(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トレランスリングがn個の周方向に延在する突出部の列を含み、前記溝がn個の溝を含み、前記n個の溝のそれぞれが周方向に延在する突出部の列と整列している、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図と組み合わせた以下の説明は、本明細書で開示される教示の理解を支援するために提供される。以下の論考は、本発明の教示の具体的な実施および実施形態に焦点を合わせている。これは本発明の教示を説明し易くするためのものであり、本発明の教示の範囲または適用可能性を限定すると解釈されるべきではない。しかしながら、他の実施形態を、本出願で開示されるような教示に基づいて使用することができる。
【0010】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を含めるように意図されている。例えば、特徴のリストを含む、方法、物品、もしくは装置は、それらの特徴のみに必ずしも限定されず、明確にリストされないか、またはかかる、方法、物品、もしくは装置に固有の他の特徴を包含してもよい。さらに、それとは反対と明らかに述べられない限り、「または(or)」は、包括的なまたは(or)を意味し、排他的なまたは(or)を意味しない。例えば、条件AまたはBは次の何れか1つで満たされる:Aは真であり(または存在し)かつBは偽である(または存在しない);Aは偽であり(または存在せず)かつBは真である(または存在する);ならびにAおよびBの両方とも真である(または存在する)。
【0011】
また、「1つの(aまたはan)」の使用は、本明細書に記載される要素および構成要素を記述するために利用される。これは、便宜上および本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われるにすぎない。この記述は、明らかにそうではないことを意味していない限り、1つ、少なくとも1つ、または複数をも包含する単数として読まれるべきであり、または逆も同様である。例えば、単一の項目が本明細書に記載される場合、2つ以上の項目が単一の項目の代わりに使用されてもよい。同様に、2つ以上の項目が本明細書に記載される場合、単一の項目で該2つ以上の項目を置き換えてもよい。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。材料、方法、および実施例は一例にすぎず、限定的であるとは意図されない。本明細書に記載されない範囲で、特定の材料および加工行為に関する多くの詳細は従来的であり、トレランスリング、直線運動、および往復運動技術における教本および他の資料中に見出され得る。
【0013】
本明細書に記載された実施形態によるアセンブリは、通常、内側構成部品、外側構成部品、およびその間に配置されるトレランスリングを含むことができる。内側構成部品と外側構成部品のうちの少なくとも1つは、グリースのような潤滑剤を蓄えるように構成された溝を含み、その構成部品とトレランスリングとの間に低摩擦スリップ界面を促進することができる。一実施形態では、トレランスリングは、側壁から半径方向に延在する複数の突出部を含むことができる。いくつかのアセンブリでは、突出部は、側壁から半径方向外側に延在することができる。その場合、溝は、溝が突出部と整列するように外側構成部品の内側表面に配置することができる。他のアセンブリでは、突出部は、側壁から半径方向内向きに延在することができる。溝は、内側構成部品の外側表面上に配置されて、突出部と整列することができる。
【0014】
特定の用途では、内側構成部品は、外側構成部品に対して長手方向に移動する(すなわち、往復運動する)ことができる。他の用途では、内側構成部品は外側構成部品に対して回転することができる。溝内に配置される潤滑剤は、内側構成部品と外側構成部品との間の長時間の相対的な動作にわたって、溝から引き出すことができる。すなわち、潤滑剤は、トレランスリングと内側構成部品または外側構成部品との間の適切な低摩擦界面を促進するために、溝から漏出できるようになっている。一実施形態では、潤滑剤は、内側構成部品と外側構成部品の間で行われている相対的動作のそれぞれ(例えば、1往復サイクルまたは1回転)に対してごく少量の潤滑剤が溝から除去されるように、ゆっくりした放出特性を有することができる。例えば、潤滑剤は1動作につき、わずかに0.0001mm
2の量で分散することがある。別の実施形態では、潤滑剤は溝から不均一に放出され得る。例えば、最初の動作の間の潤滑剤の放出は、その後の動作の間での放出よりも高くなり得る。したがって、潤滑剤の供給は、スリップ界面が十分に潤滑されて適切な滑り特性となると、減少させることができる。
【0015】
図1は、一実施形態によるアセンブリ100を示す。通常、アセンブリ100は、シャフトなどの内側構成部品102、穴106を画定するハウジングなどの外側構成部品104、および内側構成部品102と外側構成部品104の間に配置されるトレランスリング108を含むことができる。
【0016】
特定の例では、内側構成部品102は、略円筒形とすることができる。本明細書で使用される場合、「略円筒形」とは、構成部品が、最適円筒に対し、ずれが、いずれの位置でも5%以下、いずれの位置でも4%以下、いずれの位置でも3%以下、またはいずれの位置でも2%以下である状態を示す。別の例では、内側構成部品102は円筒形とすることができる。本明細書で使用される場合、「円筒形」とは、構成部品が最適円筒からのずれがどの位置でも1%以下である状態を示す。同様に、一実施形態では、外側構成部品104の穴106は、略円筒形または円筒形の形状を有する内側表面114を画定することができる。
【0017】
内側構成部品102および外側構成部品104の一方または両方は、潤滑剤112を収容するかまたは収容するように構成される溝110をさらに含むことができる。一実施形態では、潤滑剤112は、高い初期粘度を有する半固体材料を含む。潤滑剤112は、擬似プラスチック流体を形成するために、増ちょう剤と混合される油または類似の流体潤滑剤を含むことができる。例示的な増粘剤としてはカルシウム、ナトリウムおよびステアリン酸リチウムが挙げられる。
【0018】
一実施形態では、潤滑剤112はグリースを含むことができる。グリースには、鉱物系油、アスファルト系油ブレンド、極圧グリース、ロールネックグリース、石鹸濃縮鉱物油、または多目的グリースが含まれていてもよい。
【0019】
潤滑剤112は、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、グラフェン、膨張黒鉛、窒化ホウ素、滑石、フッ化カルシウム、またはそれらの任意の組み合わせなどの添加剤をさらに含むことができる。さらに、潤滑剤112は、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、フッ化カルシウム、窒化ホウ素、雲母、珪灰石、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、カーボンブラック、顔料またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
図1で示されるように、溝110は穴106から外側構成部品104内に延在することができる。特定の実施形態では、溝110は、外側構成部品104のまわりに周方向に延在することができる。より詳細には、溝110は、外側構成部品104の内側表面114に環状凹部を形成することができる。
【0020】
特定の実施形態では、溝110は、略多角形の断面を有することができる。すなわち、断面で見ると、溝110は、相対角度で相互接続される直線の、または略直線の表面から形成することができる。例示的な実施形態では、溝110は、2つの側壁と、2つの側壁の間に延在する基部とを含むことができる。基部は、2つの側壁のうちの少なくとも1つに対して垂直に延在することができる。より特定の実施形態では、溝110は、正方形のような、略矩形の形状を画定することができる。別の特定の実施形態では、溝110は、基部と反対側(すなわち溝110の開口部付近)で計測される幅とは異なる、基部で測定される幅を有することができる。特定の実施形態では、基部における溝110の幅は、開口部における溝110の幅よりも大きくすることができる。別の実施形態では、基部における溝110の幅は、開口部における溝110の幅よりも小さくすることができる。側壁は、基部と開口部との間で直線的に延在することができる。異なる形状の溝形状は、溝110からの潤滑剤の流れを変え、潤滑剤の分散の速度を増減させることができる。
【0021】
特定の実施形態では、溝110は、断面で見たときに1つ以上の弓形の表面を有することができる。例えば、溝110は、2つの直線状側壁と、側壁の間に延在する弓形の基部表面とを含むことができる。特定の実施形態では、弓形の基部は、基部に沿って中央の、または略中央の位置で、溝110の最大深さを画定することができる。別の特定の実施形態では、弓形基部は、直線状側壁の一方または両方に隣接する位置で最大深さを有することができる。別の実施形態では、溝110は、一般的に半円形、すなわち連続的な、または略連続した弓形の表面であり得る。あるいは、溝110の基部は、半円形であってもよく、開口部まで延在する2つの直線状または弓形の側壁と接続してもよい。特定の実施形態では、溝110は、放物線形状を形成するようにテーパ状の側面を有することができる。一実施形態では、潤滑剤112の分散を促進するために、溝110の縁の少なくとも1つを丸くしたり、テーパ状にしたりすることができる。別の実施形態では、縁の少なくとも1つが直角を形成することができる。溝110のキャスタレーション、起伏、または変化する縁部は、溝110からの潤滑剤112の不均一な分散を促進し得る。このような特徴は、溝110のある領域からの潤滑剤112の分散を促進し、溝110の他の領域は、潤滑剤112の分散を防止することができる。
【0022】
一実施形態では、溝110の断面形状は、アセンブリ100の円周に沿って測定して均一であり得る。別の実施形態では、溝110の断面形状は、円周に沿って測定して変化し得る。一実施形態では、溝110は、第1の位置に第1の深さを有し、第2の位置にある第2の深さを有することができ、第2の深さは第1の深さとは異なる(例えば、より大きい)。あるいは、溝110の第1の位置は、円弧状の断面形状を有することができ、第2の位置は、略多角形の断面形状を有することができる。特定の例では、均一な断面形状は、潤滑剤112の分散を均一に促進することができる。反対に、変化する形状は、追加の潤滑剤112を必要としない場所での分散を最小にしながら、所望の位置で潤滑剤112の分散をより多く促進することができる。特定の用途では、不均一な分散が望ましい場合があり得る。例えば、特定のアセンブリは、アセンブリの特定の表面または側面に沿って負荷条件が増加する。すなわち、動作に対する摩擦抵抗は、アセンブリの特定の領域でより大きい。このような位置では、溝110は、潤滑剤112をより容易に分散させるような形状にすることができ、他の位置は、潤滑剤を保持する形状にすることができる。
【0023】
溝110内の表面特徴は、潤滑剤の分散を向上させ、潤滑剤112を溝110内にポンプ供給することができうる。表面特徴は、例えば、隆起部、起伏、くぼみ、デコボコ、くさび形、他の適切な特徴、およびそれらの組み合わせを含むことができる。一実施形態では、表面特徴は、潤滑剤の分散を向上させることができる。別の実施形態では、表面特徴は分散速度を減少させることができる。したがって、所望の潤滑剤の分散を得るために、溝110内に表面特徴を適切な配置で配置することができる。
【0024】
溝の形成中に溝110の形状にわずかなばらつきまたは不完全性が生じうる。例えば、擦り傷、切れ目、ファウリング、および他の人為的形成物が、溝110に沿って発生し得る。そのようなばらつきおよび不完全性は、それらのサイズが小さいままであれば、通常許容可能である。特定の実施形態では、溝110を操作して、ばらつきおよび不完全性の形成を低減することができる。例えば、溝110を研磨、ブラスト、除去、化学的エッチング、削り取り、または他の方法で精練してばらつきおよび不完全さを除去することができる。
【0025】
トレランスリング108は、側壁118から半径方向に延在する複数の突出部116を含むことができる。図示のように、突出部116は、側壁118から半径方向外側に延在することができる。
【0026】
一実施形態では、突出部116は、側壁118への加圧により成形され、例えば、プレス加工されてもよい。各突出部116は、トレランスリング108の円周に沿って半径方向に均一な圧縮を可能にするために、実質的に同じ形状およびサイズを有することができる。あるいは、少なくとも2つの突出部116が、突出部116の少なくとも1つの特性が異なるように、互いに異なるものであってもよい。例えば、第1の突出部の長さは第2の突出部の長さの少なくとも101%であってもよく、第1の突出部の半径方向の高さは第2の突出部とは異なってもよく、第1の突出部の周方向の幅は第2の突出部とは異なってもよく、第1の突出部の表面粗さは第2の突出部とは異なってもよく、第1の突出部は第2の突出部とは異なる、開いた、または途切れた形状を含んでもよく、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。当業者は、トレランスリング108上の突出部116の間の相違点が上記の例示的な実施形態に限定されず、突出部116が互いに異なる多くの異なる特性を有することを認識するであろう。
【0027】
特定の実施形態では、突出部116の少なくとも1つは、外側頂点を画定する弓形断面形状を有することができる。突出部116はそれぞれ、ある長さだけ離間した第1および第2の軸方向端部と、ある幅だけ離間した第1および第2の長手方向側部とを含むことができる。一実施形態では、突出部116の長さは幅より大きくてもよい。例えば、長さは、幅の少なくとも101%、幅の少なくとも110%、幅の少なくとも125%、幅の少なくとも150%、幅の少なくとも200%、または幅の少なくとも500%とすることができる。一実施形態では、長さは、幅の10,000%以下とすることができる。
【0028】
一実施形態では、トレランスリング108は、金属、合金、またはポリマーなどの弾性材料を含むことができる。トレランスリング108は、200以上、300以上、または400以上であり得るビッカース硬さ(VPN)を含むことができる。一実施形態では、VPNは600以下とすることができ、または500以下とすることができる。特定の実施形態では、トレランスリング108は、内側構成部品または外側構成部品のVPN硬度のVPN
Cよりも低いVPN硬度、すなわちVPN
TRを有する材料を含むことができる。その結果、トレランスリング108は、組立時に内側構成部品102または外側構成部品104のいずれにも埋め込まれない。
【0029】
動作中、突出部116は、側壁118に向かって半径方向に圧縮するように構成される。これにより、トレランスリング108は、内側構成部品102と外側構成部品104の直径における半径方向の不完全性を補うと同時に、それらの間にスリップ界面を提供することが可能になる。
【0030】
一実施形態では、突出部116は、すべての突出部116の軸方向両端部が互いに整列するように、単一の周方向に延在する列に沿ってすべて配置することができる。別の実施形態では、例えば、
図1に示すように、突出部116は、少なくとも2つの周方向に延在する列に沿って延在することができる。この周方向に延在する列は、互いに間隔をあけて配置することができる。特定の例では周方向に延在する側壁118のバンドは、突出部116の列の間のトレランスリング108の全周囲にわたって延在することができる。さらに別の実施形態では、突出部116は、少なくとも3つの周方向に延在する列、少なくとも4つの周方向に延在する列、または少なくとも5つの周方向に延在する列に配置することができる。特定の例では、周方向に延在する突出部116の列は、周方向に延在する各列からの1つの突出部がトレランスリング108の中心軸に平行な直線に沿って位置するように整列することができる。別の例では、突出部116の周方向に延在する列の少なくとも1つは、トレランスリングの中心軸に平行に延在し隣接する突出部の列の突出部と交差する線が前記の突出部116の周方向に延在する少なくとも1つの列の突出部と交差しないように、角度的にオフセットさせることができる。
【0031】
一実施形態では、少なくとも1つの突出部116が、少なくとも1つの動作位置において溝110と重なるように溝110と整列することができる。すなわち、突出部116は、1サイクルの動作の間に1回以上、溝110と半径方向に重なる。さらなる実施形態では、突出部116のすべてが対応する溝110と整列することができる。このようにして、各溝110は、トレランスリング108の突出部116と外側構成部品104との間に形成されたスリップ界面120に沿って、外側構成部品104の内側表面114に潤滑剤112を提供することができる。
【0032】
一実施形態では、アセンブリ100は、複数の溝110を含むことができる。例えば、アセンブリ100は、少なくとも2つの溝、少なくとも3つの溝、少なくとも4つの溝、少なくとも5つの溝、または少なくとも10の溝を含むことができる。一実施形態では、アセンブリ100は、10,000個以下の溝、1000個以下の溝、または100個以下の溝を含むことができる。特定の実施形態では、溝はすべて同じ形状、サイズおよび特徴を有することができる。さらに、溝110は、すべて、外側構成部品104の全周に延在することができる。別の実施形態では、溝110の少なくとも2つは、異なる形状、サイズ、または特徴を有することができる。すなわち、溝110の少なくとも2つは互いに異なっていてもよい。例えば、第1の溝は、外側構成部品104の全周囲にわたって連続して延在してもよく、第2の溝は、外側構成部品104の周に沿って途切れたセグメントとして延在してもよい。第1の溝は、スリップ界面120に均一な潤滑を提供することができるが、第2の溝は、スリップ界面120に沿った特定の位置を選択的に潤滑することができる。
【0033】
特定の例では、溝110は、溝群がトレランスリング108の突出部116に隣接して配置されるように、外側構成部品104に沿って配置することができる。すなわち、突出部116の近傍の隣接する溝間の軸方向の距離は、周方向に延在する突出部116の隣接する列間の側壁118に隣接する溝間の距離よりも短くすることができる。例えば、
図3を参照して、第1溝群302は、トレランスリング308の第1の列の突出部304に隣接する位置に配置することができる。第2溝群306は、トレランスリング308の第2の列の突出部310に隣接する位置に配置することができる。第1溝群302内の隣接する溝の間の距離d
1は、第1溝群302および第2溝群306の間の距離d
2未満とすることができる。例えば、d
1は、0.99d
2未満、0.8d
2未満、0.75d
2未満、または0.5d
2未満とすることができる。別の実施形態では、d
1は0.05d
2以上、または0.25d
2以上とすることができる。一実施形態では、同じ群の溝(例えば、群302または群306)の隣接する溝の間の距離d
1は、少なくとも0.1mm、少なくとも1mm、少なくとも10mm、または少なくとも100mmとすることができる。隣接する溝群の間の距離d
2は、少なくとも10mm、少なくとも100mm、少なくとも1000mm、または少なくとも10,000mmとすることができる。
【0034】
一態様では、溝110は、内側構成部品102または外側構成部品104の全周に延在してもよい。溝110は、連続していてもよく、全周に亘って測定した場合、均一な形状を有していてもよい。溝形状の均一性は、均一となっていなければ起こり得る、アセンブリに沿った潤滑のむらを、緩和することによって動作を向上させることができる。
【0035】
一実施形態では、各突出部116は、少なくとも1つの溝、少なくとも2つの溝、少なくとも3つの溝、さらには少なくとも4つの溝に接触するようにアセンブリ100内に配置することができる。スリップ界面120に沿って配置される溝110は、内側構成部品102および外側構成部品104との間で、少なくとも2つの別個の相対的な動作(例えば、少なくとも3つの別個の動作、少なくとも4つの別個の相対的な動作、少なくとも5つの別個の相対的な動作、少なくとも10の別個の相対的な動作、またはさらに少なくとも100の別個の相対的な動作)に対して、繰返し可能な方法で、溝110からスリップ界面120へ、潤滑剤112の分散を促進することができる。本明細書で使用されるように、各「別個の相対的な動作」とは、内側構成部品102と外側構成部品104の間の滑り状態を指し、当該構成部品を回転または軸方向に相対的に平行移動させる。潤滑剤112の分散により、一定の摺動特性でスリップ界面120を維持することができる。すなわち、各別個の相対的な動作は、同じ摺動特性を示すことができる。従来のアセンブリは、内側および外側構成部品間でわずかな回数の別個の相対的な動作の後に潤滑剤を使い果たしてしまう恐れがあり、それによってスリップ界面120の形状を変化させるが、本明細書の実施形態によるアセンブリ100は、動作中の潤滑剤の放出を連続的で、望ましいものにできるので、潤滑されるスリップ界面120を維持することができる。したがって、アセンブリ100はより長い動作寿命を有し、より長い時間調整することなく使用することができる。さらに、アセンブリを動作可能に保つために必要なメンテナンスおよび潤滑が少なくて済む。
【0036】
一実施形態では、溝は、略螺旋形状を有することができる。螺旋形状の溝は、アセンブリに沿って連続的に延在していてもよく、または略螺旋状の配置で互いに離間される部分的な溝の集合として現れていてもよい。
図4は、外側構成部品404に沿って延在する螺旋形状の溝402を示す。溝402は、部分406に沿って図示されるように、連続的であってもよいし、部分408に沿って図示されているように、途切れていてもよいし、または連続部分と途切れた部分の組み合わせを含んでもよい。
【0037】
特定の例では、
図2に示すように、溝110は、内側構成部品102内に延在することができる。このようにして、溝110は、内側構成部品102の外側表面122に半径方向の凹部を形成することができる。溝110を内側構成部品102に再配置することで、上述した実施形態と同様の滑り特性を提供することができる。トレランスリング108の突出部116は、トレランスリング108と内側構成部品102との間の接合部に沿ってスリップ界面120を形成するように半径方向内向きに延在することができる。このようにして、溝110からスリップ界面120への潤滑剤112の分散は、繰返し可能な方法で、例えば、少なくとも2つの別個の相対的な動作(例えば、少なくとも3つの別個の相対的な動作、少なくとも4つの別個の相対的な動作、少なくとも5つの別個の相対的な動作、またはさらに少なくとも10の別個の相対的な動作)に対して、生じてもよい。当業者であれば、上述の実施形態は、内側構成部品102、トレランスリング108、および外側構成部品104の間の繰返し可能な滑り特性を高めることができることを理解するであろう。さらに、内側構成部品102および外側構成部品104の少なくとも一方に沿って潤滑剤を配置することにより、従来のトレランスリング、例えば、くぼみまたは材料を含む潤滑のないトレランスリングを使用することができる。
【0038】
一実施形態では、構成(
図1の外側構成部品の溝または
図2の内側構成部品の溝)にかかわらず、アセンブリは、潤滑剤を溝に挿入するとき生じてもよい。潤滑剤は、溝によって画定される全容積を満たしてもよい。一実施形態では、潤滑剤は、溝に圧入または詰め込むことができる。追加の潤滑剤を、スリップ界面に沿って残して、アセンブリの初期動作を容易にし、トレランスリングの設置を可能にすることができる。トレランスリングが、内側構成部品と外側構成部品のうちの他方(すなわち、溝を含まない構成部品)の周りに、側壁がその構成部品に面した状態で嵌合されるとき、プレアセンブリを形成することができる。次いで、プレアセンブリは、溝を含む構成部品に対して設置され、最終位置に整列される。
【0039】
別の実施形態では、トレランスリングは、溝を含む構成部品に最初に嵌め込むことができる。トレランスリングの突出部は、側壁が露出するように溝の方向に向けることができる。次いで、他の構成部品(溝を含まない)を、トレランスリングの側壁に対して設置して、アセンブリを形成することができる。このアセンブリは、トレランスリングの側壁に沿って配置されるさらなる潤滑剤または摺動部品がなければ困難であり得ることに留意されたい。特定の実施形態では、摺動部品は、トレランスリングに取り付けられた低摩擦層を含むことができる。例えば、摺動部品は、側壁に積層された低摩擦層を含むことができる。低摩擦層は、低摩擦ポリマー(例えば、PTFE)などの低摩擦材料を含むことができる。
【0040】
多くの異なる態様および実施形態が可能である。それらの態様と実施形態のうちのいくつかが下記に述べられる。本明細書を読んだ後に、当業者は、それらの態様と実施形態が単に例示であり、本発明の範囲を制限しないことを理解するだろう。実施形態は、下にリストされるような実施形態のうちの何れか1つ以上に従ってもよい。
【0041】
実施形態1.
穴を画定する外側構成部品と、
前記穴内に配置される内側構成部品と、
前記外側構成部品および前記内側構成部品の間に配置されるトレランスリングであって、側壁と、前記側壁から半径方向外側に延在する複数の突出部とを含むトレランスリングとを備え、
前記外側構成部品が潤滑剤を収容する溝を画定し、前記溝が前記外側構成部品の周りに周方向に延在し、前記溝が前記複数の突出部の少なくとも1つと軸方向に整列する、
アセンブリ。
【0042】
実施形態2.
穴を画定する外側構成部品と、
前記穴内に配置される内側構成部品と、
前記外側構成部品および前記内側構成部品の間に配置されたトレランスリングであって、側壁と、前記側壁から半径方向内側に延在する複数の突出部とを含むトレランスリングとを備え、
前記内側構成部品が潤滑剤を収容する溝を画定し、前記溝が前記内側構成部品の周りに周方向に延在し、前記溝が前記複数の突出部の少なくとも1つと軸方向に整列する、
アセンブリ。
【0043】
実施形態3.
外側表面を画定する略円筒形の本体と、
前記外側表面から前記略円筒形の本体内に延在する溝と、
前記溝内に配置される潤滑剤とを備え、
前記溝がトレランスリングの突出部と整列するように構成され、前記溝が前記トレランスリングと前記内側構成部品との間で摺動中に潤滑剤を分散させるように構成される、
アセンブリ用の内側構成部品。
【0044】
実施形態4.
内側表面を有する穴を画定する本体と、
前記内側表面から前記本体内に延在する溝と、
前記溝内に配置される潤滑剤とを備え、
前記溝がトレランスリングの突出部と整列するように構成され、前記溝が前記トレランスリングと前記内側構成部品との間で摺動中に潤滑剤を分散させるように構成される、
アセンブリ用の外側構成部品。
【0045】
実施形態5.
内側表面を有する穴を画定する外側構成部品と、
外側表面を画定し、前記穴内に配置される内側構成部品と、
前記内側構成部品および前記外側構成部品のうちの少なくとも1つの中に延在する溝と、
前記溝内に配置される潤滑剤とを備え、
前記溝がトレランスリングの突出部と整列するように構成され、前記溝が前記トレランスリングと前記内側構成部品との間で摺動中に潤滑剤を分散させるように構成される、
プレアセンブリ。
【0046】
実施形態6.
前記複数の突出部と前記トレランスリングとの間に形成される界面がスリップ界面を画定する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0047】
実施形態7.
前記スリップ界面での相対的な動作の際に、潤滑剤の一部が前記溝から前記スリップ界面に分散される、実施形態3のアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0048】
実施形態8.
前記溝から前記スリップ界面への前記潤滑剤の分散が、前記内側構成部品と前記外側構成部品の間の少なくとも2つの別個の相対的な動作に対して繰返し可能である、実施形態4のアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0049】
実施形態9.
前記溝が複数の溝を含む、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0050】
実施形態10.
前記溝が環状凹部を画定する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0051】
実施形態11.
前記溝が螺旋状である、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0052】
実施形態12.
前記複数の突出部の各々が前記溝に直交する方向に延在する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0053】
実施の形態13.
前記潤滑剤がグリースを含む、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0054】
実施の形態14.
前記トレランスリングが前記突出部の少なくとも1つの軸方向端部に沿って周方向に延在するリムを含む、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0055】
実施の形態15.
前記トレランスリングが側壁と、前記側壁から半径方向に延在する複数の突出部とを含む、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0056】
実施の形態16.
前記溝が多角形の断面形状を有し、前記溝が弓形の断面形状を有する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0057】
実施の形態17.
前記溝が略U字形の断面を有する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0058】
実施の形態18.
前記溝が前記内側構成部品または前記外側構成部品の円周全体に延在する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0059】
実施の形態19.
前記トレランスリングがn個の周方向に延在する突出部の列を含み、前記溝がn個の溝を含み、前記n個の溝のそれぞれが周方向に延在する突出部の列と整列している、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0060】
実施の形態20.
前記溝が前記内側構成部品または前記外側構成部品内に、少なくとも1mmで、少なくとも2mmで、少なくとも3mmで、少なくとも4mmで、少なくとも5mmで、少なくとも10mmで、または少なくとも25mmで延在する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0061】
実施の形態21.
前記溝が前記内側構成部品または前記外側構成部品内に、100mm以下で、75mm以下で、または50mm以下で延在する、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0062】
実施の形態22.
前記トレランスリングが低摩擦層を含み、前記低摩擦層が前記側壁および前記突出部の少なくとも1つに結合される、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0063】
実施の形態23.
前記内側構成部品が前記外側構成部品に対して回転運動するように構成されるか、前記内側構成部品が前記外側構成部品に対して往復運動するように構成されるか、またはそれら運動の組み合わせとなるように構成される、実施形態1、2、または5から21の何れか1つのアセンブリ、またはプレアセンブリ。
【0064】
実施の形態24.
前記アセンブリがステアリングコラムアセンブリを含む、前述の実施形態の何れか1つのアセンブリ、プレアセンブリ、または構成部品。
【0065】
前述の特徴のすべてが必要なわけではなく、特定の特徴の一部は必要ではないかもしれず、また、1つ以上の特徴が前述されたものに加えて提供されてもよいことに注意されたい。なおさらに、特徴が説明されている順序は必ずしも特徴が備え付けられる順序ではない。
【0066】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できる。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、任意の副次的な組み合わせで提供したりすることができる。
【0067】
利点、他の長所、および問題に対する解決法を、特定の形態に関して前述のとおり説明してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、何らかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、任意の特徴が、特許請求の範囲の何れかまたはすべての重要な、必要な、または本質的な特徴として解釈されるべきではない。
【0068】
本明細書および本明細書に記載の実施形態の説明は、種々の実施形態の構造の概略の理解を与えることを意図している。本明細書および説明は、本明細書に記載の構造物または方法を使用する装置および系の構成要素および特徴をすべて網羅的および包括的に記載する役割を果たすことを意図するものではない。単一の実施形態に別の実施形態を組み合わせて行ってもよいし、逆に、簡略のため単一の実施形態の文脈に記載した様々な特徴を、別々に行ってもあるいは任意の副次的な組み合わせで行ってもよい。さらに、数値を範囲で記載する場合は、その範囲内のありとあらゆる数値が含まれる。本明細書を読んで初めて、多くの他の実施形態が当業者に明らかになるかもしれない。本開示の範囲から逸脱しない範囲で構造の置換、論理の置き換えまたは任意の変更を行えるように、他の実施形態を使用してもよく、本開示から他の実施形態を得てもよい。したがって、本開示は、限定的なものではなく例示的なものと見なすべきである。