(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施形態
A−1.ガスセンサ10の構成
図1は、本実施形態におけるガスセンサ10の断面構成を示す説明図である。
図1には、ガスセンサ10の中心軸である軸線CAに沿って切断したガスセンサ10の断面を図示した。本実施形態の説明において、ガスセンサ10の紙面下方側を「先端側」といい、ガスセンサ10の紙面上方側を「後端側」という。
【0012】
ガスセンサ10は、内燃機関の排気系に装着され、排気ガスに含まれる酸素(O
2)を検知する酸素センサである。ガスセンサ10は、センサ素子100と、主体金具200と、プロテクタ300、セラミックヒータ150、外筒410等を有している。
【0013】
ガスセンサ10のセンサ素子100は、酸素分圧に応じた起電力を出力する酸素濃淡電池を構成する。センサ素子100は、長手方向(軸線CA方向)に延び、先端側に被測定ガスを検出する検出部140を有する。センサ素子100は、固体電解質体110と、内側電極120と、外側電極130と、多孔質保護層180と、下地層190(
図2参照)とを備える。
【0014】
センサ素子100の固体電解質体110は、酸化物イオン伝導性(酸素イオン伝導性)を有する材料からなる。固体電解質体110は、軸線CA方向に延び、先端側が閉じた有底筒状に形成されている。本実施形態では、固体電解質体110の材料は、酸化イットリウム(Y
2O
3)を添加した酸化ジルコニウム(ZrO
2)、すなわち、イットリア部分安定化ジルコニアである。他の実施形態として、固体電解質体110の材料は、酸化カルシウム(CaO)や、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO
2)、等から選択される酸化物を添加した部分安定化ジルコニアであっても良い。
【0015】
センサ素子100の内側電極120は、固体電解質体110の内表面に設けられている。一方、センサ素子100の外側電極130は、固体電解質体110の外表面に設けられている。本実施形態において、内側電極120および外側電極130の材料は、白金(Pt)である。他の実施形態において、白金合金であっても良いし、他の貴金属や、他の貴金属合金であっても良い。本実施形態では、内側電極120および外側電極130は、無電解メッキによって形成されている。なお、センサ素子100には、外側電極130の少なくとも一部を覆う多孔質保護層180が設けられているが、これについては、後に詳述する。
【0016】
センサ素子100の軸線CA方向の略中央部には、径方向外側へ突出する鍔部170が設けられており、この鍔部170を後述するセラミックホルダ161にパッキン160を介して係合することで、センサ素子100が主体金具200内に配置される。なお、この係合により、検出部140が主体金具200から先端側に突出した状態で保持される。
【0017】
ガスセンサ10の主体金具200は、センサ素子100の周囲を取り囲む筒状の金属部材である。本実施形態において、主体金具200はSUS430で形成されている。主体金具200の外周には、先端側から順に、先端部240と、ネジ部210と、鍔部220と、後端部230と、加締部252とを備える。ガスセンサ10は、ネジ部210を介して排気管に取り付けられる。鍔部220は、径方向外側へ多角形状に突出する部位であり、鍔部220は、ガスセンサ10を排気管に取り付けるための工具(図示しない)に係合する形状(例えば、六角ボルト状)を成す。また、後端部230は、鍔部220よりも後端側の部位をいう。後端部230は、後述する外筒410と接合される。
【0018】
主体金具200は、軸線CAに沿って同軸状にセンサ素子100を保持するために、軸線CA方向に沿った筒孔250を有している。さらに、主体金具200の内面には、径方向内側に突出する段部260を有し、この段部260に、パッキン159を介してセラミックホルダ161が係合されている。さらに、主体金具200の筒孔250において、セラミックホルダ161の後端側には、シール部162と、セラミックスリーブ163と、金属リング164とが配置されている。シール部162は、センサ素子100の鍔部170よりも後端側に配置され、滑石粉末を充填することにより形成されたタルク層である。シール部162は、センサ素子100と主体金具200との間隙における軸線CA方向の先端側と後端側との通気を遮断する。セラミックスリーブ163は、センサ素子100の外周を囲む筒状の絶縁部材である。金属リング164は、センサ素子100の外周を囲むステンレス製の平ワッシャである。
【0019】
主体金具200の後端側の開口端を径方向内側(筒孔250側)に屈曲させることにより、加締部252が形成される。加締部252により、金属リング164とセラミックスリーブ163とを介してシール部162が押圧され、センサ素子100が主体金具200内に固定される。
【0020】
ガスセンサ10のプロテクタ300は、有底円筒状の金属部材である。プロテクタ300は、主体金具200の先端側から突出したセンサ素子100の周囲を取り囲むように主体金具200の先端部240にレーザ溶接により固設され、センサ素子100を保護する。プロテクタ300は、内側プロテクタ310と、外側プロテクタ320との二重プロテクタからなる。内側プロテクタ310および外側プロテクタ320には、それぞれセンサ素子100へ排気ガスを導入可能とするためにガス導入孔311,312が形成されていると共に、排気ガスを排出可能とするためにガス排出孔313が形成されている。
【0021】
セラミックヒータ150は、センサ素子100の筒孔に設けられ、検出部140に対応する位置に、発熱部151が設けられている。セラミックヒータ150は、後端側に接続するヒータ接続端子152と、接続端子152に接続されたヒータリード線590とを介して外部から供給された電力に基づいて発熱し、センサ素子100を加熱する。
【0022】
外筒410は、円筒状の金属部材であり、先端部411が主体金具200の後端部230に外嵌され、レーザ溶接により接合されている。
【0023】
外筒410の内側には、略円筒状のセパレータ600が配設されている。セパレータ600は、後述する外側接続端子530の後端部及び内側接続端子520の後端部を覆うセパレータ本体部610を備えるとともに、セパレータ本体部610から径方向外側に延設されたセパレータフランジ部620を有している。セパレータフランジ部620は、セパレータ600を保持するために、外筒410とセパレータ本体部610との隙間に配置された保持部材700により支持されている。さらに、セパレータ本体部610には、後述する素子リード線570、580と、ヒータリード線590とを挿通するための複数のリード線挿通孔630が、先端側から後端側にかけて貫通するように形成されている。また、セパレータ本体部610には、その先端側において開口する保持孔640が軸線CA方向に形成されている。保持孔640の内部にはセラミックヒータ150の後端部が挿入され、セラミックヒータ150の後端面が保持孔640の底面に当接することによりセラミックヒータ150の軸線CA方向における位置決めがなされている。
【0024】
一方、セパレータ600の後端側には、耐熱性に優れるフッ素ゴム等からなるグロメット800が配設されている。グロメット800には、軸線CA方向に貫通するように4個のリード線挿通孔810が形成されている。グロメット800の中央には、ガスセンサ10の内部と外部とを連通する貫通孔820が設けられている。貫通孔820内には、貫通孔820を閉塞するフィルタユニット900(フィルタ及び金属筒)が配置されている。グロメット800は、外筒410の後端側の内側に内挿され、外筒410に加締められることで外筒410に固定されている。
【0025】
素子リード線570、580及びヒータリード線590は、セパレータ600のリード線挿通孔630、グロメット800のリード線挿通孔810に挿通されて、外筒410内部から外部に向かって引き出されている。素子リード線570、580及びヒータリード線590は、詳細は図示しないが、導線が樹脂製の絶縁被膜により被覆された構造を有し、導線の後端部がコネクタに設けられたコネクタ端子に接続されている。
【0026】
素子リード線580の導線の先端部は、センサ素子100の後端側に外嵌された外側接続端子530の後端部に加締められ、素子リード線570の導線の先端部は、センサ素子100の後端側に内嵌された内側接続端子520の後端部に加締められ、それぞれ電気的に接続されている。また、ヒータリード線590の導線の先端部は、セラミックヒータ150のヒータ接続端子152と接続されている。
【0027】
本実施形態では、ガスセンサ10は、フィルタユニット900を通過するように、グロメット800の貫通孔820から外筒410内に外気を導入することで、センサ素子100の筒孔内に外気を導入可能に構成されている。センサ素子100の筒孔内に導入された外気は、ガスセンサ10が排気ガスから酸素を検知するための基準となる基準ガスとして利用される。一方、ガスセンサ10は、プロテクタ300のガス導入孔311、312を通過するようにして、プロテクタ300内に排気ガスを導入することで、センサ素子100の外側に排気ガスが曝されるようにしている。
【0028】
ガスセンサ10の内側接続端子520は、センサ素子100に形成された内側電極120と、素子リード線570との間を、電気的に接続する導体である。ガスセンサ10の外側接続端子530は、センサ素子100に形成された外側電極130と、素子リード線580との間を、電気的に接続する導体である。ガスセンサ10の素子リード線570、580は、ガスセンサ10からのセンサ出力を処理する処理回路(図示しない)へと電気的に接続される。
【0029】
ガスセンサ10では、内側電極120は、基準ガスである外気に曝される基準電極として機能し、外側電極130は、排気ガスに曝される検出電極として機能する。これによって、センサ素子100には、基準ガスと排気ガスとの間の酸素濃度差に応じた起電力が発生する。このセンサ素子100の起電力は、素子リード線570、580を介してガスセンサ10の外部へと、センサ出力として出力される。
【0030】
A−2.ガスセンサ素子100の構成
図2は、本実施形態におけるガスセンサ素子100の断面構成を示す説明図である。
図2に示すように、固体電解質体110の外表面の先端側から鍔部170付近の領域には、外側電極130を覆う下地層190が形成されている。下地層190は、例えば、スピネルなどのセラミックの溶射層からなり、多孔質保護層になっている。下地層190は、多孔質保護層180の密着性を向上させると共に、外側電極130を保護する機能を有する。
【0031】
本実施形態において、多孔質保護層180は、下地層190を介して外側電極130を覆っている。なお、本実施形態においては、下地層190を設けているが、ガスセンサ素子100に下地層190を設けなくてもよい。つまり、多孔質保護層180が外側電極130を直接覆ってもよい。
【0032】
多孔質保護層180は、内側層181と外側層182を備える。内側層181は、外側層182に対して外側電極130側の層である。内側層181は、外側電極130よりも後端側へ延びており、外側電極130を覆っている。外側層182は、内側層181よりも後端側へ延びており、内側層181を覆っている。外側層182は、内側層181よりも気孔率が小さくなっている。
【0033】
内側層181及び外側層182は、例えば、アルミナ、チタニア、スピネル、ジルコニア、ムライト、ジルコン及びコージェライトからなる群より選ばれる1種以上のセラミックスを主成分とし、さらにガラスを含む。つまり、内側層181及び外側層182は、ケイ素(Si)を含む化合物の結晶相を含む。内側層181及び外側層182は、セラミックスとガラスとを含む保護層用材料としてのスラリーを焼結させることにより形成される。なお、例えば、内側層181は、セラミックスとガラスとの質量比が10:1となるようにしており、外側層182は、セラミックスとガラスとの質量比が10:0.8となるようにしている。スラリーには、消失性の造孔材を添加してもよい。消失性の造孔材は、焼結することにより、造孔材が消失した部分が孔となるため、内側層181又は外側層182の気孔率を制御することができる。消失性の造孔材は、例えば、カーボン、樹脂性ビーズ、有機バインダ粒子、無機バインダ粒子を挙げることができる。また、焼結時にガラスが溶融することによってセラミックス間に介在することにより、セラミックス間の結合が強くなる。この結果として、内側層181又は外側層182の強度が向上し、かつ、多孔質保護層180と外側電極130との密着性を確保することができる。
【0034】
ガラスの軟化点は、600℃以上800℃以下が好ましい。セラミックスを主成分とする多孔質保護層180を形成するためには、通常、700℃〜1000℃の温度にて熱処理するため、ガラスの軟化点を上述のようにすると、この熱処理工程においてガラスが溶融しやすい。この結果、多孔質保護層180と外側電極130との密着性をより向上できる。なお、ガラス軟化点が800℃を超えると、熱処理工程においてガラスが溶融せず、多孔質保護層180と外側電極130との密着性が悪くなることがある。他方、ガラス軟化点が600℃未満であると、ガラスが溶融しすぎて多孔質保護層180から流れてしまい、多孔質保護層180と外側電極130との密着性が悪くなることがある。ここで、ガラスの軟化点とは、熱間加工時における作業温度範囲の下限温度と言われ、粘度が約10
7.6ポイズに相当する温度である。
【0035】
ガラスの融点を制御する目的や、熱膨張を低くする目的から、ガラスに亜鉛(Zn)を含有させる方法が広く知られている。しかし、亜鉛(Zn)を含有したガラスを、多孔質保護層180に用いた場合、ガスセンサの活性化時間がより長くなる問題がある。このメカニズムは定かではないが、外側電極130を形成する材料と亜鉛(Zn)とが接触することにより、外側電極130の活性を阻害することが考えられる。特に、ガスセンサを長期間において使用した場合に比べ、ガスセンサを初めて使用した場合に、顕著にこの影響が見られた。このため、本実施例では、外側電極130の表面をX線光電子分光法(XPS分析)により計測した場合に、亜鉛(Zn)が存在しないガスセンサ素子としている。このようにすることにより、ガスセンサの活性化時間が短縮できる。ここで、「外側電極130の表面をX線光電子分光法により計測した場合に、亜鉛(Zn)が存在しない」とは、外側電極130の表面に存在する亜鉛(Zn)の量がX線光電子分光法によって計測できる計測限界以下の量であることを示す。
【0036】
なお、セラミックスとガラスとの混合割合(質量割合)としては、セラミックス10に対して、ガラスを0.2以上2未満とすることが好ましい。セラミックス10に対して、ガラスを2未満とすることにより、多孔質保護層180と外側電極130との密着性も十分に確保することができる。セラミックス10に対して、ガラスを0.2以上とすることにより、ガス応答性の低下を抑制でき、かつ被毒物質による目詰まりを抑制できる。
【0037】
A−3.ガスセンサ素子100の製造方法
図3は、本実施形態におけるガスセンサ素子100の製造方法を示すフローチャートである。まず、ステップS100において、製造者は、固体電解質体110を作製する。具体的には、製造者は、所定の固体電解質(例えば、ZrO
2にY
2O
3を5mol%添加した部分安定化ジルコニア)をスラリーとし、このスラリーをスプレードライ方式により乾燥造粒する。そして、製造者は、その粉末を、油圧プレス法によって有底円筒系に形成した後に、所定の形状に研削する。その後、製造者は、例えば1500℃で焼成する。
【0038】
ステップS110において、製造者は、固体電解質体110の外表面に外側電極130を形成する。具体的には、製造者は、無電解メッキ法により白金(Pt)からなる外側電極130を形成する。
【0039】
ステップS120において、製造者は、外側電極130を覆うように下地層190を形成する。具体的には、製造者は、セラミック(例えば、スピネル)を溶射することにより下地層190を形成する。
【0040】
ステップS130において、製造者は、固体電解質体110の内表面に内側電極120を形成する。具体的には、製造者は、無電解メッキ法により白金(Pt)からなる内側電極120を形成する。
【0041】
ステップS140において、製造者は、多孔質保護層180を形成する。多孔質保護層180の形成工程(ステップS140)は、塗布工程であるステップS142と、熱処理工程であるステップS144とを含む。
【0042】
塗布工程(ステップS142)は、外側電極130の少なくとも一部に、セラミックスを主成分とし、ガラスを含む保護層用材料を塗布する工程である。本実施形態において、多孔質保護層180は、内側層181と外側層182とを備える。このため、多孔質保護層180は、内側層181を形成するためのスラリーを外側電極130に塗布した後、外側層182を形成するためのスラリーを内側層181に塗布する。本実施形態においては、ディップ法を用いる。ガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とし、酸化亜鉛(ZnO)が0.2質量%以下とする。ここで、主成分とは、原材料の中で最も質量が多い原料をいう。このようにすることにより、ガスセンサ素子の多孔質保護層と外側電極との密着性が確保できるとともに、ガスセンサの活性化時間が短縮できる。
【0043】
熱処理工程(ステップS144)は、塗布工程後に行う工程であり、保護層用材料を熱処理することにより、多孔質保護層180を形成する工程である。なお、内側層181を形成するためのスラリーを外側電極130に塗布し、熱処理後に、外側層182を形成するためのスラリーを内側層181に塗布し、熱処理してもよい。
【0044】
以上により、センサ素子100が製造される。このようにすることにより、ガスセンサ素子の多孔質保護層と外側電極との密着性が確保できるとともに、ガスセンサが活性化されるまでの時間が長くなることを抑制できる。
【0045】
A−4.試験結果
外側電極の表面の亜鉛(Zn)により、ガスセンサの活性化時間がどのように変わるかについて調べるため、以下の試験を行った。
【0046】
図4は、実施例と比較例に用いたガラスの組成及び特性を示す図である。実施例と比較例は、亜鉛(Zn)の量が大きく異ならせたものの、ガラスの性質(物性)は、なるべく近いものを実験に用いた。
図4において、「線膨張α」は、線膨張率を示し、線膨張率とは、温度の上昇によって物体の長さが膨張する割合を、1K(℃)あたりで示したものである。「結晶相(熱処理後XRD)」は、ガラスを熱処理した後にX線回折法(XRD:X-ray diffraction)によって結晶相の物質を同定した結果を示す。つまり、「結晶相(熱処理後XRD)」は、ガラスを熱処理した後に存在する結晶相が何により構成されているかを示す。
【0047】
実施例と比較例は、ガラスの組成が異なる以外は、同じ方法で作製された。具体的には、以下のとおりである。試験者は、ZrO
2にY
2O
3を5mol%添加した部分安定ジルコニアから形成された固体電解質体を用いた。試験者は、固体電解質体の内表面に白金から形成される内側電極を形成し、固体電解質体の外表面に白金から形成される外側電極を形成した。内側電極の形成および外側電極の形成には、無電解メッキ法を用いた。
【0048】
次に、試験者は、外側電極を覆うようにしてセラミック(スピネル)を溶射することにより下地層を形成した。その後、試験者は、外側電極を覆うようにして、下地層の上に内側層となる内側層用ペーストをディップ法により塗布した。内側層用ペーストは、セラミックスとしてスピネルを含み、セラミックスとガラスとの質量比をセラミックス:ガラス=10:1とした。さらに消失性の造孔材として有機ビーズを含む組成とした。次に、試験者は、内側層用ペーストの表面に、外側層となる外側層用ペーストを塗布した後、全体を1000℃で熱処理した。外側層用ペーストは、セラミックスとしてチタニア及びスピネルを含み、セラミックスとガラスとの質量比を、セラミックス:ガラス=10:0.8とした。試験者は、得られたガスセンサ素子を備えたガスセンサの活性化時間を測定した。
【0049】
図5は、外側電極表面上の亜鉛(Zn)量と、ガスセンサの活性化時間との関係を示す図である。横軸は、外側電極表面上の亜鉛(Zn)量(atm%)を示す。縦軸は、実施例におけるガスセンサの活性化時間を1とした場合の比(ガスセンサの活性化時間/実施例におけるガスセンサの活性化時間)を示す。試験者は、ガスセンサ素子の多孔質保護層および下地層を破砕することによって外側電極表面を露出させ、外側電極表面上の亜鉛(Zn)量をX線光電子分光法により計測した。
【0050】
図5において、亜鉛(Zn)量が0atm%付近のデータは、ガラス中の亜鉛が0.2質量%のガラスを用いた実施例の結果である。一方、それ以外のデータは、ガラス中の亜鉛が10質量%のガラスを用いた比較例の結果である。比較例における外側電極表面上の亜鉛(Zn)量が異なる理由としては、ガスセンサの使用時間の差が挙げられる。つまり、比較例として作製したガスセンサを使用することにより、徐々に外側電極表面上の亜鉛(Zn)量が減少していく。このため、試験者は、ガスセンサの使用時間を変えたガスセンサを複数用意することにより、外側電極表面上の亜鉛(Zn)量が異なる場合のデータを取得した。
【0051】
図5の結果より、外側電極表面上の亜鉛(Zn)量が0atm%の場合と比較して、外側電極表面上の亜鉛(Zn)量が0.5atm%以上の場合に、ガスセンサの活性化時間が長くなることが分かる。このため、外側電極の表面をX線光電子分光法により計測した場合に、亜鉛(Zn)が存在しないガスセンサ素子とすることにより、ガスセンサが活性化されるまでの時間が長くなることを抑制できる。
【0052】
B.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0053】
上述の形態において、ガスセンサ素子100の多孔質保護層180は、内側層181と外側層182の2層構造としている。しかし、本発明はこれに限られない。多孔質保護層は、1層としてもよく、3層以上としてもよい。