(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ベース部材と蓋部材との間に、第1光ファイバと該第1光ファイバの先端面に付設された固形屈折率整合材を介して前記第1光ファイバに光接続させた第2光ファイバとが把持固定され、
前記第2光ファイバの先端は、前記固形屈折率整合材に当接あるいは前記固形屈折率整合材から離隔させて配置され、
前記固形屈折率整合材全体と前記第2光ファイバ先端とが、ベース部材と蓋部材との間に設けられた液状屈折率整合剤中に配置され、
前記固形屈折率整合材は、その厚みを横軸、ショア硬度Eを縦軸とする座標系において、前記第2光ファイバを当接していない状態での厚みとショア硬度Eとが、ショア硬度Eが30〜85、厚みDが20〜60μmの範囲における、ショア硬度E85かつ厚み40μmの点とショア硬度E30かつ厚み60μmの点とを結ぶ直線よりも厚みが大きい領域を除いた範囲にある光ファイバ接続構造。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施した1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す光コネクタ10は、本発明に係る光ファイバ接続器を具現化した1実施形態である。
図1に示す光コネクタ10は、フェルール31の後側(前端の接合端面31aとは反対の側。
図1において右側)にクランプ部33が組み立てられた構成のクランプ部付きフェルール30を、スリーブ状のハウジング20に収納した構成になっている。
【0014】
図1、
図2に示すように、クランプ部付きフェルール30は、前記フェルール31と、該フェルール31に形成されたファイバ孔31bに内挿固定された光ファイバである内蔵光ファイバ32(第1光ファイバ)と、クランプ部33とを具備して構成されている。
図1、
図3に示すように、内蔵光ファイバ32はフェルール31の後側に延出された部分を有している。また、
図3に示すように、内蔵光ファイバ32のフェルール31の後側に延出された部分の先端面(後端面32a)には、光透過性の高分子材料からなる固形屈折率整合材321が付設されている。
光ファイバ(内蔵光ファイバ32)の後端面32aに固形屈折率整合材321を付設したものを、以下、整合材付き光ファイバ320とも言う。
【0015】
図1に示すように、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、整合材付き光ファイバ320後端部と、整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321を介して内蔵光ファイバ32と光接続させた別の光ファイバ1(第2光ファイバ)の先端部とを把持固定して光ファイバ1、32同士の光接続状態を維持する機能を果たす。
クランプ部付きフェルール30は、光ファイバ1、32同士を光接続するための光ファイバ接続器として機能する。また、このクランプ部付きフェルール30をハウジング20に収納した光コネクタ10も光ファイバ接続器として扱うことができる。
【0016】
図1、
図2に例示したクランプ部付きフェルール30のフェルール31(フェルール本体)は、例えばジルコニアセラミックス、ガラス等からなるキャピラリ状の単心用フェルールである。このフェルール31のファイバ孔31bは、該フェルール31の内側を貫通する貫通孔である。
このフェルール31としては、例えばSC形光コネクタ(SC形光コネクタ(JIS
C 5973に制定されるF04形光コネクタ。SC:Single fiber Coupling opticalfiber connector)、MU形光コネクタ(JIS C 5973に制定されるF14形光コネクタ。MU:Miniature-Unit coupling optical fiber connector)等の単心用光コネクタに用いられるフェルールを使用できる。
【0017】
図1、
図3に示すように、内蔵光ファイバ32(ここでは裸光ファイバ)は、フェルール31前端の突き合わせ接合用の接合端面31aに位置合わせされた前端面を有する。内蔵光ファイバ32前端面は、フェルール31の接合端面31aとともに研磨済みである。
内蔵光ファイバ32は、ファイバ孔31bに内挿された部分を接着剤による接着等によってフェルール31に固定して設けられている。
フェルール31は、クランプ部付きフェルール30において、内蔵光ファイバ32(第1光ファイバ)を固定するファイバ固定部として機能する。
【0018】
図1、
図2に示すように、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、細長形状のベース側素子35(ベース部材)と該ベース側素子35に沿って延在する蓋側素子36(蓋部材)とからなる半割り構造の素子部331を、金属板を加工してなる断面C形あるいはコ字形(図示例では断面C形)で延在するばね37の内側に収納保持した構成になっている。ばね37は、蓋側素子36をベース側素子35に向かって弾性付勢する付勢部材として機能する。
【0019】
クランプ部33の蓋側素子36は、第1蓋側素子361と、この第1蓋側素子361を介して前記フェルール31及びフランジ部34とは反対の側(後側)に配置された第2蓋側素子362とによって構成されている。以下、第1蓋側素子361を前側素子、第2蓋側素子362を後側素子とも言う。
これら蓋側素子(前側素子361及び後側素子36)は、該蓋側素子とベース側素子35との間に挿入された光ファイバ1、32をばね37の弾性によってベース側素子35に押さえ込む押さえ部材として機能する。
【0020】
整合材付き光ファイバ320のフェルール31から後側に延出された部分である後側延出部322は、クランプ部33のベース側素子35と前側素子361との間に挿入されている。整合材付き光ファイバ320の後端は、クランプ部付きフェルール30前後方向(
図1、
図3において左右方向)における前側素子361中央部に対応する位置に配置されている。
内蔵光ファイバ32は、クランプ部33のベース側素子35と前側素子361との間に配置された後端から、フェルール31の接合端面31aに位置合せされた前端面まで延在する短尺の光ファイバである。
【0021】
図3、
図5(a)に示すように、整合材付き光ファイバ320の後端部は、クランプ部33のベース側素子35の前側素子361に対向する側に設けられた光透過性の液状屈折率整合剤323(例えばシリコーン系グリス)中に埋め込まれている。
クランプ部付きフェルール30は、固形屈折率整合材321と液状屈折率整合剤323とを含む。
【0022】
図1〜
図3に例示したクランプ部33のベース側素子35は、フェルール31の後端部に外挿固定されたリング状のフランジ部34から後側(
図1、
図3において右側)に延出された延出部である。
整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、ベース側素子35の押さえ素子36に対向する対向面35fにクランプ部付きフェルール30前後方向に延在形成された調心溝38aに収納されている。整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は、内蔵光ファイバ32の剛性によって調心溝38aへの収納状態を維持できる。調心溝38aには、内蔵光ファイバ32のその光軸に垂直の断面(以下、横断面とも言う)方向の一部が収納される。内蔵光ファイバ32のその横断面方向において調心溝38aに収納されない部分は、ベース側素子35から前側素子361側に突出する。
【0023】
図3、
図5(a)に示す液状屈折率整合剤323は、クランプ部33のベース側素子35のクランプ部付きフェルール30前後方向(
図1、
図3、
図5(a)〜(c)において左右方向)における前側素子361中央部に対応する位置に付着させて設けられている。
液状屈折率整合剤323は、ベース側素子35の調心溝38aが鉛直方向に延在する向きなど、常温(20±15℃)にてコネクタ向きに関係無く光コネクタ10のクランプ部32に対して流動せずベース側素子35に対する付着状態を安定維持する粘度を有する。
【0024】
図3、
図5(a)において、液状屈折率整合剤323は、ベース側素子35の前側素子361に対向する側に盛り上げて設けられている。
図3、
図5(a)に示すように、整合材付き光ファイバ320の固形屈折率整合材321は、その全体が液状屈折率整合剤323中に埋め込まれている。液状屈折率整合剤323は、ベース側素子35の調心溝38aにも入り込んで固形屈折率整合材321全体を埋め込み、固形屈折率整合材321の後側(
図3、
図5(a)〜(c)において右側)全体を覆っている。また、
図3、
図5(a)において、液状屈折率整合剤323は、固形屈折率整合材321のみならず、内蔵光ファイバ32の後端部も埋め込んでいる。
液状屈折率整合剤323は、常温(20±15℃)にて、コネクタ向きに関係無く整合材付き光ファイバ320の固形屈折率整合材321に対する付着状態を安定維持できる。
【0025】
図1、
図2に示すように、内蔵光ファイバ32に光接続する光ファイバ1は、クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36間に、そのフェルール側(前側)とは反対の後側から挿入される。以下、光ファイバ1を挿入光ファイバとも言う。
挿入光ファイバ1としては、光ファイバ心線、光ファイバ素線といった、裸光ファイバに樹脂被覆材をコーティング(被着)した構成の被覆光ファイバが採用される。挿入光ファイバ1(被覆光ファイバ)は、その先端部の被覆を除去して裸光ファイバ1a(以下、挿入側裸光ファイバとも言う)を露出させた状態で、ハウジング20の後側(フェルール31の接合端面31aが位置する前側とは反対側の端部)からクランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子35、36間に挿入される。
【0026】
クランプ部33の素子35、36間に挿入した挿入光ファイバ1は、例えば
図5(b)に示すように、その先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)を固形屈折率整合材321に突き当てる。先端を固形屈折率整合材321に突き当てた挿入光ファイバ1は、固形屈折率整合材321を介して内蔵光ファイバ32との光接続を実現できる。
図5(b)に示すように、挿入光ファイバ1の先端は、液状屈折率整合剤323中にて固形屈折率整合材321に突き当てられる。挿入光ファイバ1の先端は、固形屈折率整合材321に突き当てたときには液状屈折率整合剤323中に埋め込まれた状態となる。
【0027】
クランプ部付きフェルール30のクランプ部33は、整合材付き光ファイバ320後端部と、内蔵光ファイバ32に光接続した挿入光ファイバ1の先端部とを、ばね37の弾性によって素子35、36間に把持固定することで、内蔵光ファイバ32と挿入光ファイバ1との光接続状態を安定維持できる。整合材付き光ファイバ320後端部と挿入側裸光ファイバ1aとは、ベース側素子35と前側素子361との間に把持固定される。
クランプ部33の素子35、36間に挿入した挿入光ファイバ1の挿入側裸光ファイバ1aは、ベース側素子35の調心溝38a(
図3、
図4(a),(b)参照)に挿入する。ベース側素子35の調心溝38aは、整合材付き光ファイバ320後端部と内蔵光ファイバ32に光接続した挿入光ファイバ1の先端部とをばね37の弾性によって素子35、36間に把持固定したときに、挿入側裸光ファイバ1a先端の光軸を内蔵光ファイバ32後端の光軸に高精度に位置合わせするべく、整合材付き光ファイバ320後端部と挿入側裸光ファイバ1aとを精密に位置決め調心する。調心溝38aは、整合材付き光ファイバ320の後側延出部322と挿入側裸光ファイバ1aとを突き合わせ接続可能に位置決め調心する役割も果たす。
【0028】
また、この光コネクタ10のクランプ部付きフェルール30にあっては、
図5(c)に示すように、液状屈折率整合剤323中に挿入した挿入光ファイバ1先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)を固形屈折率整合材321から後側に離隔させて配置して、挿入光ファイバ1と内蔵光ファイバ32との光接続を実現することも可能である。この場合(
図5(c)に示す光ファイバ接続構造の場合)、挿入光ファイバ1は、挿入光ファイバ1先端と固形屈折率整合材321との間に存在する液状屈折率整合剤323及び固形屈折率整合材321を介して内蔵光ファイバ32と光接続される。
【0029】
図3、
図5(a)に例示した固形屈折率整合材321は、内蔵光ファイバ後端面32a全体を覆う部分球状(部分球形の層状)に形成されている。この固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aからの突出寸法が最大の頂部は、内蔵光ファイバ後端面32aにおける光軸の仮想延長上に位置する。
また、固形屈折率整合材321としては、内蔵光ファイバ後端面32aに沿って概ね均等の厚さで延在して内蔵光ファイバ後端面32aを覆う層状であっても良い。
固形屈折率整合材321は、内蔵光ファイバ後端面32aにおける内蔵光ファイバ32のコア部32c(あるいはモードフィールド径)端面を覆う部分の厚みが、内蔵光ファイバ後端面32aを覆う部分の最大厚み(あるいは全体に均等の厚み)となるように形成される。
なお、
図5(a)において、符号32dは、内蔵光ファイバ32のクラッド部を示す。
【0030】
固形屈折率整合材321の、内蔵光ファイバ後端面32aのコア部32c(あるいはモードフィールド径)を覆う部分の厚みD(
図5(a)参照)は、20〜60μm(20μm以上、60μm以下)が好ましく、20〜50μm(20μm以上、50μm以下)であることが良い好ましい。
固形屈折率整合材321の厚みDは、より具体的には、固形屈折率整合材321の、内蔵光ファイバ後端面32aの内蔵光ファイバ32光軸の延長上に位置する部分のクランプ部付きフェルール30前後方向の寸法である。
なお、クランプ部付きフェルール30前後方向は、内蔵光ファイバ32のその後端面32aにおける光軸方向に一致する。固形屈折率整合材321の厚みDは、内蔵光ファイバ後端面32aの光軸延長上に位置する固形屈折率整合材321の被り厚を指す。
【0031】
固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aを覆う部分に20μm以上の厚みを確保することは、固形屈折率整合材321のクッション性確保に有効に寄与する。
固形屈折率整合材321は、厚みが60μmよりも大きいと、その弾性変形によって、挿入光ファイバ1に不用意な撓みを生じさせやすくなってくる。このため、固形屈折率整合材321の厚みは60μm以下であることが好ましい。
【0032】
図5(c)に示すように、液状屈折率整合剤323中にて固形屈折率整合材321から後側に離隔させて配置した挿入光ファイバ1を内蔵光ファイバ32と光接続させる場合、挿入光ファイバ1先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)の内蔵光ファイバ後端面32aからの離隔距離L1(以下、ファイバ端面間距離とも言う)は最大でも100〜150μmであることが好ましい。
ファイバ端面間距離L1は、挿入光ファイバ1の先端面1c(挿入側裸光ファイバ1a先端面)に露呈する挿入側裸光ファイバ1aのコア部1eと内蔵光ファイバ32のコア部32c後端との間の離隔距離を指す。ファイバ端面間距離L1は、より具体的には、挿入側裸光ファイバ1aのその先端面における光軸位置と、内蔵光ファイバ32のその後端面32aにおける光軸位置との間の距離である。
なお、
図5(b)、(c)において、符号1fは、挿入側裸光ファイバ1aのクラッド部を示す。
【0033】
また、この場合、挿入光ファイバ1先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)と固形屈折率整合材321との間の距離L2(
図5(c)参照。以下、整合材ファイバ間距離とも言う)は100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
整合材ファイバ間距離L2は、具体的には、挿入側裸光ファイバ1aのその先端面における光軸位置と、固形屈折率整合材321頂部における内蔵光ファイバ後端面32aの内蔵光ファイバ32光軸の延長上に位置する点との、内蔵光ファイバ後端面32aの光軸方向における離隔距離を指す。
【0034】
固形屈折率整合材321と液状屈折率整合剤323とは、屈折率が互いに同じものを使用する。
固形屈折率整合材321及び液状屈折率整合剤323は屈折率整合性を有することが必要である。この場合の屈折率整合性とは、接続用光透過性材料(固形屈折率整合材321及び液状屈折率整合剤323)の屈折率と光ファイバ(挿入光ファイバ1の裸光ファイバ及び内蔵光ファイバ)の屈折率との近接の程度をいう。
【0035】
固形屈折率整合材321及び液状屈折率整合剤323の屈折率は、光ファイバの屈折率に近いものであれば特に限定されないが、フレネル反射の回避による伝送損失の面から、光ファイバとの屈折率差は±0.1以内であることが好ましく、さらに好ましくは±0.05以内である。なお、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aと内蔵光ファイバ32の屈折率とが互いに異なる場合には、これら光ファイバの屈折率の平均値と、固形屈折率整合材321の屈折率との差が上記範囲内にあることが望ましい。
【0036】
内蔵光ファイバ後端面32aに固形屈折率整合材321を設ける手法としては特には限定は無い。
固形屈折率整合材321としては、例えば液状高分子材料を内蔵光ファイバ後端面32aに塗布(印刷、吹き付け、静電塗布等を含む)した塗膜を固化させた樹脂膜、CVD法(化学気相蒸着。CVD: Chemical Vapor Deposition)又はPVD法(物理気相蒸着。PVD:Physical Vapor Deposition)によって形成した蒸着膜(樹脂膜)等であっても良い。
また、層状の固形屈折率整合材321は、フィルム母材(高分子フィルム)から内蔵光ファイバ後端面32aに適合するサイズに切り出した小片を内蔵光ファイバ後端面32aに接着したものであっても良い。内蔵光ファイバ後端面32aへの部分球状の固形屈折率整合材321の付設のために、例えば部分球状の部分が多数形成されたフィルム母材から切り出した部分球状の小片の使用も可能である。
また、静電塗布等による内蔵光ファイバ後端面32aへの液状高分子材料の塗布は、フィルム母材から切り出した小片の内蔵光ファイバ後端面32aに対する精密な位置決めを解消でき、しかも、部分球状の固形屈折率整合材321の形成も可能である。
【0037】
固形屈折率整合材321の材質としては、例えばアクリル系、エポキシ系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、ウレタン系、メタクリル系、ナイロン系、ビスフェノール系、ジオール系、ポリイミド系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系などの高分子材料を挙げることができる。
前記高分子フィルムとしては、このような高分子材料からなる粘着材をフィルム状にしたものを使用することができ、中でも耐環境性、接着性の面からは一般的にシリコーン系、アクリル系のものを好適に用いることができる。
【0038】
挿入側裸光ファイバ1a、内蔵光ファイバ32は石英系光ファイバである。
固形屈折率整合材321は石英系光ファイバに比べて格段に硬度が低い軟質層である。
固形屈折率整合材321は、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1a先端を突き当てたときに、突き当てによる衝撃力を緩和して、内蔵光ファイバ32後端及び挿入側裸光ファイバ1a先端の欠け等の損傷を防ぐクッション層として機能する。
【0039】
図7に示すように、固形屈折率整合材321のショア硬度E(JIS K 6253に準拠)は、30〜85(30以上、85以下)が好ましい。
固形屈折率整合材321のショア硬度Eは、低すぎれば(例えば
図7の領域R3内では)、挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによる衝撃力緩和効果を充分に得られなくなる。ショア硬度Eが30以上であれば、これを防ぐことができる。
ショア硬度Eが30以上であれば、例えば、調心溝19a内での光ファイバ2,22端部の位置調整や、温度や湿度の変動によって、固形屈折率整合材321に大きな力が加えられた場合でも、内蔵光ファイバ後端面32aへの入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによる衝撃力緩和効果を充分に得られ、内蔵光ファイバ32後端及び挿入側裸光ファイバ1a先端の欠け等の損傷を防ぐことができる。
また、固形屈折率整合材321のショア硬度Eを30以上とすれば、固形屈折率整合材321に損失増加の原因となる皺形成などの変形が起こることを防止できる利点もある。
【0040】
固形屈折率整合材321のショア硬度Eは、高すぎれば(例えば領域R4では)、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに凹凸がある場合(
図5(b)、(c)等参照)に、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対する追従変形が不充分となり、固形屈折率整合材321に挿入側裸光ファイバ先端面1cにおけるモードフィールド径部分から離隔した箇所が発生しやすくなる。
固形屈折率整合材321は、そのショア硬度Eを85以下とすれば、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対して充分な追従変形が可能となり、挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド径部分(挿入側裸光ファイバ先端面1cにおけるコア部1eを含む)に対する密着を容易に実現できる。また、ショア硬度E85以下の固形屈折率整合材321は、挿入側裸光ファイバ先端面1cに追従変形させて密着させることで、温度や湿度の変動があっても、挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド径部分から離隔しにくく、挿入側裸光ファイバ先端面1cのモードフィールド径部分に対する密着を安定に保つことができる。
【0041】
固形屈折率整合材321の厚みD(
図5(a)参照)は、10μmより大きいことが望ましい。固形屈折率整合材321の厚みDは20〜60μm(20μm以上、60μm以下)が好ましい。
図7に示すように、固形屈折率整合材321は、薄すぎれば(例えば領域R5では)、内蔵光ファイバ後端面32aへの挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当てによる衝撃力緩和効果を充分に発揮できないが、厚みDを20μm以上とすれば、内蔵光ファイバ後端面32aへの挿入側裸光ファイバ1a先端の突き当て時の衝撃力を緩和するクッション層としての機能を充分に発揮できる。
また、厚みを20μm以上とすることによって、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対して充分な追従変形が可能となり、挿入側裸光ファイバ先端面1cに対する密着に有利である。
【0042】
固形屈折率整合材321は、厚すぎれば(例えば
図7の領域R6では)、挿入側裸光ファイバ1a先端を押し当てた固形屈折率整合材321の変形が大きく、挿入側裸光ファイバ1a先端の内蔵光ファイバ後端面32aに対するその光軸に垂直方向の位置や向きが安定しにくく、内蔵光ファイバ32後端に対する調心精度が低下する傾向がある。また、固形屈折率整合材321が厚すぎれば、挿入側裸光ファイバ1a先端を固形屈折率整合材321に押し当てた後も、光コネクタ10に作用した振動等の外力や温度変化等によって、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置(内蔵光ファイバ後端面32a光軸に垂直方向の位置)、向き、調心精度が変動しやすくなる。
固形屈折率整合材321の厚みDが20〜60μmであれば、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置、向き、調心精度の安定性を保つ点で有利である。
【0043】
内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置、向きの安定性は、固形屈折率整合材321の硬度の影響も受ける。
図7において、ショア硬度E85かつ厚み40μmの点P1と、ショア硬度E30かつ厚み60μmの点P2とを結ぶ直線を直線LPとすると、直線LPより厚みが大きい側の領域(領域R7等)に比べ、直線LPを含めこれより厚みが小さい側の領域(領域R1等)では、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置、向きの不安定化が起こりにくい。
【0044】
固形屈折率整合材321は、ショア硬度Eが30〜85、厚みDが20〜60μ
mであり、しかも
図7において、領域R7を除く領域(領域R1)のショア硬度E及び厚みDであるものを好適に用いることができる。すなわち、固形屈折率整合材321は、
図7において、(ショア硬度E;30、厚み;20μm)、(ショア硬度E;85、厚み;20μm)、(ショア硬度E;85、厚み;40μm)、(ショア硬度E:30、厚み:60μm)で囲まれる範囲内にあるものを好適に用いることができる。
【0045】
図7に示す領域R1内であってショア硬度Eが45以上、80以下の領域R2の固形屈折率整合材321は、挿入光ファイバ1(具体的には、挿入側裸光ファイバ1a)が空孔付き光ファイバ1A(
図8参照)である場合に用いて好適である。
図8は空孔付き光ファイバ1Aの長手方向(光軸方向)に垂直の断面構造の一例を示す。
図8に示すように、空孔付き光ファイバ1Aは、導波方向に対して連続した空孔1gを複数有する光ファイバである。空孔付き光ファイバ(Holey Fiber、HF)としては、空孔アシストファイバ(Hole-Assisted Fiber、HAF)などがある。
図8に例示した空孔付き光ファイバ1Aは、コア部1hと、その周囲を囲むクラッド部1iとを備え、クラッド部1iに複数の空孔1gが形成されている。複数の空孔1gはコア部1iの周囲に均等配置されている。
【0046】
挿入側裸光ファイバ1aが空孔付き光ファイバ1Aである場合、空孔付き光ファイバ1A先端の固形屈折率整合材321への押圧により、固形屈折率整合材321の表面は、空孔1gが開口する挿入側裸光ファイバ先端面1cに応じた凹凸を有する形状となる。すなわち、固形屈折率整合材321の一部が、挿入側裸光ファイバ先端面1cに開口する空孔1gに入り込んで、固形屈折率整合材321表面に凹凸形状が形成される。その結果、挿入側裸光ファイバ1a先端は、固形屈折率整合材321に対して滑りにくくなり、内蔵光ファイバ32後端に対する位置(内蔵光ファイバ後端面32a光軸に垂直方向の位置)、向き、調心精度が安定化する。
【0047】
固形屈折率整合材321の硬度が低すぎる場合には、固形屈折率整合材321の一部が挿入側裸光ファイバ先端面1cに開口する空孔1gに入り込んでも、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置(内蔵光ファイバ後端面32a光軸に垂直方向の位置)、向き、調心精度の安定化に有効に寄与しない。
一方、固形屈折率整合材321の硬度が高すぎる場合には、固形屈折率整合材321の一部を挿入側裸光ファイバ先端面1cに開口する空孔1gに入り込ませることが困難となる結果、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置(内蔵光ファイバ後端面32a光軸に垂直方向の位置)、向き、調心精度の安定化に有効に寄与しない。
【0048】
挿入側裸光ファイバ1aに空孔付き光ファイバ1Aを用いる場合も
図7に示す領域R1の固形屈折率整合材321を使用して差し支え無い。
但し、挿入側裸光ファイバ1aに空孔付き光ファイバ1Aを用いる場合は、本発明者の検討の結果、
図7に示す領域R2(ショア硬度Eが45以上、80以下)の固形屈折率整合材321を使用することで、内蔵光ファイバ32後端に対する挿入側裸光ファイバ1a先端の位置(内蔵光ファイバ後端面32a光軸に垂直方向の位置)、向き、調心精度の安定化の点で、特に高い効果が得られることを把握した。
【0049】
なお、内蔵光ファイバ後端面32aは、
図5(a)〜(c)に示すように内蔵光ファイバ32後端の光軸に垂直の平坦面以外に、PC研磨(PC:Physical Contact)したものも採用可能である。PC研磨された内蔵光ファイバ後端面32aの場合も、
図7に示す領域R1の固形屈折率整合材321の使用が好適である。また、この場合、挿入側裸光ファイバ1aに空孔付き光ファイバ1Aを用いるとき、
図7に示す領域R2(ショア硬度Eが45以上、80以下)の固形屈折率整合材321の使用が好適である。
【0050】
図1〜
図4(a)、(b)に例示したクランプ部付きフェルール30のクランプ部33のベース側素子35は、前記フランジ部34と一体に形成されたプラスチック製あるいは金属製の部材である。但し、クランプ部付きフェルール30としては、例えば、金属製のフランジ部34にプラスチック製のベース側素子35がインサートモールド成形、接着固定、嵌合固定等によって一体化された構成になっていても良い。
【0051】
図1、
図2に示すように、ばね37は、その延在方向を長手方向とする細長形状に形成されている。
図1、
図2に示すばね37は、長手方向(延在方向)の中央部に形成されたスリット37aによって、このスリット37aから前側(フェルール31側)の前側ばね部37bと、スリット37aから後側の後側ばね部37cとを有する構成となっている。
【0052】
図2に示すように、ばね37にはその長手方向全長にわたって延在する側部開口部37dが形成されている。前記スリット37aはばね37の前記側部開口部37dに臨む両端から、ばね37においてその内側の素子部331を介して前記側部開口部37dとは反対に位置する部分(背側連続部37e)に向かってばね37の周方向に沿って延在するようにして2本形成されている。ばね37の前側ばね部37bと後側ばね部37cとは、2本のスリット37aの間に確保された背側連続部37eのみを介して繋がっており、それぞれ独立したばねとして機能する。
【0053】
図1、
図2に示すように、蓋側素子36を構成する2つの素子(前側素子361と後側素子362)のうち、後側素子362は、その全体がばね37の後側ばね部37cの内側に収納されて後側ばね部37cの弾性によってベース側素子35の後端部と一括保持されている。一方、前側素子361は、ばね37の前側ばね部37bの内側と後側ばね部37cの内側とに収納されて、ばね37の弾性によってベース側素子35と一括保持されている。
【0054】
図1、
図2に示すように、挿入光ファイバ1の被覆材によって被覆された部分を、以下、被覆部1bと言う。
図1、
図3に示すように、ベース側素子35の対向面35fには、既述の調心溝38aと、挿入光ファイバ1の被覆部1bを収納して位置決めするための被覆部収納溝38bとからなるファイバ位置決め溝38が形成されている。調心溝38aは、ベース側素子35の対向面35fの前側素子361に対向する部分に形成されている。被覆部収納溝38bは調心溝38a後端から後側へ延在形成されている。
ファイバ位置決め溝38には、挿入光ファイバ1をハウジング20の後端開口部から送り込んで挿入できる。また、この送り込みによって、挿入光ファイバ1に予め口出ししておいた挿入側裸光ファイバ1aを調心溝38aへ挿入することができる。
【0055】
調心溝38aは、前記フェルール31を貫通するファイバ孔31bに連続するようにしてベース側素子35の前端(
図3においてベース側素子35の左端)からその延在方向(長手方向)に沿って延在形成されている。整合材付き光ファイバ320の後側延出部322は調心溝38aに収納されている。整合材付き光ファイバ320の後端(固形屈折率整合材321)は、調心溝38aの長手方向中央部(図示例では、長手方向中央から前側(フェルール31側)に若干ずれた位置)に配置されている。
被覆部収納溝38bは、前記調心溝38aの後端(フェルール31側の前端とは反対の側の端部)からベース側素子35の延在方向に沿って該ベース側素子35の後端まで延在形成されている。
【0056】
図4(a)、(b)に示すように、図示例の調心溝38aはV溝であるが、これに限定されず例えば丸溝(断面半円状の溝)、U溝等も採用可能である。
【0057】
図3に示すように、被覆部収納溝38bは、挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aよりも太い被覆部1bを収納して位置決めするために調心溝38aに比べて溝幅及び深さを大きくしてある。
図1、
図3に示すように、図示例の光コネクタ10のクランプ部33は、後側素子362の対向面362fにも被覆部収納溝38cが形成された構成になっている。後側素子362の対向面362fに形成された被覆部収納溝38cは、ベース側素子35の被覆部収納溝38bと対応する位置に形成されている。
被覆部収納溝38b、38cの前端部は先細りのテーパ状に形成されており、クランプ部33後側からファイバ位置決め溝38に挿入された挿入光ファイバ1先端(挿入側裸光ファイバ1a先端)を調心溝38aに円滑に導入することができる。
【0058】
なお、クランプ部としては、ベース側素子35の対向面、後側素子362の対向面の一方又は両方に被覆部収納溝が形成されている構成を採用できる。クランプ部の素子35、352の被覆部収納溝38b、38cは、いずれもクランプ部33の後端に開口するように形成される。また、被覆部収納溝38b、38cとしては、ここではV溝であるが、これに限定されず、例えば丸溝(断面半円状の溝)、U溝、角溝等も採用可能である。
【0059】
図4(a)に示すように、光コネクタ10のクランプ部33の一対の素子35、36(ベース側素子35と蓋側素子36)間は、該素子35、36間に介挿されたプレート状の介挿部材40によって僅かに押し開かれており、挿入光ファイバ1の口出し済みの裸光ファイバ1a及び被覆部1bをクランプ部33後側からファイバ位置決め溝38に挿入(押し込み)可能になっている。このときのクランプ部33の状態を、以下、開放状態と言う。また、クランプ部33の一対の素子35、36に介挿部材40を割り込ませてある光コネクタ10を、以下、介挿部材付き光コネクタとも言う。
【0060】
介挿部材40は、クランプ部33のばね35の弾性に抗して一対の素子35、36間の開放状態を維持する機能を果たす。
図4(a)に示すように、この介挿部材40は、ばね37の側部開口部37dからクランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませるようにして挿入されている。また、この介挿部材40は、光コネクタ10のスリーブ状のハウジング20(
図1参照)の肉厚を貫通する介挿部材挿通孔(図示略)に挿入され、その先端部40a(
図4(a)参照)をクランプ部33の一対の素子35、36間に割り込ませてある。
図4(a)、(b)に示すように、介挿部材40は、クランプ部33の一対の素子35、36間に、素子35のファイバ位置決め溝38に到達しない差し込み深さで挿入され、ファイバ位置決め溝38への挿入光ファイバ1の挿入作業の支障にならない。
【0061】
図2に示すように、介挿部材40は、蓋側素子36の2つの素子(前側素子361と後側素子362)に対応して、前側素子361とベース側素子35との間、及び後側素子362とベース側素子35との間にそれぞれ介挿されている。つまり、前記介挿部材40は、蓋側素子36の2つの素子361、362に対応して、クランプ部付きフェルール30の前後方向(
図1左右方向)において互いに異なる位置にてクランプ部33の一対の素子35、36間に計2本が介挿されている。
図2において、前側素子361とベース側素子35との間に介挿されている介挿部材40に符号41、後側素子362とベース側素子35との間に介挿されている介挿部材4に符号42を付記する。
【0062】
図2に示すように、クランプ部付きフェルールのクランプ部33の素子35、36には、介挿部材40の先端部40aが挿脱可能に挿入される介挿用凹所35a、36aが形成されている。介挿用凹所35a、36aは、前側素子361の対向面361f及びベース側素子35の対向面35fの互いに対応する位置と、後側素子362の対向面362f及びベース側素子35の対向面35fの互いに対応する位置とに、素子35、36の対向面から窪ませて形成されている。クランプ部付きフェルール30のクランプ部33の素子部331には、素子35、36の対向面の互いに対応する位置に形成された介挿用凹所35a、36aの対が、クランプ部付きフェルール30前後方向の2箇所に形成されている。
【0063】
図4(a)、(b)に示すように、各介挿用凹所35a、36aは、ばね37の側部開口部37dに臨む素子35、36側面からファイバ位置決め溝38に向かって延在形成され、それぞればね37の側部開口部37dに臨む素子35、36側面に開口している。また、各介挿用凹所35a、36aは、ファイバ位置決め溝38に達しないように、ばね37の側部開口部37dに臨む素子35、36側面からの延在寸法が設定されている。
2本の介挿部材41、42は、それぞれ、素子35、36の対向面の互いに対応する位置の介挿用凹所35a、36aの対に挿脱可能に挿入されている。
【0064】
また、介挿部材40は、先端部40aとは反対の基端側に、ハウジング20(
図1参照)の外側に突出された部分を有し、該部分を、光コネクタ10から介挿部材40を引き抜くための抜き去り操作用の抜き去り操作部として使用できる。
クランプ部33の素子35、36間は、素子35、36間への介挿部材40の挿脱(詳しくは介挿用凹所35a、36aの対への介挿部材40の挿脱)によって開閉できる。
【0065】
なお、介挿部材40としては、クランプ部33のばね35の弾性に抗して一対の素子35、36間の開放状態を維持することができ、かつ一対の素子35、36間からの抜き去り操作が可能な構成であれば良く、プレート状のものに限定されず、例えば柔軟なシート状のものや、ロッド状のものであっても良い。
【0066】
光コネクタ10は現場組立形光コネクタである。
この光コネクタ10を挿入光ファイバ1の先端部に取り付け(組み立て)るには、
図2、
図4(a)に示すように、クランプ部33をその素子35、36間に割り込ませた介挿部材40によって開放状態(すなわち介挿部材付き光コネクタの状態)としておく。そして、裸光ファイバ1aを口出し済みの挿入光ファイバ1をハウジング20の後端開口部からクランプ部33の素子部331のファイバ位置決め溝38へ送り込み、挿入側裸光ファイバ1aを調心溝38aへ挿入する。
挿入側裸光ファイバ1aは、調心溝38aへの挿入によって、その先端を液状屈折率整合剤323中に挿入する。
【0067】
挿入光ファイバ1を整合材付き光ファイバ320後端に突き合わせ接続する場合は、挿入光ファイバ1のクランプ部33後側からの押し込みによって挿入側裸光ファイバ1a先端を整合材付き光ファイバ320後端の固形屈折率整合材321に押し当てる。そして、挿入光ファイバ1のクランプ部33後側からの押し込み力によって挿入側裸光ファイバ1a先端の固形屈折率整合材321に対する突き合わせ状態を維持したまま、クランプ部33の素子35、36間に割り込ませてある介挿部材40を全て抜き去る(
図4(b)参照)。
【0068】
これにより、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38に挿入された部分と整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とが、互いに光接続状態で、クランプ部33のばね35の弾性によってクランプ部33の素子35、36間に把持固定された光ファイバ接続構造が得られる。また、その結果、挿入光ファイバ1のクランプ部33からの引き抜きが規制されることで、挿入光ファイバ1の先端部に光コネクタ10を取り付け(組み立て)ることができる。
クランプ部33について、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38に挿入された部分と整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とを一対の素子35、36間に把持固定した状態を、以下、ファイバ把持状態とも言う。
【0069】
挿入光ファイバ1は、現場にてその先端部の被覆除去(裸光ファイバ1aの口出し)及びカットを行ってからファイバ位置決め溝38に挿入する。
挿入光ファイバ1の裸光ファイバ1aの口出し長L(
図1参照)は、裸光ファイバ1a先端を内蔵光ファイバ32に光接続させる所期位置に到達させる長さだけ挿入光ファイバ1をファイバ位置決め溝38へ送り込んだときに、裸光ファイバ1aがファイバ位置決め溝38の調心溝38aに収納され、被覆部1bがファイバ位置決め溝38の被覆部収納溝38b、38cに収納されるように設定する。したがって、挿入側裸光ファイバ1a先端を内蔵光ファイバ32に対する所期位置に到達させた後、クランプ部33から介挿部材40を抜き去りクランプ部33をファイバ把持状態としたときには、挿入側裸光ファイバ1aは整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とともに前側素子361とベース側素子35との間に把持固定され、挿入光ファイバ被覆部1bは後側素子362とベース側素子35との間に把持固定される。
【0070】
蓋側素子36のベース側素子35の対向面351に対面する対向面(ここでは前側素子361の対向面361f。
図3参照)の調心溝38aに対面する部分は、高い平面度が確保された平坦面になっている。開放状態のクランプ部33から介挿部材40を抜き去ったときには、挿入側裸光ファイバ1aと整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とは、クランプ部33のばね35の弾性によって調心溝38aに押し付けられ、調心溝38aによって精密に位置決め(調心)される。その結果、挿入側裸光ファイバ1aと整合材付き光ファイバ320の後側延出部322とは、互いに光接続された状態で前側素子361とベース側素子35との間に把持固定される。
【0071】
挿入光ファイバ1としては、裸光ファイバ1a外径が、内蔵光ファイバ32外径と同じであるものを採用する。
なお、整合材付き光ファイバ320の固形屈折率整合材321は、例えば、内蔵光ファイバ32のその後端面32aと内蔵光ファイバ32側面(周面)との間に面取り部が形成されている場合は、内蔵光ファイバ後端面32a以外に面取り部にも設けて良い。但し、固形屈折率整合材321は内蔵光ファイバ32側面には設けない。また、内蔵光ファイバ32側面よりも後側に設ける固形屈折率整合材321の設置範囲は、内蔵光ファイバ32側面の仮想延長の範囲内に限定する。
【0072】
図5(b)に示すように、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cは、平坦でなく凹凸が存在する場合もある。
図5(b)は、先端面1cに凹凸がある挿入側裸光ファイバ1a先端を液状屈折率整合剤323中にて固形屈折率整合材321に突き当てた状態を示す。
図5(b)においては、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに凹凸が存在していても、内蔵光ファイバ32及び挿入側裸光ファイバ1aのコア部32c、1e(あるいはモードフィールド径部分)同士の間がクッション層として機能する軟質の固形屈折率整合材321によって埋め込まれ、これにより低損失での光接続を実現できる。
【0073】
また、例えば、固形屈折率整合材321が挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cのコア部1e(あるいはモードフィールド径部分)に存在する凹部を埋めきれず、固形屈折率整合材321外面に凹部内面から離隔した箇所が存在する場合は、凹部内面と該凹部内面から離隔する固形屈折率整合材321外面との間を液状屈折率整合剤323が埋め込む。このため、この場合も低損失での光接続を実現できる。
【0074】
裸光ファイバのカットは、裸光ファイバ側面に劈開用の初期傷を形成した後、裸光ファイバを初期傷から劈開させることが一般的である。
裸光ファイバに凹凸が存在するカット面(劈開面)が形成されたとき、カット面外周部に、カット面における光ファイバ光軸に垂直の仮想平面からの突出寸法が大きい凸部1dが形成されやすい傾向がある。
また、凸部の、裸光ファイバのカット面におけるファイバ光軸に垂直の仮想平面からの突出寸法は、最大でも20μm程度である。
【0075】
図5(b)に示す挿入側裸光ファイバ1aは、その先端面1c(カット面)外周部に、先端面1cの複数の凸部のうち、先端面1cにおける裸光ファイバ1a光軸に垂直の仮想平面からの突出寸法が最大の凸部1dが形成されたものである。
図5(b)に示すように、内蔵光ファイバ後端面32aに設けられた部分球状の固形屈折率整合材321は、若干の弾性変形を伴って挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cにおけるコア部1e(あるいはモードフィールド径部分)を含む中央部領域に当接される。しかし、部分球状の固形屈折率整合材321は挿入側裸光ファイバ1aの先端面1c外周部には当接しない。このため、部分球状の固形屈折率整合材321は、挿入側裸光ファイバ1aの先端外周部の凸部1dとの接触を回避するか、あるいは凸部1dにおける挿入側裸光ファイバ1aの先端面1c中央部側に位置する部分にのみに押し付けられる。部分球状の固形屈折率整合材321は、
図5(b)に示す挿入側裸光ファイバ1a先端外周部の凸部1d全体を埋め込みを回避できる。
部分球状の固形屈折率整合材321は、例えば内蔵光ファイバ後端面32a全体を均一の厚みで覆う層状の固形屈折率整合材に比べて、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cにおけるコア部1e(あるいはモードフィールド径部分)を含む中央部領域への当接、密着の点で有利である。
【0076】
また、既述のように、部分球状の固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aのコア部32c(あるいはモードフィールド径)を覆う部分の厚みを20〜50μm(20μm以上、50μm以下)とすることは、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1c外周部の凸部1dが内蔵光ファイバ32に突き当てられる可能性を殆ど無くすことができる。
挿入側裸光ファイバ1aの先端面1c外周部の凸部1dが内蔵光ファイバ32に突き当てられることをより確実に回避する点では、部分球状の固形屈折率整合材321の内蔵光ファイバ後端面32aのコア部32c(あるいはモードフィールド径)を覆う部分の厚みを30μm以上にすることが好ましい。
【0077】
仮に挿入光ファイバ1先端の凸部1dが内蔵光ファイバ32後端に突き当てられて挿入光ファイバ1及び/又は内蔵光ファイバ32に欠けが生じたとしても、挿入光ファイバ1先端の凸部1dの内蔵光ファイバ32後端に対する当接位置は固形屈折率整合材321と挿入側裸光ファイバ1a先端との接合界面からずれた所に位置するため、
欠けによって生じた破片が固形屈折率整合材321と挿入側裸光ファイバ1先端との間に挟み込まれるといった不都合は生じにくい。
【0078】
既述のように、挿入側裸光ファイバ1aは、その先端を、液状屈折率整合剤323中にて固形屈折率整合材321からその後側に離隔した位置に配置した場合(
図5(c)参照)でも、内蔵光ファイバ32との光接続が可能である。
図5(b)に示すように、挿入側裸光ファイバ1a先端を液状屈折率整合剤323中にて整合材付き光ファイバ320後端(固形屈折率整合材321)に突き合わせ接続した光コネクタ10の組み立ては、既述の通り、挿入光ファイバ1のクランプ部33後側からの押し込み力によって挿入側裸光ファイバ1a先端の固形屈折率整合材321に対する突き当て状態を維持したまま、介挿部材40の抜き去りによって開放状態のクランプ部33をファイバ把持状態とする。この実施形態の光コネクタ10では、作業中に、挿入光ファイバ1の予期せぬ引っ張り等によって、挿入側裸光ファイバ1a先端が固形屈折率整合材321から後側へ離隔してしまっても(
図5(c)の状態)、挿入側裸光ファイバ1a先端と固形屈折率整合材321との間が液状屈折率整合剤323によって埋め込まれる。このため、挿入側裸光ファイバ1a先端と固形屈折率整合材321との間の液状屈折率整合剤323を介して、挿入光ファイバ1(具体的には挿入側裸光ファイバ1a)と整合材付き光ファイバ320との間の光接続を確保できる。
【0079】
この光コネクタ10は、挿入光ファイバ1への組み立て作業中に、挿入側裸光ファイバ1a先端が固形屈折率整合材321から後側へ離隔してしまっても、作業をやり直す必要が無い。
光コネクタ10及びクランプ部付きフェルール30は、挿入光ファイバ1(具体的には挿入側裸光ファイバ1a)と整合材付き光ファイバ320との間の光接続を確保して、挿入光ファイバ1先端部に組み立てる作業を効率良く行える。
【0080】
また、光コネクタ10及びクランプ部付きフェルール30は、挿入光ファイバ1(具体的には挿入側裸光ファイバ1a)の整合材付き光ファイバ320に対する突き合わせ接続、これら光ファイバ1、320のクランプ部33での把持固定の完了後、何等かの原因(例えば挿入光ファイバ1の予期せぬ引っ張り等)によって、挿入側裸光ファイバ1a先端が固形屈折率整合材321から後側へ離隔してしまっても、挿入光ファイバ1と整合材付き光ファイバ320との光接続状態を維持できる。
光コネクタ10及びクランプ部付きフェルール30は、長期にわたって挿入光ファイバ1と整合材付き光ファイバ320との光接続状態を安定維持でき、長期信頼性を向上できる。
【0081】
図5(a)〜(c)に示すように、整合材付き光ファイバ320後端の部分球状の固形屈折率整合材321は、挿入光ファイバ1のファイバ位置決め溝38への送り込み(前進)によって挿入側裸光ファイバ1a先端を接近させるとき、挿入側裸光ファイバ1a先端の接近に伴う、挿入側裸光ファイバ1a先端と固形屈折率整合材321との間からの液状屈折率整合剤323の移動を円滑にできる。
固形屈折率整合材321への挿入側裸光ファイバ1a先端の接近に伴い、液状屈折率整合剤323は挿入側裸光ファイバ1a先端と固形屈折率整合材321との間から挿入側裸光ファイバ1a先端によって押し出されるようにして移動される。固形屈折率整合材321の頂部付近に位置する液状屈折率整合剤323は、部分球状の固形屈折率整合材321外面に沿って固形屈折率整合材321の頂部付近から離れた所へ円滑に移動できる。このことは、挿入側裸光ファイバ1a先端が固形屈折率整合材321に当接する直前まで継続する。
【0082】
このため、整合材付き光ファイバ320後端に部分球状の固形屈折率整合材321を採用した構成は、例えば、挿入側裸光ファイバ1a先端が固形屈折率整合材321に当接する直前では、挿入側裸光ファイバ1a先端の前進に伴う液状屈折率整合剤323の移動によって、固形屈折率整合材321の頂部付近にて液状屈折率整合剤323中に存在する異物や気泡を液状屈折率整合剤323とともに固形屈折率整合材321頂部付近と挿入側裸光ファイバ1a先端との間から排除できる。
しかも、固形屈折率整合材321は、その頂部が挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cのコア部1e(あるいはモードフィールド径部分)に当接した後、挿入側裸光ファイバ1aの前進に伴い弾性変形しつつ、挿入側裸光ファイバ1aの先端面1cに対する当接範囲を拡げていく。その結果、整合材付き光ファイバ320後端に部分球状の固形屈折率整合材321を採用した構成は、固形屈折率整合材321と該固形屈折率整合材321に当接した挿入側裸光ファイバ1a先端との間に異物や気泡が入り込むことの防止や抑制に有効に寄与する。
【0083】
(別実施形態)
図6(a)、(b)は、本発明に係る他の実施形態の光ファイバ接続器70を示す。
図6(a)、(b)に示すように、光ファイバ接続器70はいわゆるメカニカルスプライスである。
光ファイバ接続器70は、細長形状のベース側素子71(ベース部材)と、このベース側素子71長手方向に沿って1列に配列設置された3つの蓋側素子81、82、83(蓋部材)とを、金属板を加工してなる断面C形あるいはコ字形(図示例では断面C形)で延在するばね76の内側に収納保持した構成になっている。ばね76は、蓋側素子81、82、83をベース側素子35に向かって弾性付勢する付勢部材として機能する。
【0084】
図6(b)に示す3つの蓋側素子81、82、83は、それぞれ、ベース側素子71との間に配置された光ファイバ(後述の整合材付き光ファイバ720、第2光ファイバ73)をばね76の弾性によってベース側素子71に押さえ込む押さえ部材として機能する。
以下、蓋側素子81、82、83を押さえ素子とも言う。
【0085】
図6(b)に示すように、光ファイバ接続器70は、例えば互いの先端同士を突き合わせた光ファイバ720、73を押さえ素子81、82、83とベース側素子71との間に把持固定することで、光ファイバ720、73同士の光接続状態を維持できる。光ファイバ720、73は、3つの押さえ素子81、82、83のうちその配列の中央に位置する第2押さえ素子82とベース側素子71との間にその先端を互いに光接続可能に配置して、互いに光接続される。
【0086】
図6(a)、(b)は、3つの押さえ素子81、82、83のうちその配列の片端に位置する第1押さえ素子81とベース側素子71との間に光ファイバ72(以下、第1光ファイバとも言う)の先端部を把持固定した状態を示す。第1押さえ素子81は、ばね76の弾性によってベース側素子71との間に第1光ファイバ72を把持固定する。
第1押さえ素子81とベース側素子71との間に配置された第1光ファイバ72の先端には固形屈折率整合材321が付設されている。
図6(b)に例示した固形屈折率整合材321は部分球状に形成されている。
以下、光ファイバ(第1光ファイバ72)先端に固形屈折率整合材321が付設されたものを、整合材付き光ファイバ720とも言う。
【0087】
図6(b)において、整合材付き光ファイバ720先端の固形屈折率整合材321は、3つの押さえ素子81、82、83のうちその配列の中央に位置する第2押さえ素子82とベース側素子71との間に配置されている。また、整合材付き光ファイバ720先端の固形屈折率整合材321は、ベース側素子71の第2押さえ素子82に対向する側に付着させて設けられた液状屈折率整合剤323中に全体が埋め込まれている。液状屈折率整合剤323は、ベース側素子71の第2押さえ素子82に対向する部分に盛り上げて設けられている。
【0088】
3つの押さえ素子81〜83は、ベース側素子71との間への介挿部材40の挿脱によって、ベース側素子71に対して個別に開閉可能である。
図6(a)において、第1押さえ素子81とベース側素子71との間に介挿される介挿部材40に符号411、第2押さえ素子82とベース側素子71との間に介挿される介挿部材40に符号412、第3押さえ素子83とベース側素子71との間に介挿される介挿部材40に符号413を付記している。
【0089】
整合材付き光ファイバ720は、介挿部材41、42を用いて第1、第2押さえ素子81、82をベース側素子71に対して開いた状態にて、第1、第2押さえ素子81、82とベース側素子71との間に挿脱できる。
整合材付き光ファイバ720に光接続する第2光ファイバ73(別の光ファイバ。以下、挿入光ファイバとも言う)の先端部は、第2、第3押さえ素子82、83とベース側素子71との間に配置される。第2光ファイバ73は、介挿部材42、43を用いて第2、第3押さえ素子82、83をベース側素子71に対して開いた状態にて、第2、第3押さえ素子82、83とベース側素子71との間に挿脱できる。
【0090】
図6(a)、(b)において、第1光ファイバ72及び第2光ファイバ73は、具体的には単心の光ファイバ心線、光ファイバ素線といった被覆光ファイバである。
第1光ファイバ72及び第2光ファイバ73は、その先端部の被覆材を除去して裸光ファイバ72a、73aを口出しした状態でベース側素子71と押さえ素子81〜83との間に挿入される。
第1光ファイバ72及び第2光ファイバ73の先端部に口出しされた裸光ファイバ72a、73aは、光ファイバ接続器70の第2押さえ素子82とベース側素子71との間に配置される。光ファイバ接続器70の第1押さえ素子81とベース側素子71との間には、第1光ファイバ72の裸光ファイバ72aが被覆材によって覆われた部分である被覆部72bが配置される。光ファイバ接続器70の第3押さえ素子81とベース側素子71との間には、第2光ファイバ73の裸光ファイバ73aが被覆材によって覆われた部分である被覆部73bが配置される。
【0091】
また、整合材付き光ファイバ720の固形屈折率整合材321は、具体的には、第1光ファイバ72先端部に口出しされた裸光ファイバ72aの先端面に付設されている。
部分球状の固形屈折率整合材321は、裸光ファイバ72a先端面からの突出寸法が最大の部分である頂部が、裸光ファイバ72aのその先端面における光軸上に位置するようにして裸光ファイバ72a先端に設けられている。
【0092】
図6(a)、(b)に示すように、光ファイバ接続器70は、ベース側素子71長手方向を長手方向として延在する、全体として細長形状に形成されている。
図6(b)に示すように、ベース側素子71の第2押さえ素子82に対向する面には、調心溝75が接続器長手方向に延在形成されている。
整合材付き光ファイバ720先端部の裸光ファイバ72a及び固形屈折率整合材321は、調心溝75に収納されている。挿入光ファイバ73に口出しされた裸光ファイバ73aは、調心溝75に収納して、その先端を整合材付き光ファイバ72先端(固形屈折率整合材321)に突き当てる。調心溝75は、挿入光ファイバ73の裸光ファイバ73aを、整合材付き光ファイバ720先端に対して突き合わせ接続可能に位置決め調心できる。
【0093】
光ファイバ接続器70を用いて整合材付き光ファイバ720に第2光ファイバ73を光接続する方法(光ファイバ接続部の組み立て方法)としては、以下の3つ(第1〜第3の方法)を例示できる。
第1の方法は、第1、第2押さえ素子81、82とベース側素子71との間に挿入された整合材付き光ファイバ720先端部を第1押さえ素子81とベース側素子71との間に把持固定した光ファイバ接続器70(ピグテイル付き接続器70A)を用いるものである。また、ピグテイル付き接続器70Aは、
図6(b)に示すように、整合材付き光ファイバ720先端の固形屈折率整合材321全体を、ベース側素子71に付設された液状屈折率整合剤323中に埋め込んだ構成となっている。ピグテイル付き接続器70Aは、整合材付き光ファイバ720と液状屈折率整合剤323とを含む。
【0094】
この第1の方法(光ファイバ接続部の組み立て方法)では、ピグテイル付き接続器70Aのベース側素子71と介挿部材42、43を用いてベース側素子71に対して開いた第2、第3押さえ素子82、83との間に第2光ファイバ73を挿入し、この第2光ファイバ73の先端を整合材付き光ファイバ720先端(固形屈折率整合材321)に突き当てる。第2光ファイバ73は、その先端を液状屈折率整合剤323中にて整合材付き光ファイバ72先端の固形屈折率整合材321に突き当てる。次いで、この突き当て状態を保ったまま、第2押さえ素子82及び第3押さえ素子83とベース側素子71との間から介挿部材40を抜き去る。
【0095】
これにより、整合材付き光ファイバ720先端部の裸光ファイバ72a及び固形屈折率整合材321と挿入光ファイバ73先端部の裸光ファイバ73aとを、第2押さえ素子82及び第3押さえ素子83とベース側素子71との間に把持固定できる。その結果、光ファイバ接続器70は、整合材付き光ファイバ720と挿入光ファイバ73との光接続状態を維持した光ファイバ接続構造を実現できる。
挿入光ファイバ73は、整合材付き光ファイバ72先端の固形屈折率整合材321を介して第1光ファイバ72と光接続される。
【0096】
第1の方法において、ピグテイル付き接続器70Aの第1押さえ素子81とベース側素子71とは、第1光ファイバ72の把持固定を維持する。
図6(a)、(b)に示すように、光ファイバ接続器70のばね76は、接続器長手方向を長手方向として延在する細長形状に形成されている。このばね76は、その長手方向2箇所に形成されたスリット76aによって、それぞれ蓋側素子(押さえ素子)をベース側素子71に向かって弾性付勢するばねとして機能する3つの領域(個別ばね領域)に区分けされている。スリット76aは、ばね76のその長手方向に垂直のC形又はコ字形の横断面における開口部に臨む両端のそれぞれからばね76周方向に延在形成されている。ばね76の3つの個別ばね領域は、3つの蓋側素子81、82、83に対応させて確保されている。3つの蓋側素子81、82、83は、それぞれ独立にベース側素子71に対して開閉できる。
このため、ピグテイル付き接続器70Aの第1押さえ素子81は、ベース側素子71に対する第2、第3押さえ素子82、83の開閉の影響を受けることなく、第1光ファイバ72をベース側素子71との間に把持固定した状態を安定維持できる。
【0097】
ピグテイル付き接続器70Aの、その接続器長手方向(光ファイバ接続器70長手方向)において第2押さえ素子82から第1押さえ素子81側の部分は、整合材付き光ファイバ720(具体的には第1光ファイバ72)を把持固定するファイバ固定部74として機能する。
図6(a)、(b)に示すピグテイル付き接続器70Aのファイバ固定部74は、具体的には、第1光ファイバ72の被覆部72bを把持固定する。
整合材付き光ファイバ720のファイバ固定部74に把持された部分はベース側素子71に対して固定される。
【0098】
また、接続器長手方向において、光ファイバ接続器70のファイバ固定部74から第2押さえ素子82側の部分は、挿入光ファイバ73先端部を、整合材付き光ファイバ720先端部の裸光ファイバ72a及び固形屈折率整合材321とともに把持固定可能なクランプ部77として機能する。
【0099】
第2の方法は、光ファイバ接続器70に、整合材付き光ファイバ720及び液状屈折率整合剤323(
図6(b)参照)のうち液状屈折率整合剤323のみを追加した構成の接続器(以下、液状整合剤付き接続器とも言う)を用いるものである。
液状整合剤付き接続器は、既述のピグテイル付き接続器70Aから整合材付き光ファイバ720のみを省略した構成である。
【0100】
第2の方法では、例えば、液状整合剤付き接続器の蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間を介挿部材411、412、413の介挿によって開放させた状態にて、蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間に接続器長手方向両側から光ファイバ720、73を挿入する。そして、液状屈折率整合剤323中にて整合材付き光ファイバ720先端に第2光ファイバ73先端を突き当てる。次いで、光ファイバ接続器70から介挿部材411、412、413を抜き去り、蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間に光ファイバ720、73を把持固定する。
【0101】
なお、第2の方法における、光ファイバ720、73の、蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間への挿入、把持固定の手順は、上述に限定されない。
光ファイバ720、73は、例えば、まず、第2光ファイバ73について、蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間への挿入、把持固定を完了した後、整合材付き光ファイバ720の蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間への挿入、把持固定を行なっても良い。
【0102】
第3の方法は、整合材付き光ファイバ720及び液状屈折率整合剤323(
図6(b)参照)の設けていない光ファイバ接続器70を用いるものである。
第3の方法では、まず、光ファイバ接続器70の蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間を介挿部材411、412、413の介挿によって開放させた状態にて、蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間に接続器長手方向両側から挿入した光ファイバ720、73を互いに突き当て状態とする。次いで、光ファイバ720、73同士の突き当て箇所に液状屈折率整合剤323(
図6(b)参照)を充填して、整合材付き光ファイバ72先端の固形屈折率整合材321全体と第2光ファイバ73先端(裸光ファイバ73a先端)とを液状屈折率整合剤323中に埋め込む。
次いで、光ファイバ接続器70から介挿部材411、412、413を抜き去り、蓋側素子81、82、83とベース側素子71との間に光ファイバ720、73を把持固定する。
【0103】
第1〜3の方法において、第2光ファイバ73は、その先端が液状屈折率整合剤323中にて整合材付き光ファイバ72先端から離隔させて配置された状態となっても、第2光ファイバ73と第1光ファイバ72とを液状屈折率整合剤323及び固形屈折率整合材321を介して光接続可能である。
【0104】
挿入光ファイバ73先端(裸光ファイバ73a先端)と第1光ファイバ72先端(裸光ファイバ72a先端)との間の距離は、既述の光コネクタ10におけるファイバ端面間距離L1(
図5(c)参照)と同様であることが好ましい。
また、挿入光ファイバ73先端(裸光ファイバ73a先端)と固形屈折率整合材321との間の距離は、既述の光コネクタ10における整合材ファイバ間距離L2(
図5(c)参照)と同様であることが好ましい。
固形屈折率整合材321と第1光ファイバ72先端(裸光ファイバ72a先端)との間の距離(固形屈折率整合材321の厚み)は、既述の光コネクタ10における固形屈折率整合材321の厚みDと同様であることが好ましい。
【0105】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0106】
図3、
図5(a)、(b)、(c)では、内蔵光ファイバ32として、その後端の光軸に垂直の後端面32a(後側延出部322の先端面。以下、垂直後端面とも言う)を形成したものを採用している。
図6(b)に示す第1光ファイバの後端面も、その中央の光軸に垂直に形成されている。
光コネクタの内蔵光ファイバ、メカニカルスプライス(例えば
図6(a)、(b)に示す光ファイバ接続器)を用いて第2光ファイバと光接続する第1光ファイバといった、固形屈折率整合材を取り付ける光ファイバを、以下、整合材付設対象光ファイバとも言う。整合材付設対象光ファイバの固形屈折率整合材が取り付けられる先端面は、例えば、その中央の内蔵光ファイバ光軸に垂直の仮想垂直面に対して7〜9度程度傾斜する傾斜面(平坦面。以下、傾斜先端面とも言う)であっても良い。
傾斜先端面に部分球状の固形屈折率整合材を付設する場合、部分球状の固形屈折率整合材は、傾斜先端面に、その頂部が、傾斜先端面における整合材付設対象光ファイバ光軸位置に直交する直線上に位置する凸形に設けられる。但し、この場合も、固形屈折率整合材の整合材付設対象光ファイバ先端面に対する厚みDは、整合材付設対象光ファイバ先端面中央の光軸の延長上に位置する被り厚を指す。
【0107】
整合材付設対象光ファイバに光接続する第2光ファイバの先端面は、整合材付設対象光ファイバ先端面が垂直後端面あるいはPC研磨された部分球面状の場合、その中央の挿入側裸光ファイバ光軸に垂直に形成する。また、整合材付設対象光ファイバ先端面が傾斜先端面である場合、第2光ファイバの先端面は、整合材付設対象光ファイバの傾斜先端面のその中央の光軸に垂直の仮想垂直面に対する傾斜角度と概ね一致する傾斜角度を以て、第2光ファイバ先端の光軸に垂直の仮想面に対して傾斜する平坦な傾斜面とすることが好ましい。
固形屈折率整合材321は、整合材付設対象光ファイバの先端面の構成に依らず、
図7に示す領域R1のものを好適を使用できる。また、第2光ファイバに空孔付き光ファイバ1Aを用いるとき、整合材付設対象光ファイバ先端面の構成に依らず、
図7に示す領域R2(ショア硬度Eが45以上、80以下)の固形屈折率整合材321を好適に使用できる。
【0108】
光ファイバ接続器のファイバ固定部としては、第1光ファイバをベース部材に対して固定可能なものであれば良く、上述の実施形態にて説明したものに限定されない。
【0109】
クランプ部付きフェルールのクランプ部の素子部は、上述のように、フェルール31に固定のベース側素子35と、前側素子361、後側素子362の2部材からなる蓋側素子36とによって構成されるものに限定されず、蓋側素子として1部材からなるものを採用することも可能である。
また、調心溝がベース側素子に形成されている構成に限定されず、蓋側素子に前記調心溝が形成されている構成も採用可能である。
【0110】
クランプ部付きフェルールを収納する光コネクタのハウジングとしては特には限定は無く、例えば、SC形光コネクタ、いわゆるSC2形光コネクタ(SC形光コネクタからつまみを省略したもの)、MU形光コネクタと同様のハウジングに介挿部材挿通孔を形成したもの等を採用できる。
【0111】
上述の実施形態では、予め素子間に介挿部材が介挿され素子間を開放状態とした構成の光コネクタ(介挿部材付き光コネクタ)を例示したが、光コネクタとしてはこれに限定されず、クランプ部付きフェルールのクランプ部の素子間に介挿部材が挿入されておらず、素子間への挿入光ファイバの挿入作業を行う際に、素子間に介挿部材を挿入して素子間を開放状態とする作業を行えるようにした構成も採用可能である。