(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カードが挿入されるとともに排出されるカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入された前記カードが搬送されるカード搬送路と、前記カード搬送路における前記カードの搬送に異常が検出されたときに前記カード挿入口からの前記カードの引抜きを阻止するためのカードロック機構とを備え、
前記カードロック機構は、モータと、前記カードに接触して前記カードの引抜きを阻止する阻止爪が形成されるとともに前記モータから伝達される動力によって前記カードに前記阻止爪が接触する接触位置と前記カード搬送路から前記阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、前記モータの動力を前記ロック部材に伝達する動力伝達機構と、前記ロック部材を回動可能に保持する固定軸または前記ロック部材と一緒に回動する回動軸とを備え、
前記動力伝達機構は、前記モータの出力軸に固定されるねじ歯車と前記ねじ歯車と噛み合うはす歯歯車とから構成されるウォームギヤと、前記はす歯歯車が固定される第1回転軸と、前記第1回転軸に固定される第1の平歯車と、前記第1の平歯車と噛み合う第2の平歯車と、前記第2の平歯車が相対回転可能に保持される第2回転軸と、前記第2回転軸に固定される第3の平歯車と、前記第2回転軸の軸方向へ突出するように前記第2の平歯車の側面に固定される2本の歯車側ピンと、前記第2回転軸の径方向の両側へ突出するようにかつ2本の前記歯車側ピンに接触可能となるように前記第2回転軸に固定される軸側ピンとを備え、
2本の前記歯車側ピンと前記軸側ピンとによって、前記モータと前記ロック部材との間の動力伝達経路における前記第2の平歯車と前記第2回転軸との間の動力伝達を断続するピンクラッチが構成され、
前記ロック部材には、前記第3の平歯車と噛み合う歯部が形成され、
前記ロック部材は、前記固定軸または前記回動軸を中心に回動して、前記接触位置と前記退避位置との間を移動することを特徴とするカードリーダ。
前記カードに記録された磁気データの読取および前記カードへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドを備えるとともに、略長方形状に形成される前記カードを前記カードの短手方向で搬送して処理するように構成され、
前記磁気ヘッドは、前記カードの厚み方向における前記カード搬送路の一方側から前記カード搬送路に臨むように配置され、
前記ロック部材は、前記カードの厚み方向における前記カード搬送路の一方側から前記阻止爪が前記カードに接触するように、前記カードの厚み方向における前記カード搬送路の一方側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録されたデータの読取やカードへのデータの記録を行うカードリーダが広く利用されている。カードリーダが利用される金融機関等の業界では、犯罪者がカードリーダ内でカードを意図的に詰まらせて、カードを不正に取得するいわゆるフィッシングが大きな問題となっている。そこで、従来、フィッシングを防止するためのカードロック機構を備えるカードリーダが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカードリーダでは、カードロック機構は、カード挿入口からのカードの引抜きを阻止するロックレバーを備えている。ロックレバーは、カードに接触してカードの引抜きを阻止する略三角形状のロック歯を備えている。このロックレバーは、支持ピンに回動可能に支持されている。また、ロックレバーは、連結レバー、扇状歯車および減速歯車列を介してモータに連結されている。ロックレバーは、モータの動力によって、カード搬送路からロック歯が退避している位置と、ロック歯がカードに接触する位置との間で回動可能となっている。また、減速歯車列は、多くの歯車によって構成されている。そのため、このカードリーダでは、モータからロックレバーへの動力の伝達経路における減速比が大きくなっており、出力の小さい小型のモータを使用しても、カードへのロック歯の接触圧を確保することが可能となっている。
【0004】
特許文献1に記載のカードリーダでは、カード搬送路内でカードが異常停止してカードが詰まると、カードロック機構が作動して、カード搬送路から退避していたロック歯がカードに接触する。ロック歯は、カードにロック歯が接触しているときに、カードに向かうにしたがってカードリーダの奥側へ向かうように傾いている。そのため、カード挿入口からカードが引き抜かれると、カードにロック歯が刺さって、カード挿入口からのカードの引抜きが阻止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
犯罪者による犯罪行為は、年々、巧妙化しており、特許文献1に記載のカードリーダでも、犯罪者によるフィッシングが行われるおそれがあることが判明した。具体的には、犯罪者が、カード挿入口から所定の道具を挿入し、カードにロック歯が接触している状態のロックレバーをカードから離すとともに、カード挿入口からカードを引き抜くことで、犯罪者によるフィッシングが行われるおそれがあることが判明した。
【0007】
また、特許文献1に記載のカードリーダでは、モータからロックレバーへの動力の伝達経路における減速比が大きくなっているため、小型のモータを用いても、カードへのロック歯の接触圧を確保することが可能である。しかしながら、このカードリーダでは、モータからロックレバーへの動力の伝達経路における減速比を大きくするために、減速歯車列が多くの歯車によって構成されている。したがって、このカードリーダでは、小型のモータが使用されても、カードロック機構は大型化する。
【0008】
そこで、本発明の課題は、カードロック機構の小型化が可能で、かつ、フィッシングを確実に阻止することが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードが挿入されるとともに排出されるカード挿入口と、カード挿入口から挿入されたカードが搬送されるカード搬送路と、前記カード搬送路における前記カードの搬送に異常が検出されたときにカード挿入口からのカードの引抜きを阻止するためのカードロック機構とを備え、カードロック機構は、モータと、カードに接触してカードの引抜きを阻止する阻止爪が形成されるとともにモータから伝達される動力によってカードに阻止爪が接触する接触位置とカード搬送路から阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、モータの動力をロック部材に伝達する動力伝達機構と
、ロック部材を回動可能に保持する固定軸またはロック部材と一緒に回動する回動軸とを備え、動力伝達機構は、
モータの出力軸に固定されるねじ歯車
とねじ歯車と噛み合うはす歯歯車とから構成されるウォームギヤ
と、はす歯歯車が固定される第1回転軸と、第1回転軸に固定される第1の平歯車と、第1の平歯車と噛み合う第2の平歯車と、第2の平歯車が相対回転可能に保持される第2回転軸と、第2回転軸に固定される第3の平歯車と、第2回転軸の軸方向へ突出するように第2の平歯車の側面に固定される2本の歯車側ピンと、第2回転軸の径方向の両側へ突出するようにかつ2本の歯車側ピンに接触可能となるように第2回転軸に固定される軸側ピンとを備え、2本の歯車側ピンと軸側ピンとによって、モータとロック部材との間の動力伝達経路における第2の平歯車と第2回転軸との間の動力伝達を断続するピンクラッチが構成され、ロック部材には、第3の平歯車と噛み合う歯部が形成され、ロック部材は、固定軸または回動軸を中心に回動して、接触位置と退避位置との間を移動することを特徴とする。
【0010】
本発明のカードリーダでは、モータの動力をロック部材に伝達する動力伝達機構がウォームギヤを備えており、ウォームギヤでの減速比を大きくすることができる。そのため、本発明では、動力伝達機構を構成する歯車の数を減らしても、モータからロック部材への動力の伝達経路における減速比を大きくすることが可能になる。したがって、本発明では、小型のモータを使用しても、カードへの阻止爪の接触圧を確保することが可能になる。このように本発明では、動力伝達機構を構成する歯車の数を減らしても、また、小型のモータを使用しても、カードへの阻止爪の接触圧を確保することが可能になるため、カードへの阻止爪の接触圧を確保しつつ、カードロック機構を小型化することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、モータからロック部材への動力の伝達経路にウォームギヤが配置されているため、犯罪者がカード挿入口から挿入される所定の道具を用いて接触位置から退避位置に向かう方向へロック部材を押そうとしても、ウォームギヤを構成するはす歯歯車は、ほとんど回転しない。したがって、本発明では、阻止爪とカードとの接触状態が解除されるまで阻止爪が移動するのを阻止することが可能になり、阻止爪が接触している状態のカードを犯罪者が道具を用いてカード挿入口から引き抜こうとしても、阻止爪の作用で、カード挿入口からのカードの引抜きを阻止することが可能になる。その結果、本発明では、フィッシングを確実に防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、カードリーダは、カードに記録された磁気データの読取およびカードへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドを備えるとともに、略長方形状に形成されるカードをカードの短手方向で搬送して処理するように構成され、磁気ヘッドは、カードの厚み方向におけるカード搬送路の一方側からカード搬送路に臨むように配置され、ロック部材は、カードの厚み方向におけるカード搬送路の一方側から阻止爪がカードに接触するように、カードの厚み方向におけるカード搬送路の一方側に配置されていることが好ましい。すなわち、本発明において、カードの、磁気ストライプが形成される側の面に阻止爪が接触するように、ロック部材が配置されていることが好ましい。このように構成すると、万が一、阻止爪が接触している状態のカードが犯罪者によって引き抜かれたとしても、阻止爪によってカードの磁気ストライプに傷をつけることが可能になる。したがって、万が一、阻止爪が接触している状態のカードが犯罪者によって引き抜かれたとしても、引き抜かれたカードの使用を阻止することが可能になる。
【0014】
本発明におい
て、退避位置から接触位置へ移動するときのロック部材の回動方向を第1方向とすると、阻止爪が接触している状態のカードにカードの排出方向への引抜き力が生じたときに、ロック部材には、第1方向への回動力が生じ、阻止爪の先端は、阻止爪が接触している状態のカードにカードの排出方向への引抜き力が生じたときにカードに突き刺さるように尖っていることが好ましい。このように構成すると、阻止爪が接触している状態のカードを犯罪者がカード挿入口から引き抜こうとしても、阻止爪の先端がカードに突き刺さる。したがって、カード挿入口からのカードの引抜きを効果的に阻止することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のカードリーダでは、カードロック機構を小型化すること、および、フィッシングを確実に阻止することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すカード挿入部4の、カード搬送路Wよりも下側部分の斜視図である。
【0019】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取およびカード2への磁気データの記録の少なくとも一方を行うための装置であり、ATM(Automated Teller Machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。すなわち、本形態のカードリーダ1は、所定の上位装置からのコマンド命令に応じて、動作する。このカードリーダ1は、カード2が挿入されるとともに排出されるカード挿入口3が形成されるカード挿入部4と、本体部5とを備えている。カードリーダ1の内部には、カード挿入口3から挿入されたカード2が搬送されるカード搬送路Wが形成されている。カード搬送路Wは、カード挿入口3からカード挿入部4を通過して本体部5まで搬送されるカード2が通過する通路として形成されている。また、カードリーダ1は、カード搬送路Wにおけるカード2の搬送異常が検出されたときに、カード挿入口3からのカード2の引抜きを阻止するためのカードロック機構7を備えている。
【0020】
本形態では、上位装置は、カード2の搬送異常が検出されると、犯罪者の不正行為等の異常が発生したと判断して、カードロック機構7を駆動するコマンド命令をカードリーダ1に対して発するように構成されている。具体的に、カード2の搬送異常が発生したと判断する場合としては、上位装置がカード2を搬送させるコマンドが出しているにもかかわらずカード2の移動が検出できないときに、カード2が異常停止してカード搬送路Wにカード2が詰まったと判断する場合、カード2の搬送を停止するように制御しているにもかかわらずカード搬送路W内をカード2が移動している場合、さらに、カード搬送路W内のカード移動位置を検知するセンサが反応すべきではないときにカード検知信号を発する場合などがある。このように、上位装置は、そのコマンドに対応しないカードリーダ1の異常状況を検知したときに、犯罪者による不正行為が発生したと判断してカードロック機構7を駆動させるように構成されている。
【0021】
カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードである。本形態のカード2は、国際規格(たとえば、ISO/IEC7811)やJIS規格(たとえば、JISX6302)に準拠した磁気ストライプ付きのカードであり、四隅に丸みを持った略長方形状に形成されている。カード2の裏面には、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。また、カード2には、ICチップが内蔵されている。
【0022】
本形態では、
図1等に示すX方向でカード2が搬送される。具体的には、X1方向にカード2が取り込まれ、X2方向にカード2が排出される。すなわち、X方向は、カード2の搬送方向であり、X1方向は、カード2の取込方向であり、X2方向は、カード2の排出方向である。また、本形態では、カード2の短手方向とX方向とが一致するように、カードリーダ1にカード2が取り込まれる。また、カード2の短手方向とX方向とが一致するように、カードリーダ1内でカード2が搬送される。すなわち、カードリーダ1は、カード2の短手方向でカード2を搬送して所定の処理を実行するように構成されている。
【0023】
また、X方向に直交するY方向は、カード搬送路Wの幅方向であり、カードリーダ1内に正しい姿勢で取り込まれたカード2の長手方向である。また、X方向とY方向とに直交する
図1等のZ方向は、カード搬送路Wの高さ方向であり、カードリーダ1内に取り込まれたカード2の厚み方向である。本形態では、Z方向と鉛直方向とが一致するようにカードリーダ1が配置されている。以下の説明では、X方向を「前後方向」、Y方向を「左右方向」、Z方向を「上下方向」とし、また、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0024】
カード挿入部4は、本体部5の前端面に取り付けられている。本体部5は、カード2に記録された磁気データの読取およびカード2への磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッド(図示省略)と、カード2に内蔵されるICチップとの間でデータの通信を行うためのIC接点(図示省略)を備えている。
【0025】
磁気ヘッドは、カード搬送路Wの下側からカード搬送路Wに臨むように配置されている。また、磁気ヘッドは、左右方向へ移動可能なキャリッジ(図示省略)に搭載されている。キャリッジは、キャリッジ駆動機構8に連結されており、磁気ヘッドは、キャリッジと一緒に左右方向へ移動する。また、磁気ヘッドは、カード2に接触可能な位置とカード搬送路Wから退避する位置との間で上下動する。IC接点は、カード搬送路Wの上側からカード搬送路Wに臨むように配置されている。また、IC接点は、IC接点ブロックに固定されている。IC接点ブロックは、IC接点ブロック駆動機構に連結されており、IC接点は、カード2に接触可能な位置とカード搬送路Wから退避する位置との間で上下動する。
【0026】
また、本体部5は、カード2に当接してカード2を搬送する搬送ローラ10(
図1参照)と、搬送ローラ10に対向配置されるパッドローラ11(
図2参照)とを備えている。搬送ローラ10は、上側からカード搬送路Wに臨むように配置されている。パッドローラ11は、下側からカード搬送路Wに臨むように配置されている。
【0027】
(カードロック機構の構成)
図3は、
図2に示す状態から下フレーム13を取り除いた状態の斜視図である。
図4は、
図3に示すカードロック機構7を別の角度から示す斜視図である。
図5は、
図4に示す平歯車23と回転軸24との間に配置されるピンクラッチ31の構成を説明するための概略図である。
【0028】
カードロック機構7は、モータ14と、カード2の引抜きを阻止するためのロック部材15と、モータ14の動力をロック部材15に伝達する動力伝達機構16とを備えている。このカードロック機構7は、カード搬送路Wの下側に配置されている。具体的には、カードロック機構7は、
図2に示すように、カード挿入部4におけるカード搬送路Wの下面部分を構成する下フレーム13の下側に配置されている。下フレーム13には、ロック部材15を構成する後述の阻止爪35aが通過する通過孔13aが上下方向に貫通するように形成されている。
【0029】
モータ14は、その出力軸が上側へ突出するように、支持フレーム17に固定されている。支持フレーム17は、下フレーム13の下側に固定されている。動力伝達機構16は、モータ14の出力軸に固定されるねじ歯車18とこのねじ歯車18と噛み合うはす歯歯車19とから構成されるウォームギヤ20と、はす歯歯車19が固定される第1回転軸としての回転軸21と、回転軸21に固定される第1の平歯車としての平歯車22と、平歯車22と噛み合う第2の平歯車としての平歯車23と、平歯車23が相対回転可能に保持される第2回転軸としての回転軸24と、回転軸24に固定される第3の平歯車としての平歯車25とを備えている。平歯車25は、ロック部材15を構成する後述のロック板35に形成される歯部35bに噛み合っている。そのため、モータ14からロック部材15への動力の伝達方向におけるモータ14側を前段とし、ロック部材15側を後段とすると、モータ14からロック部材15への動力の伝達方向において、ねじ歯車18は、はす歯歯車19よりも前段(すなわち、モータ14側)に配置されている。
【0030】
回転軸21は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、回転軸21は、中空状に形成されている。すなわち、回転軸21は、細長い円筒状に形成されている。回転軸21の内周側には、固定軸28が挿通されている。固定軸28は、その軸方向と左右方向とが一致するように支持フレーム17に固定されている。はす歯歯車19は、回転軸21の右端側に固定され、平歯車22は、回転軸21の左端側に固定されている。
【0031】
回転軸24は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、回転軸24は、支持フレーム17に回転可能に保持されている。平歯車23は、回転軸24の右端側で回転軸24に相対回転可能に保持されている。平歯車25は、回転軸24の左端側に固定されている。平歯車23の左側面には、円柱状の2本の歯車側ピン29が左方向へ突出するように固定されている(
図5参照)。2本の歯車側ピン29は、回転軸24を中心とする180°ピッチで平歯車23に固定されている。回転軸24には、その径方向の両側へ突出する軸側ピン30が固定されている(
図5参照)。軸側ピン30は、2本の歯車側ピン29に接触可能となるように回転軸24に固定されている。本形態では、2本の歯車側ピン29と軸側ピン30とによって、モータ14とロック部材15との間の動力伝達経路において平歯車23と回転軸24との間の動力伝達を断続するピンクラッチ31が構成されている。
【0032】
ロック部材15は、カード2に接触してカード2の引抜きを阻止する阻止爪35aが形成される2枚のロック板35を備えている。ロック板35には、阻止爪35aに加えて、平歯車25と噛み合う歯部35bが形成されている。ロック板35は、左右方向を厚み方向とする平板状に形成されている。ロック板35の前上端側は、支持フレーム17に固定される固定軸36に回動可能に保持されている。すなわち、ロック部材15の前上端側は、固定軸36に回動可能に保持されている。固定軸36は、その軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。2枚のロック板35は、左右方向に所定の間隔をあけた状態で固定軸36に保持されている。
【0033】
阻止爪35aは、ロック板35の上端側に形成されている。また、阻止爪35aは、固定軸36よりも奥側に配置されている。阻止爪35aは、左右方向から見たときに先端側に向かうにしたがってその幅が狭くなる三角形状に形成されている。すなわち、阻止爪35aの先端は尖っている。歯部35bは、平歯車25と噛み合う複数の歯によって構成されている。この歯部35bは、ロック板35の奥端側に形成されている。具体的には、ロック板35の奥端側部分は、左右方向から見たときの形状が固定軸36を中心とする扇形状となるように形成されており、歯部35bは、ロック板35の奥端面に形成されている。
【0034】
ロック部材15は、阻止爪35aが下側からカード2に接触するように、カード搬送路Wの下側に配置されている。また、ロック部材15は、阻止爪35aが下フレーム13の通過孔13aを通過して、下側からカード2に接触するように配置されている。
【0035】
ロック部材15は、動力伝達機構16を介してモータ14から伝達される動力によって、カード2に阻止爪35aが接触する接触位置と、カード搬送路Wから阻止爪35aが退避する退避位置との間で移動可能となっている。すなわち、ロック部材15は、モータ14から伝達される動力によって、固定軸36を中心に回動して、接触位置と退避位置との間を移動する。退避位置にロック部材15があるときには、阻止爪35aは、下フレーム13の下側に配置されており、カード2に接触することはない。一方、接触位置にロック部材15があるときには、
図2に示すように、阻止爪35aの先端側は、下フレーム13の上側へ突出しており、カード2に接触可能となっている。このときには、阻止爪35aの基端側は、通過孔13aの中に配置されている。
【0036】
本形態では、平歯車25が
図4の時計回りの方向(以下、この方向を「時計方向」とする)へ回動するようにモータ14が回転すると、ロック部材15が固定軸36を中心にして
図4の反時計回りの方向(以下、この方向を「反時計方向」とする)へ回動して、退避位置から接触位置に向かってロック部材15が移動する。また、平歯車25が反時計方向へ回動するようにモータ14が回転すると、ロック部材15が固定軸36を中心にして時計方向へ回動して、接触位置から退避位置に向かってロック部材15が移動する。本形態の反時計方向は、退避位置から接触位置に向かってロック部材15が移動するときのロック部材15の回動方向となる第1方向である。
【0037】
なお、ロック部材15には、左右方向の両側へ突出するガイドピン37が固定されている。ガイドピン37は、支持フレーム17に形成されるガイド溝17a(
図3参照)に係合している。接触位置と退避位置との間を移動するロック部材15は、ガイドピン37とガイド溝17aとによって案内される。
【0038】
ロック部材15が接触位置にあるときには、阻止爪35aは、
図2に示すように、上側に向かうにしたがって奥側に向かうように傾斜している。具体的には、ロック部材15が接触位置にあるときに、三角形状に形成される阻止爪35aの先端が奥上側に向かうように、阻止爪35aは、奥上側に向かって突出している。
【0039】
阻止爪35aが接触している状態のカード2に前側への引抜き力が生じると、ロック部材15には、反時計方向の回動力が生じる。上述のように、ロック部材15の前上端側が固定軸36に回動可能に保持され、また、ロック部材15が接触位置にあるときに、阻止爪35aの先端が奥上側に向かうように、阻止爪35aが奥上側に向かって突出しているため、阻止爪35aが接触している状態のカード2に前側への引抜き力が生じると、阻止爪35aの先端がカード2に突き刺さる。すなわち、阻止爪35aの先端は、阻止爪35aが接触している状態のカード2に前側への引抜き力が生じたときにカード2に突き刺さるように尖っている。
【0040】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、モータ14の動力をロック部材15に伝達する動力伝達機構16がウォームギヤ20を備えており、ウォームギヤ20での減速比を大きくすることができる。そのため、本形態では、動力伝達機構16を構成する歯車の数を減らしても、モータ14からロック部材15への動力の伝達経路における減速比を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、小型のモータ14を使用しても、カード2への阻止爪35aの接触圧を確保することが可能になる。このように本形態では、動力伝達機構16を構成する歯車の数を減らしても、また、小型のモータ14を使用しても、カード2への阻止爪35aの接触圧を確保することが可能になるため、カード2への阻止爪35aの接触圧を確保しつつ、カードロック機構7を小型化することが可能になる。
【0041】
また、本形態では、モータ14からロック部材15への動力の伝達経路にウォームギヤ20が配置されているため、犯罪者がカード挿入口3から挿入される所定の道具を用いて接触位置から退避位置に向かう方向へロック部材15を押そうとしても、ねじ歯車18によってその回転が阻止されるはす歯歯車19は、ほとんど回転しない。したがって、本形態では、阻止爪35aとカード2との接触状態が解除されるまで阻止爪35aが移動するのを阻止することが可能になり、阻止爪35aが接触している状態のカード2を犯罪者が道具を用いてカード挿入口3から引き抜こうとしても、阻止爪35aの作用で、カード挿入口3からのカード2の引抜きを阻止することが可能になる。その結果、本形態では、フィッシングを確実に防止することが可能になる。
【0042】
特に本形態では、阻止爪35aが接触している状態のカード2に前側への引抜き力が生じたときにカード2に突き刺さるように阻止爪35aの先端が尖っており、阻止爪35aが接触している状態のカード2を犯罪者がカード挿入口3から引き抜こうとすると、阻止爪35aの先端がカード2に突き刺さる。したがって、本形態では、カード挿入口3からのカード2の引抜きを効果的に阻止することが可能になり、その結果、フィッシングをより確実に防止することが可能になる。
【0043】
本形態では、カードリーダ1は、カード2の短手方向でカード2を搬送するように構成されている。また、本形態では、磁気ヘッドは、カード搬送路Wの下側からカード搬送路Wに臨むように配置されている。すなわち、本形態では、磁気ストライプが形成される側の面が下側を向いた状態のカード2がカード挿入口3から取り込まれる。また、本形態では、ロック部材15は、阻止爪35aが下側からカード2に接触するように、カード搬送路Wの下側に配置されている。すなわち、本形態では、カード2の、磁気ストライプが形成される側の面に阻止爪35aが接触するように、ロック部材15が配置されている。そのため、本形態では、万が一、阻止爪35aが接触している状態のカード2が犯罪者によって引き抜かれたとしても、阻止爪35aによってカード2の磁気ストライプに傷をつけることが可能になる。したがって、本形態では、万が一、阻止爪35aが接触している状態のカード2が犯罪者によって引き抜かれたとしても、引き抜かれたカード2の使用を阻止することが可能になる。
【0044】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0045】
上述した形態では、動力伝達機構16は、平歯車23、25を備えており、平歯車25がロック部材15の歯部35aと噛み合っている。この他にもたとえば、平歯車22がロック部材15の歯部35aと噛み合うように動力伝達機構16が構成されても良い。また、上述した形態では、動力伝達機構16は、平歯車22、23、25を備えているが、動力伝達機構16は、平歯車22、23、25に代えて、はす歯歯車を備えていても良い。この場合には、ロック部材15の歯部35bは、はす歯歯車と噛み合うように形成される。
【0046】
上述した形態では、カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。この他にもたとえば、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。また、上述した形態では、カード2の裏面に磁気ストライプが形成されているが、カード2の裏面に代えて、カード2のおもて面に磁気ストライプが形成されても良い。たとえば、JISX6302の規格に準拠した磁気ストライプがカード2のおもて面に形成されても良い。この場合には、カード搬送路Wの上側に磁気ヘッドが配置される。また、この場合には、ロック部材15は、阻止爪35aが上側からカード2に接触するように、カード搬送路Wの上側に配置されることが好ましい。すなわち、カードロック機構7は、カード搬送路Wの上側に配置されることが好ましい。
【0047】
上述した形態では、カードリーダ1は、カード2の短手方向でカード2を搬送して所定の処理を実行するように構成されている。この他にもたとえば、カードリーダ1は、カード2の長手方向でカード2を搬送して所定の処理を実行するように構成されても良い。また、上述した形態では、ロック部材15は、固定軸36に回動可能に保持されているが、ロック部材15は、支持フレーム17に回動可能に保持される回動軸に固定されても良い。なお、上述した形態において、カード搬送路W内のカード移動位置を検知するセンサが反応すべきではないときにカード検知信号を発する場合には、下フレーム13の上側へ突出する阻止爪35aの先端側を、カード搬送路Wを開閉するシャッタとして使用しても良い。