(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、ステータ巻線の誘起電圧に対して位置センサの取付誤差を推測するが、そもそも誘起電圧を測定する手段は明示されていない。また、取付誤差Δθ3を決定するには、誘起電圧と誘起電圧以外の状態を同時に測定し、かつ、発電機の回転数や誘起電圧を可変にすることが必要である。例えば、3相信号のうち1相はオープンにして、残り2相を、電子負荷を間にして接続することで、誘起電圧を測定することは可能である。しかし、この方法では、3相信号のうち1相の位相と残り2相の位相とを比較するので、3相が120°毎に精度よく並んでいることが前提となる。また、測定する誘起電圧は、発電機内部の磁界を通して影響を受けるので、推測する取付誤差Δθ3の精度の低下を招いてしまう。このように、特許文献1に開示された技術では、推測する取付誤差Δθ3の精度の低下が生じてしまい、最大出力の制御ができていない。
【0006】
そこで、本願は、位置検出精度を向上し、通電制御を精度よく行うことができる発電制御装置、発電制御方法および発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、発電機のロータの回転位置を検出する位置センサが出力した位置検出信号を入力する位置検出信号入力部と、複数の整流素子と複数のスイッチング素子からなり、前記発電機から出力されるN相交流(N=1以上の整数)を整流した直流電力をバッテリに供給するインバータ回路部と、前記発電機の出力電圧が所定の波形を示す位相と前記位置センサから入力した前記位置検出信号の入力位相との差分である位相差であって、基準となるユニットの前記位相差と駆動状態に関するデータとの対応付けされた基準データを記憶する記憶部と、測定対象のユニットの駆動状態を測定するとともに当該駆動状態に対応する前記測定対象のユニットの前記位相差を測定し、当該駆動状態に対応する前記基準となるユニットの前記位相差を前記記憶部を参照して取得し、測定した前記位相差と前記基準となるユニットの前記位相差との差分である補正位相差を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記補正位相差に応じて前記複数のスイッチング素子の通電制御を行う駆動信号生成部とを備えることを特徴とする発電制御装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記発電制御装置であって、前記基準となるユニットの前記位相差は、前記基準となるユニットの前記発電機が出力したN相交流(N=1以上の整数)のゼロクロスを示す位相と前記基準となるユニットの前記位置センサから入力した前記位置検出信号の入力位相との位相差であって、当該位相差は、前記基準となるユニットのセンサ取付位置に対応する取付誤差と、前記基準となるユニットの駆動状態に応じて変化する位相差との合計の値であり、前記測定対象のユニットの前記位相差は、前記測定対象のユニットの前記発電機が出力したN相交流(N=1以上の整数)のゼロクロスを示す位相と前記測定対象のユニットの前記位置センサから入力した前記位置検出信号の入力位相との位相差であって、当該位相差は、前記測定対象のユニットのセンサ取付位置に対応する取付誤差と、前記測定対象のユニットの駆動状態に応じて変化する位相差との合計の値であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記発電制御装置であって、前記駆動状態は、前記発電機の回転数および前記バッテリの電圧の少なくとも一方をパラメータとして設定されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、発電機のロータの回転位置を検出する位置センサが出力した位置検出信号を入力する位置検出信号入力部と、複数の整流素子と複数のスイッチング素子からなり、前記発電機から出力されるN相交流(N=1以上の整数)を整流した直流電力をバッテリに供給するインバータ回路部と、前記発電機の出力電圧が所定の波形を示す位相と前記位置センサから入力した前記位置検出信号の入力位相との差分である位相差であって、基準となるユニットの前記位相差と駆動状態に関するデータとの対応付けされた基準データを記憶する記憶部と、測定対象のユニットの駆動状態を測定するとともに当該駆動状態に対応する前記測定対象のユニットの前記位相差を測定し、当該駆動状態に対応する前記基準となるユニットの前記位相差を前記記憶部を参照して取得し、測定した前記位相差と前記基準となるユニットの前記位相差との差分である補正位相差を算出する算出部とを用い、駆動信号生成部によって、前記算出部が算出した前記補正位相差に応じて前記複数のスイッチング素子の通電制御を行うことを特徴とする発電制御方法である。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記発電機と、前記位置センサと、上記発電制御装置とを備える発電装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、記憶部は、基準となるユニットの位相差と駆動状態に関するデータとの対応付けされた基準データを記憶する。また、算出部は、測定対象のユニットの駆動状態を測定するとともに当該駆動状態に対応する測定対象のユニットの位相差を測定する。さらに、算出部は、当該駆動状態に対応する基準となるユニットの位相差を記憶部を参照して取得し、測定した位相差と取得した基準となるユニットの位相差との差分である補正位相差を算出する。この構成によれば、記憶部が記憶する基準となるユニットの位相差と、測定対象のユニットで測定された位相差とを直接比較して差分をとることで補正位相差が算出される。したがって、基準となるユニットの位相差と測定対象のユニットの位相差との差分を取ることで誘起電圧に係る位相差を互いに打ち消すことができる。よって、誘起電圧に係る位相差を推定する必要がない。それ故、本発明の実施形態によれば、位置検出精度を向上し、通電制御を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る発電装置100の構成例を示すブロック図である。
図1に示す発電装置100は、ACG(発電機)1と、発電制御装置2とを備える。発電装置100は、発電制御装置2によってACG1の出力を制御し、バッテリ200や図示していない他の電気負荷へ供給する直流電力を制御する。一例として、本実施形態の発電装置100とバッテリ200は、バイク、自動二輪車等の車両に搭載された充電システムを構成するものとすることができる。
【0015】
ACG1は、ステータ11と、ロータ12と、位置センサ13とを備える。ただし、位置センサ13は、発電制御装置2に含まれる構成としてもよい。ステータ11は、電機子コアと電機子コアに巻回された3相巻線とを備えて構成されている。3相巻線は、スター結線であってもよいし、デルタ結線であってもよい。3相巻線の各相をU、VおよびW相とする。ロータ12は、ステータ11に対してN極とS極を交互に向き合うように配置された永久磁石を備えて構成されている。ロータ12は、例えば、エンジンのクランクシャフトに直結されていて、エンジンを動力源として回転駆動される。位置センサ13は、ロータ12の回転位置を検出するセンサであり。例えばロータ12の磁極の変化に応じて変化する信号を位置センサ信号として出力する。なお、ステータ11は、3相交流に限らず、N相交流(N=1以上の整数)を出力するものとすることができる。
【0016】
発電制御装置2は、位置センサ信号検出部(位置検出信号入力部)21と、出力電圧検出部22と、回転数判別部23と、インバータ回路部24と、駆動信号生成部25と、算出部26と、記憶部27と、バッテリ電圧検出部28とを備える。
【0017】
位置センサ信号検出部21は、位置センサ13が出力した位置センサ信号を入力し、位置センサ信号に対して波形成形処理を行い、ACG位置に対応する2値信号に変換して、変換した結果を出力する。出力電圧検出部22は、ACG1の3相電圧を入力し、各相電圧のゼロクロス点を表すゼロクロス信号を出力する。
【0018】
回転数判別部23は、位置センサ信号検出部21が出力したACG位置を表す信号または出力電圧検出部22が出力したゼロクロス信号に基づきACG1の回転数を算出し、算出した回転数を表す信号を出力する。なお、
図1では、回転数判別部23に対して、ACG位置を表す信号とゼロクロス信号の2つの信号が入力されるように示しているが、いずれか一方の信号が入力されていればよい。
【0019】
図1に示す構成例では、インバータ回路部24は3相インバータ240を備える。3相インバータ240は、6個のトランジスタ(スイッチング素子)241〜246を有する。インバータ回路部24は、駆動信号生成部25から入力された駆動信号に基づき、ACG1が出力した3相交流の位相に同期させて6個のトランジスタ241〜246を通電制御することで、バッテリ200等へ出力される直流電力を制御する。
図1に示す構成例では、トランジスタ241〜246がMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。ただし、トランジスタの種類に限定はない。
図1に示す例では、トランジスタ241〜243の各ドレインはバッテリ200の正極に接続され、トランジスタ244〜246の各ソースはバッテリ200の負極に接続されている(バッテリ200と共通に接地されている)。トランジスタ241のソースとトランジスタ244のドレインはACG1のU相出力に接続されている。トランジスタ242のソースとトランジスタ245のドレインはACG1のV相出力に接続されている。トランジスタ243のソースとトランジスタ246のドレインはACG1のW相出力に接続されている。また、トランジスタ241〜246の各寄生ダイオードD1(整流素子)は、トランジスタ241〜246がオフされた状態で、3相全波整流回路を構成する。ただし、3相全波整流回路を構成するダイオードは個別のダイオードであってもよい。なお、インバータ回路部24は、3相フルブリッジ回路に限らず、Hブリッジ回路、4相ブリッジ回路等、ACG1が出力したN相交流(N=1以上の整数)を整流することができる回路を備えていればよい。
【0020】
駆動信号生成部25は、算出部26から入力された所定の制御信号に基づき、トランジスタ241〜246のゲート・ソース間に入力される6個の駆動信号を生成して出力する。駆動信号生成部25が出力する各駆動信号は、トランジスタ241〜246を個別にオンまたはオフする。なお、各駆動信号がトランジスタ241〜246をオンまたはオフにする制御には、PWM(パルス幅変調)制御も含む。
【0021】
バッテリ電圧検出部28は、バッテリ200の端子電圧を入力し、所定の分圧比で分圧した信号をバッテリ電圧検出信号として出力する。
【0022】
記憶部27は、位相補正用テーブル271、通電制御用テーブル272および補正位相差ΔθTABデータ273を記憶する。なお、本実施形態の発電装置100は、基準となるユニット(以下、Aユニットと称する)として用いられる場合と、測定対象のユニット(以下、Bユニットと称する)として用いられる場合がある。Aユニットは、位相補正用テーブル271および通電制御用テーブル272を作成する際に用いられる発電装置100である。Bユニットとして用いられる場合の発電装置100は、Aユニットを用いて作成された記憶部27が記憶する位相補正用テーブル271を参照して補正位相差ΔθTABデータ273を算出する。ここで、補正位相差ΔθTABデータ273は、Aユニットの位置センサ13が出力する位置センサ信号とBユニットの位置センサ13が出力する位置センサ信号との位相差(すなわち取付位置の誤差)に対応する情報である。補正位相差ΔθTABデータ273は、例えば初期値はゼロに設定され、その後、Bユニットで所定の測定を実施した結果に基づいてBユニットに対応した値に設定される。また、Bユニットは、Aユニットを用いて作成された記憶部27が記憶する通電制御用テーブル272を参照し、自ら算出した補正位相差ΔθTABデータ273を用いてインバータ回路部24による通電制御を実行する。例えば、Aユニットは試作段階の発電装置100であり、Bユニットは製品として出荷される発電装置100である。したがって、Aユニットでは、記憶部27が、例えば、位相補正用テーブル271、通電制御用テーブル272および補正位相差ΔθTABデータ273を記憶していない場合がある。また、Bユニットでは、記憶部27が、例えば、位相補正用テーブル271および通電制御用テーブル272を予め記憶するとともに、補正位相差ΔθTABデータ273を記憶あるいは更新して記憶することになる。なお、Aユニットは、同一仕様のACG1に対して1台だけ設定してもよいし、複数台設定してもよい。複数台設定する場合には、後述する位相補正用テーブル271や通電制御用テーブル272の内容を例えば複数台の特性の平均値や中央値に基づいて設定することができる。
【0023】
次に、
図2〜
図4等を参照して、位相補正用テーブル271および通電制御用テーブル272の構成例について説明する。
図2は、
図1に示す位相補正用テーブル271の構成例を示す模式図である。
図3は、
図1に示す通電制御用テーブル272の構成例を示す模式図である。
図4は、Aユニットを用いて位相補正用テーブル271および通電制御用テーブル272を作成する処理の流れを示すフローチャートである。
【0024】
位相補正用テーブル271は、ACG1の出力電圧が所定の波形を示す位相と位置センサ13から入力した位置センサ信号(位置検出信号)の入力位相との差分である位相差であって、基準となるAユニットの位相差(θTA)とACG1の駆動状態に関するデータとを対応付けるテーブル(基準データ)である。
図2に示す例では、ACG1の駆動状態に関するデータとして、バッテリ電圧とACG1の回転数を用いている。また、ACG1の出力電圧における所定の波形は、3相インバータ240のトランジスタ241〜246をすべてオフした状態で、
図7に示すように、ACG1の出力電圧における相電圧がゼロクロスする時点の波形である。また、ACG1の出力電圧が所定の波形を示す位相と位置センサ13から入力した位置センサ信号の入力位相との差分である位相差は、
図7に示すように、3相インバータ240のトランジスタ241〜246をすべてオフした状態で、位置センサ信号を位置センサ信号検出部21で2値化した信号が立ち下がった時点の相電圧の位相と、相電圧がゼロクロスする時点の位相との位相差θTAである。位相差θTAは、例えば相電圧の電気角の差で表すことができる。
図2に示す位相補正用テーブル271は、バッテリ電圧をV1、V2、V3、…と変化させるとともに、各電圧V1、V2、V3、…で回転数をN1、N2、N3、…と変化させたときに、3相インバータ240のトランジスタ241〜246をすべてオフした状態でAユニットで計測された位相差θTA1、θTA2、θTA3、…とを各電圧V1、V2、V3、…と各回転数をN1、N2、N3、…とに対応づけるテーブルである。
【0025】
一方、通電制御用テーブル272は、基準となるAユニットのACG1から所定の電力を出力させるための通電位相差(通電角)と、ACG1の駆動状態に関するデータとを対応付けるテーブルである。ACG1の出力電力は、例えば
図8に示すように、通電制御によって3相インバータ240における通電パターンを切り替える時の相電圧の位相(これを通電位相と呼ぶ)を変化させることで制御することができる。ここで、3相インバータ240における通電パターンとは、トランジスタ241〜246のオンまたはオフの組み合わせである。また、通電位相差θAとは、位置センサ信号の所定の位相を基準とする所定の通電位相までの位相差である。
図8に示す例では、通電位相差θAは、位置センサ13から入力した位置センサ信号を位置センサ信号検出部21で2値化した信号が立ち下がった時点の位相から、通電パターンを切り替える時点の位相までの位相差である。また、
図8に示す例では、通電位相をθWmaxとした場合にACG1の出力電力を最大とすることができる。また、例えば、通電制御用テーブル272に設定される通電位相差θAは、ACG1から最大電力を出力させるための最大出力時通電位相差θpeakAとすることができる。最大出力時通電位相差θpeakAは、最大電力を出力する位相θWmaxに対応する通電位相差θAである。Aユニットでは、位置センサ信号を2値化した信号が立ち下がった時点の位相を基準として、通電位相差がθpeakAとなるように通電制御を行うことで、ACG1の出力電力を最大に制御することができる。
【0026】
また、通電制御用テーブル272に設定されるACG1の駆動状態に関するデータとしては、例えばバッテリ電圧とACG1の回転数を用いることができる。
図3に示す通電制御用テーブル272は、バッテリ電圧をV1、V2、V3、…と変化させるとともに、各電圧V1、V2、V3、…で回転数をN1、N2、N3、…と変化させたときに、Aユニットで計測された最大出力時位相差θpeakA1、θpeakA2、θpeakA3、…を、各電圧V1、V2、V3、…と各回転数N1、N2、N3、…とに対応づけるテーブルである。
【0027】
なお、位相補正用テーブル271を作成する際に使用するACG1の出力電圧が所定の波形を示す位相は、ゼロクロスに限らず、所定の電圧値を立ち上がりで通過する位相、所定の電圧値を立ち下がりで通過する位相等、任意に設定することができる。また、通電制御用テーブル272を作成する際に使用するACG1から所定の電力を出力させるための通電位相差θAは、最大出力時の位相に限らず、出力がゼロのときや出力ゼロから最大出力までの中間の値、あるいはACG1を電動機として動作させるとき(すなわち出力が負の値となるとき)の位相に対応するものとしてもよい。この場合、通電制御用テーブル272は、例えば出力に応じて複数設けることができる。
【0028】
次に、
図4を参照して、Aユニットを用いて位相補正用テーブル271および通電制御用テーブル272を作成する際に、操作者、所定のプログラムを実行するコンピュータ等が実行する処理の流れについて説明する。この処理では、まず、インバータ回路部24のトランジスタ241〜246をすべてオフした状態で回転数とバッテリ電圧を所定の範囲で変化させながらAユニットの位置センサ13の所定の波形変化から出力電圧の所定の波形変化までの位相差θTAを測定する(ステップS11)。次に、ステップS11での測定結果に基づいて位相補正用テーブル271(
図2)を作成する(ステップS12)。
【0029】
次に、回転数とバッテリ電圧を所定の範囲で変化させながら通電制御を実行し、通電位相差θAを変化させて、Aユニットの出力が最大となる最大出力時通電位相差θpeakAを測定する(ステップS13)。次に、ステップS13での測定結果に基づいて通電制御用テーブル272(
図3)を作成する。ステップS12で作成された位相補正用テーブル271とステップS14で作成された通電制御用テーブル272は、Bユニットの記憶部27に記憶される。
【0030】
一方、
図1に示す算出部26は、位置センサ信号検出部21が出力したACG位置を表す信号、出力電圧検出部22が出力したゼロクロス信号、回転数判別部23が出力した回転数を表す信号、および、バッテリ電圧検出部28が出力したバッテリ電圧検出信号を入力する。また、算出部26は、入力信号や記憶部27に記憶されている情報を参照して駆動信号生成部25を制御する。また、算出部26は、入力信号や記憶部27に記憶されている情報を参照して駆動信号生成部25を制御するとともに、所定の測定を行い、測定結果に基づいて補正位相差ΔθTABデータ273を算出して記憶部27へ記憶する。ここで、
図5、
図6等を参照して、算出部26の動作について説明する。
【0031】
図5は、
図1に示す発電装置100(Bユニットの場合)の動作例(補正位相差ΔθTAB273を算出する処理)を示すフローチャートである。なお、この場合、位相補正用テーブル271には
図7を参照して説明したように、位置センサ信号を位置センサ信号検出部21で2値化した信号が立ち下がった時点の相電圧の位相と、相電圧がゼロクロスする時点の位相との位相差θTAが設定されているものとする。
【0032】
補正位相差ΔθTAB273を算出する場合、算出部26は、インバータ回路部24のトランジスタ241〜246をすべてオフした状態で回転数とバッテリ電圧を測定するとともにBユニットの位置センサ13の所定の波形変化からACG1の出力電圧の所定の波形変化までの位相差θTBを測定する(ステップS21)。この場合、ステップS21において、算出部26は、
図7に示すように、位置センサ信号を位置センサ信号検出部21で2値化した信号が立ち下がった時点の相電圧の位相と、相電圧がゼロクロスする時点の位相との位相差θTBを測定する。
【0033】
次に、算出部26は、記憶部27に記憶されている位相補正用テーブル271を参照し、ステップS21においてBユニットで測定した回転数とバッテリ電圧に対応するAユニットの位相差θTAを取得する(ステップS22)。
【0034】
次に、算出部26は、ステップS22において位相補正用テーブル271を参照して取得した位相差θTAと、ステップS21においてBユニットで測定した位相差θTBに基づき補正位相差ΔθTAB(=θTA−θTB)を算出して、記憶部27に補正位相差ΔθTABデータ273として記憶する(ステップS23)。なお、
図7に示すように、位相差(θTA)は、基準となるユニットAのセンサ取付位置に対応する取付誤差(θTAc)と、基準となるユニットAの駆動状態に応じて変化する位相差(θTAd)との合計の値である。また、位相差(θTB)は、測定対象のユニットBのセンサ取付位置に対応する取付誤差(θTBc)と、測定対象のユニットBの駆動状態に応じて変化する位相差(θTBd)との合計の値である。
【0035】
次に、
図6は、
図1に示す発電装置100(Bユニットの場合)の動作例(通電制御において通電位相差θBを決定する処理)を示すフローチャートである。この場合、通電位相差θBは、
図8に示すように、通電位相差θAと同様、位置センサ13から入力した位置センサ信号を位置センサ信号検出部21で2値化した信号が立ち下がった時点の位相から、通電パターンを切り替える時点の位相までの位相差である。Bユニットにおいて、ACG1の出力を最大にする通電制御において用いる通電位相差θBを決定する場合、算出部26は、まず、ACG1の回転数とバッテリ電圧を測定する(ステップS31)。次に、算出部26は、通電制御用テーブル272(
図3)を参照し、ステップS31においてBユニットで測定した回転数とバッテリ電圧に対応するAユニットの最大時通電位相差θpeakAを取得する(ステップS32)。
【0036】
次に、算出部26は、ステップS32において通電制御用テーブル272を参照して取得したAユニットの最大時通電位相差θpeakAと記憶している補正位相差ΔθTABデータ273に基づき、Bユニットの通電位相差θBを(θB=θpeakA−ΔθTAB)式にて算出する(ステップS33)。次に、算出部26は、ステップS33において算出した通電位相差θBで通電制御を実行する(ステップS34)。
【0037】
以上のように通電位相差θBを決定して通電制御を行うことで、発電装置100(Bユニット)は、
図8に示すように、通電位相をθWmaxで制御して、ACG1の出力を最大値に制御することができる。
【0038】
本実施形態によれば、記憶部27は、基準となるユニットの位相差(θTA)と駆動状態に関するデータとの対応付けされた位相補正用テーブル271(基準データ)を記憶する。また、算出部26は、測定対象のBユニットの駆動状態を測定するとともに当該駆動状態に対応する測定対象のBユニットの位相差(θTB)を測定する。さらに、算出部26は、当該駆動状態に対応する基準となるAユニットの位相差(θTA)を記憶部27を参照して取得し、測定した位相差(θTB)と取得した基準となるAユニットの位相差(θTA)との差分である補正位相差(ΔθTAB=θTA−θTB)を算出する。この構成によれば、記憶部27が記憶する基準となるAユニットの位相差(θTA)と、測定対象のBユニットで測定された位相差(θTB)とを直接比較して差分をとることで補正位相差(ΔθTAB)が算出される。したがって、基準となるAユニットの位相差(θTA)と測定対象のBユニットの位相差(θTB)との差分を取ることで誘起電圧に係る位相差を互いに打ち消すことができる。よって、誘起電圧に係る位相差を推定する必要がない。それ故、本実施形態によれば、位置検出精度を向上し、通電制御を精度よく行うことができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、例えば、
図1に示す各ブロックの一部または全部を分割したり、他のブロックの一部または全部と統合したりしてもよい。すなわち、例えば、算出部26と回転数判別部23と記憶部27の各一部または各全部を統合することができる。また、発電制御装置2と位置センサ13と一体的に構成し、上述したように発電制御装置2と位置センサ13とを組み合わせものが発電制御装置2であるとしてもよい。
【0040】
また、本発明の実施の形態は、上記の実施形態に限定されない。例えば、本発明の実施形態は、次のようなものとすることができる。
【0041】
(1)上記実施形態では、駆動状態に関するデータとして
図2に示すバッテリ電圧と回転数とを用いることで位相補正用テーブル271(基準データ)を3次元テーブルとして構成している。しかし、位相補正用テーブル271の構成は限定されず、例えば、駆動状態に関するデータをバッテリ電圧と回転数のいずれか一方として、位相補正用テーブル271(基準データ)を2次元テーブルとして構成してもよい。例えば、回転数を1つにしてバッテリ電圧を一定の範囲で変化させ、位相差θTAを測定した結果に基づいて位相補正用テーブル271(基準データ)を構成してもよい。あるいは、バッテリ電圧を1つにして回転数を一定の範囲で変化させ、位相差θTAを測定した結果に基づいて位相補正用テーブル271(基準データ)を構成してもよい。
【0042】
(2)上記実施形態では、位相差θTAをACG1の出力電圧(相電圧)のゼロクロス点を基準として設定したが、相電流のゼロクロス点を基準として設定してもよい。また、バッテリ電圧は、インバータ回路部24の直流出力電圧(ACG1の出力電圧)としてもよい。
【0043】
(3)また、ゼロクロス点に限らず、所定電圧(例えば数ボルト)あるいは所定電流(例えば数アンペア)となる時点を基準として位相差θTAを設定してもよい。
【0044】
(4)上記実施形態では、駆動状態に関するデータとしてバッテリ電圧と回転数とを用いているが、例えばACG1の温度や発電制御装置2の温度、あるいはバッテリ周囲温度等を要素として(パラメータとして)加えて、位相差θTAを設定してもよい。
【0045】
例えば、(1)〜(4)の組み合わせから、計測した発電制御装置2の温度とACG1の出力電圧をパラメータとするとともに、計測したACG1の三相出力電流が所定の電流(例えば3A)を通過する時点の位相と位置センサ信号の入力位相との位相差を位相差θTAとすることができる。
【0046】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
本実施形態の発電制御装置は、発電機のロータの回転位置を検出する位置センサが出力した位置検出信号を入力する入力部と、発電機が出力した3相交流を整流した直流電力をバッテリに供給するインバータ回路部と、発電機の出力電圧が所定の波形を示す位相と位置検出信号の位相との差分である位相差であって、基準となるユニットの位相差と駆動状態に関するデータとの対応付けされた基準データを記憶する記憶部と、測定対象のユニットの駆動状態を測定しかつ当該駆動状態に対応する測定対象のユニットの位相差を測定し、当該駆動状態に対応する基準となるユニットの位相差を記憶部を参照して取得し、測定した位相差と基準となるユニットの位相との差分である補正位相差を算出する算出部と、算出した補正位相差に応じて通電制御を行う駆動信号生成部とを備える。