(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置においては、再構成された情報を元のX線投影データの投影方向と同じ方向に順投影しているため、X線投影データのずれを特定するための基準が再構成された情報である。当該再構成された情報は、位置ずれ等が発生した状態でのX線投影データに基づいて生成されるため、従来の装置においては、位置ずれ等が発生した不正確な情報を基準にして補正を行っていることになる。従って、再構成された情報に基づいてX線投影データを補正したとしても、再構成された情報の品質が最良化されるとは限らない。上述の特許文献1においては、補正を繰り返し、再構成された情報の順投影結果とX線投影データとのずれを解消する構成が開示されているが、この構成であっても補正の基準が不正確であることに変わりはない。従って、補正の繰り返しの後であっても位置ずれ等に起因する誤差が解消されているとは限らない。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、放射線画像を撮影する撮影機構の位置ずれによって生じる撮影画像のずれを補正する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、撮影画像のずれ補正装置は、放射線画像を撮影する撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルの複数の放射線画像を予め基準画像として生成しておく。そして、サンプルの検査を行うために撮影した複数の放射線画像を補正対象画像とし、当該補正対象画像と基準画像との対応する画像同士の一致度が最大となるように補正対象画像を補正する。すなわち、撮影画像のずれ補正装置においては、補正の基準は、放射線画像を撮影する撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルの放射線画像である。従って、当該基準に対して合わせるように補正対象画像を補正することによって、位置ずれがない状態でサンプルを撮影した場合に得られるべき放射線画像を取得することができる。この結果、放射線画像を撮影する撮影機構の位置ずれによって生じる撮影画像のずれを高い精度で補正することができる。
【0006】
ここで、撮影画像のずれ補正装置は、任意のサンプルに放射線を照射し、透過放射線を含む複数の放射線画像を撮影する撮影機構を備えていれば良く、当該撮影機構の構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、サンプルと放射線発生器と放射線検出器との相対位置関係が固定された状態で撮影を行う撮影機構であっても良いし、サンプルと放射線発生器と放射線検出器との相対位置関係が変化する(例えば、ステージ上にサンプルが配置され、放射線発生器と放射線検出器とを結ぶ直線がステージに垂直な軸に対して傾斜しているとともに当該直線が軸を中心に回転する構成等)撮影機構であっても良い。なお、前者であれば、撮影機構の構成部における熱膨張や歪み、振動等が位置ずれとして発生し得る。後者であれば、撮影機構の構成部における熱膨張や歪み、放射線発生器と放射線検出器との相対位置関係の変化に伴う位置ずれ(位置決め精度ばらつき)、振動等が発生し得る。
【0007】
以上のように、透過放射線を含む放射線画像を撮影する撮影機構としては、種々の撮影機構が想定可能であるため、撮影画像のずれ補正装置は、当該撮影機構が利用される各種の装置に適用可能である。例えば、サンプルを透過させた放射線画像をN方向(Nは1以上の整数)から撮影し、各方向の放射線画像を加算合成した2次元画像を解析してサンプルの良否を検査する装置や、サンプルを透過させた放射線画像を複数の方向から撮影し、再構成演算を行った3次元画像を解析してサンプルの良否を検査する装置等に適用可能である。
【0008】
基準画像取得手段は、撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルの放射線画像として予め生成された複数の基準画像を取得することができればよい。すなわち、撮影機構の位置ずれは、上述のように、熱膨張や歪みによって発生し得るが、これらの周期性がある定常的なずれが補正された状態でサンプルを撮影した場合に得られるはずの放射線画像が基準画像として予め生成される。当該基準画像は予め所定の記録媒体に記録されており、基準画像取得手段は当該記録媒体を参照して基準画像を取得する。
【0009】
基準画像は、撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルの放射線画像を示していれば良く、少なくとも、補正対象画像が取得される前に予め生成されていれば良い。当該基準画像を生成するための手法としては、位置ずれが発生し得る撮影機構によってサンプルの放射線画像が撮影され、当該放射線画像を所定の座標系の座標軸方向に補正する等の処理によって基準画像が生成される手法等を採用可能である。
【0010】
以上のように、基準画像取得手段においては、撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルの放射線画像が取得できれば良い。ここで、撮影機構の位置ずれが発生していない状態は、事実上位置ずれが発生していないと見なすことができる状態であれば良く、位置ずれが最小限まで補正された状態も含む。
【0011】
補正対象画像取得手段は、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態でサンプルを撮影した放射線画像を補正対象画像として取得することができればよい。すなわち、サンプルを検査する場面等において、撮影機構を構成するステージや放射線発生器、放射線検出器等の動作等によって位置決めばらつき等が発生する状態でサンプルの複数の放射線画像が撮影され、補正対象画像として取得されれば良い。従って、当該補正対象画像は、サンプルの検査等を行うために撮影された画像である。
【0012】
撮影機構の位置ずれが発生し得る状態は、種々の状態が想定されるが、例えば、サンプルを複数の方向から撮影するため、撮影機構の構成要素(ステージ、放射線発生器、放射線検出器の少なくともいずれか)を駆動して各撮影位置に配置した状態が想定される。この場合であれば、位置決め精度ばらつきに起因する位置ずれが発生し得る状態となる。むろん、振動に起因して撮影機構の位置ずれが発生し撮影画像のずれが生じた状態において、本発明が実行されても良い。
【0013】
なお、基準画像を取得する際に撮影されるサンプルと補正対象画像を取得する際に撮影されるサンプルとは、同一のサンプルであるが、ここでいう同一は、理想的には(位置ずれが発生していなければ)サンプルの放射線画像が同一になるサンプルという意味である。従って、基準画像を取得する際に撮影されるサンプルと補正対象画像を取得する際に撮影されるサンプルは、物理的に完全同一なサンプルであっても良いし、例えば、同一製品番号の部品の異なる個体が各サンプルとなってもよい。なお、この場合、基準画像を取得する際に撮影されるサンプルは良品(基準のサンプル等)であり、補正対象画像を取得する際に撮影されるサンプルは良否不定(例えば、検査対象)である例が想定される。
【0014】
補正手段は、補正対象画像と基準画像との対応する画像同士の一致度が最大となるように補正対象画像を所定の座標系の座標軸方向に補正することができればよい。すなわち、補正対象画像と基準画像は、理想的には一致するはずである。そこで、両者の一致度が最大となるように補正対象画像を補正すれば、補正対象画像取得手段によって取得された補正対象画像を、撮影機構に位置ずれが発生していない場合に撮影された画像と一致するように補正することができる。
【0015】
一致度は、補正対象画像と基準画像との差異が少ないほど大きくなるように定義されていれば良く、種々の定義が可能であり、例えば、正規化相関等によって一致度を評価可能である。また、一致度を最大化するための処理としても種々の処理を採用可能であり、例えば、基準画像をテンプレートとして補正対象画像を補正するテンプレートマッチング等を採用可能である。画像同士の対応は、基準画像が補正対象画像の基準と見なせる対応であれば良く、例えば、複数の撮影角度で補正対象画像と基準画像とを撮影する場合において、撮影角度が同等である画像同士が対応していると見なすことができる。
【0016】
補正対象画像の補正は、所定の座標系の座標軸方向への補正であればよい。所定の座標系は、例えば、補正対象画像(放射線画像)の定義に利用される座標系や撮影機構の位置を定義するための座標系等が挙げられる。前者であれば、例えば、放射線検出器の検出面に平行な放射線画像の画素位置を規定するための直交座標軸(x軸,y軸)と当該検出面に垂直な座標軸(z軸)とによって構成される3次元直交座標系を想定可能である。この場合、x軸,y軸方向への補正は補正対象画像の並行移動となり、z軸方向への補正は補正対象画像の拡大または縮小となる。なお、補正は、全座標軸方向について行われても良いし、ずれが大きい限定された方向(例えば、x軸,y軸のみ)について行われてもよい。
【0017】
さらに、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態でサンプルを撮影した放射線画像に基づいて基準画像が予め生成されても良い。この構成例として、例えば、基準画像取得手段が、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態で複数の方向からサンプルを撮影した複数の放射線画像を取得し、当該放射線画像を所定の座標系の座標軸方向に補正し、補正後の放射線画像に基づいて再構成演算を実行し、得られた再構成情報の品質を評価する評価処理を、評価が最良になるまで繰り返した後の放射線画像を基準画像として取得する構成であっても良い。すなわち、撮影後の放射線画像の補正と補正後の画像による再構成演算と再構成情報の評価とを含む評価処理を反復的に繰り返しても良い。
【0018】
この場合、3次元再構成演算を実行できるように、複数の方向からサンプルが撮影されて、各撮影方向で撮影された放射線画像が取得されれば良い。このような撮影のための撮影方向としては、種々の態様を想定可能であるが、例えば、撮影機構がステージと放射線発生器と放射線検出器とを備える構成において、ステージ上にサンプルが配置され、放射線発生器と放射線検出器とを結ぶ直線がステージに垂直な軸に対して傾斜しているとともに当該直線が軸を中心に回転する構成等が挙げられる。当該回転は、種々の構成要素の動作によって実現可能であり、例えば、放射線発生器と放射線検出器との回転によって実現される構成や、放射線発生器が固定され、ステージの移動と放射線検出器の回転とによって実現される構成等が挙げられる。このように、撮影に際して構成要素の回転を伴う場合、回転のたびに位置決め精度ばらつきに起因する位置ずれが発生し得る状態となる。従って、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態で複数の放射線画像が取得されることになる。
【0019】
また、放射線画像の補正は、上述の補正手段における補正と同等の方向への補正であってよい。すなわち、所定の座標系は、例えば、放射線画像の定義に利用される座標系や撮影機構の位置を定義するための座標系等が挙げられる。また、補正は、放射線画像の並行移動や拡大縮小等が挙げられる。ここでも補正は、全座標軸方向について行われて良いし、限定された方向(例えば、x軸,y軸のみ)について行われてもよい。再構成演算は、撮影されたサンプルの3次元構造を示す再構成情報を複数の放射線画像に基づいて生成する演算であれば良く、種々の手法を採用可能である。
【0020】
再構成情報の品質の評価は、種々の手法を採用可能である。すなわち、再構成情報が示すサンプルの3次元構造が正確であるほど品質が高いと見なすことができるように評価が行われればよい。このような評価は、再構成情報を種々の手法で解析することによって実現可能であり、例えば、再構成情報から品質に関連する特徴量を取得し、当該特徴量に基づいて品質を評価する構成等を採用可能である。特徴量等に基づいて品質を評価することが可能であれば、放射線画像を試行的に反復補正し、当該評価が最良になるまで当該補正を含む評価処理を繰り返すことにより、実質的に位置ずれがない(位置ずれによる影響が最小化された)状態のサンプルの放射線画像である基準画像を取得することが可能である。
【0021】
特徴量は、再構成情報の品質を示す量であれば良く、例えば、再構成情報が示すサンプルのスライス画像に基づいて取得されても良い。すなわち、再構成情報に基づいてサンプルの検査等を行う際には、再構成情報に基づいてサンプルのスライス画像が取得される場合が多い(スライス方向は任意)。そこで、当該スライス画像に基づいて特徴量が取得され、当該特徴量に基づいて再構成情報が評価されると、当該スライス画像の品質が最良化されるように再構成情報の品質を最良化することができる。
【0022】
なお、スライス画像に基づいて取得される特徴量としては、例えば、サンプルのスライス面の画像の特徴を示す量やサンプルのスライス形状の特徴を示す量等が挙げられる。より具体的には、前者としては、スライス面の画像の輝度やエッジを評価する量(エッジ量や輝度ヒストグラム、サンプルのエッジ部分の画素の輝度ヒストグラム等)が挙げられる。後者としては、サンプルのスライス形状の真円度や粒子粗度等を評価する量が挙げられる。また、特徴量は、サンプルのスライス面の画像の特徴を示す量やサンプルのスライス形状の特徴を示す量等の統計値であっても良い。例えば、エッジ量や輝度ヒストグラム等の統計値(標準偏差や最大値、最小値、平均値、最頻値、中央値、歪度、尖度等)を採用可能である。
【0023】
いずれにしても、再構成情報の品質の良否に応じて値が変化する特徴量を定義し、当該特徴量を評価するための評価基準を予め設定しておけば、特徴量と評価基準とを比較することによって再構成情報の品質を評価することができる。評価基準は、比較対象となる値(閾値等)であっても良いし、評価手法の定義であっても良い。後者としては、例えば、特徴量としてエッジ部分の特定輝度値の度数分布が先鋭であるほど特徴量の品質が高い(エッジが鮮明)と評価する構成等であってもよい。さらに、上述の品質を示す特徴量を判定する対象としては、3次元再構成画像のスライス画像に限定されるものでなく、複数の透過画像を加算した合成情報(画像)中の基準点の画像であっても良い。
【0024】
さらに、撮影画像のずれ補正装置がずれの補正以外の機能を有していても良い。このような例としては、例えば、補正対象画像取得手段が、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態で複数の方向からサンプルを撮影した複数の放射線画像を補正対象画像として取得し、補正手段が当該補正対象画像を補正した後、検査手段が、補正後の補正対象画像に基づいて再構成演算を実行し、得られた再構成情報に基づいてサンプルを検査する構成であっても良い。すなわち、検査対象のサンプルの放射線画像を補正対象画像取得手段で取得し、補正手段で補正することにより、検査対象のサンプルの放射線画像から位置ずれによる影響が排除された状態で検査を行うことができる。この結果、検査精度を向上させることが可能である。
【0025】
以上は、本発明が装置として実現される場合について説明したが、かかる装置を実現する方法やプログラムを実現することも可能である。以上のような撮影画像のずれ補正装置は単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。むろん、発明の実施態様がソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。また、ソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。一次複製品、二次複製品などの複製段階についても同等である。その他、供給装置として通信回線を利用して行う場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態を、放射線にX線を用いた場合について説明する。
(1)X線検査装置の構成:
(2)基準画像生成処理:
(3)X線検査処理:
(4)他の実施形態:
【0028】
(1)X線検査装置の構成:
図1は本発明の一実施形態にかかる撮影画像のずれ補正装置を含むX線検査装置の概略ブロック図である。X線検査装置は、X線撮像機構部10と制御部20とを備えている。X線撮像機構部10は、X線発生器11とX線検出器12とX−Yステージ13とを備えている。X線撮像機構部10は、X−Yステージ13上のサンプルWとX線発生器11とX線検出器12とが所定の相対位置関係となった状態で、X線発生器11によってサンプルWにX線を照射させる。
【0029】
X線発生器11は、X線を出力するX線出力部11aを備えており、所定の強度でX線をサンプルWに照射することができる。X線検出器12は、X線の強度を検出する検出面12aを備えており、サンプルWを透過したX線の透過量を反映したX線画像を撮影することができる。撮影されたX線画像はX線画像データ26bとしてメモリ26に記録される。
【0030】
本実施形態においてサンプルWはX線検査の対象となるはんだ部分を備える部品(例えば、半田バンプで実装されるチップ等)であり、サンプルWはX−Yステージ13により、X線の照射範囲内で移動される。X−Yステージ13は、所定の平面(X−Y平面と呼ぶ)に沿って2次元的に移動対象(基板等)を移動させることが可能な装置であり、本実施形態においては、基板上のサンプルWをX−Y平面に沿って移動させる。なお、サンプルWのX−Yステージ13への搬送は、図示しない搬送機構によって実行される。すなわち、未検査のサンプルWが所定の平面に沿って搬入され、X線の照射範囲に配置され、検査された後に再度搬送機構によって搬出される。
【0031】
本実施形態において、X線発生器11とX線検出器12とX−Yステージ13とが、サンプルにX線を照射し、透過X線を含むX線画像を撮影する撮影機構を構成している。撮影機構においては、X線発生器11とX線検出器12とサンプルWとの相対位置関係を変化させることができ、サンプルWとX線出力部11aと検出面12aとの相対位置関係を所定の関係に調整可能である。
【0032】
図2Aは、X線がサンプルWに照射される様子を示す模式図であり、同図においては、横方向がX−Y平面に平行な方向であり、上下方向がX−Y平面に垂直なZ方向である。同
図2Aにおいては、サンプルW、X−Y平面S、X線発生器11のX線出力部11aおよびX線検出器12の検出面12aを模式的に示している。
【0033】
本実施形態において、X線出力部11aはZ軸を含む所定の立体角の範囲にX線を出力する。X線出力部11aからX線の出力範囲のほぼ中央においてZ軸方向に平行に延びる軸(
図2Aに示すA軸)を回転中心としてX線検出器12の検出面12aが回転する。当該回転においては、X線出力部11aと検出面12aの中央とを結ぶ直線Lと検出面12aとが常に垂直な状態となるように検出面12aの向きが変化しながら回転移動が行われるように設計されている(軸Aと直線Lとの角度はD)。
【0034】
また、X−Yステージ13は、検出面12aの回転移動に同期させ、X線出力部11aと検出面12aの中央とを結ぶ直線L上にサンプルWが配置されるように当該サンプルWを移動させるように設計されている。すなわち、撮影が行われる際には、検出面12aおよびサンプルWが
図2Aに示す破線の矢印に沿って回転するように検出面12aの回転とX−Yステージ13によるサンプルWの移動が行われる。本実施形態においては、A軸周りの回転角が異なる複数の撮影位置でサンプルWが撮影されることにより、複数の方向から撮影されたX線画像が取得される。むろん、回転移動のための構成は一例であり、サンプルWを固定し、X線出力部11aおよび検出面12aが回転移動される構成等であっても良い。
【0035】
いずれにしても、撮影機構においては、可動部を移動させて異なる撮影位置に可動部を配置する構成が採用されているため、可動部の移動のたびに位置決め精度ばらつきに起因する位置ずれが発生し得る。また、撮影機構においては、熱膨張や歪み等に起因する位置ずれが発生し得る。なお、熱膨張に起因する位置ずれは、熱平衡状態で撮影するとともに当該状態における熱による位置ずれの程度を予め特定することで補正することができ、歪みに起因する位置ずれは、歪みによる位置ずれの程度を予め特定することで補正することができる。従って、本実施形態において、熱膨張や歪み等に起因する位置ずれの影響が実質的になくなるように予めX線画像が補正されていても良い。しかし、位置決め精度ばらつきに起因する位置ずれの程度は、可動部が移動するたびに異なる程度になるため、予め位置ずれの程度を特定することができない。従って、本実施形態における撮影機構においては、位置ずれが発生し得る状態でX線画像を撮影することになる。
【0036】
次に制御部20について説明する。制御部20は、発生器制御部21と撮影画像取得部22と撮影機構制御部23と入力部24と出力部25とメモリ26とCPU27とを備えている。メモリ26はデータを記憶可能な記憶媒体であり、プログラムデータ26aとX線画像データ26bと基準画像データ26cとが記憶される。CPU27は、プログラムデータ26aを読み出して実行することにより、後述する各種処理のための演算を実行する。なお、メモリ26はデータを記憶することができればよく、RAMやEEPROM,HDD等種々の記憶媒体を採用可能である。
【0037】
撮影機構制御部23はX線発生器11,X線検出器12およびX−Yステージ13を制御し、サンプルWのX線画像を撮影する撮影位置および倍率となるようにX−Yステージ13の位置と検出面12aの位置およびX線出力部11aの高さを調整する。発生器制御部21は、X線発生器11を制御し、X線発生器11からサンプルWに対してX線を照射させる。撮影画像取得部22は、X線検出器12が検出したX線の強度、すなわち透過量の画像を示すX線画像データ26bを取得する。X線画像データ26bは複数の画素の階調値によって構成される画像データであり、各画素の階調値はX線検出器12が検出したX線の強度を示す。基準画像データ26cは、撮影機構の位置ずれが発生していない状態におけるサンプルWのX線画像を示すデータであり、サンプルWの検査前に予め生成され、メモリ26に記録される。
【0038】
出力部25はサンプルWの検査結果等を表示するディスプレイであり、入力部24は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。CPU27は、サンプルWに含まれるサンプルWの良否判定を行うために、プログラムデータ26aに基づいて基準画像取得部27aと補正対象画像取得部27bと補正部27cと検査部27dとの各機能を実行する。
【0039】
上述のように、本実施形態にかかる撮影機構においては、位置ずれの程度を予め特定することが困難であるため、CPU27は、サンプルWのX線画像を撮影するたびに当該X線画像を補正対象画像とし、位置ずれが発生していない状態の画像と同等になるように補正を行う。このため、本実施形態においては、検査対象のサンプルWと同一のサンプル(同一製品番号のサンプル)のうち、良品とされるサンプルが基準として予め選定される。
【0040】
本実施形態において撮影画像のずれ補正装置は、CPU27が基準画像取得部27aと補正対象画像取得部27bと補正部27cと(検査部27dが含まれていても良い)によって撮影画像のずれを補正する機能を実行可能になっている状態として実現されている。基準画像取得部27aは、基準画像を取得する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、発生器制御部21,撮影画像取得部22,撮影機構制御部23に対して所定の指示を出力し、基準のサンプルのX線画像を撮影する。そして、CPU27は、基準となったサンプルのX線画像に基づいて評価処理を行うことで、位置ずれが発生していない状態でのX線画像を取得し、基準画像データ26cとしてメモリ26に記録する。なお、当該X線画像の撮影は撮影機構の位置ずれが発生し得る状態で実行されるが、後述する基準画像生成処理が実行されることにより、当該X線画像が補正され、撮影機構の位置ずれが発生していない状態で基準のサンプルを撮影したX線画像と等価な画像が得られ、基準画像データ26cとされる。
【0041】
補正対象画像取得部27bは、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態でサンプルWを撮影したX線画像を補正対象画像として取得する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、補正対象画像取得部27bの処理により、発生器制御部21,撮影画像取得部22,撮影機構制御部23に対して所定の指示を出力し、サンプルWを撮影する。撮影によってX線画像が取得されると、CPU27は、メモリ26にX線画像データ26bとして記録する。本実施形態においては、サンプルWについてのX線画像が補正対象画像となる。
【0042】
補正部27cは、補正対象画像と基準画像との一致度が最大となるように補正対象画像を所定の座標系の座標軸方向に補正する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、補正部27cの処理により、基準画像データ26cをテンプレートとし、X線画像データ26bが示す補正対象画像を補正するテンプレートマッチング処理を行う。本実施形態において、補正の基準となる基準画像は、撮影機構の位置ずれが発生していない状態における基準のサンプルのX線画像である。また、基準のサンプルは、その理想的なX線画像が評価対象のサンプルWのX線画像と理想的には一致するようなサンプルである。従って、基準画像に対して合わせるようにサンプルWのX線画像である補正対象画像を補正することによって、位置ずれがない状態でサンプルを撮影した場合に得られるべきX線画像を取得することができる。この結果、高い精度でX線画像を撮影する撮影機構の位置ずれを補正することができる。
【0043】
検査部27dは、補正後の補正対象画像に基づいて再構成演算を実行し、得られた再構成情報に基づいてサンプルWを検査する機能をCPU27に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、CPU27は、補正後の補正対象画像に基づいて再構成演算を実行する。再構成情報は、サンプルWのX線の吸収量に応じた階調値を3次元空間内の座標毎に示しているため、CPU27は、当該階調値に基づいてサンプルWの3次元構造を解析する。
【0044】
例えば、CPU27は、再構成情報が示すサンプルWの3次元構造をX,Y平面に平行な方向にスライスし、得られたスライス画像からサンプルWの特徴量を取得し、当該特徴量を基準と比較することにより、サンプルWの良否判定を行う。補正後の補正対象画像は、位置ずれがない状態でサンプルを撮影した場合に得られるべきX線画像と等価であるため、本実施形態によれば、高精度にサンプルWの検査を行うことができる。
【0045】
(2)基準画像生成処理:
図3は、基準画像生成処理を示すフローチャートである。当該基準画像生成処理は、基準とされたサンプルがX線の照射範囲に搬送された後に実行される。基準画像生成処理において、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、CT撮影処理を行う(ステップS100)。すなわち、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、発生器制御部21,撮影画像取得部22,撮影機構制御部23に対して所定の指示を出力し、Z軸方向に傾斜した角度でX線が基準のサンプルに照射されるように、各部の配置を調整する。さらに、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、発生器制御部21を制御してX線発生器11から所定強度のX線を出力させ、撮影画像取得部22を介して所定のタイミングでX線画像データ26bを取得する。さらに、CPU27は、以上のようにX線画像データ26bを撮影する処理を、軸A(
図2A参照)を回転軸とした回転を行った後の複数の撮影位置で実行し、複数の撮影位置で撮影したX線画像データ26bをメモリ26に記録する。なお、撮影位置は、評価対象のサンプルWを撮影する際の位置と同等である。すなわち、撮影回数および軸Aを回転軸とした回転角度は評価対象のサンプルWを撮影する際の撮影回数および回転角度と同一である。
【0046】
次に、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、再構成演算処理を実行する(ステップS110)。再構成演算は、基準のサンプルの3次元構造を再構成することができれば良く、種々の処理を採用可能である。例えば、フィルタ補正逆投影法を採用可能である。この処理においてCPU27は、まず、複数のX線画像のいずれかに対してフーリエ変換を実施し、フーリエ変換で得られた結果に対して周波数空間でフィルタ補正関数を乗じる。さらに、この結果に対して逆フーリエ変換を実施することで、フィルタ補正を行った画像を取得する。尚、このフィルタ補正関数は、画像のエッジを強調するための関数等を採用可能である。
【0047】
続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。すなわち、X線検出器12の検出面12aにおけるある位置の像に対応する軌跡は、X線発生器11の焦点とこの位置とを結ぶ直線であるので、この直線上に画像を逆投影する。以上の逆投影を複数のX線画像のすべてについて行うと、3次元空間上で基準のサンプルが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、基準のサンプルの3次元形状を示す再構成情報が得られる。
【0048】
次に、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、特徴量を取得する(ステップS120)。特徴量は、再構成情報の品質を示す量であれば良く、本実施形態において、CPU27は、再構成情報が示す基準のサンプルの3次元形状をX−Y平面に平行な方向にスライスし、得られたスライス画像に基づいて特徴量を取得する。より具体的には、CPU27は、基準のサンプルのスライス面の画像の特徴を示す量を特徴量として取得する。すなわち、CPU27は、スライス面の画像のエッジ領域の輝度ヒストグラムを特定し、当該輝度ヒストグラムの標準偏差を特徴量として取得する。
【0049】
図2B,
図2Cは、半田バンプの再構成情報のスライス例を示す図である。これらのスライス画像は同一の半田バンプの再構成情報に基づいて生成された画像であるが、
図2Bは撮影機構の位置ずれが発生したスライス画像であり、
図2Cは撮影機構の位置ずれが発生していないスライス画像である。これらのスライス画像において中央に存在する白い部分(円形の部分)は半田バンプであり、半田バンプの周囲の黒い部分は半田バンプが存在しない部分、半田バンプの中央の黒い部分は半田バンプ中のボイド(ただし、半田バンプは不良ではない)である。撮影機構の位置ずれが発生した状態においては、
図2Bに示すように半田バンプの境界部分が曖昧であるとともに形状が円形ではない。一方、撮影機構の位置ずれが発生していない状態においては、
図2Cに示すように半田バンプの境界部分が明瞭であるとともに形状が円形である。また、撮影機構の位置ずれが発生した状態においては、
図2B、
図2Cに示すように半田バンプの周囲に、半田バンプが存在しないにもかかわらず白くなっている部分(アーチファクト)が形成されているが、当該部分は位置ずれが発生している状態の方が濃くなっている。さらに、撮影機構の位置ずれが発生した状態においては、当該アーチファクトと半田バンプの境界が曖昧である。
【0050】
従って、スライス画像におけるエッジ領域の特徴を解析すれば、再構成情報の品質を評価することができる。そこで、CPU27は、基準のサンプルのX線画像を示すX線画像データ26bから生成された再構成情報からスライス画像を取得し、当該スライス画像内のエッジ画素を特定する。エッジ画素は、種々の手法で特定可能であり、例えば、SobelフィルタやPrewittフィルタなど、種々のフィルタで特定可能である。さらに、CPU27は、エッジ画素を含む所定の画素の範囲(例えばエッジ画素から既定画素数分の範囲)をエッジ領域として特定し、再構成情報に基づいて当該エッジ領域に含まれる画素の輝度値を取得する。
【0051】
図2D、
図2Eは、輝度値のヒストグラムを示すグラフであり、
図2Dは
図2Bに示すスライス画像のエッジ領域の画素の輝度ヒストグラム、
図2Eは
図2Cに示すスライス画像のエッジ領域の画素の輝度ヒストグラムである。これらのグラフにおいて、横軸は輝度値、縦軸は度数であり、各輝度値の度数は曲線によって模式的に示されている。
図2B,
図2Cに示されるように、エッジ領域においてはエッジより内側の高輝度の部分とエッジより外側の低輝度の部分が存在する。従って、
図2D,
図2Eに示すグラフにおいては、低輝度側と高輝度側の1カ所ずつに度数のピークが生じている。
【0052】
そして、
図2Eに示すグラフにおいては、
図2Cに示すスライス画像のエッジが明瞭であることを反映し、低輝度側と分布D
Lと高輝度側の分布D
Hとが明確に区別されている。一方、
図2Dに示すグラフにおいては、
図2Bに示すスライス画像のエッジが不明瞭であることを反映し、低輝度側と分布D
Lと高輝度側の分布D
Hとが明確に区別されていない。さらに、
図2Eに示すグラフと
図2Dに示すグラフとを比較すると、
図2Cに示すスライス画像のエッジが
図2Bに示すスライス画像のエッジよりも明瞭であることを反映し、
図2Eの方が
図2Dよりも分布D
L,D
H同士の距離が長い。
【0053】
従って、
図2Eに示すグラフは
図2Dに示すグラフよりも輝度ヒストグラムの標準偏差が大きくなり、エッジが明瞭であるほど当該標準偏差は大きくなると考えられる。そこで、CPU27は、ステップS120において、スライス面の画像のエッジ領域の輝度ヒストグラムを特定し、当該輝度ヒストグラムの標準偏差を特徴量として取得する。
【0054】
次に、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、補正量を取得し(ステップS130)、当該補正量でX線画像を補正する(ステップS140)。すなわち、本実施形態においては、輝度ヒストグラムの標準偏差を特徴量として取得しており、CPU27は、当該特徴量が大きければ大きいほど再構成情報の品質が良いと見なす。この前提においてCPU27は、当該特徴量が大きくなるようにX線画像を微少量だけ移動させて補正し、補正後の画像で再構成演算を再度実行し評価を行う処理を繰り返すことで、特徴量を最大化する(評価を最良化する)。
【0055】
なお、特徴量の最大化のためには、補正量を解析的に求めることも可能であるが、時間短縮の方法として、X線画像の補正量の最適解を反復処理によって求めることが可能である。具体的には、反復処理の一手法として勾配法、例えば最急降下法を用いることができる。最急降下法の場合、例えば、CPU27は、ステップS110で再構成演算に使用したX線画像に対する補正量をパラメータxとして、ステップS120で取得された特徴量(輝度ヒストグラムの標準偏差)が大きいほど、パラメータxを引数として用いる評価関数f(x)の評価値が小さくなる評価関数を定義し、当該評価関数を最小化する。
【0056】
また、本実施形態において、補正は、X線検出器12の検出面12aに平行な座標軸(x軸、y軸)と検出面12aに垂直な座標軸(z軸)とのいずれに対して実行しても良い。すなわち、CPU27は、一枚のX線画像(ある回転角度で撮影されたX線画像)に対して3方向の自由度で補正を行うことができる。そこで、CPU27は、全座標軸方向、または限定された方向(例えば、x軸,y軸のみ)について補正を行う。また、一回の補正における補正対象のX線画像は一枚であっても良いし、複数枚であっても良い。いずれにしても、CPU27は、既定のアルゴリズムによって特徴量を最大化するための補正を段階的に行うため、ステップS130で補正量を取得し、ステップS140でX線画像を補正する。
【0057】
次に、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、終了条件を充足したか否かを判定する(ステップS150)。すなわち、特徴量の最大化アルゴリズムにおいては、特徴量が十分大きい値に収束したか否かを判定するための条件が終了条件として予め特定されている。そこで、CPU27は、当該終了条件が充足したか否かを判定する。むろん、評価回数の上限値が終了条件に含まれていても良い。ステップS150において、終了条件が充足したと判定されない場合、CPU27は、ステップS110以降の処理を繰り返す。すなわち、CPU27は、ステップS140にて補正されたX線画像を利用して再構成演算処理を行い、特徴量の最大化のための処理を繰り返す。
【0058】
以上のように、補正と再構成演算と評価とを含む評価処理が繰り返されて特徴量が最大化されることにより、撮影機構の位置ずれが発生し得る状態で撮影されたX線画像から位置ずれによる影響が除去される。例えば、撮影機構の位置ずれによって
図2Bに示すようにスライス画像が乱れていた場合であっても、評価処理が繰り返されることにより、
図2Cに示すように高品質のスライス画像が得られるようにX線画像を補正することができる。
【0059】
ステップS150において、終了条件が充足したと判定された場合、CPU27は、基準画像取得部27aの処理により、基準画像を取得する(ステップS160)。すなわち、CPU27は、最後に実行されたステップS140において得られた補正後のX線画像を基準画像とみなし、当該基準画像を示すX線画像データを基準画像データ26cとしてメモリ26に記録する。以上の結果、撮影機構の位置ずれが発生している状態で基準のサンプルのX線画像が取得されたとしても、当該位置ずれの影響が排除された基準画像が取得される。
【0060】
(3)X線検査処理:
図4は、X線検査処理を示すフローチャートである。当該X線検査処理は、評価対象のサンプルWがX線の照射範囲に搬送された後に実行される。X線検査処理において、CPU27は、補正対象画像取得部27bの処理により、X線検出器12の回転角に対応する変数nを1に初期化する(ステップS200)。
【0061】
次に、CPU27は、補正対象画像取得部27bの処理により、n番目の撮影位置にX線検出器12の検出面12aを移動させ、n番目の補正対象画像を撮影する(ステップS210)。すなわち、X線検出器12の検出面12aを1回転させる過程でのサンプルWの撮影回数は予め決められており、nが1の場合、CPU27は、撮影機構制御部23に制御信号を出力し、X−Yステージ13およびX線検出器12を制御して初回撮影位置に移動させる。
【0062】
nが2以上の場合、CPU27は、初回撮影位置から(360/撮影回数)×nの角度が検出面12aの角度であると見なし、撮影機構制御部23に制御信号を出力し、X線検出器12を制御して当該角度に検出面12aを配置する。また、CPU27は、撮影機構制御部23に制御信号を出力し、X−Yステージ13を制御して検出面12aとX線出力部11aとを結ぶ直線L上にサンプルWを配置する。変数nによって指定される回転角度は、基準のサンプルの撮影における回転角度と同一である。
【0063】
移動が完了すると、CPU27は、発生器制御部21に制御信号を出力し、X線発生器11からX線を出力させる。この結果、X線発生器11からX線が出力されると、サンプルWを透過したX線を含むX線がX線検出器12で検出される。そこで、CPU27は、撮影画像取得部22に制御信号を出力し、X線検出器12が出力するX線画像を取得し、X線画像データ26bとしてメモリ26に記録する。当該X線画像データ26bは、補正対象画像を示すデータとなる。
【0064】
次に、CPU27は、補正部27cの処理により、n番目の基準画像を取得する(ステップS220)。すなわち、基準画像を生成するためのX線画像の撮影と、評価対象のサンプルWのX線画像の撮影とは、回転軸A(
図2A参照)に対して互いに同一の回転角において行われる。そこで、CPU27は、ステップS210においてn番目のX線画像を撮影した際の回転角度と同一の回転角度で撮影されたX線画像に基づいて生成された基準画像を特定し、基準画像データ26cの中から当該基準画像を示す情報を取得する。
【0065】
次に、CPU27は、補正部27cの処理により、マッチング処理を行う(ステップS230)。すなわち、CPU27は、n番目の撮影位置における補正対象画像とn番目の撮影位置における基準画像との一致度が最大となるように補正対象画像を移動させるテンプレートマッチング処理を行う。補正対象画像と基準画像は理想的には両者は一致するはずであるが、撮影機構の位置ずれが発生し得る状況で補正対象画像が撮影されるため、通常の場合両者は一致しない。そこで、両者の一致度が最大となるように補正対象画像を補正すれば、補正対象画像取得手段によって取得された補正対象画像を、撮影機構に位置ずれが発生していない場合に撮影された画像と一致するように補正することができる。
【0066】
このような補正のため、CPU27は、正規化相関等によって一致度を評価したテンプレートマッチングにより、補正対象画像を座標軸方向に補正する。当該補正の方向は、X線検出器12の検出面12aに平行な座標軸(x軸、y軸)と検出面12aに垂直な座標軸(z軸)とのいずれに対して実行しても良く、3軸方向のいずれかについて補正が行われてもよい。
【0067】
以上のようにしてn番目の補正対象画像の補正が行われると、CPU27は、検査部27dの処理により、逆投影処理を実行する(ステップS240)。すなわち、CPU27は、上述のステップS100と同様に、補正後の補正対象画像に基づいて、フィルタ補正を行った画像を取得する。続いて、フィルタ補正後の画像を、それが投影された軌跡に沿って3次元空間へ逆投影する。
【0068】
次に、CPU27は、検査部27dの処理により、nが予め決められた最大値Nであるか否かを判定し(ステップS250)、nが最大値Nであると判定されない場合、nをインクリメントしてステップS210以降の処理を繰り返す。ステップS250において、nが最大値Nであると判定された場合、CPU27は、検査部27dの処理により、サンプルWを検査する(ステップS260)。すなわち、ステップS260が実行される場合、nが1〜最大値NまでのそれぞれについてX線画像が撮影され、補正された後に逆投影が行われた状態となる。この状態は、3次元空間上で基準のサンプルが存在する部分のX線吸収係数分布が強調され、基準のサンプルの3次元形状を示す再構成情報が得られた状態である。
【0069】
そこで、CPU27は、当該再構成情報に基づいて、例えば、スライス画像を取得し、当該スライス画像に基づいてサンプルWの特徴を示す特徴量を取得する。そして、CPU27は、当該特徴量と評価基準とを比較することにより、サンプルWの良否を判定する。この結果、CPU27は、高精度にサンプルWの検査を行うことができる。
【0070】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、基準画像に一致するように補正対象画像を補正する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述の実施形態は、
図3のフローチャートのように、サンプルWを複数の撮影位置で撮影した透過画像を逆投影し、求めた3次元再構成画像のスライス画像のエッジの特徴量が大きくなるようにX線画像を補正し基準画像を取得する例を示した。しかし、3次元再構成画像のスライス画像に代えてX―Yステージ上に載せた基準点(例えば、
図2Cに示す円形の透過画像が得られるマーク)を含むサンプルを複数の方向で撮影した透過画像の加算合成画像のずれを補正するずれ補正に本発明を適用することが可能である。
【0071】
具体的には、同
図3のステップS110における再構成演算処理を加算合成処理とし、加算した合成画像のエッジの特徴量が最大(鮮明)となるように、同
図3のステップS120〜S150の処理を繰返し実行し個々のX線画像データの基準画像を取得すればよい。すなわち、上述の実施形態のように複数のX線画像データの位置を微小量ずつ移動(=ステップS130,S140)することにより、当該加算合成画像に生じるエッジの特徴量が最大となる基準画像を求めることができる。そして、上記実施形態のように、補正対象画像をマッチング処理することで補正した画像の加算合成画像を求め、サンプルの検査を行う。
【0072】
また、撮影機構は、X線検出器12とX−Yステージ13が同じ方向に直線的に移動して撮影する構造であってもよく、撮影された3次元画像又は2次元画像の位置ずれ補正に本願発明を適用することが可能である。すなわち、本願発明は、撮影された画像又は撮影機構の種類に限定されるものではなく、撮影した複数のX線画像の各々を微小量移動して加算した合成画像の特徴量を、例えば、エッジの鮮明度の変化やボケ成分の減少による輝度値の変化等から撮影画像の位置ずれを補正する装置および方法に適用することが可能である。さらにまた、本願発明は、X−Yステージ(サンプルを含む)やX線検出器の振動等により撮影画像がずれる場合も、上記と同様に本願発明を適用することが可能である。
【0073】
一方、サンプルWは半田バンプを備える実装部品に限定されず、メッキ充填されたスルーホールを備える基板等であっても良いし、半田等によって実装されるリード部品等であっても良い。また、検査のための処理は、上述の例に限定されない。例えば、サンプルW内のボイドの有無等に基づいて検査が行われてもよい。さらに、上述の実施形態においては、X線を利用しているが、検査対象を透過する他の放射線、例えば、ガンマ線等が利用されてもよい。