特許第6383695号(P6383695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6383695-エンジンの弁装置 図000002
  • 特許6383695-エンジンの弁装置 図000003
  • 特許6383695-エンジンの弁装置 図000004
  • 特許6383695-エンジンの弁装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383695
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】エンジンの弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 3/20 20060101AFI20180820BHJP
   F01M 9/10 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   F01L3/20 D
   F01M9/10 G
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-69332(P2015-69332)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188614(P2016-188614A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】尾曽 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 学
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中野 正
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆志
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−125115(JP,U)
【文献】 特開昭63−297711(JP,A)
【文献】 実開昭56−038102(JP,U)
【文献】 実開昭63−038604(JP,U)
【文献】 実開昭55−083207(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 3/20
F01M 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気または排気を行うポペット弁(1)と弁キャップ(2)を備え、ポペット弁(1)は弁頭(1a)と弁軸(1b)を備え、弁キャップ(2)は弁軸(1b)の端部(1c)に嵌合されている、エンジンの弁装置において、
弁キャップ(2)は、弁軸(1b)の端部(1c)に回転可能に遊嵌され、
弁キャップ(2)の端壁(3)はオイル補給孔(3a)を備え、オイル補給孔(3a)は端壁(3)を貫通し、オイル補給孔(3a)のオイル入口(3b)は端壁(3)の外面(3c)で開口され、
弁キャップ(2)の周壁(4)は内周にオイル案内溝(4a)を備え、オイル案内溝(4a)は弁キャップ(2)の中心軸線(2a)の軸長方向に沿い、
オイル案内溝(4a)のオイル出口(4b)は弁キャップ(2)の開口部(2b)側で開口され、
弁キャップ(2)の周壁(4)は内周に複数のオイル案内溝(4a)と、弁軸(1b)の端部(1c)の周面に当接する複数の突条(4c)を備え、オイル案内溝(4a)と突条(4c)は、弁キャップ(2)の周壁(4)の全周に亘り、その周方向に沿って交互に配置され、
弁キャップ(2)の中心軸線(2a)と平行な向きに見て、突条(4c)の突出端(4d)は凸円弧状に形成され、
オイル案内溝(4a)の凹入端は凹円弧状に形成されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンの弁装置において、
弁キャップ(2)の端壁(3)は複数のオイル補給孔(3a)を備えている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたエンジンの弁装置において、
各オイル補給孔(3a)は端壁(3)の中央部(3e)から周壁(4)の内周寄りに偏倚されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたエンジンの弁装置において、
対のオイル補給孔(3a)(3a)は、弁キャップ(2)の端壁(3)の中央部(3e)を間に挟んで、相互反対側に配置されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載されたエンジンの弁装置において、
弁キャップ(2)の周壁(4)は弁キャップ(2)の開口部(2b)側にテーパ面(4)を備え、テーパ面(4e)は、弁キャップ(2)の開口部(2b)に向かって拡開している、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたエンジンの弁装置において、
テーパ面(4e)は、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)に対する傾斜角度(α)が5°〜20°とされている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載されたエンジンの弁装置において、
オイル案内溝(4a)は、弁キャップ(2)の周壁(4)の周方向に沿って、30°毎に設けられ、このオイル案内溝(4a)と突条(4c)は、それぞれ合計12個ずつ配置されていることを特徴とするエンジンの弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの弁装置に関し、詳しくは、弁面と弁シートの磨耗を抑制することができるエンジンの弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気または排気を行うポペット弁と弁キャップを備え、ポペット弁は弁頭と弁軸を備え、弁キャップは弁軸の端部に嵌合されているエンジンの弁装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の弁装置によれば、弁軸の端部の磨耗を弁キャップで抑制することができる利点がある。
【0004】
しかし、特許文献1のものでは、弁キャップは弁軸の端部に圧入固定されているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−122372号公報(図1図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 弁面と弁シートの磨耗が促進されるおそれがある。
特許文献1のものでは、弁キャップは弁軸の端部に圧入固定されているため、ポペット弁と弁キャップが常に一体で回転し、弁キャップへのロッカアームの当接箇所が弁キャップの中心からオフセットしている場合には、ポペット弁が頻繁に回転し、弁面と弁シートが磨耗しやすい。
【0007】
本発明の課題は、弁面と弁シートの磨耗を抑制することができるエンジンの弁装置を提供することにある。
【0008】
本発明の発明者らは、研究の結果、弁キャップを弁軸の端部に回転可能に遊嵌すると、ポペット軸の回転が減少し、弁面と弁シートの磨耗を抑制することができることを発見し、この発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)に例示するように、吸気または排気を行うポペット弁(1)と弁キャップ(2)を備え、ポペット弁(1)は弁頭(1a)と弁軸(1b)を備え、弁キャップ(2)は弁軸(1b)の端部(1c)に嵌合されている、エンジンの弁装置において、
図1(A)に例示するように、弁キャップ(2)は、弁軸(1b)の端部(1c)に回転可能に遊嵌され、
図1(B)〜(E)に例示するように、弁キャップ(2)の端壁(3)はオイル補給孔(3a)を備え、オイル補給孔(3a)は端壁(3)を貫通し、オイル補給孔(3a)のオイル入口(3b)は端壁(3)の外面(3c)で開口され、
図1(A)〜(D)に例示するように、弁キャップ(2)の周壁(4)は、内周に複数のオイル案内溝(4a)と、弁軸(1b)の端部(1c)の周面に当接する複数の突条(4c)を備え、オイル案内溝(4a)と突条(4c)は、弁キャップ(2)の周壁(4)の全周に亘り、その周方向に沿って交互に配置され、
図1(C)(D)に例示するように、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)と平行な向きに見て、突条(4c)の突出端(4d)は凸円弧状に形成され、
オイル案内溝(4a)の凹入端は凹円弧状に形成されている、ことを特徴とするエンジンの弁装置。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 弁面と弁シートの磨耗を抑制することができる。
図1(A)に例示するように、弁キャップ(2)は、弁軸(1b)の端部(1c)に回転可能に遊嵌されているので、弁キャップ(2)に対するロッカアーム(5)の当接箇所が弁キャップ(2)の中心からオフセットしている場合でも、弁軸(1b)の端部(1)で弁キャップ(2)が回転する分だけ、ポペット弁(1)の回転が減少し、弁面(1d)と弁シート(6)の磨耗を抑制することができる。
【0011】
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗を抑制することができる。
図1(B)〜(E)に例示するように、弁キャップ(2)の端壁(3)はオイル補給孔(3a)を備え、オイル補給孔(3a)は端壁(3)を貫通し、オイル補給孔(3a)のオイル入口(3b)は端壁(3)の外面(3c)で開口されているので、弁キャップ(2)周辺のオイルミストや、弁キャップ(2)周辺で凝縮した凝縮オイルが、オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面が潤滑され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制することができる。
【0012】
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗を抑制する機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、弁キャップ(2)の周壁(4)は内周にオイル案内溝(4a)を備え、オイル案内溝(4a)は弁キャップ(2)の中心軸線(2a)の軸長方向に沿っているので、オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルミストや凝縮オイルが、オイル案内溝(4a)を経て、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面の広い範囲に速やかに案内され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
【0013】
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗を抑制する機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、オイル案内溝(4a)のオイル出口(4b)は弁キャップ(2)の開口部(2b)側で開口されているので、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面で発生した磨耗粉が、オイルで洗い流され、オイル案内溝(4a)を経て、弁キャップ(2)の開口部(2b)から速やかに流出し、磨耗粉による新たな磨耗が抑制され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
【0014】
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、弁キャップ(2)の周壁(4)は内周に複数のオイル案内溝(4a)と複数の突条(4c)を備えているので、オイルが複数のオイル案内溝(4a)を経て、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に案内され、或いは、摺動面で発生した磨耗粉が、複数のオイル案内溝(4a)を経て、弁キャップ(2)の開口部(2b)から速やかに流出し、磨耗粉による新たな磨耗が抑制され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
【0015】
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(C)(D)に例示するように、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)と平行な向きに見て、突条(4c)の突出端(4d)は凸円弧状に形成されているので、突条(4c)の突出端(4d)が、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)の周面に滑らかに当接し、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0016】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、弁キャップ(2)の端壁(3)は複数のオイル補給孔(3a)を備えているので、複数のオイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給された多くのオイルミストや凝縮オイルが、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に案内され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。また、仮に、一部のオイル補給孔(3a)がロッカアーム(5)で一時的に塞がれても、他のオイル補給孔 (3a)からオイルミストや凝縮オイルが弁キャップ(2)内に流入するので、この点でも弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
【0017】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、各オイル補給孔(3a)は端壁(3)の中央部(3e)から周壁(4)の内周寄りに偏倚されているので、各オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルミストや凝縮オイルが、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に速やかに案内され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0018】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に記載された発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、対のオイル補給孔(3a)(3a)は、弁キャップ(2)の端壁(3)の中央部(3e)を間に挟んで、相互反対側に配置されているので、対のオイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルが相互反対側の周壁(4)の内周に均等に分配され、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)が偏りなく潤滑され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。また、弁キャップ(2)の端壁(3)の中央部(3e)を間に挟んで、相互反対側に配置された一対のオイル補給孔(3a)(3a)は、相互に遠い位置に離間し、ロッカアーム(5)等で同時に塞がれる不具合が起こりにくく、この点でも弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0019】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載された発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(B)〜(E)に例示するように、弁キャップ(2)の周壁(4)は弁キャップ(2)の周壁(4)の開口部(2b)側にテーパ面(4e)を備え、テーパ面(4e)は、弁キャップ(2)の開口部(2b)に向かって拡開しているので、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面で発生した磨耗粉が、オイルとともに、テーパ面(4e)を経て、弁キャップ(2)の開口部(2b)から速やかに流出し、磨耗粉による新たな磨耗が抑制され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0020】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項5に記載された発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 弁軸の端部と弁キャップの磨耗抑制機能が高まる。
図1(E)に例示するように、テーパ面(4e)は、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)に対する傾斜角度(α)が5°〜20°とされているので、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)とテーパ面(4e)との間が適度な広さの隙間となり、凝縮オイルが表面張力でテーパ面(4e)に保持されやすいとともに、磨耗粉も流出しやすく、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの弁装置を説明する図で、図1(A)は弁装置の正面図、図1(B)は弁装置で用いる弁キャップの正面図、図1(C)は弁キャップの平面図、図1(D)は弁キャップの底面図、図1(E)は図1(C)のE−E線断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る弁装置を用いたエンジンの縦断正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る弁装置を用いたエンジンの一部縦断側面図である。
図4】本発明の参考形態に係るエンジンの弁装置を説明する図で、図4(A)は弁装置の正面図、図4(B)は弁装置で用いる弁キャップの正面図、図4C)は弁キャップの平面図、図4(D)は弁キャップの底面図、図4(E)は図4(C)のE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図3は本発明の実施形態に係るエンジンの弁装置を説明する図、図4は本発明の参考形態に係るエンジンの弁装置を説明する図であり、各実施形態と参考形態では、立形の直列2気筒ディーゼルエンジンの弁装置について説明する。
【0024】
まず、図1図3に示す実施形態について説明する。
エンジンの概要は、次の通りである。
図3に示すように、シリンダブロック(7)の上部にシリンダヘッド(8)が組み付けられ、シリンダヘッド(8)の上部にシリンダヘッドカバー(9)が組み付けられている。シリンダブロック(7)のクランクケース(7a)にクランク軸(10)が収容され、クランク軸(10)の架設方向を前後方向として、その一方を前、他方を後として、シリンダブロック(7)の前部に調時伝動ケース(11)とウォータポンプ(12)が組み付けられ、ウォータポンプ(12)の前部にエンジン冷却ファン(13)が取り付けられ、ウォータポンプ(12)とエンジン冷却ファン(13)がファンベルト(14)を介してクランク軸(10)で駆動される。エンジン冷却ファン(13)の前方にはラジエータ(15)が配置されている。
シリンダブロック(7)の後部にはフライホイール(16)が配置されている。
シリンダブロック(7)の下部にはオイルパン(17)が組み付けられている。
【0025】
図2に示すように、クランク軸(10)の架設方向と平行な向きに見て、水平な方向であるエンジン幅方向を横方向として、シリンダヘッド(8)の横一側に吸気マニホルド(18)が組み付けられ、横他側に排気マニホルド(19)が組み付けられている。
シリンダヘッドカバー(9)内には、吸気及び排気の弁装置(20)が収容され、この弁装置(20)が動弁装置(21)で駆動される。動弁装置(21)は、動弁カム(22)とタペット(23)とプッシュロッド(24)とロッカアーム(5)を備えている。
【0026】
弁装置(20)の概要は、次の通りである。
図1(A)に示すように、吸気または排気を行うポペット弁(1)と弁キャップ(2)を備え、ポペット弁(1)は弁頭(1a)と弁軸(1b)を備え、弁キャップ(2)は弁軸(1b)の端部(1c)に嵌合されている。
このため、弁軸(1b)の端部(1c)の磨耗を弁キャップ(2)で抑制することができる。
弁軸(1b)の端部(1c)は弁軸(1b)の上端部である。
【0027】
図1(A)に示すように、弁キャップ(2)は、弁軸(1b)の端部(1c)に回転可能に遊嵌されている。
図1(B)〜(E)に示すように、弁キャップ(2)の端壁(3)はオイル補給孔(3a)を備え、オイル補給孔(3a)は端壁(3)を貫通し、オイル補給孔(3a)のオイル入口(3b)は端壁(3)の外面(3c)で開口されている。
このため、弁キャップ(2)周辺のオイルミストや、弁キャップ(2)周辺で凝縮した凝縮オイルが、オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に流入し、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面が潤滑され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制することができる。
弁キャップ(2)は、端壁(3)が円形、周壁(4)が円筒形で、端壁(3)を天井壁とする伏せた碗形に形成されている。端壁(3)の外面(3c)は上面となる。
【0028】
図1(B)〜(E)に示すように、弁キャップ(2)の周壁(4)は内周にオイル案内溝(4a)を備え、オイル案内溝(4a)は弁キャップ(2)の中心軸線(2a)の軸長方向に沿っている。
このため、オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルミストや凝縮オイルが、オイル案内溝(4a)を経て、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面の広い範囲に速やかに案内され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
オイル案内溝(4a)は弁キャップ(2)の端壁(3)の内面(3d)となる下面から下向きに導出されている。
【0029】
図1(B)〜(E)に示すように、オイル案内溝(4a)のオイル出口(4b)は弁キャップ(2)の開口部(2b)側で開口されている。
このため、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面で発生した磨耗粉が、オイルで洗い流され、オイル案内溝(4a)を経て、弁キャップ(2)の開口部(2b)から速やかに流出し、磨耗粉による新たな磨耗が抑制され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
弁キャップ(2)の開口部(2b)は、弁キャップ(2)の下端部に設けられている。オイル案内溝(4a)のオイル出口(4b)は、オイル案内溝(4a)の下端に設けられている。
【0030】
図1(B)〜(E)に示すように、弁キャップ(2)の周壁(4)は内周に複数のオイル案内溝(4a)と複数の突条(4c)を備え、オイル案内溝(4a)と突条(4c)は、弁キャップ(2)の周壁(4)の周方向に沿って交互に配置されている。
このため、オイルが複数のオイル案内溝(4a)を経て、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に案内され、或いは、摺動面で発生した磨耗粉が、複数のオイル案内溝(4a)を経て、弁キャップ(2)の開口部(2b)から速やかに流出し、磨耗粉による新たな磨耗が抑制され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
オイル案内溝(4a)は30°毎に12個設けられ、突条(4c)も30°毎に12個設けられている。
すなわち、この実施形態では、弁キャップ(2)の周壁(4)は、内周に複数のオイル案内溝(4a)と、弁軸(1b)の端部(1c)の周面に当接する複数の突条(4c)を備え、オイル案内溝(4a)と突条(4c)は、弁キャップ(2)の周壁(4)の全周に亘り、その周方向に沿って交互に配置され、オイル案内溝(4a)は、弁キャップ(2)の周壁(4)の周方向に沿って、30°毎に設けられ、このオイル案内溝(4a)と突条(4c)は、それぞれ合計12個ずつ配置されていることを特徴とするエンジンの弁装置。
【0031】
図1(C)(D)に示すように、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)と平行な向きに見て、突条(4c)の突出端(4d)は凸円弧状に形成されている。
このため、突条(4c)の突出端(4d)が、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)の周面に滑らかに当接し、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
図1(C)(D)に示すように、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)と平行な向きに見て、オイル案内溝(4a)の凹入端は凹円弧状に形成されている。
【0032】
図1(B)〜(E)に示すように、弁キャップ(2)の端壁(3)は複数のオイル補給孔(3a)を備えている。
このため、複数のオイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給された多くのオイルミストや凝縮オイルが、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に案内され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。また、仮に、一部のオイル補給孔(3a)がロッカアーム(5)で一時的に塞がれても、他のオイル補給孔(3a)からオイルミストや凝縮オイルが弁キャップ(2)内に補給されるので、この点でも弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗を抑制する機能が高まる。
オイル補給孔(3a)は一対設けられている。
【0033】
図1(B)〜(E)に示すように、各オイル補給孔(3a)は端壁(3)の中央部(3e)から周壁(4)の内周寄りに偏倚されている。
このため、各オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルミストや凝縮オイルが、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に速やかに案内され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0034】
図1(B)〜(E)に示すように、対のオイル補給孔(3a)(3a)は、弁キャップ(2)の端壁(3)の中央部(3e)を間に挟んで、相互反対側に配置されている。
このため、対のオイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルが相互反対側の周壁(4)の内周に均等に分配され、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)が偏りなく潤滑され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。また、弁キャップ(2)の端壁(3)の中央部(3e)を間に挟んで、相互反対側に配置された対のオイル補給孔(3a)(3a)は、相互に遠い位置に離間し、ロッカアーム(5)等で同時に塞がれる不具合が起こりにくく、この点でも弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0035】
図1(B)〜(E)に示すように、弁キャップ(2)の周壁(4)は弁キャップ(2)の開口部(2b)側にテーパ面(4e)を備え、テーパ面(4e)は、弁キャップ(2)の開口部(2b)に向かって拡開している。
このため、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面で発生した磨耗粉が、オイルとともに、テーパ面(4e)を経て、弁キャップ(2)の開口部(2b)から速やかに流出し、磨耗粉による新たな磨耗が抑制され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
【0036】
図1(E)に示すように、テーパ面(4e)は、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)に対する傾斜角度(α)が12°とされている。
このため、図1(A)に示す弁軸(1b)の端部(1c)とテーパ面(4e)との隙間が適度な広さとなり、凝縮オイルが表面張力でテーパ面(4e)に保持されやすいととともに、磨耗粉が流出しやすく、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
テーパ面(4e)の傾斜角度(α)は、5°〜20°とするのが望ましい。5°未満になると、隙間が狭くなり過ぎ、磨耗粉の流出が妨げられ、20°を超えると、隙間が広くなり過ぎ、オイルが表面張力でテーパ面(4e)に保持されにくくなる。テーパ面(4e)の傾斜角度(α)は、10°〜15°とするのがより望ましい。
【0037】
次に、図4(A)〜(E)に示す参考形態について説明する。
図4(B)〜(E)に示すように、弁キャップ(2)の周壁(4)は内周に複数のオイル案内溝(4a)を備え、弁キャップ(2)の端壁(3)は中央部にオイル補給孔(3a)を備え、弁キャップ(2)の中心軸線(2a)と平行な向きに見て、対のオイル案内溝(4a)(4a)は、オイル補給孔(3a)を間に挟んで、相互反対側に配置されている。
このため、多くのオイルミストや凝縮オイルが複数のオイル案内溝(4a)を経て、図1(A)に例示する弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の摺動面に案内され、或いは、摺動面で発生した磨耗粉が、複数のオイル案内溝(4a)を経て、速やかに流出し、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。また、オイル補給孔(3a)から弁キャップ(2)内に補給されたオイルミストや凝縮オイルが相互反対側のオイル案内溝(4a)(4a)に均等に分配され、弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)が偏りなく潤滑され、この点でも弁軸(1b)の端部(1c)と弁キャップ(2)の磨耗抑制機能が高まる。
この参考形態では、オイル案内溝(4a)は一対だけ設けられているが、オイル案内溝(4a)は複数対であってもよい。
参考形態中、実施形態と同一の要素には、第1図(A)〜(E)と同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0038】
(1) ポペット弁
(1a) 弁頭
(1b) 弁軸
(1c) 端部
(2) 弁キャップ
(2a) 中心軸線
(2b) 開口部
(3) 端壁
(3a) オイル補給孔
(3b) オイル入口
(3c) 外面
(3e) 中央部
(4) 周壁
(4a) オイル案内溝
(4b) オイル出口
(4c) 突条
(4d) 突出端
(4e) テーパ面
図1
図2
図3
図4