(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383719
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
B29B 7/58 20060101AFI20180820BHJP
B29B 7/42 20060101ALI20180820BHJP
B29B 7/74 20060101ALI20180820BHJP
B29B 7/02 20060101ALI20180820BHJP
B29C 47/68 20060101ALI20180820BHJP
B29C 47/60 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
B29B7/58
B29B7/42
B29B7/74
B29B7/02
B29C47/68
B29C47/60
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-237954(P2015-237954)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-100429(P2017-100429A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592059389
【氏名又は名称】矢田 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100072453
【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】矢田 泰雄
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−198013(JP,U)
【文献】
特開昭61−175016(JP,A)
【文献】
特開2006−240159(JP,A)
【文献】
特開2014−113706(JP,A)
【文献】
特表2013−532597(JP,A)
【文献】
特開2012−061831(JP,A)
【文献】
特開平11−291328(JP,A)
【文献】
実開昭61−196021(JP,U)
【文献】
実開昭59−015524(JP,U)
【文献】
実開昭58−164731(JP,U)
【文献】
特開2004−098655(JP,A)
【文献】
特開平05−116200(JP,A)
【文献】
特開2008−037013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00
B29C 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末無機配合剤を高濃度配合して混練りされた高分子複合コンパウンドが押し出されるスクリュー押出機の吐出口に備えたストレーナー組立体において、該高分子複合コンパウンドに含まれる混入異物を除去する処理方法であって、
上記ストレーナー組立体は、上記スクリュー押出機の吐出口に内部のコンパウンド流路が連なるようにして回転可能に支持させた回転筒を備えるものとし、
該回転筒内には、濾過捕捉すべき混入異物の粒径に応じて必要なメッシュの網材により直円錐面状に形成した濾過網の内側に、上記コンパウンド流路におけるコンパウンドの流れに対する強度を保持させた高強度多孔材からなる直円錐面状の網保持具を重設することにより、上記濾過網を上記網保持具で補強したストレーナー本体を、その錐状端を回転筒内のコンパウンド流路の上流側に向け、網保持具の底面の円形周縁に一体的に設けた異物排出リングを、該回転筒におけるコンパウンド流路の下流側端に固定し、上記濾過網により濾過捕捉した混入異物を濾過網に沿う流動で上記多孔材の裾野部分の溜め溝に導入可能にして、該溜め溝にはそこに導入された混入異物を排出するための外部に通じる排出路を形成しておき、
上記回転筒を駆動装置により回転駆動しながら、上記スクリュー押出機から高分子複合コンパウンドを押し出し、ストレーナー組立体における送出口から、混入異物を除去した高分子複合コンパウンドを吐出させる、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の混入異物除去処理方法において、
スクリュー押出機を、1軸のテーパースクリューの大径端側のケーシングの上方に、密閉型混練機で混練りされたコンパウンドを受け入れるホッパーを設けてなる、該テーパースクリューを持つシリンダと、該テーパースクリューの小径端に、それと同軸芯で一定の外径を持つストレートスクリューを連接してなるストレートスクリューを持ったシリンダとにより構成し、
高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理に際し、密閉型混練機で混練りしてホットで可塑化された上記コンパウンドを、上記テーパースクリューを備えたシリンダのケーシングに設けたホッパーに受け入れて、該テーパースクリューの回転により上記コンパウンドをテーパースクリューの小径端側の吐出口に向けて押し流し、該テーパースクリューの小径端の吐出口から該小径端に連接した上記ストレートスクリューに上記コンパウンドを受け渡し、ストレートシリンダによって押し流すコンパウンドをその吐出口からストレーナー組立体に送り込み、高分子複合コンパウンドに含まれる混入異物を除去する、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の混入異物除去処理方法において、
ストレートスクリューの螺条による1回転のコンパウンド送り量が、テーパースクリューにおけるテーパースクリュー羽根の小径端側の1バレル分の容積より僅かに下回るように成形し、テーパースクリューの上部ケーシング壁に、両スクリューの1回転の送り量の差に相当する余剰のコンパウンドを逆戻りさせる開放ゾーンを形成し、
これにより、テーパースクリューが、その回転によりリニアにバレル容積を縮小しながら、ストレートスクリューを介して、コンパウンドを連続して圧縮しつつストレーナ組立体に送り込むようにした、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理方法。
【請求項4】
粉末無機配合剤を高濃度配合して混練りされた高分子複合コンパウンドが押し出されるスクリュー押出機の吐出口に、該高分子複合コンパウンドに含まれる混入異物を除去するストレーナー組立体を備えた処理装置であって、
上記ストレーナー組立体は、上記スクリュー押出機の吐出口に内部のコンパウンド流路が連なるようにして回転可能に支持させた回転筒を備え、
該回転筒内には、濾過捕捉すべき混入異物の粒径に応じて必要なメッシュの網材により直円錐面状に形成した濾過網の内側に、上記コンパウンド流路におけるコンパウンドの流れに対する強度を保持させた高強度多孔材からなる直円錐面状の網保持具を重設することにより、上記濾過網を上記網保持具で補強したストレーナー本体を、その錐状端を回転筒内のコンパウンド流路の上流側に向け、網保持具の底面の円形周縁に一体的に設けた異物排出リングを、該回転筒におけるコンパウンド流路の下流側端に固定し、上記濾過網により濾過捕捉した混入異物を上記多孔材の裾野部分の溜め溝に導入可能にして、該溜め溝にはそこに導入された混入異物を排出するための外部に通じる排出路を形成し、
且つ、上記回転筒は、ストレーナー組立体の支持台上に設けた駆動装置に伝動装置を介して回転駆動可能に連結し、
上記ストレーナー組立体は、回転筒内にストレーナー本体を取り付けたストレーナーユニットの単段若しくは複数段を直列に配列して、ストレーナー組立体の送出口を、混入異物を除去された高分子複合コンパウンドの吐出口としている、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の混入異物除去処理装置において、
上記網保持具に一体的に設けた異物排出リングを、回転筒におけるコンパウンド流路の下流側端に該回転筒と同軸に連接固定し、上記多孔材の裾野部分に設けた溜め溝を、該溜め溝から放射状に延びる複数の異物排出孔により、異物排出リングの外面に周設した排出溝内に連通させ、該排出溝に、異物排出孔を通して押し出されたコンパウンドの混入異物を外部に掻き出す掻出し棒を挿入している、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の混入異物除去処理装置におけるスクリュー押出機を、1軸のテーパースクリューの大径端側のケーシングの上方に、密閉型混練機で混練りされた高分子複合コンパウンドを受け入れるホッパーを備えてなる該テーパースクリューを持つシリンダと、該テーパースクリューの小径端に、それと同軸芯で一定の外径を持つストレートスクリューを連接成形してなるストレートスクリューを持ったシリンダとにより構成し、
上記ストレートスクリューのシリンダの吐出口にストレーナ組立体の入口を連結している、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理装置。
【請求項7】
請求項4に記載の混入異物除去処理装置において、
ストレートスクリューのシリンダに、その内部を通過するコンパウンドの温度及び圧力を監視する温度センサー及び圧力センサーを装備させると共に、回転筒にその内部を流れるコンパウンドの温度及び圧力を監視する温度センサー及び圧力センサーを装備させ、
これらの温度センサー及び圧力センサーの出力に基づき、制御装置においてスクリュー駆動装置及び各段の回転筒の駆動機構における回転条件の制御する、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置。
【請求項8】
請求項4に記載の混入異物除去処理装置において、
テーパースクリューのケーシングの一部とスクリュー駆動装置の固定台の一部とを着脱可能に固定する緊締装置、上記ケーシングの吐出側フランジとストレートスクリューのシリンダの入口側フランジとを着脱可能に固定する緊締装置、上記ストレートスクリューのシリンダの吐出側フランジとストレーナー組立体における入口側端板とを着脱可能に固定する緊締装置、及び該ストレーナー組立体における出口側端板とその次に配置される機器の一部とを着脱可能に連接する緊締装置を備え、上記各緊締装置のいずれかを操作して、隣接する機器を非連結状態としたとき、その非連結状態にある緊締装置の両側の機器を離間させて、それら機器の露出部分や解体部分のメンテナンスを容易にした、
ことを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子複合コンパウンド内に分散している配合剤の粗粒、或いは配合剤の未分散物や夾雑物等の異物(以下、これらを単に異物叉は混入異物という。)を除去して、均一な高分散品質の高分子複合コンパウンドを得るための混入異物除去処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子複合コンパウンドを代表するゴム配合物等においては、粉末無機材料を高濃度配合したコンパウンドにおける均一な分散品質が重要視されている。しかしながら、汎用の密閉型混練機における混練り能力のみで近年要求される高度な分散レベルを確保することは至難であり、そのため、特許文献1に開示されているように、混練機が排出したコンパウンドを受け取り、2本の圧延ロールの回転比で発生する剪断作用に依存して仕上げ練りし、より高度な分散を得ようとしているが、近年、用途によっては100メッシュの濾過網を通して異物を除去し、更に200メッシュより細微な濾過網で濾過するコンパウンドの精製が求められている。
【0003】
通常、ゴムコンパウンドの押出し成形には、60〜100メッシュの濾過網を内蔵装備して精製濾過と成形を同時に処理している。成形工程にラインアップした濾過網を内蔵する多くの成形押出機では、押出機の先に装着するダイスで押出し成形するが、濾過網の目詰りや破れで押出しの連続性が中断されることがある。このトラブルの解消は、操業時間の無駄と材料が工程ロスとなる重大な問題の解決課題となっており、特に、連続加硫装置に連結する押出機では、一層の連続性能力が重視されている。
【0004】
また、濾過網を装備した成形スクリュー押出機では、まず濾過網を装着することで、網の線材径の面積が、コンパウンドの流路を狭隘にして、押出し能力を低減している。粗粒や夾雑物による濾過網の目詰まりでは、更に著しい生産性の低下や発熱が制御できず、成形を中断して濾過網の交換などの原因を排除する作業を行っている。しかも、この中断により押出し成形品の必要長さの製品が得られず、製品が不良となる。そのため、濾過網を装備した成形スクリュー押出機では、中断のない濾過手段の開発が切に望まれている。
【0005】
一方、常温状態の高粘度ゴムコンパウンドを、細かい網目で濾過するには、濾過処理するコンパウンドを可塑化して、網目通過時の濾過抵抗圧力を低減する必要がある。濾過するコンパウンドの過剰昇温を抑え、押出し能力を落とさずに濾過網の開口目が100メッシュを超える微細目にできるような非熱可塑性コンパウンドの量産型ストレーナーを得ることには困難性があり、従って、網目の閉塞による処理量低下を防ぐため、予め濾過網のサイクルを決めてそれを交換するとか、自動切換装置を装着する必要がある。
【0006】
現在、上述した諸問題の解決を迫られているが、コンパウンドの混入異物を捕捉除去する既知の構造は、一般的には、異物捕捉許容サイズの開口面積を持つ濾過網をコンパウンドの流れに直交させて配設した正面通過方式のものであり、より具体的には、上記濾過網を、コンパウンドの進路に対して直交配置の、一般に「ブレーカープレート」と呼ばれる平板状の高強度多孔材からなる網保持具に貼り付けて直立させている。この場合、濾過網の線材が占める総面積だけコンパウンドの通路開口面積を狭くしているため、濾過抵抗増加の原因となっている。この濾過網の開口のサイズを細かくするには、構成する線材の線径も細くなり、線径が細くなるとコンパウンドの押し圧力で破れを生じ、無濾過コンパウンドが通過して押出し成形品を不良化するため、濾過網の通過抵抗を可能な限り低減すると共に、濾過網の線径が占める通路の狭隘化原因を排除し、濾過網が破れないようにする配慮が必要である。しかしながら、そのような配慮は著しく困難であることから、前述した高分散品質の高分子複合コンパウンドを満足に提供できない状況にある。
【0007】
また、現行技術の実態においては、いずれにしても、コンパウンドが濾過網を通過するときには、通過できる可塑度に可塑化することは欠かせない。つまり、コンパウンドを送るスクリューに、該コンパウンドを微細な濾過網の網目を通過できる柔らかさに達する混練り作用を与える機能を持たせる必要がある。同時に、微細な濾過網を通過させる押し圧力が必要である。その場合に、高い粘度のコンパウンドの混入異物の濾過を低温で処理するには、混練機で練り上げたホットなコンパウンドをストレーナーへ圧入する方式が望ましいが、ストレートスクリューは、コンパウンドにせん断作用を付与する構造を持たないので、可塑化に限界がある。一方、テーパースクリューは、混連機において混練りしたホットで可塑化されたコンパウンドを、テーパースクリュー軸の大径側の上方に開設した口部が大きいホッパーに直接受け入れることができるが、濾過網に対する押し圧力が得られる構造を持つものではなく、そのため、可塑化したコンパウンドを効率的に濾過網に送る簡単な構成を得ることにも困難性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2004/007165
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は、高分子複合コンパウンド内に分散している混入異物を効率的に除去すると共に、超微細濾過により均一な高分散品質の高分子複合コンパウンドが得られるようにした混入異物除去処理方法及びその装置を提供することにある。
本発明の他の技術的課題は、上記高分子複合コンパウンド内に分散している混入異物を除去するに際して、可塑化したコンパウンドを低温で生産性を損なわずに濾過網に送れるようにした高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によれば、粉末無機配合剤を高濃度配合して混練りされた高分子複合コンパウンドが押し出されるスクリュー押出機の吐出口に備えたストレーナー組立体において、該高分子複合コンパウンドに含まれる混入異物を除去する処理方法であって、上記ストレーナー組立体は、上記スクリュー押出機の吐出口に内部のコンパウンド流路が連なるようにして回転可能に支持させた回転筒を備えるものとし、該回転筒内には、濾過捕捉すべき混入異物の粒径に応じて必要なメッシュの網材により直円錐面状に形成した濾過網の内側に、上記コンパウンド流路におけるコンパウンドの流れに対する強度を保持させた高強度多孔材からなる直円錐面状の網保持具を重設することにより、上記濾過網を上記網保持具で補強したストレーナー本体を、その錐状端を回転筒内のコンパウンド流路の上流側に向け、網保持具の底面の円形周縁に一体的に設けた異物排出リングを、該回転筒におけるコンパウンド流路の下流側端に固定し、上記濾過網により濾過捕捉した混入異物を濾過網に沿う流動で上記多孔材の裾野部分の溜め溝に導入可能にして、該溜め溝にはそこに導入された混入異物を排出するための外部に通じる排出路を形成しておき、上記回転筒を駆動装置により回転駆動しながら、上記スクリュー押出機から高分子複合コンパウンドを押し出し、ストレーナー組立体における送出口から、混入異物を除去した高分子複合コンパウンドを吐出させることを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理方法が提供される。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明によれば、粉末無機配合剤を高濃度配合して混練りされた高分子複合コンパウンドが押し出されるスクリュー押出機の吐出口に、該高分子複合コンパウンドに含まれる混入異物を除去するストレーナー組立体を備えた処理装置であって、上記ストレーナー組立体は、上記スクリュー押出機の吐出口に内部のコンパウンド流路が連なるようにして回転可能に支持させた回転筒を備え、該回転筒内には、濾過捕捉すべき混入異物の粒径に応じて必要なメッシュの網材により直円錐面状に形成した濾過網の内側に、上記コンパウンド流路におけるコンパウンドの流れに対する強度を保持させた高強度多孔材からなる直円錐面状の網保持具を重設することにより、上記濾過網を上記網保持具で補強したストレーナー本体を、その錐状端を回転筒内のコンパウンド流路の上流側に向け、網保持具の底面の円形周縁に一体的に設けた異物排出リングを、該回転筒におけるコンパウンド流路の下流側端に固定し、上記濾過網により濾過捕捉した混入異物を上記多孔材の裾野部分の溜め溝に導入可能にして、該溜め溝にはそこに導入された混入異物を排出するための外部に通じる排出路を形成し、且つ、上記回転筒は、ストレーナー組立体の支持台上に設けた駆動装置に伝動装置を介して回転駆動可能に連結し、上記ストレーナー組立体は、回転筒内にストレーナー本体を取り付けたストレーナーユニットの単段若しくは複数段を直列に配列して、ストレーナー組立体の送出口を、混入異物を除去された高分子複合コンパウンドの吐出口としていることを特徴とする高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理装置が提供される。
【0012】
上記構成を有する本発明の高分子複合コンパウンドの混入異物除去方法及びその装置によれば、濾過網を直円錐形に成形してその通過面積を非常に大きくしているので、平面状の静止網を用いて正面通過方式で異物を除去する場合に比して、濾過網通過面積が30%を超えて拡張され、コンパウンドの通過抵抗を著しく低減させることができ、また、この濾過網の直円錐形状化に加えて、濾過網を保持する網保持具を駆動機構で回転させるようにしているため、回転筒に押し込まれてくるコンパウンドを濾過網の断面がせん断するように作用することで、濾過網の開口面積の数分の1の微細な濾過面積で濾過されることになる。同時に、濾過網の断面を構成する線材間の隙間がコンパウンドの通過を許容するが、通過しようとするコンパウンドを線材の移動によって削ぎ取っていくように作用することで濾過抵抗を軽減している。また、この濾過挙動は、混練機で受ける分散作用の比ではないせん断作用を付与し、従来の静止網では実現できなかったミクロな分散を可能にし、超微細で高能率的な濾過を温度上昇なく実現できる。
【0013】
また、上記濾過網の回転により実現されるミクロな分散は、濾過網の開口面積を小さくするのではなく、線材が破損しない太さで濾過網を編んで、網の破損を防止することを可能にするものであり、濾過網の交換頻度を低減してラインストップ回数を減らすことにより、生産性向上に大きく寄与することになる。そして、コンパウンドの進行速度より網の回転速度を速めると、濾過の微細化を進めることが可能になり、遅くすると網通過抵抗が極小化され、コンパウンドの低温濾過に寄与する。
【0014】
一方、濾過網を装着したコンパウンド流路を構成する回転筒の複数段を直列に配設したストレーナー組立体においては、ストレーナー本体においてコンパウンドの流れ方向に直交する機械的せん断作用を加えるため、コンパウンドに大きな分散作用を加える効果がある。しかも、1段目の濾過網を通過したあとに2段目の濾過網で濾過されるまで、瞬時ではあるがコンパウンドに負荷されるストレスが緩和される。この断続的な負荷作用は、弾性を備えた可塑度の高いコンパウンドに分散する無機配合剤のコンパウンド、特にゴムコンパウンドの内部に分散された粉末配合剤がミクロなゴムポリマーの圧縮と緩和の挙動作用によって、当然に、無理なく高度な分散領域へ導かれるものと理解できる(後述するコンパウンドの混練原理を参照)。
【0015】
本発明に係る上記混入異物除去装置の他の好ましい実施形態においては、上記スクリュー押出機を、1軸のテーパースクリューの大径端側のケーシングの上方に、密閉型混練機で混練りされた高分子複合コンパウンドを受け入れるホッパーを備えてなる該テーパースクリューを持つシリンダと、該テーパースクリューの小径端に、それと同軸芯で一定の外径を持つストレートスクリューを連接成形してなるストレートスクリューを持ったシリンダとにより構成し、上記ストレートスクリューのシリンダの吐出口にストレーナ組立体の入口を連結したものとするのが望ましい。
【0016】
この場合、上記スクリュー押出機を、1軸のテーパースクリューの大径端側のケーシングの上方に、密閉型混練機で混練りされたコンパウンドを受け入れるホッパーを設けてなる、該テーパースクリューを持つシリンダと、該テーパースクリューの小径端に、それと同軸芯で一定の外径を持つストレートスクリューを連接してなるストレートスクリューを持ったシリンダとにより構成し、高分子複合コンパウンドの混入異物除去処理に際し、密閉型混練機で混練りしてホットで可塑化された上記コンパウンドを、上記テーパースクリューを備えたシリンダのケーシングに設けたホッパーに受け入れて、該テーパースクリューの回転により上記コンパウンドをテーパースクリューの小径端側の吐出口に向けて押し流し、該テーパースクリューの小径端の吐出口から該小径端に連接した上記ストレートスクリューに上記コンパウンドを受け渡し、ストレートシリンダによって押し流すコンパウンドをその吐出口からストレーナー組立体に送り込み、それにより高分子複合コンパウンドに含まれる混入異物を除去することが望まれる。
【0017】
また、上記スクリュー押出機は、ストレートスクリューの螺条による1回転のコンパウンド送り量が、テーパースクリューにおけるテーパースクリュー羽根の小径端側の1バレル分の容積より僅かに下回るように成形し、テーパースクリューの上部ケーシング壁に、両スクリューの1回転の送り量の差に相当する余剰のコンパウンドを逆戻りさせる開放ゾーンを形成し、これにより、テーパースクリューが、その回転によりリニアにバレル容積を縮小しながら、ストレートスクリューを介して、コンパウンドを連続して圧縮しつつストレーナ組立体に送り込むようにするのが望ましく、その結果、コンパウンドの搬送が途絶えることもない。
【0018】
このような構成は、コンパウンドを低温で生産性を損なわずに処理でき、濾過網による混入異物の分離操作が、コンパウンドのナノ分散に寄与できるものである。高い粘度のコンパウンドの混入異物の分離操作を低温で行うには、混練機で練り上げたホットなコンパウンドをストレーナーへ圧入する方式が望ましく、しかしながら、コールドフィード方式のストレートスクリューでは、コンパウンドにせん断作用を付与する構造を持たないので可塑化に限界があり、これに対し、本発明における上記ストレーナーユニットは、抵抗無く超微細な濾過処理を高い生産性で達成できる点で、既存の技術に対して極めて優れた機能を発揮するものである。
【0019】
また、上述したテーパースクリューとストレートスクリューの組み合せは、ホットなブロックコンパウンドを受け入れた1軸のテーパースクリューから、1軸のストレートスクリューへの進路を直線式にしたことによって、テーパースクリューからストレートスクリューへ過剰に供給するコンパウンドが途絶えるまで、強力な押し圧を継続可能にするものである。即ち、テーパースクリューの大径側の羽根は、スクリューの基端から先端に向けて、テーパー角度に従ってリニアにバレル容積を縮小しながら、コンパウンドをストレートスクリューへ送り込むものである。この挙動により、コンパウンドが自然に圧縮されつつその圧力がストレートスクリューに負荷される。
【0020】
当然、テーパースクリューの1回転の押出し量はストレートスクリューの送り量より多いので、上述のように、ストレートスクリューの螺条を複数に成形し、1回転でのコンパウンドの送り量をテーパースクリューの送り込み量よりやや少なくするが、このやや少ない量が、テーパースクリューからストレートスクリューへのコンパウンドが途切れない限り、一定の押し圧を負荷し続ける重要な要因となる。それと同時に、押し込めない過剰なコンパウンドはテーパースクリュー側へ押戻されるが、これは一種の混練り状態の挙動を示すことになる。なお、1軸に2種のスクリューを設けて1台の駆動装置で回転駆動することは、消費電力の大幅な節減を可能にするものである。
【0021】
また、前述したように、テーパースクリューの先端でストレートスクリューと連接する部位において、テーパースクリューの1回転でストレートスクリューに送り込まれるコンパウンド量を、供給側であるテーパースクリューからの供給量が過剰供給となるようにして、コンパウンドの一部を逆戻しするようにしているが、これは両スクリュー間で過不足のないコンパウンド量を流すことに努力するのではなく、一部のコンパウンドが戻されることが有効であることに着目し、戻されるコンパウンドの挙動を利用するものである。即ち、逆戻しによるコンパウンド自身の摩擦で再練り効果が付与され、機械的強制摩擦ではない分散操作の発現を活用するものである。
【0022】
つまり、弾性を備えたゴムなどのコンパウンドにおける混練原理を、2本の圧延ロールにおける混練り挙動で観察すると、強い圧縮と同時に加えるせん断作用と、素早く膨張させて圧縮のストレスを緩和する繰り返しのプロセスの混練り操作が、コンパウンドの成形品の弾性の維持に有効であり、これを、上記テーパースクリューとストレートスクリューの境界で発生する、過剰供給量の戻り作用の場合について適用すると、上記コンパウンドの戻りは、混練機がコンパウンドに付与した機械的ストレスを緩和するプロセスを提供しているものと考えられる。
【0023】
本発明に係る上記混入異物除去装置の好ましい実施形態においては、上記ストレーナーユニットにおける網保持具に一体的に設けた異物排出リングを、回転筒におけるコンパウンド流路の下流側端に該回転筒と同軸に連接固定し、上記多孔材の裾野部分に設けた溜め溝を、該溜め溝から放射状に延びる複数の異物排出孔により、異物排出リングの外面に周設した排出溝内に連通させ、該排出溝に、異物排出孔を通して押し出されたコンパウンドの混入異物を外部に掻き出す掻出し棒を挿入しているものとして構成することができる。
【0024】
上記構成は、濾過網に捕捉された混入異物を連続して濾過網表面をから排除する機能を付与したものである。本発明におけるストレーナユニットでは、網保持具に保持させた濾過網の表面を直円錐形に成形しているため、濾過網表面に捕捉された混入異物は濾過網表面に沿ってコンパウンドの流れに押され、網保持具の底辺円周に成形した溜め溝に達してそこに滞留し、異物排出孔から異物排出リングの外周の排出溝へ押し出されて、排出溝に挿入した掻出し棒で掻き落とされる。この排出操作は、コンパウンドが系内を流れている間継続して濾過網表面の異物を除去して開口を維持することになり、これにより連続した円滑操業が得られるばかりでなく、安定した条件での濾過処理が、コンパウンドの品質安定化に大きく貢献することになる。
【0025】
また、本発明に係る上記混入異物除去装置の好ましい実施形態においては、ストレートスクリューのシリンダに、その内部を通過するコンパウンドの温度及び圧力を監視する温度センサー及び圧力センサーを装備させると共に、回転筒にその内部を流れるコンパウンドの温度及び圧力を監視する温度センサー及び圧力センサーを装備させ、これらの温度センサー及び圧力センサーの出力に基づき、制御装置においてスクリュー駆動装置及び各段の回転筒の駆動機構における回転条件の制御するものとして構成することができる。
【0026】
更に、本発明に係る上記混入異物除去装置の好ましい実施形態においては、テーパースクリューのケーシングの一部とスクリュー駆動装置の固定台の一部とを着脱可能に固定する緊締装置、上記ケーシングの吐出側フランジとストレートスクリューのシリンダの入口側フランジとを着脱可能に固定する緊締装置、上記ストレートスクリューのシリンダの吐出側フランジとストレーナー組立体における入口側端板とを着脱可能に固定する緊締装置、及び該ストレーナー組立体における出口側端板とその次に配置される機器の一部とを着脱可能に連接する緊締装置を備え、上記各緊締装置のいずれかを操作して、隣接する機器を非連結状態としたとき、その非連結状態にある緊締装置の両側の機器を離間させて、それら機器の露出部分や解体部分のメンテナンスを容易にしたものとして構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上に詳述した本発明の高分子複合コンパウンドの混入異物除去方法及びその装置によれば、高分子複合コンパウンド内に分散している混入異物をストレーナユニットにおいて効率的に除去すると共に、超微細濾過により均一な高分散品質の高分子複合コンパウンドを得ることができ、また、上記高分子複合コンパウンド内に分散している混入異物を除去するに際して、可塑化したコンパウンドを低温で生産性を損なわずに濾過網に送れるようにした高分子複合コンパウンドの混入異物除去方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置の実施例についての全体的構成の概要を示す縦断側面図である。
【
図2】上記実施例の要部を断面によって示す平面図である。
【
図3】
図1におけるIII−III位置での拡大断面図である。
【
図4】ストレーナー組立体の要部の詳細を示す要部拡大縦断面図である。
【
図5】ストレーナー組立体の全体的な構成の概要を示す側断面図である。
【
図7】ストレーナー組立体のメンテナンスのための解体状態の概要を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照して本発明に係る高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置の実施例について詳述する。
図1及び
図2に示す本発明の実施例の全体的構成は、概略的には、コモンベッド1上の一端に、後述のテーパースクリュー3を駆動するための減速機構付きのスクリュー駆動装置2を固定的に設置すると共に、上記テーパースクリュー3の回転の軸線上に、それぞれの軸線を一致させたところの下記の各構成ユニットが、コモンベッド1上に敷設されたスライドレール1a,1b上において、それぞれ上記テーパースクリュー3の軸線方向に移動可能に支持されたものである。
【0030】
上記スライドレール1a,1bに支持された構成ユニットとしては、上記スクリュー駆動装置2の出力軸に連結されたテーパースクリュー3を内部に収容するように、該テーパースクリュー3を覆う位置にスライドレール1a上を移動可能にしたケーシング4と、図示省略の支持部材により支持させて移動可能にしたところのストレートスクリュー5が嵌入するシリンダ6と、ストレーナー台車として構成した支持台10により上記スライドレール1a上を移動可能にしたストレーナー組立体7と、スライドレール1bにガイドされて移動可能で、ストレーナー組立体7の出口に連設されるコンパウンドシート成形装置8とを示しているが、これらは単に上記構成ユニットの一例を示すものである。
【0031】
次に、上記構成ユニットについて、順次その具体的構成を詳細に説明するに、まず、上記減速機構付きのスクリュー駆動装置2の出力軸に取り付けられたテーパースクリュー3は、その大径の基端から小径の先端に至るテーパースクリュー軸3aの外周に、大径の送り羽根部から小径の先端羽根部に至るテーパースクリュー羽根3bを備え、テーパースクリュー軸3aの外径が細くなった先端に、長手方向に外径の変化がないストレートスクリュー5を一体的に連結している。
【0032】
スクリュー駆動装置2の出力軸に連結されたテーパースクリュー3を内部に収容可能にしているケーシング4は、上記スライドレール1a上にスライドベアリング4aを介して摺動可能に載置され、該スライドレール1aに沿ってテーパースクリュー3を覆う位置とそれを開放する位置とに移動可能にしたものであり、該ケーシング4のスクリュー駆動装置2側の固定板4bをスクリュー駆動装置2の固定台11における取付板11aに固定して、テーパースクリュー3をケーシング4の内部に配置したときには、ケーシング壁底部4cがテーパースクリュー羽根3bの外周軌跡に合わせた傾斜角度で、一定の隙間を有する樋型をなすように形成され、該隙間によりケーシング4の上部のホッパー12から投入されたコンパウンドの流路を形成させている。
【0033】
また、
図3から明らかなように、ケーシング4におけるテーパースクリュー軸3aが回転により投入されたコンパウンドを巻き込む側のケーシング壁4dは、テーパースクリュー軸3aの軸芯の下部からホッパー12の下縁へ緩い角度で開く傾斜面とし、該傾斜面上に投入されるコンパウンドのフィード部となる広い開口のポケットを形成させている。そのため、ケーシング4の上記傾斜面上に混練機から投入されたホットなコンパウンドブロックが、テーパースクリュー羽根3bによって巻き込まれ、前方のストレートスクリュー5に送られる。
【0034】
上記テーパースクリュー軸3aの先端に同軸で連結されているストレートスクリュー5は、テーパースクリュー3のケーシング4の出口に連結したシリンダ6内に収容されるもので、上記ケーシング4内のテーパースクリュー3及びシリンダ6内のストレートスクリュー5により、混練りされた高分子複合コンパウンドを押し出すスクリュー押出機が形成され、該シリンダ6はストレートスクリューの螺条5aに接触しない程度に該螺条5aの外径に近似した内径を備えている。上記ストレートスクリュー5は、複数条(図では2条)の螺条5aを有するもので、該螺条5a間のバレルはテーパースクリュー羽根3bの先端のバレルと連続させているため、テーパースクリュー3からのコンパウンドは円滑に送り込まれる。
【0035】
上記螺条5a間のバレルは、1回転の送り量がテーパースクリュー羽根3bの先端の1バレル分の容積より僅かに下回る容積になるように成形している。先端でも大きな容積のバレルを備えたテーパースクリュー3は、ストレートスクリュー5の1回転の搬送量よりも過大な量のコンパウンドをストレートスクリュー5に連続して押し込もうとするものである。そこで、上述のように、螺条5aを複数条形成したストレートスクリュー5の1回転当たりの引き取り量を、テーパースクリュー3先端のバレルより僅かに小さい容積に留めると、テーパースクリュー3内には送り出せない余剰のコンパウンドが生じることになる。そのため、テーパースクリュー3の先端側の上半分をカバーする上部ケーシング壁4eを該テーパースクリュー3のテーパー角度より拡げて、過剰圧力の原因となるコンパウンドを抵抗なく逆戻りさせる開放ゾーンを形成している。この構造は、コンパウンドの過大な加圧で過熱要因にもなるエネルギーの冗費を無くし、コンパウンドが低い温度で安定して流動することを可能にするものである。
【0036】
上記テーパースクリュー3とストレートスクリュー5とを一体に形成したスクリュー軸内には、冷媒通路13を開設している。この冷媒通路13は、テーパースクリュー軸3aが連結されているスクリュー駆動装置2の出力軸内を通して、該出力軸の軸端の開口からストレートスクリュー5の先端を貫通しない直前の部位まで開設し、図示していないがその通路内に戻り配管をも設けたもので、該冷媒通路13におけるスクリュー駆動装置2の出力軸端の開口は、冷媒用回転継ぎ手14を介して、その出入りソケットに冷媒循環装置15の出口配管15aと戻り配管15bとをそれぞれ接続している。また、ケーシング4におけるテーパースクリュー3の周囲と、ストレートスクリュー5の周囲のシリンダ6の全長には、それぞれ冷媒ジャケット4f,6cを備え、それらにおける冷媒の出入口も冷媒循環装置にそれぞれ接続している。
【0037】
次に、
図4〜
図8を参照して、前記ストレーナー組立体7の構成及び作用について詳細に説明する。
上記ストレーナー組立体7は、ストレートスクリュー5のシリンダ6の吐出側フランジ6bに連結される入口側端板17aと、次段のコンパウンドシート成型装置8等に対してコンパウンドを送出するコンパウンドガイド18を備えた出口側端板17bとの間に、
図4〜
図6に詳細に示すようなストレーナーユニット20の単数、或いはその複数(この実施例では3基)を以下に述べるような態様で直列に連結して、配設するものであり、各ストレーナーユニット20においては、以下に詳述するように、上記ストレートスクリュー5のシリンダ6に連なる回転筒24内に、コンパウンド中から混入異物を除去するためのストレーナー本体21を収容している。
【0038】
上記ストレーナー本体21は、コンパウンド中から混入異物を濾過捕捉すべき濾過網22を、
図4に示すような側面視の直円錐面状に形成し、該濾過網22に対して、コンパウンドの流れに対する強度を保持させるための同直円錐面状の高強度の多孔部23aをもつ網保持具23における該多孔部23aを内側に配することにより形成している。上記多孔材23aとしては、その外形である直円錐面の母線に沿う筋状材を含み、コンパウンドの通過間隙を可及的に大きくしたものが望まれる。また、上記濾過網22としては、濾過捕捉すべき混入異物の粒径等に応じて必要なメッシュの網材が用いられ、該濾過網22と網保持具23の該多孔部23aとは、それらを適宜密着固定すると共に、該濾過網22の錐状端を、円錐形頭部を持つ網押さえ22aにより網保持具23の先端に固定している。そして、このように構成したストレーナー本体21を、内部にコンパウンド流路24bを形成した回転筒24内に、以下に述べるような網保持具23における異物排出リング25を固定することにより保持させている。
【0039】
上記直円錐面状をなす高強度多孔材23aの底面側には、上記回転筒24内におけるコンパウンド流路24bの下流側端に同軸に当接する異物排出リング25を一体的に連接して、該異物排出リング25を固定ピン25e等により回転筒24に固定するようにし、該異物排出リング25の回転筒24との接面側における上記直円錐面状の多孔材23aの裾野部分に、該多孔材の表面の濾過網22に沿って該裾野部分側に流動するコンパウンドの混入異物を貯留するための、環状で断面U字形の異物の溜め溝25aを成形し、該異物の溜め溝25aからの排出路として、該溜め溝25aから放射状に数個の異物排出孔25bを開設して、それらを異物排出リング25の外面に周設した排出溝25c内に連通させている。この排出溝25cに押し出されたコンパウンドの混入異物は、後述する連結支持部材26等の固定部分に設けた掻出し棒25dの先端を該排出溝25cに挿入しておくことにより、回転筒24の回転に伴って該掻出し棒25dで掻き落とすことができる。
【0040】
一方、上記回転筒24を回転自在に支持するに当たり、
図1及び
図5等に示すように、3基のストレーナーユニット20を直列に連結する場合には、支持台10上のスライドレール10aにスライドベアリング10bを介して、ストレーナー組立体7の入口側及び出口側の端板17a,17b、及びそれらの間に位置させた一対の連結支持部材26を摺動自在に支持させ、それらにおける環状筒受け部26aの間に、それぞれ上記回転筒24を同1軸線の周りで回転可能に支持させている。単一のストレーナーユニット20を用いる場合には、上記連結支持部材26を用いることなく、上記入口側と出口側の端板17a,17bの間に回転可能に支持させることになる。
【0041】
上記入口側及び出口側端板17a,17b並びに連結支持部材26には、明確に図示していないが、回転筒24の筒端を支持する部位に環状の筒受け部26aを設け、それらと異物排出リング25を含む回転筒24の筒端との間に形成した封止溝26bに封止環26c及び封止クッション26dをそれぞれ嵌入して、入口側及び出口側端板17a,17b間を圧縮することにより、回転軸24間及び該回転軸24と上記17a,17b間を相互に回転可能でありながらコンパウンドの漏出を封止可能とし、また、
図2及び
図7に示すように、入口側端板17aと出口側端板17a,17bとの間に流体圧シリンダ27を設けて、流体圧源からの液圧を該流体圧シリンダ27に加えることにより、
図5及び
図6に示すように、複数段の回転筒24を密に圧接させ、或いは、
図7及び
図8に示すように、ストレーナー組立体7をメンテナンス等のために解体可能に構成している。
【0042】
図5及び
図6に示すように、上記複数のストレーナーユニット20を備える場合、その回転筒24を回転させるため、ストレーナーの支持台10内には、ストレーナーユニット20の数に応じた回転用モータ等の駆動機構30を設け、各回転筒24の外周に成形した歯車や鎖車等の伝動輪24aには、上記駆動機構30からの回転動力を伝導するチェーン等の巻き掛け伝動部材31を巻き掛けることにより、該回転筒24をその中心軸線の周りで独立して回転可能に形成している。各回転筒24の回転方向は、
図5及び
図6に示す矢印から分かるように、隣接する回転筒24が互いに逆方向になるようにすることが望ましい。
【0043】
上述のように、濾過網22を直円錐形に成形すると、その濾過網通過面積がストレートスクリュー5のシリンダ6の開口面積より30%を超える程度に非常に大きく拡張できて、コンパウンドの通過抵抗を著しく低減させることになり、濾過網22の線径が占める通路の狭隘化原因を排除することができる。また、この濾過網22の直円錐形状化に加えて、濾過網22を保持する網保持具23を駆動機構30で回転させるようにしているため、コンパウンドの進路に対して直交配置の濾過網の開口ではなく、回転筒24に押し込まれてくるコンパウンドを濾過網22の断面がせん断するように作用することで、濾過網の開口面積の数分の1の微細な濾過面積で濾過され、例えば、開口面が50メッシュの濾過網を用い、コンパウンドの流速を1と仮定し、濾過網を4倍の速度で回転したとすると、200メッシュで濾過することになる。
【0044】
同時に、濾過網の断面を構成する線材間の隙間がコンパウンドの通過を許容するが、通過しようとするコンパウンドを線材の移動によって削ぎ取っていくように作用することで濾過抵抗を軽減している。また、この濾過挙動は、混練機で受ける分散作用の比ではないせん断作用を付与し、従来の静止網では実現できなかったミクロな分散を可能にし、超微細で高能率的な濾過を温度上昇なく実現できる。
【0045】
このことは、濾過網22の開口面積を異物の捕捉に必要なところまで小さくしなくても、線材が破損しない太さでよりメッシュの大きい濾過網22を編み、その破損を防止することが可能にするものであり、交換頻度を低減してラインストップ回数を減らすことで、生産性向上に大きく寄与することになる。そして、コンパウンドの進行速度より網の回転速度を速めると、濾過の微細化を進めることが可能になり、遅くすると網通過抵抗が極小化され、コンパウンドの低温濾過が実現できる。しかも、ストレーナーユニット20を多段に設置すると、更に微細濾過性能を備えることになり、高い品質のコンパウンドを得ることができる。
【0046】
しかも、上述のようにストレーナー本体21を回転させるような構成を採用すると、濾過網22の表面で捕捉されたコンパウンドの混入異物が、該コンパウンドに与えられている推力で異物の溜め溝25aへ押流されてそこに滞留し、更に、該推力で異物の溜め溝25aから排出孔25bを経て異物排出リング25の外周に設けた異物排出溝25cに押し出され、回転筒24の回転に伴ってそれらが掻出し棒25dで系外に掻き出される。そのため、濾過網22の網目を通過できなかった異物は、コンパウンドに与えられている推力で網保持具23の異物の溜め溝25aに自動的に送られるだけではなく、上記異物排出リング25内の数個の異物排出孔25bを経てその外周面の異物排出溝25cに押し出され、その後は、回転筒24の回転に伴って掻出し棒25dで掻き出したうえで放出されることになり、結果的に、濾過網22の表面は常に混入異物で閉塞されない開口状態が維持され、長時間に亘る低い濾過抵抗を維持させることができ、押出しラインの連続性を維持する高い生産性を得ることができる。
【0047】
また、
図5に示しているように、上記連結支持部材26及びストレートスクリュー5のシリンダ5には、それらの内部を通過するコンパウンドの状態を監視する温度センサー33と圧力センサー34を装備させている。連結支持部材26内に設ける温度センサー33及び圧力センサー34は、必要な回転筒24内を流れるコンパウンドの状態を監視するものとして、必要な回転筒24内に設けることができる。更に、回転する個々の回転筒24に駆動機構30から回転力を加えるモーター等の駆動機構30の負荷駆動時の動力を計測する電流計を装着して、その測定データーから濾過網22の閉塞程度を検知することもできる。
【0048】
これらの温度センサー33及び圧力センサー34の出力は、この混入異物除去装置の駆動を制御する図示しない制御装置において、スクリュー駆動装置2及び各段の回転筒24の駆動機構30における回転条件の調節に用い、更に、必要があれば、上記テーパースクリュー3及びストレートスクリュー5のスクリュー軸内に冷媒を供給する冷媒循環装置15の運転条件や、テーパースクリュー3のケーシング4における冷媒ジャケット4f及びストレートスクリュー5のシリンダ6における冷媒ジャケット6cに対して冷媒を供給する冷媒循環装置の運転条件の調整に利用することができる。また、上記電流計の出力は、個々の回転筒24の回転速度や回転方向を制御するためのデーターとして活用することができる。
【0049】
上記温度センサー33及び圧力センサー34の出力による制御例について説明すると、前述した回転する濾過網22でコンパウンドを濾過することから、濾過網22の回転速度はコンパウンドの粘性によって調整する必要がある。高い粘度のコンパウンドは、濾過網22の速い回転での濾過ができなくなるので、スクリュー押出機の押し圧力の上昇が発生し、そのため、この圧力上昇を検知したときには上記回転速度を下げる必要がある。また上記押し圧力上昇により、当然にコンパウンド温度も上昇するので、温度センサー33からの昇温の信号に対しては、濾過網22の回転速度を下げる指令を出す必要がある。
【0050】
更に、濾過網22の上流側の圧力センサー34の出力が上昇を示すときには、その下流側の濾過網22で閉塞が始まっているため、該圧力センサー34の下流側の回転筒24の回転数を下げて濾過網の開口面積を実質的に拡張させる方向に制御し、一旦は圧力を下げるが、濾過網の表面のクリーニングを優先する警報を出力させ、逆に、上記圧力センサー34の出力が低下したときには、該センサーの上流側での流れを促進させて圧力を上昇させる制御を行えばよい。また、回転筒の駆動機構30を構成するモーターに付設した電流計の測定値の変動は、前後の回転筒の流量のバランスが崩れたことを示唆するため、その崩れを是正するような制御に適用することになる。
【0051】
更に、
図1及び
図2に示す高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置においては、ストレーナー組立体7の出口側に、シート成形カレンダーロール8aを備えたコンパウンドシート成形装置8を連設した例を示しているが、ストレーナー組立体7を出るコンパウンドは、上述の成形装置8のようにシートに圧延したり、上記ストレーナー組立体7の出口側にダイスを設けて所要の断面形状の製品を押出したり、ストランドを押し出して回転カッターでペレタイズしたり、テープ状に押し出したりするなど、次工程に適した形状の材料として取り出すことができる。
【0052】
また、上記高分子複合コンパウンドの混入異物除去装置は、前述したように、コモンベッド1上に敷設されたスライドレール1a,1b上において、テーパースクリュー3の回転の軸線に沿って、次の構成ユニット、即ち、スライド駆動装置36によりテーパースクリュー3を覆う位置と開放する位置に移動可能にしたケーシング4と、スライド駆動装置37によりストレートスクリュー5に外嵌する位置とそれを開放する位置に移動可能にしたシリンダ6と、図示しない駆動装置を備えたストレーナーの台車を構成する支持台10により移動可能にしたストレーナー組立体7と、ストレーナー組立体7の出口側に配設され、スライド駆動装置39により移動可能で、ロックピン40によりその位置をロック可能にしたコンパウンドシート成形装置8とを、それぞれ個別的に移動可能にしたものである。
【0053】
そして、上記ケーシング4は、そのスクリュー駆動装置2側の固定板4bが、該スクリュー駆動装置2の固定台11上の取付板11aに対して緊締装置45により着脱可能に固定され、またケーシング4の吐出側フランジ4gは、シリンダ6の入口側フランジ6aに対して緊締装置46により着脱可能に固定され、該シリンダ6の吐出側フランジ6bは、ストレーナー組立体7における入口側端板17aと緊締装置47により着脱可能に固定され、該ストレーナー組立体7における出口側端板17bに対しては、その次に配置されるコンパウンドシート成形装置8等との関連により、必要な機器を着脱可能に連接できるようにしている。
【0054】
上記コンパウンドの混入異物除去装置においては、各構成ユニットが上述の構成を備えているので、上記各緊締装置45〜47のいずれかを操作して、隣接する構成ユニットを非連結状態とし、その非連結状態にある緊締装置の両側の構成ユニットを離間させれば、それらの間にスクリュー等を露出させることができ、或いは、ストレーナー組立体7のシリンダ6側の緊締装置47を非連結にすると同時に、コンパウンドシート成形装置8をストレーナー組立体7から離間させれば、ストレーナー組立体7を
図7及び
図8に示すような解体状態にすることができる。そのため、上述の露出部分や解体部分の清掃作業や、処理材料の切り替え時のクリーニング作業を容易にすることができ、特に上記スライド駆動装置36,37,40や緊締装置45〜47を油圧ユニット50に接続して機械的に開閉自在なものにすると、上記各作業の所要時間を短縮し、装置のメンテナンスを容易でしかも確実に行うことが可能になる。
【0055】
特に上記ストレーナーユニット20のメンテナンスは、回転筒24の駆動機構30であるモーターに図示省略の昇降機構を付設し、また、流体圧シリンダ27による回転筒24間の緊締を解除した際に各回転筒24を支持する支持部材を設けて、回転筒間の緊締を解除すると共に上記モーターを上昇させることにより、上記支持部材上に載置された回転筒を自由に取り外すことが可能になり、この状態で回転筒から濾過網22を網保持具23と共に取り出して、交換や修理、クリーニング等のメンテナンスを行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
7 ストレーナー組立体
10 支持台
20 ストレーナーユニット
21 ストレーナー本体
22 濾過網
23 網保持具
23a 多孔材
24 回転筒
24b コンパウンド流路
25 異物排出リング
25a 溜め溝
25c 排出溝
30 駆動機構