特許第6383828号(P6383828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6383828
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20180820BHJP
   F16F 15/023 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   A47B97/00 D
   F16F15/023
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-55473(P2017-55473)
(22)【出願日】2017年3月22日
【審査請求日】2018年6月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畦 将也
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/043182(WO,A1)
【文献】 特開2014−45920(JP,A)
【文献】 特開昭60−41906(JP,A)
【文献】 特開2015−6330(JP,A)
【文献】 特開2016−47482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
F16F 15/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に設置された物品の上面と天井との間に軸線が傾斜した状態に取り付けられるダンパと、
前記ダンパの一端部を回動軸周りに回動自在に連結する第1連結部を有し、前記物品の上面に当接する第1ベース部と、
前記ダンパの他端部を回動軸周りに回動自在に連結する第2連結部を有し、前記天井に当接する第2ベース部と、
前記第1ベース部に取り付けられ、前記ダンパの傾斜角度を規制する角度規制部と、
を備え、
前記第1ベース部は、前記第1連結部に対して前記ダンパが傾斜する側に形成される挿入孔を有し、
前記角度規制部は、前記挿入孔の前記第1連結部側に挿入される第1挿入片と、前記第1挿入片に対して所定の間隔を有して設けられて、前記挿入孔の前記第1連結部から離れた側に挿入される第2挿入片とを具備し、
前記第1挿入片は、前記第1連結部側に突出して前記挿入孔に係止する爪部を具備していることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記第1ベース部は、前記挿入孔の開口縁から垂下し、前記爪部が係止する係止部を具備した壁部を有していることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記第2挿入片は、前記第1挿入片の前記爪部の突出方向とは反対側の方向の面の先端部に、先端に向かうに従い前記第1挿入片に近づく方向に傾斜した傾斜面を具備していることを特徴とする請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の転倒防止装置を開示している。この転倒防止装置はダンパと一対のベース部とを備えている。ダンパは床面上に設置された家具の上面と天井との間に取り付けられている。一対のベース部はダンパの両端部のそれぞれを回動軸周りに回動自在に軸支している。一方のベース部は家具の上面に当接し、他方のベース部は天井に当接している。また、この転倒防止装置はダンパの傾斜角度を最適な角度に設定する治具(角度規制部)を有している。
【0003】
この転倒防止装置はダンパを直立させた状態で家具の上面に一方のベース部を当接させて載置する。そして、治具を家具の上面に当接させたベース部に合わせて家具の上面に載置する。その後、ダンパを治具に合わせて傾けて、ダンパを最適な角度にして、他方のベース部を天井に当接させる。その後、治具を家具の上面から取り外す。
【0004】
このようにして、家具の上面と天井との間に取り付けられた転倒防止装置は、地震等の揺れによってダンパの回動方向と平行な方向に家具が傾くと、各ベース部に対してダンパが回動軸周りに回動して各ベース部が家具の上面と天井とに当接した状態を維持することができる。よって、この転倒防止装置は、ダンパの減衰力を家具に作用させることができ、家具の傾きを抑制して家具の転倒を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−6330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の転倒防止装置は、治具が載置されているのみであるため、ベース部に対する治具の位置がずれるおそれがある。つまり、この転倒防止装置は、ダンパを適切な傾斜角度にして家具の上面と天井との間に取り付けることが難しい。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、転倒防止装置を取り付ける際に、ダンパを適切な傾斜角度に容易することができ、所望に応じて容易に着脱することができる角度規制部を備えた転倒防止装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の転倒防止装置は、ダンパ、第1ベース部、第2ベース部、及び角度規制部を備えている。ダンパは設置面上に設置された物品の上面と天井との間に軸線が傾斜した状態に取り付けられる。第1ベース部はダンパの一端部を回動軸周りに回動自在に連結する第1連結部を有し物品の上面に当接する。第2ベース部はダンパの他端部を回動軸周りに回動自在に連結する第2連結部を有し、天井に当接する。角度規制部は第1ベース部に取り付けられ、ダンパの傾斜角度を規制する。また、第1ベース部は、第1連結部に対してダンパが傾斜する側に形成される挿入孔を有し、角度規制部は、挿入孔の連結部側に挿入される第1挿入片と、第1挿入片に対して所定の間隔を有して設けられ、挿入孔の第1連結部から離れた側に挿入される第2挿入片とを具備し、第1挿入片は、第1連結部側に突出して挿入孔に係止する爪部を具備している。
【0009】
この転倒防止装置は、物品の上面に載置した第1ベース部に取り付けられた角度規制部がダンパの傾斜角度を規制する。このように、この転倒防止装置は、角度規制部が取り付けられた第1ベース部を物品の上面に載置すれば、適切な傾斜角度にダンパを傾斜させることができ、その傾斜角度を維持して第2ベース部を天井に当接させるのみで転倒防止装置を物品の上面と天井との間に適切に取り付けることができる。
【0010】
また、この転倒防止装置は角度規制部の第1挿入片と第2挿入片とを第1ベース部の挿入孔に挿入して、第1挿入片の爪部を挿入孔に係止する。第1挿入片と第2挿入片との間に所定の間隔が設けられているため、第1挿入片の爪部が挿入孔に挿入される際に、第1挿入片が第2挿入片に近づく方向に撓みつつ挿入孔に挿入される。このため、この転倒防止装置は角度規制部を第1ベース部に容易に取り付けることができる。
【0011】
また、挿入孔はダンパが傾斜する側に形成されており、角度規制部は第1連結部側の挿入孔に第1挿入片が挿入されている。すなわち、爪部は第1連結部側の挿入孔に係止している。これにより、角度規制部を第1ベース部に取り付けた後、例えば、ダンパが角度規制部に当接し、ダンパによって角度規制部が第1連結部から離れる方向に押された場合、挿入孔に係止した爪部によって、角度規制部が第1ベース部から意図せずに外れることを防止することができる。これに対して、角度規制部を第1ベース部から取り外す場合、角度規制部を第1連結部側に傾けることによって容易に取り外すことができる。
【0012】
したがって、本発明の転倒防止装置は当該転倒防止装置を適切な傾斜角度に容易にすることができ、所望に応じて角度規制部を容易に着脱することができる。
【0013】
本発明の転倒防止装置の第1ベース部は、壁部を有し得る。壁部は挿入孔の開口縁から垂下し、爪部が係止する係止部を具備し得る。この場合、この転倒防止装置は、壁部によって、第1挿入片及び第2挿入片を案内することができる。これにより、この転倒防止装置は、第1ベース部に対する角度規制部の向きを所定の向きに規制することができる。また、この転倒防止装置は壁部に設けられた係止部に第1挿入片の爪部を係止することができる。これにより、この転倒防止装置は、第1挿入片の爪部と共に係止部の位置や形状を所望に応じて容易に変更することができる。
【0014】
本発明の転倒防止装置の第2挿入片は、第1挿入片の爪部の突出方向とは反対側の方向の先端部に、先端に向かうに従い第1挿入片に近づく方向に傾斜した傾斜面を具備し得る。この場合、この転倒防止装置は第2挿入片を第1ベース部の挿入孔に挿入する際、第2挿入片の傾斜面によって第2挿入片を挿入孔に良好に案内することができる。これにより、この転倒防止装置は角度規制部を第1ベース部に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図2】実施形態の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す正面図である。
図3】実施形態の転倒防止装置のダンパ及び第1ベース部を示す部分断面図である。
図4】実施形態のダンパ、及び第1ベース部を示す分解斜視図である。
図5】実施形態の転倒防止装置のダンパ、第1ベース部、及び角度規制部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の転倒防止装置を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<実施形態>
実施形態の転倒防止装置は、図1に示すように、家具Fの上面と天井Cとの間に少なくとも1個以上が取り付けられる。この家具Fは、床面(図示せず)から鉛直方向に伸びた壁面Wに背面を対向させて床面上に設置されている。また、この家具Fは、直方体形状であり、正面(図1における右側面)に図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具Fは、水平断面形状が左右方向(図1において奥行き方向)に長い長方形状である。この家具Fは、転倒防止装置が取り付けられていない場合、地震等の揺れによって、前方向(図1において右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0018】
転倒防止装置は、図1及び図2に示すように、ダンパ10、一対のベース部30A,30B、及び角度規制部70を備えている。
【0019】
ダンパ10は、シリンダ11、図示しないロッドガイド、図示しないピストン、ロッド13、及び両端に設けられた2個のジョイント部15を有している。シリンダ11は有底筒状である。ロッドガイドはシリンダ11の開口部を封鎖している。ピストンはシリンダ11内に摺動自在に挿入されている。ロッド13は基端部がピストンに連結されている。また、ロッド13はロッドガイドを挿通して先端側がシリンダ11の外部へ突出している。シリンダ11は作動油及び圧縮ガスを封入している。各ジョイント部15は、図1図3に示すように、平板状の金具を折り曲げて形成されている。また、各ジョイント部15はシリンダ11の底部とロッド13の先端部に接続されている。各ジョイント部15はダンパ10の軸線に直交する方向に貫通した貫通孔15Aが形成されている(図3参照。)。
【0020】
ダンパ10は収縮動作時に発生する減衰力が伸長動作時に発生する減衰力よりも大きい圧効きダンパである。ここで、ダンパ10の伸長動作とは、シリンダ11からロッド13の突出する長さ(ダンパ10の全長)が長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10の収縮動作とは、シリンダ11からロッド13の突出する長さ(ダンパ10の全長)が短くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10にはシリンダ11に封入した圧縮ガスの膨張力が伸長方向に働いている。つまり、ダンパ10は伸長方向に付勢力を発生する。
【0021】
ダンパ10の減衰力が発生するメカニズムは、周知の構造であるため、図示を省略して説明する。シリンダ11は、内部がピストンによって、ロッド13の基端部が収納されているロッド側圧力室と、反ロッド側圧力室とに仕切られている。ピストンには両圧力室間を連通させる絞り弁であるオリフィスが形成されている。オリフィスは、ダンパ10の伸縮動作に伴うロッド側圧力室と反ロッド側圧力室との間の作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストンには逆止弁を介して両圧力室間を連通する連通路が形成されている。逆止弁は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、ダンパ10の伸長動作時は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流路経路が、オリフィスと連通路の経路になる。一方、ダンパ10の収縮動作時は、反ロッド側圧力室からロッド側圧力室への作動油の流路経路がオリフィスのみとなる。このため、ダンパ10の伸長動作時に発生する減衰力は、収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0022】
一対のベース部30A,30Bは、図1及び図2に示すように、ダンパ10の一端部であり、シリンダ11の底部に接続された第1連結部であるジョイント部15を連結した第1ベース部30Aであり、ダンパ10の他端部であり、ロッド13の先端部に接続された第2連結部であるジョイント部15を連結した第2ベース部30Bである。第1ベース部30Aは家具Fの上面に当接して載置され、第2ベース部30Bは天井Cに当接する。第1ベース部30A及び第2ベース部30Bは同じ形態及び構造である。各ベース部30A,30Bは、図1図4に示すように、ベース部本体31、回動軸部材であるボルト45及びナット47、ブッシュ35、及び滑り止め部37を有している。
【0023】
家具Fの上面に当接して載置された状態で第1ベース部30Aを上方から見た平面視において、ベース部本体31は長方形状の外形である(以下、この平面視におけるベース部本体31の外形において長辺が延びている方向を「長辺方向」と言い、短辺が延びている方向を「短辺方向」と言う。)。また、家具Fの上面に当接して載置された状態で第1ベース部30Aを短辺方向に見た側面視において、ベース部本体31は、下端縁が家具Fの上面に平行に直線状に伸びており、上端縁が下端縁の両側から上方に膨らんだ円弧状の外形である(図1参照)。また、家具Fの上面に当接して載置された状態で第1ベース部30Aを長辺方向に見た側面視において、ベース部本体31は下端縁よりも上端縁が短いほぼ台形状の外形である(図2、3参照)。
【0024】
家具Fの上面に当接して載置された状態の第1ベース部30Aにおいて、ベース部本体31には上面に長辺方向(図1における左右方向であり、図2、3における奥行き方向)に伸びた溝部41が形成されている。溝部41は、底面41Aが水平面上に広がり、内壁面41Bが底面41Aの両側にほぼ鉛直方向に立ち上がっている。溝部41の底面41Aはベース部本体31の上下方向のほぼ中央に伸びている。また、溝部41の底面41Aは、後述する一対の凸部43,43が形成されている部分を除き、幅が一定に形成されている。
【0025】
溝部41には、図4に示すように、長辺方向の中央部に溝部41の底面41A及び両内壁面41B,41Bから突出した一対の凸部43,43が形成されている。これら凸部43,43には、図2、3に示すように、その間にダンパ10のジョイント部15及び後述するブッシュ35が嵌まり込む空間が形成されている。この空間は溝部41に連通している。一対の凸部43,43の内壁面43A,43A同士の間隔(空間の短辺方向の長さ)は後述するブッシュ35の長さよりも僅かに大きい。また、一対の凸部43,43は上部中央に後述するボルト45の軸部45Bが挿通する挿通孔43Bが短辺方向に貫通している。
【0026】
溝部41は、図4に示すように、底面41Aに貫通して設けられた挿入孔49が形成されている。挿入孔49は凸部43から所定の距離を設けて形成されている。挿入孔49と凸部43との所定の距離は所望に応じて変更自在である。挿入孔49は上方からの平面視において、溝部41の幅方向に伸びた長方形状である。挿入孔49は後述する角度規制部70に設けられた第1挿入片72及び第2挿入片77が挿入される。
【0027】
また、図1、5に示すように、挿入孔49には一対の壁部49Aが設けられている。これら壁部49Aは挿入孔49の開口縁49Cから垂下している(図5参照。)。具体的には、これら壁部49Aは長辺方向に対向した挿入孔49の対向する一対の辺から垂下して設けられている。また、これら壁部49Aの互いに対向する側には案内面49Dが形成されている。また、これら壁部49Aのそれぞれの案内面49Dの反対側は、挿入孔49の開口縁49Cから下方向に向かうにつれて、それぞれの案内面49Dに近づくように形成されている。また、長方形状をなした挿入孔49の開口縁49Cには、上方向に広がるように第1傾斜面49Bが形成されている(図5参照。)。また、これら壁部49Aの下端は水平方向に伸びる先端面49Eが形成されている。
【0028】
図4に示すように、家具Fの上面に当接して載置された状態の第1ベース部30Aにおいて、ベース部本体31には、長辺方向の中央部であって、溝部41の両側に窪み部42が形成されている。この窪み部42には上方向と短辺方向の外方向に開口している。また、この窪み部42には凸部43を貫通した挿通孔43Bが側面に開口している。また、この窪み部42は後述するボルト45の頭部45Aと、このボルト45にねじ込まれたナット47のそれぞれが配置される。また、この窪み部42は、上方に向かうにつれて長辺方向に拡がるように形成されている。これにより、ボルト45の頭部45A、及びナット47のそれぞれに上方から工具を嵌合させ易い。
【0029】
ベース部本体31は、図1、3、5に示すように、空洞である。また、このベース部本体31は、家具Fの上面に当接して載置された状態の第1ベース部30Aにおいて、下方に開口している。
【0030】
回動軸部材は、図2〜4に示すように、ベース部本体31の挿通孔43Bの一方から挿入されたボルト45と、このボルト45の軸部45Bにねじ込まれたナット47とから構成されている。ボルト45の中心軸が各ベース部30A,30Bにおけるダンパ10の回動軸になる。また、ボルト45に替えて円柱状のピンとし、ナット47に替えてプッシュナットとする構成であってもよい。
【0031】
ブッシュ35は、図3に示すように、ほぼ円筒状である。ブッシュ35は弾性体である。ブッシュ35の長さはベース部本体31に設けられた一対の凸部43,43の内壁面43A,43A同士の間隔よりも僅かに小さい。ブッシュ35には中央部の外周面を一周した凹部35Aが形成されている。この凹部35Aの外径はダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aの内径よりも僅かに小さい。ブッシュ35の凹部35Aの両端から立ち上がった部分の外径はダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aの内径よりも大きい。また、ブッシュ35の両端部の外周面35Bは外方向に縮径している。このため、ブッシュ35はダンパ10のジョイント部15に形成された貫通孔15Aに弾性変形させながら挿入される。そして、ブッシュ35は、貫通孔15Aに凹部35Aが嵌まり込んで、ダンパ10のジョイント部15に取り付けられる。
【0032】
ブッシュ35は中央部の内径がボルト45の軸部45Bの外径よりも僅かに大きい。また、ブッシュ35は両端部の内周面35Cが外方向に拡径している。このため、このブッシュ35はボルト45の軸部45B周りに回動自在である。また、このブッシュ35は、拡径した両端部の内周面35Cがボルト45の軸部45Bの外周面に当接する範囲で、ボルト45の軸部45Bに対して傾くことができる。つまり、ブッシュ35をジョイント部15に取り付けたダンパ10は、ボルト45の軸部45B周りに回動自在であり、回動方向に交差する方向に揺動自在である。具体的には、寸法上の余裕と内周面35Cの拡径によって揺動する。さらに、ブッシュ35が弾性変形することによって、ダンパ10は回動方向に交差する方向に、より大きく揺動することができる。
【0033】
滑り止め部37は、図1図4に示すように、ベース部本体31の外形に対して僅かに大きい相似形(長方形状)の外形である。滑り止め部37はゴムや可撓性を有した熱可塑性樹脂等で形成されている。また、滑り止め部37は、家具Fの上面に当接して載置された状態の第1ベース部30Aにおいて、ベース部本体31の下端開口に嵌合される。また、滑り止め部37はほぼ平板である。詳しくは、滑り止め部37は、家具Fの上面又は天井Cに当接する面が平坦に形成されている。
【0034】
ここで、ダンパ10と各ベース部30A,30Bとの組み付け工程について説明する。
【0035】
まず、ダンパ10の両端に設けられた2個のジョイント部15に形成された各貫通孔15Aにブッシュ35を嵌め込み、ブッシュ35をダンパ10のジョイント部15に取り付ける。次に、ブッシュ35を取り付けたダンパ10のジョイント部15の一方をベース部本体31に形成された一対の凸部43,43の間に挿入する。そして、ボルト45の軸部45Bをベース部本体31の挿通孔43B及びブッシュ35に挿通させ、ボルト45の軸部45Bにナット47をねじ込む。このようにして、ダンパ10のジョイント部15の一方にベース部本体31を連結する。ダンパ10のジョイント部15の他方も同様にベース部本体31を連結する。この状態で、図3に示すように、ボルト45の頭部45Aとナット47(回動軸部材の両端部)はダンパ10の中心軸に対称な位置でベース部本体31の窪み部42内で露出している。そして、ダンパ10の両端部に連結されたそれぞれのベース部本体31に滑り止め部37を嵌合させて、ダンパ10と各ベース部30A,30Bとの組み付け工程を終了する。
【0036】
このように組み付けられたダンパ10と各ベース部30A,30Bは、図3に示すように、ボルト45の軸部45Bに対してブッシュ35が回動自在である。このため、各ベース部30A,30Bはジョイント部15を有し、ダンパ10の両端部のそれぞれを回動軸周りに回動自在に連結している。また、ブッシュ35は、両端部の内周面35Cが外方向に拡径している。このため、ブッシュ35の拡径した両端部の内周面35Cがボルト45の軸部45Bの外周面に当接する範囲で、ブッシュ35が回動軸に対して傾くことができる。具体的には、寸法上の余裕と内周面35Cの拡径によって揺動する。さらに、ブッシュ35は、弾性体であり、弾性変形することによって、ダンパ10は回動方向に交差する方向に、より大きく揺動することができる。このように、各ベース部30A,30Bに連結されたダンパ10は回動方向と交差する方向に揺動することができる。
【0037】
角度規制部70は、図1、2、5に示すように、第1ベース部30Aに着脱自在に取り付けられる。このため、この転倒防止装置は梱包時等に角度規制部70を第1ベース部30Aから取り外すことによって、嵩張らないようにすることができる。角度規制部70は、第1ベース部30Aに取り付けられた状態で、ほぼ鉛直方向に伸びた規制部71と、規制部71の下端に設けられ、規制部71の傾倒を防止する支持部73と、第1ベース部30Aの挿入孔49に挿入し、角度規制部70を第1ベース部30Aに取り付ける第1挿入片72及び第2挿入片77とを有している。
【0038】
規制部71は、柱状をなして上下方向に伸びている。規制部71は、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態で、上端から下端に向かうにつれてベース部30Aにおける長辺方向の寸法が徐々に大きく形成されている。規制部71は、家具Fの上面に当接して載置された第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態において、上端部に受け部71Aが設けられている。受け部71Aは半円環状をなしている。受け部71Aは半円環状の中央部を規制部71の上端部に連結している。受け部71Aは、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態で、半円環状の両端部のそれぞれが規制部71の上端部から第1ベース部30Aにおける短辺方向に向けて伸びつつ、ダンパ10のシリンダ11の方向に向けて伸びている。受け部71Aは、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態で、半円環状の内側がダンパ10のシリンダ11の外周の一部を囲むように配置される。
【0039】
規制部71は、ダンパ10のシリンダ11が受け部71Aに当接することによって、ダンパ10を所定の傾斜姿勢にして、ダンパ10がその傾斜姿勢より倒れないように傾斜角度を規制する。ダンパ10の傾斜角度は15°〜25°が好ましい。受け部71Aは、シリンダ11をしっかりと保持しないため、地震等の揺れによって家具Fが傾いたり揺れたりした際に生じるダンパ10の動きを拘束しない。つまり、この転倒防止装置は、地震等の揺れによって家具Fが揺れたり、傾いたりした際に、各ベース部30A,30Bに対してダンパ10が回動軸周りに回動自在であり、回動方向に交差する方向に揺動自在である。
【0040】
支持部73は平板状をなして一方向に伸びている。支持部73は規制部71が伸びる方向に対して平板状に伸びる方向がほぼ直交している。支持部73は規制部71の下端に平板状の一方の面を当接して規制部71に連結されている。支持部73が伸びる方向はベース部30Aにおける長辺方向である。支持部73は、後述する第1挿入片72、及び第2挿入片77が第1ベース部30Aの挿入孔49に挿入されると、ベース部本体31に形成された溝部41の底面41Aに他方の面が当接する。
【0041】
第1挿入片72及び第2挿入片77は、図5に示すように、それぞれ平板状をなしている。また、第2挿入片77は第1挿入片72に対して所定の間隔を有して設けて、支持部73の他方の面から垂下している。これら第1挿入片72及び第2挿入片77は平板状の板厚方向を支持部73が一方向に伸びる方向に向けている。また、これら第1挿入片72及び第2挿入片77は、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態で、第1挿入片72がダンパ10側に位置し、第2挿入片77が第1挿入片72よりもダンパ10から離れた位置に配置されている。そして、第2挿入片77は一方向に伸びる支持部73の中央より僅かにダンパ10側に位置している。また、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態で、第1ベース部30Aの一対の凸部43と挿入孔49との間の寸法に対して、第1挿入片72の基端から一方向(図5において左方向)に伸びる支持部73の一端までの寸法は小さく、第2挿入片77の基端から他方向(図5において右方向)に伸びる支持部73の他端までの寸法は大きい(図5参照。)。
【0042】
また、支持部73の他方の面から垂下した第1挿入片72の先端部には爪部74が設けられている。具体的には、爪部74は、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付けた状態で、第1挿入片72の平板状の先端縁の全体に亘り設けられ、ダンパ10のシリンダ11のジョイント部15側に向けて突出している。爪部74において、第1挿入片72の平板状の基端側に、支持部73に対してほぼ平行をなした平面78が形成されている。また、爪部74はダンパ10側に向かうに従い平面78に近づくように傾斜した第2傾斜面75が形成されている。爪部74は第2挿入片77には設けられていない。また、支持部73の他方の面から垂下した第2挿入片77の先端部には傾斜面である第3傾斜面76が形成されている。具体的には、第3傾斜面76は、爪部74の突出する方向とは反対側の第2挿入片77の面の先端部の全体に亘り設けられている。また、第3傾斜面76は、第2挿入片77の先端に向かうに従い第1挿入片72に近づく方向に傾斜している。また、第1挿入片72と第2挿入片77との間に設けられた所定の間隔は、第1挿入片72からダンパ10側に爪部74が突出する寸法より大きい。
【0043】
次に、こうして形成された角度規制部70を第1ベース部30Aに取り付ける取付け方法を説明する。
【0044】
先ず、規制部71の半円環状の受け部71Aをダンパ10のシリンダ11の外周の一部を囲むようにし、支持部73の他方の面を第1ベース部30Aの溝部41の底面41Aに対向させる。そして、第1挿入片72、及び第2挿入片77を挿入孔49に挿入する。このとき、第1挿入片72の爪部74の第2傾斜面75、及び第2挿入片77の第3傾斜面76が挿入孔49の第1傾斜面49Bに当接することによって、挿入孔49に第1挿入片72、及び第2挿入片77を案内する。
【0045】
そして、挿入孔49に対して第1挿入片72、及び第2挿入片77を挿入する方向(図5において下方向)に押し込むと、第1挿入片72の先端部が、第2挿入片77側(図5において右方向)に撓み、第1挿入片72及び第2挿入片77の先端部の互いの間の間隔が狭くなる。そして、第1挿入片72からダンパ10側に向けて突出する爪部74の先端がダンパ10側に位置する壁部49Aの案内面49Dに当接しつつ、第1挿入片72及び第2挿入片77が挿入孔49に挿入される。つまり、角度規制部70は、挿入孔49に挿入した際、挿入孔49のジョイント部15側に挿入される第1挿入片72と、挿入孔49のジョイント部15から離れた側に挿入される第2挿入片77とを具備している。
【0046】
そして、爪部74の平面78の位置が壁部49Aの先端面49Eの位置より下側に到達すると、第2挿入片77側に撓んでいた第1挿入片72が撓む前の位置に復元し、爪部74の平面78が先端面49Eに対向する(又は当接する。)。このとき、第1挿入片72及び第2挿入片77は一対の壁部49Aの案内面49Dに沿うように配置されているため、第1ベース部30Aに対して角度規制部70が傾倒することを抑える。こうして、第1挿入片72は、挿入孔49の先端面49Eと爪部74によって係止する。つまり、壁部49Aの先端面49Eは爪部74が係止する係止部である。なお、第1挿入片72及び第2挿入片77はそれぞれの板厚を変更することによって、所望の撓み易さに調節自在である。
【0047】
なお、第1ベース部30Aの一対の凸部43と挿入孔49との間の寸法に対して、第1挿入片72から一方向に伸びる支持部73の一端までの寸法は小さく、第2挿入片77から一方向に伸びる支持部73の他端までの寸法は大きい。これにより、第1ベース部30Aに対して一方向に伸びる支持部73の向きを反転させて、角度規制部70を第1ベース部30Aに取り付けようとしても、第1ベース部30Aの一対の凸部43と挿入孔49との間の寸法に対して、第2挿入片77から一方向に伸びる支持部73の他端までの寸法が大きいため、取り付けることができない。これにより、第1ベース部30Aに対する角度規制部70の向きを所定の向きにして取り付けることができる。
【0048】
こうして第1ベース部30Aに取り付けられた角度規制部70は、例えば、受け部71Aがダンパ10から離れる方向に押された場合、第1挿入片72の爪部74が壁部49Aの先端面49Eに係止しているため、第1ベース部30Aから外れ難い。これに対して、受け部71Aがダンパ10に近づく方向に押された場合、第2挿入片77が壁部49Aに係止していないため、角度規制部70は第1ベース部30Aから外れ易い。なお、爪部74が第1挿入片72からダンパ10側に突出する寸法を調節することによって、角度規制部70の第1ベース部30Aからの外れ易さを調節することができる。この場合、第1挿入片72と第2挿入片77との間に設けられた所定の間隔も、爪部74が第1挿入片72からダンパ10側に突出した寸法に応じて調節する。
【0049】
次に、この転倒防止装置を壁面Wに背面を対向させて床面上に設置された家具Fの上面と天井Cとの間に取り付ける取付け方法について説明する。
【0050】
先ず、第1ベース部30Aのベース部本体31に形成された挿入孔49に角度規制部70の第1挿入片72、及び第2挿入片77を挿入し、第1ベース部30Aに角度規制部70を取り付ける。
【0051】
次に、角度規制部70が取り付けられた第1ベース部30Aを、家具Fの壁面W側の上面に滑り止め部37を当接させて載置する。この際、角度規制部70はダンパ10より家具Fの正面側に配置する。また、第1ベース部30Aを家具Fの上面に載置した状態で、第1ベース部30Aのボルト45の軸部45B(回動軸)は、家具Fが地震等の揺れによって傾く方向に対して直交する方向に伸びている。つまり、地震等の揺れによって家具Fが前方(図1において右方向)に傾いた際に、第1ベース部30Aが家具Fの上面に当接した状態を維持することができるように、第1ベース部30Aは家具Fの上面に載置される。
【0052】
次に、転倒防止装置のダンパ10を圧縮する。このとき、この転倒防止装置はダンパ10を第2ベース部30Bと天井Cとの間に隙間が設けられる程度圧縮する。そして、ダンパ10のシリンダ11が角度規制部70の受け部71Aに当接するようにダンパ10を傾斜させる。この状態で、ダンパ10は傾斜角度を鉛直方向に対して15°〜25°の間の適正な角度に設定する。つまり、挿入孔49はダンパ10を家具Fの上面と天井Cとの間に軸線が傾斜した状態に取り付けた際、第1ベース部30のジョイント部15に対してダンパ10が傾斜する側に形成されていることになる。そして、第2ベース部30Bのボルト45の軸部45B(回動軸)が、第1ベース部30Aのボルト45の軸部45B(回動軸)と平行になるように、第2ベース部30Bの向きを正す。この状態で、ダンパ10の圧縮を止めるとダンパ10が付勢力により伸長し、第2ベース部30Bが天井Cに当接する(図1、2参照。)。つまり、各ベース部30A,30Bは家具Fの上面と天井Cとにそれぞれが当接する。こうして、この転倒防止装置はダンパ10を設置面上に設置された家具Fの上面と天井Cとの間に鉛直方向に対して伸縮方向が所定の角度をなして取り付けることができる。つまり、ダンパ10は、第1ベース部30Aに取り付けられた角度規制部70によって傾斜角度が規制されて、設置面上に設置された家具Fの上面と天井Cとの間に軸線が傾斜した状態に取り付けられる。なお、取り付け作業を完了した後、第1ベース部30Aから角度規制部70を取り外しても良く、取り付けたままにしても良い。
【0053】
こうして、この転倒防止装置は、角度規制部70が取り付けられた第1ベース部30Aを家具Fの上面に載置すれば、適切な傾斜角度にダンパ10を傾斜させることができ、ダンパ10の傾斜角度を維持して第2ベース部30Bを天井Cに当接させるのみで転倒防止装置を家具Fの上面と天井Cとの間に適切に取り付けることができる。
【0054】
家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられた転倒防止装置は、天井C側から家具Fの上面側に伸びたダンパ10の軸線が下り傾斜し、かつ上方から見た平面視において地震等の揺れによって家具Fが傾く方向(図1において右方向)と平行にダンパ10の軸線が伸びた状態にダンパ10が取り付けられる。このため、地震等の揺れによって家具Fが前方(図1において右方向)に傾いて、家具Fの上面が天井Cに近づくと、ダンパ10が確実に収縮動作して減衰力を発生する。これにより、この転倒防止装置はダンパ10で発生した減衰力を家具Fに作用させることができる。
【0055】
このように、この転倒防止装置は、家具Fの上面に載置した第1ベース部30Aに取り付けられた角度規制部70がダンパ10の傾斜角度を規制する。このように、この転倒防止装置は、角度規制部70が取り付けられた第1ベース部30Aを家具Fの上面に載置すれば、適切な傾斜角度にダンパ10を傾斜させることができ、その傾斜角度を維持して第2ベース部30Bを天井Cに当接させるのみで転倒防止装置を家具Fの上面と天井Cとの間に適切に取り付けることができる。
【0056】
また、この転倒防止装置は角度規制部70の第1挿入片72と第2挿入片77とを第1ベース部30Aの挿入孔49に挿入して、第1挿入片72の爪部74を挿入孔49に係止する。第1挿入片72と第2挿入片77との間に所定の間隔が設けられているため、第1挿入片72の爪部74が挿入孔49に挿入される際に、第1挿入片72が第2挿入片77に近づく方向に撓みつつ挿入孔49に挿入される。このため、この転倒防止装置は角度規制部70を第1ベース部30Aに容易に取り付けることができる。
【0057】
また、挿入孔49はダンパ10が傾斜する側に形成されており、角度規制部70はジョイント部15側の挿入孔49に第1挿入片72が挿入されている。すなわち、爪部74はジョイント部15側の挿入孔49に係止している。これにより、角度規制部70を第1ベース部30Aに取り付けた後、ダンパ10が角度規制部70に当接し、ダンパ10によって角度規制部70がジョイント部15から離れる方向に押された場合、挿入孔49に係止した爪部74によって、角度規制部70が第1ベース部30Aから意図せずに外れることを防止することができる。これに対して、角度規制部70を第1ベース部30Aから取り外す場合、角度規制部70をジョイント部15側に傾けることによって容易に取り外すことができる。
【0058】
したがって、この転倒防止装置は当該転倒防止装置を適切な傾斜角度に容易にすることができ、所望に応じて角度規制部70を容易に着脱することができる。
【0059】
また、この転倒防止装置の第1ベース部30Aは、壁部49Aを有している。壁部49Aは挿入孔49の開口縁49Cから垂下し、爪部74が係止する先端面49Eを具備している。このため、この転倒防止装置は、壁部49Aによって、第1挿入片72及び第2挿入片77を案内することができる。これにより、この転倒防止装置は、第1ベース部30Aに対する角度規制部70の向きを所定の向きに規制することができる。また、この転倒防止装置は壁部49Aに設けられた先端面49Eに第1挿入片72の爪部74を係止することができる。これにより、この転倒防止装置は、第1挿入片72の爪部74と共に先端面49Eの位置や形状を所望に応じて容易に変更することができる。
【0060】
また、この転倒防止装置の第2挿入片77は、第1挿入片72の爪部74の突出方向とは反対側の方向の先端部に、先端に向かうに従い第1挿入片72に近づく方向に傾斜した第3傾斜面76を具備している。このため、この転倒防止装置は第2挿入片77を第1ベース部30Aの挿入孔49に挿入する際、第2挿入片77の第3傾斜面76によって第2挿入片77を挿入孔49に良好に案内することができる。これにより、この転倒防止装置は角度規制部70を第1ベース部30Aに容易に取り付けることができる。
【0061】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態では、転倒防止装置を家具に対して取り付けたが、地震等の揺れによって転倒するおそれのある、書棚、冷蔵庫等の物品に対して取り付けてもよい。
(2)実施形態では、転倒防止装置を壁面に背面を対向させて床面上に載置された家具に対して取り付けたが、壁面に隣接させずに床面上に載置された家具等に対して取り付けてもよい。
(3)実施形態では、各ベース部がダンパの両端部のそれぞれを回動軸周りに回動自在、かつ回動方向に交差する方向に揺動自在に連結していたが、回動自在に連結しなくてもよいし、揺動自在に連結しなくてもよい。
(4)実施形態では、圧効きダンパを利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発揮するものであれば、両効きダンパであってもよい。
(5)実施形態では、シリンダ内に作動油及び圧縮ガスを封入したダンパを利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発生させるものであれば、他の液体を封入した液体圧ダンパであっても、他の形式のダンパであってもよい。
(6)実施形態では、シリンダ内に圧縮ガスを封入して伸張方向に圧縮ガスの膨張力が働くようにしたが、コイルばね等の他の方式で伸張方向に働く力を発生させてもよい。また、圧縮ガス等を封入せず、伸張方向に力を働かせなくてもよい。
(7)各ベース部の形態は実施形態の形態に限らない。
(8)実施形態では、第1挿入片に爪部を設け、爪部を壁部の先端面に係止しているが、例えば、第1挿入片の先端部に板厚方向に貫通した貫通孔、又は窪みを設け、壁部に爪部を設ける。そして、この爪部を第1挿入片の貫通孔、又は窪みに係止してもよい。
【符号の説明】
【0062】
C…天井、F…家具(物品)、10…ダンパ、15A…ジョイント部(第1連結部)、15A…ジョイント部(第2連結部)、30A,30B…ベース部(30A…第1ベース部、30B…第2ベース部)、45…ボルト(回動軸)、49…挿入孔、49A…壁部、49C…開口縁、51…連結部、53…垂下部、70…角度規制部、72…第1挿入片、74…爪部、76…第3傾斜面(傾斜面)、77…第2挿入片
【要約】
【課題】適切な傾斜角度に容易に取り付けることができ、所望に応じて容易に着脱することができる角度規制部を備えた転倒防止装置を提供する。
【解決手段】転倒防止装置は、ダンパ10が家具Fの上面と天井Cとの間に軸線が傾斜し設置され第1ベース部30Aがダンパ10の一端部のジョイント部15に連結し家具Fの上面に当接し、第2ベース部30Bがダンパ10の他端部のジョイント部15に連結し天井Cに当接し、第1ベース部30Aの角度規制部70がダンパ10の傾斜角度を規制する。第1ベース部30Aはダンパ10のジョイント部15よりダンパ10が傾斜する側に挿入孔49を有し、角度規制部70は挿入孔49のジョイント部15側に挿入されジョイント部15側に突出して挿入孔49に係止する爪部74を具備する第1挿入片72と、第1挿入片72と所定の間隔を有し挿入孔49のジョイント部15から離れた側に挿入される第2挿入片77とを具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5