特許第6383927号(P6383927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 平岡織染株式会社の特許一覧

特許6383927臭気吸着メッシュシート及びその臭気吸着性能の回復方法
<>
  • 特許6383927-臭気吸着メッシュシート及びその臭気吸着性能の回復方法 図000004
  • 特許6383927-臭気吸着メッシュシート及びその臭気吸着性能の回復方法 図000005
  • 特許6383927-臭気吸着メッシュシート及びその臭気吸着性能の回復方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383927
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】臭気吸着メッシュシート及びその臭気吸着性能の回復方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20180827BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20180827BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180827BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20180827BHJP
   D03D 9/00 20060101ALI20180827BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20180827BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20180827BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61L9/01 B
   A61L9/16 D
   B01J35/02 J
   D03D15/00 E
   D03D9/00
   D03D15/00 G
   D03D1/00 Z
   D06M15/248
   D06M11/79
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-244731(P2014-244731)
(22)【出願日】2014年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-106699(P2016-106699A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
(72)【発明者】
【氏名】松下 陽子
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−264137(JP,A)
【文献】 特開2013−212238(JP,A)
【文献】 特開2014−180251(JP,A)
【文献】 特開平11−046965(JP,A)
【文献】 特開2009−273823(JP,A)
【文献】 特開2011−231226(JP,A)
【文献】 特開2013−165128(JP,A)
【文献】 特開2004−107812(JP,A)
【文献】 実開平02−022395(JP,U)
【文献】 特開2007−229260(JP,A)
【文献】 特開2004−041277(JP,A)
【文献】 特開2003−070892(JP,A)
【文献】 特開2004−043098(JP,A)
【文献】 特開2006−318721(JP,A)
【文献】 特表平11−512943(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3100249(JP,U)
【文献】 実開昭63−146052(JP,U)
【文献】 特開平10−263067(JP,A)
【文献】 特開2010−031820(JP,A)
【文献】 特開2006−239917(JP,A)
【文献】 特開2003−250872(JP,A)
【文献】 特開2001−254421(JP,A)
【文献】 特開2007−098327(JP,A)
【文献】 特開2001−288678(JP,A)
【文献】 特開平10−196607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
B01D 53/34− 53/73
B01D 53/74− 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/02− 53/12
B01J 20/00− 20/28
B01J 20/30− 20/34
D06M 10/00− 11/84
D06M 16/00
D06M 19/00− 23/18
D06M 13/00− 15/715
D06F 11/00− 13/04
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物層Aが被覆されたコーテッドヤーン(1)、及び熱可塑性樹脂組成物層Bが被覆されたコーテッドヤーン(2)を2:1〜1:2の本数比率で併用して製織された製織交点を有する可撓性メッシュシートであって、前記熱可塑性樹脂組成物層Aが二酸化珪素及びゼオライトを質量比2:1〜1:5とする混合粒子を5〜30質量%含み、また熱可塑性樹脂組成物層Bが金属酸化物及びゼオライトを質量比2:1〜1:5とする混合粒子を5〜30質量%含むことを特徴とする臭気吸着メッシュシート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂組成物層A及び前記熱可塑性樹脂組成物層Bが、気泡痕を1〜25体積%含んでいる請求項1に記載の臭気吸着メッシュシート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂組成物層A及び前記熱可塑性樹脂組成物層Bが着色剤を含み、互いの着色が異なる請求項1または2に記載の臭気吸着メッシュシート。
【請求項4】
前記可撓性メッシュシートが有する織軸が、経方向及び緯方向、または経方向及びバイアス方向である請求項1〜3の何れか1項に記載の臭気吸着メッシュシート。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂組成物層A及び前記熱可塑性樹脂組成物層Bが、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを25〜80質量部を主体に含む軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成される請求項1〜4の何れか1項に記載の臭気吸着メッシュシート。
【請求項6】
前記製織交点が熱融着している請求項1〜5の何れか1項に記載の臭気吸着メッシュシート。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかの臭気吸着メッシュシートを、1)水洗い・浸漬を10〜25℃で10〜60分間、または40〜80℃の温水による洗い・浸漬を5〜30分間行うことで吸着した臭気成分を溶出除去する。2)電気ヒーターによる直接加熱または熱風加熱を50℃以上100℃以内で10〜60分間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。3)晴天時に屋外で、吊るし、2つ折り掛け、地面置き、の何れかの状態で天日干しを1〜6時間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。の1)〜3)の何れか単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に回復させることを特徴とする臭気吸着メッシュシートの臭気吸着性能の回復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は臭気吸着による減臭効果を有する産業資材用メッシュシートに関する。詳しく述べると、本発明のメッシュシートは、家屋、店舗、オフィスビル、商業施設、各種公共施設などの居住空間をはじめ、食品工場、化学品工場、畜産施設、水産施設、ゴミ処理施設、ゴミ集積所などにおいて、空間仕切用、壁掛け用、敷物用、天蓋用の形態で用い、使用環境における悪臭成分、及びVOC成分などの臭気成分全般に対してバランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に低減する消臭効果を有し、減臭効果が飽和状態となっても減臭効果の再生が可能かつ容易で繰り返し使用可能な臭気吸着メッシュシートと臭気吸着性能の回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前、本出願人は粗目織物と、粗目織物を被覆する熱可塑性樹脂層とで構成された、特定の充実率と単位表面積とを有する可撓性メッシュシートの熱可塑性樹脂層に、臭気分子に対して、物理的吸着性を有する無機多孔性物質、化学反応性を有する無機酸化・還元性物質、及び無機分解反応触媒物質などの臭気分子不活性化粒子を任意に用いることにより、体臭、ペット臭、調理臭、ゴミ臭、カビ臭などの生活臭全般を低減させる機能を付帯させたメッシュシート(特許文献1)を提案した。また特許文献2には、消臭性・難燃性布帛製造用後加工剤の第1液として、消臭剤、バインダー、架橋剤及び風合い改良剤を混合分散した水性分散液が例示され、消臭剤に、酸化亜鉛、シリカ、ゼオライト、ヒドラジン系化合物及び、スチレン−無水マレイン酸加水分解物の1種または複数種の混合物を使用することで臭気全般に対する消臭作用を得ることの組成が特許文献2に開示されている。これら特許文献1及び2では多種類の臭気分子に対応させるためには、各悪臭成分のカテゴリに応じた消臭成分や吸着性物質を満遍なく併用することを必須のものとしているが、実際は消臭成分や吸着性物質の併用種を多くするほど、これらの存在が互いに邪魔し合うこと、特に特定の臭気分子を吸着した消臭成分や吸着性物質が先に存在すると、他の消臭成分や吸着性物質の作用を阻害して、結果的に意図したような生活臭全般に対する減臭効果や消臭効果が持続して得られない問題が垣間見えてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−212238号公報
【特許文献2】特開2012−072509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、臭気成分全般に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を有するメッシュシートで、減臭効果が飽和状態となっても、減臭効果の再生が可能かつ容易である、繰り返し使用可能な臭気吸着メッシュシートと、その臭気吸着性能の回復方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、熱可塑性樹脂組成物層Aが被覆されたコーテッドヤーン(1)、及び熱可塑性樹脂組成物層Bが被覆されたコーテッドヤーン(2)を併用して製織された製織交点を有する可撓性メッシュシートにおいて、熱可塑性樹脂組成物層Aが二酸化珪素及びゼオライトからなる混合粒子を含み、また熱可塑性樹脂組成物層Bが金属酸化物及びゼオライトからなる混合粒子を含むことで、臭気成分全般(VOC含む)に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を有するメッシュシートが得られ、減臭効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に容易に回復できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明の臭気吸着メッシュシートは、熱可塑性樹脂組成物層Aが被覆されたコーテッドヤーン(1)、及び熱可塑性樹脂組成物層Bが被覆されたコーテッドヤーン(2)を2:1〜1:2の本数比率で併用して製織された製織交点を有する可撓性メッシュシートであって、前記熱可塑性樹脂組成物層Aが二酸化珪素及びゼオライトを質量比2:1〜1:5とする混合粒子を5〜30質量%含み、また熱可塑性樹脂組成物層Bが金属酸化物及びゼオライトを質量比2:1〜1:5とする混合粒子を5〜30質量%含むことが好ましい。これによってアンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭効果を有する二酸化珪素粒子を含有するコーテッドヤーン(1)と、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭効果を有する金属酸化物粒子を含有するコーテッドヤーン(2)との併用により、各々のコーテッドヤーンが塩基性悪臭と酸性悪臭を選択的、かつ効率的に吸着する役割を担うことができ、二酸化珪素粒子と金属酸化物粒子とが共存することで、塩基性悪臭と酸性悪臭との吸着効率を互いに阻害したりするような問題を回避でき、しかもコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)の双方にゼオライト粒子を含有することでシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対しても吸着性を有するので、従って、臭気成分全般(VOC含む)に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を有するメッシュシートが得られ、減臭効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、紫外線照射、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に容易に回復することを可能とする。
【0007】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、前記熱可塑性樹脂組成物層A及び前記熱可塑性樹脂組成物層Bが、気泡痕を1〜25体積%含んでいることが好ましい。気泡痕を1体積%〜25体積%含んでいることによってメッシュシートの表面積を大きいものとすること、及び通気性を高くすることで、臭気分子の吸着及び捕集効率を向上させることを可能とする。
【0008】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、前記熱可塑性樹脂組成物層A及び前記熱可塑性樹脂組成物層Bが着色剤を含み、互いの着色が異なることが好ましい。これによってコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)との着色を互いに異にし、特に複数の着色コーテッドヤーン(1)及び(2)を使用し、さらに織り組織をコントロールすることでメッシュシートの折柄模様を発色的に表現する意匠効果を自在とする。
【0009】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、前記可撓性メッシュシートが有する織軸が、経方向及び緯方向、または経方向及びバイアス方向であることが好ましい。特に織軸を経方向及びバイアス方向とする3軸メッシュシートとすることで、表面積を大きいものとすること、及び通気性を高くすることで、臭気分子の吸着及び捕集効率を向上させることを可能とする。
【0010】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、前記熱可塑性樹脂組成物層A及び前記熱可塑性樹脂組成物層Bが、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを25〜80質量部を主体に含む軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成されることが好ましい。意図的に内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いのあるフタル酸エステル系可塑剤を使用しないことで、特に乳幼児の経口摂取や経気摂取、母体から胎児への間接摂取によるホルモン作用異常のリスクを回避することができる。
【0011】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、前記製織交点が熱融着していることが好ましい。これによって得られるメッシュシートに形態安定性を付与し、外力による目ズレなどの外観変形の問題を回避することができる。
【0012】
本発明の臭気吸着メッシュシートの臭気吸着性能の回復方法は、請求項1〜5の何れかの臭気吸着メッシュシートを、1)水洗い・浸漬を10〜25℃で10〜60分間、または40〜80℃の温水による洗い・浸漬を5〜30分間行うことで吸着した臭気成分を溶出除去する。2)電気ヒーターによる直接加熱または熱風加熱を50℃以上100℃以内で10〜60分間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。3)晴天時に屋外で、吊るし、2つ折り掛け、地面置き、の何れかの状態で天日干しを1〜6時間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。の1)〜3)の何れか単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に回復させることが好ましい。これによって本発明の臭気吸着メッシュシートを長期間、繰り返し使用することを可能とし、利便性を格段に向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭効果を有する二酸化珪素粒子を含有するコーテッドヤーン(1)と、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭効果を有する金属酸化物粒子を含有するコーテッドヤーン(2)との併用により、各々のコーテッドヤーンが塩基性悪臭と酸性悪臭を選択的、かつ効率的に吸着する役割を担うことができ、二酸化珪素粒子と金属酸化物粒子とが共存することで、塩基性悪臭と酸性悪臭との吸着効率を互いに阻害したりするような問題を回避でき、しかもコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)の双方にゼオライト粒子を含有することでシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対しても吸着性を有するので、従って臭気成分全般(VOC含む)に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を有するメッシュシートが得られ、減臭効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に容易に回復することを可能とするので、家屋、店舗、オフィスビル、商業施設、各種公共施設などの居住空間をはじめ、食品工場、化学品工場、畜産施設、水産施設、ゴミ処理施設、ゴミ集積所などにおいて、空間仕切用、壁掛け用、敷物用、天蓋用の形態で広く用いることができる。さらに本発明の臭気吸着メッシュシートは任意の裁断サイズで、トイレ、玄関、浴室、下駄箱、押入などの掛け物、敷物などにも使用でき、靴の中敷(下駄箱収納時)にも使用できる。また、本発明の臭気吸着メッシュシートには写真画像・イラストレーション・文字などの装飾効果や広告効果を附帯させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の臭気吸着メッシュシートの外観の一部を拡大して示した図
図2】本発明の臭気吸着メッシュシートの外観の一部を拡大して示した図
図3】本発明の臭気吸着メッシュシートのアンモニアガスに対する臭気吸着性 能の回復効果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、熱可塑性樹脂組成物層Aが被覆されたコーテッドヤーン(1)、及び熱可塑性樹脂組成物層Bが被覆されたコーテッドヤーン(2)を併用して製織された製織交点を有する可撓性メッシュシートにおいて、熱可塑性樹脂組成物層Aが二酸化珪素及びゼオライトからなる混合粒子を含み、また熱可塑性樹脂組成物層Bが金属酸化物及びゼオライトからなる混合粒子を含むものとする。
【0016】
本発明の臭気吸着メッシュシートにおいて、コーテッドヤーン(1)を形成する熱可塑性樹脂組成物層Aに用いる熱可塑性樹脂、及びコーテッドヤーン(2)を形成する熱可塑性樹脂組成物層Bに用いる熱可塑性樹脂は、互いに同種の熱可塑性樹脂であることが製織交点における熱融着性、及び交点融着強度保持の観点において好ましい。このような熱可塑性樹脂は、軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体樹脂、シリコン樹脂、シリコン系共重合体樹脂などが使用でき、これらは単独もしくは、2種以上の併用としてもよい。熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bの厚さは0.03mm〜0.6mm、特に0.05mm〜0.3mmが好ましい。特に本発明において好ましい熱可塑性樹脂は、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質〜半硬質塩化ビニル樹脂を包含する)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、およびポリエステル系共重合体樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は繊維糸条を口金に芯通しした押出成型機を用い、熱可塑性樹脂をホットメルト状態として口金ノズル孔から押出すと同時に、繊維糸条を引き取ることで繊維糸条の表面に熱可塑性樹脂組成物層を連続的に設けることでコーテッドヤーンを得ることができる。また塩化ビニル樹脂ペーストゾルのような粘重液状物、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂溶液、エマルジョンやラテックスのような水性樹脂に繊維糸条をディッピングし、これを熱処理乾燥することでコーテッドヤーンを得ることができる。熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bには必要に応じて顔料、可塑剤、安定剤、充填剤、滑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、接着剤、防炎剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤など公知の添加剤を含むことができる。特にコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)との着色を互いに異にすること、または複数の着色コーテッドヤーン(1)及び(2)を使用し、さらに織り組織をコントロールすることでメッシュシートの折柄模様を発色的に自在に表現することができる。着色剤はアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付けレーキ顔料、アントラキノン系顔料類、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料などの有機顔料、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)、三酸化アンチモン、酸化鉄、酸化鉛、酸化クロム、酸化ジルコニウム、スピネル構造酸化物、ルチル型酸化物などの無機顔料の他、パール顔料、アルミ粉顔料、光輝性顔料、蓄光顔料、染料などを自由に使用でき、その組み合わせに制限は無い。
【0017】
特に熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bを、軟質塩化ビニル樹脂で構成する場合、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを25〜80質量部を主体に含む軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成することが好ましい。内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いのあるフタル酸エステル系可塑剤を使用しないことで、特に乳幼児の経口摂取や経気摂取、母体から胎児への間接摂取によるホルモン作用異常のリスクを回避できる。シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルは、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルから選ばれた1種以上の化合物を含む。ジアルキルエステルにおいてアルキル基は個々に同一又は異なって、炭素(C)数4〜13の脂肪族一価の基、例えば直鎖状アルキル基、分岐鎖状のアルキル基、脂環族基などである。シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルによる可塑剤は例えば、シクロヘキサンジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシル(別名シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル)(C8:MW393)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)が特に好ましく、その他シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル(C4:MW281)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(C4:MW281)、シクロヘキサンジカルボン酸ジヘキシル(C6:MW337)、シクロヘキサンジカルボン酸ジヘプチル(C7:MW362)、シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)、シクロヘキサンジカルボン酸ブチルベンジル(C4,C7:MW315)などが例示され、これらはすべてシクロヘキサン環に対するジカルボン酸ジアルキルエステルの結合位置が、オルト位(1.2−位置)、メタ位(1.3−位置)、パラ位(1.4−位置)の3態様を全て包含するものである。
【0018】
本発明の臭気吸着メッシュシートにおいて、コーテッドヤーン(1)及びコーテッドヤーン(2)を構成する繊維は、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維などの合成繊維、木綿、麻、ケナフなどの天然繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維の何れもが使用でき、これらは単独で、或いは2種以上の混用で用いることができるが、特にポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維による糸条が好ましい。
【0019】
繊維糸条の形態は、マルチフィラメント、短繊維紡績、モノフィラメント、スプリットヤーン、テープヤーンなどいずれであってもよいが、特にマルチフィラメントが好ましい。マルチフィラメント糸条の繊度は、125(139dtex)〜1000(1111dtex)デニール、特に250(278dtex)〜750(833dtex)デニールが好ましい。本発明においてマルチフィラメント糸条は、フィラメント数50〜300本を0〜10T/mの撚糸、または11〜200T/mの撚糸に束ね、その断面形状が円形、楕円形、及び扁平(横長に潰れた楕円形)の何れの形状でも使用できるが、扁平糸条が好ましい。このような扁平糸条は、断面形状の高さと幅方向の比を2:3〜1:5とすることで表面積が増大するので好ましい。これらの繊維糸条には、必要に応じて撥水処理、吸水防止処理、接着処理、難燃処理などの薬剤処理を施したものを用いてもよい。
【0020】
本発明のメッシュシートは、コーテッドヤーン(1)及びコーテッドヤーン(2)を2:1〜1:2の本数比率、特に好ましくは1:1の本数比率で併用して製織された製織交点を有する可撓性メッシュシートであって、経糸束群及び緯糸束群からなる平織物、バスケット織物または模紗織物、または経糸束群及びバイアス糸束群(右上がり斜糸、左上がり斜糸)として製織した三軸平織物、三軸バスケット織物または三軸模紗織物である。コーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)との1:1併用の場合は交互の規則的配置であってもランダム配置の何れであってもよい。またコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)との2:1併用の場合はコーテッドヤーン(1)2本とコーテッドヤーン(2)1本を繰り返し単位とする規則的配置であってもランダム配置の何れであってもよい。またコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)との1:2併用の場合はコーテッドヤーン(1)1本とコーテッドヤーン(2)2本を繰り返し単位とする規則的配置であってもランダム配置の何れであってもよい。またコーテッドヤーン(1)を経糸束群、コーテッドヤーン(2)を緯糸束群とする平織物、バスケット織物または模紗織物、あるいはコーテッドヤーン(2)を経糸束群、コーテッドヤーン(1)を緯糸束群とする平織物、バスケット織物または模紗織物であってもよい。またコーテッドヤーン(1)及びコーテッドヤーン(2)を2:1または1:2の本数比率とする場合、経糸束群をコーテッドヤーン(1)、バイアス糸束群をコーテッドヤーン(2)とする三軸平織物、三軸バスケット織物または三軸模紗織物、あるいは経糸束群をコーテッドヤーン(2)、バイアス糸束群をコーテッドヤーン(1)とする三軸平織物、三軸バスケット織物または三軸模紗織物などが例示できる。これらの織物は、コーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)との着色を互いに異にすること、または複数の着色コーテッドヤーン(1)及び(2)を使用することで、メッシュシートの意匠性をコントロール自在とする。これらの織物は、熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bの軟化温度以上の加熱を施し、製織交点が溶融接着していることがメッシュシートの強度的、寸法安定性的に好ましく、加熱方法は150〜230℃の熱風セット、150〜230℃の熱ロールニップまたは熱板プレスなどが例示できる。
【0021】
本発明の臭気吸着メッシュシートの空隙率は10〜65%、特に20〜45%が表面積を大きくし、しかも通気性を高くすることで、臭気成分の吸着効果を高めることができる。また、経方向及び緯方向1インチ当たり、または経方向とバイアス方向が、共に空孔数5〜30個、特に8〜20個を有するものが好ましい。空隙率が10%未満の場合と、空隙率が65%を超える場合には、得られるメッシュシートの表面積が小さくなり、通気性とガス交換性が不十分となり、減臭効果や消臭効果の発現が非効率的となることがある。同様に経緯とも、1インチ当たりの空孔数5個未満の場合と、空孔数30個を超える場合には、得られるメッシュシートの表面積が小さくなり、通気性とガス交換性が不十分となり、減臭効果や消臭効果の発現が非効率的となることがある。空隙率はメッシュシートの単位面積領域に占めるコーテッドヤーン間空孔部の総和面積率であり、具体的には1インチ四方の面積領域のデジタル画像をコンピュータに取り込んで、コーテッドヤーン実体部と空孔部分の面積を計算する方法、またコーテッドヤーンの幅と、コーテッドヤーンの配置密度の設計から理論値として計算した値であってもよい。このようにコーテッドヤーン(1)及びコーテッドヤーン(2)を2:1〜1:2の本数比率で併用することによって、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭効果が期待される二酸化珪素粒子を含有するコーテッドヤーン(1)と、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭効果が期待される金属酸化物粒子を含有するコーテッドヤーン(2)とが併用され、各々のコーテッドヤーンが塩基性悪臭と酸性悪臭を選択的、かつ効率的に吸着する役割を担うようになるので、二酸化珪素粒子と金属酸化物粒子とが共存することで、塩基性悪臭と酸性悪臭との吸着効率を互いに阻害したりするような問題を回避できる。
【0022】
本発明の臭気吸着メッシュシートにおいて、コーテッドヤーン(1)の熱可塑性樹脂組成物層Aには二酸化珪素及びゼオライトを質量比2:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3とする混合粒子を5〜30質量%、好ましくは8〜24質量%含むものとする。またコーテッドヤーン(2)の熱可塑性樹脂組成物層Bには金属酸化物及びゼオライトを質量比2:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3とする混合粒子を5〜30質量%、好ましくは8〜24質量%含むものとする。コーテッドヤーン(1)及びコーテッドヤーン(2)ともに、ゼオライトの質量比が2:1(ゼオライト)未満に少なくなると、トルエン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのVOC系悪臭に対する消臭効果が希薄化することがある。ゼオライトは天然及び合成ゼオライトの何れでも使用でき、平均粒子径1μm〜10μmのものが使用できる。ゼオライトはA型、X型、LSX型、L型、Y型、ベータ型、フェリライト型、モルデナイト型など、三次元骨格構造を有し、一般式M2/n0・・NaO・Al・2.5SiO・xHOで表される(一般式中のxは結晶水の数を表す整数で、Mは陽イオン、nは陽イオンの原子価を示す)。陽イオンは、アルカリ金属(ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)、アンモニウムイオンなどである。またコーテッドヤーン(1)において、二酸化珪素の質量比が1(二酸化珪素):5(ゼオライト)未満に少なくなると、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する消臭効果が希薄化することがある。またコーテッドヤーン(2)において、金属酸化物の質量比が1(金属酸化物):5(ゼオライト)未満に少なくなると、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する消臭効果が希薄化することがある。二酸化珪素は合成非晶質シリカ(湿式法、または乾式法)による球状シリカ、または不定型シリカ、シリカゲル粒子、表面に孔径2〜50nmのメソ孔を有するメソポーラスシリカなど平均粒子径0.1μm〜5μmのものが使用できる。また金属酸化物は、具体的に光触媒活性酸化亜鉛、光触媒活性酸化チタン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅から選ばれた1種以上で平均粒子径0.1μm〜5μmのものが使用できる。特に酸化亜鉛、酸化アルムニウムが好ましく、必要に応じて酸化亜鉛と酸化アルムニウムのブレンド、また特に光触媒活性酸化亜鉛、または光触媒活性酸化チタンであることが好ましい。
【0023】
また熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bには必要に応じて、活性炭、添着活性炭、白竹炭、活性白土、ベントナイト、セピオライト、アルミノ珪酸金属塩、珪酸銅、シラス、シリカ−マグネシア、モレキュラーシーブ、電気石(トルマリン鉱石)、金属フタロシアニン錯体、金属フタロシアニン錯体テトラカルボン酸、(これらの錯体形成金属として、銅、鉄、コバルト、マンガンなど)などを0.1〜5質量%程度併用していてもよく、さらにヒドラジン化合物、スチレン−マレイン酸加水分解物、シクロデキストリン、ポリフェノール類、テルペノイド類、フラボノイド類などを補助的に0.1〜3質量%程度併用してもよい。
【0024】
また熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bには、粒径が0.03mm〜0.8mm気泡痕を1〜25体積%、特に5〜15体積%程度の比率で含むことで、メッシュシートの内部にも表面積を有することで見掛け表面積以上の実質的に有効な表面積を設けることで臭気分子との接触面積を増し、通気性とガス交換性を促す効果によって減臭(消臭)効果を著しく向上させることを可能とする。これらの気泡痕は全て連続気泡化することでガス交換性及び通気性に優れた構造、または部分的に連続気泡化したガス交換通気性の構成とするものである。これらの気泡痕は液状粘性体の熱可塑性樹脂組成物の機械攪拌による強制的な気泡巻込ムースの塗工と熱処理による気泡痕形成、液状粘性体の熱可塑性樹脂組成物(アルコール、トルエン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤含有)の塗工と熱処理蒸散による揮発痕形成、公知の化学発泡剤(アゾジカルボアミド、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、p−トルエンスルフォニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、アゾビスイソブチロニトリルなど)を含有する熱可塑性樹脂組成物層を熱処理して化学発泡剤を強制的に熱分解させての揮発性ガス生成による気泡痕形成、砂糖粒や塩粒などの水溶性粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物層の水洗処理による砂糖粒や塩粒の溶出による空洞痕形成など、何れの方法によって形成された熱可塑性樹脂組成物層A及び熱可塑性樹脂組成物層Bであってもよい。
【0025】
コーテッドヤーン(1)及びコーテッドヤーン(2)を得るには、段落〔0022〕に記した熱可塑性樹脂組成物層Aを形成する組成物、及び熱可塑性樹脂組成物層Bを形成する組成物を用い、これらの熱可塑性樹脂組成物を押出成型機内でホットメルト状態として、押出成型機内を繊維糸条が通過するように仕掛け、繊維糸条が押出成型機の口金ノズル孔から出ると同時に、繊維糸条の全周を熱可塑性樹脂組成物(AまたはB)で特定の厚さでホットメルト被覆し、これを引き取りながら冷却する方法が挙げられる。また塩化ビニル樹脂ペーストゾルのような粘重液状物、有機溶剤に可溶化した熱可塑性樹脂溶液、エマルジョンやラテックスのような水性樹脂に繊維糸条をディッピングし、余分な熱可塑性樹脂溶液を掻き取る穴孔を通過させることで繊維糸条の全周を熱可塑性樹脂組成物(AまたはB)で特定の厚さで被覆し、これを引き取りながら加熱乾燥する方法が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物層(AまたはB)の厚さは0.03mm〜0.6mm、特に0.05mm〜0.3mmが好ましい。
【0026】
本発明の臭気吸着メッシュシートにおいて、繊維糸条と熱可塑性樹脂組成物層Aとの間、及び繊維糸条と熱可塑性樹脂組成物層Bとの間には、繊維糸条に対する含浸部を含む熱可塑性樹脂アンカー層を含んでいてもよい。この場合、意図的に熱可塑性樹脂アンカー層には二酸化珪素、金属酸化物、及びゼオライトを含まないものとする。これによって減臭効果及び消臭効果に寄与する二酸化珪素、金属酸化物、及びゼオライトなどをコーテッドヤーンの最外層に偏在させることで、より少ない使用量でも同等の減臭効果及び消臭効果を得ることを可能とする。特に熱可塑性樹脂組成物被覆層を、可塑剤にシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステルを使用した軟質塩化ビニル樹脂組成物で構成した場合には、熱可塑性樹脂アンカー層も同様の設計とすることが好ましい。内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の疑いのあるフタル酸エステル系可塑剤を使用しないことで、特に乳幼児の経口摂取や経気摂取、母体から胎児への間接摂取によるホルモン作用異常のリスクを回避することを可能とする。熱可塑性樹脂アンカー層の形成は段落〔0025〕と同様にして形成できる。
【0027】
本発明の臭気吸着メッシュシートは、家屋、店舗、オフィスビル、商業施設、各種公共施設などの居住空間をはじめ、食品工場、化学品工場、畜産施設、水産施設、ゴミ処理施設、ゴミ集積所などにおいて、空間仕切用、壁掛け用、敷物用、天蓋用などの多様な形態で広く用いることができる。例えば本発明の臭気吸着メッシュシートのサイズは、幅(緯糸方向)が100cm〜200m、長さ方向(経糸方向)100cm〜5000cmの範囲の任意サイズで用いることができ、使用領域が200cmを超える場合は、複数のシートを繋ぎ合わせて用いればよい。このような大型仕様は、食品工場、化学品工場、畜産施設、水産施設、ゴミ処理施設、ゴミ集積所などの天井部への設置、または壁に沿って吊り下げる設置、さらには間仕切として衝立設置をすることができる。また、家屋、店舗、オフィスビル、商業施設、各種公共施設などの居住空間においては、間仕切として目隠し効果を目的とする衝立使用ができる。また、本発明の臭気吸着メッシュシートは幅(緯糸方向)が100cm以下、長さ方向(経糸方向)100cm以下のサイズで用いることもでき、例えば、トイレ壁掛けタペストリー、玄関・浴室の足拭用敷物、下駄箱や押入れの敷物、ペット用ケージの敷物、介護ベッド用敷物などの形態で使用でき、A4サイズ以下での使用例としては靴の中敷(下駄箱収納時)が挙げられる。本発明の臭気吸着メッシュシートは任意の着色が可能であり、公知の印刷技術の応用により、メッシュシート片面または両面に写真画像・イラストレーション・文字などをプリントして、装飾効果や広告効果を附帯させることもできる。
【0028】
本発明の臭気吸着メッシュシートは使用環境による頻度差はあるが、ある程度使用したら下記処理のメンテナンスの何れか、または複数の処理を施すことで、本発明の臭気吸着メッシュシートの臭気吸着性能を、初期の50%以上に回復させることができ、定期的なメンテナンスを行うことで、臭気吸着メッシュシートとして繰り返しの使用が可能である。1)臭気吸着メッシュシート全体に対して、水道水、工業用水、降雨、などによる水洗い・浸漬を10〜25℃で10〜60分間、または40〜80℃の温水による洗い・浸漬を5〜30分間行い、吸着した水溶性の臭気成分を溶出除去する。2)臭気吸着メッシュシート全体に対して、電気ヒーターによる直接加熱または熱風加熱を50℃以上100℃以内で10〜60分間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。3)晴天時に屋外で、吊るし、2つ折り鞍掛け、地面置き、の何れかの状態で天日干しを1〜6時間行い、吸着した臭気成分を放出除去する。特に、1)処理後に2)の処理を連続するメンテナンス、または1)処理後に3)の処理を連続するメンテナンスが回復効率的に好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験シートの減臭性・消臭性、及び臭気吸着性能の回復効果は下記の試験方法により測定し、評価した。
1)減臭性・消臭性
容積5LのTEDLAR(登録商標)バッグを4個用意し、各々のバッグに濃度1
0ppmに調整した個々の化学物質ガス、アンモニア、イソ吉草酸、硫化水素、トル
エンを各々3L封入し、10cm×10cmサイズの試験シートを、試験シートの
表裏面ともバッグ内壁に触れないようにアンモニアバッグ内に固定し、60分後の
アンモニアガス濃度を測定し、この試験シートを次にイソ吉草酸バッグ内に固定し
60分後のイソ吉草酸ガス濃度を測定し、この試験シートを次に硫化水素バッグ内
に固定し、60分後の硫化水素ガス濃度を測定し、この試験シートを次にトルエン
バッグ内に固定し、60分後のトルエンガス濃度を測定した。
2)臭気吸着性能の回復効果
2−1)10cm×10cmサイズの試験シートを容積5LのTEDLAR(登録
商標)バッグに入れ、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようバッグ内
に固定し、濃度100ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ内環境
に60分間晒し、10分毎にアンモニアガス濃度を検知管で測定し1回目の減臭曲
線を描いた。取出した試験シートを新たなTEDLAR(登録商標)バッグに入れ、
1回目の試験同様濃度100ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ
内環境に120分間晒し、10分、30分、60分、120分毎にアンモニアガス
濃度を検知管で測定し2回目の減臭曲線を描いた。同様に3回目の試験を繰り返し
3回目の減臭曲線を描いた。
2−2)3回目の試験を終えた試験シートを5Lの水道水を入れたバット内に浸漬
した状態で20℃×60分間静置し水洗処理した。次に取出した試験シートを80
℃設定のギアーオーブン(電気ヒーター)内に吊るして30分間の熱風加熱処理を
行った。この水洗〜加熱処理を行った試験シートを、再度容積5LのTEDLAR
(登録商標)バッグに入れ、試験シートの表裏面ともバッグ内壁に触れないようバ
ッグ内に固定し、濃度100ppmに調整したアンモニアガスを3L封入したバッグ
内環境に120分間晒し、10分、30分、60分、120分毎にアンモニアガス
濃度を検知管で測定し4回目(再生処理後)の減臭曲線を描き、1〜3回目の減臭
曲線と比較した。
2−3)上記1)試験と同じ要領で、連続で4種のガスに対しての減臭試験を行い
、回復の処理を施した後(2−2処理後)の減臭曲線と、初回の減臭曲線との比較
を行った。
【0030】
[実施例1]
1)コーテッドヤーン(1)
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)を下記軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物[配合1]の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層A(合成ゼオライト及び二酸化珪素の含有量14.2質量%)を形成してピンク色に着色したコーテッドヤーン(1)を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物(熱可塑性樹脂組成物被覆層A)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 15質量部
二酸化珪素(平均粒子径1μm) 15質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
キナクリドンレッド(赤顔料) 1質量部
2)コーテッドヤーン(2)
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)を下記軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物[配合2]の液浴中にディッピングして軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、180℃でゲル化処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層B(合成ゼオライト及び酸化亜鉛の含有量14.2質量%)を形成してライトブルーに着色したコーテッドヤーン(2)を得た。
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物(熱可塑性樹脂組成物被覆層B)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 20質量部
酸化亜鉛(平均粒子径1μm) 10質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
フタロシアニンブルー(青顔料) 1質量部
3)メッシュシート
コーテッドヤーン(1)の2本引揃を経糸、コーテッドヤーン(2)の2本引揃を緯糸として、経糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、緯糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率28%、質量460g/mのバスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0031】
[実施例2]
実施例1の配合2に用いた酸化亜鉛(金属酸化物:平均粒子径1μm)10質量部を酸化アルミニウム(金属酸化物:平均粒子径1μm)10質量部に置き換え、コーテッドヤーン(2)の配合の一部を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例1と同規格のメッシュシート(空隙率28%、質量461g/m)を得た。
【0032】
[実施例3]
1)コーテッドヤーン(1)
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)を下記ポリウレタン樹脂組成物[配合3]の液浴中にディッピングしてポリウレタン樹脂組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、120℃で乾燥処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層A(合成ゼオライト及び二酸化珪素の含有量27.5質量%)を形成してピンク色に着色したコーテッドヤーン(1)を得た。
〔配合3〕ポリウレタン樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物被覆層A)
ポリウレタン樹脂エマルジョン(固形分40質量%) 100質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 8質量部
二酸化珪素(平均粒子径1μm) 8質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 2質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 1質量部
キナクリドンレッド(赤顔料) 0.5質量部
2)コーテッドヤーン(2)
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)を下記ポリウレタン樹脂組成物[配合4]の液浴中にディッピングしてポリウレタン樹脂組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、120℃で乾燥処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層B(合成ゼオライト及び酸化亜鉛の含有量27.5質量%)を形成してライトブルー色に着色したコーテッドヤーン(2)を得た。
〔配合4〕ポリウレタン樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物被覆層B)
ポリウレタン樹脂エマルジョン(固形分40質量%) 100質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 8質量部
酸化亜鉛(平均粒子径1μm) 8質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 2質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 1質量部
フタロシアニンブルー(青顔料) 0.5質量部
3)メッシュシート
コーテッドヤーン(1)の2本引揃を経糸、コーテッドヤーン(2)の2本引揃を緯糸として、経糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、緯糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率30%、質量416g/mのバスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(9体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0033】
[実施例4]
1)コーテッドヤーン(1)
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)を下記アクリル樹脂組成物[配合5]の液浴中にディッピングしてアクリル樹脂組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、120℃で乾燥処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層A(合成ゼオライト及び二酸化珪素の含有量27.5質量%)を形成してピンク色に着色したコーテッドヤーン(1)を得た。
〔配合5〕アクリル樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物被覆層A)
アクリル樹脂エマルジョン(固形分40質量%) 100質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 8質量部
二酸化珪素(平均粒子径1μm) 8質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 2質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 1質量部
キナクリドンレッド(赤顔料) 0.5質量部
2)コーテッドヤーン(2)
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)を下記アクリル樹脂組成物[配合6]の液浴中にディッピングしてアクリル樹脂組成物をマルチフィラメント糸条の全周に被覆した後、120℃で乾燥処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層B(合成ゼオライト及び酸化アルミニウムの含有量27.5質量%)を形成してライトブルー色に着色したコーテッドヤーン(2)を得た。
〔配合6〕アクリル樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物被覆層B)
アクリル樹脂エマルジョン(固形分40質量%) 100質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 8質量部
酸化アルミニウム(平均粒子径1μm) 8質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 2質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 1質量部
フタロシアニンブルー(青顔料) 0.5質量部
3)メッシュシート
コーテッドヤーン(1)の2本引揃を経糸、コーテッドヤーン(2)の2本引揃を緯糸として、経糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、緯糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率30%、質量413g/mのバスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(9体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0034】
[実施例5]
実施例1で用いたコーテッドヤーン(1)1本と、コーテッドヤーン(2)1本を引揃たものを軸糸とし、経糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、バイアス糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率25%、質量513g/mの三軸バスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0035】
[実施例6]
実施例1で用いたコーテッドヤーン(1)1本と、実施例2で用いたコーテッドヤーン(2)1本を引揃たものを軸糸とし、経糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、バイアス糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率25%、質量516g/mの三軸バスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0036】
[実施例7]
実施例3で用いたコーテッドヤーン(1)1本と、コーテッドヤーン(2)1本を引揃たものを軸糸とし、経糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、バイアス糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率26%、質量455g/mの三軸バスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(9体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0037】
[実施例8]
実施例4で用いたコーテッドヤーン(1)1本と、コーテッドヤーン(2)1本を引揃たものを軸糸とし、経糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、バイアス糸(2本引揃)打込密度11本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率26%、質量457g/mの三軸バスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(9体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0038】
実施例1〜8のメッシュシートは、二酸化珪素及びゼオライトを質量比1:1とする混合粒子を14.2〜27.5質量%含む熱可塑性樹脂組成物層Aで被覆したコーテッドヤーン(1)、及び(酸化亜鉛または酸化アルミニウム)及びゼオライトを質量比1:1〜1:2とする混合粒子を14.2〜27.5質量%含む熱可塑性樹脂組成物層Bで被覆したコーテッドヤーン(2)を1〜1の本数比率で併用して製織された製織交点を有するバスケット織メッシュシート、及び三軸バスケット織メッシュシートであり、コーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)とに、各々二酸化珪素粒子及び金属酸化物(酸化亜鉛または酸化アルミニウム)を振り分け、熱可塑性樹脂組成物層内に同時にこれらが混在しないように設計したことによって、各々のコーテッドヤーンが塩基性悪臭と酸性悪臭を選択的、かつ効率的に吸着する役割を担い、二酸化珪素粒子と金属酸化物粒子とが共存することで、塩基性悪臭と酸性悪臭との吸着効率を互いに阻害したりするような障害を回避できること、また両者のコーテッドヤーン双方にゼオライト粒子を含有することでシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対して吸着性を有するので、臭気成分全般(VOC含む)に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を有するメッシュシートが得られること、さらに減臭効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に容易に回復できることなどの特徴が確認された。
【0039】
【表1】
【0040】
[比較例1]
ポリエステル(PET)のマルチフィラメント糸条500d(555dtex)2本引揃を経糸、及び緯糸として経糸・緯糸各々の打込密度13本(2本引揃)/1インチとするバスケット織物(空隙率30%、質量175g/m)を基布に用い、この基布を被覆する熱可塑性樹脂組成物被覆層として下記配合7の軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物を調製し、配合7のペーストゾルの液浴中に基布を浸漬し、基布を引き上げると同時にマングルロールで圧搾して付着ゾルを含浸被覆した後、180℃でゲル化処理して熱可塑性樹脂組成物被覆層を形成して全体がピンク色に着色されたメッシュシートを得た。この被覆層の付着量は285g/m、メッシュシートの空隙率は28%、熱可塑性樹脂被覆層には気泡痕を12体積%含み、二酸化珪素と酸化亜鉛、及びゼオライトとによる混合粒子を14.2質量%含むものであった。
〔配合7〕軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(可塑剤) 70質量部
※商品名:ヘキサモールDINCH(BASF社製)
エポキシ化大豆油(可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
合成ゼオライト(平均粒子径5μm) 10質量部
二酸化珪素(平均粒子径1μm) 10質量部
酸化亜鉛(金属酸化物:平均粒子径1μm) 10質量部
アゾジカルボアミド(化学発泡剤) 4質量部
ベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤) 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 2質量部
キナクリドンレッド(赤顔料) 1質量部
【0041】
[比較例2]
実施例1のコーテッドヤーン(1)の熱可塑性樹脂組成物層Aの〔配合1〕に用いた二酸化珪素(平均粒子径1μm)15質量部を、白竹炭(平均粒子径1μm)15質量部に置換し、また実施例1のコーテッドヤーン(2)の熱可塑性樹脂組成物層Bの〔配合2〕に用いた酸化亜鉛(平均粒子径1μm)10質量部を、鉄電気石:NaFeAl(BOSi18(OH)(平均粒子径1μm)10質量部に置換した以外は実施例1と同様として、コーテッドヤーン(1)の2本引揃を経糸、コーテッドヤーン(2)の2本引揃を緯糸として、経糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、緯糸(2本引揃)打込密度13本/1インチ、コーテッドヤーン(1):コーテッドヤーン(2)の併用比率が1:1、空隙率28%、質量460g/mのバスケット織メッシュシート(外観はピンクとライトブルーの混在の2/2ななこ織柄)を得た。次にこのメッシュシートを180℃で3分間熱処理を施し、化学発泡剤の熱分解ガス生成による発泡気泡痕(12体積%)を形成すると同時に、バスケット織の織り交点を熱融着して接着して織り組織が固定された本発明のメッシュシートを得た。
【0042】
比較例1のメッシュシートは同一熱可塑性樹脂組成物層内に二酸化珪素粒子と金属酸化物(酸化亜鉛または酸化アルミニウム)が混在したことによって、アンモニアのような塩基性悪臭を先に吸着してしまうと、次いでイソ吉草酸のような酸性悪臭の吸着を試みても、実施例のような本来の減臭効果が得られず、次いで同様に硫化水素での吸着を試みても、実施例のような本来の減臭効果が得られず、最後にトルエンの吸着については実施例レベルの減臭効果を発現していたが、比較例1のメッシュシートでは生活臭全般に対する減臭効果や消臭効果が不十分であることが明らかであった。また比較例1のメッシュシートは回復処理で減臭効果が初期の50%以上回復するものであったが、初期の減臭性能自体が悪いガスが2種類存在することで、その回復使用の価値を認めないものであった。また比較例2のメッシュシートは4種類の臭気成分ガスの吸着に対して、実施例1〜8のメッシュシートの減臭効果よりも劣っており、しかも吸着効果の回復性にも乏しいものであった。
【0043】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により得られる臭気吸着メッシュシートは、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性悪臭に対する減臭効果を有する二酸化珪素粒子を含有するコーテッドヤーン(1)と、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールなどの酸性悪臭に対する減臭効果を有する金属酸化物粒子を含有するコーテッドヤーン(2)との併用により、各々のコーテッドヤーンが塩基性悪臭と酸性悪臭を選択的、かつ効率的に吸着する役割を担うことができ、二酸化珪素粒子と金属酸化物粒子とが共存することで、塩基性悪臭と酸性悪臭との吸着効率を互いに阻害したりするような問題を回避でき、しかもコーテッドヤーン(1)とコーテッドヤーン(2)の双方にゼオライト粒子を含有することでシンナーやトルエンなどの有機溶剤、ホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質臭などに対しても吸着性を有するので、従って臭気成分全般(VOC含む)に対して長期間バランス良く濃度を減少させる減臭効果、及び経時的に人間の感知限界濃度に引き下げる消臭効果を有するメッシュシートが得られ、減臭効果が飽和状態となっても、(熱)水洗、ヒーター加熱、及び天日干し、の単独、または併用の処理によって臭気吸着率を初期の50%以上に容易に回復することを可能とするので、家屋、店舗、オフィスビル、商業施設、各種公共施設などの居住空間をはじめ、食品工場、化学品工場、畜産施設、水産施設、ゴミ処理施設、ゴミ集積所などにおいて、空間仕切用、壁掛け用、敷物用、天蓋用の形態で広く用いることができる。さらに本発明の臭気吸着メッシュシートは任意の裁断サイズで、トイレ、玄関、浴室、下駄箱、押入などの掛け物、敷物などにも使用でき、靴の中敷(下駄箱収納時)にも使用できる。また、本発明の臭気吸着メッシュシートには写真画像・イラストレーション・文字などの装飾効果や広告効果を附帯させることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1:臭気吸着メッシュシート
1−1:コーテッドヤーン(1)
1−2:コーテッドヤーン(2)
図1
図2
図3