(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383684
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
E04H 17/14 20060101AFI20180820BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
E04H17/14 102Z
E04B1/58 509J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-42259(P2015-42259)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-160701(P2016-160701A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100168228
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼野 寛也
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−068567(JP,U)
【文献】
米国特許第8382070(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00 − 17/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付材と、被取付材と、固定具を備え、取付材は、一方側に開口する係合溝を設けてあり、被取付材は、取付材側に取付溝を設けてあり、固定具は、被取付材の取付溝にスライド自在に係合する固定具本体部と、取付材の係合溝に係合して取付材と被取付材を結合する結合部と、固定具本体部の他方側に位置するとともに取付材に他方側から当接自在なストッパを有し、固定具本体部を被取付材の取付溝に挿入し、結合部を取付材の係合溝に係合して取付材と被取付材を固定してあることを特徴とする建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柵、門、外装材など、建築分野及び土木分野の種々の構造物を含む建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取付材と被取付材を固定する際には、文献1に示すように、取付材(柱材)に丸孔を形成し、被取付材(取付部材)に通したボルトを丸孔に通してナットを螺合する場合や、文献2に示すように、取付材(ストリンガー)に溝を形成し、被取付材(ルーバー)に係合するボルトを溝に通してナットを螺合する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−314017号公報
【特許文献2】特開2008−169591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取付材に丸孔を形成した場合、ナットをボルトから一旦取り外し(一般に、出荷時にはボルトにナットを螺合してある)、ボルトを丸孔に通してから再度ナットを螺合しなければならず、施工性が悪かった。また、取付材に溝を形成した場合、ナットをボルトに付けたまま施工できるが、施工後にナットが緩んだ場合、ボルトが溝から抜けて被取付材が脱落するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、取付材と、取付材に固定する被取付材を備え、施工が容易であって、被取付材が取付材から外れない建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、取付材と、被取付材と、固定具を備え、取付材は、一方側に開口する係合溝を設けてあり、被取付材は、取付材側に取付溝を設けてあり、固定具は、被取付材の取付溝にスライド自在に係合する固定具本体部と、取付材の係合溝に係合して取付材と被取付材を結合する結合部と、固定具本体部の他方側に位置するとともに取付材に他方側から当接自在なストッパを有し、固定具本体部を被取付材の取付溝に挿入し、結合部を取付材の係合溝に係合して取付材と被取付材を固定してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、取付材の係合溝が開口しており、この係合溝に結合部を係合して取付材と被取付材を結合すればよいので、施工が容易である。そして、結合部による結合に緩みが生じて固定具が一方側にずれても、固定具に設けたストッパが取付材の他方側部分に引っ掛かるので、結合部が係合溝から抜けることがなく、被取付材の脱落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は第一実施形態の固定具の斜視図であり、(b)及び(c)はその取り付けの説明図である。
【
図2】第一実施形態の固定具を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図3】第一実施形態の取付材と被取付材の固定部の横断面図である。
【
図4】第一実施形態において固定具がずれた状態を示す横断面図である。
【
図5】第二実施形態の固定具を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図6】第二実施形態の取付材と被取付材の固定部の横断面図である。
【
図7】第二実施形態において固定具がずれた状態を示す横断面図である。
【
図8】(a)は第三実施形態の固定具の斜視図であり、(b)及び(c)はその取り付けの説明図である。
【
図9】第三実施形態の固定具を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図10】第三実施形態の取付材と被取付材の固定部の横断面図である。
【
図11】第三実施形態において固定具がずれた状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、左側が一方側、右側が他方側に相当する。この建造物の第一実施形態は、建物の外装などに用いられるルーバーであり、上下に延びる柱材である取付材1と、左右に延びるルーバー材である被取付材2と、固定具3を備え、固定具3により、取付材1を被取付材2の前側に固定してある。
【0010】
図1(b)、(c)に示すように、取付材1(柱材)は、アルミ製であって、断面略L字形で、左右に延びる見付面11と、見付面11の右側端から後側に向けて延びる見込面12を有する。見付面11には、左右に延び左側(一方側)に開口する前面視してU字形の係合溝4を設けてある。
【0011】
また、
図1(b)、(c)に示すように、被取付材2(ルーバー材)は、アルミ製であって、前側に向けて先細っており、下側に向けて湾曲した形状の中空の部材である。その後側面(取付材1側面)には、後側に向けて開口する断面略C字形の取付溝5を設けてあり、取付溝5は開口部の上下両側に、溝底面と平行な係合壁51を有する。
【0012】
さらに、
図1(a)及び
図2に示すように、固定具3は、アルミ製であって、固定具本体部6と、結合部7と、ストッパ8を有する。固定具本体部6は、垂直向きの略矩形平板状で、上下幅は被取付材2の上下幅よりわずかに小さく、取付溝5に丁度嵌まる大きさであり、取付溝5にスライド自在に係合する。また、左右端部には端部側に向けて先細った形状の先細部61を形成してある。さらに、前側面の左右方向中央には、上下に延びる断面略凹形の溝部62を形成してあり、溝部62内の上下方向中央(固定具本体部6の中心)には、前後方向に貫通するボルト孔63を形成してある。そして、固定具本体部6の左右端部(先細部61の端部側)には、ストッパ8を設けてある。ストッパ8は、固定具本体部6の左右端部から斜め後側(右側のストッパ8においては右後側、左側のストッパ8においては左後側)に延びる延出部81と、延出部81の先端から後側に延びる当接部82を有し、その上下幅は、固定具本体部6の上下幅よりも小さく、被取付材2の取付溝5の開口幅よりも小さい。また、結合部7は、ボルト71とナット72からなる。ボルト71とナット72は何れもステンレス製であり、ナット72は緩み止め機構付きのものである。そして、ボルト71を固定具本体部6のボルト孔63に前側から挿通し、後側からボルト71にワッシャ73及びスプリングワッシャ74を通し、ナット72を螺合してある。なお、固定具本体部6の溝部62の幅は、ボルト71の頭部の二面幅よりもわずかに大きく、ボルト71の頭部が溝部62に嵌まることで、ボルト71が回転しないようになっている。
【0013】
続いて、取付材1を被取付材2に固定する手順を説明する。まず、
図1(b)に示すように、固定具3の固定具本体部6を、被取付材2の取付溝5に挿入する。この際、固定具本体部6の左右端部に先細部61を形成してあるので、挿入しやすくなっており、固定具本体部6の上端部と下端部が、それぞれ取付溝5の上下の係合壁51に係合して、スライド自在となる。また、結合部7のナット72は緩めた状態となっている。そして、固定具本体部6を挿入すると、ストッパ8の当接部82が取付溝5から後側に突出した状態となる。次に、固定具3を取付溝5に沿ってスライドさせ、結合部7のボルト71を取付材1の係合溝4に左側から挿入する。この際、ナット72を緩めた状態であるから、取付材1とストッパ8が干渉することはなく、係合溝4の右側の閉止端までボルト71を挿入できる。すると、固定具3の右側のストッパ8の当接部82が、取付材1の見込面12の右側(他方側)に位置し、ストッパ8の当接部82が取付材1の見込面12に右側(他方側)から当接自在となる。そして、
図1(c)及び
図3に示すように、ナット72を締め付けると、取付材1の見付面11と固定具3の固定具本体部6に被取付材2の係合壁51が挟み込まれ、取付材1と被取付材2が固定される。
【0014】
このように構成した建造物の第一実施形態によれば、取付材1の係合溝4が開口しており、この係合溝4に結合部7のボルト71を挿入し、ナット72を締め付けるだけで取付材1と被取付材2を固定できるので、施工が容易である。そして、
図4に示すように、結合部7のナット72に緩みが生じて固定具3が左側(一方側)にずれても、固定具本体部6に設けたストッパ8の当接部82が取付材1の見込面12(他方側面)に引っ掛かるので、結合部7のボルト71が係合溝4から抜けることがなく、被取付材2の脱落を防ぐことができる。また、結合部7のボルト71とナット72は何れもステンレス製なので、電蝕が生じない。なお、固定具3は左右両端にストッパ8を有していて左右対称形状となっているので、施工時に固定具3の左右の向きを間違えることがない。
【0015】
次に、
図5及び
図6に基づき、建造物の第二実施形態について説明する。第二実施形態も、第一実施形態と同様に、取付材1(柱材)と、被取付材2(ルーバー材)と、固定具3を有するものであって、固定具3による取付材1と被取付材2の固定方法も同じであるが、第一実施形態とは、取付材1及び固定具3の形状が異なる。すなわち、第二実施形態の取付材1は、第一実施形態のものと比べて見付面11が左右に長くなっている。ただし、係合溝4の長さは第一実施形態のものと同じであるから、これに第一実施形態の固定具を適用すると、右側のストッパが取付材1の見付面11に干渉する。そこで、第二実施形態の固定具3は、第一実施形態のものと比べて固定具本体部6が左右に長くなっている。固定具本体部6は、溝部62及びボルト孔63の左右両側に先細部61を形成してあり(溝部62及びボルト孔63と左右の先細部61の位置関係は第一実施形態の固定具と同じである)、右側の先細部61からさらに右側に延長面64が延びていて、延長面64の右端部にストッパ8を設けてある。固定具3の左端部においては、第一実施形態と同様に、先細部61の左側にストッパ8を設けてある。よって、第二実施形態の固定具3は、溝部62及びボルト孔63が左右方向の中心から左側にずれている。第二実施形態における取付材1を被取付材2に固定する手順は第一実施形態と同じであり、固定具3により取付材1と被取付材2を固定すると、固定具3の右側のストッパ8の当接部82が、取付材1の見込面12の右側(他方側)に位置する。この建造物の第二実施形態も第一実施形態と同様の作用効果を奏するものであり、
図7に示すように、結合部7のナット72に緩みが生じて固定具3が左側(一方側)にずれても、固定具本体部6に設けたストッパ8の当接部82が取付材1の見込面12(他方側面)に引っ掛かるので、結合部7のボルト71が係合溝4から抜けることがなく、被取付材2の脱落を防ぐことができる。なお、第二実施形態の固定具3は左右対称形状ではないが、固定具3の左右の向きを間違えると、ストッパ8が取付材1に干渉してしまい、取付材1と被取付材2を固定できないので、間違った状態で施工されることはない。
【0016】
次に、
図8〜
図10に基づき、建造物の第三実施形態について説明する。第三実施形態も、第一実施形態と同様に、取付材1(柱材)と、被取付材2(ルーバー材)と、固定具3を有するものであって、取付材1と被取付材2は第一実施形態と同じものであるが、固定具3の形状及び固定方法が異なっている。
図8(a)及び
図9に示すように、第三実施形態の固定具3は、アルミ製であって、固定具本体部6と、結合部7と、ストッパ8を有する。固定具本体部6は、垂直向きの略矩形平板状で、上下幅は被取付材2の上下幅よりわずかに小さく、取付溝5に丁度嵌まる大きさであり、取付溝5にスライド自在に係合する。また、右端部には右側に向けて先細った形状の先細部61を形成してある。そして、先細部61の右端部には、ストッパ8を設けてある。ストッパ8は、第一実施形態のものと同じ形状であり、先細部61の右端部から右後側に延びる延出部81と、延出部81の先端から後側に延びる当接部82を有し、その上下幅は、固定具本体部6の上下幅よりも小さく、被取付材2の取付溝5の開口幅よりも小さい。また、結合部7は、連結部75と、挟着部76からなる。連結部75は、固定具本体部6と一体に形成されていて、固定具本体部6の左端の上下方向中央から後側に向けて延びており、その上下幅は、ストッパ8の上下幅に等しく、被取付材2の取付溝5の開口幅よりも小さい。さらに、挟着部76は、連結部75と一体に形成されていて、連結部75の後側端に設けてある。その形状は、略矩形平板状で、固定具本体部6と平行であり、上下幅は固定具本体部6の上下幅に等しく、左右幅は固定具本体部6の左右幅よりも短く連結部75から右側に向けて延びている。また、固定具本体部6と挟着部76の間の間隔は、取付材1の見付面11の厚さと被取付材2の係合壁51の厚さの合計に略等しい。そして、挟着部76の前側面は、左側(一方側)から右側(他方側)に向けて僅かに前向きに傾斜している。
【0017】
続いて、第三実施形態において、取付材1を被取付材2に固定する手順を説明する。まず、
図8(b)に示すように、固定具3の固定具本体部6を、被取付材2の取付溝5に挿入する。この際、固定具本体部6の右端部に先細部61を形成してあるので、挿入しやすくなっており、固定具本体部6の上端部と下端部が、それぞれ取付溝5の上下の係合壁51に係合して、スライド自在となる。そして、固定具本体部6を挿入すると、ストッパ8の当接部82が取付溝5から後側に突出した状態となる。次に、固定具3を取付溝5に沿ってスライドさせ、結合部7の連結部75を取付材1の係合溝4に左側から挿入する。この際、取付材1とストッパ8が干渉する場合には、ストッパ8を弾性変形させつつ、係合溝4の右側の閉止端まで連結部75を挿入する。すると、
図8(c)及び
図10に示すように、固定具3のストッパ8の当接部82が、取付材1の見込面12の右側(他方側)に位置し、ストッパ8の当接部82が取付材1の見込面12に右側(他方側)から当接自在となる。そしてこの状態において、固定具本体部6と挟着部76により、取付材1の見付面11と被取付材2の係合壁51が挟み込まれ、挟着部76の前側面が傾斜していることにより、挟着部76と取付材1の見付面11の間に摩擦力が働いて、取付材1と被取付材2が固定される。
【0018】
このように構成した建造物の第三実施形態によれば、取付材1の係合溝4が開口しており、この係合溝4に結合部7の連結部75を挿入するだけで取付材1と被取付材2を固定できるので、特に施工が容易である。そして、
図11に示すように、固定具3が左側(一方側)にずれても、固定具本体部6に設けたストッパ8の当接部82が取付材1の見込面12(他方側面)に引っ掛かるので、結合部7の連結部75が係合溝4から抜けることがなく、被取付材2の脱落を防ぐことができる。
【0019】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。この発明は、柵、門、門扉、外壁パネル、外装材や高欄など、建築分野及び土木分野の種々の構造部を含む建造物に適用できるものであり、建造物の種類に応じて、取付材や被取付材の形状は適宜変更できる。また、取付材や被取付材がどのような部材であってもよく、たとえば取付材が左右に延びる部材(柱材など)で、被取付材が上下に延びる部材(ルーバー材など)であってもよい。さらに、結合部は、取付材と被取付材を結合できるものであれば、締め付けによるものや、嵌合によるものなど、どのようなものであってもよい。また、結合部が二つ以上の金属製部材からなる場合には、電蝕が生じないよう、異種金属の組み合わせを避けることが望ましい。
【符号の説明】
【0020】
1 取付材
2 被取付材
3 固定具
4 係合溝
5 取付溝
6 固定具本体部
7 結合部
8 ストッパ