化合物は、ポリアミド樹脂組成物に対して、リン元素濃度が、1,400〜20,000ppmとなる量で含まれることが好ましく、2,000〜20,000ppmとなる量で含まれることがより好ましく、3,000〜20,000ppmとなる量で含まれることがさらに好ましい。
リン元素濃度が上記範囲であることにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性、耐光変色性がより優れる傾向にある。
【0195】
上述したリン系化合物の窒素雰囲気下での分解開始温度は、310℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがより好ましく、330℃以上であることがさらに好ましい。
また、分解開始温度は、特に制限されず高いほど好ましい。分解開始温度が上記範囲内にあることにより、耐熱変色性、耐光変色性、押出加工性により優れる傾向にある。
リン系化合物の分解開始温度は、示差熱天秤により測定することができる。
さらに、ポリアミド樹脂組成物中のリン元素濃度に対するリン系化合物に由来の金属元素濃度の比率が、0.3〜0.8であることが、ポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性、耐光変色性の観点から好ましく、より好ましくは0.3〜0.7%である。なお、リン元素に対する金属元素濃度の比率は、リン元素濃度を測定する方法と同様にして、ICP発光分光分析法により測定することができる。「リン系化合物に由来の」とは、酸化チタンや後述する無機充填剤由来の金属元素を含まないことを意味する。
【0196】
リン系化合物は、(A)ポリアミドの重合時に添加してもよいが、(A)ポリアミドを重合した後、上述した金属水酸化物、金属酸化物、リン系化合物成分と混合するポリアミド樹脂組成物の製造時に添加することが好ましい。ポリアミド樹脂組成物製造時に添加することで、熱履歴を少なくすることができ、リン系化合物の分解等を抑制することができ、白色度、耐リフロー性、耐熱変色性、押出加工性、及び成形加工安定性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0197】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、金属水酸化物及び/又は金属酸化物、リン系化合物由来の金属元素濃度は、ポリアミド樹脂組成物に対して、金属元素濃度が、1,000〜40,000ppmとなる量含まれることが好ましく、2,000〜30,000ppmとなる量含まれることがより好ましく、3,000〜25,000ppmとなる量含まれることがさらに好ましい。前記金属元素濃度が上記範囲であることにより、ポリアミド樹脂組成物の耐リフロー性、耐光変色性がより優れる。なお、金属元素濃度は、実施例に記載の方法等により測定することができる。
【0198】
(フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、熱安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤をさらに含有していてもよい。
【0199】
フェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール系酸化防止剤、中でもヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂に耐熱性や耐光性を付与する性質を有する。
【0200】
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。中でも、耐熱エージング性向上の観点から、フェノール系酸化防止剤は、好ましくはN,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]である。
なお、フェノール系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0201】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中のフェノール系酸化防止剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。フェノール系酸化防止剤の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性により優れ、発生ガス量のより低いものとなる傾向にある。
【0202】
アミン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン、6−エトキシ−1,2−ジハイドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、フェニル−α−ナフチルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルデンジル)ジフェニルアミン、(p−トルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミンが挙げられる。
なお、本実施形態において、アミン系酸化防止剤とは、芳香族アミン系化合物を含む。
アミン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0203】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中のアミン系酸化防止剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。アミン系酸化防止剤の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物は、耐熱エージング性により優れ、発生ガス量のより低いものとなる傾向にある。
【0204】
(アミン系光安定剤)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、光安定性の観点から、アミン系光安定剤をさらに含有していてもよい。
【0205】
アミン系光安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。
本実施形態では、アミン系光安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0206】
アミン系光安定剤は、分子量が2,000未満の低分子型であることが、ポリアミド樹脂組成物の光安定性のより一層の向上の観点から好ましい。より好ましくは、アミン系光安定剤の分子量は1,000未満である。
【0207】
また、アミン系光安定剤は、N−H型(アミノ基に水素が結合していることを示す)、N−R型(アミノ基にアルキル基が結合していることを示す)、NOR型(アミノ基にアルコキシ基が結合していることを示す)等のタイプがあるが、中でもN−H型であることがポリアミド樹脂組成物の光安定性のより一層の向上の観点から好ましい。
【0208】
アミン系光安定剤としては、光安定性向上の観点から、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートが好ましい。
このなかでも、アミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートがより好ましい。
このなかでも、アミン系光安定剤としては、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミドがさらに好ましい。
【0209】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中のアミン系光安定剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0〜2質量%であり、より好ましくは0.01〜2質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
アミン系光安定剤の含有量が上記の範囲内であることにより、ポリアミド樹脂組成物の光安定性、耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0210】
(ポリアミド樹脂組成物に添加してもよい他の成分)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記した成分の他に、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。
他の成分としては、特に限定されないが、例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチ含む)、離型剤、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光増白剤、可塑化剤、銅化合物、ハロゲン化アルカリ金属化合物、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、核剤、ゴム、強化剤並びに他のポリマー等が挙げられる。
ここで、上記した他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0211】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、前記(A)ポリアミド、(B)酸化チタン、(C)無機充填材、(D)シリコーン化合物、さらに必要に応じて、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤、アミン系光安定剤等を含む各原料成分を混合する方法を用いることができる。
(A)ポリアミドと(B)酸化チタンとの混合方法としては、特に限定されないが、例えば、(A)ポリアミドと(B)酸化チタンとを、タンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合して、得られた混合物を溶融混練機に供給し混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィダーから(B)酸化チタンを配合する方法等が挙げられる。
(C)無機充填材を配合する場合も同様の方法を用いることができ、(A)ポリアミド等と(C)無機充填材とを混合して、得られた混合物を溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド及び(B)酸化チタンに、サイドフィダーから(C)無機充填材を配合する方法等が挙げられる。
ポリアミド樹脂組成物の各構成成分を溶融混練機に供給する方法としては、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給する方法でもよいし、各構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給する方法でもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃であることが好ましい。また、溶融混練時間は、0.25〜5分であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
【0212】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物の25℃の硫酸相対粘度ηr、融点Tm2、融解熱量ΔHm、結晶化熱量ΔHc、ガラス転移温度Tgは、前記(A)ポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。また、ポリアミド樹脂組成物における測定値が、前記(A)ポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、耐熱性、成形性、及び耐薬品性により優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
【0213】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、熱安定性が高いことが好ましい。熱安定性は後述する実施例に記載の条件で測定した、空気中の熱減量によって評価することができる。本実施形態のポリアミド樹脂組成物においては、熱処理後の反射率保持率を高く維持する観点で、350℃10分間の熱減量は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。
【0214】
〔成形品〕
本実施形態の成形品は、上述のポリアミド樹脂組成物を含む。
本実施形態の成形品は、耐リフロー性、耐熱変色性、耐光変色性に優れており、特に反射板等に好適に用いることができる。
本実施形態の成形品は、例えば、上述のポリアミド樹脂組成物を公知の成形方法で成形することにより得ることができる。当該公知の成形方法としては、特に限定されないが、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸等、一般に知られているプラスチック成形方法を挙げることができる。
【実施例】
【0215】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0216】
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
なお、本実施例において、1kg/cm
2は、0.098MPaを意味する。
【0217】
〔原材料〕
((A)ポリアミド)
本実施例、比較例において用いる(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を適宜用いて製造した。
【0218】
<(a)ジカルボン酸>
(a−1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(イーストマンケミカル社製、商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75))
(a−2)テレフタル酸(和光純薬工業社製)
<(b)ジアミン>
(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MC5DA)(東京化成工業製)
(b−2)1,9−ノナメチレンジアミン(C9DA)(アルドリッチ社製)
(b−3)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MC8DA)(特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。)
(b−4)1,10−デカンジアミン(C10DA)(東京化成工業社製)
【0219】
((B)酸化チタン)
(B−1)TiO
2(石原産業社製、商品名:タイペーク(登録商標)CR−63、数平均粒子径:0.21μm、コーティング:アルミナ、シリカ及びシロキサン化合物)
なお、本実施例において、(B)酸化チタンの数平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により以下のとおり測定した。
ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、ポリアミド樹脂組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、任意に選択した100個以上の酸化チタンを、電子顕微鏡で観察して、これらの粒子径を測定し、平均値を算出することにより、(B)酸化チタンの数平均粒子径を求めた。
【0220】
((C)無機充填材)
(C−1)ウォラストナイト(数平均繊維径8μm)
(C−2)ガラス繊維(数平均繊維径13μm)
無機充填材の数平均繊維径は、ポリアミド樹脂組成物を電気炉に入れて、ポリアミド樹脂組成物中に含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、任意に選択した100本以上のガラス繊維を、SEMで観察して、これらのガラス繊維の繊維径を測定し、平均値を算出することにより求めた。
【0221】
((D)シリコーン化合物)
(D−1)アラルキル変性非反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF−410、粘度(25℃)900mm
2/s)
(D−2)シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KS−61)
(D−3)高級脂肪酸アミド変性非反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF−3935、融点49℃)
(D−4)エポキシ変性反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:KF−105、粘度(25℃)15mm
2/s、官能基当量=490g/mol)
(D−5)エポキシ変性反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:X−22−173BX、粘度(25℃)30mm
2/s、官能基当量=2500g/mol)
(D−6)カルボキシ変性反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名:X−22−162C、粘度(25℃)220mm
2/s、官能基当量=2300g/mol)
【0222】
(リン化合物)
次亜リン酸ナトリウム一水和物(和光純薬工業社製)
【0223】
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤(BASF社製、商品名:IRGANOX(登録商標)1098)
【0224】
(アミン系光安定剤)
2−エチル−2−エトキシ−オキザルアニリド(クラリアントジャパン社製、商品名:ナイロスタブS−EED)
(造核剤)
タルク(日本タルク社製、商品名:MICRO ACE(登録商標)L−1 平均粒子径 5μm)
【0225】
〔特性の測定方法〕
((1)25℃の硫酸相対粘度ηr)
JIS−K6810に準じて25℃の硫酸相対粘度ηrの測定を実施した。
具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を調製し、得られた溶解液を用いて25℃の温度条件下で硫酸相対粘度ηrを測定した。
【0226】
((2)引張強度)
後述する実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片に成形した。
成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度をポリアミドの高温側の融解ピーク温度(T
pm-1)+20℃に設定した。
得られた多目的試験片A型の成形片を用いて、ISO 527に準拠し、23℃の条件下、引張速度50mm/minで引張試験を行い、引張降伏応力を測定し、引張強度とした。
【0227】
((3)初期反射率(%))
後述する実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて成形することにより、長さ60mm×巾60mm×厚さ2.0mmの平板状成形片を製造した。
成形条件は、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃とし、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドの融点Tm2+20℃に設定した。
得られた成形片の450nmでの反射率を分光光度計により測定し、反射率保持率を算出した。初期反射率は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましいとした。
【0228】
((4)熱処理後の反射率保持率(%))
上記(3)の方法により得られた平板状成形片を、180℃の熱風乾燥機中で150時間加熱処理した。
熱処理後の成形片を、上記(3)と同様にして分光光度計により反射率を測定し、初期反射率で除することで反射率保持率を算出した。
熱処理後の反射率保持率は70%以上が好ましく、75%以上がより好ましいとした。
【0229】
((5)メタルハライド暴露試験における、光照射処理後の反射率保持率(%))
上記(3)の方法により得られた平板状成形片を、メタルハライドランプ式耐光性試験機にて、300nm未満の波長を遮蔽したランプを用いて120℃で1000時間、光照射処理した。試験片を設置した位置での照度は15mW/cm
2に調整した。
処理後の成形片を上記と同様にして分光光度計により反射率を測定し、初期反射率で除することで反射率保持率を算出した。
光照射処理後の反射率保持率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましいとした。
【0230】
((6)高温安定性(350℃10分間の熱減量))
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用いて、示差熱天秤(リガク社製、TG8120)で、空気中、25℃から25℃/minで350℃まで昇温し、350℃で10分間保持した。
さらに350℃から25℃/minで500℃まで昇温し、500℃で10分間保持した。
25℃から昇温して、500℃10分間保持するまでの、トータルの重量変化をA(mg)、350℃で10分間保持した間の重量変化をa(mg)とした時、a/A×100(%)を350℃10分間の熱減量と称し、高温安定性の指標とした。
熱処理後の反射率保持率を高く維持する点で、350℃10分間の熱減量は、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましいとした。
【0231】
((7)表面平滑性)
上記(3)の方法により得られた平板状成形片を用い、任意の10点の表面粗さを、表面粗さ測定器(ミツトヨ社製、サーフテストSV−600)で測定し、該10点における平均粗さ(Rz)(μm)を求めた。平均粗さは10μm以下であることが好ましいものとした。
【0232】
〔(A)ポリアミドの製造〕
(製造例1)
CHDA896g(5.20モル)、及び2MC5DA604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%の水混合液を調製した。
得られた水混合液と、溶融重合時の添加物である、2MC5DA21g(0.18モル)とを内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込んだ。
次に、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで加温した。
その後、オートクレーブ内を窒素置換した。
オートクレーブの槽内(以下、単に「槽内」ともいう。)の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記した。)、約2.5kg/cm
2になるまで加熱を続けた(このとき液温は約145℃であった)。
槽内の圧力を約2.5kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、槽内の水溶液の濃度が約85質量%になるまで濃縮した。
次に、水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm
2になるまで加熱を続けた。
槽内の圧力を約30kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(約345℃)より50℃低い温度(約295℃)になるまで加熱を続けた。
さらに加熱を続けながら、槽内の圧力を60分間かけて大気圧(ゲージ圧は0kg/cm
2)になるまで降圧した。
槽内の樹脂温度(液温)の最終温度が約345℃になるようにヒーター温度を調整した。
槽内の樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で100torrの減圧下に10分維持した。
その後、槽内を窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)から生成物をストランド状にして排出した。
さらにストランド状の生成物を、水冷、カッティングを行いペレット状のポリアミド(ポリアミドペレット)を得た。
【0233】
上述のようにして得られたポリアミドペレット10kgを円錐型リボン真空乾燥機(株式会社大川原製作所製、商品名リボコーンRM−10V)に入れ、該真空乾燥機内を十分に窒素置換した。
該真空乾燥機内に1L/分で窒素を流したまま、ポリアミドペレットを攪拌しながら260℃で6時間、加熱した。
その後、窒素を流通したまま該真空乾燥機内の温度を約50℃まで下げて、ポリアミドペレットを、ペレット状のまま該真空乾燥機から取り出し、ポリアミド(以下、「PA−1」ともいう。)を得た。
得られたポリアミド(PA−1)を、窒素気流中で乾燥し、水分率を約0.2質量%未満に調整してから、該ポリアミドの各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
ポリアミド(PA−1)は、融点Tm2が327℃、ガラス転移温度Tgが150℃、トランス異性体比率が71%、25℃の硫酸相対粘度が3.1であった。
【0234】
〔製造例2〕
CHDA782g(4.54モル)とC9DA575g(3.63モル)と2MC8DA144g(0.91モル)とを蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%の水混合液を調製した。
得られた水混合液と、溶融重合時の添加物である、C9DA11g(0.07モル)とを内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込んだ。
次に、オートクレーブ内の液温(内温)が50℃になるまで加温した。その後、オートクレーブ内を窒素置換した。
オートクレーブの槽内(以下、単に「槽内」とも記す。)の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm
2になるまで加熱を続けた(このとき液温は約145℃であった)。
槽内の圧力を約2.5kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、槽内の水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した。
水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm
2になるまで加熱を続けた。
槽内の圧力を約30kg/cm
2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(約340℃)より50℃低い温度(約290℃)になるまで加熱を続けた。
さらに加熱を続けながら、槽内の圧力を90分間かけて大気圧(ゲージ圧は0kg/cm
2)になるまで降圧した。
槽内の樹脂温度(液温)の最終温度が約340℃になるようにヒーター温度を調整した。
槽内の樹脂温度はその状態のまま、槽内を真空装置で400torrの減圧下に30分維持した。
その後、槽内を窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)から生成物をストランド状にして排出した。
さらにストランド状の生成物を、水冷、カッティングを行いペレット状のポリアミド(以下、「PA−2」ともいう。)を得た。
得られたポリアミドを、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%未満に調整してから、該ポリアミドの各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
ポリアミド(PA−2)は、融点Tm2が316℃、ガラス転移温度Tgが119℃、トランス異性体比率が70%、25℃の硫酸相対粘度が2.4であった。
【0235】
〔製造例3〕
原料のジカルボン酸としてCHDA750g(4.35モル)を用い、原料のジアミンとしてC10DA750g(4.35モル)を用い、溶融重合時の添加物として、C10DA15g(0.09モル)を用い、樹脂温度(液温)の最終温度355℃としたこと以外は、前記製造例3に記載した方法と同様にして重合を実施し、ポリアミド(以下、「PA−3」ともいう。)を得た。
得られたポリアミド(PA−3)を、窒素気流中で乾燥し、水分率を約0.2質量%未満に調整してから、該ポリアミドの各特性を上記測定方法に基づいて測定した。
ポリアミド(PA−3)は、融点Tm2が334℃、ガラス転移温度Tgが121℃、トランス異性体比率が70%、25℃の硫酸相対粘度が2.3であった。
【0236】
〔製造例4〕
テレフタル酸単位をジカルボン酸単位として用い、1,10−デカンジアミンをジアミン単位として用いたこと以外は、上述した〔製造例1〕と同様の操作を行い、ポリアミド10T(以下、「PA−4」ともいう。)を得た。ポリマーの物性値は、融点Tm2は315℃、25℃の硫酸相対粘度は2.0であった。
【0237】
〔ポリアミド樹脂組成物の製造〕
(
参考例1〜11、実施例12〜13、参考例14、15及び比較例1〜3)
上記製造例1〜4で得られたポリアミドと、上記各原材料とを、下記表1に記載の種類及び割合で用いて、ポリアミド樹脂組成物を以下のとおり製造した。
上記製造例1〜4で得られたポリアミドは、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整してから、ポリアミド樹脂組成物の原料として用いた。
【0238】
ポリアミド樹脂組成物の製造装置としては、二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。
当該二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。
また、当該二軸押出機において、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)は48であり、バレル数は12であった。
当該二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を上記製造例1〜4にて製造した各(A)ポリアミド(PA−1〜PA−4)の融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。
【0239】
下記表1に記載の種類及び割合となるように、(A)ポリアミド、リン系化合物、フェノール系酸化防止剤及びアミン系光安定剤を、ドライブレンドした後に、二軸押出機の上流側供給口より供給した。
次に、二軸押出機の下流側第1供給口より、表1に記載の種類及び割合で(B)酸化チタンを供給した。
さらに二軸押出機の下流側第2供給口より、表1に記載の種類及び割合で(C)無機充填材を供給した。
上記のとおり供給した原料を二軸押出機で溶融混練してポリアミド樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド樹脂組成物中の水分量を500ppm以下にした。
該水分量を調整した後のポリアミド樹脂組成物を用いて上記のとおり各種評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0240】
【表1】
【0241】
表1の結果から、
参考例1〜11、実施例12〜13、参考例14、15のポリアミド樹脂組成物は、引張強度、初期反射率、熱処理後の反射保持率、メタルハライド暴露時の反射率保持率、高温安定性及び表面平滑性に優れていることが分かった。
【0242】
また、
参考例15のポリアミド組成物は、より一層、可塑化安定性が向上し、かつさらに結晶化速度が速くなり、短い成形サイクルで成形加工できることが分かった。さらに、得られた成形品の表面の結晶状態をDSCで確認すると型内で十分に結晶化していることが分かった。
また、以上の結果から、
参考例1〜11、実施例12〜13、参考例14、15のポリアミド樹脂組成物は、各反射保持率に優れるため、光を反射する機能を有する部品、例えば、LED、プロジェクタなどの光源、照明器具や自動車のヘッドランプ用の反射板に好適であることが分かった。