特許第6383820号(P6383820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383820
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/10 20060101AFI20180820BHJP
   F02B 19/12 20060101ALI20180820BHJP
   F02M 61/04 20060101ALI20180820BHJP
   F02M 61/14 20060101ALI20180820BHJP
   F02M 61/18 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   F02B19/10 C
   F02B19/12 B
   F02B19/12 E
   F02M61/04 H
   F02M61/14 310A
   F02M61/14 320Z
   F02M61/18 350B
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-11081(P2017-11081)
(22)【出願日】2017年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-198186(P2017-198186A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】16000958.5
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515226272
【氏名又は名称】マール パワートレイン,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】MAHLE Powertrain,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー ブラキシル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル バンス
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−285928(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0068489(US,A1)
【文献】 特表2007−537392(JP,A)
【文献】 特開2015−094303(JP,A)
【文献】 特開2016−035854(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0053668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 19/10
F02B 19/12
F02M 61/04
F02M 61/14
F02M 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン口直径(A−A)を有する燃焼室(21)を画定するように、少なくとも1個のシリンダ(2)と、繰り返し往復運動のために前記シリンダ(2)内に支持されるピストン(3)とを備える内燃機関(1)であって、
前記内燃機関(1)は、前記シリンダ(2)内に配置され、イグナイタ部(42)と燃料インジェクタ(43)とを有する点火装置(4)をさらに備え、前記イグナイタ部(42)と前記燃料インジェクタ(43)の両方は、予燃室(41)内に配置され、
前記予燃室(41)は、前記予燃室(41)と前記燃焼室(21)との間の流体連通を提供するための複数個のオリフィス(44)を備え、
前記複数個のオリフィス(44)は、総オリフィス面積とエンジン口直径(A−A)との比が0.062mm〜0.072mmの範囲にあるような総オリフィス面積を有する、
内燃機関(1)。
【請求項2】
前記オリフィス(44)の数が、4〜8の範囲にあり、前記オリフィス(44)の直径が、1mm〜1.55mmの範囲にある、
請求項に記載の内燃機関(1)。
【請求項3】
前記オリフィス(44)のそれぞれは、前記予燃室(41)に面する第1表面領域(441)と、前記燃焼室(21)に面する第2表面領域(442)とを有し、
前記第1表面領域(441)の大きさと前記第2表面領域(442)の大きさとの比は、0.5〜2の範囲にある、
請求項1または2に記載の内燃機関(1)。
【請求項4】
前記予燃室(41)の内容積は、前記燃焼室(21)の最小容積の4%未満である
請求項1乃至のいずれか1項に記載の内燃機関(1)。
【請求項5】
前記予燃室(41)の内容積は、前記燃焼室(21)の最小容積の0.3%〜3%の範囲にある、
請求項4に記載の内燃機関(1)。
【請求項6】
前記オリフィス(44)は、前記オリフィスの中心線(C−C)が、前記予燃室の中心軸(B−B)に対して50°〜60°の範囲の角度となるように前記予燃室(41)内に配されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の内燃機関(1)。
【請求項7】
前記燃料インジェクタ(43)は、前記燃料噴霧の中心線(D−D)が、前記予燃室の中心軸(B−B)に対して20°〜60°の範囲の角度となるように前記予燃室(41)内に配置される、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の内燃機関(1)。
【請求項8】
前記点火装置(4)は、前記燃料インジェクタ(43)が、単一サイクルの間に1より多くの燃料噴霧パルスが注入されるような方法で、燃料噴霧パルスを前記予燃室(41)内に注入し、前記イグナイタ部(42)の近く、および前記予燃室(41)の壁の近くに最適な空気燃料混合物を提供することを可能にする制御ユニットを備える、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の内燃機関(1)。
【請求項9】
前記点火装置(4)は、前記燃料インジェクタ(43)が、連続的な燃料噴霧パルス間において、少なくとも2個の火花がイグナイタ部(42)によって提供されるような方法で、燃料噴霧パルスを前記予燃室(41)内に注入することを可能にする制御ユニットを備える、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の内燃機関(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立項に係る内燃機関に関する。
【0002】
本発明は、火花点火を使用する内燃機関の分野について述べる。
【背景技術】
【0003】
λがおおむね1<λ<1.5の範囲にある希薄燃焼は、λがより小さい燃焼に比べて正味熱効率を向上させることが分かっているが、NO排出も増加させるので、触媒コンバータが必要である。λ>1.5の超希薄燃焼によって、正味熱効率を向上させ、かつNO排出を顕著に低減させ得ることが明らかにされている。超希薄燃焼システムにおいて主に制約となるのは、混合物の点火性の乏しさである。混合物の点火性が乏しいので、λの値が、それを超えると前記内燃機関が点火しなくなる「リーンリミット」になる。
【0004】
そのような内燃機関において、高エネルギー点火源である乱流噴流点火(TJI)を使用することによって点火性に乏しい超希薄混合気を取り扱うことが知られている。TJIのための内燃機関は、少なくとも1個の予燃室を有する点火システムを備え、該予燃室内には、燃焼インジェクタと点火装置とが配置されている。前記点火装置は、乱流噴流点火を可能にする。該乱流噴流点火は、前記予燃室から噴出するラジカルの乱流噴流を使用して、前記主室に前記点火源を提供することによって、超希薄運転を可能にする。
【0005】
前記予燃室は、前記主室に比べて容積が小さく、前記主室の全体にわたって、複数個の分散された点火位置を生じさせる複数個のオリフィスを有する。該オリフィスの大きさは、前記燃焼生成物が前記予燃室を出て前記主燃焼室内に入るときに、消炎を可能にする小ささである。そして、前記燃焼生成物は、前記主燃料原料(charge)と反応し、化学的、熱的、および乱流効果によって、前記主燃焼室内の、前記予燃室ノズルから幾分離れた複数の場所で燃焼を開始する。前記化学的効果は、噴流内に存在するラジカル種によるものであり、該ラジカル種は、反応性が高いので、前記主室内に存在する空気燃料混合物の点火を可能にする。熱的効果は、一部または全部が燃焼された燃焼生成物によるものであり、該燃焼生成物は、主室での燃焼を誘発することができる高温の主室に入る。乱流効果は、主室内において、乱流噴流と燃料との間の相互作用を保証する。
【0006】
内部に配されたこのような点火システムを有する先行技術の内燃機関が、特許文献1に示されている。該内燃機関は、1以上のシリンダを備えるエンジンブロックを有する。各シリンダは、主空気燃料原料が点火される主燃焼室と隣接するシリンダヘッドを有する。ピストンは、クランクシャフトの位置でロッドを介して接続されて、往復運動を可能にする燃焼室と隣接して配置される。各シリンダヘッドは、吸気開口と排気開口とを画定する。前記吸気および排気開口は、カム駆動弁によって開放および閉鎖され、これにより、前記シリンダと吸気マニホールドおよび排気マニホールドとの間に流体連通が提供される。前記内燃機関はまた、前記吸気ポートを通じて主燃料空気原料を前記燃焼室内に導入する手段として、前記吸気マニホールド内に取り付けられた燃料インジェクタを含む。前記点火装置は、予燃室の内容積に面するように配されたイグナイタ部とインジェクタとを有する。
【0007】
前記予燃室は、互いに間隔を空けて配置されるとともに、前記予燃室と前記燃焼室との間に流体連通を提供する複数個のオリフィスを有するノズルを形成するようになっている。前記イグナイタ部は、前記予燃室内の燃料を点火する。前記オリフィス直径は、前記燃焼生成物が前記予燃室を出て前記主燃焼室内に入るときに、消炎を促進するような小ささに維持される。消炎は、一部が燃焼された予燃室生成物が前記予燃室の小さなオリフィスを通過されることを意味する。前記燃焼生成物は消炎されるが、前記主燃焼室を通って分散された後、主燃料と反応し、化学的、熱的、および乱流効果によって、前記予燃室ノズルから幾分離れた複数の場所で前記主燃料室内での燃焼を開始する。
【0008】
反応性噴流を作り出すことができる改良された点火装置が、特許文献2に開示されている。前記点火装置の予燃室は、前記予燃室容積と前記主室容積との間に流体連通を提供するための複数個のオリフィスを含む。前記乱流噴流が前記主室内に深く浸透することを保証するために、前記オリフィスは、特定の最大直径および最小直径の範囲に限定されるが、前記予燃室容積は特定の範囲に維持されている。
【0009】
該設計は、予燃室容積との関係において、オリフィス直径、オリフィス数のようなノズル特性を適切な目標とするためだけに選択される。既知の設計に関する欠点は、該設計が、予燃室容積の範囲に対して、速度、浸透および点火位置の分散のような物理的な噴流特性と関係しているだけであることにある。予燃室およびノズルの幾何学的特徴とシリンダ口径によって説明されるようなエンジンシリンダの大きさとの関係を明らかにする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/103302号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0068489号明細書
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明の目的は、熱効率が改善された内燃機関であって、前記主燃焼室の設計(つまり、大きさ)を考慮した、特に、エンジン口の直径との関係で、オリフィスの設計(つまり、大きさ)を考慮した内燃機関を提供することである。
【0012】
この目的は、独立項に係る内燃機関によって達成される。本発明の特定の態様は、各従属項の主題を形成する。
【0013】
本発明は、エンジン口直径(A−A)を有する燃焼室を画定するように、少なくとも1個のシリンダと、繰り返し往復運動のために前記シリンダ内に支持されるピストンとを有する内燃機関を備える。該内燃機関は、前記シリンダ内に配置される点火装置をさらに備え、(該点火装置は)イグナイタ部と燃料インジェクタとを有し、前記イグナイタ部と前記燃料インジェクタの両方は、予燃室内に配置され、該予燃室は、前記予燃室と前記燃焼室との間の流体連通を提供するための複数個のオリフィスを備える。前記複数個のオリフィスは、総オリフィス面積とエンジン口直径(A−A)との比が0.01mm〜0.2mmの範囲にあるような総オリフィス面積を有する。
【0014】
前記総オリフィス面積の大きさと前記エンジン口直径との比が0.01mm〜0.2mmの範囲にあるので、最大の正味熱効率が得られる。この関係によって、エンジンの大きさの範囲に対して、前記予燃室およびノズルの大きさを変えることができる。正味熱効率は、エンジンの仕事を燃料エネルギーで割ったものとして定義される。前記エンジンの仕事は、燃焼仕事およびポンプ仕事であり、前記燃料エネルギーは、燃料流量と燃料の発熱量とを掛け合わせたものである。したがって、特定のオリフィス面積とエンジン口の大きさとの比によって、最大の正味熱効率が実現される。ノズルオリフィス面積を減らすことでピークの正味熱効率を最大にすることを述べた先行技術公報の観点からは、このことは予測されない。技術的には、所与のエンジン口径の場合、大きなオリフィス面積は、噴流速度が小さいために、正味熱効率を低減させ、小さなオリフィス面積は、前記噴流の温度を下げ、これにより点火に必要な正味熱効率を低減させるチョーク流れのために、正味熱効率を低減させる。前記予燃室ノズルにおける総オリフィス面積の大きさは、各個々のノズルオリフィスの面積(円形状のオリフィスの場合、A=πr)の総和である。前記エンジン口直径は、換言すれば、前記エンジンの孔または前記シリンダの直径である。
【0015】
特定の実施形態によれば、前記総オリフィス面積の大きさと前記エンジン口直径との比が、0.016mm〜0.16mm(つまり、0.05mm〜0.09mm)の範囲にある。特に好ましくは、前記総オリフィス面積の大きさと前記エンジン口直径の比が、0.06mmである。これらの範囲は、最大の正味熱効率を示した実験計測での最適な結果を示している。
【0016】
別の好ましい態様は、オリフィスの数が4〜8の範囲にあり、該オリフィスの直径が0.7mm〜1.55mmの範囲にあることに関する。前記所与の値は、87.5mmのエンジン口直径(A−A)を有する燃焼エンジンと組み合わせることに関して、特に着目される。
【0017】
有利には、オリフィスのそれぞれは、前記予燃室に面する第1表面領域と前記燃焼室に面する第2表面領域とを有し、前記第1表面領域の大きさと前記第2表面領域の大きさの比は、0.5〜2の範囲にある。前記比を変えることにより、前記オリフィスから発せられる噴流の形態を変えることができる。すなわち、低減させると集中噴流になるが、表面領域を増加させると分岐噴流となる。
【0018】
前記予燃室の内容積は、前記燃焼室の最小容積の5%未満であれば好ましく、0.3%〜3%の範囲にあれば特に好ましい。測定結果は、これよりも大きな予燃室容積とすると、正味熱効率が低減されるようになることを示している。
【0019】
別の好ましい態様は、このようなオリフィスが、前記オリフィスの中心線(C−C)が前記予燃室の中心軸(B−B)に対して50°〜60°の範囲の角度となるように前記予燃室内に配置されていることに関する。複数の平行な面内に、オリフィス中心線と前記予燃室の中心軸との間のそれぞれの角度が50°〜60°であるオリフィスを配置すること(例えば、第1面内の第1の数(例えば、6個のオリフィスノズルの内の3個)のオリフィスおよび第2面内の第2の数(例えば、3個)のオリフィス)がより好ましい。これらの角度によって、良好な燃焼効率が提供される。前記角度を50°から60°に変化させることにより、リーンリミットを1.7λから2.1λまで増加できることが示されている。
【0020】
好ましくは、前記燃料インジェクタは、前記燃料噴霧の中心線(D−D)が前記予燃室の中心軸(B−B)に対して20°〜60°の範囲の角度となるように前記予燃室内に配置される。これにより、前記予燃室内において空気と燃料とを良好に混合することができる。すなわち、前記燃料噴霧は、前記オリフィスを介して前記予燃室内に入る空気原料と相互作用する。燃料噴霧の中心線の角度が20°未満であると、燃料は、前記点火プラグに直に衝突し、これにより点火が阻害されるようになる。燃料噴霧の中心線の角度が60°を超えると、燃料は、前記オリフィスに直に衝突し該オリフィスを通って排出され、これにより点火前に前記予燃室を出ることとなる。
【0021】
有利な態様によれば、前記点火装置は、前記燃料インジェクタが、濃厚な燃料混合物が前記予燃室の壁近傍に存在し、濃厚な混合物が前記点火プラグの電極近くの領域内に存在するように燃料噴霧パルスを前記予燃室内に注入することを可能にする制御ユニットを備える。これにより、前記点火プラグによって誘発されるので、前記予燃室内で点火が生じること、および前記点火プラグから発せられる燃焼の火炎前面が前記オリフィスに向かって前進した後、噴流として前記オリフィスを通って出るときに、該燃焼の火炎前面が前記予燃室壁近くに移動させられることが保証される。前記予燃室壁近くに移動した火炎は、前記予燃室内への空気原料の導入を防ぐことが好ましく、これにより、火炎速度が最大になるとともに、噴流速度が最大になる。
【0022】
本発明の別の態様によれば、前記点火装置は、前記燃料インジェクタが、連続的な燃料噴霧パルスの間において、少なくとも2個の火花が前記イグナイタ部によって提供されるような方法で、燃料噴霧パルスを前記予燃室内に注入することを可能にする制御ユニットを備える。さらなる点火火花によって、前記予燃室内の内容物のより完全な燃焼が可能になり、これにより、前記予燃室での燃焼事象の間に前記予燃室内に放出されるエネルギーの量が増加し、噴流速度が増加する。
【0023】
以下では、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。同様な参照番号は、図面全体において同様な特徴を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の垂直断面図。
図2図1の点火装置の垂直断面図。
図3】エンジン口直径に対する総オリフィス面積の比と正味熱効率との関係を示すグラフ。
図4】予燃室容積と正味熱効率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、(例えば、4気筒の)1個のシリンダ2を備える内燃機関1を示す。シリンダ2は、エンジンブロック21内に形成され、シリンダヘッド22がその上に配置される。別体の主燃料インジェクタ5を備える入口221および燃焼生成物を排出するための出口222が、シリンダヘッド22に配置される。ピストン3は、示された例では、87.5mmのエンジン口直径(A−A)を有する燃焼室21を(前記シリンダヘッドとともに)画定するように、繰り返し往復運動のためにシリンダ2内に(図示しないクランクシャフトの位置で)支持される。
【0026】
内燃機関1はさらに、前記シリンダ2内に配置されている(乱流噴流点火のための)点火装置4を備える。該点火装置4は、イグナイタ部42および(前記主燃料インジェクタから離れた位置にある)燃料インジェクタ43を有する。これらは、両方とも予燃室41に面して配置されている。予燃室41は、示された例では、予燃室41の内側から燃焼室21までの流体連通を提供するための6個のオリフィス44を備える。オリフィス44の総オリフィス面積(個々のオリフィス面積の全てを合わせた面積)は5.70mmであるので、前記総オリフィス面積とエンジン口直径(A−A)との比は0.065mmとなっている。予燃室44における総オリフィス面積の大きさは、オリフィスの数6と個々のオリフィスの面積とを掛け合わせたものであり、5.70mmである。エンジン口直径は、本例においては87.5mmである。得られる正味熱効率は42.1%である。正味熱効率のこの最大値は、正味熱効率がノズルオリフィス面積の低下につれて最大になることを述べている先行技術文献の観点からは、予想されるものではない。正味熱効率は、エンジンの仕事を燃料エネルギーで割ったものとして算出される。エンジンの仕事は、燃焼仕事およびポンプ仕事である。燃料エネルギーは、燃料流量と燃料発熱量とを掛け合わせたものである。前記寸法によって、低噴流速度を避けるのに十分小さく、かつチョーク流れを避けるのに十分大きなオリフィス面積が提供され、これにより、前記噴流の温度は低下される。前記予燃室での総オリフィス面積の大きさは、オリフィス44の数と各面積(円形状のオリフィスの場合、A=πr)とを掛け合わせたものである。
【0027】
予燃室41内における最適な(完全な)点火および連続的な火炎移動を実現するために、点火装置4は、(図示しない)制御ユニットを備える。該制御ユニットは、本例においては、濃厚な混合物がイグナイタ部42近くに存在し、かつ濃厚な混合物が前記予燃室壁の近くに存在するような方法で、所与のサイクルで複数の燃料噴霧パルスを予燃室41内に注入するように燃料インジェクタ43を制御できる。
【0028】
代わりの操作モードでは、点火装置4は、1より多い燃料噴霧パルスがイグナイタ部42によって提供される連続的な火花の間に注入されるような方法で、燃料インジェクタ43が燃料噴霧パルスを予燃室41内に注入するように燃料インジェクタ43を制御できる(図示しない)制御ユニットを備える。
【0029】
前記予燃室設計のより詳細な図を図2に提供する。図2において、予燃室41は、内燃機関のシリンダヘッド22において燃焼室(主室)の頂部に配置される。予燃室41は、複数のオリフィス44を備え、各オリフィスは、予燃室41に面する第1(内)表面領域441と、前記燃焼室に面する第2(外)表面領域442とを有する。第1表面領域441の大きさと第2表面領域442の大きさとの比は、1と例示される。これは、両領域が同じ大きさであることを意味している。該比は、発せられる噴流の形態に関連するので、この例における(比が1である)噴流は、(理想的には)平行である。
【0030】
各オリフィス44は、オリフィスの中心線C−Cが予燃室の中心軸B−Bに対して60°の角度(下方のB−BとC−Cとの間の角度)となるように予燃室41内に配される。燃料インジェクタ43は、燃料噴霧の中心線D−Dが予燃室の中心軸B−Bに対して20°の角度(上方のB−BとD−Dとの間の角度)となるように、予燃室41内に配置され、かつそのように設計される。
【0031】
図3は、以下に表1として提供される特定の寸法の例に対する総オリフィスの比と正味熱効率の測定結果との関係のグラフを提供する。
【0032】
【表1】
【0033】
計算には以下の等式が含まれる。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
正味熱効率が最大になることは、正味熱効率がノズルオリフィス面積の低下につれて最大になることを述べた先行技術の観点からは、予想されるものではない。
【0037】
図4は、予燃室の内容積と正味熱効率のグラフ表示である。予燃室容積は、燃焼室の最小容積の5%未満であり、特に、0.3%〜3%の範囲にある。最小容積とは、ピストンが上死点に配置される場合の容積のことである。予燃室容積の測定結果が大きいと、正味熱効率が低下することとなる。示された測定結果は、最小主室燃焼容積の予燃室容積に対する正味熱効率を表している。グラフ1は、1500rpm/3.9barIMPEg/L2の場合であり、グラフ2は、1500rpm/3.9barIMPEg/L1.9の場合であり、グラフ3は、3.9barIMPEg/L1.8の場合であり、グラフ4は、4000rpm/7.87barIMPEg/L1.5の場合である。
図1
図2
図3
図4