(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、本発明のノズルプレートを具備する液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置の一例として、インクを利用して記録紙に記録を行うインクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例に挙げて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
(プリンタ)
図1は、プリンタの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、プリンタ1は、記録紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2,3と、被記録媒体Sに図示しないインクを噴射するインクジェットヘッド4と、インクジェットヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、インクジェットヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向Yと直交する走査方向Xに走査させる走査手段6と、を備える。
なお、本実施形態では、搬送方向Yおよび走査方向Xの2方向に直交する方向を上下方向Zとする。
【0020】
一対の搬送手段2,3は、搬送方向Yに間隔をあけて配置されており、一方の搬送手段2が搬送方向Yの上流側に位置し、他方の搬送手段3が搬送方向Yの下流側に位置している。これら搬送手段2,3は、走査方向Xに延設されたグリッドローラ2A,3Aと、このグリッドローラ2A,3Aに対して平行に配置されると共に、グリッドローラ2A,3Aとの間で被記録媒体Sを挟み込むピンチローラ2B,3Bと、グリッドローラ2A,3Aをその軸回りに回転させるモータ等の図示しない駆動機構と、をそれぞれ備えている。
そして、一対の搬送手段2,3のグリッドローラ2A,3Aを回転させることで、被記録媒体Sを搬送方向Yに沿った矢印A方向に搬送することが可能とされている。
【0021】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10とインクジェットヘッド4とを接続するインク配管11と、を備えている。
図示の例では、インクタンク10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の四色のインクがそれぞれ収容されたインクタンク10Y、10M、10C、10Bが搬送方向Yに並んで配置されている。インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、インクジェットヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。
【0022】
走査手段6は、走査方向Xに延び、搬送方向Yに間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール15と、これら一対のガイドレール15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、このキャリッジ16を走査方向Xに移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール15の間に配置され、走査方向Xに間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、これら一対のプーリ18の間に巻回されて走査方向Xに移動する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0023】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴って走査方向Xに移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド4が走査方向Xに並んだ状態で搭載されている。
図示の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各インクをそれぞれ噴射する4つのインクジェットヘッド4、すなわちインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bが搭載されている。
【0024】
(インクジェットヘッド)
次に、インクジェットヘッド4について説明する。
図2は、インクジェットヘッドの斜視図である。
図2に示すように、インクジェットヘッド4は、キャリッジ16に固定される固定プレート25と、この固定プレート25上に固定されたヘッドチップ26と、インク供給手段5から供給されたインクを、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41Aにさらに供給するインク供給部27と、ヘッドチップ26に駆動電圧を印加する制御手段28と、を備えている。
【0025】
インクジェットヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の噴出量で吐出する。このとき、インクジェットヘッド4が走査手段6により走査方向Xに移動することにより、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録を行うことができる。この走査を、搬送手段2,3により被記録媒体Sを搬送方向Yに搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0026】
固定プレート25には、アルミ等の金属製のベースプレート30が上下方向Zに沿って起立した状態で固定されていると共に、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41Aにインクを供給する流路部材31が固定されている。流路部材31の上方には、インクを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器32がベースプレート30に支持された状態で配置されている。そして、流路部材31と圧力緩衝器32は、インク連結管33を介して連結され、圧力緩衝器32にはインク配管11が接続されている。
【0027】
このような構成のもと、圧力緩衝器32は、インク配管11を介してインクが供給されると、このインクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクをインク連結管33および流路部材31を介してインク導入孔41Aに供給する。
なお、これら流路部材31、圧力緩衝器32およびインク連結管33は、上記インク供給部27として機能する。
【0028】
また、固定プレート25には、ヘッドチップ26を駆動するための集積回路等の制御回路(駆動回路)35が搭載されたIC基板36が取り付けられている。この制御回路35と、ヘッドチップ26の後述する不図示のコモン電極およびダミー電極は、図示しない配線パターンがプリント配線されたフレキシブル基板37を介して電気接続されている。これにより、制御回路35は、フレキシブル基板37を介してコモン電極とダミー電極との間に、駆動電圧を印加することが可能とされる。
なお、これら制御回路35が搭載されたIC基板36、およびフレキシブル基板37は、上記制御手段28として機能する。
【0029】
(ヘッドチップ)
続いて、ヘッドチップ26について詳細に説明する。
図3は、ヘッドチップの斜視図、
図4は、ヘッドチップの分解斜視図である。
図3および
図4に示すように、ヘッドチップ26は、アクチュエータプレート40、カバープレート41、支持プレート42、およびノズルプレート43を備えている。ヘッドチップ26は、後述する液体噴射チャネル45Aの長手方向端部に臨むノズル孔47からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプとされている。
【0030】
アクチュエータプレート40は、第1アクチュエータプレート40Aおよび第2アクチュエータプレート40Bの2枚のプレートを積層した、いわゆる積層プレートとされている。なお、アクチュエータプレート40は、積層プレートに限らず、1枚のプレートで構成してもよい。
【0031】
第1アクチュエータプレート40Aおよび第2アクチュエータプレート40Bは、共に厚さ方向に分極処理された圧電基板、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス基板であり、互いの分極方向を反対に向けた状態で接合されている。
このアクチュエータプレート40は、厚さ方向L1に直交する第1方向(配列方向)L2に長く、厚さ方向L1および第1方向L2に対して直交する第2方向L3に短い、平面視略長方形状に形成されている。
【0032】
なお、本実施形態のヘッドチップ26はエッジシュート対応であるので、厚さ方向L1がプリンタ1における走査方向Xに一致し、かつ第1方向L2が搬送方向Y、第2方向L3が上下方向Zに一致する。すなわち、例えばアクチュエータプレート40の側面のうち、ノズルプレート43に対向する側面(インクが吐出される側の側面)は、下端面40Dとなり、この下端面40Dとは第2方向L3の反対側に位置する側面は、上端面40Eとなる。以下の説明では、この上下方向に則して、単に下側、上側と称して説明する場合がある。しかしながら、通常、上下方向については、プリンタ1の設置角度に応じて変化してしまうことは言うまでもない。
【0033】
アクチュエータプレート40の一方の主面(カバープレート41が重なる面)40Cには、第1方向L2に所定の間隔をあけて並んだ複数のチャネル45が形成されている。これら複数のチャネル45は、一方の主面40C側に開口した状態で第2方向L3に沿って直線状に延びる溝部であり、長手方向の一方側がアクチュエータプレート40の下端面40D側に開口している。これら複数のチャネル45の間には、断面略矩形状で第2方向L3に延びる駆動壁(圧電隔壁)46が形成されている。この駆動壁46によって、各チャネル45はそれぞれ区分けされている。
【0034】
また、複数のチャネル45は、インクが充填される液体噴射チャネル(液体吐出溝)45Aと、インクが充填されないダミーチャネル(液体非吐出溝)45Bと、に大別される。そして、これら液体噴射チャネル45Aとダミーチャネル45Bは、第1方向L2に交互に並んで配置されている。
このうち、液体噴射チャネル45Aは、アクチュエータプレート40の上端面40E側に開口することなく、下端面40D側にだけ開口した状態で形成されている。一方、ダミーチャネル45Bについては、アクチュエータプレート40の下端面40D側だけでなく、上端面40E側にも開口するように形成されている
【0035】
液体噴射チャネル45Aの内壁面、すなわち第1方向L2に向かい合う一対の側壁面および底壁面には、不図示のコモン電極(駆動電極)が形成されている。このコモン電極は、液体噴射チャネル45Aに沿って第2方向L3に延び、アクチュエータプレート40の一方の主面40C上に形成されたコモン端子(電極端子部)51に導通している。
一方、ダミーチャネル45Bの内壁面のうち、第1方向L2に向かい合う一対の側壁面には、不図示のダミー電極がそれぞれ形成されている。これらダミー電極は、ダミーチャネル45Bに沿って第2方向L3に延び、アクチュエータプレート40の一方の主面40C上に形成されたダミー端子(電極端子部)53に導通している。
【0036】
なお、ダミー端子53は、アクチュエータプレート40の一方の主面40C上における上端面40E側に形成されている。そして、液体噴射チャネル45Aを挟んだ両側に位置するダミー電極同士(異なるダミーチャネル45B内に形成されたダミー電極同士)を、接続するように形成されている。
【0037】
このような構成のもと、フレキシブル基板37を介して制御回路35がコモン端子51およびダミー端子53を通じて、コモン電極とダミー電極との間に駆動電圧を印加すると、駆動壁46が変形する。そして、液体噴射チャネル45A内に充填されたインクに圧力変動が生じる。これにより、液体噴射チャネル45A内のインクをノズル孔47より吐出することができ、被記録媒体Sに文字や図形等の各種情報を記録することが可能となる。
【0038】
アクチュエータプレート40の一方の主面40C上には、カバープレート41が重ね合わされている。このカバープレート41には、インク導入孔41Aが第1方向L2に長い平面視矩形状に形成されている。
このインク導入孔41Aには、流路部材31を介して供給されてきたインクを液体噴射チャネル45A内に導入させ、かつダミーチャネル45B内への導入を規制する複数のスリット55Aが形成されたインク導入板55が形成されている。つまり、複数のスリット55Aは、液体噴射チャネル45Aに対応する位置に形成されており、各液体噴射チャネル45A内にのみインクを充填することが可能とされる。
【0039】
なお、カバープレート41は、例えばアクチュエータプレート40と同じPZTセラミックス基板で形成され、アクチュエータプレート40と同じ熱膨張をさせることで、温度変化に対する反りや変形を抑制している。但し、この場合に限られず、アクチュエータプレート40とは異なる材料でカバープレート41を形成しても構わないが、熱膨張係数が近い材料を用いることが好ましい。
【0040】
支持プレート42は、重ね合されたアクチュエータプレート40およびカバープレート41を支持していると共に、ノズルプレート43を同時に支持している。支持プレート42は、アクチュエータプレート40に対応するように、第1方向L2に長く形成された略長方形状の板材で、中央の大部分に、厚さ方向に貫通する嵌合孔42Aが形成されている。この嵌合孔42Aは、第1方向L2に沿って略長方形状に形成されており、重ね合されたアクチュエータプレート40およびカバープレート41を嵌合孔42A内に嵌め込んだ状態で支持している。
【0041】
(ノズルプレート)
ノズルプレート43は、例えばガラスにより形成された矩形板状の部材である。なお、ガラスに限らず、ステンレスによりノズルプレート43を形成してもよい。
ノズルプレート43の厚さは、例えば50〜100μm程度に設定されている。ノズルプレート43は、支持プレート42およびアクチュエータプレート40の下端面40Dに、例えば接着等により固定されている。
【0042】
ノズルプレート43は、裏面側(アクチュエータプレート40側)に形成され、インク(液滴)が吐出される複数のノズル孔47を有するノズル列48と、表面側(インクが吐出される側)に形成され、ノズル列48の延在方向(第1方向L2)に沿ってノズル孔47と連通するように形成された凹部60と、を備えている。
【0043】
図5は、第1実施形態におけるノズルプレートの表面側から見た平面図である。
図6は、
図5のVI−VI線に沿う断面図である。
図7は、
図5のVII−VII線に沿う断面図である。
図5〜7に示すように、複数のノズル孔47は、第1方向L2に所定の間隔をあけて形成されている。ノズル孔47は、裏面側から表面側に向かって先細りとなるように円錐台状に形成されている。
図4に示すように、これらノズル孔47は、複数の液体噴射チャネル45Aに対してそれぞれ対向する位置に形成され、一列に並んでノズル列48を構成している。そして、各ノズル孔47は、それぞれ対応する液体噴射チャネル45A内に連通している。なお、通常時にノズル孔47からインクが吐出されないように、各ノズル孔47において適切なメニスカスが保たれている。
【0044】
図4および
図5に示すように、凹部60は、第1方向L2を長手方向とする平面視矩形状に形成され、短手方向(アクチュエータプレートの厚さ方向L1)の幅がノズル孔47の表面側の内径の数倍程度に設定されている。
図6および
図7に示すように、凹部60は、表面側から裏面側に向かって先細りとなる四角錐台状に形成され、ノズルプレート43の厚さの半分よりもやや深くなっている。凹部60は、その底部においてノズル孔47と連通する吐出口47aを形成している。つまり、吐出口47aはノズル孔47の先端であり、凹部60とノズル孔47との境界に位置している。
【0045】
また、
図5および
図7に示すように、凹部60には、隣り合うノズル孔47の間にリブ61が形成されている。リブ61は、凹部60の短手方向(アクチュエータプレートの厚さ方向L1)に沿って配置され、凹部60の底部から第2方向L3に沿って立設されている。リブ61の高さは、凹部60の深さと同等に設定されている。本実施形態では、リブ61は、隣り合う3つのノズル孔47を間に挟んだ両側に配置されている。
【0046】
(ノズルプレートの製造方法)
次に、
図8〜17に基づいて、本実施形態のノズルプレート43の製造方法について説明する。
図8は、第1実施形態におけるノズルプレートの製造方法を示すフローチャートである。
図9〜17は、第1実施形態におけるノズルプレートの製造方法を示す工程図であり、
図5のVI−VI線に相当する部分における断面図である。
【0047】
図8に示すように、本実施形態のノズルプレート43の製造方法は、ノズルプレート43の母材71の一面側にノズル孔47を形成するノズル孔形成工程S10と、ノズルプレート43の母材71の他面側に凹部60を形成する凹部形成工程S20と、を有する。なお、以下の説明では、ノズルプレート43の母材71として、例えば石英やホウケイ酸ガラス等のガラス材を適用して説明する。
【0048】
(ノズル孔形成工程)
まずノズル孔形成工程S10を行う。ノズル孔形成工程S10は、母材71の表面にノズル孔形成用のエッチングマスク74を形成する第1エッチングマスク形成工程S11と、エッチングマスク74を介して母材71のエッチングを行う第1エッチング工程S13と、エッチングマスク74を除去する第1マスク除去工程S15と、を有する。
【0049】
ノズル孔形成工程S10では、最初に第1エッチングマスク形成工程S11を行う。
図9に示すように、第1エッチングマスク形成工程S11では、まず母材71の一面にノズル孔形成用のエッチングマスク74の形成材料となる金属膜72を形成する。金属膜72の形成材料としては、例えばクロム等を用いる。
次に、
図10に示すように、金属膜72の表面上にフォトレジスト膜73を形成する。次いで、フォトレジスト膜73に対して、ノズル孔47に対応する円形状の遮光パターンを有するノズル孔形成用のフォトマスクを用いて露光する。その後、フォトレジスト膜73を現像することで、フォトレジスト膜73にノズル孔47に対応する開口部73aが形成される。
次に、
図11に示すように、フォトレジスト膜73の開口部73aを介して、金属膜72をエッチングする。これにより、金属膜72には、ノズル孔47に対応する開口部72aが形成され、ノズル孔形成用のエッチングマスク74となる。
【0050】
次に第1エッチング工程S13を行う。
図12に示すように、第1エッチング工程S13では、エッチングマスク74をマスクとして、母材71をエッチングする。この第1エッチング工程S13では、ドライエッチング方式を用いて異方性エッチングを行う。この際、エッチング量は、母材71の厚さの半分程度の深さとする。これにより、母材71の一面側には、円錐台状のノズル孔47が、母材71の厚さ方向に非貫通の状態で形成される。
【0051】
次に第1マスク除去工程S15を行う。
図13に示すように、第1マスク除去工程S15では、エッチングマスク74を構成するフォトレジスト膜73および金属膜72を除去する。なお、フォトレジスト膜73が第1エッチング工程S13におけるドライエッチングにより消滅している場合には、金属膜72の除去のみを行う。
【0052】
(凹部形成工程)
次に凹部形成工程S20を行う。凹部形成工程S20は、母材71の表面に凹部形成用のエッチングマスク78を形成する第2エッチングマスク形成工程S21と、エッチングマスク78を介して母材71のエッチングを行う第2エッチング工程S23と、エッチングマスク78を除去する第2マスク除去工程S25と、を有する。
【0053】
凹部形成工程S20では、最初に第2エッチングマスク形成工程S21を行う。
図14に示すように、第2エッチングマスク形成工程S21では、ノズル孔47が形成された母材71の両面に、凹部形成用のエッチングマスク78の形成材料となる金属膜76を形成する。金属膜76の形成材料としては、金属膜72と同様に、例えばクロム等を用いる。
次に、
図15に示すように、金属膜76の表面上にフォトレジスト膜77を形成する。次いで、フォトレジスト膜77に対して、リブ61が形成された凹部60に対応する遮光パターンを有する凹部形成用のフォトマスクを用いて露光する。その後、フォトレジスト膜77を現像することで、フォトレジスト膜77にリブ61が形成された凹部60に対応する開口部77aが形成される。次いで、フォトレジスト膜77の開口部77aを介して、金属膜76をエッチングする。これにより、金属膜76には、リブ61が形成された凹部60に対応する開口部76aが形成され、凹部形成用のエッチングマスク78となる。
【0054】
次に第2エッチング工程S23を行う。
図16に示すように、第2エッチング工程S23では、エッチングマスク78をマスクとして、母材71をエッチングする。この第2エッチング工程S23では、第1エッチング工程S13と同様に、ドライエッチング方式を用いて異方性エッチングを行う。この際、エッチング量は、母材71の厚さの半分よりやや深い程度とする。これにより、母材71の他面側には、凹部60が形成されるとともに、母材71の一面側に形成されたノズル孔47が、凹部60の底面と連通する。
【0055】
次に第2マスク除去工程S25を行う。
図17に示すように、第2マスク除去工程S25では、エッチングマスク78を構成するフォトレジスト膜77および金属膜76を除去する。なお、第1マスク除去工程S15と同様に、フォトレジスト膜77が第2エッチング工程S23におけるドライエッチングにより消滅している場合には、金属膜76の除去のみを行う。
以上により、ノズルプレート43の製造は終了する。
【0056】
このように、本実施形態のノズルプレート43は、裏面側に形成され、インクが吐出される複数のノズル孔47を有するノズル列48と、表面側に形成され、ノズル列48の延在方向(第1方向L2)に沿ってノズル孔47と連通するように形成された凹部60と、を備え、凹部60には、隣り合うノズル孔47の間に、少なくとも1箇所リブ61が形成されている。
この構成によれば、凹部60にリブ61が形成されているため、ノズルプレート43の厚さを増加させることなく、ノズル列48の延在方向(第1方向L2)周りの曲げに対するノズルプレート43の強度を向上させることができる。また、凹部60を形成する際には、リブ61に区分けされた領域毎に各別にエッチングを行うことになるので、隣り合うリブ61に挟まれた領域内における深さのばらつき、および隣り合うリブ61に挟まれた領域間における深さのばらつきを低減させることができる。これにより、凹部60の底部におけるノズル孔47(吐出口47a)の開口径のばらつきを抑制できる。したがって、高強度を有し、印字品質に優れたノズルプレート43が得られる。
【0057】
また、ノズルプレート43は、リブ61が3つのノズル孔47を間に挟んだ両側に配置されているため、リブ61が各ノズル孔47に対応して配置される構成に比べて、ノズル孔47の吐出口47a周辺の空間を広く設けることができる。これにより、吐出口47aから吐出されたインクがリブ61に付着し、ノズルプレート43が汚れることを防止できる。
【0058】
また、ノズルプレート43は、ガラスおよびステンレスの少なくとも何れか一方により形成されているため、加工性に優れ、かつ高耐久性を有するノズルプレート43が得られる。
【0059】
また、プリンタ1およびインクジェットヘッド4は、ノズルプレート43を備えているため、耐久性および印字品質の向上を図ることができる。
【0060】
[第1実施形態の変形例]
次に、
図18に基づいて、本実施形態の変形例におけるノズルプレート143について説明する。
図18は、第1実施形態の変形例におけるノズルプレートの表面側から見た平面図である。
ここで、
図5〜7に示す第1実施形態では、リブ61が隣り合う3つのノズル孔47を間に挟んだ両側に配置されていた。一方で、
図18に示す変形例では、リブ61が各ノズル孔47の両側に配置されている点で、第1実施形態と異なっている。なお、
図5〜7に示す第1実施形態と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
【0061】
図18に示すように、ノズルプレート143には、リブ61が複数のノズル孔47の各々の周囲に配置されている。
このように構成することで、ノズル列48(
図3参照)の延在方向(第1方向L2)周りの曲げに対するノズルプレート143の強度をより向上させることができる。また、凹部60の底部におけるノズル孔47(吐出口47a)の開口径の精度をより向上させることができる。
【0062】
[第2実施形態]
(ノズルプレート)
次に、
図19〜21に基づいて、第2実施形態におけるノズルプレート243について説明する。
図19は、第2実施形態におけるノズルプレートの表面側から見た平面図である。
図20は、
図19のXX−XX線に沿う断面図である。
図21は、
図19のXXI−XXI線に沿う断面図である。
【0063】
ここで、
図5〜7に示す第1実施形態では、凹部60は、平面視矩形状に形成されていた。一方で、
図19〜21に示す第2実施形態では、凹部260は、平面視円形状の部分が連なって形成されている点で、第1実施形態と異なっている。また、
図5〜7に示す第1実施形態では、ノズル孔47が円錐台状に形成されていた。一方で、
図19〜21に示す第2実施形態では、ノズル孔247が椀状に形成されている点で、第1実施形態と異なっている。
【0064】
図19〜21に示すように、ノズルプレート243は、裏面側に形成された複数のノズル孔247と、表面側に形成された凹部260と、を備えている。
ノズル孔247は、裏面側から表面側に向かって先細りとなるように椀状に形成されている。
【0065】
凹部260は、各ノズル孔247に対応する位置に形成された複数の掘り込み部260aと、隣り合う掘り込み部260aの間に形成された複数のリブ261と、を有している。
掘り込み部260aは、平面視においてノズル孔247よりも大きい円形状に形成されている。掘り込み部260aは、表面側から裏面側に向かって先細りとなる椀状に形成され、ノズルプレート243の厚さの半分よりもやや深くなっている。掘り込み部260aは、その底部においてノズル孔247と連通する吐出口247aを形成している。つまり、吐出口247aはノズル孔247の先端であり、凹部260とノズル孔247との境界に位置している。この掘り込み部260aが第1方向L2に沿って連なるように配置されることで、凹部260が形成されている。このとき、各掘り込み部260aは、平面視において隣り合う掘り込み部260aと重複するように配置されている。
【0066】
リブ261は、隣り合う一対の掘り込み部260aの周壁に挟まれることで形成されている。リブ261は、複数のノズル孔247の各々の周囲に配置されている。リブ261の高さは、上述のように隣り合う掘り込み部260a同士が平面視において重複するように配置されているため、凹部260の深さよりも低くなっている。
【0067】
(ノズルプレートの製造方法)
次に、
図22〜29に基づいて、本実施形態のノズルプレート243の製造方法について説明する。
図22〜29は、第2実施形態におけるノズルプレートの製造方法を示す工程図であり、
図19のXX−XX線に相当する部分における断面図である。
【0068】
ここで、
図9〜
図17に示す第1実施形態では、ノズル孔47および凹部60を異方性エッチングにより形成していたが、
図22〜
図29に示す第2実施形態では、ノズル孔47および凹部260を等方性エッチングにより形成している点で異なっている。なお、
図9〜17に示す第1実施形態と同様となる工程については、詳細な説明を省略する。
【0069】
(ノズル孔形成工程)
まずノズル孔形成工程を行う。ノズル孔形成工程は、母材71の表面にノズル孔形成用のエッチングマスク274を形成する第1エッチングマスク形成工程と、エッチングマスク274を介して母材71のエッチングを行う第1エッチング工程と、エッチングマスク274を除去する第1マスク除去工程と、を有する。
【0070】
ノズル孔形成工程では、最初に第1エッチングマスク形成工程を行う。
図22に示すように、第1エッチングマスク形成工程では、まず母材71の両面にノズル孔形成用のエッチングマスク274の形成材料となる金属膜272を形成する。金属膜272の形成材料としては、クロム等の金属を下地層とし、金等の金属を上地層とした積層膜を用いる。
次に、
図23に示すように、金属膜272の表面上にフォトレジスト膜273を形成する。次いで、一面側のフォトレジスト膜273に対して、ノズル孔247に対応する円形状の遮光パターンを有するノズル孔形成用のフォトマスクを用いて露光する。その後、フォトレジスト膜273を現像することで、フォトレジスト膜273にノズル孔247に対応する開口部273aが形成される。
次に、
図24に示すように、フォトレジスト膜273の開口部273aを介して、金属膜272をエッチングする。これにより、金属膜272には、ノズル孔247に対応する開口部272aが形成され、ノズル孔形成用のエッチングマスク274となる。
【0071】
次に第1エッチング工程を行う。
図25に示すように、第1エッチング工程では、エッチングマスク274をマスクとして、母材71をエッチングする。この第1エッチング工程では、ウェットエッチング方式を用いて等方性エッチングを行う。この際、エッチング量は、母材71の厚さの半分程度の深さとする。これにより、母材71の一面側には、他面側に向かって先細りとなる椀状のノズル孔247が、母材71の厚さ方向に非貫通の状態で形成される。
【0072】
次に第1マスク除去工程を行う。
図26に示すように、第1マスク除去工程では、エッチングマスク274を構成するフォトレジスト膜273、および金属膜272のうち母材71の一面側に形成された金属膜272を除去する。具体的には、母材71の一面側(ノズル孔247を形成した表面側)に形成されたフォトレジスト膜273を、例えば酸素プラズマアッシング等により除去し、母材71の一面側に形成された金属膜272を露出させる。次いで、露出した金属膜272をウェットエッチングにより除去する。次いで、母材71の他面側に形成されたフォトレジスト膜273を、上記フォトレジスト膜273の除去と同様に、例えば酸素プラズマアッシング等により除去する。これにより、母材71上には、他面側(ノズル孔247を形成した表面とは反対側)に形成された金属膜272のみが残され、後述する凹部形成工程においてエッチングマスク278を形成する金属膜として利用することができる。
【0073】
(凹部形成工程)
次に凹部形成工程を行う。凹部形成工程は、母材71の表面に凹部形成用のエッチングマスク278を形成する第2エッチングマスク形成工程と、エッチングマスク278を介して母材71のエッチングを行う第2エッチング工程と、エッチングマスク278を除去する第2マスク除去工程と、を有する。
【0074】
凹部形成工程では、最初に第2エッチングマスク形成工程を行う。
図27に示すように、第2エッチングマスク形成工程では、ノズル孔247が形成された母材71の一面側に、凹部形成時の保護膜の形成材料となる金属膜276を形成する。金属膜276の形成材料としては、金属膜272と同様に、クロム等の金属を下地層とし、金等の金属を上地層とした積層膜を用いる。なお、母材71の他面側は、上述した第1マスク除去工程において残した金属膜272を、第2エッチングマスク形成工程における他面側のマスクとして活用する。
【0075】
次に、
図28に示すように、金属膜272,276の表面上にフォトレジスト膜277を形成する。次いで、フォトレジスト膜277に対して、凹部形成用のフォトマスクを用いて露光する。このとき、凹部形成用のフォトマスクの遮光パターンは、複数の掘り込み部260aに対応する形状に形成され、各掘り込み部260aに対応する遮光パターンが、隣り合う掘り込み部260aに対応する遮光パターンと重複しないように形成されている。その後、フォトレジスト膜277を現像することで、フォトレジスト膜277に複数の掘り込み部260aに対応する開口部277aが形成される。次いで、フォトレジスト膜277の開口部277aを介して、金属膜272をエッチングする。これにより、金属膜272には、複数の掘り込み部260aに対応する開口部272bが形成され、凹部形成用のエッチングマスク278となる。
【0076】
次に第2エッチング工程を行う。
図29に示すように、第2エッチング工程では、エッチングマスク278をマスクとして、母材71をエッチングする。この第2エッチング工程では、ウェットエッチング方式を用いて等方性エッチングを行う。これにより、母材71のエッチングは、平面視において各開口部272bを中心に広がるように進行し、各掘り込み部260aが平面視において隣り合う掘り込み部260aと重複するように形成され、凹部260の深さよりも低いリブ261が形成される。また、エッチング量を母材71の厚さの半分よりやや深い程度とすることで、母材71の他面側には、凹部260が形成されるとともに、母材71の一面側に形成されたノズル孔247が、凹部260の底面と連通する。
【0077】
次に、第1実施形態における第2マスク除去工程S25と同様の第2マスク除去工程を行い、エッチングマスク278を構成するフォトレジスト膜277および金属膜272,276を除去することで、ノズルプレート243の製造は終了する。
なお、第2エッチング工程においてエッチング不足が生じ、ノズル孔247と凹部260とが連通しなかった際には、再度ウェットエッチングを行うことでノズル孔247と凹部260とを連通させる。このとき、凹部260はノズル孔247と比べて外側の開口面積が広いため、凹部260にはノズル孔247に比べて気泡が入りにくい。このため、ノズル孔247を所定の形状に形成した後に凹部260を形成する構成とすることで、再度ウェットエッチングを行う必要性が生じた場合も、気泡の入り込みによるエッチングのばらつきを抑制でき、凹部260を高い寸法精度で形成できる。したがって、凹部260の底部におけるノズル孔247(吐出口247a)の開口径に、ばらつきが生じることを抑制できる。
しかしながらこれに限られることなく、凹部260を先にエッチングにより形成してもよい。
【0078】
このように、ノズルプレート243は、リブ261の高さが、凹部260の深さよりも低く設定されている。この構成によれば、ノズルプレート243の表面に付着したインクをワイピングする際に、ワイパに付着したインクがリブ261によってそぎ落とされ、このリブ261に付着することを防止できる。これにより、インクが凹部260に溜まることを防止できる。
【0079】
またノズル孔247は、表面側に向かって先細りとなるように椀状に形成されている。これにより、非吐出時においてノズル孔247の内部にあるインクのメニスカスが、吐出口247aよりも内側(裏面側)に形成される。このため、ノズルプレート243の表面にインクが付着してノズルプレート243が汚れることを防止できる。また、アクチュエータプレート40側(
図3参照)の開口径を大きく確保することで、ノズル孔247内におけるインクの圧力を高め易くすることができ、インクの吐出性能を向上できる。
【0080】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、ノズル孔47,247は裏面側から表面側に向かって先細りとなる円錐台状または椀状に形成されているが、これに限定されず、例えば漏斗状に形成されてもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、いわゆるエッジシュートタイプのヘッドチップ26を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、液体噴射チャネル45Aの長手方向中央に臨むノズル孔47からインクを吐出する、いわゆるサイドシュートタイプとしても構わない。
【0082】
また、上記実施形態のノズルプレートの製造方法においては、等方性エッチングとしてウェットエッチング方式を用い、異方性エッチングとしてドライエッチング方式を用いている。しかしながら、これに限られるものではなく、等方性エッチングとしてドライエッチング方式を用い、異方性エッチングとしてウェットエッチング方式を用いてもよい。
【0083】
また、上記実施形態においては、ノズルプレート43,243の製造方法として、エッチング加工を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、プレス加工等の機械加工や、レーザー加工等により製造することができる。
【0084】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。