(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
地下施設の山留壁には、高い地下水圧が加わる。この水圧による地下施設への水漏れを防止するために、従来から各種の止水構造が採用されている。山留壁とコンクリート壁との間には防水シートが挟み込まれる。しかし、防水シートをセパレータが貫通するのでその部分の水漏れ防止が必要になる。そこで、これを解決するための技術が開発されている(特許文献3〜6参照)。
【0007】
特許文献1や2に記載された技術に特許文献3〜6に記載された技術をそのまま適用しても、部品点数が多くなり、施工のための作業が複雑になる。しかも、大深度地下施設における高い地下水圧に耐えるためには、新たな施工方法の開発が望まれる。
本発明は以上の点に着目してなされたもので、高い防振性と止水性を備え、施工性のよいコンクリート型枠支持体と、これを施設するための地下コンクリート壁の施工方法と、セパレータ接続金具と、この工法により建設された防振止水壁とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
【0009】
<構成1>
地下の山留壁に対して、コンクリート型枠を支持するための、下記の構造を有することを特徴とするコンクリート型枠支持体。
(1)上記山留壁に固定され、山留壁全面を覆うように配置された弾性壁材の貫通孔から一端を突き出させる連結金物
(2)上記連結金物の一端にはめられて上記弾性壁材の貫通孔の周囲に密着するように配置されるワッシャ
(3)上記弾性壁材を隙間無く覆う防水シートの貫通孔から突き出した上記連結金物の一端にはめられ、弾性体により構成される止水リング
(4)上記連結金物の一端にその一端が接続され、パイプ内に流れ込む地下水を遮断する止水仕切を設けた調整パイプ
(5)上記調整パイプの他端にその一端を連結され、他端を上記コンクリート型枠に接続されるセパレータ金物
(6)上記調整パイプと上記セパレータ金物の外周面全体を覆う鞘管状の弾性材
(7)上記止水リングと上記ワッシャは、上記防水シートの貫通孔周辺部を両側から挟むように配置され、上記止水リングの上記防水シートと密着する面には、粘着性止水材が塗布されている。
(8)上記調整パイプの一端が上記止水リングの貫通孔を突き抜け、上記ワッシャと上記調整パイプの一端とで、上記防水シートの貫通孔周辺部を両側から挟むように配置されている。
【0014】
<構成2>
上記ワッシャの内径をdwとし、上記調整パイプの外径をD2としたとき、D2をdwより大きく選定したことを特徴とする
構成1に記載のコンクリート型枠支持体。
【0015】
<構成3>
上記ワッシャの外径をDwとし、
上記止水リングの施工後の外径をD1としたとき、D1をDw以上に選定したことを特徴とする
構成1または2に記載のコンクリート型枠支持体。
【0016】
<構成4>
上記調整パイプの外径をD2としたとき、装着前の止水リングの貫通孔の内径をd2としたとき、D2をd2より大きく選定したことを特徴とする
構成1乃至3のいずれかに記載のコンクリート型枠支持体。
【0017】
<構成5>
地下の山留壁に対して、以下の手順でコンクリート型枠支持体を取り付けることを特徴とする地下コンクリート壁の施工方法。
(1)上記山留壁に、上記コンクリート型枠の支持に必要な数の連結金物を固定する。
(2)上記山留壁に固定された上記連結金物に弾性壁材を押し当てて、上記連結金物の一端が上記弾性壁材を突き破るようにして貫通孔を空けて、上記連結金物の一端を上記弾性壁材から突き出させる。
(3)同様の作業を繰り返して、必要数の弾性壁材により上記山留壁の全面を覆う。
(4)上記弾性壁材から突き出した上記連結金物の一端にワッシャをはめる。
(5)上記ワッシャを、上記弾性壁材の貫通孔の周囲に密着するように配置して仮固定する。
(6)上記連結金物の一端に防水シートを押し当てて、上記連結金物の一端が上記防水シートを突き破るようにして貫通孔を空けて、上記連結金物の一端を上記防水シートから突き出させる。
(7)上記防水シートの貫通孔から突き出した上記連結金物の一端に、弾性体により構成された止水リングをはめる。
(8)上記止水リングと上記ワッシャは、上記防水シートの貫通孔周辺部を両側から挟むように配置する。上記止水リングの上記防水シートと密着する面には、粘着性止水材を塗布しておく。
(9)上記連結金物の一端に調整パイプを接続する。この調整パイプには、パイプ内に流れ込む地下水を遮断する止水仕切を設けておく。
(10)上記調整パイプの先端が上記止水リングの貫通孔を突き抜けて、上記ワッシャと上記調整パイプとで、上記防水シートの貫通孔周辺部を両側から挟むようにする。
(11)上記調整パイプの他端に、セパレータ金物の一端を連結する。
(12)上記調整パイプと上記セパレータ金物の外周面全体を覆うように鞘管状の弾性材を装着する。
(13)上記セパレータ金物の他端を上記コンクリート型枠に接続する。
【0021】
<構成6>
山留壁と弾性壁材と防水シートとコンクリート壁とを順に配置し、コンクリートの型枠の支持に必要な数の、
構成1乃至4のいずれかに記載のコンクリート型枠支持体を埋め込んだ防振止水壁。
【発明の効果】
【0022】
<構成1と構成5の効果>
弾性壁材は山留壁から直接コンクリート壁に伝わる振動およびその振動に起因する音(固体伝搬音)を減衰させる。調整パイプとセパレータ金物の外周面に鞘管状の弾性材を配置したので、コンクリート壁に埋め込まれた型枠支持体を伝わる振動およびその振動に起因する上記の音を減衰させることができる。調整パイプや止水リングとワッシャとで防水シートの貫通孔周辺部を両側から挟むので、この部分の漏水を確実に阻止することができる。
<構成2の効果>
調整パイプの外径をワッシャの内径より大きくしておけば、調整パイプの先端が防水シートを押しながらワッシャに突き当たり、調整パイプとワッシャとで防水シートの貫通孔周辺を確実に挟み込むことができる。
<構成3の効果>
ワッシャの周囲が防水シートを介して直接コンクリート壁に接していると、連結金物とワッシャを通じてコンクリート壁に振動が伝わりやすい。止水リングの外径をワッシャの外径よりも大きくしておくと、この経路の振動伝搬を抑えられる。
<構成4の効果>
止水リングは弾性体である。止水リングの貫通孔を押し広げるように調整パイプの先端を通すことで、止水リングと調整パイプとが強く密着して、十分な止水効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は実施例1のコンクリート型枠支持体12を示す地下構造物の壁面縦断平面図である。
図2から
図11までは、コンクリート型枠支持体12の組み立て工程を順に示す壁面縦断側面図である。
図のように、地下の山留壁14に沿って、コンクリート壁16を施工する。このコンクリート壁16を施工する際に、コンクリートの型枠18を多数のコンクリート型枠支持体12で支持する。破線のように、施工後は、型枠18は除去されるが、多数のコンクリート型枠支持体12はコンクリート壁16に埋め込まれたままになる。この場合に、この実施例の構造は、山留壁14からコンクリート型枠支持体12を通じてコンクリート壁16に伝わる振動を効果的に減衰させる。
【0026】
図1に示すように、山留壁14とコンクリート壁16の間には弾性壁材32が配置される。弾性壁材32は山留壁14から直接コンクリート壁16に伝わる音や振動を減衰させるためのものである。この山留壁14は、H形鋼や鋼矢板等の鋼材が打ち込まれた構造をしている。地下施設施工時の際に始めに設けられるもので、例えば、ソイルセメント壁、親杭矢板壁、鋼矢板壁、コンクリート連壁等の任意の土留め用の壁である。
【0027】
図2は最初の工程を示す壁面縦断面図である。
まず、
図2に示すように、山留壁14に、ビット連結部20をねじ込んで固定する。この実施例では、ビット連結部20は山留壁14に設けられたH形鋼等に固定される。山留壁14は、ビット連結部20が固定できる構造であれば種類を問わない。ビット連結部20が固定できない構造の山留壁14の場合には、後で説明するが、他の構造の任意の連結金具を採用すればよい。弾性壁材32は、例えば、発砲ポリエチレン等の板である。厚みは、例えば、25mm〜100mm程度のものである。縦横1〜2m程度の平板状のもので、山留壁14の内側に沿って隙間なく並べて、山留壁14全面を覆うように配置される。
【0028】
例えば、ビット連結部20は、特許文献3〜6等により紹介されたものである。これは高強度の鉄合金により構成され、一方にタップねじ部22を有し、他方に連結ねじ部24を有している。タップねじ部22は、山留壁14を構成するH形鋼等に設けたタッピング孔にタップを切りながらねじ込まれる部分である。
【0029】
図3は2番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図4は3番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図3と
図4に示すように、ビット連結部20の連結ねじ部24は、ナット連結金物42と連結される。ナット連結金物42は、両端雄ねじ金物44と連結される。ナット連結金物42は、例えば、鉄合金で構成され、両端を雌ネジに切ってあり、ビット連結部20と両端雄ネジ金物44を結合するための部品である。
【0030】
図1に示すように、両端雄ねじ金物44の一端は、弾性壁材32と防水シート33の貫通孔からコンクリート壁16側に突き出しており、ここに調整パイプ28が連結される。両端雄ネジ金物44は、例えば、鉄合金で構成され、両端を雄ネジに切ってあり、ナット連結金物42と調整パイプ28を連結するための部品である。
【0031】
この実施例では、ビット連結部20とナット連結金物42と両端雄ねじ金物44とを連結金物26と呼んでいる。このように、連結金物26は、弾性壁材32を貫通して、調整パイプ28の一端と連結される。
図1に示したように、調整パイプ28の他端は、セパレータ金物30の一端と連結される。セパレータ金物30の他端は型固定具50によりコンクリートの型枠18に接続されて、型枠18を支持する。
【0032】
連結金物26は、弾性壁材32の厚さに応じて、ビット連結部20と調整パイプ28とを連結するための長さを自由に調整できるように構成されている。両端雄ねじ金物44のねじ込み量や長さを調整すれば、例えば、数センチメートル程度の長さ調整ができる。防水シート33は、例えば、ウレタンやセメント、アスファルト等の塗膜を施した布シート、あるいは塩化ビニル樹脂等の樹脂系シートである。防水シート33は、弾性壁材32を隙間なく覆い、多数の弾性壁材32の継ぎ目も確実に覆って、地下水がコンクリート壁16の方向に流入しないように施工される。
【0033】
なお、多数のコンクリート型枠支持体12が防水シート33を貫通するように施工される。従って、防水シート33の貫通孔の部分には、山留壁14からコンクリート壁16側に流れ込む地下水を確実に遮断するような止水構造が設けられる。この止水構造は、防水シート33の貫通孔を挟むように配置されたワッシャ36と調整パイプ28と止水リング38等により実現する。
【0034】
図5は、4番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図6は、5番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図5に示すように、まず、弾性壁材32と防水シート33の間には、連結金物26を貫通させるワッシャ36が設けられる。このワッシャ36は、弾性壁材32の貫通孔の周囲に密着するように配置される。
図1に示したように、ワッシャ36と調整パイプ28は、防水シート33の貫通孔周辺部を挟むように配置される。
【0035】
図5と
図6に示すように、ワッシャ36は、剛性材(たとえば、金属またはプラスチック)で構成され、この実施例では、ハット型の形状をしている。これは、ワッシャ36を弾性壁材32の貫通孔部分に取り付けた後、防水シート33を施工して調整パイプ28を装着するまでの間に、ワッシャ36が脱落しないように仮止めするための構造である。例えば、ワッシャ36を粘着材で弾性壁材32に接着したり、ワッシャ36の内径を調整して、両端雄ねじ金物44にワッシャ36の弾力で仮止めされるような構造にしてもよい。ワッシャ36の貫通孔に雌ねじを形成して、両端雄ねじ金物44がねじ込まれるようにしてもよい。
【0036】
図7は、6番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図7に示すように、弾性壁材32にワッシャ36を仮止めした後、その部分を防水シート33で覆ってから、ワッシャ36と止水リング38で防水シート33を挟むように、止水リング38を填め込む。止水リング38は、弾性体、例えば、柔軟なゴムやプラスチックにより構成され、この図の例では、防水シート33と密着する面に、ブチルゴム等の粘着性止水材40が塗布されている。なお、止水リング38は、防水シート33に密着させることができる弾性体であればよく、粘着性があり、施工後も柔軟性を保持しているコーキング材等が適する。
【0037】
図8は、7番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図9は、8番目の工程を示す壁面縦断面図である。
その後、
図8と
図9に示すように、両端雄ねじ金物44に調整パイプ28を装着する。調整パイプ28は雌ねじを有し、両端雄ねじ金物44はこれに嵌まり合う雄ねじを有している。調整パイプ28を回転させて、その先端が止水リング38の貫通孔を突き抜けて、防水シート33に突き当たるようにする。これにより、ワッシャ36と調整パイプ28は、防水シート33の貫通孔周辺部を両側から挟むように配置される。
【0038】
さらに、止水リング38とワッシャ36が、防水シート33の貫通孔周辺部を両側から挟むように配置されており、防水シート33に粘着性止水材40が密着するから、防水シート33の貫通孔から調整パイプ28の周囲への漏水が阻止される。また、
図9に示すように、調整パイプ28の内部には溶接やプレスその他の方法により止水仕切46が填め込まれているから、調整パイプ28の内部を通じた漏水も確実に阻止される。
【0039】
図10は、9番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図11は、10番目の工程を示す壁面縦断面図である。
図10に示すように、調整パイプ28にセパレータ金物30の一端を接続し、
図1に示したように、セパレータ金物30の他端を型枠18に接続する。調整パイプ28とセパレータ金物30の、コンクリート壁16と接触する外周面には、
図11に示すように、鞘管状弾性材34が装着される。鞘管状弾性材34は、たとえば筒状の発砲ポリエチレンの材料で構成され、その外周はビニル素材、例えば、ポリエチレンまたは軟質塩化ビニルで覆われているとよい。鞘管状弾性材34は、調整パイプ28とセパレータ金物30の、コンクリート壁16と接触する外周面全体を覆うようにその長さが選定される。
【0040】
以上のようにして組み立てられたコンクリート型枠支持体12は、
図1に示したように、山留壁14とコンクリート壁16の間に配置した弾性壁材32と調整パイプ28やセパレータ金物30の外周に配置した鞘管状弾性材34により、山留壁14からコンクリート壁16に伝わる振動を効果的に減衰させることができる。しかも、防水シート33に設けられた多数の貫通孔からの漏水は確実に阻止される。
【実施例2】
【0041】
図12は、連結金物26の変形例で、(a)はビット連結部20の側面図、(b)はナット連結金物42の一部縦断側面図である。
既に説明したように、連結金物26は、山留壁14と調整パイプ28とを接続する構造であればよい。
図12の(a)に示した例は、ビット連結部20の連結ねじ部24の部分を延長したもので、連結ねじ部24の先端が弾性壁材32の貫通孔からコンクリート壁16側に突出する。そして、連結ねじ部24に調整パイプ28が直接接続されるから、
図1に示したナット連結金物42や両端雄ねじ金物44を必要としない。
【0042】
図12(b)の例は、ナット連結金物42のコンクリート壁16側に連結ねじ部43を形成したものである。
図1に示したナット連結金物42と両端雄ねじ金物44とを予め一体化したものと同等の機能を有する。
図12の(a)の例も(b)の例も、部品点数の減少を図ることができる。こうして例示したもの以外に、連結金物の山留壁14との固定構造は任意に選択できる。H鋼材に挟み込んで固定したり、溶接スタッドやビス打ち等で固定するようにしても構わない。
【0043】
図13と
図14は、弾性壁材32と防水シート33の施工方法を示す説明図である。
弾性壁材32は既に説明したように、例えば、発砲スチロール樹脂等のボードにより構成する。この例では、山留壁14にねじ込み固定したビット連結部20の連結ねじ部24を、
図12(a)に示したような十分に長いものにした。ビット連結部20は、
図14に示すように、山留壁14に一端を多数固定される。その配置(間隔)の精度はあまり高く無い。従って、予め弾性壁材32に該当する多数の貫通孔を設けておくのは難しい。
【0044】
そこで、
図14に示すように、貫通孔を設けていない弾性壁材32を多数のビット連結部20に押し当てて加圧する。そうすると、
図13に示すように、連結ねじ部24が弾性壁材32を突き破って、一気に多数の貫通孔を弾性壁材32に設けることができる。防水シート33についても同様で、弾性壁材32の貫通孔から突出した連結ねじ部24に防水シート33を押し当てて連結ねじ部24で防水シート33を突き破らせる。従って、弾性壁材32等を突き破り易いように、連結金物26の弾性壁材32に突き当たる部分に上記の実施例のような雄ねじを配置することが好ましい。
【0045】
図15は、部材各部の寸法を示す縦断面図である。
以上のような事情から、弾性壁材32の貫通孔も、防水シート33に設けられた貫通孔も、きれいな円形ではない。従って、この貫通孔を塞いで止水処理をする場合の構造にも、細部にわたって工夫が施される。
図15(a)に示すように、両端雄ねじ金物44の外径をd0とする。また、ワッシャ36の内径をdwとし、外径をDWとする。止水リング38の外径をD1とし、内径をd2とする。また、調整パイプ28の外径をD2とする。
【0046】
ここで、調整パイプ28の外径D2をワッシャ36の内径dwより大きくしておくと、調整パイプ28をねじ込んだときに、調整パイプ28の先端が防水シート33を押しながらワッシャ36の貫通孔を突き抜けるようなことがない。これで調整パイプ28とワッシャ36とで防水シート33の貫通孔周辺を確実に挟み込むことができる。
【0047】
また、調整パイプ28の外径D2を止水リング38の貫通孔の内径d2よりも大きく選定することが好ましい。。止水リング38はゴム等の弾性体である。調整パイプ28により止水リング38の貫通孔を押し広げるようにすると、止水リング38と調整パイプ28とが強く密着する。これにより、止水リング38の貫通孔と調整パイプ28の隙間からの漏水を確実に防止できる。
【0048】
図16はワッシャ36の止水効果と振動伝搬防止効果の説明図である。
ワッシャ36の外径DWは、止水リング38の外径D1とほぼ等しいか、あるいは止水リング38の外径D1より小さいことが好ましい。これにより、
図16(a)に示すように、ワッシャ36と止水リング38とで防水シート33を両側から均一に挟み付けることができる。止水リング38の防水シート33と接する側の窪みには粘着性止水材40が塗布されている。粘着性止水材40は、常温で粘着性があり流動しないブチルゴムのような材料が好ましい。粘着性止水材40は、防水シート33の貫通孔周辺を覆って高い止水効果を発揮する。ワッシャ36と止水リング38とで防水シート33を両側からは挟み付けると、防水シート33に貫通孔を空けるときに生じた貫通孔周辺の皺が平坦に伸ばされて、止水効果を高める。
【0049】
なお、上記ワッシャ36の外径DWよりも、上記止水リング38の外径D1を大きく選定することが好ましい。
図16の(b)は好ましくない例の主要部縦断面図である。図のように、ワッシャ36の外径DWが止水リング38の外径D1よりも大きいと、ワッシャ36が防水シート33を介して直接コンクリート壁16と接する部分が生じる。結果として、剛性の高い両端雄ねじ金物44とワッシャ36とが振動遮断効果のほとんど無い防水シート33を介してコンクリート壁16と接するので、この経路で振動がコンクリート壁16に伝わる。コンクリート壁16には多数のコンクリート型枠支持体12が埋め込まれるから、無視できないものになる。
【0050】
ワッシャ36の周囲が防水シート33を介して直接コンクリート壁16に接していると、連結金物26とワッシャ36を通じてコンクリート壁16に振動が伝わりやすい。止水リング38の外径を十分に大きくしておくと、この経路の振動伝搬を抑えられる。ワッシャ36の外径DWよりも、上記止水リング38の外径D1を大きく選定しておけば、止水リング38が振動遮断効果を発揮する。なお、止水リング38の施工前の外径がDWよりも小さいか等しくても、施工後は調整パイプ28を貫通孔に挿入され、コンクリート壁16の圧力で押しつぶされて外径が拡大する。施工後に振動遮断効果があればよいから、ここでいう止水リング38の外径D1は、施工後の外径を指すものとする。
【0051】
ワッシャ36は、調整パイプ28の位置決めの効果も発揮する。両端雄ねじ金物44に止水リング38を装着した後、調整パイプ28を電動ドライバのような工具で、
図16(c)に示す矢印のように回転させながら両端雄ねじ金物44と連結する。このとき、弾性壁材32や防水シート33の貫通孔周辺は柔らかく機械的に弱いため、
図16(c)のように、調整パイプ28の先端が防水シート33を突き破ってしまうおそれがある。
【0052】
一方、弾性壁材32の貫通孔周辺にワッシャ36が配置されていると、
図16(b)に示すように調整パイプ28の先端が防水シート33に衝突したときに、電動ドライバの回転トルクが急に高まるから、作業者はこれを感知して電動ドライバのスイッチを切る。これで、調整パイプ28の締め付け不足も生じないし、締め付け過ぎも防止できる。従って、ワッシャ36と調整パイプ28の一端で防水シート33の貫通孔周辺を挟んで固定して止水するという構造を、作業性良く確実に実現できる。
【0053】
図17は、止水性検証能試験装置のブロック図である。
上記の構造のコンクリート型枠支持体12を小面積の弾性壁材32に装着して試験用のコンクリート壁16を形成し、シール材60で包囲した試験試料58を作成した。シール材60により、試験試料58の外周面は水密処理がされている。この試験試料58を加圧器56内にセットした。コンプレッサ52で加圧水槽54中の水に、0.2〜0.3MPa(メガパスカル)の水圧をかけて、加圧器56中の試験試料58に地下水圧相当の水圧を24時間かけた。0.3MPaは、地下水位より約30m深い位置の水圧に相当する。試験試料58をセットした加圧器56の底部開口57から漏水がないかを確認した。24時間経過後も漏水が無いことを確認した。
図1に示したワッシャ36が無い構造と調整パイプ28中に止水仕切46が無い構造について、それぞれ同様の試験を行ったところ、いずれも漏水が生じていた。
【0054】
図18は、防振性能検証試験装置の縦断面図と試験結果説明図である。
図18(a)に示すように、4本のセパレータ金物(断面図では2本しか表れていない)を模した金属棒57を、模擬山留壁62に弾性壁材32を重ねたものに固定して、止水リング38と鞘管状弾性材34を装着した試験試料58を制作した。この試験試料58を設置した床面を加振ハンマー67で加振した。この床面には、加振ハンマー67による振動の大きさを測定する振動センサー63を固定した。さらに、試験試料58のコンクリート壁16に同様の振動センサー63を固定した。これで、コンクリート壁16に伝わった振動の大きさを測定する。これら一対の振動センサー63の検出信号を、チャージアンプ64を介して振動分析装置65に入力して、両者の比を求める。これで、模擬山留壁62からコンクリート壁16側に伝わった振動伝達率を計測できる。同様の試験を、防振対策を全くしない金属棒57と、先行技術で紹介されたような金属棒57の端部を防振ゴムで支持したものについても行った。鞘管状弾性材34の性能確認のため、金属棒57から止水リング38を除去したものについても試験した。
【0055】
図18(b)の縦軸は、模擬山留壁62からコンクリート壁16側への振動伝達率(単位dB)を示す。横軸は周波数(単位Hz)である。試験試料58の振動伝達率は、止水構造の有無に関係無くほぼ同程度の特性を示している。人が音波(固体伝搬音)として認知し易い、80〜100Hz付近の伝達振動レベルについて、その改善度を確認した。試験試料58は、対策の無いものに比べて、この周波数範囲で15〜20dB程低下している。防振ゴムを使用したものと比較しても10dB程低下している。
図17で説明した試験により、本発明のコンクリート型枠支持体12は、地下構造物に加わる地下水圧に耐えて高い止水効果を示すことがわかった。さらに、
図18で説明した試験により、十分な防振性能を有することもわかった。即ち、本発明のコンクリート型枠支持体12は、止水性能と防振性能の両方を備えた施工性の良い装置であることが実証された。
【実施例3】
【0056】
図19は、調整パイプ28の変形例を示す説明図である。
図19(a)は調整パイプ28の縦断面図である。この図に示すように、この実施例の調整パイプ28の一端(山留壁14側)にボルト66を設けた。調整パイプ28の他端は、セパレータ金物30を連結するためのこれまでの実施例どおりの構造である。即ち、既に説明した両端雄ねじ金物44と調整パイプ28とを一体化した構造のものを使用する。調整パイプ28の内部に止水仕切46を設ける必要はない。調整パイプ28のボルト66側に、図のように予め止水リング38をはめておく。
【0057】
図19(b)と(c)は、弾性壁材32や防水シート33の部分の縦断面図である。この図に示すように、この実施例では、連結金物はビット連結部20とナット連結金物42で構成されている。この状態で、先端が鋭利な工具や調整パイプ28のボルト66の先で、
図19(b)に示した防水シート33にあらかじめ孔を開ける。その後、
図19(c)に示すように、調整パイプ28のボルト66をナット連結金物42の雌ねじ部にねじ込む。止水リング38は防水シート33に押しつけられる。そして、ワッシャ36と止水リング38とで、防水シート33の貫通孔周辺を挟み付けて、この部分の止水処理をする。
【実施例4】
【0058】
図20は、さらに別の調整パイプ28の変形例説明図である。
図20(a)に示すように、この図の例では、調整パイプ28の一端(山留壁14側)にボルト66を設けるとともに、調整パイプ28のボルト66側に、フランジ68を設けた。フランジ68の外径は止水リング38とほぼ等しいか若干小さいことが好ましい。また、止水リング38よりワッシャ36の外径は若干小さいことが好ましい。これは先に説明したとおりである。即ち、フランジ68と止水リング38とワッシャ36とが、いずれも調整パイプ28やナット連結金物42を軸にして、その周囲を囲む環状に配置される。
【0059】
図20(b)に示すように、この実施例では、ナット連結金物42の先端で防水シート33を突き破って貫通孔を空ける。そして、あらかじめ防水シート33から突き出したナット連結金物42に止水リング38を装着しておく。その後、
図20(c)に示すように、調整パイプ28のボルト66をナット連結金物42の雌ねじ部にねじ込む。止水リング38はフランジ68に押しつぶされて防水シート33に押しつけられる。これで、ワッシャ36と止水リング38とで、防水シート33の貫通孔周辺を挟み付けて、この部分の止水処理をする。なお、防水シート33から突き出したナット連結金物42の長さが長いときは、止水リング38とフランジ68の間に、調整用の環状のスペーサ70を挟み込めばよい。スペーサ70は、例えば、金属や硬質のゴムやプラスチックのような材質のものでも構わない。また、フランジ68がコンクリート壁16に直に接すると、ナット連結金物42から調整パイプ28のフランジ68を介してコンクリート壁に振動が伝わるおそれがある。これを防止するには、鞘管状弾性材34の内径よりもフランジ68の外径が小さいものであればよい。あるいは、
図20(c)のように、鞘管状弾性材34の端部で、フランジ68やスペーサ70を覆う構造にするとよい。