(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6383904
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】松脂ケース
(51)【国際特許分類】
G10G 7/00 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
G10G7/00
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-47264(P2018-47264)
(22)【出願日】2018年2月27日
【審査請求日】2018年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518088783
【氏名又は名称】岡田 ひかり
(72)【発明者】
【氏名】岡田 ひかり
【審査官】
上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3186689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 7/00−7/02
A45C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の底部が開口し、他方の底部の中央部に貫通穴を有し、松脂を収容する筒状の容器本体と、
前記貫通穴に挿通され、一端に前記松脂を支持する押出しロッドと、
前記押出しロッドを前記松脂が前記容器本体に収容される方向に付勢する弾性体と、
を備える松脂ケース。
【請求項2】
前記容器本体と前記松脂は、
いずれも前記押出しロッドを中心として回転対称に配置される請求項1に記載の松脂ケース。
【請求項3】
前記容器本体は、
収容する前記松脂よりも大きな内径を有する円筒状の容器である請求項1又は請求項2に記載の松脂ケース。
【請求項4】
前記貫通穴は、
前記貫通穴の周壁面に、内側に向かって突出する突起を上下位置にそれぞれ一対ずつ、ずらして備える請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の松脂ケース。
【請求項5】
前記押出しロッドは、
螺旋状にねじり加工された凹部を有するロッド本体と、
前記ロッド本体の上端部に配置されるレバーと、
前記ロッド本体の下端部に接合される前記松脂と、
前記ロッド本体の下端の前記松脂の上方に配置されるリングと、
を備える請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の松脂ケース。
【請求項6】
前記レバーは、
下方に前記ロッド本体の上端を収容する収容室と、
前記ロッド本体の上端の外径よりも大きな内径の開口を有する収容室の底部と、
前記収容室の内部に設置される引っ掛け部と、
を備える請求項5に記載の松脂ケース。
【請求項7】
前記リングと前記ロッド本体の下端の間に、弓毛の幅方向の移動を規制するガイドを備える請求項5に記載の松脂ケース。
【請求項8】
前記ガイドは、
前記松脂の外径より大きく、前記容器本体の内径よりも小さい直径を有し、中心部に前記ロッド本体の外径よりも内径が大きい貫通孔を有する円形板と、
前記円形板の一部の側面から前記容器本体の高さ方向に延びる一対のガイド板と、
を備える請求項7に記載の松脂ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、松脂ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器の弓毛に塗布する松脂は衝撃にとても弱く、粉砕しやすい。破損の最も大きな原因となるのは、ケースからの「取り出し辛さ・収納し辛さ」による使用時の手元からの落下である。
【0003】
松脂は、別体に形成された容器のキャップと容器、または布製のポーチに収められている仕様である。使用時には、松脂を収納されているケースやポーチから取り出し、使用後に再び容器に収納する必要があり、かなりの手間がかかる。
【0004】
この点に関し、松脂全体を、溝を設けたケースに収納し、松脂を弾性体によって溝の方向に付勢する技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
しかし、この技術では、松脂の収納は手動で行わなくてはならない。そのため、使用中に製品を落下させてしまった場合、松脂は露出しているため、破損する恐れがあり、使い勝手の良いものとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中華人民共和国 実用新案登録第93242940.8号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、松脂の収納・取り出しが容易で、使用中の落下による粉砕を防ぐことのできる松脂ケースが求められている。
【0008】
また、松脂の塗布において、長さのある弓毛を小さな松脂上で滑らせことは簡単な作業ではない。このため、弓毛に効率よく塗布することができる松脂が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る松脂ケースは、一方の底部が開口し、他方の底部の中央部に貫通穴を有し、松脂を収容する筒状の容器本体と、前記貫通穴に挿通され、一端に前記松脂を支持する押出しロッドと、前記押出しロッドを前記松脂が前記容器本体に収容される方向に付勢する弾性体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、使用中の落下による松脂の粉砕を防ぐことのできるケースを提供する。また、このケースは松脂を効率よく弓毛に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態にかかる通常時の松脂ケースの斜視図。
【
図2】第1の実施形態にかかる使用時の松脂ケースの斜視図。
【
図3】第1の実施形態にかかる松脂ケースのレバーとロッド上部との接合状態を示した図。
【
図4】第2の実施形態にかかるロッドを備えた通常時の松脂ケースの斜視図。
【
図5】第2の実施形態にかかる松脂ケースの底板の貫通穴の内部を上方と下方から見た模式図。
【
図6】第2の実施形態にかかる松脂ケースのロッド本体を貫通穴dに挿通した状態を模式的に示す図。
【
図7】第2の実施形態にかかる松脂ケースの螺旋状にねじり加工されたロッドの側面図。
【
図8】第2の実施形態にかかる松脂ケースのロッド本体とレバーとの接合状態を示した模式図。
【
図9】第3の実施形態にかかる松脂ケースの使用中の斜視図。
【
図10(A)】第3の実施形態にかかる松脂ケースのガイドを介した松脂とロッド下端との接合状態を示した斜視図。
【
図10(B)】
図10(A)に示す松脂ケースを横から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる松脂ケースを、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本実施形態の通常時の松脂ケースの斜視図、
図2は松脂ケースの使用中の斜視図である。
【0015】
図1、
図2に示すように、松脂ケースは、松脂lを収容する円筒状の容器本体fと、松脂を容器本体から押し出すための押出しロッドcを主に有する。
【0016】
図1および
図2から分かるように、容器本体fと松脂lは、いずれも押出しロッドcを中心として回転対称に位置している。
【0017】
押出しロッドcは、
図1に示すように、容器本体fの貫通穴dを貫通して、容器本体fに対して上下方向に移動可能に設けられている。押出しロッドcは、ロッド本体と、ロッド本体の上端に取り付けられた円盤状のレバーaと、コイル状のバネbを有する。
【0018】
バネbは、ロッド本体および貫通穴dより大きい外径を有し、ロッド本体を囲み、ロッド本体を中心にしてレバーaと容器本体fの底板eの間に取り付けられている。レバーaは、ユーザーが親指などで押し込んで操作するための部分であり、容器本体fの直径よりも小さい。バネbはロッド本体を松脂lとは反対の方向、すなわち、レバーaと底板eが互いに離れる方向に付勢する。
【0019】
容器本体fは、円柱状の松脂lを収容するために松脂lよりも一回り大きな内径を有する円筒状の容器である。容器本体の上側には容器本体より大きな直径を有する底板eが取り付けられている。容器本体fの底板eと反対側は、後述するように松脂lが露出するように開口部が設けられる。底板eの中心部にロッド本体が上下移動するための貫通穴dが設けられる。
【0020】
松脂lは、ロッド本体の下端oに支持される。ロッド本体は、レバーaと接合する一端(ロッド上端n。
図7参照。)と松脂lと接合する他端(ロッド下端o)は、それぞれ、ロッド本体の直径よりやや大きい直径の円盤状の形状を有する。ロッド下端oの少し上方にはロッド下端oと同程度の直径のリングgが取り付けられている。
【0021】
図3は、レバーaとロッド上部との接合状態を模式的に示した図である。
図3に示すように、レバーaの下方は、ロッド上端nを収容する収容室を有し、収容室は底部にロッド上端nの外形よりも一回り小さな内径の開口が形成されている。この収容室の底部に、ロッド上端nが引っ掛け部pに吊るされている。
なお、松脂lはロッド下端oに接着剤などによって接合するか、あるいはロッド下端oを松脂lに埋め込んでもよい。
【0022】
以上に述べたように、本実施形態の松脂ケースは、松脂lを収容する、一方の底部が開口し他方の底部の中央部に貫通穴を有する筒状の容器本体fと、円盤状のレバーaと、前記貫通穴に挿通され、一端に松脂fを支持する押出しロッドcと、松脂lを容器本体fの内部に収容する方向に押出しロッドcを付勢する弾性体(バネb)と、を備える。松脂lを使用する場合には、押出しロッドcの上端部に取り付けられるレバーaを押圧する。レバーaが押圧されると押出しロッドcは松脂lの方向に変位し、松脂lは容器本体から露出する。押圧力が無くなると、弾性体の弾性力により松脂lは容器本体fに収容される。
【0023】
従って、レバーaを垂直に押圧することにより押出しロッドcと接合した松脂lを容器本体fから露出させ、レバーへの押圧力が無くなると押出しロッドcを付勢するバネの弾性力によって松脂lが容器本体fに再び収容されることにより、使用中の落下時の松脂の粉砕を防ぐ効果がある。
【0025】
図4は、本実施形態にかかるロッド本体に螺旋状のねじり加工が施された押出しロッドを備えた、通常時の松脂ケースを示す図である。
【0026】
図5は、本実施形態にかかる松脂ケースの底板eの貫通穴dの内部を上方(
図5(A))と下方(
図5(B))から見た模式図である。底板eは貫通穴dを形成している周壁面に、貫通穴dの内側に向かって突出する一対の突起mを上下位置にそれぞれ有する。これらの突起mは、ロッド本体が螺旋状にねじり加工されたことによってできた凹部qと噛み合う。第2の実施形態の松脂ケースの構成は、ねじり加工がされたロッド本体と貫通穴dに突起mを備えること以外、第1の実施形態の松脂ケースの構成と同様である。従って、以下相違点のみ説明する。
【0027】
図6は、ロッド本体を貫通穴dに挿通した状態を模式的に示す図である。
図6に示すように、押出しロッドcが容器本体fに向かって押し込められると、ロッド本体表面の凹部qが突起mに沿いながら滑り移動するために、ロッド本体の上下移動によってロッド本体は回転することができる。
【0028】
図7はロッド本体の側面図、
図8はロッド本体をレバーaに取り付けた状態を模式的に示す図である。
図7のように、ねじり加工はロッド本体にのみ備えられ、
図8のようにレバーaの引っ掛け部pにロッド上端が回転できるように吊るされているため、ロッド本体が回転してもレバーは回転しない
【0029】
以上に述べたように、本実施形態の松脂ケースは、ロッド本体がねじり加工が施され、貫通穴dがロッド本体のねじり加工と噛み合う突起mを備える。
【0030】
従って、この実施形態の松脂ケースは、落下による松脂の粉砕を防止するだけでなく、押出しロッドcを押し込むことによって押出しロッドcに取り付けられた松脂lを回転させながら容器本体fから露出することができる。それゆえ、弦楽器の使用者は弓毛を松脂に接触させる際に、松脂の回転軸周りの位置を変更できるため、松脂の片減りや弓毛が松脂の同位置を摺動することによる松脂溝の形成も防止できるという効果がある。
【0032】
図9は、本実施形態にかかるガイドiを備えた松脂ケースの使用中の斜視図である。
図10(A)は
図9のガイドiの付近の拡大図である。ガイドiは
図10(A)に示すように、松脂lより大きく容器本体fよりも小さい直径の円形板hと、円形板hの外周の一部の領域から松脂lの側面の一部を覆うように容器本体fの高さ方向に延びる一対のガイド板kを有する。第3の実施形態の松脂ケースの構成は、ロッド下端oとリングgの間にガイドiを備える以外、第2の実施形態のケースの構成と同様である。
【0033】
本実施形態にかかる一対のガイド板kは、互いに向き合うように設置されて、それぞれが、円筒の側面を縦に割ったような、すなわち、容器本体fの内側面に沿うような湾曲形状を有する。また、ガイド板kは松脂lの高さより長く容器本体fの高さよりも短い高さを有する。それゆえ、松脂に弓を接触させるときに、松脂lの一対のガイド板kで挟まれた領域から弓が外れることが防止される。円形板hの中心にはロッド下端o及びリングgよりも一回り小さい直径を有する貫通孔jが形成されている。
【0034】
上記の貫通孔jを通して、ロッド下端oが松脂lと接合している。
図10(A)に示すように、ガイドiの円形板hがロッド下端oとリングgの間に位置するようにロッド本体はガイドiに取り付けられる。このため、ガイドiは松脂l及び押出しロッドcとは直接結合しておらず、押出しロッドcが回転すると松脂lは回転するが、ガイドiは回転しない。
【0035】
図10(B)は、
図10(A)に示したガイドiを円形板hの周方向において90度異なる位置から見たガイドi及び松脂lの様子を示す図である。
図10(B)に示すように、ガイドiは互いに松脂lの回転軸に対して対称となる位置に設置される。
【0036】
ガイドiは弓毛の幅方向の移動を規制する。ガイドiの素材は、弓毛を傷つけにくい任意の材料が使用できる。例えば、プラスチックの板にマイクロファイバーの布を貼ったものであれば、弓毛に当たっても傷めにくく、塗布時に発生する松脂の細かい粉も吸着することができる。容器本体fは、落下時の衝撃を吸収できるようなゴムやスポンジ等の弾性を有する素材によって作られることが望ましい。
【0037】
以上に述べたように、本実施形態の松脂ケースは、ロッド下端oとリングgの間に、松脂lの側面の一部を覆うように容器本体fの高さ方向に延びる一対のガイド板kを有するガイドiを備える
【0038】
従って、本実施形態の松脂ケースは、落下による松脂の粉砕を防止し、松脂の片減りを防止するだけでなく、併せて塗布中に弓が松脂から逸れることなく常に接触させることができるという効果がある。それゆえ、弦楽器の使用者は効率よく弓毛に松脂を塗布することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の松脂ケースを使用することにより、松脂の落下による破損を防止することができ、松脂の片減りを防止することができ、また、松脂を弓毛に効率的に塗布することができる。それゆえ、本発明により、松脂という資源を有効利用でき、弦楽器の使用者がより演奏に集中することができるようになる。
【符号の説明】
【0040】
aレバー
bバネ
c押出しロッド
d貫通穴
e底板
f容器本体
gリング
h円形板
iガイド
j貫通孔
kガイド板
l松脂
m突起
nロッド上端
oロッド下端
p引っ掛け部
q凹部
【要約】
【課題】 使用中の落下による松脂の粉砕を防ぐことのできる松脂ケースを提供する。
【解決手段】 松脂ケースは、松脂lを収容する円筒状の容器本体fと、松脂lを先端に有し、松脂lを容器本体fに収容するための弾性体(コイル状のバネ)を有する押出しロッドcと、を備える。弾性体は、押出しロッドcを松脂lが容器本体fに収容される方向に付勢する。松脂lを使用する場合には、押出しロッドcの上端部に取り付けられるレバーaを押圧する。レバーaが押圧されると押出しロッドcは松脂lの方向に変位し、松脂lは容器本体から露出する。押圧力が無くなると、弾性体の弾性力により松脂lは容器本体fに収容される。
【選択図】
図1