(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単位荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値を算出する前後変位情報算出手段と、前記荷重情報に基づいて前記立ち上がり動作期間を設定する設定手段と、の少なくとも1つを備え、
前記バランス能力評価値算出手段は、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値及び前記設定手段により設定された立ち上がり動作期間の少なくとも1つと、に基づいて、前記バランス能力評価値を算出する
請求項1記載のバランス能力測定装置。
前記バランス能力評価値算出手段は、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値及び前記設定手段により設定された立ち上がり動作期間の少なくとも1つと、の各々に対して、前記ユーザーの性別、年齢、及び体格の少なくとも一つを含むユーザー情報に基づいて重み付けして前記バランス能力評価値を算出する
請求項2記載のバランス能力測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、重心動揺計によりバランス能力を評価する方法は、測定時間が長くなると共に、健常者や二次予防程度の人の場合は測定値に差が出にくく、精度良く評価することが困難である、という問題があった。
【0007】
また、体力テストによりバランス能力を評価する方法は、測定時間が長くなると共に、評価値の信頼性及び客観性が高いとは言えない、という問題があった。
【0008】
また、バランス能力評価によりバランス能力を評価する方法は、理学療法士や作業療法士等の専門家がいない場合は実施できない、という問題があった。
【0009】
本発明は、バランス能力を精度良く測定することができるバランス能力測定装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明のバランス能力測定装置は、ユーザーが立ち上がる動作をした立ち上がり動作期間に測定された前記ユーザーの荷重に関する荷重情報を取得する取得手段と、前記荷重情報に基づいて、前記ユーザーの荷重の変化に関する荷重変化情報を算出する荷重変化情報算出手段と、前記荷重情報に基づいて、前記ユーザーの左右方向の変位に関する左右変位情報を算出する左右変位情報算出手段と、前記荷重変化情報及び前記左右変位情報に基づいて、前記ユーザーのバランス能力に関するバランス能力評価値を算出するバランス能力評価値算出手段と、を備え
、前記荷重情報は、複数の荷重センサの各々により測定された単位荷重データと、前記複数の荷重センサの各々により測定された単位荷重データを合算した荷重データであって前記ユーザーの体重を表す荷重データと、を含み、前記荷重変化情報算出手段は、前記荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値を算出し、前記左右変位情報算出手段は、前記単位荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値を算出し、前記バランス能力評価値算出手段は、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、に基づいて、前記バランス能力評価値を算出する。
【0012】
請求項
2記載の発明は、前記単位荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値を算出する前後変位情報算出手段と、前記荷重情報に基づいて前記立ち上がり動作期間を設定する設定手段と、の少なくとも1つを備え、前記バランス能力評価値算出手段は、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値及び前記設定手段により設定された立ち上がり動作期間の少なくとも1つと、に基づいて、前記バランス能力評価値を算出する。
【0013】
請求項
3記載の発明は、前記バランス能力評価値算出手段は、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値及び前記設定手段により設定された立ち上がり動作期間の少なくとも1つと、の各々に対して、前記ユーザーの性別、年齢、及び体格の少なくとも一つを含むユーザー情報に基づいて重み付けして前記バランス能力評価値を算出する。
【0014】
請求項
4記載の発明は、前記ユーザーの荷重を検出する複数の荷重センサを前記左右方向に備える。
【0015】
請求項5記載の発明のバランス能力測定方法は、ユーザーが立ち上がる動作をした立ち上がり動作期間に測定された前記ユーザーの荷重に関する荷重情報を取得
する取得ステップと、前記荷重情報に基づいて、前記ユーザーの荷重の変化に関する荷重変化情報を算出
する荷重変化情報算出ステップと、前記荷重情報に基づいて、前記ユーザーの左右方向の変位に関する左右変位情報を算出
する左右変位情報算出ステップと、前記荷重変化情報及び前記左右変位情報に基づいて、前記ユーザーのバランス能力に関するバランス能力評価値を算出する
バランス能力評価値算出ステップと、を含み、前記荷重情報は、複数の荷重センサの各々により測定された単位荷重データと、前記複数の荷重センサの各々により測定された単位荷重データを合算した荷重データであって前記ユーザーの体重を表す荷重データと、を含み、前記荷重変化情報算出ステップは、前記荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値を算出し、前記左右変位情報算出ステップは、前記単位荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値を算出し、前記バランス能力評価値算出ステップは、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、に基づいて、前記バランス能力評価値を算出する。
【0016】
請求項6記載の発明のバランス能力測定プログラムは、コンピュータに、ユーザーが立ち上がる動作をした立ち上がり動作期間に測定された前記ユーザーの荷重に関する荷重情報を取得
する取得ステップと、前記荷重情報に基づいて、前記ユーザーの荷重の変化に関する荷重変化情報を算出
する荷重変化情報算出ステップと、前記荷重情報に基づいて、前記ユーザーの左右方向の変位に関する左右変位情報を算出
する左右変位情報算出ステップと、前記荷重変化情報及び前記左右変位情報に基づいて、前記ユーザーのバランス能力に関するバランス能力評価値を算出する
バランス能力評価値算出ステップと、を含み、前記荷重情報は、複数の荷重センサの各々により測定された単位荷重データと、前記複数の荷重センサの各々により測定された単位荷重データを合算した荷重データであって前記ユーザーの体重を表す荷重データと、を含み、前記荷重変化情報算出ステップは、前記荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値を算出し、前記左右変位情報算出ステップは、前記単位荷重データに基づいて、前記立ち上がり動作期間における前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値を算出し、前記バランス能力評価値算出ステップは、前記ユーザーの荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値と、前記ユーザーの左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値と、に基づいて、前記バランス能力評価値を算出することを含む処理を実行させるためのバランス能力測定プログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バランス能力を精度良く測定することができる、という効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係るバランス能力測定装置10の外観図である。
図1に示すように、バランス能力測定装置10は、表示ユニット12及び測定台14を備えている。表示ユニット12及び測定台14は、通信ケーブル16により接続されている。
【0021】
図2には、バランス能力測定装置10のブロック図を示した。表示ユニット12は、コントローラ18、表示部20、操作部22、タイマ24、及び通信部26を備えている。
【0022】
コントローラ18は、CPU(Central Processing Unit)18A、ROM(Read Only Memory)18B、RAM(Random Access Memory)18C、メモリ18D、及び入出力インターフェース(I/O)18Eがバス18Fを介して各々接続された構成となっている。この場合、後述するバランス能力測定処理をコントローラ18のCPU18Aに実行させるバランス能力測定プログラムを、例えばメモリ18Dに書き込んでおき、これをCPU18Aが読み込んで実行する。なお、バランス能力測定プログラムは、CD−ROM、メモリーカード等の記録媒体により提供するようにしてもよく、図示しないサーバからダウンロードするようにしてもよい。
【0023】
I/O18Eには、表示部20、操作部22、タイマ24、及び通信部26が接続されている。
【0024】
表示部20は、例えば液晶パネル等で構成される。表示部20には、例えば各種設定画面、測定台14で測定されたユーザーのバランス能力評価値の測定結果等、各種画面が表示される。
【0025】
操作部22は、
図1に示すように複数の操作ボタンを含んで構成されており、例えば電源のオンオフ、ユーザー情報の入力操作等の他、各種操作を行うための操作部である。なお、表示部20及び操作部22をタッチパネルとし、画面に直接タッチすることで操作が可能な構成としてもよい。
【0026】
タイマ24は、現在時刻を取得する機能及び時間を計時する計時機能を有する。
【0027】
通信部26は、外部装置と無線通信又は有線通信により情報の送受信を行う。これにより、バランス能力測定装置10は、例えば携帯電話、スマートフォン、及びタブレット端末等の携帯装置、並びにパーソナルコンピュータ等の外部装置と通信することが可能である。
【0028】
測定台14は、一例として荷重測定回路28及び4個の荷重センサ30A〜30Dを備えている。荷重測定回路28は、通信ケーブル16により表示ユニット12と接続されている。
【0029】
荷重センサ30A〜30Dは、例えばロードセル等で構成され、荷重を測定する。以下では、荷重センサ30A〜30Dの各々で測定された荷重を表すデータを単位荷重データと称し、荷重センサ30A〜30Dの各々で測定された荷重を合算した総荷重、すなわちユーザーの体重を表すデータを荷重データと称する。
【0030】
荷重測定回路28は、コントローラ18から測定を指示されると、荷重センサ30A〜30Dで測定された単位荷重データ及び荷重センサ30A〜30Dの各々で測定された単位荷重データを合算した荷重データを含む荷重情報を予め定めたサンプリング間隔tでコントローラ18に送信する。なお、サンプリング間隔tは、一例として12.5(ms)程度であるが、これに限られるものではない。
【0031】
次に、本実施形態の作用として、コントローラ18のCPU18Aにおいて実行されるバランス能力測定プログラムによるバランス能力測定処理について、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。
図3に示す処理は、バランス能力測定装置10の図示しない電源がオンされた場合に実行される。
【0032】
まず、ステップS100では、ユーザー32が表示ユニット12の操作部22を操作して、バランス能力の測定を指示したか否かを判定し、測定が指示された場合はステップS102へ移行し、測定が指示されていない場合はステップS112へ移行する。
【0033】
ステップS102では荷重情報の測定を開始する。まず、ユーザー32が測定台14に載っていない状態の出力、すなわち無負荷状態の出力であるゼロ点を測定した後、測定開始可能である旨を表示部20に表示させる。例えば「0.0kg」を表示部20に表示させる。これにより、
図4(A)に示すように、ユーザー32は、足を測定台14に載せた状態で椅子34に座る。バランス能力測定装置10は、
図4(A)〜(C)に示すように、ユーザー32が椅子34から立ち上がるまでの立ち上がり動作期間に荷重情報を測定し、測定した荷重情報に基づいて、ユーザー32のバランス能力に関するバランス能力評価値を算出する。
【0034】
次に、荷重情報の測定を開始するよう荷重測定回路28に指示する。これにより、荷重測定回路28は、荷重センサ30A〜30Dで測定された単位荷重データ及び荷重センサ30A〜30Dの各々で測定された単位荷重データを合算した荷重データを含む荷重情報を予め定めたサンプリング間隔tでコントローラ18に送信する。
【0035】
ステップS104では、荷重測定回路28から送信された荷重情報を受信し、タイマ24で取得した現在時刻と対応付けてメモリ18Dに記憶する。
【0036】
ステップS106では、荷重が安定したか否かを判定し、荷重が安定した場合はステップS108へ移行し、荷重が安定していない場合はステップS104へ戻る。
【0037】
荷重が安定したか否かは、例えば荷重の変動が予め定めた一定範囲内になったか否かによって判定する。また、現在から過去の予め定めた期間に測定された荷重データのばらつきを表す値、例えば標準偏差又は分散を算出し、算出した標準偏差又は分散が予め定めた閾値以下であるか否かを判定することにより、荷重が安定したか否かを判定するようにしてもよい。
【0038】
ステップS108では、荷重情報の測定を停止するよう荷重測定回路28に指示する。これにより、荷重測定回路28は、荷重情報の測定を停止し、コントローラ18に対する荷重情報の送信を停止する。
【0039】
ステップS110では、
図5に示すバランス能力評価値算出処理を実行する。
【0040】
ステップS112では、電源オフが指示されたか否かを判断し、電源オフが指示された場合はステップS114へ移行し、電源オフが指示されていない場合は、ステップS100へ移行して上記と同様の処理を実行する。
【0041】
ステップS114では、図示しない電源をオフして本ルーチンを終了する。
【0042】
図5のステップS200では、測定した荷重データに基づいて立ち上がり動作期間を設定する。
図6には、体重が約80kgのユーザーについて測定した荷重データの一例を示した。縦軸の荷重(kg)は、4個の荷重センサ30A〜30Dで測定された単位荷重データを合算した値である。
【0043】
図6の破線で示すポイントP1は、
図4(A)に示すようにユーザー32が椅子34に座った状態から立ち上がり動作を開始しようとしたポイントであり、一瞬荷重が軽くなるポイントである。また、
図6の破線で示すポイントP2は、
図4(B)に示すように、ユーザー32の臀部が椅子34から離れたポイントであり測定台14に荷重が最も大きく加わるポイントである。また、
図6の破線で示すポイントP3は、
図4(C)に示すように、ユーザー32が椅子34から立ち上がって立位姿勢が安定し、荷重が安定したポイントである。このポイントP3で測定された荷重がユーザー32の体重となる。
【0044】
本実施形態では、一例としてポイントP2からポイントP3までを立ち上がり動作期間として設定するが、ポイントP1からポイントP3までを立ち上がり動作期間として設定してもよい。
【0045】
ステップS200では、メモリ18Dに記憶された荷重データを参照し、荷重が最も大きく加わるポイントP2及び荷重が安定するポイントP3を特定する。
【0046】
具体的には、ポイントP2は、例えば測定した荷重データのうち値が最も大きいポイントを検出すればよい。また、ポイントP3は、例えばポイントP2の後に測定された荷重データについて予め定めた期間毎に荷重データの標準偏差又は分散を求め、求めた標準偏差又は分散が最初に予め定めた閾値以下となるポイントを検出すればよい。
【0047】
このようにして、ポイントP2からポイントP3までを立ち上がり動作期間として設定する。なお、立ち上がり動作期間をポイントP1からポイントP3までとした場合は、ポイントP1は、例えば測定した荷重データのうち値が最も小さいポイントを検出すればよい。
【0048】
ステップS202では、ユーザーの荷重の変化を表す荷重変化情報として、荷重データの単位時間当たりの変化量を算出する。具体的には、立ち上がり動作期間にサンプリング間隔tで測定されたn個の荷重データをW
1、W
2、・・・W
n(kg)、荷重データの単位時間当たりの変化量をvW
1、vW
2、・・・vW
n−1(kg/sec)として、vW
1=(W
2−W
1)/t、vW
2=(W
3−W
2)/t、・・・vW
n−1=(W
n−W
n−1)/tを算出する。
【0049】
ステップS204では、左右変位情報として、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量を算出する。具体的には、まず、立ち上がり動作期間のn個のサンプリング点において荷重センサ30A〜30Dにより測定された単位荷重データに基づいて、左右方向の変位をn個のサンプリング点について各々算出する。
【0050】
具体的には以下のように算出する。なお、本実施形態では、
図7に示すように、荷重センサ30A〜30Dが、X軸方向及びY軸方向のそれぞれについて等間隔で測定台14に配置されている場合について説明する。また、本実施形態では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向とする。すなわち、ユーザー32は、足の爪先と踵を結ぶ線がY軸方向を向くように測定台14に両足を載せてバランス能力評価値を測定するものとする。
【0051】
次に、荷重センサ30A(荷重センサ30B)と荷重センサ30C(荷重センサ30D)とのX軸方向の距離をLx(mm)、荷重センサ30A(荷重センサ30C)と荷重センサ30B(荷重センサ30D)とのY軸方向の距離をLy(mm)、荷重センサ30A〜30Dで測定された単位荷重データをそれぞれWA
i、WB
i、WC
i、WD
iとして、立ち上がり動作期間のn個のサンプリング点における左右方向の変位DX
i(i=1、2、・・・n)を次式により算出する。なお、
図7に示すように、X軸とY軸の交点、すなわち原点(0,0)は、荷重センサ30A〜30Dの中心である。
【0052】
DX
i=Lx×(−WA
i−WB
i+WC
i+WD
i)/W
i ・・・(1)
【0053】
ここで、W
iは、単位荷重データWA
i、WB
i、WC
i、WD
iを合算した総荷重を表す荷重データである。
【0054】
そして、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量をvDX
1、vDX
2、・・・vDX
nとして、vDX
1=(DX
2−DX
1)/t、vDX
2=(DX
3−DX
2)/t、・・・vDX
n−1=(DX
n−DX
n−1)/t(mm/sec)を算出する。
【0055】
ステップS206では、荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値として、ステップS202で算出した荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavを次式により算出する。
【0056】
vWav=(|vW
1|+|vW
2|+・・・|vW
n−1|)/(n−1) ・・・(2)
【0057】
なお、荷重データの単位時間当たりの変化量の代表値は、平均値に限られるものではなく、例えば重み付き平均値、中心値、標準偏差、及び分散等でもよい。
【0058】
ステップS208では、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値として、ステップS202で算出した左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavを次式により算出する。
【0059】
vDXav=(|vDX
1|+|vDX
2|+・・・|vDX
n−1|)/(n−1) ・・・(3)
【0060】
なお、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値は、平均値に限られるものではなく、例えば重み付き平均値、中心値、標準偏差、及び分散等でもよい。
【0061】
ステップS210では、ステップS206で算出した荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavと、ステップS208で算出した左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavと、に基づいて、バランス能力評価値Bを次式により算出する。
【0062】
B=vDXav/vWav ・・・(4)
【0063】
このように、本実施形態では、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavを、荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavで除算した値をバランス能力評価値Bとしている。
【0064】
左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavが大きい場合は、左右にふらつきながら又は片側に寄りながら立ち上がっていることが想定され、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavが小さい場合は、左右の動きが小さく、真っ直ぐ立ち上がっていることが想定される。
【0065】
また、荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavが大きい場合は、力強く且つ素早く立ち上がっていることが想定され、荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavが小さい場合は、ゆっくり立ち上がっていることが想定される。従って、バランス能力評価値Bが大きいほどバランスが悪いと言える。
【0066】
仮にバランス能力を左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavのみで評価する場合、素早く立ち上がった場合も大きめの値となる。これは、上記(1)式で示すように、左右方向の変位DX
iは、単位荷重データWA
i〜WD
iに基づいて算出しており、素早く立ち上がった場合は荷重の変動も大きいためである。従って、例えば運動部の大学生のように、バランス能力が高いユーザーの場合は、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavのみで評価すると、バランス能力が高いにも拘わらず、バランス能力が低いと評価されてしまう。
【0067】
これに対して、本実施形態では、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavを、荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavで除算した値をバランス能力評価値Bとしている。荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavは上下方向の荷重変動を表していると言えるため、荷重変動の影響を除去してバランス能力評価値を算出することができる。このため、精度良くバランス能力を評価することができる。
【0068】
また、例えば要介護の高齢者のようにバランス能力が低いユーザーの場合、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavは大きくなり、荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavは小さくなるのが通常である。従って、バランス能力評価値Bはかなり大きな値となり、上記(4)式によりバランス能力評価値Bを算出することが妥当であることが判る。
【0069】
このように、本実施形態では、ユーザーの左右方向の変動を表す左右方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDXavと、ユーザーの上下方向の変動を表す荷重データの単位時間当たりの変化量の平均値vWavと、を用いてバランス能力評価値Bを算出するため、精度良くバランス能力を評価することができる。
【0070】
また、測定台14と椅子34を置くスペースがあればバランス能力を測定でき、立ち上がるという日常動作を行うだけでバランス能力を測定できるため、省スペース且つ簡単にバランス能力を測定できる。
【0071】
また、バランス能力が低い人は転倒する可能性が高いが、本実施形態で算出されるバランス能力評価値によりバランス能力を把握することで転倒の可能性を予測することができる。
【0072】
また、本実施形態で算出されるバランス能力評価値によりバランス能力を把握することでバランス能力に応じて効率よくトレーニングを行うことができる。
【0073】
なお、バランス能力評価値Bの算出式は、上記(4)式に限られるものではない。例えば、バランス能力評価値Bの算出式に、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量を加えても良い。
【0074】
具体的には、バランス能力評価値Bを次式により算出する。
【0075】
B=(vDXav/vWav)×α+vDYav×β ・・・(5)
【0076】
ここで、α、βは予め定めた係数であり、例えば多数の被験者に対してバランス能力評価値を測定した結果に基づいて定める。なお、(5)式ではα、βを乗算しているが、加算等の他の演算を用いても良い。また、vDYavは、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量であり、次のように求める。
【0077】
具体的には、まず立ち上がり動作期間のn個のサンプリング点における前後方向の変位DY
i(i=1、2、・・・n)を次式により算出する。
【0078】
DY
i=Ly×(WA
i−WB
i−WC
i+WD
i)/W
i ・・・(6)
【0079】
次に、立ち上がり動作期間のn個のサンプリング点の前後方向の変位をDY
1、DY
2、・・・DY
n、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量をvDY
1、vDY
2、・・・vDY
nとして、vDY
1=(DY
2−DY
1)/t、vDY
2=(DY
3−DY
2)/t、・・・vDY
n−1=(DY
n−DY
n−1)/t(mm/sec)を算出する。
【0080】
次に、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値として、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDYavを次式により算出する。
【0081】
vDYav=(|vDY
1|+|vDY
2|+・・・|vDY
n−1|)/(n−1) ・・・(7)
【0082】
なお、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の代表値は、平均値に限られるものではなく、例えば重み付き平均値、中心値、標準偏差、及び分散等でもよい。
【0083】
ここで、椅子34に座った状態から立ち上がり動作を行うと前方向に重心は移動する。バランス能力が低い場合は、前後の動きを伴って立ち上がるため、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDYavは大きくなる。また、バランス能力が高い場合はスムーズに重心移動がなされるため、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDYavは小さくなる。
【0084】
また、筋力が低い人(主に高齢者など)は足の力だけでは立ち上がれず、上半身を大きく動かし、その反動で立ち上がることがあり、この場合も前後方向の動きは大きくなる。
【0085】
このように上半身を大きく動かして立ち上がり動作を行った場合、筋力が低く姿勢制御が難しいためバランス能力が低い、と考えられる。
【0086】
何れの場合も前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDYavが大きい場合はバランス能力が低いということになる。このため、バランス能力評価値の算出に、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量の平均値vDYavを加えることで、更に精度良くバランス能力評価値を測定することができる。
【0087】
また、例えば、バランス能力評価値Bの算出式に、立ち上がり動作期間を加えても良い。
【0088】
具体的には、立ち上がり動作期間をSTとして、バランス能力評価値Bを次式により算出する。
【0089】
B=(vDXav/vWav)×α+ST×γ ・・・(8)
【0090】
ここで、γは予め定めた係数であり、例えば多数の被験者に対してバランス能力評価値を測定した結果に基づいて定める。なお、(8)式ではγを乗算しているが、加算等の他の演算を用いても良い。また、立ち上がり動作期間STは、例えば
図6に示すポイントP3の時刻からポイントP2の時刻を減算することで求めることができる。
【0091】
立ち上がり動作期間STは、立ち上がり動作を開始してから立位姿勢で安定するまでの時間であり、立ち上がり動作期間STが長い場合は、立ち上がり動作を開始した後、立位姿勢を安定させるのに時間がかかっているということになり、バランス能力が低いと言える。一方、立ち上がり動作期間STが短い場合は、立ち上がり動作を開始後、直ぐに立位姿勢が安定したということになり、バランス能力が高いと言える。
【0092】
従って、上記(8)式のように、バランス能力評価値Bの算出式に、立ち上がり動作期間STを加えることにより、更に精度良くバランス能力を測定することができる。
【0093】
また、バランス能力評価値Bの算出式に、ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量及び立ち上がり動作期間STの両方を加えても良い。
【0094】
具体的には、バランス能力評価値Bを次式により算出する。
【0095】
B=(vDXav/vWav)×α+vDYav×β+ST×γ ・・・(9)
【0096】
なお、(9)式ではα、β、γを乗算しているが、加算等の他の演算を用いても良い。
【0097】
このように、バランス能力評価値Bの算出式に、ユーザーの前後方向の変位の単位時間当たりの変化量及び立ち上がり動作期間STを加えることにより、更に精度良くバランス能力を測定することができる。
【0098】
なお、上記(5)、(8)、(9)式における係数α、β、γを、ユーザー32のユーザー情報、例えば性別、年齢、及び体格(例えば身長及び体重の少なくとも1つを含む)の少なくとも一つを含む情報に基づいて重み付けしてもよい。これにより、更に精度良くバランス能力を測定することができる。
【0099】
また、本実施形態では、
図1に示すように、表示ユニット12と測定台14とが別体の場合について説明したが、表示ユニット12と測定台14とを一体化した構成としてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、左右方向に2個、前後方向に2個の合計4個の荷重センサを設けた場合について説明したが、これに限られるものではない。荷重センサは、左右方向の変位の単位時間当たりの変化量のみを用いてバランス能力評価値を算出する場合は左右方向に2個備えていればよく、さらに、前後方向の変位の単位時間当たりの変化量を加えてバランス能力評価値を算出する場合は、前後方向に荷重センサを少なくとも1個加えて合計で3個以上備えていればよい。
【0101】
また、例えば携帯電話、スマートフォン、及びタブレット端末等の携帯端末、パーソナルコンピュータ等を表示ユニット12に適用してもよい。この場合、測定台14に通信機能を設け、測定台14から携帯端末又はパーソナルコンピュータへ荷重情報を送信する。携帯端末又はパーソナルコンピュータでは、測定台14から送信された荷重情報を受信して取得すると共に
図3に示すバランス能力測定プログラムを実行する。これにより、携帯端末又はパーソナルコンピュータをバランス能力測定装置として機能させることができる。