(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
まず、非接触伝送路を有する通信装置の構成、及び動作について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1は、通信装置200の構成を示す回路図であり、
図2、及び
図3は、通信装置200の信号波形を示すタイミングチャートである。
図2、
図3は、
図1に示す端子A〜Sでの信号波形を示している。すなわち、端子A〜Sにおける信号を適宜、信号A〜S等として説明する。
【0012】
図1に示すように通信装置200は、送信回路210と、非接触伝送路220と、受信回路230とを備えている。通信装置200は、パルスアイソレータなどであり、非接触伝送路220を介して、信号を伝送する。すなわち、送信回路210から送信された信号は非接触伝送路220を介して、受信回路230に受信される。
【0013】
送信回路210は、反転増幅器213、エッジ検出回路214、エッジ検出回路215、AND回路216〜218、反転増幅器219を備えている。非接触伝送路220は、一次側コイル221、二次側コイル222、フィルタ223、フィルタ224を備えている。受信回路230は、復元回路235を備えている。復元回路235は、コンパレータ231、コンパレータ232、拡幅回路233、拡幅回路234、判定回路236、ラッチ回路237を備えている。
【0014】
送信回路210は、入力信号INを送信パルスに変換する回路である。送信回路210で生成された送信パルスは、非接触伝送路220を介して、受信回路230に受信される。受信回路230の復元回路235は、非接触伝送路220を介して受信した受信パルスを用いて、信号を復元する。
【0015】
分岐された入力信号INの一方は、反転増幅器213を介して、エッジ検出回路214に入力され、他方はエッジ検出回路215に入力される。エッジ検出回路214、及びエッジ検出回路215は信号の立ち上がり(ライズエッジ)を検出する。したがって、
図2に示す入力信号INが受信回路210に入力されると、エッジ検出回路214、エッジ検出回路215からの出力信号は、それぞれ
図2のA、Bのような信号波形になっている。エッジ検出回路214、エッジ検出回路215からの信号A,Bは、AND回路216に入力される。AND回路216は信号Aと信号Bとの論理積(AND)をAND回路217、218に出力する。AND回路216からの出力は、
図2の信号Cのようになっている。AND回路216からの信号Cは、入力信号INのライズエッジに対応するライズパルスと、フォールエッジに対応するフォールパルスが含まれている。
【0016】
AND回路217には、AND回路216からの信号Cと、反転増幅器213からの信号が入力されている。したがって、AND回路217は信号Cと、入力信号INの反転信号とのANDを出力する。AND回路217の出力は、3段の反転増幅器219で増幅されて、
図2の信号Dのようになる。AND回路218には、AND回路216の信号Cと、入力信号INが入力されている。したがって、AND回路217は信号Cと、入力信号INのANDを出力する。AND回路218の出力は、3段の反転増幅器219で増幅されて、
図2の信号Eのようになる。
【0017】
送信回路210は、信号Dと信号Eを非接触伝送路220に送信する。非接触伝送路220は、一次側コイル221と二次側コイル222とフィルタ223とフィルタ224とを備えている。一次側コイル221と二次側コイル222とは、絶縁境界が介在した絶縁トランスとなっている。また、二次側コイル222は、センタ―タップによってVDDに接続されている。一次側コイル221の一端には信号Dが供給され、他端には信号Eが供給される。
【0018】
したがって、一次側コイル221には、信号Dと信号Eとに応じた電流Fが流れる(
図2のF参照)。入力信号INの立ち上がり(ライズエッジ)、又は立ち上がり(フォールエッジ)に応じたタイミングで、パルス状の電流Fが一次側コイル221に流れる。また、入力信号INのライズエッジとフォールエッジとでは、一次側コイル221に流れる電流Fの方向が反対になる。これにより、入力信号INのエッジの情報を送信パルスの極性に変換することができる。
【0019】
二次側コイル222には、電流Fに応じた差動電圧が誘起される。差動電圧Gは、
図2、及び
図3の信号Gに示されている。差動電圧Gには、入力信号INのエッジに対応するエッジパルス(メインパルス)と、エッジパルスの直後に現れるカウンターパルスが存在している。カウンターパルスはエッジパルスと反対の極性となっており、エッジパルスと対となって現れる。差動電圧Gには、入力信号INのライズエッジに対応する正極性のエッジパルスと、入力信号INのフォールエッジに対応する負極性のエッジパルスが存在している。さらに、正極性のエッジパルスの直後には負極性のカウンターパルスが存在し、負極性のエッジパルスの直後には、正極性のカウンターパルスが存在している。
【0020】
二次側コイル222の一端はフィルタ223に接続され、他端はフィルタ224に接続されている。フィルタ223、及びフィルタ224は、例えばRとCとを備えたハイパスフィルタ(HPF)である。フィルタ223、及びフィルタ224は、非接触伝送路220を介して受信した受信パルスからノイズ成分を除去する。フィルタ223、224を通過した信号はそれぞれコンパレータ231、232に出力される。
【0021】
コンパレータ231では、フィルタ223の出力信号が非反転入力端子に入力され、フィルタ224の出力信号が反転入力端子に入力される。したがって、コンパレータ231は、差動電圧Gの正極性のパルスを検出する。コンパレータ231の出力は、
図3の信号Hのようになる。コンパレータ232では、フィルタ223の出力が反転入力端子に入力され、フィルタ224の出力が非反転入力端子に入力される。したがって、コンパレータ231は、差動電圧Gの負極性のパルスを検出する。コンパレータ232の出力は、
図3の信号Jのようになる。信号Hには、差動電圧Gの正極性のパルスに対応するパルスが含まれている。信号Jには、差動電圧Gの負極性のパルスに対応するパルスが含まれている。コンパレータ231、232は、二次側コイル222の両端子を差動入力とする差動アンプとなる。
【0022】
コンパレータ231からの信号Hは、拡幅回路233に入力される。コンパレータ232からの信号Jは、拡幅回路234に入力される。拡幅回路233、拡幅回路234は、入力された信号H、Jのパルス幅をそれぞれ拡幅する。すなわち、拡幅回路233、及び拡幅回路234は、ライズエッジを高速に出力し、フォールエッジを遅延して出力する遅延回路である。これにより、パルスの立ち下がりを遅らせることができる。よって、拡幅回路233は、信号Hに含まれるパルスのパルス幅を広くする。拡幅回路233は、信号Jに含まれるパルスのパルス幅を広くする。したがって、拡幅回路233からの出力、及び拡幅回路234の出力は、それぞれ
図3の信号I、及び信号Kのようになる。
【0023】
拡幅回路233からの信号I、及び拡幅回路234からの信号Kは、判定回路236に入力される。判定回路236は信号Iのパルスと信号Kのパルスの先着を判定する回路である。判定回路236は、フリップフロップ回路236aと、フリップフロップ回路236bとAND回路236cと、AND回路236dとを備えている。フリップフロップ回路236aと、フリップフロップ回路236bは、S優先のRSフリップフロップ回路である。
【0024】
拡幅回路233からの信号Iは、フリップフロップ回路236bのS端子、及びAND回路236cに入力される。さらに拡幅回路233からの信号Iは反転されて、フリップフロップ回路236aのR端子に入力される。拡幅回路234からの信号Kは、フリップフロップ回路236aのS端子、及びAND回路236dに入力される。さらに拡幅回路233からの信号Kは反転されて、フリップフロップ回路236bのR端子に入力される。
【0025】
フリップフロップ回路236aは、K=1でSetされ、I=0でResetされる。フリップフロップ回路236bは、I=1でSetされ、K=0でResetされる。したがって、フリップフロップ回路236aからの信号、及びフリップフロップ回路236bからの信号は、それぞれ
図3の信号L、及び信号Mのようになる。
【0026】
フリップフロップ回路236aからの信号Lは、反転して、AND回路236cに入力される。フリップフロップ回路236bからの信号Mは、反転して、AND回路236dに入力される。したがって、AND回路236cの出力、及びAND回路236dの出力は、それぞれ
図3の信号S、及び信号Rのようになる。AND回路236cからの信号SとAND回路からの信号Rは、反転されて、ラッチ回路237に入力される。ラッチ回路237は2つのNAND回路を含んでいる。
【0027】
ラッチ回路237からの出力信号OUTは、信号Sのパルスのライズをライズエッジとし、信号Rのパルスのライズエッジをフォールエッジとするパルス信号である。従って、ラッチ回路237からの出力信号OUTが入力信号INと同等の信号となる。このようにして、復元回路235が入力信号INを復元する。上記した通信装置200及び通信方法の一部又は全部は、後述する本実施の形態において利用可能である。
【0028】
このように、アイソレータのような通信装置200では、送信回路210は、入力信号INのエッジ部分を抜き出して、ライズパルスと、フォールパルスを生成している。そして、ライズパルスとフォールパルスとで、一次側コイル221に流れる電流Fの方向を変えている。すなわち、入力信号INのライズエッジとフォールエッジのエッジ情報を受信パルスの極性に変換している。例えば、入力信号INのライズエッジでは、差動電圧Gが正極性のエッジパルスとなり、フォールエッジでは差動電圧Gが負極性のエッジパルスとなる。このように、入力信号INのライズエッジとフォールエッジとで、差動電圧Gの極性が変わる。
【0029】
このような通信装置200において、受信側のカウンターパルスが伸びると、次のエッジパルスと干渉してしまう。そのため、Hi/Loの情報が消失して、復元回路235が復元を誤ってしまう恐れがある。そのため、遅延短縮や高データレート化が妨げられるという問題点がある。一方、差動電圧Gに含まれるカウンターパルスから一定の時間Tnは、信号の復元に不要な成分となる。
【0030】
次に、
図4、及び
図5を用いて、上記の問題点について説明する。
図4は、通信装置200の構成を簡略して示すブロック図である。
図5は、通信装置における信号波形を示すタイミングチャートである。すなわち、
図5は、
図4に示す端子A〜Lでの信号波形を示している。なお、
図1〜
図3と共通する内容については、説明を省略する。
【0031】
送信回路210は、パルス生成回路211とパルス生成回路212を備えている。パルス生成回路211は、入力信号Aのライズエッジに対応するライズパルスを生成する。すなわち、パルス生成回路212は、受信信号Aのフォールエッジに対応するフォールパルスを生成する。したがって、パルス生成回路211からの出力とパルス生成回路212からの出力は、
図5の信号B、信号Cに示すようになる。
【0032】
パルス生成回路211からの信号Bが一次側コイル221の一端に供給され、パルス生成回路212からの信号Cが一次側コイル221の他端に供給される。よって、一次側コイル221には、信号Bと信号Cとの差動電圧に応じた電流が流れる。信号Bのライズパルスと信号Cのフォールパルスとで逆極性の電流が一次側コイル221に流れる。
【0033】
二次側コイル222には、一次側コイル221に流れる電流に応じた電圧が発生する。二次側コイル222には、電流の向きに応じた極性の電圧が誘起される。二次側コイル222には、エッジ情報を有する電圧が誘起される。二次側コイル222に発生する電圧は、
図5の電圧D−Eのようになっている。電圧D−Eには、入力信号Aのライズエッジに対応するエッジパルスP1と、フォールエッジに対応するエッジパルスP3が含まれている。正極性のエッジパルスP1の直後には、負極性のカウンターパルスP2があり、負極性のエッジパルスP3の直後には、正極性のカウンターパルスP4がある。
【0034】
図1と同様に、二次側コイル222の一端には、フィルタ223が接続され、他端には、フィルタ224が接続されている。フィルタ223、フィルタ224は、低周波の同相ノイズを除去するハイパスフィルタである。
【0035】
フィルタ223を通過した信号F、及びフィルタ224を通過した信号Gは、
図1と同様にコンパレータ231、232に入力される。そして、コンパレータ231、及びコンパレータ232は、エッジパルス、及びカウンターパルスを極性毎に分離する。コンパレータ231の出力とコンパレータ232の出力は、拡幅回路233、234によって、拡幅される。
【0036】
例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)ドライバに適用されるアイソレータでは、IGBTのスイッチングに伴って、コントローラ側チップ(送信回路210)とIGBT側チップ(受信回路230)の基準電位に1kV程度の差が生じる。この基準電位の変動がトランス間寄生容量を介して伝搬するため、信号Dおよび信号Eに同相ノイズが混入する。しかしながら、ノイズの周波数は一般には信号成分より低いため、フィルタ223、224で除去することができる。フィルタ223を通過した信号Fおよびフィルタ224を通過した信号Gには、エッジ情報の本体であるエッジパルスとその直後に生じる逆極性のカウンターパルスが混在している。2つのコンパレータ231、232はエッジパルス、及びカウンターパルスを極性ごとに分離する。
【0037】
なお、前述のフィルタ223、224にはコンパレータ231、232の動作点を決める役割もある。コンパレータ231、232の出力に含まれるエッジパルスを拡幅回路233、234が拡幅する。
【0038】
拡幅回路233、234からの信号J、Kは、判定回路236に入力される。信号復元に不要なカウンターパルスがエッジパルスの直後に発生する。例えば、判定回路236が先着判定を行うことで、復元回路235が入力信号Aを復元する。信号を先着判定論理で処理することで入力信号Aを復元した出力信号Lが得られる。
【0039】
以上がアイソレータの通信原理である。しかしながら、上記したように、二次側コイル222からの信号D,信号Eに同相ノイズが生じてしまうこともある。同相ノイズは、信号Dと信号Eの両方に同じように乗る。したがって、基本的には、差動構成によって、同相ノイズを除去することができる。しかしながら、信号Dと信号Eに乗る同相ノイズの量が異なってしまう場合がある。この場合の信号波形を
図5に拡大して示す。
図5の信号D−Eの拡大図に示すように、信号Dと信号Eの同相ノイズに差分が生じると、カウンターパルスP2とエッジパルスP3との間にノイズが発生する。
【0040】
図5の拡大図に示すように、同相ノイズにもカウンター成分がある。例えば、正極性の同相ノイズが発生すると、その直後に負極性のカウンター成分が発生する。同相ノイズの周波数成分は低いので、振幅は小さくなるが、ノイズの幅が広くなってしまう。
【0041】
このような同相ノイズがある場合、閾値を下げることができなくなってしまう。すなわち、受信回路230で受信信号を検出するためには、閾値を下げることが有効であるが、同相ノイズがある場合、閾値を下げると同相ノイズに反応してしまう。これにより、受信回路230が、誤作動してしまう。このような同相ノイズは、周波数が低いため、ハイパスフィルタが除去することが可能であるが、RCのハイパスフィルタを通過すると、信号波形に揺り戻しが生じてしまう。
【0042】
フィルタ223、224通過後のカウンターパルスが減衰する過程で、波形がゼロレベルをまたいで再びエッジパルスの極性側に揺り戻しが生じる場合がある(
図5のF−Gの破線)。この揺り戻しは、RCのフィルタ223、224の過渡特性に起因する。揺り戻しによってコンパレータ231、232あるいは拡幅回路233、234の出力においてパルス幅が広くなる恐れがある(
図5の信号J、K参照)。したがって、判定回路236への入力パルスの間隔が狭まる。判定回路236がエッジパルスの処理を終え、スタンバイ状態に戻る前に次のエッジパルスが到達してしまうと、エッジパルスとカウンターパルスを識別できなくなり信号復元を誤る(
図5の出力信号L参照)。
【0043】
上記のように、F−Gの破線に示す揺り戻しがある場合、拡幅回路233、234の出力J、Kには、揺り戻しの期間にもパルスが生じてしまう。したがって、パルス幅が広くなると、パルス同士が干渉してしまい、信号の復元が困難になる。特に、高データレートでの通信を行う場合、パルスが干渉しやすいため、信号復元が困難になる。なお、特許文献1では、揺り戻しを減衰することができるが、エッジパルスも減衰してしまう。このため、復元回路235が信号復元を誤ってしまうおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態では、受信回路が受信信号の初期化を行っている。なお、受信信号の初期化とは、受信信号を減衰または消去することである。このようにすることで、信号を確実に復元することができる。したがって、遅延短縮、及びデータレートの高速化を図ることができる。
【0045】
実施の形態1.
本実施の形態にかかる通信装置100について、
図6を用いて説明する。
図6は、通信装置100の構成を示すブロックである。
図7は、
図6の端子A〜Lにおける信号波形を示すタイミングチャートである。通信装置100は、送信回路10と、非接触伝送路20と、受信回路30とを備えている。受信回路30は、復元回路35と、初期化制御部40と、初期化部50と、を備えている。
【0046】
図1に示した通信装置200と同様に、通信装置100は、パルスアイソレータなどであり、非接触伝送路20を介して、信号を伝送する。非接触伝送路20は交流結合素子である1次側コイル21及び二次側コイル22を備えている。送信回路10から送信された信号は非接触伝送路20を介して、受信回路30に受信される。送信回路10、非接触伝送路20、及び復元回路35は、
図1、又は
図4に示した送信回路210、非接触伝送路220、及び復元回路235と同様の構成であるため説明を省略する。すなわち、受信回路30は、
図1又は
図4に示した構成に、初期化制御部40と、初期化部50とが追加された構成を有している。また、入力信号A、及び送信回路10からの信号B、Cは、
図5と同様になっている。
【0047】
送信回路10から非接触伝送路20を介して受信した受信信号F,Gが復元回路35に入力される。復元回路35は、受信信号F,Gに基づいて、入力信号Aを復元する。すなわち、復元回路35は、入力信号Aに対応する出力信号Lを生成する。復元回路35における処理には、
図1〜
図5で示した処理と同様の処理を用いることができる。すなわち、復元回路35は、コンパレータや拡幅回路を有している。
【0048】
信号Fと信号Gとの差動電圧F−Gには、
図7に示すように、エッジパルス(メインパルス)P1,P3とカウンターパルスP2,P4が含まれている。復元回路35は、初期化制御部40に信号を送信する。初期化制御部40はその信号から信号復元に必要な部分と不要な部分とを識別し、その識別結果を初期化制御信号Mとして初期化部50に伝達する。初期化部50は、初期化制御部40から送信された初期化制御信号Mに従って非接触伝送路20の信号Fおよび信号Gを初期化する。
【0049】
なお、非接触伝送路20からの信号F,信号Gの差動電圧における揺り戻し成分(F−Gの破線)が、次のエッジパルスと干渉することを避ける必要がある。このため、例えば、カウンターパルスP2の後において、初期化制御信号Mは遅くとも次のエッジパルスP3が到達するまでに初期化指示を終了する。同時に、初期化動作により復元回路35が動作できる下限の信号強度を下回るまで信号Fおよび信号Gを減衰させるように、初期化部50の能力を調整する。具体的な一例として、初期化制御部40は、信号Fと信号Gを入力とするOR(論理和)回路を含んでいる。また、初期化部50は、スイッチとなるトランジスタを含んでいる。そして、初期化部50のトランジスタが、非接触伝送路20の出力側の端子Fと端子Gとを接続する。初期化制御部40からの初期化制御信号FによってトランジスタがON/OFFする。
【0050】
本実施形態では、信号F−Gのエッジパルスが復元回路35に入力されると初期化制御部40から初期化制御信号Mが出力される。初期化制御信号Mが出力される条件は、復元回路35に入力される信号のエッジ
パルスが到達することである。例えば、エッジパルスP1の到達後、次のエッジパルスP3が到達するまでの全ての信号成分は復元動作に不要である。初期化部50のトランジスタのゲートに初期化制御部40からの初期化制御信号Mを入力する。初期化部50は、初期化制御信号Mに基づいて、端子Fと端子Gとを短絡する。こうすることで、復元に不要な受信信号を初期化部50が強制的に減衰させる。
【0051】
この結果、隣接パルス間隔を狭めてもパルス同士の干渉が起こりにくくなる。よって、入出力間遅延の短縮や高データレート化を達成することが可能になる。なお、復元回路35から初期化制御部40へ送信する信号は、復元回路35の内部波形だけでなく、例えば復元回路35の入力信号そのものであっても良い。あるいは、初期化制御信号Mの生成に適した任意の端子から取り出すことができる。また、初期化制御部40はOR回路に限られるものではない。例えば、初期化制御部40は、AND回路とすることもできる。初期化部50が端子Fと端子Gを接続するトランジスタに限られるものではない。例えば、初期化部50が、端子Fと端子Gを個別に基準電位と接続するトランジスタであってもよい。
【0052】
次に、本実施形態にかかる通信装置100の非接触伝送路20、及び受信回路30の詳細な構成、及び動作について、
図8〜
図10を用いて説明する。
図8は、通信装置100の構成の一例を示す回路図である。
図9は、初期化を行わない場合の信号波形を示すタイミングチャートであり、
図10は初期化を行った場合の信号波形を示すタイミングチャートである。
【0053】
送信回路10は、エッジ生成回路11とエッジ生成回路12とを備えている。エッジ生成回路11は、入力信号Aに含まれるパルスのライズエッジを検出して、検出したライズエッジに対応するエッジパルスを生成する。エッジ生成回路11は、入力信号Aに含まれるパルスのフォールエッジを検出して、検出したフォールエッジに対応するエッジパルスを生成する。
【0054】
送信回路10からは信号B、及び信号Cが非接触伝送路20に送信される。非接触伝送路20は、一次側コイル21、及び二次側コイル22を備えている。一次側コイル21と二次側コイル22とは、絶縁境界が介在した絶縁トランスとなっている。すなわち、一次側コイル21と二次側コイル22とは交流的に結合された交流結合素子である。一次側コイル21の一端には信号Bが供給され、他端には信号Cが供給される。したがって、一次側コイル21には、信号Bと信号Cとの差動電圧に応じた電流が流れる。入力信号INの立ち上がり(ライズエッジ)、又は立ち上がり(フォールエッジ)のタイミングで、パルス状の電流が一次側コイル21に流れる。また、入力信号INのライズエッジにおいて一次側コイル21に流れる電流は、フォールエッジにおいて一次側コイル21に流れる電流と反対の向きになる。これにより、入力信号Aのエッジの情報を送信パルスの極性に変換することができる。
【0055】
従って、二次側コイル22には、一次側コイル21に流れる電流に応じた差動電圧が誘起される。差動信号F−Gには、入力信号INのエッジに対応するエッジパルスと、エッジパルスの直後に現れるカウンターパルスが存在している。カウンターパルスはエッジパルスと反対の極性となっている。差動信号F−Gには、入力信号INのライズエッジに対応する正極性のエッジパルスP1と、入力信号INのフォールエッジに対応する負極性のエッジパルスP3が存在している。さらに、正極性のエッジパルスP1の直後には負極性のカウンターパルスP2が存在し、負極性のエッジパルスP3の直後には、正極性のカウンターパルスP4が存在している。
【0056】
二次側コイル22の一端はフィルタ23に接続され、他端はフィルタ24に接続されている。フィルタ23、及びフィルタ24は、例えばRとCとを備えたハイパスフィルタ(HPF)である。フィルタ23、及びフィルタ24は、非接触伝送路20を介して受信した受信パルスからノイズ成分を除去する。フィルタ23、24を通過した信号F,信号Gは受信回路30に出力される。
【0057】
受信回路30は、復元回路35、初期化制御部40、及び初期化部50を備えている。復元回路35は、コンパレータ31、32、拡幅回路33、34、及び判定回路36を有している。コンパレータ31では、フィルタ23を通過した信号Fが非反転入力端子に入力され、フィルタ24を通過した信号Gが反転入力端子に入力される。したがって、コンパレータ31は、差動電圧F−Gの正極性のパルスを検出する。コンパレータ31の出力は、
図9、10の信号Hのようになる。コンパレータ32では、フィルタ23を通過した信号Fが反転入力端子に入力され、フィルタ24を通過した信号Gが非反転入力端子に入力される。したがって、コンパレータ32は、差動電圧F−Gの負極性のパルスを検出する。コンパレータ32の出力は、
図9、10の信号Iのようになる。コンパレータ31、32は、二次側コイル22の両端を差動入力とする差動アンプとなる。
【0058】
コンパレータ31からの信号Hは、拡幅回路33に入力される。コンパレータ32からの信号Iは、拡幅回路34に入力される。拡幅回路33、拡幅回路34は、入力された信号H、Iのパルス幅をそれぞれ拡幅する。すなわち、拡幅回路33、及び拡幅回路34は、ライズエッジを高速に出力し、フォールエッジを遅延して出力する遅延回路である。これにより、パルスの
立ち下がりを遅らせることができる。よって、拡幅回路33は、信号Hのパルスのパルス幅を広くして、信号Jとして判定回路36に出力する。拡幅回路34は、信号Iのパルスのパルス幅を広くして、信号Kとして判定回路36に出力する。拡幅回路33からの出力、及び拡幅回路34の出力は、それぞれ
図9、10の信号J、及び信号Kのようになる。
【0059】
拡幅回路33、34は信号J,及び信号Kを判定回路36に出力する。判定回路36はパルスの先着を判定する論理回路を含んでいる。すなわち、判定回路36は、信号Jのパルスと信号Kのパルスのどちらが先に着くかを判定している。判定回路36は、
図1で示した判定回路36と同様の構成とすることができるため、説明を省略する。
【0060】
初期化制御部40はOR回路を備えている。具体的には、初期化制御部40はNOR回路となっている。初期化制御部40には、信号J、及び信号Kが入力される。すなわち、初期化制御部40は信号Jと信号KのNORを初期化制御信号Mとして、初期化部50に出力する。
【0061】
初期化部50は、端子Fと端子Gとの間に配置されたトランジスタを備えている。より具体的には、トランジスタのソースが端子Fと接続され、ドレインが端子Gと接続される。初期化制御部40からの初期化制御信号Mは、トランジスタのゲートに入力される。したがって、初期化制御信号Mによって、トランジスタのON/OFFが制御される。スイッチであるトランジスタがONすることで、端子Fと端子Gとが短絡される。
【0062】
差動電圧F−Gには、カウンターパルスの揺り戻しが生じる(
図9、
図10の信号F−Gを参照)。初期化を行わない場合、この揺り戻しによって、信号H、及び信号Iには、復元に不要なパルスP5、P6が生じてしまう(
図9の信号H,信号I参照)。
【0063】
初期化を行わない場合において、信号H,及び信号Iのパルスを拡幅すると、信号J,信号Kが必要以上に延びてしまう。例えば、
図9に示すように、期間T1が長くなってしまい、期間T2が短くなってしまう。期間T1は、信号Jと信号KとのORがHiとなる期間であり、信号復元に最低限必要な禁止領域である。期間T1に基づいて、遅延短縮の限界が決まる。また、期間T2は、信号Jと信号KとのORがLoとなる期間であり、次のエッジを認識できるタイミング余裕となっている。
【0064】
一方、初期化を行う場合、カウンターパルスP2、P4の揺り戻しのタイミングで、初期化が行われる。
図10に示すように、信号復元に不要なパルスP5,P6が信号H、及び信号Iから除去される。拡幅回路33、34が信号H,及び信号Iのパルスを拡幅すると、信号J、及び信号Kは、
図10に示すようになる。信号Jと信号KとのORがHiとなる期間T1は、初期化を行わない場合よりも短くなる。よって、禁止領域を短縮することができ、パルスの遅延時間を短縮することができる。信号Jと信号KとのORがLoとなる期間T2を長くすることができ、エッジを認識するタイミング余裕が増える。すなわち、タイミングマージンの減少を小さくすることができ、信号を精度よく復元することができる。
【0065】
このように、受信回路30側に初期化制御部40、及び初期化部50を設けることで、信号を確実に復元することができる。例えば、初期化制御部40が受信信号から必要な部分と不要な部分とを検知し、その検知結果に基づいて、初期化制御信号を初期化部50に出力する。初期化部50は、初期化制御信号に基づいて、受信信号の初期化を実行する。こうすることで、エッジパルスの後の一定期間において、信号F、信号Gが初期化される。揺り戻しによってカウンターパルスの後に生じる不要なパルスP5、P6を除去することができる。したがって、信号復元に最低限必要な期間T1と短くすることができ、遅延を短縮することができる。さらに、データレートの高速化を図ることができる。
【0066】
さらに、初期化部50が初期化制御信号MによってON/OFF制御されるトランジスタを有している。こうすることで、初期化部50が適切なタイミングで初期化を開始又は終了することができる。初期化部50のトランジスタが端子Fと端子Gとを導通する。こうすることで、回路構成を簡素化することができる。また、初期化制御部40にOR回路を用いることで、回路構成を簡素化することができる。もちろん、初期化制御部40の構成は、OR回路に限られるものではなく、AND回路を用いてもよい。
【0067】
実施の形態2.
本実施の形態に係る通信装置100について、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施の形態に係る通信装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、実施の形態1の構成に対して、パルス幅調整回路60と遅延回路70とが追加された構成となっている。なお、パルス幅調整回路60と遅延回路70以外の構成については、実施の形態1と同様であるため、説明を適宜省略する。
【0068】
パルス幅調整回路60及び遅延回路70は、初期化制御部40と初期化部50との間に配置されている。パルス幅調整回路60は、初期化制御部40で生成された初期化制御信号のパルス幅を調整する。遅延回路70は、パルス幅調整回路60で調整された初期化制御信号を遅延させる。そして、遅延回路70で遅延された初期化制御信号Nは初期化部50に入力される。初期化部50は、初期化制御信号Nに基づいて、端子Fと端子Gを短絡させることで、信号Fと信号Gの初期化を行う。こうすることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、パルス幅調整回路60を設けることで、初期化する期間を調整することができる。さらに、遅延回路70を設けることで、初期化の開始タイミングを調整することができる。よって、初期化部50が初期化するタイミング及び期間を最適化することができ、より確実に信号を復元することができる。これにより、遅延短縮、及びデータレートの高速化を図ることができる。
【0070】
実施の形態1では、初期化部50での初期化動作は初期化制御部40からの初期化制御信号Mに従って実行されている。すなわち、初期化制御信号Mの指示により、初期化部50のトランジスタがONする。このため、初期化時間が不足な場合はパルス幅調整回路60が初期化制御信号Mのパルス幅を伸ばす。反対に初期化時間が過剰である場合は、パルス幅調整回路が初期化制御信号Mのパルス幅を縮める。このように、パルス幅調整回路60は、パルス幅を任意に設定することができる。
【0071】
同様に、初期化が始まるタイミングが速い場合は、遅延回路70が遅延時間を長くして、初期化制御信号Mのパルスの到達時間を遅らせる。反対に初期化が始まるタイミングが遅い場合は、遅延回路70は遅延時間を少なくして、初期化パルスの到達時間を早める。このように、遅延回路70は、初期化開始タイミングを任意に設定できる。
【0072】
パルス幅調整回路60、及び遅延回路70から出力される信号の波形について、
図12を用いて説明する。
図12は、通信装置100の端子M、Nでの波形、及びF−Gの差動電圧の波形を示すタイミングチャートである。なお、
図12において、F―Gは、初期化を行わない場合の信号波形を示しており、F―G‘は、初期化を行った場合の信号波形を示している。また、
図12において、Mは、初期化制御部40をOR回路とした場合の信号波形を示しており、M’は、初期化制御部40をAND回路とした場合の信号波形を示している。
【0073】
図12のM、M'に示すように、初期化制御部40の構成によって、初期化制御信号のパルス幅、及びタイミングが異なる。初期化を適切に行うためには、差動電圧F−Gの揺り戻しのタイミングに合うようなパルスを初期化部50に出力する必要がある。したがって、パルス幅調整
回路60と遅延回路70が、初期化制御信号Mのパルス幅及びタイミングを調整することで、
図12のNのような初期化制御信号Nが初期化部50に供給される。
【0074】
図12の初期化制御信号Nによって、初期化部50のトランジスタがON/OFF制御される。こうすることで、
図12の信号F−G’のように、差動電圧の揺り戻しを適切に減衰、または消去することができる。こうすることで、信号L(
図12では不図示)から入力信号Aをより確実に復元することができるようになる。
【0075】
なお、
図11では、パルス幅調整回路60、及び遅延回路70が初期化制御部40と初期化部50との間に配置されているが、パルス幅調整回路60、及び遅延回路70は
図11に示す構成、及び配置に限られるものでない。例えば、パルス幅調整回路60、及び遅延回路70は、復元回路35と独立して設けられたものに限らず、復元回路35の一部の回路を利用することも可能である。例えば、
図1で示したような拡幅回路233、234、又は
図8で示したような拡幅回路33、34の一部を用いて、パルス幅調整回路60、及び遅延回路70を構成することもできる。すなわち、パルス幅調整回路60、及び遅延回路70は、初期化制御部40の前段に設けられていてもよい。
【0076】
ここで、
図13〜
図15を用いて、拡幅回路33、34の一部をパルス幅調整回路60、及び遅延回路70として用いる構成について説明する。
図13は、受信回路30の一部を示す回路図である。
図14は、受信回路30に設けられた拡幅回路33、34の構成を示す回路図である。
図15は、拡幅回路33、34に設けられたコンパレータのトランジスタ構成を示す回路図である。
【0077】
まず、通信装置100の要部構成について
図13を用いて説明する。
図13は、HPF23、24から判定回路36までの回路構成を示す図である。なお、通信装置100の要部構成は、上記と同様であるため、適宜説明を省略する。
【0078】
図8で示した構成と同様に、コンパレータ31、32からの信号H、Jは拡幅回路33、34にそれぞれ入力される。また、拡幅回路33、34には、基準電圧VREFが入力されている。拡幅回路33、34は基準電圧VREFを用いて、パルス幅を拡幅する。拡幅回路33は信号Y1を初期化制御部40に出力し、信号Jを
判定回路36に出力する。拡幅回路
34は信号Y2を初期化制御部40に出力し、信号Kを判定回路36に出力する。判定回路36は、
図1で示した構成と同様を有している。そして、判定回路36は信号J,信号Kのパルスの先着を判定する。そして、判定回路36の判定結果に基づいて、入力信号が復元される。
【0079】
初期化制御部40は、
図8と同様に、NOR回路となっている。初期化制御部40は信号Y1と信号Y2のNORを初期化制御信号Nとして初期化部50に出力する。初期化部50は、
図8と同様に、Pcnのトランジスタを有している。初期化部50のトランジスタのゲートに初期化制御信号Nが入力される初期化部50のトランジスタのソースが端子Gに接続され、ドレインが端子Fに接続される。
【0080】
拡幅回路33、34の構成は、
図14のようになっている。なお、拡幅回路33、34の構成は同一であるため、
図14に示される回路が拡幅回路33であるとして説明する。換言すると、拡幅回路34は
図14と同様の回路構成を有しており、拡幅回路34には信号Hの代わりに信号Iが入力される。拡幅回路34は、信号Jの代わりに信号Kを出力し、信号Y1の代わりに信号Y2を出力する。
【0081】
拡幅回路33には、信号Hと基準電圧VREFが入力されている。拡幅回路33は、コンパレータCOM1〜COM3、インバータINV1、INV2、NAND回路NAND1、NAND2を備えている。基準電圧VREFは、COM1〜COM3に入力されている。
【0082】
コンパレータCOM1は、信号Hと基準電圧VREFとを比較する。コンパレータCOM1は、比較結果を示す比較信号をコンパレータCOM2に出力する。コンパレータCOM2は、コンパレータCOM1の出力と基準電圧VREFを比較する。コンパレータCOM2は、インバータINV1を介して、比較信号をNAND回路NAND1に出力する。NAND回路1は、信号HとインバータINV1の出力信号のNANDをインバータINV2、COM3、及びNAND回路NAND2に出力する。
【0083】
インバータINV2は、NAND回路NAND1からの信号を反転して、信号Y1として出力する。コンパレータCOM3は、NAND回路NAND1からの信号と、
基準電圧VREFとを比較する。そして、比較信号をNAND回路NAND2に出力する。NAND回路NAND2は、NAND回路NAND1からの信号と、コンパレータCOM3からの信号のNANDを信号Jとして出力する。
【0084】
したがって、コンパレータCOM1、COM2,インバータINV1、及びNAND回路NAND1は、拡幅回路33とパルス幅調整回路60とで共通となっている。すなわち、拡幅回路33とパルス幅調整回路60とは、コンパレータCOM1、COM2,インバータINV1、及びNAND回路NAND1を共有している。
【0085】
ここで、コンパレータCOM1、COM2の構成を
図15に示す。なお、コンパレータCOM1、COM2の構成は同様であるため、
図15に示す回路がコンパレータCOM1であるとして説明を行う。
【0086】
コンパレータCOM1は、トランジスタTr1〜Tr5を備えている。トランジスタTr1、Tr4はPchトランジスタである。トランジスタTr2、Tr3、Tr5はNchトランジスタである。電源電圧VCCとグランドGNDの間に、トランジスタTr1〜Tr3が直列に接続されている。
【0087】
具体的には、トランジスタTr1のソースに電源電圧VCCが供給されている。トランジスタTr1のドレインとトランジスタTr2のドレインが接続されている。トランジスタTr2のソースと、トランジスタTr3のドレインが接続されている。トランジスタTr3のソースがグランドGNDに接続されている。トランジスタTr1のゲートとトランジスタTr2のゲートに信号Hが入力される。トランジスタTr3のゲートには信号GNが入力される。信号GNは、基準電圧VREFである。
【0088】
電源電圧VCCとグランドGNDの間に、トランジスタTr4、Tr5が直列に接続されている。具体的には、トランジスタTr4のソースに電源電圧VCCが供給されている。トランジスタTr4のドレインとトランジスタTr5のドレインが接続されている。トランジスタTr5のソースがグランドGNDに接続されている。トランジスタTr1のドレインとトランジスタTr2のドレインとの間の電圧が、トランジスタTr4のゲート、及びトランジスタTr5のゲートに入力される。トランジスタTr4のドレインとトランジスタTr5のドレインとの間の電圧が、出力信号OUTとして、出力される。すなわち、
図15の回路がコンパレータCOM1であるとすると、出力信号OUTは、コンパレータCOM2に出力される。
図15の回路がコンパレータCOM2であるとすると、出力信号OUTは、インバータINV1に出力される
【0089】
このような構成によって、初期化制御部40には、パルス幅が調整された信号J,Kが入力される。よって、初期化部50が適切なタイミングで信号Fと信号Gの初期化を行う。よって、初期化動作の開始タイミング、及び初期化する期間を適切に調整することができる。
【0090】
このように、復元回路35の一部を用いて、パルス幅及びタイミングを調整することができる。すなわち、パルス幅調整回路60、及び遅延回路70が、復元回路35の一部の回路を共有している。こうすることで、パルス幅及びタイミングの調整のために追加する回路を簡素化することができる。よって、回路構成を簡素化することができる。なお、初期化制御信号Nのパルス幅、及びタイミングを調整するための回路は、上記の構成に限られるものではない。すなわち、初期化を行うタイミング、及び期間を調整できる回路が受信側に設けられていればよい。
【0091】
実施の形態3.
本実施の形態にかかる通信装置100について、
図16を用いて説明する。
図16は、通信装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、非接触伝送路20にフィルタ23、24が設けられていない。すなわち、二次側コイル22に初期化部50が直接接続されている。なお、非接触伝送路20以外の構成については、上記の実施の形態と同様であるため、適宜説明を省略する。
【0092】
通信装置100は、送信回路10と非接触伝送路20と復元回路35と初期化制御部40と初期化部50とを備えている。送信回路10は、入力信号Aをパルスに変換する。交流結合素子である一次側コイル21、及び二次側コイル22を備えている。非接触伝送路20は、送信回路10からのパルスを非接触で伝送する。復元回路35は、非接触伝送路20を介して伝送されたパルスに応じた受信信号F,Gに基づいて、入力信号Aを復元する。初期化部50は、非接触伝送路20の出力を初期化する。初期化制御部40は、非接触伝送路20を介して受信したパルスに応じた受信信号に基づいて、初期化部50を制御する制御信号を出力する。
【0093】
上記の通信装置100の信号波形の一例を、
図17に示す。
図17は、各端子における信号波形を示すタイミングチャートである。上記したように、復元回路35に入力されるエッジパルス間のタイミングマージンの減少を防ぐために、初期化部50が初期化を行っている。非接触伝送路20にフィルタ23、24がない場合、タイミングマージンの減少の原因であるカウンターパルスの揺り戻しが生じない。しかしながら、カウンターパルスの過渡特性による揺り戻しが生じない場合でも、差動電圧F−Gにリンギングが生じる場合がある(
図17のF−G参照)。例えば、二次側コイル22のインダクタンスに起因した受信信号のリンギングによっても、タイミングマージンが減少してしまう。この場合、
図7のように二次側コイル22の直後を初期化することで、タイミングマージンの減少を抑制できる。
【0094】
したがって、実施の形態1と同様に、復元回路35からの信号に基づいて、初期化制御部40が初期化制御信号Mを生成する(
図17のM参照)。そして、初期化制御信号Mに基づいて、初期化部50が信号F、及び信号Gの初期化を行うと、初期化後の差動電圧F−G‘は、
図17のF−G‘のようになる。このようにすることで、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0095】
なお、非接触の伝送方式としては、信号復元に種々の手法がある。例えば、実施の形態1で示した(1)パルス極性に基づく信号復元だけでなく、(2)パルス数による信号復元、及び(3)Set/Reset回路による信号復元などがある。本実施の形態にかかる信号初期化の動作は(1)〜(3)のいずれにも利用することができる。この点について、以下に説明する。
【0096】
(1)パルス極性による信号復元
パルス極性によって信号を復元する構成例を
図18に示す。
図18は、パルス極性によって信号を復元する回路構成を簡略化して示す図である。なお、
図18は、一次側コイル21の入力、及び二次側コイル22の出力を1系統のみを示す図である。
【0097】
上記したように、コンパレータ31からの信号に基づいて、判定回路36がパルスの先着判定を行う。
図18に示す構成での信号波形を
図19に示す。
図19では、正常に信号が復元された場合の信号波形と、揺り戻しによって復元に異常が生じた場合の信号波形とが示されている。入力信号のエッジ検出により、信号Aが一次側コイル21に供給される。信号Aによって一次側コイル21に電流が流れると、二次側コイル22では信号Bが生成される。
【0098】
(1)パルス極性による信号復元では、カウンターパルスと、識別対象であるエッジパルスとの切り分けが必要である。信号Bにカウンターパルスの揺り戻しの影響が大きくなってしまう。よって、(1)パルス極性による復元では、(2)パルス数による復元、及び(3)Set/Resetによる信号復元よりも、初期化の効果が大きくなる。
【0099】
例えば、識別対象であるエッジパルス間に、揺り戻しが生じている。揺り戻しによって、パルスがくっついて、振幅が減ってしまう。よって、出力異常が生じてしまう。しかしながら、実施の形態1〜3に示したように、初期化を行うことで、揺り戻しを消去又は減衰することができる。よって、正常に信号を復元することができる。
【0100】
(2)パルス数による信号復元
(2)パルス数によって信号を復元する構成例を
図20に示す。
図20は、パルス
数によって信号を復元する回路構成を簡略化して示す図である。なお、
図20は、一次側コイル21の入力、及び二次側コイル22の出力を1系統のみ示す図である。
図20では、コンパレータ31の出力がカウンター41に入力されている。カウンター41は、エッジパルスの数をカウントすることによって、信号を復元する。
【0101】
(2)パルス数によって信号を復元する場合、カウンターパルスは復元に影響しない。しかしながら、カウンターパルスの揺り戻しが生じることで、次のエッジパルスを干渉する可能性がある。よって、
図21に示すように、揺り戻しが次のエッジパルスと干渉すると、エッジパルスのカウント数が減ってしまう。パルス数によって信号を復元する場合、実施の形態1〜3で示したように信号を初期化することで、揺り戻しを消去又は減衰することができる。よって、信号を正確に復元することができる。
【0102】
(3)Set/Resetによる信号復元
(3)Set/Resetによって信号を復元する構成を
図22に示す。
図22は、
Set/Resetによって信号を復元する回路構成を簡略化して示す図である。なお、
図22に示す構成では、非接触伝送路20に2つの一次側コイル21a、21bと2つの二次側コイル22a、22bとが設けられている。さらに、二次側コイル22aからの信号Bが入力されるコンパレータ31aと、二次側コイル22bからの信号B'がコンパレータ31bに入力される。コンパレータ31a、31bの出力は、SR論理回路42に入力される。SR論理回路42は、SRラッチ回路を含んでおり、コンパレータ31a、31bの出力に基づいて、入力信号を復元する。
【0103】
(3)Set/Resetによって信号を復元する場合、カウンターパルスは復元に影響しない。しかしながら、カウンターパルスの揺り戻しが生じることで、次のエッジパルスを干渉する可能性がある。例えば、カウンターパルスに揺り戻しが生じると、出力Bのエッジパルスと、出力B’のパルス(揺り戻し)が時間的にくっついてしまう。よって、
図23に示すように、揺り戻しが次のエッジパルスと干渉すると、信号を誤って復元してしまう。
図22の構成でも場合、実施の形態1〜3で示したように信号を初期化することで、揺り戻しを消去又は減衰することができる。よって、信号を正確に復元することができる。
【0104】
(適用例)
本実施の形態に係る通信装置100をアイソレータとして、モータを駆動するインバータ装置に適用することができる。
図24は、本実施形態に係る通信装置100をアイソレータとして、インバータ装置に適用した場合の構成を示す図である。
【0105】
図24に示すインバータ装置は、低電圧回路110と、高電圧回路120とを備えている。低電圧回路110は例えば、5V程度の低電圧で動作する。高電圧回路120は、例えば、1kV程度の高電圧で動作する。すなわち、インバータ装置は、低電圧回路110と高電圧回路120に分離されている。低電圧回路110と高電圧回路120はアイソレータである通信装置100で絶縁されている。すなわち、通信回装置100の一次側コイル21までが低電圧回路110となり、二次側コイル22からが高電圧回路120となる。
【0106】
低電圧回路110はマイコン(MCU)111を備えている。高電圧回路120は、ゲートドライバー121、IGBT122、及びモータ123を備えている。マイコン111は、周辺機器又はコンソールからの指示に基づいて、送信データを生成する。マイコン111は、例えばPWM変調された送信データを通信装置100に出力する。なお、モータ123はU相、V相、W相で駆動する3相モータであるため、通信装置100は、UH,UL、VH,VL,WH,WLのそれぞれについて設けられている。なお、ゲートドライバー121、IGBT122もUH,UL、VH,VL,WH,WLのそれぞれについて設けられている。すなわち、通信装置100、ゲートドライバー121、IGBT122は6系統設けられている。
【0107】
通信装置100は、ゲートドライバー121に信号を出力する。ゲートドライバー121は、通信装置100からの信号に基づいて、IGBT122を駆動する。IGBT122は、モータ123に流れる電流を供給する。このようにすることで、マイコン111で生成した送信データに基づいて、モータ123をアナログ的に制御することができる。
【0108】
上記のように、通信装置100は、復元回路35からの信号に基づいて、信号の初期化を行っている。よって、信号を確実に復元することができ、モータ123をより正確に駆動することができる。なお、上記の説明では通信装置100がアイソレータであるとして説明を行ったが、通信装置100は、非接触伝送路を備えたものであれば、アイソレータに限られるものではない。
【0109】
また、上記した実施の形態1〜3等の各構成は、適宜組み合わせて用いることができる。上記実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
入力信号をパルスに変換する送信回路と
交流結合素子を備え、前記送信回路からのパルスを非接触で伝送する非接触伝送路と、
前記非接触伝送路を介して伝送されたパルスに応じた受信信号に基づいて、前記入力信号を復元する復元回路と、
前記非接触伝送路の出力を初期化する初期化部と、
前記非接触伝送路を介して受信したパルスに応じた受信信号に基づいて、前記初期化部を制御する制御信号を出力する初期化制御部と、を備えた通信装置。
(付記2)
前記非接触伝送路を介して受信したパルスのパルス幅を拡幅する拡幅回路をさらに備え、
前記復元回路が前記拡幅回路で拡幅された受信パルスに基づいて、前記入力信号を復元する付記1に記載の通信装置。
(付記3)
前記初期化部が初期化を行うタイミング、及び期間の少なくとも一方を調整する回路をさらに備えた付記1に記載の通信装置。
(付記4)
前記非接触伝送路の受信側の前記交流結合素子の両端に前記初期化部が接続されている付記1に記載の通信装置。
(付記5)
前記初期化部が前記非接触伝送路の受信側に接続されたトランジスタを備え、
前記初期化制御部が、前記トランジスタをON/OFF制御し、
前記トランジスタがONすることで、初期化が行われる付記1に記載の通信装置。
(付記6)
前記受信信号には、前記非接触伝送路で伝送されたパルスに対応して、メインパルス、及びカウンターパルスが存在しており、
前記カウンターパルスは、前記メインパルスと逆極性で、前記メインパルスに連続しており、
前記メインパルスの極性に応じて前記復元回路が前記入力信号を復元する付記1に記載の通信装置。
(付記7)
前記非接触伝送路には、前記交流結合素子に接続されたハイパスフィルタが設けられている付記1に記載の通信装置。
(付記8)
送信回路において、入力信号をパルスに変換し
交流結合素子を備えた非接触伝送路を介して、前記送信回路からのパルスを非接触で受信回路に伝送し、
前記非接触伝送路を介して伝送されたパルスに応じた受信信号に基づいて、前記入力信号を復元し、
前記非接触伝送路を介して受信したパルスに応じた受信信号に基づいて、制御信号を生成し、
前記制御信号に基づいて、前記非接触伝送路の出力を初期化する通信方法。
(付記9)
前記非接触伝送路を介して受信パルスのパルス幅を拡幅し、
前記パルス幅が拡幅された受信パルスに基づいて、前記入力信号を復元する付記8に記載の通信方法。
(付記10)
前記初期化を行うタイミング、及び期間の少なくとも一方を調整する付記8に記載の通信方法。
(付記11)
前記非接触伝送路の受信側の前記交流結合素子の両端に前記初期化を行う初期化部が接続されている付記8に記載の通信方法。
(付記12)
前記非接触伝送路の受信側に接続されたトランジスタが設けられ、
前記制御信号に応じて、前記トランジスタがON/OFF制御され、
前記トランジスタがONすることで、初期化が行われる付記8に記載の通信方法。
(付記13)
前記受信信号には、前記非接触伝送路で伝送されたパルスに対応して、メインパルス、及びカウンターパルスが存在しており、
前記カウンターパルスは、前記メインパルスと逆極性で、前記メインパルスに連続しており、
前記メインパルスの極性に応じて前記入力信号を復元する付記8に記載の通信方法。
(付記14)
前記非接触伝送路には、前記交流結合素子に接続されたハイパスフィルタが設けられている付記8に記載の通信方法。
(付記15)
交流結合素子を備えた非接触伝送路を介して伝送されたパルスに応じた受信信号に基づいて、入力信号を復元する復元回路と、
前記非接触伝送路の出力を初期化する初期化部と、
前記非接触伝送路を介して受信したパルスに応じた受信信号に基づいて、前記初期化部を制御する制御信号を出力する初期化制御部と、を備えた受信装置。
(付記16)
前記非接触伝送路を介して受信したパルスのパルス幅を拡幅する拡幅回路をさらに備え、
前記復元回路が前記拡幅回路で拡幅された受信パルスに基づいて、前記入力信号を復元する付記15に記載の受信装置。
(付記17)
前記初期化部が初期化を行うタイミング、及び期間の少なくとも一方を調整する回路をさらに備えた付記15に記載の受信装置。
(付記18)
前記非接触伝送路の受信側の前記交流結合素子の両端に前記初期化部が接続されている付記15に記載の受信装置。
(付記19)
前記初期化部が前記非接触伝送路の受信側に接続されたトランジスタを備え、
前記初期化制御部が、前記トランジスタをON/OFF制御し、
前記トランジスタがONすることで、初期化が行われる付記15に記載の受信装置。
(付記20)
前記受信信号には、前記非接触伝送路で伝送されたパルスに対応して、メインパルス、及びカウンターパルスが存在しており、
前記カウンターパルスは、前記メインパルスと逆極性で、前記メインパルスに連続しており、
前記メインパルスの極性に応じて前記復元回路が前記入力信号を復元する付記15に記載の受信装置。
(付記21)
前記非接触伝送路には、前記交流結合素子に接続されたハイパスフィルタが設けられている付記15に記載の通信装置。
【0110】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。