(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383784
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】結晶水含有率を低下させた塩の生成方法
(51)【国際特許分類】
F26B 21/08 20060101AFI20180820BHJP
F26B 3/084 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
F26B21/08
F26B3/084
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-512242(P2016-512242)
(86)(22)【出願日】2014年5月2日
(65)【公表番号】特表2016-517949(P2016-517949A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2014001177
(87)【国際公開番号】WO2014180547
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】A379/2013
(32)【優先日】2013年5月7日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】504420490
【氏名又は名称】アンドリッツ・テクノロジー・アンド・アセット・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クレール・パウル・ベルンハルト
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−060862(JP,A)
【文献】
特表平07−503892(JP,A)
【文献】
特公昭50−006058(JP,B1)
【文献】
特開2012−107852(JP,A)
【文献】
特公昭50−034266(JP,B1)
【文献】
英国特許出願公告第00805159(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 3/084
F26B 21/04
F26B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥が、0.1kg/kgの絶対湿度である乾燥ガスの規定の含水率より上で進行し、ここで、規定の湿度値より高い乾燥ガスの含水率が、乾燥ガスの完全な還流によって調整され、その際、蒸発した水が凝縮により循環から移出され、かつ乾燥ガスの含水率が凝縮器温度によって調整されることを特徴とする、対流性の装置内での結晶水含有塩の乾燥方法。
【請求項2】
粉塵および/または乾燥された生成物が、乾燥前の湿った結晶水含有塩と一緒にされ、および任意選択的に混合されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉砕された大きすぎる粒子が、乾燥前の湿った結晶水含有塩と一緒にされ、および任意選択的に混合されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
生成物が1100g/l超のかさ密度を有し、かつ乾燥機を出る際の乾燥ガスの絶対湿度が0.15kg/kg超であることを特徴とする、硫酸鉄・七水和物から一水和物へと乾燥させるための請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対流性の装置内での結晶水含有塩の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの塩は、結晶化の際に水和物段階を形成する。包摂された結晶水は、輸送費を上昇させ、濃度を低下させ、かつ幾つかの場合には貯蔵安定性のない生成物を生じさせるので、しばしば望ましくない。水和物段階の高さ、つまり包摂される水分子の数は、幾つかの場合には、有利には結晶化条件によって制御できるが、多くの場合には熱による脱水を避けられない。1塩分子ごとの水分子の取込みが多ければ多いほど、最後に取り込まれた水分子がそれだけ容易に再び分離し、つまり1塩分子ごとの既に分離された水分子の数が増えるにつれ、結合エネルギーの克服に必要なエネルギーも、分離に必要な温度も上昇する。例えばグラバー塩(硫酸マグネシウム*水10)のような高次に水を含有する生成物は、室温より少し上昇するともう結晶水を放出して溶解する(溶液になる)。この挙動は、生成物品質に差が出る原因となり、この品質差は、場合によっては起こり得る熱による乾燥による。
【0003】
技術の実践では、乾燥方法に応じて、ならびに選択した稼働条件および設計条件に依存して、摩擦の影響を受けやすく粉塵の多い微粒子状の生成物または安定した粉塵の少ない顆粒または両方の品質の中間段階、移行段階が得られる。乾燥は典型的には、組み込まれた熱交換器ありまたはなしの管型回転乾燥機(ドラム型乾燥機)、管型気流乾燥機、または流動層乾燥機内で行われる。流動層中での噴霧顆粒化も用いられるが、水分蒸発が比較的大きいのであまり経済的ではない。一部では、乾燥方法を相互に組み合わせることもある。
【0004】
すべての方法に共通しているのは、生成物品質に差があり、かつ予め決定できないことである。多くの方法は、粉塵が多く摩擦の影響を受けやすい生成物を、800〜1000g/lの低いかさ密度でもたらし、別の方法は堅い顆粒を1200g/l以上でもたらす(例えば噴霧顆粒化、熱交換器が組み込まれた流動層乾燥機)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、使用する方法に関係なく、特定の特性を有しており、結晶水含有率を低下させた塩を生成することであり、この特性は、主にかさ密度(Schuettgewicht)に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
それゆえ本発明は、乾燥が、乾燥ガスの規定の含水率、例えば10%の絶対湿度より上で進行することを特徴とする。つまり乾燥中に塩粒子を取り囲むガスは特定の湿度を有している。これにより乾燥速度が影響を受ける。高速の場合、水はまず自然に表面で蒸発し、その後、温度が上昇することにより粒子の内部でさらなる結晶水が遊離して蒸発し、かつ細孔および毛細管を通って表面に案内される。質量流量が大きいので毛細管および細孔が拡張され、こうして密度が低くて構造が弱まった多孔質の粒子が生じる。低速乾燥の場合、分離した結晶水はより長く液体状態のままであり、部分的に生じる塩溶液は、細孔、亀裂、および毛細管を部分的に再び塞ぎ得るかまたは縮小し得る。高密度の堅い粒子が生じる。
【0007】
本発明の有利な一変形形態は、規定の湿度値より高い乾燥ガスの含水率を、蒸発する水だけで調整し、その際、乾燥ガスの含水率が、乾燥ガス温度により水分蒸発率を適合することによって、またはその代わりに熱交換器面積の追加によって調整され得ることを特徴とする。
【0008】
本発明の代替策としての一形態は、乾燥ガスの含水率を、乾燥ガスの部分的な還流によって調整し、これに関しては規定の湿度値より高い乾燥ガスの含水率を、乾燥ガスの完全な還流によって調整することもでき、かつこの場合は蒸発した水を凝縮により循環から移出し、かつ乾燥ガスの含水率が凝縮器温度によって調整されることを特徴とする。
【0009】
結晶水含有率の高い塩、例えばグラバー塩(硫酸ナトリウム)のような十水和物はとりわけ、低温(明らかに100°未満)で既に結晶水を放出する。温度が低いので蒸発は不十分であり、塩は溶解するかまたはくっつき合って固まる。
【0010】
したがって本発明の好ましい一変形形態は、粉塵および/または乾燥された生成物を、乾燥前の湿度の高い結晶水含有塩と一緒にし、かつ場合によっては混合することを特徴とする。この場合、過剰な遊離した結晶水を組み換えによって結合することができ、こうして問題のない混合物が得られ、この混合物をさらに乾燥することができる。この混ぜ戻しは、典型的には乾燥機の前に接続された混合機内で行われ、しかし乾燥機形状を相応に形成することにより乾燥機内で行うこともできる。
【0011】
本発明の有利な一変形形態は、粉塵の代わりにおよび/または粉塵に加えて、粉砕された大きすぎる粒子を、湿った結晶水含有塩と一緒にする(「まぶす」)ことを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい一変形形態は、含水率が、乾燥機の幾何的な部分領域内、例えば充填ゾーン内でのみ調整されることを特徴とする。
【0013】
本発明による方法に基づいて硫酸鉄・七水和物(緑礬)から一水和物へと乾燥させる場合、生成物をかさ密度1100g/l超で生成するには、乾燥機を出る際の乾燥ガスの絶対湿度を15%超に調整することが有利と分かった。
【0014】
提案した方法の教示に従い、有利な条件を調整する複数の可能性が存在する。適用されている乾燥装置の場合、蒸発した水はガスが運び去り、エネルギー供給も同様にガスによっておよび/または接触面によって行うことができる。
【0015】
純粋に対流性の装置の場合、排ガス湿度が一般的には低すぎるので、蒸発した水が排ガス湿度を所望の範囲内に上げるよう、ホットガスの温度および流量をエネルギーバランスによって選択するべきである。これはすべての種類の塩および乾燥機で必然的に成功するわけではない。温度を上げるに際しては制限がある(生成物損傷、材料安定性、利用可能なエネルギー源、...)、体積流量を上げることは確かにより多くのエネルギーを装置に供給するが、排ガス状態を所望の方向には変化させない。
【0016】
間接的な加熱を有する対流性の装置は、体積流量に依存せずに、一つには加熱面の温度により、もう一つには加熱面の大きさにより、水分蒸発率を調整することができる。これは、例えば熱交換器が組み込まれた流動層乾燥機に関し、温度上昇が既に最高値に達している場合に、充填密度(m
2 熱交換面積/m
3 層体積)を大きくして伝達面積を拡げること、または充填密度が変化しない場合は層深さを大きくすることを意味する。これにより、流量が変化しなくても水分蒸発が上昇し、排ガス湿度が所望通りに上がる。
【0017】
それだけでなく、排ガスの部分的または完全な還流によって排ガス状態を任意に調整することができる。部分的な還流では、湿度の高い排ガスの一部分を転出し、残りを還流させる。ガス流の比率が排ガス湿度を決定し、かつすべての水分蒸発は部分流と共に転出される。
【0018】
閉じたガス循環内での完全な還流の場合、蒸発した水は凝縮器内で凝縮されて、循環から移出される。凝縮器の温度が排ガス湿度を決定する。
【0019】
例示的実施形態1:層中に熱交換器が組み込まれた流動層乾燥機内で、表面湿度の高い硫酸鉄・七水和物を一水和物に乾燥させた。湿った七水和物420kg/hおよび乾いた還流物(一水和物生成物および乾燥に由来する粉塵)260kg/hが、混合機を経て乾燥機に供給された。乾燥空気(1300kg/h)は185℃、熱交換器は195°、および生成物層は117℃の温度であった。10g/乾燥した空気1kgの初期量と一緒に、水の蒸発により、絶対湿度12.7%および露点約63℃に相当する146g/乾燥した空気1kgの排気量が生じた。この低い湿度での乾燥の結果は、かさ密度710g/l、平均粒径250μm、および乾燥中の66%の排気による粉塵排出での、軽くて粉塵の多い一水和物の顆粒であった。
【0020】
例示的実施形態2:同じ乾燥機内で、七水和物と、一水和物および乾燥に由来する粉塵から成る還流物との混合物を同じ量で、ほぼ同じ温度で乾燥させた(空気178°、熱交換器195°、生成物層120°)。例1に対する主要な相違点は、空気が完全に還流され、かつ蒸発した水が洗浄機内で凝縮されることであった。生成物が変化するので、循環空気搬送量を1730kg/hに上げなければならなかった。洗浄機の温度は65°であり、これは乾燥機に再び供給される空気の、水205g/乾燥した空気1kgの総含有量をもたらした。蒸発した水と一緒になって、乾燥機の後の排気はこの場合329g/kgの量になり、これは絶対湿度24.8%および露点約73°に相当する。乾燥中のこの湿った雰囲気により、かさ密度1195g/l、平均粒径450μm、および15%だけの排気による粉塵排出での、安定した重い一水和物が生成された。
【0021】
以下の図では、流動層乾燥機の例に関する方法形態を説明している。ただしこれらの方法形態はその意味に即して、上記のその他の乾燥機構造型式にも適用される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.乾燥が、乾燥ガスの規定の含水率、例えば0.1kg/kgの絶対湿度より上で進行することを特徴とする、対流性の装置内での結晶水含有塩の乾燥方法。
2.規定の湿度値より高い乾燥ガスの含水率が、蒸発する水だけで調整されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.規定の湿度値より高い乾燥ガスの含水率が、乾燥ガスの部分的な還流によって調整されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
4.規定の湿度値より高い乾燥ガスの含水率が、乾燥ガスの完全な還流によって調整され、その際、蒸発した水が凝縮により循環から移出され、かつ乾燥ガスの含水率が凝縮器温度によって調整されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
5.乾燥ガスの含水率が、乾燥ガス温度により水分蒸発率を適合することによって調整されることを特徴とする、上記2に記載の方法。
6.乾燥ガスの含水率が、熱交換器面積の追加による水分蒸発率の上昇によって調整されることを特徴とする、上記2に記載の方法。
7.粉塵および/または乾燥された生成物が、乾燥前の湿った結晶水含有塩と一緒にされ、および任意選択的に混合されることを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載の方法。
8.粉砕された大きすぎる粒子が、乾燥前の湿った結晶水含有塩と一緒にされ、および任意選択的に混合されることを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載の方法。
9.含水率が、乾燥機の幾何的な部分領域内、例えば充填ゾーン内でのみ調整されることを特徴とする、上記1に記載の方法。
10.生成物が1100g/l超のかさ密度を有し、かつ乾燥機を出る際の乾燥ガスの絶対湿度が0.15kg/kg超であることを特徴とする、硫酸鉄・七水和物から一水和物へと乾燥させるための上記1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】還流物流を有する本発明に基づくシステムを示す図である。
【
図2】部分的なガス還流を有する本発明に基づくシステムを示す図である。
【
図3】完全な閉鎖ガス循環を有する本発明に基づくシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
給気ベンチレータ10(
図1を参照)が、周囲空気を、ヒータレジスター11を通して乾燥装置(ここでは流動層乾燥機)12内に押し込み、乾燥装置内では塩が、任意選択で熱交換器13によっても加熱され、結晶水を放出する。湿度の高い乾燥ガスが乾燥機から出ていき、フィルターまたはサイクロン14内で粉塵を除去され、かつ任意選択の追加的なガス浄化の後、排気ベンチレータ18を経て戸外19に達する。表面湿度の高い結晶水含有塩20は、混合機21内で、サイクロンまたはフィルター14からの分離された粉塵および任意選択で還流された生成物によってまぶされ、それから乾燥機12に供給される。乾燥後、塩は乾燥機12を出ていき、任意選択の篩22内で大きすぎる粒子が分けられ、粉砕され23、かつ混合機21に供給される。良好な画分は越流式サイロ24内に達し、越流式サイロから任意選択で配量スクリュー25により混合機21のための還流物が抜き取られ、かつ最終生成物26はさらに加工される。
【0024】
図2では、所定のガス湿度、つまり乾燥機内の規定の含水率を調整するための部分的なガス還流を有する乾燥プロセスの形態を図示している。生成物処理は
図1で説明したのと同じであり、見やすくするために図示していない。送風機10が、ヒータレジスター11、乾燥機12、および粉塵分離機14による循環にガスを押し込む。絞り機関16により、新鮮な空気の部分流が配量添加され、この部分流は任意選択のフィルター15により浄化される。これにより乾燥機12内のガスの含水率が調整される。湿度の高い排ガスの相応な量が、圧力調節された絞り機関17によりベンチレータの押し込み側で移出される。この排ガス流19は生成物から蒸発した水量も含んでいる。新鮮な空気の部分流が小さければそれだけ、ガス湿度はより高くなる。
【0025】
完全な閉鎖循環の場合(
図3を参照)、蒸発した水を選択的に循環ガスから取り除かなければならない。これは、表面凝縮器または洗浄凝縮器30内での凝縮によって行われるのが有用である。洗浄水は循環してポンプで送られ31、凝縮熱は冷却機32によって取り去られる。生成物からの蒸発した水量にも相当する凝縮された水量は水位調節され33、プロセスから取り去られる。冷却機32により、水の蒸気分圧を介して循環ガスの必要な初期湿度が生じるように洗浄水の温度を調整することができる。初期湿度は、生成物からの水分蒸発によって生成された分を差し引いた所望の排ガス湿度から算出される。循環ガスは、送風機10から、ヒータレジスター11、乾燥機12、粉塵分離機14、および洗浄凝縮器30を経て循環運動する。ここでは生成物経路は
図1に対応しており、見やすくするためにここでも図示してはいない。
【0026】
図示したシステムは、例示的にしか、および流動層乾燥機(組み込まれた熱交換器ありまたはなし)の例に関してしか図示していない。しかし管型回転乾燥機(ドラム型乾燥機)、管型気流乾燥機、または流動層噴霧顆粒化機を用いてもよい。