(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383655
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】ナット部材
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
F16B37/04 X
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-257281(P2014-257281)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118230(P2016-118230A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 樹
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−220938(JP,A)
【文献】
特開2014−149030(JP,A)
【文献】
特開2001−153111(JP,A)
【文献】
実開昭53−90765(JP,U)
【文献】
特開昭58−221009(JP,A)
【文献】
米国特許第4315393(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
E01F 9/00
E01F 13/00
E04H 1/12
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟻溝状の係合溝がその側面に長手方向に設けられた支柱の前記係合溝内に挿入されるナット部材であって、
該ナット部材は、多角形状のナット部にフランジ部が備えられたナットと、貫通孔が形成された長方形状の平板と、挿通孔が形成された長方形状のゴム弾性板とを備え、
前記平板の幅は前記係合溝の開口幅より小さく形成され、前記平板の長さは前記係合溝の壁面間より短く、かつ開口幅より長く形成され、前記ゴム弾性板の幅は前記係合溝の開口幅より小さく形成され、前記ゴム弾性板の長さは前記係合溝の壁面間より長く形成され、
前記平板と前記ゴム弾性板とがその長手方向が一致するように重ねられて配置され、前記平板の貫通孔と前記ゴム弾性板の挿通孔とに前記ナット部が挿入されるとともに係止されて、
少なくとも前記フランジ部と前記平板と前記ゴム弾性板とが前記係合溝内に配置されていることを特徴とするナット部材。
【請求項2】
前記平板の四隅の角部のうち対角に位置する1対の角部が斜めに切除されて傾斜部が形成され、その傾斜部間の長さは前記係合溝の壁面間より短く形成され、前記傾斜部が形成されていない前記平板の1対の対角の長さは前記係合溝の壁面間より長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のナット部材。
【請求項3】
前記平板と前記ゴム弾性板とが固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のナット部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バス停などに設置されるシェルター、庭園などの休憩所として設置される東屋、庭などに設置される日陰棚など、支柱や梁材が用いられている簡易構築物等において、支柱の側面に被取付物を取付ける際に用いられるナット部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、支柱や梁材が用いられている簡易構築物等において、支柱の側面に被取付物を取付ける際に用いられるナット部材としては、例えば特許文献1の段落22、
図3等には、T溝等の如く、溝開口幅に比して溝底幅が広い溝1cを画成された支柱1に、被取付物である手摺2を支柱1に取付ける場合には、溝1cにナット部分2cを嵌め込み90度回転させ、適当な位置で取付部2bを回り止め部材2dを介してボルト2eにより締め付け固定するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−220938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のナット部材では、手摺を支柱の適切な位置に固定することができるものの、ナット部材を所定の位置で溝内に挿入し回転させた後、ボルトを締め付け終えるまでの間、常にナット部材を手で保持しておく必要があり、被取付物を取付ける作業が片手で行わざるを得ず、少なからず面倒な作業であり、また効率のよい作業とは言えないものであった。
【0005】
本発明は、支柱に設けられた溝内の所望の位置に挿入した後は、手で保持しなくてもズレ落ちたりすることなく、被取付物を両手で効率よく支柱に取付けることができるナット部材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係るナット部材は、蟻溝状の係合溝がその側面に長手方向に設けられた支柱の前記係合溝内に挿入されるナット部材であって、
該ナット部材は、多角形状のナット部にフランジ部が備えられたナットと、貫通孔が形成された長方形状の平板と、挿通孔が形成された長方形状のゴム弾性板とを備え、
前記平板の幅は前記係合溝の開口幅より小さく形成され、前記平板の長さは前記係合溝の壁面間より短く、かつ開口幅より長く形成され、
前記ゴム弾性板の幅は前記係合溝の開口幅より小さく形成され、前記ゴム弾性板の長さは前記係合溝の壁面間より長く形成され、
前記平板と前記ゴム弾性板とがその長手方向が一致するように重ねられて配置され、前記平板の貫通孔と前記ゴム弾性板の挿通孔とに前記ナット部が挿入されるとともに係止されて、
少なくとも前記フランジ部と前記平板と前記ゴム弾性板とが前記係合溝内に配置されていることを特徴とするものである。
【0007】
また本発明に係るナット部材は、前記平板の四隅の角部のうち対角に位置する1対の角部が斜めに切除されて傾斜部が形成され、その傾斜部間の長さは前記係合溝の壁面間より短く形成され、前記傾斜部が形成されていない前記平板の1対の対角の長さは前記係合溝の壁面間より長く形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明に係るナット部材は、前記平板と前記ゴム弾性板とが固着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るナット部材によれば、前記ナット部材は、多角形状のナット部にフランジ部が備えられたナットと、貫通孔が形成された長方形状の平板と、挿通孔が形成された長方形状のゴム弾性板とを備え、
前記平板の幅は前記係合溝の開口幅より小さく形成され、前記平板の長さは前記係合溝の壁面間より短く、かつ開口幅より長く形成され、
前記ゴム弾性板の幅は前記係合溝の開口幅より小さく形成され、前記ゴム弾性板の長さは前記係合溝の壁面間より長く形成され、
前記平板と前記ゴム弾性板とがその長手方向が一致するように重ねられて配置され、前記平板の貫通孔と前記ゴム弾性板の挿通孔とに前記ナット部が挿入されるとともに係止されて、
少なくとも前記フランジ部と前記平板と前記ゴム弾性板とが前記係合溝内に配置されているので、前記ナット部材を前記係合溝の開口から挿入した後回転させ、前記係合溝の壁面に前記ゴム弾性板の長手方向の両端部が当接されることにより、前記係合溝に前記ナット部材を仮止めすることができ、よって前記ナット部材を前記係合溝内の所望の位置に挿入した後は、手で保持しなくてもズレ落ちたりすることなく、被取付物を両手で効率よく支柱に取付けることができる。
【0010】
また本発明に係るナット部材によれば、前記平板の四隅の角部のうち対角に位置する1対の角部が斜めに切除されて傾斜部が形成され、その傾斜部間の長さは前記係合溝の壁面間より短く形成され、前記傾斜部が形成されていない前記平板の1対の対角の長さは前記係合溝の壁面間より長く形成されているので、被取付物を支柱に取付けるために用いるボルトを前記ナット部材に螺入する際、前記傾斜部が形成されていない対角に位置する前記平板の角部が前記係合溝の壁面に当接して引っ掛かり、前記ナット部材の回転が阻止されるため、前記ボルトと前記ナット部材とが供回りすることがなく、前記支柱に前記被取付物を効率よく取付けることができる。
【0011】
また本発明に係るナット部材によれば、前記平板と前記ゴム弾性板とが固着されているので、前記ナット部材を支柱に設けられた溝内の所定の位置で回転させるとき、前記ゴム弾性板と前記平板と前記ナットとが外れることなく、溝内にナット部材を確実に仮止めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るナット部材の実施の一形態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すナット部材の、(イ)は正面図、(ロ)は側面図、(ハ)は平面図、(ニ)は背面図である。
【
図4】
図1に示すナット部材を用いて支柱に被取付物を取付けた状態を示す、(イ)は正面図、(ロ)は側面図である。
【
図5】(イ)は
図4に示す支柱でのナット部材の使用状態を示す説明図、(ロ)はナット部材が挿着される係合溝を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照し、具体的に説明する。
なお本発明の記載におけるゴム弾性板とは、ゴムの如き弾性及び摩擦力を備えた板状体を表し、天然ゴムや合成ゴム、合成樹脂、エラストマーなどで形成された板状体が含まれるものである。また
図2にも記載の通り、後述する平板5とゴム弾性板6について、それらの長さとは、長方形状の長手方向の寸法を表し、それらの幅とは、長方形状の短手方向の寸法を表すものである。
【0014】
図面において、1は本発明に係るナット部材、2は設置場所に立設された支柱、3は前記ナット部材1を介して前記支柱2に取付けられる被取付物3(本実施形態においては、コ字状の手摺)であり、前記支柱2には蟻溝状の係合溝21がその側面に長手方向に設けられて、該係合溝21内に前記ナット部材1が挿入され、該ナット部材1にボルトBを螺入して前記被取付物である手摺3が前記支柱2に取付けられるようになされている。
【0015】
前記ナット部材1は、ナット4と平板5とゴム弾性板6とを備えている。そして前記ナット4は、外形が多角形状(本実施形態においては、六角形状)で、その中央に雌ねじが刻設されたナット部41の下端に円板状のフランジ部42が設けられ、鉄鋼などの金属で形成されている。
【0016】
前記平板5は、前記ナット4のナット部41と同じ六角形状の貫通孔51が中央部に形成された長方形状の金属板で形成されており、前記貫通孔51は前記ナット部41が係止可能に形成され、前記平板5を前記ナット部41に外嵌できるようになされている。そして、前記平板5の幅5Wは前記係合溝21の開口幅D1より小さく形成され、前記平板5を備えた前記ナット部材1を前記係合溝21に挿入できるようになされている。また、前記平板5の長さ5Lは前記係合溝21の壁面間D2より短く、かつ開口幅D1より長く形成され、前記平板5の四隅の角部52のうち対角に位置する1対の角部52が斜めに切除されて傾斜部53が形成され、その傾斜部53間の長さ5Kは前記係合溝21の壁面間D2より短く形成され、前記傾斜部53が形成されていない前記平板5の1対の対角の長さ5Tは前記係合溝21の壁面間より長く形成されて、前記係合溝21に挿入した前記ナット部材1を前記傾斜部53の方向に少なくとも90度回転させることができ、かつ、それ以上回転させると、前記傾斜部53が形成されていない対角に位置する前記平板5の角部52が前記係合溝21の壁面に当接して引っ掛かり、前記ナット部材1の回転が阻止される、つまり前記ナット部材1が前記係止溝21内で空回りしないような形状に形成されている。したがって、前記係止溝21に挿入し仮止め状態にした前記ナット部材1に、前記ボルトBを螺入して前記手摺3を前記支柱2に取付ける際、前記ボルトBを前記ナット部材1のナット部41に螺入しても、前記ボルトBと前記ナット部材1とが供回りすることがないので、前記支柱2に前記手摺3を効率よく取付けることができる。
【0017】
前記ゴム弾性板6は、前記ナット4のナット部41と同じ六角形状の挿通孔61が中央部に形成された長方形状に形成されており、前記挿通孔61は前記ナット部41に係止可能に形成されている。そして、前記ゴム弾性板6の幅6Wは前記係合溝21の開口幅D1より小さく形成され、前記ゴム弾性板6を備えた前記ナット部材1を前記係合溝21に挿入できるようになされている。また、前記ゴム弾性板6の長さ6Lは前記係合溝21の壁面間D2より長く形成され、前記ゴム弾性板6の四隅の角部62のうち対角に位置する1対の角部62が斜めに切除されて傾斜部63が形成され、その傾斜部63間の長さ6Kは前記係合溝21の壁面間D2より短く形成され、前記係合溝21に挿入した前記ナット部材1を前記傾斜部63の方向に90度回転させることができ、かつ、その状態で前記係合溝21の壁面に前記ゴム弾性板6の長手方向の両端部64が当接されるような形状に形成されている。
【0018】
そして、前記平板5と前記ゴム弾性板6とがその長手方向が一致するように重ねられて配置され、前記平板5の貫通孔51と前記ゴム弾性板6の挿通孔61とに前記ナット部41が挿入されるとともに係止されて、前記ナット部材1が形成されている。
【0019】
上述の如き形状とすることにより、前記ナット部材1を前記係合溝21の開口から溝内に挿入し、少なくとも前記フランジ部42と前記平板5と前記ゴム弾性板6とが前記係合溝内21に配置されている状態で、前記ナット部材1を前記平板5及びゴム弾性板6の傾斜部53、63の方向に90度回転させると、前記ゴム弾性板6の両端部64がその摩擦力によって前記係合溝21の壁面に係止され、前記ナット部材1を前記係合溝21に仮止めすることができる。
【0020】
なおこのとき、前記ゴム弾性板6の長さ6Lは前記係合溝21の壁面間D2より長く形成されているので、前記ナット部材1を前記係合溝21に挿入して前記平板5及びゴム弾性板6の傾斜部53、63の方向に回転させていくと、前記ゴム弾性板6の長手方向の両端部64が前記係合溝21の壁面に当接しその回転が邪魔されるが、前記ゴム弾性板6が持つ弾性によって、前記ゴム弾性板6の長手方向の両端部64を変形させながら前記ナット部材1をさらに回転させることができるので、前記係合溝21に前記ナット部材1を確実に仮止めすることができる。
【0021】
また前記平板5と前記ゴム弾性板6とは、両面テープや接着剤などにより前記平板5の下面と前記ゴム弾性板6の上面とが貼り合わされるなどして固着されているので、前記ゴム弾性板6の摩擦力により、前記ナット部41に挿通した前記平板5と前記ゴム弾性板6とが前記ナット4に一体的に係止されて、前記ナット部材1を前記支柱2に設けられた係止溝21内の所定の位置で回転させるとき、前記ゴム弾性板6と前記平板5と前記ナット4とが外れることなく、係止溝21内に前記ナット部材1を確実に仮止めすることができる。
【0022】
なお本実施形態においては、前記平板5の貫通孔51と前記ゴム弾性板6の挿通孔61は、前記ナット部41と同じ形状の六角形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、前記ナット部41に係止可能な形状であれば、例えば四角形状や八角形状などであってもよい。
【0023】
また、前記平板5と同様に、前記ゴム弾性板6にも傾斜部63を設けているが、前記ゴム弾性板6は弾性を持っているため、前記係止溝21の壁体23に当接しても変形可能であることから、前記ゴム弾性板6には前記傾斜部63を必ずしも設ける必要はない。
【符号の説明】
【0024】
1 ナット部材
2 支柱
21 係合溝
3 被取付物(手摺)
4 ナット
41 ナット部
42 フランジ部
5 平板
51 貫通孔
52 角部
53 傾斜部
5W 幅
5L 長さ
5K 傾斜部間の長さ
5T 対角の長さ
6 ゴム弾性板
61 挿通孔
62 角部
63 傾斜部
64 両端部
6W 幅
6L 長さ
6K 傾斜部間の長さ
B ボルト
D1 開口幅
D2 壁面間