(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1油圧アクチュエータと、前記第1油圧アクチュエータから排出された戻り油により駆動する回生用油圧モータと、前記回生用油圧モータと機械的に連結された第1油圧ポンプと、前記第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータの少なくとも一方を駆動する圧油を吐出する第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプが吐出した圧油を前記第2油圧ポンプが吐出した圧油に合流させる合流管路と、前記合流管路を流通する前記第1油圧ポンプからの圧油の流量を調整可能とする第1調整器と、前記第2油圧ポンプの吐出流量を調整可能とする第2調整器と、前記第1調整器と前記第2調整器とに制御指令を出力する制御装置とを備えた作業機械の圧油エネルギ回生装置において、
前記制御装置は、前記第1油圧ポンプが吐出した圧油の合流がなく前記第2油圧ポンプのみで、前記第1油圧アクチュエータ及び前記第2油圧アクチュエータの少なくとも一方を駆動する場合の非合流時ポンプ流量を算出し、前記合流管路を流通する前記第1油圧ポンプからの圧油の流量が前記非合流時ポンプ流量より小さくなるように、前記第1調整器へ出力する制御指令を演算する第1演算部と、
前記非合流時ポンプ流量から前記合流管路を流通する前記第1油圧ポンプからの圧油の流量を減算して目標ポンプ流量を算出し、前記目標ポンプ流量になるように、前記第2調整器へ出力する制御指令を演算する第2演算部とを備えた
ことを特徴とする作業機械の圧油エネルギ回生装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態を備えた油圧ショベルを示す斜視図、
図2は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態を示す駆動制御システムの概略図である。
図1において、油圧ショベル1は、ブーム1a、アーム1b及びバケット1cを有する多関節型の作業装置1Aと、上部旋回体1d及び下部走行体1eを有する車体1Bとを備えている。ブーム1aは、上部旋回体1dに回動可能に支持されていて、第1油圧アクチュエータであるブームシリンダ(油圧シリンダ)3aにより駆動される。上部旋回体1dは下部走行体1e上に旋回可能に設けられている。
【0013】
アーム1bは、ブーム1aに回動可能に支持されていて、アームシリンダ(油圧シリンダ)3bにより駆動される。バケット1cは、アーム1bに回動可能に支持されていて、バケットシリンダ(油圧シリンダ)3cにより駆動される。下部走行体1eは、左右の走行モータ3d,3eにより駆動される。ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、及びバケットシリンダ3cの駆動は、上部旋回体1dの運転室(キャブ)内に設置され油圧信号を出力する操作装置4、24(
図2参照)によって制御されている。
【0014】
図2に示す駆動制御システムは、動力回生装置70と、操作装置4,24と、複数のスプール型方向切換弁からなる制御弁5と、チェック弁6と、切換弁7と、電磁切換弁8と、第3調整器としてのインバータ9Aと、チョッパ9Bと、蓄電装置9Cとを備えており、制御装置としてコントローラ100を備えている。
【0015】
油圧源装置としては、第2油圧ポンプとしての可変容量型の油圧ポンプ10とパイロット圧油を供給するパイロット油圧ポンプ11とタンク12とを備えている。油圧ポンプ10とパイロット油圧ポンプ11とは駆動軸で連結されたエンジン50によって駆動される。油圧ポンプ10は第2調整器としてのレギュレータ10Aを有していて、レギュレータ10Aは後述する電磁比例弁74を介して供給されるパイロット圧油により油圧ポンプ10の斜板傾転角を制御することで、油圧ポンプ10の吐出流量を調整する。
【0016】
油圧ポンプ10からの圧油をブームシリンダ3a〜走行モータ3dへ供給する油路30には、後述するチェック弁6を介して連結される合流管路としての補助油路31と各アクチュエータへ供給する圧油の方向と流量を制御する複数のスプール型方向切換弁からなる制御弁5と油圧ポンプ10の吐出圧を検出する圧力センサ40とが設けられている。制御弁5は、そのパイロット受圧部へのパイロット圧油の供給により、各方向切換弁のスプール位置を切り換えて、油圧ポンプ10からの圧油を各油圧アクチュエータに供給して、アーム1b等を駆動している。圧力センサ40は検出した油圧ポンプ10の吐出圧を後述するコントローラ100に出力する。
【0017】
制御弁5の各方向切換弁のスプール位置は、操作装置4,24の操作レバー等の操作によって切り換えされる。操作装置4,24は、操作レバー等の操作により、パイロット油ポンプ11から図示しないパイロット一次側油路を介して供給されるパイロット一次圧油を、パイロット二次側油路を通して制御弁5のパイロット受圧部に供給している。ここで、操作装置4は第1油圧アクチュエータであるブームシリンダ3aを操作するものであり、操作装置24は第2油圧アクチュエータであるブームシリンダ3a以外の油圧アクチュエータを操作するものを1つにまとめた形で示している。
【0018】
操作装置4は、内部にパイロット弁4Aが設けられていて、制御弁5のブームシリンダ3aの駆動を制御するスプール型方向切換弁の受圧部にパイロット配管を介して接続されている。パイロット弁4Aは、操作装置4の操作レバーの傾倒方向と操作量に応じて制御弁5のパイロット受圧部に油圧信号を出力する。ブームシリンダ3aの駆動を制御するスプール型方向切換弁は、操作装置から入力される油圧信号に応じて位置を切り換えられ、油圧ポンプ10から吐出される圧油の流れをその切換位置に応じて制御することでブームシリンダ3aの駆動を制御する。ここで、ブーム1aが上げ方向に動作するようにブームシリンダ3aを駆動するための油圧信号(ブーム上げ操作信号Pu)が通過するパイロット配管には操作量検出器としての圧力センサ75が取り付けられている。圧力センサ75は検出したブーム上げ操作信号Puを後述するコントローラ100に出力する。さらに、ブーム1aが下げ方向に動作するようにブームシリンダ3aを駆動するための油圧信号(ブーム下げ操作信号Pd)が通過するパイロット配管には操作量検出器としての圧力センサ41が取り付けられている。圧力センサ41は検出したブーム下げ操作信号Pdを後述するコントローラ100に出力する。
【0019】
操作装置24は、内部にパイロット弁24Aが設けられていて、制御弁5のブームシリンダ3a以外の油圧アクチュエータの駆動を制御するスプール型方向切換弁の受圧部にパイロット配管を介して接続されている。パイロット弁24Aは、操作装置24の操作レバーの傾倒方向と操作量に応じて制御弁5のパイロット受圧部に油圧信号を出力する。該当する油圧アクチュエータの駆動を制御するスプール型方向切換弁は、操作装置から入力される油圧信号に応じて位置を切り換えられ、油圧ポンプ10から吐出される圧油の流れをその切換位置に応じて制御することで該当する油圧アクチュエータの駆動を制御する。
【0020】
操作装置24のパイロット弁24Aと制御弁5の受圧部とを接続する2系統のパイロット配管には、それぞれのパイロット圧力を検出する圧力センサ42、43が設けられている。圧力センサ42,43は検出した操作装置24の操作量信号を後述するコントローラ100に出力する。
【0021】
操作装置4のパイロット弁4Aと制御弁5の受圧部とを接続する2系統のパイロット配管のそれぞれから分岐した油路には、これらのラインのうちの高値の圧油を選択する第1高圧選択弁71の入力ポートが接続されている。また、操作装置24のパイロット弁24Aと制御弁5の受圧部とを接続する2系統のパイロット配管のそれぞれから分岐した油路には、これらのラインのうちの高値の圧油を選択する第2高圧選択弁73の入力ポートが接続されている。第1高圧選択弁71の出力ポートと第2高圧選択弁73の出力ポートとは、これらの出力のうちの高値の圧油を選択する第3高圧選択弁72の入力ポートが接続されている。第3高圧選択弁72の出力ポートは、電磁比例弁74の入力ポートに接続されている。
【0022】
電磁比例弁74の入力ポートには、第3高圧選択弁72から出力される圧油が入力されている。一方、電磁比例弁74の操作部には、コントローラ100から出力される指令信号が入力されている。電磁比例弁74は、入力される最も高いパイロット圧を、この指令信号に応じて調整減圧してレギュレータ10Aへ供給する。
【0023】
つまり、第1高圧選択弁71、第2高圧選択弁73、及び第3高圧選択弁72により、パイロット弁24Aとパイロット弁4Aから出力される最も高いパイロット圧が選択されて、電磁比例弁74に入力される。電磁比例弁74は、入力されたパイロット圧をコントローラ100からの指令信号に応じて所望の圧力に減圧し、油圧ポンプ10のレギュレータ10Aへ出力する。レギュレータ10Aは、入力された圧力に比例した押しのけ容積になるように、油圧ポンプ10の斜板傾転角を制御する。
【0024】
換言すると、第2調整器であるレギュレータ10Aは、ポンプ制御信号部とポンプ制御信号補正部とを備えていて、ポンプ制御信号部で生成したパイロット圧(ポンプ制御信号)をポンプ制御信号補正部で調整してレギュレータ10Aへ供給する。ポンプ制御信号部は、油圧ポンプ10の容量を制御するためのパイロット圧を生成する操作装置4のパイロット弁4Aと、操作装置24のパイロット弁24Aと、第1高圧選択弁71と、第2高圧選択弁73と、第3高圧選択弁72とを備えている。ポンプ制御信号補正部は、コントローラ100からの指令信号に応じて入力されたパイロット圧を減圧する電磁比例弁74を備えている。
【0025】
次に、回生装置である動力回生装置70について説明する。動力回生装置70は、ボトム側油路32と、回生回路33と、切換弁7と、電磁切換弁8と、インバータ9Aと、チョッパ9Bと、蓄電装置9cと、回生用油圧モータとしての油圧モータ13と、電動機14と、補助油圧ポンプ15と、コントローラ100とを備えている。
【0026】
ボトム側油路32は、ブームシリンダ3aの縮短時にタンク12に戻る油(戻り油)が流通する油路であり、一端側がブームシリンダ3aのボトム側油室3a1に接続されていて他端側が制御弁5の接続ポートに接続されている。ボトム側油路32には、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力を検出する圧力センサ44と、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油を制御弁5を介してタンク12に排出するか否かを切替える切換弁7が設けられている。圧力センサ44は検出したボトム側油室3a1の圧力を後述するコントローラ100に出力する。
【0027】
切換弁7は、一端側にばね7bを、他端側にパイロット受圧部7aを有し、そのパイロット受圧部7aへのパイロット圧油の供給の有無により、スプール位置を切り換えて、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1から制御弁5へ流入する戻り油の連通/遮断を制御している。パイロット受圧部7aには、パイロット油圧ポンプ11から後述する電磁切換弁8を介してパイロット圧油が供給される。
【0028】
電磁切換弁8の入力ポートには、パイロット油圧ポンプ11から出力される圧油が入力されている。一方、電磁切換弁8の操作部には、コントローラ100から出力される指令信号が入力されている。この指令信号に応じて、パイロット油圧ポンプ11から供給されたパイロット圧油の切換弁7のパイロット操作部7aへの供給/遮断を制御する。
【0029】
回生回路33は、その一端をボトム側油路32の切換弁7とブームシリンダ3aのボトム側油室3a1との間に接続し、その他端を油圧モータ13の入口に接続している。このことにより、当該油圧モータ13を介してボトム側油室3a1からの戻り油をタンク12に導いている。
【0030】
回生用油圧モータとしての油圧モータ13は、補助油圧ポンプ15と機械的に連結されている。油圧モータ13の駆動力によって補助油圧ポンプ15は回転する。
【0031】
第1油圧ポンプとしての補助油圧ポンプ15の吐出口には、補助油路31の一端側が接続されていて、他端側は油路30に接続されている。補助油路31には、補助油圧ポンプ15から油路30への圧油の流入を許容し、油路30から補助油圧ポンプ15側への圧油の流入を禁止するチェック弁6が設けられている。
【0032】
補助油圧ポンプ15は第1調整器としてのレギュレータ15Aを有していて、レギュレータ15Aは後述するコントローラ100からの指令により補助油圧ポンプ15の斜板傾転角を制御することで、補助油圧ポンプ15の吐出流量を調整する。
【0033】
油圧モータ13は、さらに電動機14と機械的に連結されていて、油圧モータ13の駆動力により発電を行う。電動機14には、回転数を制御するためのインバータ9A、昇圧するためのチョッパ9B、発電した電気エネルギを蓄えるための蓄電装置9Cが電気的に接続されている。
【0034】
コントローラ100は、圧力センサ75が検出した操作装置4のパイロット弁4Aの上げ側パイロット圧信号Puと、圧力センサ41が検出した操作装置4のパイロット弁4Aの下げ側パイロット圧信号Pdと、圧力センサ42、43が検出した操作装置24のパイロット弁24Aのパイロット圧信号と、圧力センサ44が検出したブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力信号とを入力し、これらの入力値に応じた演算を行い、電磁切換弁8、インバータ9A、電磁比例弁74、及び補助油圧ポンプ用レギュレータ15Aへ制御指令を出力する。
【0035】
電磁切換弁8はコントローラ100からの指令信号により切り換えられ、切換弁7にパイロット油ポンプ11からの圧油を送る。インバータ9Aはコントローラ100からの信号により所望の回転数に制御され、電磁比例弁74はコントローラ100の指令信号に応じた圧力を出力し油圧ポンプ10の容量を制御する。補助油圧ポンプ15はコントローラ100からの信号により所望の容量に制御される。
【0036】
次に、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態の動作の概要を説明する。
まず、
図2に示す操作装置4の操作レバーをブーム下げ方向に操作すると、パイロット弁4Aからパイロット圧Pdが制御弁5のパイロット受圧部に伝えられ、制御弁5のブームシリンダ3aの駆動を制御するスプール型方向切換弁が切換操作される。これにより、油圧ポンプ10からの圧油が制御弁5を介してブームシリンダ3aのロッド側油室3a2に流入する。この結果、ブームシリンダ3aのピストンロッドは縮小動作する。これに伴い、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1から排出される戻り油は、ボトム側油路32と連通状態の切換弁7と制御弁5とを通ってタンク12に導かれる。
【0037】
このとき、コントローラ100には、圧力センサ40が検出した油圧ポンプ10の吐出圧信号と、圧力センサ44が検出したブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力信号と、圧力センサ75が検出したパイロット弁4Aの上げ側パイロット圧信号Puと、圧力センサ41が検出したパイロット弁4Aの下げ側パイロット圧信号Pdとが入力されている。
【0038】
このような状態において、オペレータが操作装置4の操作レバーをブーム下げ方向に、規定値以上に操作すると、コントローラ100は、電磁切換弁8へ切換指令を、インバータ9Aへ回転数指令を、補助油圧ポンプ15のレギュレータ15Aへ容量指令を、電磁比例弁74へ制御指令をそれぞれ出力する。
【0039】
この結果、切換弁7が遮断位置に切換り、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油は、制御弁5への油路が遮断されるため、回生回路33に流れ、油圧モータ13を駆動してその後タンク12に排出される。
【0040】
油圧モータ13の駆動力により補助油圧ポンプ15は回転する。補助油圧ポンプ15の吐出した圧油は、補助油路31とチェック弁6とを介して油圧ポンプ10の吐出した圧油と合流する。コントローラ100は、油圧ポンプ10の動力をアシストするように補助油圧ポンプ15のレギュレータ15Aへ容量指令を出力する。コントローラ100は、補助油圧ポンプ15から供給された圧油の流量分、油圧ポンプ10の容量を低減するように電磁比例弁74へ制御指令を出力する。
【0041】
油圧モータ13に入力された油圧エネルギの内、補助油圧ポンプ15で消費しきれなかった余剰エネルギは、電動機14を駆動し発電することで費やされる。電動機14の発電した電気エネルギは蓄電装置9Cに蓄えられる。
【0042】
本実施の形態においては、ブームシリンダ3aから排出された圧油のエネルギは、油圧モータ13によって回収し、補助油圧ポンプ15の駆動力として油圧ポンプ10の動力をアシストする。また、余分な動力は、電動機14を介して蓄電装置9Cに蓄える。このことにより、エネルギの有効用と燃費の低減とを図っている。
【0043】
次に、コントローラ100の制御の概要について
図3乃至
図5を用いて説明する。
図3は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態を構成するコントローラのブロック図、
図4は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態を構成するコントローラの第2関数発生器の内容を説明する特性図、
図5は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態を構成するコントローラの油圧ポンプ流量演算の内容を説明するブロック図である。
図3乃至
図5において、
図1及び
図2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図3に示すコントローラ100は、第1関数発生器101と、第2関数発生器102と、第1減算演算器103と、第1乗算演算器104と、第2乗算演算器105と、第1出力変換部106と、第2出力変換部107と、最小値選択演算部108と、第1除算演算器109と、第2除算演算器110と、第3出力変換部111と、第2減算演算器112と、第4出力変換部113と、最少流量信号指令部114と、要求ポンプ流量信号部120とを備えている。
【0045】
第1関数発生器101は、
図3に示すように、圧力センサ41で検出した操作装置4のパイロット弁4Aの下げ側パイロット圧Pdをレバー操作信号141として入力する。第1関数発生器101には、レバー操作信号141に対する切換開始点が予めテーブルに記憶されている。
【0046】
第1関数発生器101は、レバー操作信号141が切換開始点以下の場合にはOFF信号を、切換開始点超過の場合にはON信号を、第1出力変換部106に出力する。第1出力変換部106は、入力信号を電磁切換弁8の制御信号に変換し、電磁弁指令208として電磁切換弁8に出力する。このことにより、電磁切換弁8が動作し、切換弁7が切換えられ、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の油は、回生回路33側に流入する。
【0047】
第2関数発生器102は、下げ側パイロット圧Pdをレバー操作信号141として一の入力端に入力し、圧力センサ44で検出したブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力を圧力信号144として他の入力端に入力する。これらの入力信号を基にブームシリンダ3aの目標ボトム流量を算出する。
【0048】
第2関数発生器102の演算の詳細を
図4を用いて説明する。
図4は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態を構成するコントローラの第2関数発生器の内容を説明する特性図である。
図4において、横軸はレバー操作信号141の操作量を示し、縦軸は目標ボトム流量(ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1から流出する戻り油の目標流量)を示している。
図4において、実線の基本特性線aは、従来の制御弁5による戻り油制御と同等の特性を得るために設定されている。上側の破線で示す特性線bと下側の破線で示す特性線cは、ボトム側油室3a1の圧力信号144によって特性線aを補正した場合を示している。
【0049】
具体的には、ボトム側油室3a1の圧力信号144が増加すると、基本特性線aの傾きが増加して特性線bの方向に補正されて、連続的に特性が変化する。逆に、圧力信号144が減少すると、基本特性線aの傾きが減少して特性線cの方向に補正されて、連続的に特性が変化する。このように、第2関数発生器は、レバー操作信号141に応じて基本となる目標ボトム流量を算出し、ボトム側油室3a1の圧力信号144の変化に応じて基本となる目標ボトム流量を補正して、最終目標ボトム流量を算出している。
【0050】
図3に戻り、第2関数発生器102は、最終目標ボトム流量信号102Aを第2出力変換部107と第1乗算演算器104とへ出力する。第2出力変換部107は、入力された最終目標ボトム流量信号102Aを目標電動機回転数に変換し回転数指令信号209Aとしてインバータ9Aに出力する。このことにより、油圧モータ13の押しのけ容量に該当する電動機14の回転数が制御される。また、回転数指令信号209Aは、第2除算演算器110へ入力される。
【0051】
第1減算演算器103は、後述する要求ポンプ流量信号部120で算出した要求ポンプ演算信号120Aと最少流量信号指令部114からの最少流量信号とを入力し、その偏差を要求ポンプ流量信号103Aとして算出し、第2乗算演算器105と第2減算演算器112とへ出力する。ここで、要求ポンプ演算信号120Aの算出方法について
図5を用いて説明する。
【0052】
要求ポンプ流量信号部120は、
図5に示すように、第1関数発生器145と、第2関数発生器146と、第3関数発生器147と、第4関数発生器148と、第1加算演算器149と、第2加算演算器150と、第3加算演算器151と、第5関数発生器とを備えている。
【0053】
第1関数発生器145は、
図5に示すように、圧力センサ41で検出した操作装置4のパイロット弁4Aの下げ側パイロット圧Pdをレバー操作信号141として入力する。第1関数発生器145には、レバー操作信号141に対する要求ポンプ流量が予めテーブルに記憶されている。同様に、第2関数発生器146は、圧力センサ75で検出した操作装置4のパイロット弁4Aの上げ側パイロット圧Puをレバー操作信号175として入力する。第2関数発生器146には、レバー操作信号141に対する要求ポンプ流量が予めテーブルに記憶されている。
【0054】
第1関数発生器145の出力と第2関数発生器146の出力は、第1加算演算器149へ入力され、第1加算演算器149は、これらの加算値を操作装置4による要求ポンプ流量として第3加算演算器151へ出力する。
【0055】
第3関数発生器147は、
図5に示すように、圧力センサ42で検出した操作装置24のパイロット弁24Aの一方側パイロット圧をレバー操作信号142として入力する。第3関数発生器147には、レバー操作信号142に対する要求ポンプ流量が予めテーブルに記憶されている。同様に、第4関数発生器148は、圧力センサ43で検出した操作装置24のパイロット弁24Aの他方側パイロット圧をレバー操作信号143として入力する。第4関数発生器148には、レバー操作信号143に対する要求ポンプ流量が予めテーブルに記憶されている。
【0056】
第3関数発生器147の出力と第4関数発生器148の出力は、第2加算演算器150へ入力され、第2加算演算器150は、これらの加算値を操作装置24による要求ポンプ流量として第3加算演算器151へ出力する。
【0057】
第3加算演算器151は、操作装置4と操作装置24による複合操作を行った場合に必要な油圧ポンプ流量を算出し、第5関数発生器152へ出力する。第5関数発生器152は、第3加算演算器151からの要求ポンプ流量を入力し、上限を制限した値を要求ポンプ演算信号120Aとして出力する。これは、油圧ポンプ10が吐出できる流量には上限があるためであり、第5関数発生器152の上限値は、油圧ポンプ10の最大容量から決定される値である。
【0058】
換言すると、算出された要求ポンプ演算信号120Aは、補助油圧ポンプ15が吐出した圧油の合流がなく油圧ポンプ10のみで、第1油圧アクチュエータであるブームシリンダ3aと第2油圧アクチュエータであるブームシリンダ3a以外の油圧アクチュエータの少なくとも一方を駆動する場合の非合流時ポンプ流量である要求ポンプ流量である。
【0059】
以上に示す要求ポンプ流量信号部120の制御ロジックによって、各操作装置のレバー操作信号に応じた流量が過不足なく算出され、複合操作時には必要なだけの流量が計算されると共に、油圧ポンプ10が吐出可能な流量の上限を超えない範囲で要求ポンプ演算信号120Aが算出される。
【0060】
図3に戻り、第1乗算演算器104は、第2関数発生器102からの最終目標ボトム流量信号102Aとボトム側油室3a1の圧力信号144とを入力し、その乗算値を回収動力信号104Aとして算出し、最小値選択演算部108へ出力する。
【0061】
第2乗算演算器105は、圧力センサ40が検出した油圧ポンプ10の吐出圧を圧力信号140として一の入力端に入力し、第1減算演算器103が算出した要求ポンプ流量信号103Aを他の入力端に入力し、その乗算値を要求ポンプ動力信号105Aとして算出し、最小値選択演算部108へ出力する。
【0062】
最小値選択演算部108は、第1乗算演算器104からの回収動力信号104Aと、第2乗算演算器105からの要求ポンプ動力信号105Aとを入力し、いずれか小さい方を補助油圧ポンプ15の目標アシスト動力信号108Aとして選択算出し、第1除算演算器109へ出力する。
【0063】
ここで、機器の効率を考えた場合、回収した動力を電動機14によって電気エネルギに変換し蓄電装置9Cに蓄え再利用するよりも、なるべく補助油圧ポンプ15で用いた方が損失を少なくできるので効率が良い。このため、最小値選択演算部108で回収動力信号104Aと要求ポンプ動力信号105Aとのいずれか小さい方を選択することにより、要求ポンプ動力信号105Aを超えない範囲で、回収動力を最大限補助油圧ポンプ15に供給することが可能になる。
【0064】
第1除算演算器109は、最小値選択演算部108からの目標アシスト動力信号108Aと油圧ポンプ10の吐出圧の圧力信号140とを入力し、目標アシスト動力信号108Aを圧力信号140で除算した値を目標アシスト流量信号109Aとして算出し、第2除算演算器110と第2減算演算器112とへ出力する。
【0065】
第2除算演算器110は、第1除算演算器109からの目標アシスト流量信号109Aと第2出力変換部107からの回転数指令信号209Aとを入力し、目標アシスト流量信号109Aを回転数指令信号209Aで除算した値を補助油圧ポンプ15の目標容量信号110Aとして算出し、第3出力変換部111へ出力する。
【0066】
第3出力変換部111は、入力された目標容量信号110Aを例えば傾転角に変換し容量指令信号215Aとしてレギュレータ15Aに出力する。このことにより、補助油圧ポンプ15の容量が制御される。
【0067】
第2減算演算器112は、第1減算演算器103からの要求ポンプ流量信号103Aと、第1除算演算器109からの目標アシスト流量信号109Aと、最少流量信号指令部114からの最少流量信号とを入力する。第2減算演算器112は、要求ポンプ流量信号103Aと最少流量信号とを加算して要求ポンプ流量信号部120の要求ポンプ演算信号120Aを算出し、この要求ポンプ演算信号120Aと目標アシスト流量信号109Aとの偏差を目標ポンプ流量信号112Aとして算出し、第4出力変換部113へ出力する。
【0068】
第4出力変換部113は、入力された目標ポンプ流量信号112Aを例えば油圧ポンプ10の容量に変換し、容量に応じた制御圧となるような制御圧指令信号210Aを電磁比例弁74に出力する。電磁比例弁74は、コントローラ100からの指令に応じた制御圧となるように、第3高圧選択弁72から出力された圧力を減圧してレギュレータ10Aに出力する。レギュレータ10Aは、入力された圧力に応じて油圧ポンプ10の容量を制御する。
【0069】
ここで、第2関数発生器102と、第1減算演算器103と、第1乗算演算器104と、第2乗算演算器105と、最小値選択演算部108と、第1除算演算器109と、第2除算演算器110と、要求ポンプ流量信号部120とは、合流管路を流通する補助油圧ポンプ15からの圧油の流量が、非合流時ポンプ流量である要求ポンプ流量信号120Aより小さくなるように、レギュレータ15Aへ出力する制御指令である目標容量信号110Aを演算する第1演算部を構成する。
【0070】
また、第1減算演算器103と、第2減算演算器112と、最小流量信号指令部114と、要求ポンプ流量信号部120とは、非合流時ポンプ流量である要求ポンプ流量信号120Aから合流管路を流通する補助油圧ポンプ15からの圧油の流量である目標アシスト流量信号109Aを減算して目標ポンプ流量112Aを算出し、この目標ポンプ流量112Aになるように、電磁比例弁74へ出力する制御指令である目標ポンプ流量信号112Aを演算する第2演算部を構成する。
【0071】
更に、第2関数発生器102と、第1減算演算器103と、第1乗算演算器104と、第2乗算演算器105と、最小値選択演算部108と、第1除算演算器109と、第2除算演算器110と、第2減算演算器112と、最小流量信号指令部114と、要求ポンプ流量信号部120とは、操作装置4の操作量を取り込み、この操作量に応じてブームシリンダ3aから排出された戻り油により油圧モータ13に入力される回収動力信号104Aを算出し、合流管路を流通する補助油圧ポンプ15からの圧油の流量を供給するのに必要な要求アシスト動力を算出し、回収動力信号104Aと要求アシスト動力を超えないように目標アシスト動力信号108Aを設定し、この目標アシスト動力信号108Aとなるようにレギュレータ15Aと電磁比例弁74へ出力する制御指令である目標容量信号110A,目標ポンプ流量信号112Aを演算する第3演算部を構成する。
【0072】
また、第1関数発生器101は、操作装置4の操作量を取り込み、この操作量に応じて切換弁7に出力する遮断指令を演算する第4演算部を構成する。
【0073】
次に、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態の制御ロジックによる動作を
図2、
図3及び
図5を用いて説明する。
操作装置4の操作レバーをブーム下げ方向に操作すると、パイロット弁4Aからパイロット圧Pdが生成され、圧力センサ41により検出され、コントローラ100にレバー操作信号141として入力される。このとき、油圧ポンプ10の吐出圧は圧力センサ40により検出され圧力信号140としてコントローラ100に入力される。また、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力は圧力センサ44により検出され圧力信号144としてコントローラ100に入力される。
【0074】
コントローラ100において、レバー操作信号141は、第1関数発生器101と第2関数発生器102とに入力される。第1関数発生器101は、レバー操作信号141が切換開始点超過の場合にON信号を出力し、第1出力変換部106を介して電磁切換弁8にON信号が出力される。これにより、パイロット油圧ポンプ11からの圧油は電磁切換弁8を介して切換弁7のパイロット受圧部7aに入力される。この結果、ボトム側油路32が遮断する方向(切換弁7の閉止側)に切換動作が行われ、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油は、制御弁5を介してタンク12へ流入する油路がブロックされ、油圧モータ13流入する回生回路33に流入する。
【0075】
さらに、レバー操作信号141とボトム側油室3a1の圧力信号144はコントローラ100において第2関数発生器102に入力され、第2関数発生器102は、レバー操作信号141とボトム側油室3a1の圧力信号144とに応じた最終目標ボトム流量信号102Aを算出する。最終目標ボトム流量信号102Aは、第2出力変換部107において目標電動機回転数に変換され、回転数指令信号209Aとしてインバータ9Aに出力される。
【0076】
このことにより、電動機14の回転数は所望の回転数に制御される。この結果、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1から排出される戻り油の流量が調整され、操作装置4のレバー操作に応じたスムーズなシリンダ動作が実現できる。
【0077】
一方、
図5に示すように、コントローラ100の要求ポンプ流量信号部120では、圧力センサ41,75,42,43によって検出されたレバー操作信号141,175,142,143から要求ポンプ演算信号120Aを算出し、要求ポンプ演算信号120Aは、
図3に示す最少流量信号指令部114からの最少流量信号とともに、第1減算演算器103に入力され、第1減算演算器103は要求ポンプ流量信号103Aを算出する。
【0078】
第2関数発生器102で算出された最終目標ボトム流量信号102Aとボトム側油室3a1の圧力信号144とは第1乗算演算器104に入力され、第1乗算演算器104は回収動力信号104Aを算出する。また、第1減算演算器103で算出された要求ポンプ流量信号103Aと油圧ポンプ10の圧力信号140とは第2乗算演算器105に入力され、第2乗算演算器105は要求ポンプ動力信号105Aを算出する。回収動力信号104Aと要求ポンプ動力信号105Aとは最小値選択演算部108に入力する。
【0079】
最小値選択演算部108は、2入力の内の小さい方を目標アシスト動力信号108Aとして出力する。これは、回収動力信号104Aに対して、要求ポンプ動力信号105Aを超えない範囲で優先的に補助油圧ポンプ15に用いることができる動力(エネルギ量)を算出するものである。このことにより、電気エネルギに変換する損失を最小限に抑え、効率の良い回生動作が行われる。
【0080】
最小値選択演算部108で算出された目標アシスト動力信号108Aと油圧ポンプ10の吐出圧の圧力信号140とは第1除算演算器109に入力され、第1除算演算器109は目標アシスト流量信号109Aを算出する。
【0081】
第1除算演算器109で算出された目標アシスト流量信号109Aと第2出力変換部107で算出された回転数指令信号209Aとは第2除算演算器110に入力され、第2除算演算器110は、目標容量信号110Aを算出する。目標容量信号110Aは、第3出力変換部111において例えば傾転角に変換され、容量指令信号215Aとしてレギュレータ15Aに出力される。
【0082】
このことにより、補助油圧ポンプ15は要求ポンプ動力信号105Aを超えない範囲で、なるべく多量の流量を油圧ポンプ10に供給する制御がなされる。この結果効率よく回収動力を利用できる。
【0083】
第1減算演算器103で算出された要求ポンプ流量信号103Aと第1除算演算器109で算出された目標アシスト流量信号109Aと最少流量信号指令部114からの最少流量信号とは第2減算演算器112に入力され、第2減算演算器112は、目標ポンプ流量信号112Aを算出する。目標ポンプ流量信号112Aは、第4出力変換部113において油圧ポンプ10の容量に変換され、油圧ポンプ10の容量に応じた制御圧指令信号210Aとして電磁比例弁74に出力される。電磁比例弁74で減圧された制御圧がレギュレータ10Aに出力される。
【0084】
このことにより、油圧ポンプ10は補助油圧ポンプ15から供給された流量分、容量を低減できるので、油圧ポンプ10の出力を低減できる。また、制御弁5に供給される圧油の流量は、補助油圧ポンプ15からの供給がない場合と、ある場合とで変わらないので、操作装置24の操作レバーに応じた良好な操作性が確保できる。
【0085】
上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態によれば、回生用の油圧モータ13に機械的に連結された油圧ポンプである補助油圧ポンプ15を回収したエネルギで直接駆動することができるので、エネルギを一旦蓄える際の損失が発生しない。この結果、エネルギ変換損失を減少できるので効率良くエネルギを利用することが可能になる。
【0086】
また、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第1の実施の形態によれば、補助油圧ポンプ15から供給された分だけ、油圧ポンプ10の容量を低減するように制御するので、制御弁5に供給される圧油の流量は変動しない。このことにより、良好な操作性が確保できる。
【実施例2】
【0087】
以下、本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図6は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態を示す駆動制御システムの概略図、
図7は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態を構成するコントローラのブロック図、
図8は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態を構成するコントローラの油圧ポンプ流量演算の内容を説明するブロック図である。
図6乃至
図8において、
図1乃至
図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0088】
図6乃至
図8に示す本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、エンジン50の回転軸の回転数を検出する回転数センサ76を設けた点が異なる。回転数センサ76が検出した回転数信号は、コントローラ100に入力され、制御ロジックの演算に用いられる。また、コントローラ100は、要求ポンプ流量信号部120に換えて推定ポンプ流量信号部153を設けた点が第1の実施の形態と異なる。
【0089】
第1の実施の形態においては、コントローラ100で各レバー操作信号に応じて要求ポンプ演算信号120Aを算出し、その要求ポンプ演算信号120Aとなるように、電磁比例弁74に指令信号を出力し、電磁比例弁74は、指令信号に応じて、レギュレータ10Aに供給する圧油の圧力を減圧調整するように構成されていた。
【0090】
本実施の形態においては、各レバー操作信号(パイロット圧力)によって決まる油圧ポンプ10の容量を推定し、補助油圧ポンプ15で流量をアシストするときだけ、電磁比例弁74で油圧ポンプ10の容量を低減するように制御する点が異なる。すなわち、補助油圧ポンプ15で流量をアシストしないときは、各レバー操作量に応じたパイロット圧が直接レギュレータ10Aに供給されるので、油圧的に油圧ポンプ10の流量が制御され、補助油圧ポンプ15で流量をアシストするときだけ、電磁比例弁74に制御指令が出力されて電気的に減圧されて、油圧ポンプ10の流量が制御される。この結果、油圧的に油圧ポンプ10の容量を制御する時間が生じるので、常時、電磁比例弁74で油圧ポンプ10の容量を制御する場合よりも、応答性を向上させることができる。
【0091】
図7に示すように、推定ポンプ流量信号部153は、後述する演算により推定ポンプ流量信号153Aを算出し、第1減算演算器103に出力する。つまり本実施の形態においては、推定ポンプ流量信号153Aが、非合流時ポンプ流量である推定ポンプ流量である。推定ポンプ流量信号部153における推定ポンプ流量信号153Aの算出方法について
図8を用いて説明する。
【0092】
推定ポンプ流量信号部153は、
図8に示すように、最大値選択器154と、関数発生器155と、乗算演算器156とを備えている。
【0093】
最大値選択器154は、
図8に示すように、圧力センサ41で検出した操作装置4のパイロット弁4Aの下げ側パイロット圧Pdをレバー操作信号141として、同じく圧力センサ75で検出した上げ側パイロット圧Puをレバー操作信号175としてそれぞれ入力する。また、圧力センサ42で検出した操作装置24のパイロット弁24Aの一方側パイロット圧をレバー操作信号142として、同じく圧力センサ43で検出した他方側パイロット圧をレバー操作信号143としてそれぞれ入力する。最大値選択器154は、入力信号のうちの最大値を選択算出し、関数発生器155へ出力する。これは、第1〜3高圧選択弁71,73,72の動作を模擬した演算である。
【0094】
関数発生器155には、レギュレータ10Aの特性が予めテーブルに記憶されている。すなわち、レギュレータ10Aに入力された圧油の圧力信号に対する油圧ポンプ10の容量の特性が記憶されている。このことにより、入力されたレバー操作信号の最大値から、油圧ポンプ10の容量を推定算出し、乗算演算記156へ出力する。
【0095】
乗算演算器156は、関数発生器155からの油圧ポンプ推定容量信号と回転数センサ76で検出した回転数信号176とを入力し、その乗算値を油圧ポンプ10の吐出する流量である推定ポンプ流量信号153Aとして算出し、出力する。
【0096】
図7に戻り、推定ポンプ流量信号部153が算出した推定ポンプ流量信号153Aは、目標アシスト流量信号109Aが0のとき、すなわち補助油圧ポンプ15からの流量アシストが無い場合は、そのままの値が目標ポンプ流量信号112Aとして出力される。コントローラ100は、推定したポンプ流量をそのまま出力するように電磁比例弁74へ指令信号を出力する。この結果、電磁比例弁74では入力されたパイロット圧に対して絞り制御を行わずに、入力された圧力信号をそのままレギュレータ10Aに出力することになる。このことにより、油圧ポンプ10は各操作レバーのパイロット弁の最大値に応じた容量に制御される。このように、油圧ポンプ10の容量が油圧的に制御されることにより、油圧ポンプ10の応答性を向上させることができる。
【0097】
一方、目標アシスト流量信号109Aが0以外のとき、すなわち補助油圧ポンプ15からの流量アシストが有る場合は、流量アシストの分を低減した流量相当の指令が電磁比例弁74に出力される。この結果、電磁比例弁74では入力されたパイロット圧力に対して絞り(減圧)制御を行い、レギュレータ10Aに出力し、油圧ポンプ10の容量を下げるように制御する。このことにより、油圧ポンプ10は補助油圧ポンプ15から供給された流量分、容量を低減できるので、油圧ポンプ10の出力を低減できる。また、制御弁5に供給される圧油の流量は、補助油圧ポンプ15からの供給が無い場合とある場合とで変わらないので、操作装置24の操作レバーに応じた良好な操作性が確保できる。
【0098】
上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第2の実施の形態によれば、各レバー操作信号(パイロット圧力)によって決まる油圧ポンプ10の容量を推定し、補助油圧ポンプ15で流量をアシストするときだけ、電磁比例弁74で油圧ポンプ10の容量を低減するように制御するので、油圧的に油圧ポンプ10の容量を制御する時間が生じ、制御の応答性が向上できる。
【実施例3】
【0100】
以下、本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。
図9は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第3の実施の形態を示す駆動制御システムの概略図、
図10は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第3の実施の形態を構成するコントローラの油圧ポンプ流量演算の内容を説明するブロック図である。
図9及び
図10において、
図1乃至
図8に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0101】
図9及び
図10に示す本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第3の実施の形態は、大略第2の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、第3高圧選択弁72の出力ポートと電磁比例弁74の入力ポートとを接続する配管に圧力センサ77を設けた点が異なる。圧力センサ77が検出した電磁比例弁74の入力圧力信号(ポンプ制御信号)は、コントローラ100に入力され、制御ロジックの演算に用いられる。また、コントローラ100の推定ポンプ流量信号部153において、ポンプ流量を推定するのにレバー操作信号を用いずに、電磁比例弁74の入力圧力信号(ポンプ制御信号)を用いた点が第2の実施の形態と異なる。
【0102】
図9に示す第2調整器であるレギュレータ10Aは、ポンプ制御信号部とポンプ制御信号補正部とを備えていて、ポンプ制御信号部で生成したパイロット圧(ポンプ制御信号)をポンプ制御信号補正部で調整してレギュレータ10Aへ供給する。ポンプ制御信号部は、第2油圧ポンプ10の容量を制御するためのパイロット圧を生成する操作装置4のパイロット弁4Aと、操作装置24のパイロット弁24Aと、第1高圧選択弁71と、第2高圧選択弁73と、第3高圧選択弁72とを備えている。ポンプ制御信号補正部は、コントローラ100からの指令信号に応じて入力されたパイロット圧を減圧する電磁比例弁74を備えている。
【0103】
本実施の形態においては、上述のポンプ制御信号から油圧ポンプ10の容量を推定算出し、回転数信号と演算することで非合流時ポンプ流量である推定ポンプ流量を算出している。
【0104】
図10に示す本実施の形態における推定ポンプ流量信号部153は、
図8に示す第2の実施の形態における推定ポンプ流量信号部153と以下の点が異なる。本実施の形態においては、関数発生器155の入力信号を、各圧力センサが検出した各レバー操作信号に換えて、圧力センサ77が検出した電磁比例弁74に入力される圧力信号177(ポンプ制御信号)としている。このことにより、最大値選択器154は省略している。関数発生器155には、レギュレータ10Aに入力された圧油の圧力信号に対する油圧ポンプ10の容量の特性が記憶されている。このことにより、入力されたポンプ制御信号から、油圧ポンプ10の容量を推定算出し、乗算演算記156へ出力する。
【0105】
乗算演算器156は、関数発生器155からの油圧ポンプ推定容量信号と回転数センサ76で検出した回転数信号176とを入力し、その乗算値を油圧ポンプ10の吐出する流量である推定ポンプ流量信号153Aとして算出している。
【0106】
第2の実施の形態においては、第3高圧選択弁72で選択された圧力を各レバー操作信号と最大値選択器154の演算により算出していたが、本実施の形態においては、直接第3高圧選択弁72で選択された圧力を圧力センサ77で検出している。このことにより、上述した演算が不要となり、簡略化が可能となる。
【0107】
上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0108】
以下、本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第4の実施の形態を図面を用いて説明する。
図11は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第4の実施の形態を示す駆動制御システムの概略図、
図12は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第4の実施の形態を構成するコントローラのブロック図である。
図11及び
図12において、
図1乃至
図10に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0109】
図11及び
図12に示す本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第4の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、電磁切換弁8を電磁比例減圧弁60とし、切換弁7を制御弁61に変更した点と、油圧モータ13を可変容量型油圧モータ62に替え、モータ容量を可変するモータレギュレータ62Aを設けた点が異なる。モータレギュレータ62Aは、コントローラ100からの指令により可変容量型油圧モータ62の容量を変化させる。また、コントローラ100は、流量制限演算部130と動力制限演算部131と第3除算演算器132と第3減算演算器133と第3関数発生器134と第5出力変換部135と一定回転数指令部136と第4除算演算器137と第6出力変換部138とを設けた点が第1の実施の形態と異なる。
【0110】
本実施の形態においては、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油を制御弁61で分流可能にすると共に、電動機14を一定の回転数で回し、可変容量型油圧モータ62の容量を制御することで回生流量を制御している。このことにより、電動機14の最大動力または可変容量型油圧モータ62の最大回収流量を上回るエネルギ/流量がブームシリンダ3aから排出された場合であっても、機器の破損を防ぐことができると共に、ブームの操作性を確保できる。
図11において、第1の実施の形態と異なる部位について説明する。
【0111】
ボトム側油路32には切換弁7に替えて、制御弁61が設けられている。制御弁61は、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油の内、制御弁5を介してタンク12に排出する流量を分流制御する。
【0112】
制御弁61は、一端側にばね61bを、他端側にパイロット受圧部61aを有している。制御弁61のスプールは、パイロット受圧部61aに入力されるパイロット圧油の圧力に応じて移動するので、圧油が通過する開口面積が制御され、パイロット圧油の圧力がある一定値以上のときには完全に閉止する。このことにより、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油の内、制御弁5を介してタンク12に排出する流量を制御できる。パイロット受圧部61aには、パイロット油圧ポンプ11から後述する電磁比例減圧弁60を介してパイロット圧油が供給されている。
【0113】
本実施の形態における電磁比例減圧弁60の入力ポートには、パイロット油圧ポンプ11から出力される圧油が入力されている。一方、電磁比例減圧弁60の操作部には、コントローラ100から出力される指令信号が入力されている。この指令信号に応じて電磁比例減圧弁60のスプール位置が調整され、これにより、パイロット油圧ポンプ11から制御弁61のパイロット受圧部61aに供給されるパイロット圧油の圧力が適宜調整されている。
【0114】
コントローラ100は、コントローラ内部で演算した制御弁61に分流すべき目標排出流量になるように、電磁比例減圧弁60に制御指令を出力し、制御弁61の開口面積を調整する。
【0115】
次に、本実施の形態におけるコントローラ100の制御の概要について
図12を用いて説明する。
図12において、第1の実施の形態と異なる部位について説明する。
本実施の形態においては、第3関数発生器134からの目標開口面積信号134Aを第5出力変換部135に出力し、第5出力変換部135は、入力された目標開口面積信号134Aを電磁比例減圧弁60の制御指令に変換し電磁弁指令信号260Aとして電磁比例減圧弁60に出力する。このことにより、制御弁61の開度が制御され、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油の内、制御弁5を介してタンク12に排出する流量を制御できる。また、第4除算演算器137からの目標容量信号137Aを第6出力変換部138に出力し、第6出力変換部138は、入力された目標容量信号137Aを例えば傾転角に変換し容量指令信号262Aとしてモータレギュレータ62Aに出力する。このことにより、可変容量型油圧モータ62の容量が制御される。
【0116】
本実施の形態におけるコントローラ100は、第1の実施の形態における第1関数発生器101と第1出力変換部106とを省略し、残りの演算器に加えて、流量制限演算部130と動力制限演算部131と第3除算演算器132と第3減算演算器133と第3関数発生器134と第5出力変換部135と一定回転数指令部136と第4除算演算器137と第6出力変換部138とを備えている。
【0117】
流量制限演算部130は、
図6に示すように第2関数発生器102が算出した最終目標ボトム流量信号102Aを入力して、可変容量型油圧モータ62の最大回収流量の上限で制限した制限流量信号130Aを出力する。油圧モータは一般的に最大流量が決まっていることから、機器の仕様に合わせた特性が設定される。制限流量信号130Aは、第1乗算演算器104へ出力される。
【0118】
第1乗算演算器104は、流量制限演算部130からの制限流量信号130Aとボトム側油室3a1の圧力信号144とを入力し、その乗算値を回収動力信号104Aとして算出し、動力制限演算部131へ出力する。
【0119】
動力制限演算部131は、第1乗算演算器104が算出した回収動力信号104Aを入力して、電動機14の最大動力の上限で制限した制限回収動力信号131Aを出力する。電動機14に関しても、一般的に最大動力が決まっていることから、機器の仕様に合わせた特性が設定される。制限回収動力信号131Aは、第3除算演算器132と最小値選択演算部108とへ出力される。流量制限演算部130と動力制限演算部131とで、制限をかけることにより、機器の破損を防止できる。
【0120】
第3除算演算器132は、動力制限演算部131からの制限回収動力信号131Aとボトム側油室3a1の圧力信号144とを入力し、制限回収動力信号131Aを圧力信号144で除算した値を目標回収流量信号132Aとして算出し、第3減算演算器133と第4除算演算器137とへ出力する。
【0121】
第3減算演算器133は、第2関数発生器102からの最終目標ボトム流量信号102Aと第3除算演算器132からの目標回収流量信号132Aとを入力し、その偏差を制御弁61に分流すべき目標排出流量信号133Aとして算出し、第3関数発生器134へ出力する。
【0122】
第3関数発生器134は、圧力センサ44で検出したブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力を圧力信号144として一の入力端に入力し、第3減算演算部133からの制御弁61に分流すべき目標排出流量信号133Aを他の入力端に入力する。これらの入力信号からオリフィスの数式に基づいて制御弁61の目標開口面積を算出し、目標開口面積信号134Aを第5出力変換部135へ出力する。
【0123】
ここで、制御弁61の目標開口面積Aは以下の式(1)と(2)で算出される。目標排出流量をQt、流量係数をC、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1の圧力をPb、制御弁61の開口面積をA、タンク圧を0MPaとすると、
Qt=CA√Pb・・・・・(1)
となり、Aについて解くと
A
0=Q
0/(C√P
b)・・・(2)
となる。よって、式(2)より制御弁61の開口面積を算出できる。
【0124】
第5出力変換部135は、入力された目標開口面積信号134Aを電磁比例減圧弁60の制御指令に変換し電磁弁指令信号260Aとして電磁比例減圧弁60に出力する。このことにより、制御弁61の開度が制御され、制御弁61に分流すべき流量が制御される。
【0125】
一定回転数指令部136は、電動機14の回転数を最大回転数の一定回転数で回すために、電動機の回転数指令信号を第2出力変換部107に出力する。第2出力変換部107は、入力された回転数指令信号を目標電動機回転数に変換し回転数指令信号209Aとしてインバータ9Aに出力する。
【0126】
一定回転数指令部136は、電動機の回転数指令信号を第2除算演算器110の他端と第4除算演算器137の他端にも出力する。
【0127】
第2除算演算器110は、第1除算演算器109からの目標アシスト流量信号109Aと一定回転数指令部136からの電動機の回転数指令信号とを入力し、目標アシスト流量信号109Aを電動機の回転数指令信号で除算した値を補助油圧ポンプ15の目標容量信号110Aとして算出し、第3出力変換部111へ出力する。
【0128】
第4除算演算器137は、第3除算演算器132からの目標回収流量信号132Aと一定回転数指令部136からの電動機の回転数指令信号とを入力し、目標回収流量信号132Aを電動機の回転数指令信号で除算した値を可変容量型油圧モータ62の目標容量信号137Aとして算出し、第6出力変換部138へ出力する。
【0129】
第6出力変換部138は、入力された目標容量信号137Aを例えば傾転角に変換し容量指令信号262Aとしてモータレギュレータ62Aに出力する。このことにより、可変容量型油圧モータ62の容量が制御される。
【0130】
ここで、第2関数発生器102と、第1乗算演算器104と、流量制限演算部130と、動力制限演算部131と、第3除算演算器132と、第3減算演算器133と、第3関数発生器134と、一定回転数指令部136と、第4除算演算器137とは、回収動力信号104Aが電動機14の最大動力を上回らないように、ブームシリンダ3aから排出される動力を排出回路に分配するように制御弁61の開度を制御する電磁比例減圧弁60に出力する制御指令である目標開口面積信号134Aを演算する第5演算部を構成する。
【0131】
また、第2関数発生器102と、第1乗算演算器104と、流量制限演算部130と、動力制限演算部131と、第3除算演算器132と、第3減算演算器133と、第3関数発生器134と、一定回転数指令部136と、第4除算演算器137とは、可変容量型油圧モータ62に入力可能な最大流量である制限流量信号130Aを上回らないように、ブームシリンダ3aから排出される動力を排出回路に分配するように制御弁61の開度を制御する電磁比例減圧弁60に出力する制御指令である目標開口面積信号134Aを演算する第7演算部を構成する。
【0132】
次に、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態の制御ロジックによる動作を
図11及び
図12を用いて説明する。
図12に示す第2関数発生器102から出力された最終目標ボトム流量信号102Aは、流量制限演算部130によって可変容量型油圧モータ62の最大流量の制限流量信号130Aに制限される。このことにより、可変容量型油圧モータ62に仕様以上の流量が流れないように制限され、可変容量型油圧モータ62の破損を防ぐことができる。
【0133】
また、この制限された最終目標ボトム流量信号102Aは第1乗算演算器104にボトム側油室3a1の圧力信号144と共に入力され、回収動力信号104Aが算出される。
【0134】
算出された回収動力信号104Aは、動力制限演算部131によって電動機14の最大動力の上限で制限した制限回収動力信号131Aに制限される。このことにより、過大なエネルギが電動機軸に入力されることを防ぎ、機器の破損、または過速度を回避することができる。
【0135】
動力制限演算部131から出力された制限回収動力信号131Aは、第3除算演算器132にボトム側油室3a1の圧力信号144と共に入力され、目標回収流量信号132Aが算出される。
【0136】
さらに、目標回収流量信号132Aは、最終目標ボトム流量信号102Aと共に第3減算演算器133に入力され、オペレータの望む所望のブームシリンダ速度を実現するために制御弁61に分流すべき目標排出流量信号133Aを算出する。
【0137】
目標排出流量信号133Aは、第3関数発生器134にボトム側油室3a1の圧力信号144と共に入力され制御弁61の目標開口面積が算出される。この目標開口面積の信号は、第5出力変換部135を介して電磁弁指令信号260Aとして電磁比例減圧弁60に出力される。
【0138】
このことにより、
図11に示すブームシリンダ3aからの排出油は制御弁61にも分流され、可変容量型油圧モータ62で回収できない流量を流し、オペレータの望むブームシリンダ速度を確保することが可能となる。
【0139】
図12に戻り、第3除算演算器132から出力された目標回収流量信号132Aは、一定回転数指令部136からの電動機の回転数指令信号と共に第4除算演算器137に入力され、可変容量型油圧モータ62の目標容量が算出される。この目標容量の信号は、第6出力変換部138を介して容量指令信号262Aとしてモータレギュレータ62Aに出力する。
【0140】
このことにより、可変容量型油圧モータ62には、回転軸に連結された機器の仕様によって、流量制限及び動力制限がなされた流量の作動油が流入する。この結果、過大な動力が入力されることがないので、機器の破損、または過速度の発生を防ぐことができる。
【0141】
なお、本実施の形態においては、回収動力の流量制限と、動力の制限とを同時に行う場合を例に説明したが、これに限る必要はなく、機器の仕様に合わせて、適宜選択して設計することが望ましい。例えば、電動機のトルクが十分であり、動力制限を行う必要がなければ、流量制限のみを行う制御ロジックを作成しても良い。
【0142】
上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0143】
また、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第4の実施の形態によれば、回生用の可変容量型油圧モータ62には、機器の仕様に応じた流量制限及び動力制限がなされた流量の作動油が流入するので、過大な動力が入力されることがない。この結果、機器の破損、または過速度の発生を防ぐことができ、信頼性が向上する。
【実施例5】
【0144】
以下、本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態を図面を用いて説明する。
図13は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態を構成するコントローラのブロック図、
図14は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態を構成するコントローラの可変動力制限演算部の内容を説明する特性図である。
図13及び
図14において、
図1乃至
図12に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0145】
図13及び
図14に示す本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態は、第4の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、制御ロジックの構成が異なる。本実施の形態においては、第4の実施の形態における動力制限演算部131に替えて可変動力制限演算部139を設けた点が第4の実施の形態と異なる。第4の実施の形態においては、電動機14の最大動力だけで、可変容量型油圧モータ62への作動油の流入流量等を制限していたが、本実施の形態においては、電動機14の最大動力と補助油圧ポンプ15の要求ポンプ動力の合計で制限をかけている。このことにより、動力制限の上限が上がるので、回収するエネルギをさらに増加でき、燃費低減効果が向上する。
【0146】
図13に示すように、可変動力制限演算部139は、第1乗算演算器104が算出した回収動力信号104Aと、第2乗算演算器105が算出した要求ポンプ動力信号105Aとを入力して、電動機14の最大動力の上限と補助油圧ポンプ15の要求動力とに応じた制限付き回収動力信号139Aを出力する。制限付き回収動力信号139Aは、第3除算演算器132と最小値選択演算部108とへ出力される。
【0147】
可変動力制限演算部139の演算の詳細を
図14を用いて説明する。
図14において、横軸は第1乗算演算器104が算出した回収動力信号104Aである目標回収動力を示し、縦軸は可変動力制限演算部139が算出した制限付き回収動力を示している。
図14において、実線の特性線xは、横軸に平行な上限制限線を電動機14の最大動力で規定している。このとき、第2乗算演算器105から入力される要求ポンプ動力信号105Aは0となる。
【0148】
可変動力制限演算部139に入力される要求ポンプ動力信号105Aが0から増加した場合、特性線xの上限制限線は、その増加分だけy方向に上方に移動する。換言すると、可変動力制限演算部139は、要求ポンプ動力の入力分だけ、制限付き回収動力の上限を増加させる。
【0149】
このことにより、目標回収動力の上限が上がり、回収動力が増加し燃費低減効果が上がると共に、電動機14の動力を超えたエネルギが可変容量型油圧モータ62に入力されても、補助油圧ポンプ15で使われることにより、電動機14には、仕様を超える動力が入ることを防ぐことができる。
【0150】
ここで、第2関数発生器102と、第1減算演算器103と、第1乗算演算器104と、流量制限演算部130と、可変動力制限演算部139と、第3除算演算器132と、第3減算演算器133と、第3関数発生器134と、一定回転数指令部136と、第4除算演算器137とは、回収動力信号104Aが電動機14の最大動力と要求アシスト動力との合計値である回収動力信号139Aを上回らないように、ブームシリンダ3aから排出される動力を排出回路に分配するように制御弁61の開度を制御する電磁比例減圧弁60に出力する制御指令である目標開口面積信号134Aを演算する第6演算部を構成する。
【0151】
上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0152】
また、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第5の実施の形態によれば、目標回収動力の上限が上がり、回収動力が増加し燃費低減効果が上がる。この結果、機器の破損、または過速度の発生を防ぐことができ、信頼性が向上する。
【実施例6】
【0153】
以下、本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態を図面を用いて説明する。
図15は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態を示す駆動制御システムの概略図、
図16は本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態を構成するコントローラのブロック図である。
図15及び
図16において、
図1乃至
図14に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0154】
図15及び
図16に示す本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の油圧源と作業機等とで構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、油圧ポンプ10の油路30へ供給する補助油圧ポンプ15の圧油の流量制御を、補助油圧ポンプ15の容量制御ではなく、補助油路31に連結された排出回路としての排出油路34に設けたブリード弁16の開口面積を調整することで行う点が異なる。したがって、補助油圧ポンプ15は、固定容量型油圧ポンプで構成する点も異なる。また、コントローラ100は、第4関数発生器122と第4減算演算器123と開口面積演算部124と第7出力変換部125とを設けた点が第1の実施の形態と異なる。
【0155】
図15において、第1の実施の形態と異なる部位について説明する。
補助油路31における補助油圧ポンプ15とチェック弁6との間の部位にタンク12と連通する排出油路34が連結されている。排出油路34には、補助油路31からタンク12に排出される油の流量を制御するブリード弁16が設けられている。
【0156】
ブリード弁16は、一端側にばね16bを、他端側にパイロット受圧部16aを有している。ブリード弁16のスプールは、パイロット受圧部16aに入力されるパイロット圧油の圧力に応じて移動するので、圧油が通過する開口面積が制御され、パイロット圧油の圧力がある一定値以上のときには完全に閉止する。このことにより、補助油路31からタンク12に排出される排出油路34を流れる油の流量を制御できる。パイロット受圧部16aには、パイロット油圧ポンプ11から後述する電磁比例減圧弁17を介してパイロット圧油が供給されている。
【0157】
本実施の形態における電磁比例減圧弁17の入力ポートには、パイロット油圧ポンプ11から出力される圧油が入力されている。一方、電磁比例減圧弁17の操作部には、コントローラ100から出力される指令信号が入力されている。この指令信号に応じて電磁比例減圧弁17のスプール位置が調整され、これにより、パイロット油圧ポンプ11からブリード弁16のパイロット受圧部16aに供給されるパイロット圧油の圧力が適宜調整されている。
【0158】
本実施の形態においては、合流管路である補助油路31を流通する補助油圧ポンプ15からの圧油の流量を調整可能とする第1調整器は、ブリード弁16とブリード弁16の開口面積を調整可能とする電磁比例減圧弁17とで構成している。
【0159】
コントローラ100は、コントローラ内部で演算した目標アシスト流量になるように、補助油圧ポンプ15の吐出流量と目標アシスト流量の差をブリード弁16を介してタンク12へ流すように、電磁比例減圧弁17に制御指令を出力し、ブリード弁16の開口面積を調整する。
【0160】
次に、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態の動作の概要を説明する。操作装置4の操作レバーをブーム下げ方向で規定値以下に操作した場合の動作は、第1の実施の形態と同様なので省略する。
【0161】
オペレータが操作装置4の操作レバーをブーム下げ方向に、規定値以上に操作すると、コントローラ100は、電磁切換弁8へ切換指令を、インバータ9Aへ回転数指令を、ブリード弁16を制御する電磁比例減圧弁17へ制御指令を、電磁比例弁74へ制御指令をそれぞれ出力する。
【0162】
この結果、切換弁7が遮断位置に切換り、ブームシリンダ3aのボトム側油室3a1からの戻り油は、制御弁5への油路が遮断されるため、回生回路33に流れ、油圧モータ13を駆動してその後タンク12に排出される。
【0163】
油圧モータ13の駆動力により補助油圧ポンプ15は回転する。補助油圧ポンプ15の吐出した圧油は、補助油路31とチェック弁6とを介して油圧ポンプ10の吐出した圧油と合流し、油圧ポンプ10の動力をアシストするように動作する。
【0164】
コントローラ100は、電磁比例減圧弁17に制御指令を出力し、ブリード弁16の開口面積を制御することで油圧ポンプ10と合流する補助油圧ポンプ15からの圧油流量を調整する。このことにより、油圧ポンプ10への合流流量が所望の流量に制御される。また、コントローラ100は、補助油圧ポンプ15から供給された圧油の流量分、油圧ポンプ10の容量を低減するように電磁比例弁74へ制御指令を出力する。
【0165】
油圧モータ13に入力された油圧エネルギの内、補助油圧ポンプ15で消費しきれなかった余剰エネルギは、電動機14を駆動し発電することで費やされる。電動機14の発電した電気エネルギは蓄電装置9Cに蓄えられる。
【0166】
本実施の形態においては、ブームシリンダ3aから排出された圧油のエネルギは、油圧モータ13によって回収し、補助油圧ポンプ15の駆動力として油圧ポンプ10の動力をアシストする。また、余分な動力は、電動機14を介して蓄電装置9Cに蓄える。このことにより、エネルギの有効用と燃費の低減とを図っている。また、合流流量の調整をブリード弁16の開口面積の調整で行うことから、補助油圧ポンプ15は固定容量型油圧ポンプで良い。この結果、動力回生装置70の構成が単純になる。
【0167】
次に、本実施の形態におけるコントローラ100の制御の概要について
図16を用いて説明する。
図16において、第1の実施の形態と異なる部位について説明する。
第1の実施の形態においては、目標アシスト流量信号109Aを最終目標ボトム流量信号102Aで除算して算出した目標容量信号110Aを第3出力変換部111からレギュレータ15Aに出力していたが、本実施の形態においては、開口面積演算部124からの目標開口面積信号124Aを第7出力変換部125に出力し、第7出力変換部125は、入力された目標開口面積信号124Aを電磁比例減圧弁17の制御指令に変換し電磁弁指令217として電磁比例減圧弁17に出力する。このことにより、ブリード弁16の開度が制御され、タンク12側に排出される補助油圧ポンプ15の流量が制御される。この結果、補助油圧ポンプ15から吐出される圧油の油圧ポンプ10への合流流量が所望の流量に制御される。
【0168】
本実施の形態におけるコントローラ100は、第1の実施の形態における第2除算演算器110と第3出力変換部111とを省略し、残りの演算器に加えて、第4関数発生器122と第4減算演算器123と開口面積演算部124と第7出力変換部125とを備えている。
【0169】
第4関数発生器122は、
図16に示すように第2関数発生器102が算出した最終目標ボトム流量信号102Aを入力し、最終ボトム流量信号102Aを基に補助油圧ポンプ15の吐出流量信号122Aを算出する。吐出流量信号122Aは、第4減算演算器123へ出力される。
【0170】
第4減算演算器123は、第4関数発生器122からの補助油圧ポンプ15の吐出流量信号122Aと、第1除算演算器109からの目標アシスト流量信号109Aとを入力し、その偏差を目標ブリード流量信号123Aとして算出し、開口面積演算部124の一の入力端へ出力する。
【0171】
開口面積演算部124は、第4減算演算器123からの目標ブリード流量信号123Aを一の入力端に入力し、圧力センサ40が検出した油圧ポンプ10の吐出圧を圧力信号140として他の入力端に入力する。これらの入力信号からオリフィスの数式に基づいてブリード弁16の目標開口面積を算出し、目標開口面積信号124Aを第7出力変換部125へ出力する。
【0172】
ここで、ブリード弁16の目標開口面積A
0は以下の式(3)で算出される。
A
0=Q
0/C√P
P・・・・(3)
ここで、Q
0は目標ブリード流量、P
Pは油圧ポンプ圧力、Cは流量係数である。
【0173】
第7出力変換部125は、入力された目標開口面積信号124Aを電磁比例減圧弁17の制御指令に変換し電磁弁指令217として電磁比例減圧弁17に出力する。このことにより、ブリード弁16の開度が制御され、タンク12側に排出される補助油圧ポンプ15の流量が制御される。
【0174】
次に、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態の制御ロジックによる動作を
図15及び
図16を用いて説明する。第1の実施の形態に加えられた演算器に関する部分について説明する。
【0175】
コントローラ100において、第2関数発生器102で算出された最終目標ボトム流量信号102Aは、第4関数発生器122に入力され、第4関数発生器122は、補助油圧ポンプ15の吐出流量信号122Aを算出する。
【0176】
第4関数発生器122で算出された吐出流量信号122Aと第1除算演算器109で算出された目標アシスト流量信号109Aとは第4減算演算器123に入力され、第4減算演算器123は、目標ブリード流量信号123Aを算出する。目標ブリード流量信号123Aは、開口面積演算部124に入力される。
【0177】
開口面積演算部124では、入力された目標ブリード流量信号123Aと油圧ポンプ10の圧力信号140とからブリード弁16の目標開口面積信号124Aを算出し、第7出力変換部125へ出力する。
【0178】
第7出力変換部125は、ブリード弁16が算出した開口面積となるように、電磁比例減圧弁17へ制御指令を出力する。このことにより、補助油圧ポンプ15から吐出された圧油の余剰流量はブリード弁16を介してタンク12に排出される。この結果、油圧ポンプ10の圧油と補助油圧ポンプ15の圧油の合流流量が所望の流量に調整される。
【0179】
上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0180】
また、上述した本発明の作業機械の圧油エネルギ回生装置の第6の実施の形態によれば、油圧ポンプ10の動力をアシストする補助油圧ポンプ15からの圧油の流量調整をブリード弁16の開口面積の調整で行う。このことにより、動力回生装置70の構成が単純になり、生産コストの低減と保守性の向上が図れる。
【0181】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。