特許第6383679号(P6383679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383679
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】触媒充填装置および触媒充填方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/02 20060101AFI20180820BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   B01J8/02 A
   B01J4/00 105D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-25575(P2015-25575)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147228(P2016-147228A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391019359
【氏名又は名称】ソフタード工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅直
(72)【発明者】
【氏名】内田 泰雄
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−014732(JP,A)
【文献】 特開昭51−066665(JP,A)
【文献】 特開平05−057177(JP,A)
【文献】 特開昭61−141923(JP,A)
【文献】 特開昭55−070641(JP,A)
【文献】 実開昭60−164183(JP,U)
【文献】 特開昭64−069874(JP,A)
【文献】 実開昭51−062549(JP,U)
【文献】 特開2004−044260(JP,A)
【文献】 特開平04−045839(JP,A)
【文献】 特開2001−046863(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0216918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00 − 8/46
B01J 4/00 − 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、
前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、
前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、
前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え
前記ロータはその回転軸と同芯とされた筒部の下端に設置され、
前記エア搬送手段は、前記筒部に設置され前記気流を発生させる搬送エア供給管と、前記搬送エア供給管からの前記気流を調節する絞り機構と、を有することを特徴とする触媒充填装置。
【請求項2】
請求項に記載した触媒充填装置において、
前記筒部は、同芯で配置されかつ一部が二重に配置された上筒および下筒を有し、
前記上筒および前記下筒のいずれか一方に形成された段差と、前記上筒および前記下筒のいずれか他方の端縁との間にスリットが形成されており、
前記絞り機構は、前記スリットで形成され、前記上筒および前記下筒を各々の軸方向に相対移動させることで前記スリットの開度を調節可能であることを特徴とする触媒充填装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した触媒充填装置において、
前記ロータは、回転軸を中心とした向きによって、前記回転軸から外周までの径方向寸法が異なる形状であることを特徴とする触媒充填装置。
【請求項4】
反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、
前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、
前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、
前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え
前記ロータは、底板と、前記底板の上面に起立形成されて前記底板の中心部から外周側へ連続する仕切板と、前記仕切板の上縁を覆うロータカバーとを有することを特徴とする触媒充填装置。
【請求項5】
反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、
前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、
前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、
前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え
前記供給装置は、前記ロータに至る前記触媒の通路を遮断可能なピンチバルブを有し、前記ピンチバルブは、対向配置された一対のバルーンで形成されていることを特徴とする触媒充填装置。
【請求項6】
反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、
前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、
前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、
前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え
前記供給装置は、前記ロータに至る前記触媒の通路にフィルタ部を有し、
前記フィルタ部は、前記触媒が通る触媒管と、前記触媒管の内側に同芯で配置された内管と、前記触媒管の外側に同芯で配置された外管とを有し、
前記触媒管には、前記触媒管の内部と外部とを連通する複数の連通孔が形成されており、
前記内管には、前記内管の内部に除塵エアを供給する除塵エア供給管が接続されるとともに、前記内管の内部と外部とを連通する複数の連通孔が形成されており、
前記外管には、前記外管の内部の除塵エアを外部に排出する除塵エア排出管が接続されていることを特徴とする触媒充填装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載した触媒充填装置を用いて反応塔内に触媒を散布する触媒充填方法であって、
前記反応塔内で回転するロータに前記触媒を供給するとともに、
前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成して前記触媒をエア搬送する
ことを特徴とする触媒充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製設備や化学工業設備等の反応塔に触媒を充填するための触媒充填装置および触媒充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製設備や化学工業設備等では、化学反応を促進させるために、各種の触媒が利用されている。触媒は、例えば顆粒状に造形され、原料流体を流通させる反応塔の内部に充填される。
このような触媒の充填には、回転散布式の触媒充填装置が用いられている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の触媒充填装置は、反応塔の上部開口から内部へと導入される散布装置を有する。
散布装置は、筒状の軸の下端に分散ロータを有し、軸の内部に供給される触媒を分散ロータから流出させる。この際、散布装置を回転させることで、分散ロータから流出する触媒は反応塔内の外周近くまで飛ばされ、反応塔内に触媒を広く分散させることができる。
このような触媒充填装置を用いることにより、反応塔内への触媒充填を、適切な状態かつ効率よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−281094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した顆粒状の触媒は、搬送中に相互に衝突する等により、一部が削れたり破砕されたりして、触媒粉を発生させる。前述した散布装置においては、筒状の軸内を降下する際に相互に衝突するほか、分散ロータから散布される際に強く擦れ合い、触媒粉を発生させることになる。
【0006】
このような触媒粉は、本来の顆粒状の触媒とともに反応塔内に充填され、触媒の間に滞留する。その結果、反応塔内に充填された触媒は、充填状態が適切であっても、触媒粉で触媒の隙間が目詰まりし、差圧の発生や、偏流の発生などの不都合を生じる可能性がある。
【0007】
また、触媒粉は、反応塔あるいは触媒充填装置の外部に漏れ出したりすると、環境問題につながる可能性がある。
さらに、反応塔内で作業する作業者に対して、健康問題を生じる可能性があり、作業者保護対策を厳重に行う必要がある。
【0008】
本発明の目的は、回転散布による触媒充填が可能かつ触媒粉の影響を回避できる触媒充填装置および触媒充填方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の触媒充填装置は、反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え前記ロータはその回転軸と同芯とされた筒部の下端に設置され、前記エア搬送手段は、前記筒部に設置され前記気流を発生させる搬送エア供給管と、前記搬送エア供給管からの前記気流を調節する絞り機構と、を有することを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、触媒が供給装置からロータへと供給され、ロータから反応塔内へと回転散布される。この際、エア搬送手段により、ロータに供給される触媒に沿った気流が形成され、触媒は気流に乗ってロータへと搬送され、この気流とともに反応塔内に放出される。
従って、触媒が気流に載せて搬送されることで、触媒のみを送る際のような触媒どうしの強い擦れ合いが防止でき、それに伴う触媒の破砕および触媒粉の発生が防止できる。
このように、本発明では、触媒粉の発生自体を抑制することで、触媒粉による影響を回避することができる。
【0012】
このような本発明では、触媒をエア搬送する際の気流の流量、流速あるいは圧力を調整し、触媒粉が発生しないような適切な状態を設定することができる。
【0013】
本発明の触媒充填装置において、前記筒部は、同芯で配置されかつ一部が二重に配置された上筒および下筒を有し、前記上筒および前記下筒のいずれか一方に形成された段差と、前記上筒および前記下筒のいずれか他方の端縁との間にスリットが形成されており、前記絞り機構は、前記スリットで形成され、前記上筒および前記下筒を各々の軸方向に相対移動させることで前記スリットの開度を調節可能であることが好ましい。
【0014】
このような本発明では、二重の筒部を軸方向に相対移動させることで、各々の間のスリットの開度を調節することができ、簡単な構造で絞り機構を実現することができる。
【0015】
本発明の触媒充填装置において、前記ロータは、回転軸を中心とした向きによって、前記回転軸から外周までの径方向寸法が異なる形状であることが好ましい。
【0016】
このような本発明では、ロータの各部で径方向寸法が異なることで、回転した際の各部の周速度が異なるものとなり、各部から散布される触媒の径方向の飛距離の相違が大きくなる。その結果、ロータの各部から散布される触媒は、反応塔内の広い範囲にわたって分散され、偏りの少ない均一な散布状態を得ることができる。
【0017】
本発明の触媒充填装置は、反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え、前記ロータは、底板と、前記底板の上面に起立形成されて前記底板の中心部から外周側へ連続する仕切板と、前記仕切板の上縁を覆うロータカバーとを有することを特徴とする。
【0018】
このような本発明では、ロータの底板および仕切板により、供給された触媒がロータの中心部から外周側へとガイドされ、ロータの外周の各部からそれぞれ散布される。この際、仕切板の上縁がロータカバーで覆われることにより、ロータの底板および仕切板と、ロータカバーとにより筒状の触媒通路が形成されるため、触媒とともに送られる気流が発散してしまうことがなく、触媒のエア搬送をロータの外周まで確実に行うことができる。
【0019】
本発明の触媒充填装置は、反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え、前記供給装置は、前記ロータに至る前記触媒の通路を遮断可能なピンチバルブを有し、前記ピンチバルブは、対向配置された一対のバルーンで形成されていることを特徴とする
【0020】
このような本発明では、触媒の供給をピンチバルブで断続できるとともに、ピンチバルブがバルーン式であるため、通路を遮断する際に触媒を噛み込んでも、バルーンが変形して触媒を柔軟に挟み込むだけであり、触媒を破砕することがなく、触媒粉を発生させることを防止できる。
【0021】
本発明の触媒充填装置は、反応塔内で触媒の回転散布を行う触媒充填装置であって、前記反応塔内に配置されて回転駆動されるロータと、前記ロータに前記触媒を供給する供給装置と、前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成するエア搬送手段と、を備え、前記供給装置は、前記ロータに至る前記触媒の通路にフィルタ部を有し、前記フィルタ部は、前記触媒が通る触媒管と、前記触媒管の内側に同芯で配置された内管と、前記触媒管の外側に同芯で配置された外管とを有し、前記触媒管には、前記触媒管の内部と外部とを連通する複数の連通孔が形成されており、前記内管には、前記内管の内部に除塵エアを供給する除塵エア供給管が接続されるとともに、前記内管の内部と外部とを連通する複数の連通孔が形成されており、前記外管には、前記外管の内部の除塵エアを外部に排出する除塵エア排出管が接続されていることを特徴とする
【0022】
このような本発明では、除塵エア供給管から内管内に除塵エアを供給すると、供給された除塵エアは、内管の連通孔を通して触媒管内へ至り、さらに触媒管の連通孔を通して外管内へと至り、除塵エア排出管へと排出される。
従って、フィルタ部において、ロータへと供給される触媒を、触媒管と内管との間を通るようにすれば、前述のように内管から触媒管を通って外管に至る除塵エアにより、触媒が洗浄され、触媒に付随していた触媒粉は、除塵エアとともに外管ないし除塵エア排出管へと排出される。
【0023】
このようなフィルタ部により、供給装置から供給される触媒に、予め触媒粉が付着あるいは混入していた場合でも、これを除去することができる。
このように、本発明では、前述した触媒のエア搬送による粉砕防止ないし触媒粉の発生抑制に加えて、予め触媒に付着あるいは混入していた触媒粉の除去を行うことで、触媒粉による影響を回避することができる。
【0024】
本発明の触媒充填方法は、前述の構成の触媒充填装置を用いて反応塔内に触媒を散布する触媒充填方法であって、前記反応塔内で回転するロータに前記触媒を供給するとともに、前記ロータに供給される前記触媒に沿った気流を形成して前記触媒をエア搬送することを特徴とする。
【0025】
このような本発明では、前述した本発明の触媒充填装置についての説明と同様な作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回転散布による触媒充填が可能かつ触媒粉の影響を回避できる触媒充填装置および触媒充填方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態の触媒充填を示す模式図。
図2】前記実施形態の触媒充填装置を示す断面図。
図3】前記実施形態の散布装置を示す拡大断面図。
図4】前記実施形態のロータを示す平面図。
図5】本発明の他の実施形態のロータを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、反応塔1は、内部に触媒2が充填される。触媒2を反応塔1に充填する際には、反応塔1の上部開口から内部へ、触媒充填装置3が導入される。
図2において、触媒充填装置3は、上下に延びる供給装置10と、その下端に設置された散布装置40とを有する。
【0029】
〔供給装置10〕
供給装置10は、上部から下へ順にホッパ11、フィルタ部20、ピンチバルブ30を備えている。
ホッパ11は、反応塔1の上部開口の外側に配置されており、内部に所定量の触媒2を貯留し、その下端からフィルタ部20へと触媒2を供給可能である。
【0030】
〔フィルタ部20〕
フィルタ部20は、触媒管21、内管22、外管23からなる3重構造とされている。内管22は、触媒管21の内側に同芯で配置され、触媒管21との間に間隔が空けられている。外管23は、触媒管21の外側に同芯で配置され、触媒管21との間に間隔が空けられている。
【0031】
触媒管21は、上端をホッパ11の触媒出口に連結され、下端をピンチバルブ30の触媒入口に連結されている。従って、ホッパ11からピンチバルブ30へと供給される触媒2は、触媒管21の内側を通される。
【0032】
触媒管21は、外管23で覆われた部分に多数の連通孔211を有し、その内面側と外面側とで通気可能である。ただし、連通孔211は触媒2を通過させない大きさまたは形状とされている。
触媒管21の連通孔211は、触媒管21の材料に多数の孔明け加工を行ってもよいし、触媒管21をメッシュ材料で形成してその格子間隔を連通孔211としてもよい。
【0033】
内管22は、全長にわたって多数の連通孔221を有し、その内面側と外面側とで通気可能である。ただし、連通孔221は触媒2を通過させない大きさまたは形状とされている。
内管22の連通孔221は、内管22の材料に多数の孔明け加工を行ってもよいし、内管22をメッシュ材料で形成してその格子間隔を連通孔221としてもよい。
【0034】
内管22には、上端に除塵エア供給管24が接続されている。
除塵エア供給管24は、外部の除塵エア供給源(図示省略)からの加圧エアを、内管22の上端へと導入する。内管22に供給された除塵エアは、連通孔221から触媒管21内へ導入され、触媒管21内の触媒2の間を通過して、連通孔211から触媒管21の外側(外管23の内側)へと排出される。
【0035】
除塵エアは、触媒管21内の触媒2の隙間を通過する際に、触媒2に付着していた触媒粉、あるいは触媒2から生じた触媒粉を取り込み、この触媒粉とともに外管23へ送り出されてくる。
従って、触媒管21を通過する触媒2は、除塵エアにより触媒粉を除去された清浄な状態で、ピンチバルブ30へと送り出される。
【0036】
外管23は、全長にわたって気密性を有する管体である。
外管23には、下端に除塵エア排出管25が接続され、この除塵エア排出管25には除塵用のサイクロン26が接続されている。
除塵エア排出管25は、触媒管21から外管23の内側へと送り出された除塵エアを集め、サイクロン26へと排出する。
【0037】
従って、触媒管21内で除塵エアが取り込んだ触媒粉は、サイクロン26で回収され、一括して廃棄することができる。一方、サイクロン26を通過した搬送エアは、触媒粉を含まない清浄な状態とされたうえで、大気に解放される。
【0038】
〔ピンチバルブ30〕
ピンチバルブ30は、フィルタ部20から散布装置40へと触媒2を通過させる状態と、これを遮断する状態とを切り替える機構である。
このために、ピンチバルブ30は、バルブ部筒体31の内面に対向配置された一対のバルーン32と、このバルーン32に膨張エアを供給する膨張エア供給管33とを備えている。
【0039】
このようなピンチバルブ30では、膨張エア供給管33から膨張エアを供給することで、一対のバルーン32が膨張した状態(図2の実線の状態)となり、バルブ部筒体31内の通路が閉鎖されて触媒2の通過が遮断される。
一方、膨張エアを大気解放することで、一対のバルーン32が収縮した状態(図2の二点鎖線の状態)となり、再び通路が開かれて触媒2の通過が可能となる。
【0040】
このような膨張エアによるバルーン32の収縮および膨張により、触媒2の通過および遮断を切り替えることができる。
また、ピンチバルブ30の閉鎖時には、柔軟な一対のバルーン32で通路を閉じるため、閉鎖時に通過していた触媒2が一対のバルーン32に挟み込まれても、破砕して触媒粉を生じることが防止される。
【0041】
〔散布装置40〕
散布装置40は、図1に示すように、供給装置10の下部に接続され、供給装置10から供給される触媒2を反応塔1内に回転散布するものである。
このために、散布装置40は、図2および図3に示すように、散布用のロータ50と、ロータ50を回転させる駆動部60と、ロータ50から散布される触媒2をエア搬送するエア搬送手段70とを備えている。
【0042】
〔ロータ50〕
ロータ50は、図2および図3に示すように、供給装置10と同芯で配置された軸部51と、この軸部51の下端に固定された底板52を有する。底板52の上面には、中心から外周に向けて延びる仕切板53が多数立設されている。
【0043】
図4に示すように、底板52は、平面形状が楕円形とされている。
仕切板53は、それぞれ中心側が軸部51に接続されるとともに、渦巻き状に曲線を描いて底板52の外周に達している。
底板52が楕円形状であるため、各仕切板53の径方向寸法つまり中心からの距離は底板52の部位により変化している。
【0044】
すなわち、仕切板53のうち、底板52の長軸方向の外周部位に端部が臨むものは、その端部の径寸法R1が最大となり、底板52の短軸方向の外周部位に端部が臨むものは、その端部の径寸法R3が最小となり、各々の間の部位に臨むものの径寸法R2は前述したR1,R3の間の値(R1>R2>R3)となる。
このようなロータ50では、底板52の外周の径方向寸法が向きにより異なるため、各仕切板53に沿って送り出される触媒2は、それぞれの径方向寸法に応じた周方向散布速度を与えられ、反応塔1内に幅広く散布されることになる。
【0045】
〔駆動部60〕
駆動部60は、図2および図3に示すように、駆動部筒体61と、その内部に設置されたエアモータ62および回転計63とを備えている。
駆動部筒体61は、ピンチバルブ30のバルブ部筒体31の下端に接続されている。
【0046】
エアモータ62は、駆動部筒体61の中心位置に支持され、その主軸(図示省略)にはロータ50の軸部51が接続されている。
エアモータ62は、外部から供給される駆動エアにより主軸が回転し、これによりロータ50を回転させることができる。
回転計63は、エアモータ62に附設され、エアモータ62の主軸の回転速度を検出し、外部の制御装置などに信号出力することができる。
【0047】
〔エア搬送手段70〕
エア搬送手段70は、駆動部60とロータ50との間に設置され、供給装置10から駆動部60を通して供給される触媒2をロータ50へとエア搬送するものである。
このために、エア搬送手段70は、駆動部60の下端に接続される筒部71と、筒部71に搬送エア7を供給する搬送エア供給管72と、供給される搬送エアの流量または圧力を調節する絞り機構73と、ロータ50の上面に沿った気流を保つためのロータカバー74とを備えている。
【0048】
筒部71は、上筒711と、この上筒711から下方に延びる下筒712とを備えている。
上筒711は、駆動部筒体61の下端に接続され、その内部には供給装置10から供給される触媒2が送り込まれる。
【0049】
下筒712は上部に段差732を有し、この段差732には大径部713が接続されている。下筒712は、上筒711とほぼ同径とされ、大径部713は上筒711より大径とされている。
大径部713には、上方から上筒711が挿入され、大径部713の内面と上筒711の外面との間には間隔が確保されている。
【0050】
上筒711の下端731は、下筒712の段差732に対向配置され、下端731と段差732との間には、全周に連続するスリット733が形成されている。
下筒712は、上筒711の上部の外周に設置されたボルト734で吊り下げられ、このボルト734を回転させて下筒712と上筒711との相対高さ位置を調節することで、スリット733の開口面積を調節することができる。
【0051】
搬送エア供給管72は、下筒712の大径の部分に接続され、その内部(上筒711の外側)に搬送エア7を供給する。供給された搬送エア7は、スリット733から下筒712の小径の部分に流入する。ここで、下筒712の小径の部分には、上筒711からの触媒2も流入する。
従って、下筒712の小径の部分においては、触媒2が搬送エア7により分散されて下方のロータ50へとエア搬送される。この際、エア搬送の状態は、絞り機構73でスリット733の間隔を調節することで変更することができる。
【0052】
下筒712の下端には、ロータカバー74が固定されている。
ロータカバー74は、平面形状が円形とされ、その直径はロータ50の最大径に合わせて設定されている。また、ロータ50の仕切板53の上縁に沿った曲面に形成されている。
【0053】
絞り機構73でスリット733を拡げたとき、つまり上筒711に対して下筒712を下方に降ろしたとき、搬送エア7を増加させることができる。
このとき、ロータカバー74は仕切板53の上縁に達する。ただし、ロータカバー74が固定されているのに対し、ロータ50は回転するため、ロータカバー74と仕切板53とを接触させることはしない。
この状態では、ロータ50において、各仕切板53の間には中心から外周側へ向かう複数の筒状の通路が形成され、この通路を触媒2が搬送エア7でエア搬送される。
【0054】
絞り機構73でスリット733を絞ったとき、つまり下筒712を上方に持ち上げたとき、搬送エア7を減少させることができる。
このとき、ロータカバー74と仕切板53の上縁との間には大きな間隔が生じる。この状態では、ロータ50において、各仕切板53の間の空間は相互に連通されるが、触媒2は主に底板52に沿って搬送エア7で送られ、仕切板53ごとの散布を行うことができる。
【0055】
〔実施形態の作用効果〕
前述のような本実施形態では、以下のような作用効果が得られる。
本実施形態では、触媒2が供給装置10からロータ50へと供給され、ロータ50から反応塔1内へと回転散布される。この際、エア搬送手段70により、ロータ50に供給される触媒2に沿った搬送エア7の気流が形成され、触媒2は搬送エア7に乗ってロータ50へと搬送され、搬送エア7とともに反応塔1内に放出される。
【0056】
このため、本実施形態によれば、触媒2が搬送エア7に載せて搬送されることで、触媒2のみを送る際のような触媒2どうしの強い擦れ合いが防止でき、それに伴う触媒2の破砕および触媒粉の発生が防止できる。
このように、本実施形態では、触媒粉の発生自体を抑制することで、触媒粉による影響を回避することができる。
【0057】
本実施形態においては、ロータ50はその回転軸と同芯とされた筒部71の下端に設置され、筒部71には、搬送エア7の気流を発生させる搬送エア供給管72と、搬送エア供給管72からの搬送エア7を調節する絞り機構73と、が設置されている。
このため、本実施形態によれば、散布装置40において、触媒2をエア搬送する搬送エア7の流量、流速あるいは圧力を調整し、触媒粉が発生しないような適切な触媒2の搬送状態を設定することができる。
【0058】
本実施形態では、筒部71は、同芯で配置されかつ一部が二重に配置された上筒711および下筒712を有するものとし、下筒712に形成された段差732と、上筒711の下端731との間にスリット733を形成し、このスリット733により搬送エア7の流通を絞ることで絞り機構73を構成していた。そして、ボルト734を回転させて下筒712と上筒711とを各々の軸方向に相対移動させられるようにした。
【0059】
このため、本実施形態によれば、下筒712と上筒711との相対高さ位置を調節することで、スリット733の開口面積を調節することができる。そして、スリット733の開度調整により、搬送エア7を調節する絞り機構73としての機能を得ることができ、絞り機構73を簡単な構造で実現することができる。
【0060】
本実施形態では、ロータ50は、底板52の平面形状を楕円とし、回転軸を中心とした向きによって、各部の外周までの径方向寸法が異なるものとした。
このため、仕切板53に沿った触媒2の通路は、回転軸を中心とした向きによって径方向寸法を変化させることができる。
【0061】
このようなロータ50においては、外周の各部で触媒2の放出位置の径方向寸法が異なり、回転した際の各部の周速度が異なるものとなり、各部から散布される触媒2の径方向の飛距離の相違が大きくなる。その結果、ロータ50の各部から散布される触媒2は、反応塔1内の広い範囲にわたって分散され、偏りの少ない均一な散布状態を得ることができる。
【0062】
本実施形態では、ロータ50において、底板52の上面に、中心部から外周側へ連続する複数の仕切板53を起立形成するとともに、仕切板53の上縁を覆うロータカバー74とを設けている。
このため、ロータ50においては、底板52および仕切板53により、供給された触媒2がロータ50の中心部から外周側へとガイドされ、ロータ50の外周の各部からそれぞれ反応塔1内へと散布することができる。
【0063】
この際、仕切板53の上縁がロータカバー74で覆われるため、ロータ50の底板52および仕切板53と、ロータカバー74とにより筒状の触媒通路が形成される。このため、触媒2とともに送られる搬送エア7が発散してしまうことがなく、触媒2のエア搬送をロータ50の外周まで確実に行うことができる。
【0064】
本実施形態では、供給装置10にピンチバルブ30を設け、バルブ部筒体31内を通ってロータ50に至る触媒2の通路を遮断可能とするとともに、ピンチバルブ30をバルブ部筒体31内で対向配置された一対のバルーン32により形成した。
【0065】
このため、本実施形態によれば、触媒2の供給ないし散布をピンチバルブ30で断続することができる。また、ピンチバルブ30がバルーン式であるため、通路を遮断する際に触媒2を噛み込んでも、バルーン32が変形して触媒2を柔軟に挟み込むだけであり、触媒2を破砕することがなく、触媒粉を発生させることを防止できる。
【0066】
本実施形態では、供給装置10の途中に、ロータ50に至る触媒2を洗浄し除塵するフィルタ部20を設けた。
とくに、フィルタ部20においては、除塵エア供給管24から内管22内に除塵エアを供給すると、供給された除塵エアは、内管22の連通孔221を通して触媒管21内へ至り、さらに触媒管21の連通孔211を通して外管23内へと至り、除塵エア排出管25へと排出され、サイクロン26により集塵する構成とした。
【0067】
このため、フィルタ部20においては、ロータ50へと供給される触媒2を、触媒管21と内管22との間に通すことで、内管22から触媒管21を通って外管23に至る除塵エアにより、触媒2が洗浄され、触媒2に付随していた触媒粉は、除塵エアとともに外管23ないし除塵エア排出管25へと排出され、サイクロン26により集塵される。
【0068】
このようなフィルタ部20により、ホッパ11から供給される触媒2に、予め触媒粉が付着あるいは混入していた場合でも、これを除去することができる。
このように、本実施形態によれば、前述した触媒2のエア搬送による粉砕防止ないし触媒粉の発生抑制に加えて、予め触媒2に付着あるいは混入していた触媒粉の除去を行うことで、触媒粉による影響を回避することができる。
【0069】
〔変形例〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれるものである。
前記実施形態において、ロータ50の底板52は平面形状を楕円径としたが、ロータ50の底板52は他の形状であってもよい。
【0070】
図5に示すように、ロータ50の底板52は平面形状が円形であってもよい。
このようなロータ50では、底板52の外周における仕切板53の端部位置が全て同じ径方向寸法となる。従って、ロータ50から散布される触媒2の到達範囲は、反応塔1の所定の半径領域に限定される。しかし、散布領域は、ロータ50の回転速度調整により変更することができ、特定の領域への触媒散布を主に目的とする場合には好適である。
【0071】
前記実施形態では、ロータカバー74を下筒712に固定したが、仕切板53の上縁に固定してロータ50と一体に回転させるようにしてもよい。
要するに、ロータ50の仕切板53の上面側を覆って、搬送エア7でエア搬送される触媒2をロータ50の外周側まで確実に搬送できればよい。
仕切板53は、平面形状において湾曲したものに限らず、ロータ50の中心から外側へ直線的に延びるもの等であってもよい。ただし、前述した図4および図5のように仕切板53を渦巻き状に形成することで、散布する触媒2を接線方向に飛ばしやすく、散布時の触媒2の破砕防止に有効である。
【0072】
絞り機構73は、ボルト734の手動操作に限らず、モータ駆動してもよい。また、エアシリンダなどで大径部713および下筒712を、上筒711に対して昇降させてもよい。
絞り機構73としては、スリット733による開閉のほか、搬送エア供給管72の途中に絞り弁を設けてもよい。
このような絞り弁を用いる場合、搬送エア供給管72は、上筒711の途中に搬送エア7を吹き込むものであってもよい。
【0073】
駆動部60は、エアモータ62を駆動源とするものに限らず、電動モータや油圧モータなどを用いるものであってもよい。また、駆動源であるエアモータ62を駆動部筒体61の内部に設置するものに限らない。例えば、駆動部筒体61の外部に駆動源を設置し、伝達機構を介して駆動部筒体61の内部の軸部51を駆動するようにしてもよい。
【0074】
ピンチバルブ30は、バルーン32を用いるものに限らず、エラストマ素材のシャッタでバルブ部筒体31を遮断する構造などとしてもよい。
供給装置10の開閉は、ピンチバルブ30に限らず、他のバルブ機構などであってもよい。例えば、ボールバルブあるいはシャッタなど、バルブ部筒体31における触媒2の流通を遮断または制限できるものであれば、ピンチバルブ30を代替することができる。
【0075】
フィルタ部20は、触媒管21、内管22、外管23を用いた3重構造として内側から外側に除塵エアを通じさせるものに限らず、触媒筒の片面側から反対面側へと一方向に除塵エアを通す構造などであってもよい。ホッパ11から供給される触媒2に予め混入する触媒粉が少ない場合など、フィルタ部20は省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の触媒充填装置および触媒充填方法は、石油精製設備や化学工業設備等の反応塔への触媒の充填に利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1…反応塔、10…供給装置、11…ホッパ、2…触媒、20…フィルタ部、21…触媒管、211…連通孔、22…内管、221…連通孔、23…外管、24…除塵エア供給管、25…除塵エア排出管、26…サイクロン、3…触媒充填装置、30…ピンチバルブ、31…バルブ部筒体、32…バルーン、33…膨張エア供給管、40…散布装置、50…ロータ、51…軸部、52…底板、53…仕切板、60…駆動部、61…駆動部筒体、62…エアモータ、63…回転計、7…搬送エア、70…エア搬送手段、71…筒部、711…上筒、712…下筒、713…大径部、72…搬送エア供給管、73…絞り機構、731…下端、732…段差、733…スリット、734…ボルト、74…ロータカバー、R1,R2,R3…ロータ外周の径寸法。
図1
図2
図3
図4
図5