特許第6383727号(P6383727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383727
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/16 20180101AFI20180820BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20180820BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20180820BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20180820BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20180820BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20180820BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20180820BHJP
【FI】
   F21S41/16
   F21S41/20
   F21V9/32
   F21V9/08 200
   G02B19/00
   F21V9/08 300
   F21W102:155
   F21Y115:30
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-530684(P2015-530684)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2014003754
(87)【国際公開番号】WO2015019555
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-165806(P2013-165806)
(32)【優先日】2013年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
【審査官】 當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−169375(JP,A)
【文献】 特開2012−221634(JP,A)
【文献】 特開2013−132984(JP,A)
【文献】 特開2012−247529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/16
F21S 41/20
F21V 9/08
F21V 9/32
G02B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
450nm以上470nm以下の波長域内にピーク波長を有する青色レーザ光を出射する第1光源と、
510nm以上550nm以下の波長域内にピーク波長を有する緑色レーザ光を出射する第2光源と、
630nm以上650nm以下の波長域内にピーク波長を有する赤色レーザ光を出射する第3光源と、
前記青色レーザ光又は前記緑色レーザ光により励起され580nm以上600nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光を発光する蛍光体と、
前記青色レーザ光、前記緑色レーザ光、前記赤色レーザ光及び前記励起光を集合させて白色光を生成する集光部と、
を備え
前記蛍光体は、前記青色レーザ光又は前記緑色レーザ光の光路上であって、且つ前記集光部よりも光路の上流側に配置されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記青色レーザ光により励起され470nm以上520nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光を発光する蛍光体をさらに備える請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記赤色レーザ光により励起され650nm以上700nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光を発光する蛍光体をさらに備える請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記集光部は、前記青色レーザ光、前記緑色レーザ光、前記赤色レーザ光及び前記励起光を混ぜ合わせて均質化し、前記白色光を生成する光インテグレータを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に自動車などの車両に用いられる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体光源と、半導体光源の出射光を車両周辺に反射するミラーと、ミラーを往復回動する走査用アクチュエータと、を備えた車両用灯具が開示されている。この車両用灯具では、走査用アクチュエータがミラーを高速で駆動し、ミラーの反射光を車両周辺の所定の照射範囲でスキャンすることで、車両前方に所定の配光パターンを形成している(以下では適宜、このような光学系をスキャン光学系と称する)。また、この車両用灯具では、赤色LED、緑色LED及び青色LEDが組み合わされて、光源として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−36835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光源は、LEDに比べて指向性や収束性に優れた光を出射することができる。そのため、レーザ光源は、LEDに比べて車両用灯具における光利用率の向上を図ることができる。また、車両用灯具の光利用率を向上できることから、レーザ光源は、光利用率が低下しやすい上述したスキャン光学系を備える車両用灯具に好適に採用することができる。そこで本発明者は、レーザ光源を用いる車両用灯具について鋭意研究を重ねた結果、上述した従来の車両用灯具においてLEDをレーザ光源に置き換えた場合、すなわち赤色、緑色及び青色のレーザ光を組み合わせて白色光を形成した場合、演色性の向上が望まれることを見出した。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザ光源を備える車両用灯具の演色性の向上を図るための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具である。当該車両用灯具は、450nm以上470nm以下の波長域内にピーク波長を有する青色レーザ光を出射する第1光源と、510nm以上550nm以下の波長域内にピーク波長を有する緑色レーザ光を出射する第2光源と、630nm以上650nm以下の波長域内にピーク波長を有する赤色レーザ光を出射する第3光源と、青色レーザ光又は緑色レーザ光により励起され580nm以上600nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光を発光する蛍光体と、青色レーザ光、緑色レーザ光、赤色レーザ光及び励起光を集合させて白色光を生成する集光部と、を備える。この態様によれば、レーザ光源を備える車両用灯具における演色性を向上させることができる。
【0007】
上記態様において、青色レーザ光により励起され470nm以上520nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光を発光する蛍光体をさらに備えてもよい。また、上記いずれかの態様において、赤色レーザ光により励起され650nm以上700nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光を発光する蛍光体をさらに備えてもよい。これらの態様によれば、車両用灯具の演色性をより向上させることができる。なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ光源を備える車両用灯具の演色性の向上を図るための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図2】光源ユニットの概略構造を示す側面図である。
図3】灯具前方側から観察したときの走査部の概略斜視図である。
図4】実施形態1に係る車両用灯具により形成される配光パターンの一例を示す図である。
図5図5(A)は、青色レーザ光、緑色レーザ光及び赤色レーザ光からなる白色レーザ光の分光分布を示す図である。図5(B)は、実施形態1に係る車両用灯具が照射する白色光の分光分布を示す図である。
図6】実施形態2に係る車両用灯具における光源ユニットの概略構造を示す側面図である。
図7】実施形態2に係る車両用灯具が照射する白色光の分光分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。なお、図1は、光源ユニット100の内部を透視した状態を図示している。また、走査部300の永久磁石312,314の図示を省略している。本実施形態に係る車両用灯具1は、例えば、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは、実質的に同一の構成であるため、図1には車両用灯具1として左右いずれかの前照灯ユニットの構成を示す。なお、以下に説明する車両用灯具1の構造は例示であって、以下の構造に限定されるものではない。
【0012】
車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆う透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、支持プレート6と、光源ユニット100と、走査部300と、制御ユニット400とが収容される。
【0013】
光源ユニット100及び走査部300は、支持プレート6により灯室3内の所定位置に支持される。支持プレート6は、コーナー部がエイミングスクリュー8によってランプボディ2に接続される。光源ユニット100は、第1光源102、第2光源104、第3光源106、ヒートシンク110、蛍光体130及び集光部200等を有する。光源ユニット100は、ヒートシンク110が支持プレート6に接するようにして、支持プレート6の前面に固定される。光源ユニット100の内部構造については後に詳細に説明する。
【0014】
走査部300は、反射鏡318を有する。走査部300の構造については後に詳細に説明する。走査部300は、光源ユニット100から出射された光を灯具前方に反射するように光源ユニット100との位置関係が定められて、支持プレート6の前面から灯具前方側に突出する突出部10に固定される。突出部10はピボット機構10aを備え、走査部300はピボット機構10aを介して突出部10に支持される。また、突出部10は、ロッドと、このロッドを灯具前後方向に伸縮させるモータとを有する支持用アクチュエータ10bを備える。ロッドの先端は、走査部300に接続される。突出部10は、ロッドを伸縮させることで、ピボット機構10aを軸として走査部300を揺動させることができ、これにより走査部300の鉛直方向の傾斜角度(ピッチ角度)を調整(初期エイミング調整など)することができる。支持用アクチュエータ10bは、制御ユニット400に接続される。
【0015】
制御ユニット400は、制御プログラムを適宜選択的に実行し各種制御信号を生成する灯具ECU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納や灯具ECUによるプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM等を有する。制御ユニット400は、支持用アクチュエータ10bや後述する走査用アクチュエータの駆動、第1光源102〜第3光源106の点消灯等を制御する。制御ユニット400は、支持プレート6よりも灯具後方側でランプボディ2に固定される。なお、制御ユニット400を設ける位置は、特にこれに限定されない。
【0016】
車両用灯具1は、エイミングスクリュー8を回転させて支持プレート6の姿勢を調節することで光軸を水平方向及び鉛直方向に調整可能である。灯室3内における光源ユニット100及び走査部300の灯具前方側には、走査部300によって反射された光の灯具前方への進行を許容する開口部を有するエクステンション部材12が設けられる。
【0017】
続いて、車両用灯具1を構成する光源ユニット100及び走査部300の構成について詳細に説明する。
【0018】
(光源ユニット)
図2は、光源ユニットの概略構造を示す側面図である。なお、図2では、光源ユニット100の内部を透視した状態を図示している。光源ユニット100は、第1光源102、第2光源104、第3光源106、ヒートシンク110、第1レンズ112、第2レンズ114、第3レンズ116、蛍光体130及び集光部200等を有する。
【0019】
第1光源102は、450nm以上470nm以下の波長域内にピーク波長を有する青色レーザ光Bを出射する光源である。第2光源104は、510nm以上550nm以下の波長域内にピーク波長を有する緑色レーザ光Gを出射する光源である。第3光源106は、630nm以上650nm以下の波長域内にピーク波長を有する赤色レーザ光Rを出射する光源である。第1光源102〜第3光源106は、レーザダイオードで構成され、共通の基板109に搭載される。なお、各光源は、固体レーザ、ガスレーザ等のレーザ装置で構成されてもよい。
【0020】
第1光源102、第2光源104及び第3光源106は、それぞれのレーザ光出射面が灯具前方側を向き、基板109が灯具後方側を向くように配置され、ヒートシンク110の灯具前方側の面に取り付けられる。ヒートシンク110は、各光源が発する熱を効率よく回収できるよう、アルミニウムなどの熱伝導率が高い材料によって形成される。ヒートシンク110の灯具後方側の面は、支持プレート6(図1参照)に接する。各光源は、基板109、ヒートシンク110及び支持プレート6を介して放熱される。
【0021】
蛍光体130は、緑色レーザ光Gにより励起され580nm以上600nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光Oを発光する。蛍光体130は、緑色レーザ光Gをおおよそ橙色の光に波長変換する蛍光体である。蛍光体130の構造は公知であるため詳細な説明は省略する。本実施形態では、第2光源104が発する緑色レーザ光Gの一部が蛍光体130の励起に用いられる。蛍光体130は、緑色レーザ光Gの光路上に設けられ、第2光源104から出射される緑色レーザ光Gが蛍光体130に入射する。入射した緑色レーザ光Gの一部は、蛍光体130により励起光Oに波長変換されて出射される。また、残りの緑色レーザ光Gは、蛍光体130により波長変換されることなく出射される。したがって、蛍光体130からは、緑色レーザ光Gと励起光Oとが混合された混合光GOが出射される。
【0022】
第1レンズ112、第2レンズ114及び第3レンズ116は、例えばコリメートレンズで構成される。第1レンズ112は、第1光源102と集光部200との間の青色レーザ光Bの光路上に設けられ、第1光源102から集光部200に向かう青色レーザ光Bを平行光に変換する。第2レンズ114は、蛍光体130と集光部200との間の混合光GOの光路上に設けられ、蛍光体130から集光部200に向かう混合光GOを平行光に変換する。第3レンズ116は、第3光源106と集光部200との間の赤色レーザ光Rの光路上に設けられ、第3光源106から集光部200に向かう赤色レーザ光Rを平行光に変換する。
【0023】
集光部200は、青色レーザ光B、緑色レーザ光G、赤色レーザ光R及び励起光Oを集合させて白色光Wを生成する。集光部200は、第1ダイクロイックミラー202、第2ダイクロイックミラー204、第3ダイクロイックミラー206及び光インテグレータ208を有する。
【0024】
第1ダイクロイックミラー202は、少なくとも青色レーザ光Bを反射するミラーであり、第1レンズ112を通過した青色レーザ光Bを光インテグレータ208に向けて反射するように配置される。第2ダイクロイックミラー204は、少なくとも混合光GOを反射し青色レーザ光Bを透過させるミラーであり、第2レンズ114を通過した混合光GOを光インテグレータ208に向けて反射するように配置される。第3ダイクロイックミラー206は、少なくとも赤色レーザ光Rを反射し青色レーザ光B及び混合光GOを透過させるミラーであり、第3レンズ116を通過した赤色レーザ光Rを光インテグレータ208に向けて反射するように配置される。
【0025】
各ダイクロイックミラーは、それぞれが反射したレーザ光の光路が平行で、且つ各レーザ光が束ねられて光インテグレータ208に入射されるように互いの位置関係が定められる。本実施形態では、第1ダイクロイックミラー202〜第3ダイクロイックミラー206は、各ダイクロイックミラーにおいてレーザ光あるいは混合光が当たる領域(光の反射点)が一直線上に並ぶように配置されている。
【0026】
第1光源102から出射された青色レーザ光Bは、第1ダイクロイックミラー202により第2ダイクロイックミラー204側に反射される。蛍光体130から出射された混合光GOは、第2ダイクロイックミラー204により第3ダイクロイックミラー206側に反射されるとともに、第2ダイクロイックミラー204を透過した青色レーザ光Bと束ねられる。第3光源106から出射された赤色レーザ光Rは、第3ダイクロイックミラー206により光インテグレータ208側に反射されるとともに、第3ダイクロイックミラー206を透過した青色レーザ光B及び混合光GOと束ねられる。第1ダイクロイックミラー202〜第3ダイクロイックミラー206により束ねられた青色レーザ光B、緑色レーザ光G、赤色レーザ光R及び励起光Oは、光インテグレータ208に入射する。
【0027】
光インテグレータ208は、光源ユニット100の筐体に設けられた開口101に嵌め合わされる。光インテグレータ208に入射する青色レーザ光B、緑色レーザ光G、赤色レーザ光R及び励起光Oは、光インテグレータ208により混ぜ合わされて均質化され、白色光Wが生成される。白色光Wは、光インテグレータ208から走査部300に向けて進行する。
【0028】
(走査部)
図3は、灯具前方側から観察したときの走査部の概略斜視図である。走査部300は、光源ユニット100から出射される白色光Wを走査して、所定の配光パターン(図4参照)を形成するための機構である。走査部300は、ベース302、第1回動体304、第2回動体306、第1トーションバー308、第2トーションバー310、永久磁石312,314、端子部316及び反射鏡318等を有する。ベース302は、中央に開口部302aを有する枠体であり、灯具前後方向に傾斜した状態で突出部10(図1参照)の先端に固定される。ベース302には、所定位置に端子部316が設けられる。開口部302aには、第1回動体304が配置される。第1回動体304は、中央に開口部304aを有する枠体であり、灯具後方下側から灯具前方上側に延在する第1トーションバー308により、ベース302に対し左右(車幅方向)に回動可能に支持される。
【0029】
第1回動体304の開口部304aには、第2回動体306が配置される。第2回動体306は、矩形状の平板であり、車幅方向に延在する第2トーションバー310により、第1回動体304に対し上下(鉛直方向)に回動可能に支持される。第2回動体306は、第1回動体304が第1トーションバー308を回動軸として左右に回動すると、第1回動体304とともに左右に回動する。第2回動体306の表面には、メッキ又は蒸着等の方法により反射鏡318が設けられる。
【0030】
ベース302には、第1トーションバー308の延在方向と直交する位置に、一対の永久磁石312が設けられる。永久磁石312は、第1トーションバー308と直交する磁界を形成する。第1回動体304には第1コイル(図示せず)が配線され、第1コイルは端子部316を介して制御ユニット400(図1参照)に接続される。また、ベース302には、第2トーションバー310の延在方向と直交する位置に、一対の永久磁石314が設けられる。永久磁石314は、第2トーションバー310と直交する磁界を形成する。第2回動体306には第2コイル(図示せず)が配線され、第2コイルは端子部316を介して制御ユニット400に接続される。
【0031】
第1コイル及び永久磁石312と、第2コイル及び永久磁石314とにより走査用アクチュエータが構成される。走査用アクチュエータは、制御ユニット400により駆動が制御される。制御ユニット400は、第1コイル及び第2コイルに流れる駆動電圧の大きさと向きを制御する。これにより、第1回動体304及び第2回動体306が左右に往復回動し、また第2回動体306が単独で上下に往復回動する。その結果、反射鏡318が上下左右に往復回動する。
【0032】
光源ユニット100から出射される白色光Wは、反射鏡318により灯具前方に反射される。そして、走査部300は、反射鏡318の往復回動により白色光Wで車両前方を走査する。例えば走査部300は、配光パターンの形成領域よりも広い走査範囲で反射鏡318を回動させる。そして、制御ユニット400は、反射鏡318の回動位置が配光パターンの形成領域に対応する位置にあるとき第1光源102〜第3光源106を点灯させる。これにより、白色光Wが配光パターンの形成領域に配光されて、車両前方に所定の配光パターンが形成される。
【0033】
(配光パターンの形状)
図4は、実施形態1に係る車両用灯具により形成される配光パターンの一例を示す図である。なお、図4では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。また、白色光Wの走査の軌跡は、破線及び実線で模式的に示している。
【0034】
走査部300は、車幅方向に延在する矩形の走査領域SA内を白色光Wでスキャン可能である。制御ユニット400は、走査部300による白色光Wの走査位置がロービーム用配光パターンLo内である場合に、第1光源102〜第3光源106からレーザ光を出射させ、当該走査位置がロービーム用配光パターンLo外である場合に、各光源からのレーザ光の出射を停止させる。これにより、対向車線側カットオフラインCL1、自車線側カットオフラインCL2及び斜めカットオフラインCL3を有するロービーム用配光パターンLoが形成される。なお、車両用灯具1は、ハイビーム用配光パターン等を含む多種多様な配光パターンを形成することができる。
【0035】
(車両用灯具の演色性)
続いて、車両用灯具1の演色性について説明する。図5(A)は、青色レーザ光、緑色レーザ光及び赤色レーザ光からなる白色レーザ光の分光分布を示す図である。図5(B)は、実施形態1に係る車両用灯具が照射する白色光の分光分布を示す図である。図5(A)及び図5(B)では横軸を波長[nm]とし、縦軸を相対分光エネルギーとしたグラフを示している。図5(A)では、一例としてピーク波長465nmの青色レーザ光B、ピーク波長532nmの緑色レーザ光G及びピーク波長639nmの赤色レーザ光Rを合成して得られる白色レーザ光の分光分布を示している。また、図5(B)では、一例としてピーク波長465nmの青色レーザ光B、ピーク波長532nmの緑色レーザ光G、ピーク波長580nmの励起光O及びピーク波長639nmの赤色レーザ光Rを合成して得られる白色光の分光分布を示している。
【0036】
図5(A)に示すように、青色レーザ光B、緑色レーザ光G及び赤色レーザ光Rが合成されてなる白色レーザ光は、青色光の波長域内、緑色光の波長域内及び赤色光の波長域内のそれぞれに、バンド幅(半値幅)の極めて狭いピーク波長を有する。ここで、一般に車両用灯具には、照射光が所定の白色の範囲に収まるようにその色度(x,y)及び色温度(K)を調整することが要求される。また車両用灯具には、他車両のターンシグナルランプや路肩のデリニエータ等のアンバー色の被照射体と、他車両のテール&ストップランプ等の赤色の被照射体とを明瞭に区別できるように、アンバー色と赤色とを正確に表現することが要求される。これに対し、上述した分光分布特性を有する白色レーザ光は、色度及び色温度の条件を満たすように調整した場合、緑色レーザ光Gの波長域と赤色レーザ光Rの波長域との間に分布される光を含まないため、アンバー色の被照射体が赤色に見えてしまう、あるいは被照射体からの反射光量が小さくなり被照射体を視認しにくい場合があった。この場合、デリニエータ等とテール&ストップランプ等の区別が困難になるおそれがある。また、赤色光に対する感度が低い視覚特性を有する運転者等には、被照射体の存在が視認しにくくなるおそれがあった。
【0037】
これに対し、本実施形態に係る車両用灯具1は、青色レーザ光B、緑色レーザ光G、赤色レーザ光R及び橙色の励起光Oが合成されてなる白色光Wを形成する。この白色光Wには、図5(B)に示すように、緑色レーザ光Gの波長域と赤色レーザ光Rの波長域の間に分布される光(励起光O)が含まれる。励起光Oは、比較的バンド幅が広い。したがって、白色光Wは、上述した白色レーザ光とは異なり黄〜橙色の分光分布を有する。このため、白色レーザ光に比べてアンバー色と赤色とを正確に表現することができ、アンバー色の被照射体と赤色の被照射体とを明瞭に区別することができる。また、上述した視覚特性を有する運転者等に対して、被照射体を視認させやすくすることができる。よって、レーザ光源を備える車両用灯具1の演色性を向上させることができる。
【0038】
なお、本実施形態において、蛍光体130は緑色レーザ光Gにより励起されるが、特にこの構成に限定されず、蛍光体130は青色レーザ光Bにより励起されるものであってもよい。このような蛍光体の構造も公知であるため、詳細な説明は省略する。この場合、例えば蛍光体130は、青色レーザ光Bの光路上に設けられ、第1光源102が発する青色レーザ光Bの一部により励起される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用灯具1は、青色レーザ光B、緑色レーザ光G、励起光O及び赤色レーザ光Rを集合させて白色光Wを生成している。これにより、青色レーザ光B、緑色レーザ光G及び赤色レーザ光Rを集合させて白色レーザ光を生成する場合に比べて、車両用灯具の演色性を向上させることができる。その結果、運転者の視認性を向上させることができる。また、車両用灯具における演色性の向上と、レーザ光源を用いることで得られる光利用率の向上との両立を図ることができる。また、蛍光体130は、第1光源102又は第2光源104を励起光源として利用している。このため、別途、蛍光体130用の励起光源を設ける場合に比べて、車両用灯具1の部品点数の増大を抑制することができる。また、車両用灯具1は、レーザ光源とスキャン光学系とを組み合わせて配光パターンを形成する。このため、光利用率の低下を抑制しながら多種多様な配光パターンの形成が可能である。
【0040】
(実施形態2)
実施形態2に係る車両用灯具は、励起光Oを発する蛍光体130に加えて、別の励起光P,Qを発する蛍光体をさらに備える点を除き、実施形態1に係る車両用灯具の構成と共通する。以下、実施形態2に係る車両用灯具について実施形態1と異なる構成を中心に説明する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明及び図示は適宜省略する。
【0041】
図6は、実施形態2に係る車両用灯具における光源ユニットの概略構造を示す側面図である。なお、図6では、光源ユニット100の内部を透視した状態を図示している。光源ユニット100は、第1光源102、第2光源104、第3光源106、ヒートシンク110、第1レンズ112、第2レンズ114、第3レンズ116、蛍光体130、蛍光体132、蛍光体134及び集光部200等を有する。
【0042】
第1光源102は、450nm以上470nm以下の波長域内にピーク波長を有する青色レーザ光Bを出射する光源である。第2光源104は、510nm以上550nm以下の波長域内にピーク波長を有する緑色レーザ光Gを出射する光源である。第3光源106は、630nm以上650nm以下の波長域内にピーク波長を有する赤色レーザ光Rを出射する光源である。
【0043】
蛍光体130は、緑色レーザ光Gにより励起され580nm以上600nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光Oを発光する。蛍光体132は、青色レーザ光Bにより励起され470nm以上520nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光Pを発光する。蛍光体134は、赤色レーザ光Rにより励起され650nm以上700nm以下の波長域内にピーク波長を有する励起光Qを発光する。
【0044】
蛍光体132は、青色レーザ光Bをおおよそ青緑色の光に波長変換する蛍光体である。蛍光体132の構造は公知であるため詳細な説明は省略する。本実施形態では、第1光源102が発する青色レーザ光Bの一部が蛍光体132の励起に用いられる。蛍光体132は、青色レーザ光Bの光路上に設けられ、第1光源102から出射される青色レーザ光Bが蛍光体132に入射する。入射した青色レーザ光Bの一部は、蛍光体132により励起光Pに波長変換されて出射される。また、残りの青色レーザ光Bは、蛍光体132により波長変換されることなく出射される。したがって、蛍光体132からは、青色レーザ光Bと励起光Pとが混合された混合光BPが出射される。
【0045】
蛍光体134は、赤色レーザ光Rを、赤色レーザ光Rよりも長波長域の赤色の光に波長変換する蛍光体である。蛍光体134の構造は公知であるため詳細な説明は省略する。本実施形態では、第3光源106が発する赤色レーザ光Rの一部が蛍光体134の励起に用いられる。蛍光体134は、赤色レーザ光Rの光路上に設けられ、第3光源106から出射される赤色レーザ光Rが蛍光体134に入射する。入射した赤色レーザ光Rの一部は、蛍光体134により励起光Qに波長変換されて出射される。また、残りの赤色レーザ光Rは、蛍光体134により波長変換されることなく出射される。したがって、蛍光体134からは、赤色レーザ光Rと励起光Qとが混合された混合光RQが出射される。
【0046】
集光部200は、第1ダイクロイックミラー202〜第3ダイクロイックミラー206及び光インテグレータ208を有する。第1ダイクロイックミラー202は、第1レンズ112を通過した混合光BPを光インテグレータ208に向けて反射する。第2ダイクロイックミラー204は、第2レンズ114を通過した混合光GOを光インテグレータ208に向けて反射するとともに、混合光BPを透過させる。第3ダイクロイックミラー206は、第3レンズ116を通過した混合光RQを光インテグレータ208に向けて反射するとともに、混合光BP及び混合光GOを透過させる。第1ダイクロイックミラー202〜第3ダイクロイックミラー206により束ねられた青色レーザ光B、緑色レーザ光G、赤色レーザ光R、励起光O、励起光P及び励起光Qは、光インテグレータ208に入射する。青色レーザ光B、緑色レーザ光G、赤色レーザ光R、励起光O、励起光P及び励起光Qは、光インテグレータ208により混ぜ合わされて均質化され、白色光Wが生成される。白色光Wは、光インテグレータ208から走査部300に向けて進行する。
【0047】
(車両用灯具の演色性)
続いて、車両用灯具1の演色性について説明する。図7は、実施形態2に係る車両用灯具が照射する白色光の分光分布を示す図である。図7では横軸を波長[nm]とし、縦軸を相対分光エネルギーとしたグラフを示している。また、図7では、一例としてピーク波長465nmの青色レーザ光B、ピーク波長502nmの励起光P、ピーク波長532nmの緑色レーザ光G、ピーク波長580nmの励起光O、ピーク波長639nmの赤色レーザ光R及びピーク波長668nmの励起光Qを合成して得られる白色光の分光分布を示している。
【0048】
本実施形態に係る車両用灯具1は、青色レーザ光B、励起光P、緑色レーザ光G、励起光O、赤色レーザ光R及び励起光Qが合成されてなる白色光Wを形成する。この白色光Wには、図7に示すように、青色レーザ光Bの波長域と緑色レーザ光Gの波長域の間、緑色レーザ光Gの波長域と赤色レーザ光Rの波長域の間、及び赤色レーザ光Rの波長域よりも長波長側の波長域に分布される光が含まれる。このため、実施形態1に係る車両用灯具1が生成する白色光Wよりも演色性の高い白色光Wを生成することができる。
【0049】
なお、蛍光体130を青色レーザ光Bにより励起されて励起光Oを発光する蛍光体とし、蛍光体130及び蛍光体132の両方を青色レーザ光Bの光路上に設ける構成としてもよい。ただし、必要とされる青色レーザ光Bの強度の増大を抑制する観点から、このような構成に比べて、本実施形態のように蛍光体130を緑色レーザ光Gで励起させ、蛍光体132を青色レーザ光Bで励起させる構成の方が好ましい。また、蛍光体132及び蛍光体134のいずれか一方のみが追加されてもよい。この場合であっても、実施形態1に比べて演色性の向上を図ることができる。蛍光体132及び蛍光体134のいずれか一方のみが追加される場合、演色性向上の観点では蛍光体132を追加する方が好ましい。
【0050】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることが可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した各実施形態に変形が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0051】
上述した各実施形態において、走査部300は、ガルバノミラー、MEMSミラー、ポリゴンミラー等で構成することができる。また、車両用灯具1は、投影レンズを備えるプロジェクタ型の灯具などであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用灯具、 102 第1光源、 104 第2光源、 106 第3光源、 130,132,134 蛍光体、 200 集光部、 B 青色レーザ光、 G 緑色レーザ光、 O,P,Q 励起光、 R 赤色レーザ光、 W 白色光。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車両用灯具に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7