特許第6383663号(P6383663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383663
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20180820BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A61M25/09 530
   A61M25/00 506
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-549872(P2014-549872)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2013081952
(87)【国際公開番号】WO2014084274
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年10月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-262764(P2012-262764)
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 道寛
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−161380(JP,A)
【文献】 特開平10−216240(JP,A)
【文献】 特開2010−178807(JP,A)
【文献】 特開昭59−103674(JP,A)
【文献】 実開昭51−038395(JP,U)
【文献】 特開平10−085341(JP,A)
【文献】 特開2000−042120(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0178635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/09
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体を構成するシャフト(12)と、
前記シャフト(12)の基端に設けられ、前記シャフト(12)の内腔と連通するハブ内腔(24)と、基端開口部(26)とを有するハブ(14b)と、
を備えるカテーテル(60)であって、
前記ハブ(14b)は、前記基端開口部(26)から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部(34)と、前記第1テーパ部(34)の先端から先端方向に向かって前記第1テーパ部(34)よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部(36)と、前記第2テーパ部(36)の先端から先端方向に向かって前記第2テーパ部(36)よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部(38)とを有し、
前記ハブ(14b)は、前記第3テーパ部(38)の先端から先端方向に向かって内径が一定のストレート部(54)を有
前記第3テーパ部(38)は、前記シャフト(12)の基端よりも基端側で前記ハブ内腔(24)に露出している、
ことを特徴とするカテーテル(60)。
【請求項2】
カテーテル本体を構成するシャフト(12)と、
前記シャフト(12)の基端に設けられ、前記シャフト(12)の内腔と連通するハブ内腔(24)と、基端開口部(26)とを有するハブ(14、14a、14b)と、
を備えるカテーテル(10、60)であって、
前記ハブ(14、14a、14b)は、前記基端開口部(26)から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部(34)と、前記第1テーパ部(34)の先端から先端方向に向かって前記第1テーパ部(34)よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部(36、36a)と、前記第2テーパ部(36、36a)の先端から先端方向に向かって前記第2テーパ部(36、36a)よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部(38)とを有し、
前記ハブ(14、14a、14b)は、透明性を有する材料により構成され、
前記ハブ(14、14a、14b)の、前記第2テーパ部(36、36a)に対応する部分には、軸方向に延在する複数の筋(40)が設けられる、
ことを特徴とするカテーテル(10、60)。
【請求項3】
カテーテル本体を構成するシャフト(12)と、
前記シャフト(12)の基端に設けられ、前記シャフト(12)の内腔と連通するハブ内腔(24)と、基端開口部(26)とを有するハブ(14a)と、
を備えるカテーテル(10)であって、
前記ハブ(14a)は、前記基端開口部(26)から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部(34)と、前記第1テーパ部(34)の先端から先端方向に向かって前記第1テーパ部(34)よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部(36a)と、前記第2テーパ部(36a)の先端から先端方向に向かって前記第2テーパ部(36a)よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部(38)とを有し、
前記第2テーパ部(36a)の、前記ハブ(14a)の縦断面における内面形状は、前記ハブ(14a)の内側に向かって盛り上がるように湾曲した部分(52)を有する、
ことを特徴とするカテーテル(10)。
【請求項4】
カテーテル本体を構成するシャフト(12)と、
前記シャフト(12)の基端に設けられ、前記シャフト(12)の内腔と連通するハブ内腔(24)と、基端開口部(26)とを有するハブ(14、14a、14b)と、
を備えるカテーテル(10、60)であって、
前記ハブ(14、14a、14b)は、前記基端開口部(26)から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部(34)と、前記第1テーパ部(34)の先端から先端方向に向かって前記第1テーパ部(34)よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部(36、36a)と、前記第2テーパ部(36、36a)の先端から先端方向に向かって前記第2テーパ部(36、36a)よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部(38)とを有し、
前記第1テーパ部(34)と前記第2テーパ部(36、36a)と前記第3テーパ部(38)とは、互いに内周面の平滑度が異なる、
ことを特徴とするカテーテル(10、60)。
【請求項5】
カテーテル本体を構成するシャフト(12)と、
前記シャフト(12)の基端に設けられ、前記シャフト(12)の内腔と連通するハブ内腔(24)と、基端開口部(26)とを有するハブ(14、14a、14b)と、
を備えるカテーテル(10、60)であって、
前記ハブ(14、14a、14b)は、前記基端開口部(26)から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部(34)と、前記第1テーパ部(34)の先端から先端方向に向かって前記第1テーパ部(34)よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部(36、36a)と、前記第2テーパ部(36、36a)の先端から先端方向に向かって前記第2テーパ部(36、36a)よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部(38)とを有し、
前記ハブ(14、14a、14b)には、前記シャフト(12)の基端部(32)が接触する段差部(30)が設けられ、
前記シャフト(12)を構成する素材が、前記段差部(30)を覆い且つ前記段差部(30)よりも基端側まで設けられる、
ことを特徴とするカテーテル(10、60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管等の生体器官内にカテーテルを導入して生体器官内の病変部(例えば、狭窄部)を検査・処置することが広範に行われている。この種のカテーテルは、一般に、カテーテル本体を構成する長尺なシャフトと、当該シャフトの基端部に連結されたハブとを有する(例えば、米国特許第6355027号明細書、特開平9−637号公報を参照)。
【0003】
このようなカテーテルの使用において、カテーテルの先端を生体内の目的部位まで到達させるには、体内の複雑に分岐した血管内や体腔内でシャフトを選択的に進行させる必要がある。このため、通常、カテーテルの内腔にガイドワイヤを挿通させ、カテーテルの先端に対して当該ガイドワイヤの先端を先行させた状態で、当該ガイドワイヤに沿って血管内や体腔内でカテーテルを走行させる。
【発明の概要】
【0004】
ところで、ガイドワイヤは、血管の選択やカテーテル先端の方向制御を行うために、先端部の一箇所又は複数個所をあらかじめ折り曲げて(アングル付けして)使用される場合がある。このように先端部がアングル付けされたガイドワイヤをカテーテルのハブの基端開口部からカテーテルに挿入する際、ハブ内周面の一部にガイドワイヤの最先端部が接触するとともに、当該接触箇所とは反対側のハブ内周面にガイドワイヤの他部が接触しながら、ガイドワイヤがハブに対して前進する。この場合、従来のハブには、内径が先端方向に向かって一定割合で減少するルアーテーパが設けられているため、先端側に行くほど内径が小さくなり、内径の縮小に伴ってガイドワイヤとハブ内周面との摩擦抵抗も大きくなる。このため、ガイドワイヤの移動がハブ内周面で阻止され、ガイドワイヤをそれ以上先端側に移動させることが困難となる場合がある。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、先端が屈曲したガイドワイヤをカテーテルのハブの基端開口部から挿入する際に、ハブに対するガイドワイヤの先端の移動抵抗を低減することにより、ガイドワイヤの先端をカテーテルのシャフトの内腔へとスムーズに挿入することができるカテーテルを提供することを目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、カテーテル本体を構成するシャフトと、前記シャフトの基端に設けられ、前記シャフトの内腔と連通するハブ内腔と、基端開口部とを有するハブと、を備えるカテーテルであって、前記ハブは、前記基端開口部から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部と、前記第1テーパ部の先端から先端方向に向かって前記第1テーパ部よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部と、前記第2テーパ部の先端から先端方向に向かって前記第2テーパ部よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部とを有することを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、先端部を屈曲させたガイドワイヤをハブの基端側から挿入する際、第1テーパ部よりも傾斜角度が大きい第2テーパ部により、ガイドワイヤを直線状に戻す方向にガイドワイヤの先端部が誘導される。これにより、ガイドワイヤの先端部が比較的早い段階で(ハブ内腔内の手前側で)ハブの軸線に対する傾斜が小さくなることで、ハブ内周面とガイドワイヤ先端部との摩擦抵抗が減少し、ガイドワイヤ先端部が先端方向に移動しやすくなる。従って、ガイドワイヤの移動がハブ内周面によって阻止されることがなく、ガイドワイヤをシャフト内へとスムーズに挿入することができる。
【0008】
上記の記載のカテーテルにおいて、前記ハブは、前記第3テーパ部の先端から先端方向に向かって内径が一定のストレート部を有していてもよい。この構成によっても、ガイドワイヤをシャフト内へとスムーズに挿入することができるという上記と同様の作用効果が得られる。
【0009】
上記のカテーテルにおいて、前記ハブは、透明性を有する材料により構成され、前記ハブの、前記第2テーパ部に対応する部分には、軸方向に延在する複数の筋が設けられてもよい。この構成によれば、筋があることにより、第2テーパ部にガイドワイヤの端部が存在するかどうかを視認しやすくなる。
【0010】
上記のカテーテルにおいて、前記第2テーパ部の、前記ハブの縦断面における内面形状は、前記ハブの内側に向かって盛り上がるように湾曲した部分を有していてもよい。この構成によれば、ガイドワイヤ先端部と第2テーパ部との接触面積が低減することによって摩擦抵抗を減らすことができるため、ガイドワイヤが第2テーパ部を通過しやすくなる。
【0011】
上記のカテーテルにおいて、前記第1テーパ部と前記第2テーパ部と前記第3テーパ部とは、互いに内周面の平滑度が異なっていてもよい。この構成によれば、例えば、第2テーパ部の平滑度を第1及び第3テーパ部の平滑度よりも高くすることにより、第2テーパ部によりガイドワイヤを誘導する際の、ガイドワイヤ先端部と第2テーパ部との摩擦抵抗をより小さくすることができ、ガイドワイヤの挿入操作をよりスムーズに行うことができる。
【0012】
上記のカテーテルにおいて、前記ハブには、前記シャフトの基端部が接触する段差部が設けられ、前記シャフトを構成する素材が、前記段差部を覆い且つ前記段差部よりも基端側まで設けられてもよい。この構成によれば、カテーテルの先端からガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの基端をハブ内に通す際に、ハブの段差部を覆うシャフトの素材によりガイドワイヤの基端が好適に案内される。これにより、ハブ内でガイドワイヤの基端をスムーズに基端方向に移動させることができる。
【0013】
本発明のカテーテルによれば、ガイドワイヤの先端をカテーテルのシャフトの内腔へとスムーズに挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルの一部省略側面図である。
図2図1に示したカテーテルのハブの一部省略縦断面図である。
図3図3Aは、ハブの基端側からガイドワイヤを挿入する操作を説明する第1の図であり、図3Bは、ハブの基端側からガイドワイヤを挿入する操作を説明する第2の図であり、図3Cは、ハブの基端側からガイドワイヤを挿入する操作を説明する第3の図である。
図4】変形例に係るハブの一部省略縦断面図である。
図5】変形例に係るカテーテルのハブの一部省略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るカテーテルについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るカテーテル10の一部省略側面図である。カテーテル10は、血管内や体腔内に挿入して先端を目的部位まで到達させ、治療用の薬剤注入や診断用の造影剤注入を行うために使用される。図1に示すように、カテーテル10は、細径で長尺なシャフト12と、シャフト12の基端に接続されたハブ14と、シャフト12のハブ14への接続部に設けられたストレインリリーフ16とを備える。
【0017】
シャフト12は、血管等の生体管腔内に挿入されるカテーテル本体を構成するものであって、先端から基端まで連通する内腔13(図2も参照)が形成された可撓性を有する長尺で細径のチューブ状部材である。シャフト12の長さは、例えば、500mm〜2000mm程度、好ましくは、1000mm〜1500mm程度である。
【0018】
シャフト12の外径は、例えば0.3mm〜3mm程度、好ましくは、0.4mm〜2mm程度である。シャフト12の内径は、例えば、0.2mm〜2.5mm程度、好ましくは、0.3mm〜1.8mm程度である。シャフト12の外径及び内径は、先端側にいくほど小さくなってもよい。シャフト12の最先端部はテーパを有していてもよい。
【0019】
シャフト12の最先端部近傍の外周面には、X線不透過マーカ(造影マーカ)18が固着されている。X線不透過マーカ18は、金あるいは白金等からなるX線(放射線)不透過性を有する材質によって形成されることにより、生体内でカテーテル10の先端位置をX線造影下で視認するためのものである。
【0020】
ハブ14は、その先端にてシャフト12の基端を保持する中空構造の部材であり、基端にはシリンジ等の他の器具が接続可能となっている。ハブ14は、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の硬質の樹脂等により構成され得る。本実施形態では、ハブ14は、透明性を有する材料(ポリカーボネート等)により構成される。これにより、ガイドワイヤ42(図3A等参照)等を挿通させる際に、ハブ14内のガイドワイヤ42の端部の存在を確認することができ、好適である。
【0021】
ストレインリリーフ16は、シャフト12のハブ14への接続部での屈曲(キンク)を防止するためのものであり、例えば先細りのチューブ状に形成された適度の可撓性及び剛性を有する樹脂製の部材である。ストレインリリーフ16は、シャフト12の構成材料と同様の材料で構成され得る。
【0022】
次に、ハブ14の具体的な構成を説明する。図2は、ハブ14の一部省略縦断面図である。図2に示すように、ハブ14は、中空状の胴体部20と、胴体部20の外側面から突出した複数(図示例では、2つ)の羽根部22とから構成される。胴体部20は、シャフト12の内腔13と連通するハブ内腔24と、基端開口部26とを有する。また、ハブ14において、ハブ内腔24よりも先端側には、シャフト保持部28が設けられる。シャフト保持部28には、シャフト12の基端部32が保持及び固定されている。シャフト保持部28の基端側は、ハブ内腔24の先端に対して縮径した段差部30が設けられており、当該段差部30にシャフト12の基端部32が接触している。
【0023】
本実施形態において、ハブ14は、インサート成型によってシャフト12の後端に設けられており、シャフト12を構成する素材(樹脂材料)の一部が、ハブ内腔24側にはみ出ている。すなわち、シャフト12を構成する素材が、段差部30を覆い且つ段差部30よりも基端側まで設けられている。このため、図2に示すように、シャフト12の基端部32の内周部は、段差部30の箇所で、基端方向に向かって縮径した部分33を有する。
【0024】
なお、シャフト12は、ハブ14に対してインサート成型により形成されたものに限られない。例えば、ハブ14とシャフト12とを別個に製作し、当該ハブ14の先端にシャフト12の基端部32を挿入し、接着、熱融着等の適宜の接合手段により接合したものであってもよい。
【0025】
図2に示すように、ハブ14は、基端開口部26から先端方向に向かって内径が減少する第1テーパ部34と、第1テーパ部34の先端から先端方向に向かって第1テーパ部34よりも大きい割合で内径が減少する第2テーパ部36と、第2テーパ部36の先端から先端方向に向かって第2テーパ部36よりも小さい割合で内径が減少する第3テーパ部38とを有する。第1テーパ部34、第2テーパ部36及び第3テーパ部38によって、ハブ内腔24が構成される。
【0026】
すなわち、ハブ14には、基端側から先端側に向かって、第1テーパ部34、第2テーパ部36及び第3テーパ部38が設けられており、ハブ14の軸線aに対する第2テーパ部36の傾斜角度は、軸線aに対する第1テーパ部34の傾斜角度よりも大きく、ハブ14の軸線aに対する第3テーパ部38の傾斜角度は、軸線aに対する第2テーパ部36の傾斜角度よりも小さい。
【0027】
第1テーパ部34は、他の機器(例えば、シリンジ等)が接続可能なルアーテーパとして構成される。ハブ14の基端側から先端部43を屈曲させたガイドワイヤ42(図3A等参照)を挿入する際、第1テーパ部34は、先端方向に向かって縮径する内周面によって、ガイドワイヤ42の先端部43をハブ14の中心側に誘導する。第1テーパ部34の軸線aに沿った長さL1は、例えば、10mm〜40mm程度、好ましくは、20mm〜35mm程度である。
【0028】
第2テーパ部36は、第1テーパ部34よりも傾斜が大きい部分であり、先端部43を屈曲させたガイドワイヤ42をハブ14の基端側から挿入する際に、ガイドワイヤ42の先端部43を直線状に戻す方向に誘導する機能を有する。なお、当該機能の詳細については後述する。第2テーパ部36の軸線a方向に沿った長さL2は、例えば、0.5mm〜2mm程度、好ましくは、1mm〜2mm程度である。長さL2は、長さL1よりも短くするとよい。これにより、短い距離で、ガイドワイヤ42の先端部43の屈曲角度を小さくすることができる。第2テーパ部36の軸線aに対する傾斜角度は、例えば、5度〜45度程度、好ましくは、10度〜20度程度である。
【0029】
第3テーパ部38は、第2テーパ部36よりも傾斜が小さい部分であり、先端部43を屈曲させたガイドワイヤ42をハブ14の基端側から挿入する際に、第2テーパ部36を経由したガイドワイヤ42の先端部43を受け入れて、当該先端部43をさらに直線状に戻す方向に誘導しつつ、その先端側に設けられたシャフト12の内腔13へと案内する。第3テーパ部38の軸線a方向に沿った長さL3は、例えば、2mm〜15mm程度、好ましくは、5mm〜10mm程度である。
【0030】
第3テーパ部38の軸線aに対する傾斜角度は、例えば、0度より大きく、15度以下程度、好ましくは、1度〜5度程度である。第3テーパ部38の軸線aに対する傾斜角度は、第1テーパ部34の軸線aに対する傾斜角度と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0031】
第1テーパ部34と第2テーパ部36と第3テーパ部38とは、互いに内周面の平滑度が異なっていてもよい。従って、例えば、第2テーパ部36の平滑度を、第1及び第3テーパ部34、38の平滑度よりも高くすることにより、ガイドワイヤ42の最先端部44(図3A等参照)と第2テーパ部36との摺動抵抗を低くしてもよい。
【0032】
図2に示すように、ハブ14の、第2テーパ部36に対応する部分(壁部内)には、軸方向(軸線a方向)に延在する複数の筋40が設けられてもよい。複数の筋40は、例えば、ハブ14を構成する樹脂材料中に存在する気孔であり、軸線aを中心として、周方向に間隔をおいて配置される。本実施形態では、ハブ14が透明性を有する材料により構成されるため、ハブ14の外部から複数の筋40を視認することができる。
【0033】
本実施形態に係るカテーテル10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、主として図3A図3Cを参照し、カテーテル10の作用及び効果について説明する。本例では、先端部43を屈曲させたガイドワイヤ42をハブ14の基端側(基端開口部26)から挿入する操作について説明する。図3A図3Cにおいて、ガイドワイヤ42の先端部43は、2つの屈曲部46、47を有するように曲げられているが、本発明は屈曲部が1つだけの場合にも適用可能である。ガイドワイヤ42の最先端部44は丸く形成されている。
【0034】
図3Aに示すように、先端部43を屈曲させたガイドワイヤ42をハブ14の基端側から挿入し始めると、先ず、ガイドワイヤ42の最先端部44が第1テーパ部34の内周面の一部に当接するとともに、ガイドワイヤ42の他部(図3Aでは、屈曲部47)が第1テーパ部34の内周面の他部(最先端部44が接触する箇所とは反対側であって、当該箇所よりも基端側の部分)に当接する。
【0035】
そして、ガイドワイヤ42をさらにハブ14に対して先端方向に押し込むと、ガイドワイヤ42は、最先端部44及び屈曲部47とがハブ14の内周面を摺動しながら、先端方向に移動する。そして、図3Bに示すように、ガイドワイヤ42の最先端部44が第2テーパ部36に到達すると、ガイドワイヤ42の最先端部44が第2テーパ部36によってハブ14の軸線a側に押されることにより、ガイドワイヤ42の屈曲した先端部43は、直線状に戻る方向に誘導される。すなわち、ガイドワイヤ42の先端方向への移動に伴って、第2テーパ部36の作用により、ガイドワイヤ42の先端部43の屈曲角度が小さくなる。
【0036】
図3Cに示すように、ガイドワイヤ42をさらに先端方向に進めることにより、ガイドワイヤ42の最先端部44が第2テーパ部36(第2テーパ部36と第3テーパ部38との境界)を越えて第3テーパ部38に到達すると、第3テーパ部38によりガイドワイヤ42の先端部43の屈曲角度がさらに小さくなる。この場合、ガイドワイヤ42の先端部43は、第2テーパ部36を通過する際に既に屈曲角度が小さい状態とされているため、ガイドワイヤ42の屈曲部47が元に戻ろうとする力による最先端部44とハブ14の内周面との摩擦抵抗(摺動抵抗)が小さい。またガイドワイヤ42をさらに先端方向に進めることにより、ガイドワイヤ42の屈曲部47が第2テーパ部36(第2テーパ部36と第3テーパ部38との境界)を越えて第3テーパ部38に到達すると、ガイドワイヤ42の先端部43の屈曲角度がさらに小さくなる。そのため、最先端部44とハブ14の内周面との摩擦抵抗(摺動抵抗)がさらに小さくなる。このように、最先端部44とハブ14の内周面との摩擦抵抗が小さいと、ガイドワイヤ42の先端部43がハブ14の先端側まで挿入された状態でも、手元側からのガイドワイヤ42の押し込み力がガイドワイヤ42の先端部43まで効果的に伝達されるため、ガイドワイヤ42の先端部43が先端方向に移動しやすい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るカテーテル10によれば、先端部がアングル付けされたガイドワイヤ42をハブ14の基端側から挿入する際、第1テーパ部34よりも傾斜角度が大きい第2テーパ部36により、ガイドワイヤ42を直線状に戻す方向にガイドワイヤ42の先端部43が誘導される。これにより、ガイドワイヤ42の先端部43が比較的早い段階で(ハブ内腔24内の基部側で)ハブ14の軸線aに対する傾斜が小さくなることで、ハブ14の内周面とガイドワイヤ42の最先端部44との摩擦抵抗が減少し、ガイドワイヤ42の最先端部44が先端方向に移動しやすくなる。従って、ガイドワイヤ42の移動がハブ14の内周面によって阻止されることがなく、ガイドワイヤ42をシャフト12の内腔13内へとスムーズに挿入することができる。
【0038】
また、本実施形態の場合、ハブ14は、透明性を有する材料により構成され、ハブ14の、第2テーパ部36に対応する部分には、軸線a方向に延在する複数の筋40が設けられる。この構成によれば、筋40があることにより、第2テーパ部36にガイドワイヤ42の先端部43が存在するかどうかを視認しやすくなる。すなわち、ガイドワイヤ42の端部(先端部43又は基端部)が第2テーパ部36に位置するときに、第2テーパ部36の箇所に設けられた複数の筋40における光の屈折作用により、ガイドワイヤ42の端部の存在を容易に確認することができる。
【0039】
なお、複数の筋40に加えて、あるいは複数の筋40に代えて、図2に示すように、第2テーパ部36の内周部に、縦方向(軸方向)に延在する微小な突条50が周方向に間隔をおいて複数設けられてもよい。また縦方向(軸方向)に延在する微小な突条50は周方向に僅かに間隔をあけて(突条50と突条50の間の溝を介して)隣接して複数設けられていてもよい。このような突条50が設けられると、第2テーパ部36によってガイドワイヤ42の先端部43が案内される際に、突条50に沿って当該先端部43が移動することにより、周方向へのブレを阻止しながら、当該先端部43を先端方向へとスムーズに案内することができる。
【0040】
上述したように、第1テーパ部34と第2テーパ部36と第3テーパ部38とは、互いに内周面の平滑度が異なっていてもよい。例えば、第2テーパ部36の平滑度を第1及び第3テーパ部38の平滑度よりも高くすることにより、第2テーパ部36によりガイドワイヤ42を誘導する際の、ガイドワイヤ42の先端部43と第2テーパ部36との摩擦抵抗をより小さくすることができ、ガイドワイヤ42の挿入操作をよりスムーズに行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、図2に示したように、ハブ14には、シャフト12の基端部32が接触する段差部30が設けられ、シャフト12を構成する素材が、段差部30を覆い且つ段差部30よりも基端側まで設けられる。この構成によれば、カテーテル10の先端からガイドワイヤ42を挿入し、ガイドワイヤ42の基端をハブ内腔24内に通す際に、ハブ14の段差部30を覆うシャフト12の素材(樹脂材料)によりガイドワイヤ42の基端が好適に案内される。これにより、ハブ14内でガイドワイヤ42の基端をスムーズに基端方向に移動させることができる。
【0042】
上述した実施形態では、第2テーパ部36は、縦断面における内面形状が直線状となっているが、図4に示す変形例に係るハブ14aのように、湾曲形状が付けられた第2テーパ部36aを採用してもよい。具体的には、当該第2テーパ部36aの、ハブ14aの縦断面における内面形状は、ハブ14aの内側に向かって盛り上がるように湾曲した部分52を有する。この構成によれば、ガイドワイヤ42の最先端部44と第2テーパ部36aの内周面との接触が、点接触に近くなり接触面積が低減することによって、ガイドワイヤ42の最先端部44と第2テーパ部36aの内周面との摩擦抵抗を減らすことができる。このため、ハブ14a内でガイドワイヤ42の先端部43を先端方向に移動させる際に、ガイドワイヤ42の先端部43が第2テーパ部36aを通過しやすくなる。
【0043】
上述した実施形態では、第3テーパ部38の最先端位置に段差部30が設けられており、第3テーパ部38と段差部30との間にはストレート部が設けられていないが、図5に示す変形例に係るカテーテル60のように、ハブ14bは、第3テーパ部38の先端から先端方向に向かって内径が一定のストレート部54を有してもよい。このような構成によっても、上述したカテーテル10と同様の効果が得られる。
【0044】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5