特許第6383668号(P6383668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383668タイトフレーム溶接火花の養生装置と養生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383668
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】タイトフレーム溶接火花の養生装置と養生方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/32 20060101AFI20180820BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B23K9/32 E
   B23K9/00 501B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-1091(P2015-1091)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-124016(P2016-124016A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】小倉 孝治
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−57185(JP,A)
【文献】 実開平3−47666(JP,U)
【文献】 特開平10−68204(JP,A)
【文献】 特開昭61−209775(JP,A)
【文献】 実開昭57−176181(JP,U)
【文献】 米国特許第4134576(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/32
B23K 37/02
E04D 3/36
E04D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁上に、梁の長手方向に平行して断面が矩形の取付桁を固定し、この取付桁の上にタイトフレームを溶接する構造に使用する養生装置であって、
容器と車輪とより構成し、
梁上に搭載して梁上を移動できる容器は、
底板と両側の壁板と一方の妻板で構成し、上面と他方の妻板を開放した箱体であり、
底板には、取付桁が露出できる開口部を備え、
底板の下面には、梁上面を走行する梁上車輪と、
取付桁の側面を走行する側面車輪とを備え、
妻板には、取付桁の上面を走行する桁上車輪を備えて構成したことを特徴とする、
タイトフレーム溶接火花の養生装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置を使用し、
梁上車輪と、桁上車輪で梁の軸方向に走行し、
側面車輪で梁上の走行方向を維持し、
底板の開口部から露出した取付桁の上面にタイトフレームを溶接するに際して、
発生する火花を容器で受けることを特徴とする、
タイトフレーム溶接火花の養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
H鋼など天井の梁に折板屋根を取り付ける場合に、図4に示すように梁aの上にタイトフレームbと称する凹凸が連続した帯板を溶接して、その上に折板屋根を取り付ける。
本発明はそのようなタイトフレームbの溶接に際して、溶接火花の周囲への飛散を防止するための養生装置と養生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建築中における溶接火花の飛散を防止するための養生装置は、特許文献1に示すように各種のものが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−291883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の溶接火花の養生装置は、一定の位置での溶接における火花の養生を対象にしたものである。
しかし、本願発明の対象は、長い梁の上に連続してタイトフレームを溶接してゆくものである。
そのために従来の一定箇所での養生を前提とした養生装置では移動が容易ではなく、そのまま転用することができない。
また溶接個所が多いと盛り替えに多くの時間を要し作業効率が低下する。
さらに簡単な防災シートで養生する場合にも、その都度、シートを展開し、取り外すという手数、時間が必要である。
またシートの場合には火花によって穴が開いてしまうからシート自体の交換も必要となり、広い大きな屋根工事では不経済である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決する本発明のタイトフレーム溶接火花の養生装置は、梁上に梁の長手方向に平行して断面が矩形の取付桁を固定し、この取付桁の上にタイトフレームを溶接する構造に使用する養生装置であって、容器と車輪とより構成し、梁上に搭載して梁上を移動できる容器は、底板と両側の壁板と一方の妻板で構成し、上面と他方の妻板を開放した箱体であり、底板には、取付桁が露出できる開口部を備え、底板の下面には、梁上面を走行する梁上車輪と、取付桁の側面を走行する側面車輪とを備え、妻板には、取付桁の上面を走行する桁上車輪を備えて構成したことを特徴としたものである。
また本発明のタイトフレーム溶接火花の養生方法は、前記の装置を使用し、梁上車輪と、桁上車輪で梁の軸方向に走行し、側面車輪で梁上の走行方向を維持し、底板の開口部から露出した取付桁の上面にタイトフレームを溶接するに際して、発生する火花を容器で受けることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のタイトフレーム溶接火花の養生装置と養生方法は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 一定方向に長い距離を、同一の溶接作業を繰り返す場合に、溶接場所に沿って火花受け容器を移動することができるので、溶接個所ごとに養生装置を設置したり撤去する、という手間や時間を節約することができる。
<2> 溶接個所の側面、底面を完全に外部から遮断した容器を使用するから、火花が周囲に落下する危険性がない。
<3> 取付桁が梁上に設けられるので、梁が交叉する箇所も梁と支障をきたさず、養生装置を取り外さないで移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のタイトフレーム溶接火花を養生する養生装置の実施例の説明図。
図2】養生装置の車輪を配置の実施例の説明図。
図3】養生装置の端面図。
図4】梁とタイトフレームの溶接状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明のタイトフレーム溶接火花の養生装置と養生方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>前提条件。
H鋼など天井の梁に、折板屋根を取り付ける場合に、梁と折板屋根を直接ボルト固定するのではなく、図4に示すように、梁aの上にタイトフレームbと称する凹凸が連続した帯板を溶接して、その上に折板屋根を取り付ける方法が一般である。
しかし本発明は図1に示すように、タイトフレーム1を梁2に直接溶接するのではなく、梁2の上に梁2の長手方向に平行して断面が矩形の取付桁3を固定し、その取付桁3の上面にタイトフレーム1を溶接する構造を対象とするものであり、その際に使用する養生装置である。
取付桁3は鋼製の断面矩形の部材であるから、その上面には溶接面31を、両側には立面32を備えている。
一方梁2は、例えば断面がH字状の鋼材であり、その平滑な上面を、本発明の容器4の走行面21として使用する。
【0010】
<2>容器。
本発明の養生装置は、容器4と各種の車輪51、52、53とによって構成する。
容器4は、梁2の上に搭載して梁2の上面である走行面21を移動できる鋼製の箱体である。
その容器4は、底板41と両側の壁板43と一方の妻板42で構成し、上面と他方の妻板部分は開放して構成する。
底板41には、取付桁3が露出できる開口部44を備える。
したがって開口部44の幅は取付桁3の幅とほぼ等しく、長さは底板41の全長にわたって開口する。
容器4の一方に設けた妻板42は、その下部に取付桁3の断面とほぼ等しい切欠き45を形成し、取付桁3の上からかぶせることができるように構成する。
また、容器4の一方と対峙する妻側は、開放してあるが、底板41に設けた開口部44の幅を一定に保つために、両側の壁板43どうしを繋ぐ間隔保持材46を設ける。
【0011】
<3>車輪。
容器4の移動のために、容器4には3種類の車輪を取り付ける。
すなわち、底板41の下面には、梁2上面の走行面21を走行する梁上車輪51を、水平軸で取り付ける。
また底板41の下面には、取付桁3の側面である立面32を走行する側面車輪52を、鉛直軸で取り付ける。
また妻板42の外側には、取付桁3の上の溶接面31を走行する桁上車輪53を、水平軸で取り付ける。
各種の車輪は2組以上を設け、梁上車輪51では梁2上の走行面21を、桁上車輪53では取付桁3の溶接面31を走行して容器4の移動を行う。
さらに側面車輪52が、取付桁3の両側の立面32を滑動することで、容器4の走行方向を案内することができる。
【0012】
<4>養生方法。
前記の装置を使用して、容器4の底板41の開口部44から露出した取付桁3の溶接面31にタイトフレーム1を溶接するに際して発生する溶接火花養生をする方法を説明する。
梁上車輪51と、桁上車輪53を利用して、容器4を梁2の軸方向に移動させる。
この移動は、容器4が軽量であるから、作業員の人力によっても容易に行うことができる。
溶接個所を容器4の妻板42の近くに位置させて、開口部44から露出した取付桁3の溶接面31にタイトフレーム1を溶接する。
溶接の火花は、妻板42と両側の壁板43の上に飛散するだけで、その外部へ飛散することがなく、十分に養生をすることができる。
開口部44に露出する取付桁3に一定の距離だけタイトフレーム1の溶接が終わったら、再度容器4の側面車輪52で走行する方向を案内させつつ、梁上車輪51、桁上車輪53で梁2と取付桁3の上を走行させて次の溶接範囲に至る。
【符号の説明】
【0013】
1:タイトフレーム
2:梁
3:取付桁
4:容器
51:梁上車輪
52:側面車輪
53:桁上車輪
図1
図2
図3
図4