特許第6383870号(P6383870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383870熱可塑性エラストマー樹脂粉末、及び熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383870
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー樹脂粉末、及び熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20180820BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180820BHJP
【FI】
   C08J3/12 101
   C08J3/12CER
   C08J3/12CEZ
   C08L101/00
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-517296(P2017-517296)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公表番号】特表2017-530239(P2017-530239A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】KR2015010127
(87)【国際公開番号】WO2016052935
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年3月30日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0130881
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ドクリュル
(72)【発明者】
【氏名】カン・ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン・ジュンビョン
(72)【発明者】
【氏名】カン・キョンミン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−097480(JP,A)
【文献】 特開平07−173366(JP,A)
【文献】 特開2000−072929(JP,A)
【文献】 特開2002−283341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径がμmないし300μmの熱可塑性エラストマー(TPE、thermoplastic elastomer)樹脂の球形粒子を含み、
前記熱可塑性エラストマー樹脂は、10,000ないし20,000の重量平均分子量を有する、熱可塑性エラストマー樹脂粉末。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の中で前記熱可塑性エラストマー樹脂の球形粒子の直径は1μmないし500μmに分布する、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末。
【請求項3】
パウダースラッシュモールディング工法の成形用途に適用される、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末。
【請求項4】
溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を形成する段階;及び
前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を溶融スプレイ法によって噴射すると同時に、冷却させて球形粒子状の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を得る段階を含み、
熱可塑性エラストマー樹脂を噴射ノズルの備えた圧出機に投入した後、前記噴射ノズルに移動させて前記噴射ノズルで加温し、前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を形成し、
前記噴射ノズルを通じて前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を噴射する際に前記噴射ノズルに空気を一緒に注入する、熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項5】
ペレット形状の熱可塑性エラストマー樹脂または破砕された形状の粒子粉末の熱可塑性エラストマー樹脂を前記圧出機に投入する、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項6】
前記噴射ノズルに注入される空気の圧力が20ないし145psiである、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項7】
前記噴射ノズルに注入される空気の温度が150ないし500℃である、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項8】
前記噴射ノズルに注入される空気の注入速度が10ないし70m/sである、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項9】
溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液に滑剤、可塑剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む添加剤を添加する、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項10】
前記添加剤は0.05ないし5wt%で溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液に含まれた、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項11】
前記噴射ノズルの温度が150ないし500℃である、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項12】
前記噴射ノズルの圧力が10psiないし1500psiである、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【請求項13】
前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の粘度が250℃で1000ないし10000cpである、請求項に記載の熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー樹脂粉末、及び熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー樹脂は、ゴムのように弾性が与えられ、熱可塑性特性を有する材料として自動車内装材のような成形品など各種ゴム部品代替用途などに多様に応用されてもよい。
【0003】
熱可塑性エラストマー樹脂の成形工程のうち、必要に応じて微細な粉末状が求められる場合、一般に低温破砕方式(cryogenic
process)によって大きい粒子を破砕して微細な粉末を得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実現例は、球形で粒度分布が均一な熱可塑性エラストマー樹脂粉末を提供する。
本発明の他の実現例は、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実現例において、平均粒径がμmないし300μmである熱可塑性エラストマー(TPE、thermoplastic elastomer)樹脂の球形粒子を含み、前記熱可塑性エラストマー樹脂は、10,000ないし20,000の重量平均分子量を有する、熱可塑性エラストマー樹脂粉末を提供する。
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末のうち、前記熱可塑性エラストマー樹脂の球形粒子の直径は1μmないし500μmに分布してもよい。
【0006】
記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、パウダースラッシュモールディング工法の成形用途に適用されてもよい。
【0007】
本発明の他の実現例において、溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を形成する段階;及び前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を溶融スプレイ法によって噴射すると同時に、冷却させて球形粒子状の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を得る段階を含み、熱可塑性エラストマー樹脂を噴射ノズルの備えた圧出機に投入した後、前記噴射ノズルに移動させて前記噴射ノズルで加温し、前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を形成し、前記噴射ノズルを通じて前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を噴射する際に前記噴射ノズルに空気を一緒に注入する、熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法を提供する。
【0008】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法において、ペレット形状の熱可塑性エラストマー樹脂、または破砕された形状の粒子粉末の熱可塑性エラストマー樹脂を前記圧出機に投入することができる
【0009】
前記噴射ノズルに注入される空気の圧力が20ないし145psiであってもよい。
前記噴射ノズルに注入される空気の温度が150ないし500℃であってもよい。
前記噴射ノズルに注入される空気の注入速度が10ないし70m/sであってもよい。
【0010】
溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液に滑剤、可塑剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つを含む添加剤を添加してもよい。
前記添加剤は、0.05ないし5wt%で溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液に含まれてもよい。
【0011】
前記噴射ノズルの温度が150ないし500℃であってもよい。
前記噴射ノズルの圧力が10psiないし1500psiであってもよい。
前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の粘度が250℃で1000ないし10000cpであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、パウダースラッシュモールディング工法に適用するに相応しく、これより製造された成形体の表面特性が優秀である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における熱可塑性エラストマー樹脂粉末のSEMイメージである。
図2】実施例2における熱可塑性エラストマー樹脂粉末のSEMイメージである。
図3】実施例4における熱可塑性エラストマー樹脂粉末のSEMイメージである。
図4】実施例5における熱可塑性エラストマー樹脂粉末のSEMイメージである。
図5】比較例1における熱可塑性エラストマー樹脂粉末のSEMイメージである。
図6】実施例1ないし5で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造の際に注入された空気の圧力に対して製造された、熱可塑性エラストマー樹脂粉末の平均粒径をグラフで示した図面である。
図7】実施例1で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末に対するSEMイメージである。
図8】実施例7で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末に対するSEMイメージである。
図9】実施例1、7ないし10で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造の際に添加されたモンタンワックスの含量に対して製造された、熱可塑性エラストマー樹脂粉末の平均粒径をグラフで示した図面である。
図10】実施例10で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末に対するSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実現例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は後述する請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0015】
本発明の一実現例において、平均粒径が約μmないし約300μmである熱可塑性エラストマー(TPE、thermoplastic elastomer)樹脂の球形粒子を含む、熱可塑性エラストマー樹脂粉末を提供する。
【0016】
熱可塑性エラストマー樹脂は、ポリプロピレンまたはポリエチレンのような熱可塑性樹脂とゴムを架橋させて得ることができ、弾性を持ちながら熱可塑性を有する。
【0017】
熱可塑性エラストマー樹脂は、公知の合成方法によると、合成する際に圧出または乾式方法によっては粉末状態で得られないため、微細粉末粒子で形成するために、通常、合成によって得られた粒子を後でさらに粉砕することで、より小さい粒子を形成する。このように、粉砕によって得られた粒子から球形の粒子は得られない。
【0018】
本明細書における球形の粒子とは、粉砕によって形成された粒子が尖った粒子表面を持つことに対比される表現であって、必ずしも数学的に完璧な球形を意味するものではなく、通常、粒子の集合体としての粉末の次元で個々の粒子に対して球形と称する時、包括することができる水準を全て含む概念として理解しなければならない。したがって、本明細書における球形の粒子は、物理的破砕ないし粉砕によって形成されず、溶融状態で固化されて形成された粒子の形状を包括するもので、広意として理解されなければならない。
【0019】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、球形粒子で形成された熱可塑性エラストマー樹脂粒子として得ることができ、このような球形粒子で形成された熱可塑性エラストマー樹脂粒子は、後述される熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法によって得られる。前記粒子状の熱可塑性エラストマー樹脂の製造方法は、溶融スプレイ法を適用して形成される熱可塑性エラストマー樹脂粒子の大きさを調節することが容易であり、また、粒子の大きさの分布を均一にすることができる利点がある。
【0020】
溶融スプレイ法によって、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は微細な球形粒子で形成され、粒子の粒度分布が比較的に均一に形成されることができる。
通常、低温破砕方式で微細粉末を得られるが、低温破砕方式によって得られた粉末は、球形で得られないだけでなく、粒子の大きさを調節し難いため、より小さい微細な粒子を形成するためには、数段階を経て破砕及び冷却を行わなければならないし、それによって費用が上昇し、生産収率が低いという短所がある。また、低温破砕方式で得た粉末粒子のモフォロジーは、尖っていて、不規則的に破砕された形を取るので、流れ性が良くない。
【0021】
これに比べて、溶融スプレイ法によれば、球状で比較的に均一な粒度分布を持つように粉末を製造できるだけでなく、粒子の大きさごとに製造することが容易であり、工程を単純化しながら費用を節減することができ、それによって量産性が向上される。具体的に、溶融スプレイ法を適用して前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造する方法に対する詳細な説明は後述する。
【0022】
後述される前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造する方法は、溶媒を使わずに球形の粒子で粉末を製造する方法であって、溶媒に熱可塑性エラストマー樹脂を溶かして形成される球形の粒子粉末は、その平均粒径が非常に小さくて約50μm未満に形成されることに対し、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、平均粒径がμmないし300μmの粉末として形成され、このような大きさの球形粒子で形成された粉末を求める用途に有用に適用される。
【0023】
前記溶融スプレイ法によって製造され、比較的に均一な粒度分布を持ちながら微細な球形粒子からなる粉末として形成された前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、パウダースラッシュモールディング(PSM、powder
slush molding)工法に適用するに相応しく、パウダースラッシュモールディング工法で成形して成形体を形成することができる。
熱可塑性エラストマー樹脂は、低温で優れた柔軟性を持つので、低温加工性が良好であり、また耐熱性、耐熱老化特性が優秀である。
【0024】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、粒度が均一で球状を有するので、粉体の流れ性が優秀であり、パウダースラッシュモールディング工法を適用して優れた成形特性を有する成形体を製造することができる。粒度が比較的に均一で、球状を有すると、成形の際にピンホールの発生を抑制することができるため、より優れた表面特性を実現することができる。
【0025】
パウダースラッシュモールディング工法を利用する場合、金型デザインによって適用する樹脂粉末の平均大きさを調節することで、多様に表現することができるという長所がある。後述される熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法によって、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は球形で前述した範囲の平均大きさを有し、所定の平均粒径を有するように、比較的に容易に調節することができるため、パウダースラッシュモールディング工法による多様な表現が可能である。
【0026】
このように、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、微細な球形粒子で形成されることにつれ、パウダースラッシュモールディング工法への適用が可能となり、これによって成形された成形製品は、そのデザインを自由に設計することができるという長所を持ち、またエンボがよく伝写されるという長所を持つ。よって、パウダースラッシュモールディング工法によって熱可塑性エラストマー樹脂粉末から形成された自動車内装材のような成形品を実現するのに相応しい。また、このように製造された自動車内装材は、優れた表面特性及びデザインを実現することで、より高級な品質を有する製品として製造されることができる。
【0027】
例えば、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末を利用してパウダースラッシュモールディング工法によって自動車内装材、具体的にダッシュボードまたはドアトリムの表面層を形成することができ、前記表面層は優れた表面特性を有する。
【0028】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、平均粒径が約μmないし約300μmであり、粒子の大きさが比較的に均一な分布を有し、具体的に、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末内の粒子の直径が約1ないし約500μmに存在するように分布してもよい。
前記球形粒子の大きさが前記範囲内に存在することで、前記範囲の平均粒径に対比したとき、粒子が比較的に狭い粒度分布を有するようになって、粉体の流れ性をよく実現することができる。
【0029】
前記熱可塑性エラストマー樹脂は、約10,000ないし約20,000の重量平均分子量を有することができる。前記範囲の重量平均分子量を有する熱可塑性エラストマー樹脂は、耐熱性、耐熱老化特性が優秀で、特に、低温柔軟性による加工性、及びエンボ成形の際によく伝写されて、自動車内装材の高級化実現の用途に相応しい。
【0030】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、球形の微細な大きさで形成された粉末であるため、粉体の流れ性が優秀であり、安息角(安定角度)をさらに小さくすることで粉体の流動特性を実現することができ、これより成形された製品の見掛比重をより高めることができる。また、このような熱可塑性エラストマー樹脂粉末から製造された成形品は、エンボ成形の際によく伝写され、製品としての表面品質が向上される。
【0031】
例えば、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、略40度以下の安息角を有することができる。具体的に、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末は、比較的に均一な粒度分布を有することで約30ないし約38度の安息角を有するようにして優れた流動性を表したり、約25ないし約30度の安息角を有するようにして非常に優れた流動性を表すことができる。
優れた流動性を有する前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末から製造された成形体の見掛密度は、例えば、0.35以上であってもよい。
【0032】
本発明の他の実現例によれば、
溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を形成する段階;及び
前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を溶融スプレイ法によって噴射すると同時に、冷却させて球形粒子状の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を得る段階を含む、熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法を提供する。
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法により、前述した熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造することができる。
【0033】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法は、工程遂行の容易性、費用的側面で比較的に容易に均一な粒度分布を持ち、前述した直径約1μmないし約500μmの微細な大きさを有する球形粒子からなる熱可塑性エラストマー樹脂粉末が得られる方法である。
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法によって前記粒径大きさの範囲の平均粒径を有するように、熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造することができる。平均粒径が約μmないし約300μmの場合で製造すれば、溶媒に熱可塑性エラストマー樹脂を溶かして得られる球形粒子の粉末では得られない大きいサイズの球形粒子として粉末を形成するという点で意義がある。
【0034】
前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法において、先ず、熱可塑性エラストマー樹脂を噴射ノズルを備えた圧出機に投入した後、前記噴射ノズルに移動させ、前記噴射ノズルで加温することで前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を形成する。
【0035】
前記圧出機に投入する熱可塑性エラストマー樹脂は、ペレット状または粉末状で投入されてもよい。このように、ペレット状または破砕された形状の粒子粉末の1次加工された原料として熱可塑性エラストマー樹脂を噴射ノズルを備えた圧出機(extruder)に投入してもよい。これにより、高温の噴射ノズルでペレットまたは粉末形態の熱可塑性エラストマー樹脂が溶融され、溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液として形成されてもよい。この溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液を高温のマイクロ大きさの液滴形態で噴射させ、この際、前記噴射は冷却チャンバー内で行われるので、噴射と同時に前記液滴が冷却されて熱可塑性エラストマー樹脂のマイクロ大きさの球形粒子を形成することができる。
【0036】
前記溶融スプレイ法は、選択的に、前記噴射ノズルに電圧を印加して溶融電気スプレイ法(melt ESD、melt
Electrostatic Spray Deposition)で行ってもよい。
前記噴射ノズルに空気を一緒に注入することにより、前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液が吐出されるようになる。前記溶融スプレイ法を行う際に、噴射ノズルに高温高圧の空気を一緒に注入することで、より均一な熱可塑性エラストマー樹脂粒子を得られる。
【0037】
また、前記噴射ノズルに注入される空気の温度と圧力及び速度を調節して吐出される溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の液滴の大きさ及び形状を調節することができ、それによって最終的に形成しようとする熱可塑性エラストマー樹脂の粒子の大きさを調節することができる。
【0038】
例えば、前記噴射ノズルに注入される空気の温度は、約150ないし約500℃であってもよく、注入される空気の圧力は約20ないし約145psi(約1.5ないし約10.0bar)であってもよい。例えば、約2barの圧力で空気を注入することにより、前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法によって平均粒径約60μmの熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造することができる。他の例として、約6barの圧力で空気を注入して前記熱可塑性エラストマー樹脂粉末の製造方法によって、平均粒径約10μmの熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造することができる。一定水準の高温の空気は、圧力と粒子の大きさが反比例する傾向がある。
【0039】
また、例えば、前記噴射ノズルに注入される空気の注入速度は、約10ないし約70m/sであってもよい。
前記溶融スプレイ法において、熱可塑性エラストマー樹脂をマイクロ大きさの液滴で噴射させるために、前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の粘度を調節することができる。
【0040】
前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の粘度を調節するために、噴射ノズルの温度を調節したり、前記圧出機に熱可塑性エラストマー樹脂と共に滑剤や可塑剤などのような添加剤を共ににコンパウンディングされるように添加したり、前記圧出機に投入されるペレット形態の熱可塑性エラストマー樹脂にCOのようなガスを注入する方法などがある。
前記滑剤は、球形粒子の形成及び粒子の大きさを調節するのに役に立つ作用をする添加剤として、例えば、モンタンワックスなどを使用してもよい。
【0041】
前記添加剤は、約0.05ないし約5wt%で溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液に含まれてもよい。前記範囲の含量で添加剤を使って平均粒径が約50μmないし約300μmの熱可塑性エラストマー樹脂の球形粒子を含む熱可塑性エラストマー樹脂粉末を容易に製造することができる。
【0042】
このような添加剤は、前述した噴射ノズルに注入する空気の工程条件と共に調節して製造される熱可塑性エラストマー樹脂粉末の粒子の大きさ及び形状を調節することができる。例えば、噴射ノズルに注入する空気の圧力を2barで固定し、添加剤を使わない場合、平均粒径約60μmの熱可塑性エラストマー樹脂粉末が製造され、噴射ノズルに注入する空気の圧力を2barで固定し、添加剤としてモンタンワックスを使って溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液が0.4wt%のモンタンワックスを含ませる場合、平均粒径約100μmの熱可塑性エラストマー樹脂粉末が製造される。
【0043】
当然、他の工程条件を調節することで生成される粒子の大きさに影響を与えることができる。
具体的に、前記噴射ノズルの形状を調節することができ、例えば、点の形態のノズルだけでなく、環形(annulus)形態を持つノズルを使うことができるし、ノズルの面積は、例えば略2.3e-6〜1.5e-4の水準で使っていて、これに限定されない。
【0044】
具体的に、前記溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の粘度は、約250℃で約1000ないし約10000cpであってもよい。前記範囲の粘度として塗布液を形成してマイクロ粒子状の熱可塑性エラストマー樹脂を形成することができる。
前記溶融スプレイ法の工程条件は特に制限されず、公知された工程条件、例えば、前記噴射ノズルの圧力を約100psiないし約1500psiにして行うことができる。
【0045】
ただし、前記溶融スプレイ法は、熱可塑性エラストマー樹脂が溶融される温度の範囲で行われなければならない。例えば、前記噴射ノズルの温度が約150ないし約500℃であってもよい。
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。下記の実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0046】
(実施例)
実施例1
ペレット形態である熱可塑性エラストマー樹脂を利用して溶融電気スプレイ法で平均60μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。溶融電気スプレイ法を行う際、噴射ノズルに250℃の空気を2.0barの圧力で13.5 m/sの速度で注入し、噴射ノズルの温度が250℃、噴射ノズルの圧力が400psiで、噴射ノズルは直径が0.5mm、面積4.5e-5である環形(annulus)タイプを使ったし、溶融熱可塑性エラストマー樹脂噴射液の粘度が250℃で2000cpであった。熱可塑性エラストマー樹脂の吐出量は、約0.5kg/hrに固定した。
【0047】
実施例2
注入される空気の圧力を3.0barにした点を除き、他の工程条件は実施例1と同様にすることで、溶融電気スプレイ法で平均25μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0048】
実施例3
注入される空気の圧力を4.0barにした点を除き、他の工程条件は実施例1と同様にすることで、溶融電気スプレイ法で平均15μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0049】
実施例4
注入される空気の圧力を5.0barにした点を除き、他の工程条件は実施例1と同様にすることで、溶融電気スプレイ法で平均10μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0050】
実施例5
注入される空気の圧力を6.0barにした点を除き、他の工程条件は実施例1と同様にすることで、溶融電気スプレイ法で平均8μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0051】
実施例6
溶融スプレイ法を行う際に、ペレット形態の熱可塑性エラストマー樹脂と共に、モンタンワックスを0.2wt%含量で添加した点を除き、実施例1と同じ方法で平均70μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0052】
実施例7
溶融スプレイ法を行う際に、ペレット形態の熱可塑性エラストマー樹脂と共に、モンタンワックスを0.4wt%含量で添加した点を除き、実施例1と同様の方法で平均90μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0053】
実施例8
溶融スプレイ法を行う際に、ペレット形態の熱可塑性エラストマー樹脂と共に、モンタンワックスを0.6wt%含量で添加した点を除き、実施例1と同様の方法で平均100μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0054】
実施例9
溶融電気スプレイ法を行う際に、ペレット形態の熱可塑性エラストマー樹脂と共に、モンタンワックスを0.8wt%含量で添加した点を除き、実施例1と同様の方法で平均70μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0055】
実施例10
注入される空気の圧力を4.0barにし、噴射ノズルは直径が1mm、面積1.4e-4である環形(annulus)タイプを使用し(ノズル面積約2倍)、熱可塑性エラストマー樹脂の吐出量は約2kg/hrに固定した。その他の工程条件は、実施例1と同様にして、溶融スプレイ法で平均200μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0056】
比較例1
実施例1と同じペレット形態の熱可塑性エラストマー樹脂を冷凍破砕(略−200℃)して、平均220μm大きさの粒子の熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造した。
【0057】
評価
実験例1
実施例1、2、4、5及び比較例1で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末に対してSEMイメージを比較した。
図1図2図3及び図4は、それぞれ実施例1、2、4及び5に対するSEMイメージで、図5は比較例1に対するSEMイメージである。図1ないし図3及び図5は100倍SEMで、図4は2000倍拡大イメージである。
【0058】
図1ないし図4では粒子が球形で形成されることを確認することができることに対し、図5では粒子が破砕されて形成された角ばった形状を有することを確認できる。
図6は実施例1-5で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造する際に注入された空気の圧力に対して、製造された熱可塑性エラストマー樹脂粉末の平均粒径をグラフで示した図面である。図6のグラフを構成する点が左側から順に実施例1、2、3、4及び5を示す。
【0059】
実験例2
図7及び図8は、実施例1及び7で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末に対してSEMイメージで、これを比較した。
図9は、実施例1、7ないし10で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末を製造する際に添加されたモンタンワックスの含量に対して、製造された熱可塑性エラストマー樹脂粉末の平均粒径をグラフで示した図面である。図9でグラフを構成する点が左側から順に実施例1、7、8、9及び10を示す。
図10は実施例10で製造した熱可塑性エラストマー樹脂粉末に対してSEMイメージを示した。
【0060】
以上、本発明の望ましい実施例に対して詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されないし、以下の請求範囲で定義する本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10