特許第6383925号(P6383925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6383925内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6383925
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20180827BHJP
   F02B 37/10 20060101ALI20180827BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20180827BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20180827BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20180827BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20180827BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F02B37/00 302B
   F02B37/10 Z
   F02B37/18 A
   F02D29/02 A
   F02D29/04 H
   F01N5/02 F
   B63H21/14
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-121677(P2017-121677)
(22)【出願日】2017年6月21日
【審査請求日】2017年11月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】坂入 信之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 貴士
(72)【発明者】
【氏名】島田 一孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 高弘
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/175194(WO,A1)
【文献】 特開2016−196870(JP,A)
【文献】 特開2015−090103(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0174541(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/179656(WO,A1)
【文献】 特開2011−214458(JP,A)
【文献】 特開2008−111384(JP,A)
【文献】 特開2011−214461(JP,A)
【文献】 特開2011−202611(JP,A)
【文献】 特開2014−234761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00−39/16
F02D 23/00
F02D 29/00−04
F15B 11/00−22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧で作動する作動機器を電子制御することにより駆動される内燃機関と、
前記内燃機関の排ガス路に配設されて前記内燃機関の排ガスにより回転駆動されて前記内燃機関の吸気管に過給された給気を供給する過給機と、
前記過給機に連結されて前記過給機により回転駆動されて油圧を生成させる第1油圧ポンプと、
電動機の回転により回転駆動されて油圧を生成させる第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプで生成した油圧と前記第2油圧ポンプで生成した油圧との間で前記作動機器へ供給する油圧を調整する油圧調整機構と、
前記作動機器を電子制御するコントローラと、を備え、
前記作動機器へ供給する油圧は、前記第1油圧ポンプで生成した油圧及び前記第2油圧ポンプで生成した油圧の少なくともいずれか一方の油圧であり、
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、所定量未満の条件では、前記作動機器へ供給される油圧は前記第2油圧ポンプで生成した油圧であって、前記作動機器へ供給される油圧量は、前記第2油圧ポンプで生成した油圧量であり、前記条件以外のとき、前記作動機器へ供給される油圧は前記第1油圧ポンプで生成した油圧を含むように、前記油圧調整機構を制御する、ことを特徴とする内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項2】
前記所定量は、前記作動機器を作動するために必要な油圧の必要量である、請求項1に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、所定量未満の条件で、前記第1油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給せず、前記第2油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給し、
前記条件以外のとき、前記第2油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給せず、前記第1油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給するように、前記油圧調整機構を制御する、請求項2に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項4】
前記所定量は、前記内燃機関の負荷率が70%以下の負荷率に対応した前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項5】
前記内燃機関には、前記内燃機関のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を生成させる機関駆動油圧ポンプが設けられていない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項6】
前記過給機余剰動力回収装置は、前記過給機のタービンへ送る排ガス流量を制御する制御弁有し、
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプにより生成する油圧を前記作動機器へ供給する場合、前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、前記油圧の必要量に対して過剰とならず前記必要量に対応するように前記制御弁の開度を制御する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項7】
前記内燃機関の前記過給機と並列配置されて、前記排ガスの一部を前記過給機のタービンを経由することなく、外部に排気するバイパス排ガス路と、
前記バイパス排ガス路における排ガス流量を制御する排気バイパス弁と、有し、
前記制御弁は、前記排気バイパス弁である、請求項6に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置が搭載され、
前記内燃機関は、船舶の推進用エンジンである、ことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンやガスエンジンなどの内燃機関では、エンジンの排ガスによって過給機(ターボチャージャ)のタービンを回転駆動し、回転駆動したタービンにより回転される圧縮機によって給気密度を高めて、エンジンの出力向上を図っている。
【0003】
しかしながら、このように過給機を取り付けて排気エネルギの有効利用を図ったとしても、エンジンの高負荷時(高出力時)などには排気エネルギが余剰となり、この余剰排気エネルギを無駄なく利用することが、燃費向上のみならず環境保護の面からも強く要請されている。
【0004】
このエンジンの余剰排気エネルギを有効利用するものとして、過給機に連結されて過給機により回転駆動される油圧ポンプで油圧を生成させ、この油圧を、内燃機関を駆動させる作動機器の駆動源として油圧機構に供給する過給機余剰動力回収装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6012810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この過給機余剰動力回収装置では、内燃機関のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を生成させる機関駆動油圧ポンプが設けられている。この機関駆動油圧ポンプは、内燃機関の負荷率が低く、過給機により回転駆動される過給機駆動油圧ポンプが生成する油圧生成量が少ない場合、作動機器の駆動源として油圧を供給する。
しかし、機関駆動用油圧ポンプ及び機関駆動油圧ポンプとクランク軸を接続させるギアボックスは大きな構造体であり高コストである。このため、大きな設置スペースを要し、高価な過給機余剰動力回収装置となり、船舶における推進エンジンとして用いる場合不利となる。
【0007】
そこで、本発明は、設置スペースが過大とならず、低コストで、余剰排気エネルギを有効利用することができる内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び、この過給機余剰動力回収装置を用いた船舶を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、内燃機関の過給機余剰動力回収装置である。当該装置は、 油圧で作動する作動機器を電子制御することにより駆動される内燃機関と、
前記内燃機関の排ガス路に配設されて前記内燃機関の排ガスにより回転駆動されて前記内燃機関の吸気管に過給された給気を供給する過給機と、
前記過給機に連結されて前記過給機により回転駆動されて油圧を生成させる第1油圧ポンプと、
電動機の回転により回転駆動されて油圧を生成させる第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプで生成した油圧と前記第2油圧ポンプで生成した油圧との間で前記作動機器へ供給する油圧を調整する油圧調整機構と、
前記作動機器を電子制御するコントローラと、を備え、
前記作動機器へ供給する油圧は、前記第1油圧ポンプで生成した油圧及び前記第2油圧ポンプで生成した油圧の少なくともいずれか一方の油圧であり、
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、所定量未満の条件では、前記作動機器へ供給される油圧は前記第2油圧ポンプで生成した油圧であって、前記作動機器へ供給される油圧量は、前記第2油圧ポンプで生成した油圧量であり、前記条件以外のとき、前記作動機器へ供給される油圧は前記第1油圧ポンプで生成した油圧を含むように、前記油圧調整機構を制御する。
【0009】
前記所定量は、前記作動機器を作動するために必要な油圧の必要量である、ことが好ましい。
【0010】
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、所定量未満の条件で、前記第1油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給せず、前記第2油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給し、
前記条件以外のとき、前記第2油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給せず、前記第1油圧ポンプで生成した油圧を前記作動機器へ供給するように、前記油圧調整機構を制御する、ことが好ましい。
【0011】
前記所定量は、前記内燃機関の負荷率が70%以下の負荷率に対応した前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量である、ことが好ましい。
【0012】
前記内燃機関には、前記内燃機関のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を生成させる機関駆動油圧ポンプが設けられていない、ことが好ましい。
【0013】
前記過給機余剰動力回収装置は、前記過給機のタービンへ送る排ガス流量を制御する制御弁有し、
前記コントローラは、前記第1油圧ポンプにより生成する油圧を前記作動機器へ供給する場合、前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、前記油圧の必要量に対して過剰とならず前記必要量に対応するように前記制御弁の開度を制御する、ことが好ましい。
【0014】
前記内燃機関の前記過給機と並列配置されて、前記排ガスの一部を前記過給機のタービンを経由することなく、外部に排気するバイパス排ガス路と、
前記バイパス排ガス路における排ガス流量を制御する排気バイパス弁と、有し、
前記制御弁は、前記排気バイパス弁である、ことが好ましい。
【0015】
本発明の他の一態様は、前記内燃機関の過給機余剰動力回収装置が搭載され、前記内燃機関は、船舶の推進用エンジンである、ことを特徴とする船舶である。
【発明の効果】
【0016】
上記過給機余剰動力回収装置及びこの装置を搭載した船舶によれば、設置スペースが過大とならず、低コストで、余剰排気エネルギを有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の過給機余剰動力回収装置の主な構成を示す図である。
図2】本実施形態の過給機余剰動力回収装置の過給機周りの装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態の過給機余剰動力回収装置(以降、回収装置という)100の主な構成を示す図である。
回収装置100は、内燃機関1に付随して設けられる装置である。回収装置100は、過給機に連結されて過給機により回転駆動される油圧ポンプに油圧を生成させ、この油圧を、内燃機関を駆動させる作動機器(例えば排気弁や燃料噴射弁)の駆動源となる油圧として供給する。このような回収装置100の処理を排気エネルギ回収処理という。以下、回収装置100及び排気エネルギ回収処理を説明する。
【0019】
回収装置100は、内燃機関1と、過給機(第1過給機)5と、油圧ポンプ10と、油圧機構20と、コントローラ50と、油圧制御ユニット51と、を主に備える。
【0020】
内燃機関1は、特に制限されないが、一例として、船舶に搭載される推進用の低速ディーゼルエンジン(動力源、内燃機関)が挙げられる。内燃機関1は、内燃機関1を駆動させるために必要な、例えば排気弁、燃料噴射弁等の作動機器が油圧を介して電子制御される電子制御機関である。内燃機関1には過給機5が設けられている。
内燃機関1には、内燃機関1のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を生成させる機関駆動油圧ポンプが設けられない。このため、機関駆動用ポンプとクランク軸を接続するギアボックスも設けられない。
【0021】
過給機5は、内燃機関1の排ガスにより回転駆動されて内燃機関1の吸気管に過給された給気を供給する。過給機5は、具体的には、圧縮機6とタービン7とを備える。圧縮機6とタービン7は、回転軸8で連結される。内燃機関1の排ガスによりタービン7が回転駆動され、タービン7によって圧縮機6が回転する。これにより内燃機関1の給気密度が高められ、エンジンの出力が向上する。
【0022】
なお、過給機5は、必ずしもその段数が単段のものに限定されるものではない。また、内燃機関1は船舶用エンジンに限定されず、形式も低速ディーゼルエンジンに限定されるものではない。天然ガス、都市ガス等を燃料とするガスエンジン、他のすべての形式の電子制御機関が含まれる。
【0023】
図1に示すように、過給機5の回転軸8に変速機9が連結され、変速機9に可変容量型の第1油圧ポンプ10が連結される。
上述の第1油圧ポンプ10は、図1において1台であるが、あくまでも一例であり、複数台としてもよい。
【0024】
第1油圧ポンプ10は、油圧機構20の中に組み込まれる。
油圧機構20は、内燃機関1の各種作動機器で構成される油圧制御ユニット51に油圧を供給して作動機器を作動させて内燃機関1を駆動させる機構である。油圧機構20は、油路21,22,23,24,25,26と、油圧調整機構30と、第2油圧ポンプ53と、を主に備える。この他に図示されないが、逆止弁や電磁開閉弁が設けられてもよい。
油圧機構20において、第2油圧ポンプ53の一方の吐出口53aは、油路22を通して油圧調整機構30に接続されている。第1油圧ポンプ10の吐出口10aは、油路21を通して、油圧調整機構30に接続されている。油圧調整機構30は、油路23を通して油圧制御ユニット51に接続されている。油圧制御ユニット51は、油路24を通して、第1油圧ポンプ10の吐出口10b及び第2油圧ポンプ53の吐出口53bに接続されている。
【0025】
油圧調整機構30は、コントローラ50の制御により、第1油圧ポンプ10で生成した油圧と第2油圧ポンプ53で生成した油圧との間で油圧制御ユニット51へ供給する油圧を調整する。
【0026】
コントローラ50は、油圧制御ユニット51を電子制御し、内燃機関1の駆動を制御する部分である。コントトーラ50は、内燃機関1の負荷率の情報を取得し、センサにより例えば給気の吸い込み温度、過給機5の下流側の掃気圧等を検出し、後述するように、この検出した掃気圧及び吸い込み温度等と、内燃機関1の負荷率に応じて、第1油圧ポンプ10、第2油圧ポンプ53、油圧調整機構30、さらには、後述する過給機5のタービン7へ送る排ガス流量を制御する後述するバイパス制御弁等の作動を電気的に制御する。なお、コントローラ50が上述の負荷率、掃気圧及び吸い込み温度以外のパラメータを用いて第1油圧ポンプ10、油圧調整機構30、バイパス制御弁等の作動を制御する場合もある。
【0027】
本実施形態の回収装置100は、一例として以下のように動作する。
内燃機関1のスタートアップ時、コントローラ50は、油圧調整機構30を、第2油圧ポンプ53から延びる油路22の油圧を油路23に供給するように制御する。そして、コントローラ50は、電動機52を回転駆動させて、始動に必要な油圧を第2油圧ポンプ53により生成させて、油路22、油圧調整機構30、及び油路23を通して油圧制御ユニット51へ供給する。
【0028】
次に、内燃機関1の低負荷〜中負荷時、例えば負荷率50%までの間は、コントローラ50は、スタートアップ時と同様に油路22から油路23へ油圧が供給されるように、油圧調整機構30の制御を維持する。
これにより、低負荷〜中負荷時においても、油圧制御ユニット51の必要な油圧を第2油圧ポンプ53により生成させて、油路22、油圧調整機構30、及び油路23を通して油圧制御ユニット51へ供給する。
ここで、中負荷の上限は、過給機5に連結された第1油圧ポンプ10が回転駆動することにより生成する油圧の油圧生成量が、油圧制御ユニット51が内燃機関1の駆動のために必要な油圧の油圧量と同等になるときの負荷をいう。低負荷〜中負荷時、内燃機関1の排ガスにより回転するタービンの回転数は、十分高くなく、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量は、油圧の上記必要量に対して少ない。このため、本実施形態では、内燃機関1の負荷が高くなって、第1油圧ポンプ10が生成する油圧生成量が油圧の上記必要量と同等になるまで、油圧制御ユニット51が用いる油圧に、第2油圧ポンプ53の生成した油圧が用いられる。
スタートアップ時から中負荷時において、第1油圧ポンプ10を回転駆動させている場合、油圧調整機構30は、例えば、油路21の油圧を、油路25を通してドレインして開放する。すなわち、第1油圧ポンプ10は、無負荷運転となるが、システムの冷却ために一定圧の油圧が吐出される。
【0029】
次に、内燃機関1の高負荷時、例えば負荷率50%以上の場合には、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量は、油圧の上記必要量に達するので、コントローラ50は、油路21の油圧が、油路23を通して油圧制御ユニット51に供給されるように、油圧調整機構30を制御する。このとき、油圧調整機構30は、第2油圧ポンプ53で生成した油圧を、油路26を通してドレインして開放するように切り換える。すなわち、第2油圧ポンプ53は、無負荷運転となる。この場合、コントローラ50は、電動機52の回転を停止するように、制御することもできる。
内燃機関1の負荷率の上昇によって、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量が油圧の上記必要量に到達したとき、第1油圧ポンプ10で生成する油圧を油圧制御ユニット51へ供給するように、油圧調整機構30は制御される。
【0030】
本実施形態では、油圧制御ユニット51へ供給される油圧は、第1油圧ポンプ10で生成した油圧及び第2油圧ポンプ53で生成した油圧の少なくともいずれか一方の油圧である。このとき、コントローラ50は、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、所定量未満の条件で、前記第1油圧ポンプで生成した油圧を油圧制御ユニット51へ供給せず、第2油圧ポンプ53で生成した油圧を油圧制御ユニット51へ供給し、上記条件以外のとき、第2油圧ポンプ53で生成した油圧を油圧制御ユニット51へ供給せず、第1油圧ポンプ10で生成した油圧を油圧制御ユニット51へ供給するように、油圧調整機構30を制御する。このとき、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量は、油圧の上記必要量に到達する時点の上記油圧生成量を、油圧切り換えのための上記所定量とし、油圧制御ユニット51へ供給する油圧を、第2油圧ポンプ53の生成する油圧から第1油圧ポンプ10の生成する油圧に切り換える制御を行う。
しかし、一実施形態によれば、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、所定量未満の条件では、油圧制御ユニット51へ供給される油圧は第2油圧ポンプ53で生成した油圧であり、すなわち第2油圧ポンプ53により生成される油圧のみが油圧制御ユニット51に供給されるが、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量が上記必要量に到達しなくても、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が所定量以上になると、作動機器へ供給される油圧は第1油圧ポンプ10で生成した油圧を含むように、具体的には、第2油圧ポンプ53により生成される油圧とともに、第1油圧ポンプ10により生成される油圧が油圧制御ユニット51に供給されてもよい。この場合、油圧制御ユニット51に供給される油圧は、第1油圧ポンプ10により生成される油圧と第2油圧ポンプ53により生成される油圧を含むことになる。
このとき、内燃機関1の負荷率に応じて第1油圧ポンプ50及び第2油圧ポンプ53により生成される油圧の量が制御される。具体的には、内燃機関1の負荷率と、第1油圧ポンプ10により生成される油圧の量及び第2油圧ポンプ53により生成される油圧の量との関係を示す、予め設定した参照テーブルを利用して、内燃機関1の負荷率が上昇するにつれ、第1油圧ポンプ10により生成される油圧の量を徐々に増やし、第2油圧ポンプ53により生成される油圧の量を徐々に減らすように油圧の量が制御される。この後、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量が、油圧の上記必要量に到達すると、第1油圧ポンプ10により生成される油圧のみが油圧制御ユニット51に供給されてもよい。負荷率を低下させるとき、内燃機関1の負荷率が低下するにつれ、第1油圧ポンプ10により生成される油圧の量を徐々に減らし、第2油圧ポンプ53により生成される油圧の量を徐々に増やすとよい。
【0031】
なお、内燃機関1の高負荷時、負荷率が高くなるほど、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量は多くなり、内燃機関1の駆動のために油圧制御ユニット51が必要とする油圧の必要量を超える傾向にある。このため本実施形態では、過剰な油圧を生成することがないように、油圧生成量が上記必要量に対応するように、第1油圧ポンプ10が制御される。 一実施形態によれば、処理装置100は、過給機5のタービン7へ送る排ガス流量を制御する制御弁を有する。コントローラ50は、第1油圧ポンプ10により生成する油圧を油圧制御ユニット51へ供給する場合、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、内燃機関1の駆動のために油圧制御ユニット51が必要とする油圧の必要量に対応するように、制御弁の開度を制御する。これにより、第1油圧ポンプ10の生成させる油圧が過剰になることを阻止できる。
【0032】
図2は、過給機5の周辺の装置構成の好ましい一形態を模式的に示す図である。
内燃機関1と過給機5との間には、内燃機関1から排出される排ガスの排気レシーバ60と、過給機8で過給された給気を取り込む吸気マニホールド62と、が設けられている。排気レシーバ60には、排気レシーバ60から過給機5のタービン7に接続する排ガス路64とタービン7を迂回するバイパス排ガス路68が設けられている。バイパス排ガス路68は、タービン7から外気に排ガスを排出する外部排ガス路66に接続されている。すなわち、バイパス排ガス路68は、過給機5、詳細にはタービン7と並列配置されて、排ガスの一部を、タービン7を経由することなく、外部に排気する排気路である。
【0033】
圧縮機6には、外気から空気を導入する外気導入路72が設けられ、さらに、圧縮機6には、圧縮された空気を冷却器76に導く給気路74が設けられている。冷却器76には、排気レシーバ60から延びる排ガス循環路78が設けられ、冷却器76に接続される。冷却器76で冷却された気体は、給気として吸気マニホールド62に供給され、さらに、内燃機関1に供給される。排ガス循環路78には、排ガス循環制御弁80が設けられている。排気レシーバ60内の排ガスの一部は、排ガス循環路78を通過して、外気から取り入れられ圧縮機6で圧縮された空気と混合されて内燃機関1に給気として供給される。このように、排ガスの一部を給気として用いるのは、排気ガスの成分の比熱と酸素の比熱が異なることを利用して、内燃機関1の燃焼温度を低下させ、これにより、酸素と窒素の反応速度を低下させてNOxの排出量を削減するためである。排ガス循環路78及び排ガス循環制御弁80は、排ガスの一部を、過給機5へ送らず、内燃機関の吸気マニホールド(吸気管)62に供給する排気再循環装置を構成する。排気再循環装置は、設けられなくてもよい。
なお、図2には図示されていないが、排ガス循環路78に集塵器や圧縮機等が設けられてもよい。
【0034】
バイパス排ガス路68には、バイパス排ガス路68における排ガス流量を制御する排気バイパス弁70が設けられている。この排気バイパス弁70の開度を、コントローラ50が電気的に制御する。コントトーラ50は、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、内燃機関1の駆動に必要な油圧の必要量に対応するように、上記制御弁である排気バイパス弁70の開度を制御する。この場合、排気バイパス弁70が、過給機5のタービン7へ送る排ガス流量を制御する上述した制御弁に対応する。
なお、バイパス排ガス路68を上記制御弁として用いる代わりに、一実施形態として、内燃機関1のタービン7に接続される排ガス路64の途中に、排ガスの流路の面積を可変に制御する流量調整弁を上記制御弁とすることも好ましい。
【0035】
一実施形態では、排気バイパス弁70は、第1油圧ポンプ10の回転駆動によって生成する油圧生成量が、内燃機関1の駆動のために油圧制御ユニット51が必要とする油圧の必要量に到達しない場合、例えば50%未満の場合、排気バイパス弁70を閉じるように、コントローラ50は制御する。
【0036】
このように、本実施形態では、排気バイパス弁70の開度の制御により、第1油圧ポンプ10が生成する油圧の油圧生成量を制御する。このため、回収装置100は、過剰な油圧を生成しない。
また、本実施形態では、コントローラ50は、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、所定量未満の条件で、第2油圧ポンプ53で生成した油圧を作動機器へ供給し、上記条件以外のとき、第1油圧ポンプ10で生成した油圧を作動機器へ供給するように、油圧調整機構30を制御するので、すなわち、作動機器で用いられる油圧は、第1油圧ポンプ10及び第2油圧ポンプ53で生成した油圧に限られるので、従来、内燃機関1のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を生成させる機関駆動油圧ポンプを必要としない。このため、内燃機関1の設置スペースが過大とならず、低コストで、余剰排気エネルギを有効利用することができる。
【0037】
コントローラ50が、上記所定量を、作動機器(油圧制御ユニット51)を作動するために必要な油圧の必要量とすることにより、作動機器の作動のための油圧を、第1油圧ポンプ10で生成される油圧と第2油圧ポンプ53で生成される油圧の間で切り替える簡易な制御を実現することができる。
上記所定量は、内燃機関1の負荷率が70%以下の負荷率に対応した第1油圧ポンプ50により生成される油圧生成量とすることが、余剰排気エネルギを有効利用することができる点から好ましい。第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、作動機器(油圧制御ユニット51)を作動するために必要な油圧の必要量と対応する(一致する)負荷率は、内燃機関1の特性によって異なるが、負荷率が上記範囲にある場合、第1油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、作動機器を作動するために必要な油圧の必要量と対応する負荷率となる場合が多い。
【0038】
また、上記回収装置100は、船舶に搭載され、内燃機関1は、船舶の推進用エンジンとすることができる。
【0039】
上述の回収装置100は一例にすぎず、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。また、上述の回収装置100においては、負荷35%までを低負荷とし、負荷35〜50%を中負荷とし、また負荷50%以上を高負荷としたが、あくまでも一例であって内燃機関の種類や利用形態等により異なるものであり、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 内燃機関
4 排ガス路
5 過給機
6 圧縮機
7 タービン
8 回転軸
9 変速機
10 第1油圧ポンプ
10a,10b,11a,11b 吐出口
20 油圧機構
21,22,23,24,25,26 油路
30 油圧調整機構
50 コントローラ
51 油圧制御ユニット
52 電動機
53 第2油圧ポンプ70 排気バイパス弁
【要約】
【課題】内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、設置スペースが過大とならず、低コストで、余剰排気エネルギを有効利用する。
【解決手段】過給機余剰動力回収装置は、油圧で作動する作動機器を電子制御することにより駆動される内燃機関と、前記内燃機関に付属する過給機と、前記過給機に連結されて前記過給機により回転駆動されて油圧を生成させる第1油圧ポンプと、電動機の回転により回転駆動されて油圧を生成させる第2油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプで生成した第1油圧と前記第2油圧ポンプで生成した第2油圧との間で前記作動機器へ供給する油圧を調整する油圧調整機構と、前記作動機器を電子制御するコントローラと、を備える。前記コントローラは、前記第1油圧の生成量が、所定量未満の条件では、前記作動機器へ供給される油圧は前記第2油圧ポンプで生成した油圧であり、前記条件以外のとき、前記作動機器へ供給される油圧は前記第1油圧ポンプで生成した油圧を含むように、前記油圧調整機構を制御する。
【選択図】 図1
図1
図2