【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、絶縁体に近いDLC膜の利用範囲を拡大する目的で、高周波電源を用いたプラズマCVD法により導電性を有したDLC膜を製造する方法である。
【0010】
また、本発明の一態様では、従来、導電性のDLC膜を製造するためには複数の原料や後処理が必要であったのに対して、1回の処理で導電性DLC膜の成膜が可能になるとともに、その導電性の強弱の調整も可能である。
【0011】
また、本発明の一態様は、添加元素やアニール処理等の後処理によらない、低周波によるプラズマCVD法を用いて成膜された導電性DLC膜である。
【0012】
また、本発明の一態様は、周波数の低い高周波電源によって基板に低周波をパルス状に印加することにより、周波数が低くても容易にプラズマを保持できるプラズマCVD法である。このプラズマCVD法によって高い導電性を有するDLC膜を製造することが可能となる。別言すれば、基板に印加される電圧の周波数が低いほどDLC膜の導電性は高くなるが、周波数が低くなるとプラズマを保持することが困難となる。そこで、低周波電源によって基板に低周波をパルス状に印加することで、周波数が低くてもプラズマを連続的に保持することができる。
【0013】
さらに、本発明の種々の態様について以下に説明する。
[1]チャンバーと、
前記チャンバー内に配置され、基材を保持する基材ホルダーと、
前記チャンバーに繋げられ、前記チャンバー内に原料ガスを導入するガス導入経路と、
前記チャンバー内に5kHz以上500kHz以下の高周波出力を、0.02ms以上20ms以下の周期で10%以上90%以下のDUTY比のパルス状に供給する出力供給機構と、
を具備し、
前記DUTY比は、1周期の間で前記基材ホルダーに高周波出力が印加される期間の比率であり、
前記出力供給機構から供給された前記高周波出力により前記チャンバー内にプラズマを発生させて前記基材に膜を成膜することを特徴とするプラズマCVD装置。
【0014】
[2]上記[1]において、
前記高周波出力の周波数が50kHz以上300kHz以下であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【0015】
[3]上記[1]または[2]において、
前記基材ホルダーに保持された前記基材の温度を調整する温度調整機構を有し、
前記原料ガスは鎖式炭化水素及び環式炭化水素の少なくとも一方を有し、
前記膜は導電性を有するDLC膜であり、
前記基材に前記DLC膜を成膜する際の温度が100℃以上であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【0016】
[4]上記[3]において、
前記鎖式炭化水素がメタン、エタン、アセチレン、プロパン及びブタンの群から選択された一つ又は複数の炭化水素であり、
前記環式炭化水素がベンゼン及びトルエンの少なくとも一方の炭化水素であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【0017】
[5]チャンバーと、
前記チャンバー内に配置され、基材を保持する基材ホルダーと、
前記基材ホルダーに保持された前記基材の温度を調整する温度調整機構と、
前記チャンバーに繋げられ、前記チャンバー内に鎖式炭化水素を導入するガス導入経路と、
前記チャンバー内に5kHz以上500kHz以下の高周波出力を供給する高周波電源と、
を具備し、
前記高周波電源から供給された高周波出力により前記チャンバー内にプラズマを発生させて前記基材に導電性を有するDLC膜を100℃以上の温度で成膜することを特徴とするプラズマCVD装置。
【0018】
[6]上記[5]において、
前記鎖式炭化水素がメタン、エタン、アセチレン、プロパン及びブタンの群から選択された一つ又は複数の炭化水素であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【0019】
[7]チャンバーと、
前記チャンバー内に配置され、基材を保持する基材ホルダーと、
前記基材ホルダーに保持された前記基材の温度を調整する温度調整機構と、
前記チャンバーに繋げられ、前記チャンバー内に環式炭化水素を導入するガス導入経路と、
前記チャンバー内に5kHz以上500kHz以下の高周波出力を供給する高周波電源と、
を具備し、
前記高周波電源から供給された高周波出力により前記チャンバー内にプラズマを発生させて前記基材に導電性を有するDLC膜を200℃以上の温度で成膜することを特徴とするプラズマCVD装置。
【0020】
[8]上記[7]において、
前記環式炭化水素がベンゼン及びトルエンの少なくとも一方の炭化水素であることを特徴とするプラズマCVD装置。
【0021】
[8−1]上記[1]乃至[8]のいずれか一において、
前記チャンバー内を0.6Pa以下(好ましくは0.015〜0.526Pa、より好ましくは0.037〜0.301Pa、さらに好ましくは0.150Pa)の圧力とする真空排気機構を有することを特徴とするプラズマCVD装置。
【0022】
[9]5kHz以上500kHz以下の高周波出力を、0.02ms以上20ms以下の周期で10%以上90%以下のDUTY比のパルス状に基材に供給することによって原料ガスのプラズマを発生させることにより、前記基材に膜を成膜するものであり、
前記DUTY比は、1周期の間で前記基材に高周波出力が印加される期間の比率であることを特徴とする膜の製造方法。
【0023】
[10]上記[9]において、
前記高周波出力の周波数が50kHz以上300kHz以下であることを特徴とする膜の製造方法。
【0024】
[11]上記[9]または[10]において、
前記原料ガスは鎖式炭化水素及び環式炭化水素の少なくとも一方を有し、
前記膜は導電性を有するDLC膜であり、
前記基材に前記DLC膜を成膜する際の温度が100℃以上であることを特徴とする膜の製造方法。
【0025】
[12]上記[11]において、
前記鎖式炭化水素がメタン、エタン、アセチレン、プロパン及びブタンの群から選択された一つ又は複数の炭化水素であり、
前記環式炭化水素がベンゼン及びトルエンの少なくとも一方の炭化水素であることを特徴とする膜の製造方法。
【0026】
[13]5kHz以上500kHz以下の高周波出力によって原料ガスのプラズマを発生させることにより、基材に導電性を有するDLC膜を100℃以上の温度で成膜するものであり、
前記原料ガスは鎖式炭化水素を有することを特徴とする膜の製造方法。
【0027】
[14]上記[13]において、
前記鎖式炭化水素がメタン、エタン、アセチレン、プロパン及びブタンの群から選択された一つ又は複数の炭化水素であることを特徴とする膜の製造方法。
【0028】
[15]5kHz以上500kHz以下の高周波出力によって原料ガスのプラズマを発生させることにより、基材に導電性を有するDLC膜を200℃以上の温度で成膜するものであり、
前記原料ガスは環式炭化水素を有することを特徴とする膜の製造方法。
【0029】
[16]上記[15]において、
前記環式炭化水素がベンゼン及びトルエンの少なくとも一方の炭化水素であることを特徴とする膜の製造方法。
【0030】
[17]上記[11]乃至[16]のいずれか一項において、
前記DLC膜の体積抵抗率が0.001Ω・cm以上50Ω・cm以下であることを特徴とする膜の製造方法。
【0031】
[18]上記[11]乃至[17]において、
前記基材に膜を成膜した後に、当該膜に300℃以上(好ましくは450℃以上)の熱処理を施すことを特徴とする膜の製造方法。
なお、この熱処理は、真空雰囲気で行うことが好ましい。