(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
n個(nは2以上の偶数)のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルムの片面に金属を蒸着してなるn個の電極部が並列形成された金属化フィルムにおける非金属蒸着部を形成するためのオイルマスクを形成するのに用いられる版ロールであって、
前記非金属蒸着部は、各電極部においてフィルム幅方向に対して角度をなして延び、フィルム長さ方向に一定間隔で設けられた複数の傾斜マージンであり、
フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線を境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部の傾斜マージンと、フィルム幅方向他方側に位置する電極部の傾斜マージンとは、前記中心線について線対称となるように、逆方向に傾斜しており、
当該版ロールの外周面に、前記複数の傾斜マージンのオイルマスクを形成するための凸版部が周方向に間隔を空けて設けられ、
前記凸版部は、ロール幅方向中央から左右の端部に向かって対称となるように設けられている、
版ロール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属化フィルムコンデンサの製造に用いる1個のコンデンサ素子分のフィルム幅(以下適宜「1素子幅」という)を有する金属化フィルムは、複数個のコンデンサ素子分のフィルム幅(以下適宜「複数素子幅」という)を有する金属化フィルムを1個のコンデンサ素子分の金属化フィルムに裁断して製造される場合がある。
【0005】
金属化フィルムコンデンサの製造に用いる誘電体フィルムに関し、近年、コンデンサの軽量化や小型化等のために薄膜化の要求がある。しかし、複数素子幅を有する金属化フィルムにおいて誘電体フィルムを薄膜化すると、製造された金属化フィルムを巻き取った金属化フィルムロールの胴面に、金属蒸着電極のフィルム長さ方向のマージンに起因する段差(型入り)が生じやすくなる。金属化フィルムにおいて型入りが生じた部分には延びが生じているため、後工程であるコンデンサ作製工程で問題が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、複数素子幅を有する金属化フィルムにおいて、薄膜化しつつ型入りを抑制することを目的とする。また、複数素子幅を有する金属化フィルムの製造に用いる版ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下に記載する手段により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]n個(nは2以上の偶数)のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルムの片面に金属を蒸着してなるn個の電極部が並列形成された金属化フィルムであって、
各電極部には、フィルム幅方向に対して角度をなして延びる非金属蒸着部である複数の傾斜マージンがフィルム長さ方向に一定間隔で設けられ、
フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線を境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部の傾斜マージンと、フィルム幅方向他方側に位置する電極部の傾斜マージンとは、中心線について線対称となるように、逆方向に傾斜している、
金属化フィルム。
[2]各電極部には、誘電体フィルムのフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である縦マージンが設けられているとともに、
各電極部は、縦マージンによりフィルム幅方向に第1電極部と第2電極部に区分され、
第1電極部には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第1角度をなして延びる第1傾斜マージンがフィルム長さ方向において第1間隔で設けられ、
第2電極部には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第2角度をなして延びる第2傾斜マージンがフィルム長さ方向において第2間隔で設けられ、
第2間隔は第1間隔よりも小さく、
第2角度は第1角度よりも小さい、
[1]に記載の金属化フィルム。
[3]縦マージンは、フィルム長さ方向において一直線状にならないように、所定長さ毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされている、
[2]に記載の金属化フィルム。
[4]各電極部には、誘電体フィルムのフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である第1、第2及び第3縦マージンがフィルム幅方向に離間させて設けられているとともに、
各電極部は、第1、第2及び第3縦マージンによりフィルム幅方向に第1、第2、第3及び第4電極部に区分され、
第1電極部には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第1角度をなして延びる第1傾斜マージンがフィルム長さ方向において第1間隔で設けられ、
第2電極部には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第2角度をなして延びる第2傾斜マージンがフィルム長さ方向において第2間隔で設けられ、
第3電極部には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第1角度をなして延びる第3傾斜マージンがフィルム長さ方向において第1間隔で設けられ、
第4電極部には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第2角度をなして延びる第4傾斜マージンがフィルム長さ方向において第2間隔で設けられ、
第2間隔は第1間隔よりも小さく、
第2角度は第1角度よりも小さい、
[1]に記載の金属化フィルム。
[5]各縦マージンは、フィルム長さ方向において一直線状にならないように、所定長さ毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされている、
[4]に記載の金属化フィルム。
[6]1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルムの片面に金属を蒸着してなる電極部が形成された金属化フィルムであって、
電極部には、誘電体フィルムのフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である縦マージンが設けられているとともに、
電極部は、縦マージンによりフィルム幅方向に第1電極部と第2電極部に区分され、
第1電極部には、フィルム幅方向に対して第1角度をなして延びる非金属蒸着部である第1傾斜マージンがフィルム長さ方向において第1間隔で設けられ、
第2電極部には、フィルム幅方向に対して第2角度をなして延びる非金属蒸着部である第2傾斜マージンがフィルム長さ方向において第2間隔で設けられ、
第2間隔は第1間隔よりも小さく、
第2角度は第1角度よりも小さい、
金属化フィルム。
[7]縦マージンは、フィルム長さ方向において一直線状にならないように、所定長さ毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされている、
[6]に記載の金属化フィルム。
[8]1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルムの片面に金属を蒸着してなる電極部が形成された金属化フィルムであって、
電極部には、誘電体フィルムのフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である第1、第2及び第3縦マージンがフィルム幅方向に離間させて設けられているとともに、
電極部は、第1、第2及び第3縦マージンによりフィルム幅方向に第1、第2、第3及び第4電極部に区分され、
第1電極部には、フィルム幅方向に対して第1角度をなして延びる非金属蒸着部である第1傾斜マージンがフィルム長さ方向において第1間隔で設けられ、
第2電極部には、フィルム幅方向に対して第2角度をなして延びる非金属蒸着部である第2傾斜マージンがフィルム長さ方向において第2間隔で設けられ、
第3電極部には、フィルム幅方向に対して第1角度をなして延びる非金属蒸着部である第3傾斜マージンがフィルム長さ方向において第1間隔で設けられ、
第4電極部には、フィルム幅方向に対して第2角度をなして延びる非金属蒸着部である第4傾斜マージンがフィルム長さ方向において第2間隔で設けられ、
第2間隔は第1間隔よりも小さく、
第2角度は第1角度よりも小さい、
金属化フィルム。
[9]各縦マージンは、フィルム長さ方向において一直線状にならないように、所定長さ毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされている、
[8]に記載の金属化フィルム。
[10]n個(nは2以上の偶数)のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルムの片面に金属を蒸着してなるn個の電極部が並列形成された金属化フィルムにおける非金属蒸着部を形成するためのオイルマスクを形成するのに用いられる版ロールであって、
非金属蒸着部は、各電極部においてフィルム幅方向に対して角度をなして延び、フィルム長さ方向に一定間隔で設けられた複数の傾斜マージンであり、
フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線を境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部の傾斜マージンと、フィルム幅方向他方側に位置する電極部の傾斜マージンとは、中心線について線対称となるように、逆方向に傾斜しており、
当該版ロールの外周面に、複数の傾斜マージンのオイルマスクを形成するための凸版部が周方向に間隔を空けて設けられ、
凸版部は、ロール幅方向中央から左右の端部に向かって対称となるように設けられている、
版ロール。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数素子幅を有する金属化フィルムにおいて、薄膜化しつつ型入りを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る金属化フィルム及びその製造に用いる版ロールの実施の形態を説明する。
【0011】
(実施の形態1)
1.金属化フィルムの構成
図1は、実施の形態1における金属化フィルムをロール状に巻回した金属化フィルムロールの外観を模式的に示した斜視図である。金属化フィルム1は、金属化フィルムコンデンサの製造に用いられるものである。金属化フィルム1は、
図1に示すようにロール状に巻回された金属化フィルムロール1Rとして製造される。金属化フィルムロール1Rは、10個のコンデンサ素子分のフィルム幅(フィルム幅方向の長さ)を有する。本実施の形態では、本発明におけるnが10の場合を示しているが、これは一例であり、本発明において、nは2以上の偶数であればよい。金属化フィルム1には、1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する金属化フィルム部10p(以下「素子幅金属化フィルム部10p」という)が10列形成されている。
【0012】
図2は、実施の形態1における1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する金属化フィルム10をロール状に巻回して得られた金属化フィルムロール10Rの外観を模式的に示した斜視図である。ここで、1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する金属化フィルム10及び金属化フィルムロール10Rを以下適宜「素子幅金属化フィルム10」及び「素子幅金属化フィルムロール10R」という。
【0013】
素子幅金属化フィルム10は、後述するスリット工程において、金属化フィルムロール1Rから金属化フィルム1を巻き出して、1個のコンデンサ素子分のフィルム幅に裁断して得られ、裁断して得られた素子幅金属化フィルム10を巻回することで金属化フィルムロール10Rが形成される。素子幅については特に限定されないが、例えば、5〜500mmが好ましい。また、素子幅金属化フィルム10の巻長については特に限定されないが、例えば、1,000〜100,000mが好ましい。全幅の金属化フィルム1の幅は特に限定されないが、例えば、上記素子幅に列数を乗車した幅が好ましい。全幅の金属化フィルム1の巻長については特に限定されないが、例えば、素子幅金属化フィルム10の巻長と同程度が好ましい。
【0014】
図3は、実施の形態1における金属化フィルム1の構成を示した平面図である。金属化フィルム1は、10個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルム2の片面に金属を薄膜状に蒸着してなる10個の電極部20が並列に形成されている。これらの電極部20を総称して適宜「金属蒸着電極3」という。隣接する素子幅金属化フィルム部10p同士の境界にはそれぞれ、フィルム幅方向に直線状に延びる絶縁マージン11または電極取り出し部12が設けられている。マージンは、金属が蒸着されていない部位(非金属蒸着部)である。電極取り出し部12は、素子幅金属化フィルム10を利用して形成されたコンデンサ素子においてメタリコン電極を接合可能な部分である。
図3中の金属化フィルム1のうち、
図3で図示される黒い線領域が非金属蒸着部であり、
図3で図示される白い領域が金属蒸着部である。
【0015】
誘電体フィルム2を構成する成分は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリエチレンテレフタレート(PET: polyethylene terephthalate)、ポリフェニレンスルファイド(PPS:polyphenylene sulfide)、ポリエチレンナフタレート(PEN: polyethylene naphthalate)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF: polyvinylidene difluoride)等の絶縁性を有する樹脂を用いることができる。特に、誘電体フィルム2の主成分がポリプロピレンである場合は受熱による伸縮等の影響で型入りがしやすいため、実施の形態1における金属化フィルムとすることの型入り抑制の効果が大きい。そのため、誘電体フィルム2の主成分がポリプロピレンであることは好ましい態様である。ここで、主成分とは、誘電体フィルム2を構成する成分のうち50質量%以上含まれる成分を指す。上記絶縁性を有する樹脂は、誘電体フィルム2の80質量%以上含まれることが好ましく、90質量%以上含まれることがさらに好ましい。
【0016】
誘電体フィルム2の厚さは、0.5〜25μmが好ましく、0.7〜10μmがより好ましく、0.8〜6.0μmがより一層好ましく、1.0〜3.0μmがさらに好ましく、1.5〜2.9μmが特に好ましい。特に、誘電体フィルム2の厚さが0.8〜6.0μm(より好ましくは1.0〜3.0μm、さらに好ましくは1.5〜2.9μm)である場合、金属蒸着膜3を誘電体フィルム2に形成されて得られる金属化フィルムロール1Rの巻取り胴面には段差が生じにくくなり、型入り(段差部でのフィルムの伸び)が発生しにくくなる。そのため、金属化フィルムロール1R及びそれに巻き取られている金属化フィルム1の品質を向上させることができるとともに、これらの生産性を向上させることができる。また、金属化フィルム1の品質が向上することで、それを裁断して得られる素子幅金属化フィルム10の品質や素子幅金属化フィルム10を利用して作成されるコンデンサの品質も向上させることができる。なお、金属化フィルム1の厚さは、後述する金属蒸着膜3(金属蒸着電極3)の厚さとの関係で、0.5〜25μmが好ましく、0.7〜10μmがより好ましく、0.8〜6.2μmがより一層好ましく、1.0〜3.2μmがさらに好ましく、1.5〜3.1μmが特に好ましい。
【0017】
金属蒸着電極3の材料は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銅(Cu)等の金属材料又はこれらの合金等を用いることができる。金属蒸着電極3(金属蒸着膜3)の厚さは特に限定されないが、1〜200nmが好ましい。ここで、金属蒸着電極3のうち電極取り出し部12は、電極取り出し部12とメタリコン電極との接合を強固にし、電気的接続を良くするために、ヘビーエッジ構造を有している。ヘビーエッジ構造とは、金属蒸着電極3のうち電極取り出し部12の金属蒸着膜の厚さを、電極取り出し部12以外の部分の金属蒸着膜の厚さよりも厚くした構造である。例えば、電極取り出し部12の金属蒸着膜の厚さは、電極取り出し部12以外の部分の金属蒸着膜の厚さの2〜5倍程度とする。また、金属蒸着電極3の厚さは、所望の電気特性が得られるように、金属蒸着電極3の材料の固有抵抗に応じて設定してもよい。
【0018】
図4は、
図3の破線Aで示す部分の拡大図である。素子幅金属化フィルム部10pのフィルム幅方向の一端部には、前述したフィルム長さ方向に延びる絶縁マージン11が配置され、フィルム幅方向の他端部には、前述したフィルム長さ方向に延びる電極取り出し部12が配置されている。そして、好適には、素子幅金属化フィルム部10pには、第1縦マージン41、第2縦マージン42、複数の第1傾斜マージン31、複数の第2傾斜マージン32が設けられている。
【0019】
第1縦マージン41は、例えば素子幅金属化フィルム部10pのフィルム幅方向のほぼ中央でフィルム長さ方向に延びる。
【0020】
第2縦マージン42は、例えば第1縦マージン41と絶縁マージン11のフィルム幅方向の中間付近でフィルム長さ方向に延びる。
【0021】
第1傾斜マージン31は、例えば第1縦マージン41と電極取り出し部12との間で、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして直線状に延びる。複数の第1傾斜マージン31は、一例としてフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
【0022】
第2傾斜マージン32は、例えば第1縦マージン41と絶縁マージン11との間で、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなして直線状に延びる。複数の第2傾斜マージン32は、一例としてフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
【0023】
ここで、好適には、第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい間隔である。また、好適には、第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい角度である。第2傾斜マージン32の傾斜を第1傾斜マージン31と同程度の傾斜とすれば、後述する型入りに対する効果はより強く得られる。しかし、第2傾斜マージン32の傾斜をより大きくすると、分割電極部22における有効電極面積が減少し、コンデンサ素子の容量が低下する。そのため、型入りに対する効果と有効電極面積の減少とのバランスを考慮して第2傾斜マージン32の第2角度θ2を設定している。一方、第1傾斜マージン31は、第2傾斜マージン32よりも相対的に本数が少ないため、有効電極面積に対する第1傾斜マージン31の傾斜の影響は少ない。そのため、第1傾斜マージン31については、型入り抑制に対する効果が最大限得られる第2角度θ2に設定している。
【0024】
第1縦マージン41、第2縦マージン42、第1傾斜マージン31、及び第2傾斜マージン32の幅は、好適には、それぞれ50〜300μm(より好適には100〜200μm)である。
【0025】
上記各種のマージンにより、素子幅金属化フィルム部10pの第1縦マージン41の電極取り出し部12側に大電極部21が形成され、第1縦マージン41の絶縁マージン11側に複数の第1分割電極39A及び第2分割電極39Bを有する分割電極部22が区画形成されている。電極取り出し部12は、大電極部21において後述するメタリコン電極が接合可能な部分である。なお、本実施形態では、大電極部21に第1傾斜マージン31が設けられていることで、メタリコン電極が接合された状態では、大電極部21も複数の電極38に分割される。大電極部21においても保安機構が構成される。なお、第1傾斜マージン31の配置間隔である第1間隔L1は、第2傾斜マージン32の配置間隔である第2間隔L2よりも大きいため、分割して得られる電極38の大きさ(面積)は、第1分割電極39A及び第2分割電極39Bの大きさ(面積)よりも大きい。
【0026】
第1縦マージン41上には、第1分割電極39Aと大電極部21とを電気的に接続する複数の第1ヒューズ51が設けられている。各第1ヒューズ51は、第1分割電極39Aと大電極部21とを接続する蒸着金属からなる電気通路であり、第1分割電極39Aで絶縁欠陥が発生した際に第1ヒューズ51に流れる電流で蒸発する。これにより、絶縁欠陥の発生した第1分割電極39Aを隣接する大電極部21から電気的に切り離す。
【0027】
第2縦マージン42上には、第1分割電極39Aと第2分割電極39Bとを電気的に接続する複数の第2ヒューズ52が設けられている。各第2ヒューズ52は、各第1分割電極39Aと第2分割電極39Bとを接続する蒸着金属からなる電気通路であり、第2分割電極39Bで絶縁欠陥が発生した際に第2ヒューズ52に流れる電流で蒸発する。これにより、絶縁欠陥の発生した第2分割電極39Bを隣接する第1分割電極39Aから電気的に切り離す。
【0028】
また、本実施の形態では、好適には、第1縦マージン41及び第2縦マージン42は、それぞれ、フィルム長さ方向において一直線状にならないように第1分割電極39Aの1個毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされ、ジグザグ状に延びている。1個の第1分割電極39Aのフィルム長さ方向の長さは、所定長さの一例である。
【0029】
より具体的には、各第1分割電極39Aの側方の第1縦マージン41は、フィルム長さ方向において隣接する第1分割電極39Aの側方の第1縦マージン41に対してはフィルム幅方向において異なる位置となるが、その隣の第1分割電極39Aの側方の第1縦マージン41に対してはフィルム幅方向において同じ位置となるように形成されている。つまり、第1縦マージン41は、第1分割電極39Aの1つおきにフィルム幅方向において同じ位置となるように形成されている。
【0030】
また、各第1分割電極39Aの側方の第2縦マージン42は、フィルム長さ方向において隣接する第1分割電極39Aの側方の第1縦マージン41に対してはフィルム幅方向において異なる位置となるが、その隣の第1分割電極39Aの側方の第2縦マージン42に対してはフィルム幅方向において同じ位置となるように形成されている。つまり、第2縦マージン42は、第1分割電極39Aの1つおきにフィルム幅方向において同じ位置となるように形成されている。
【0031】
ここで
図3に戻り、上述した金属蒸着電極3において、フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線Lcを境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部20の傾斜マージン31,32と、フィルム幅方向他方側に位置する電極部20の傾斜マージン31,32とは、中心線Lcについて線対称となるように、逆方向に傾斜している。
【0032】
2.金属化フィルムの製造方法
図5は、金属化フィルム1の製造方法を説明した図である。製造装置は、誘電体フィルム供給部101と、絶縁マージン形成部102と、パターン形成部103と、蒸着部104と、巻き取りロール105とを備える。
【0033】
誘電体フィルム供給部101は、誘電体フィルム2が巻回された誘電体フィルムロール2Rを支持し、誘電体フィルム2を供給する。誘電体フィルムロール2Rから供給された誘電体フィルム2は絶縁マージン形成部102に搬送される。
【0034】
絶縁マージン形成部102は、誘電体フィルム2の面2aに絶縁マージン11のパターンに対応するパターンのオイルを塗布してオイルマスクを形成する。オイルマスクは、金属化フィルム1において絶縁マージンとなる部分に、蒸着工程で金属粒子が付着するのを防止するためのものである。絶縁マージン形成部102は、オイルタンクに貯蔵しているオイルを気化してタンクに設けたノズル(スリット)より、直接、誘電体フィルム2の一の面2aにオイルを塗布しオイルマスクを形成する。
【0035】
パターン形成部103は、誘電体フィルム2の一の面2aに、金属蒸着電極3の電極パターンに概ね対応するパターンでオイルを塗布し、オイルマスクを形成する。オイルマスクは、金属化フィルム1において傾斜マージンや縦マージンとなる部分に、蒸着工程で金属粒子が付着するのを防止するためのものである。パターン形成部103は、オイルタンク103aと、アニロックスロール103bと、転写ロール103cと、版ロール103dと、バックアップロール103eを有する。オイルタンク103aは、貯蔵しているオイルを気化してノズルから噴出する。アニロックスロール103bと転写ロール103cは、その外周面にオイルタンク103aのノズルから噴出されたオイルが付着した状態で回転する。
【0036】
図6は、金属化フィルムの製造に用いる版ロールの外観を模式的に示した図である。版ロール103dの外周面には、金属蒸着電極3の電極パターンに対応するパターン形状を有する凸版部103daが設けられており、版ロール103dは、誘電体フィルム2の搬送と同期して回転することにより、誘電体フィルム2の面2aに金属蒸着電極3の電極パターンに対応するパターンのオイルを塗布してオイルマスクを形成する。版ロール103dの凸版部103daのパターン形状は、
図3で説明した電極パターンと同じでよい。例えば、凸版部103daには、傾斜マージン31,32に対応する傾斜したリブ状の凸部103db,103dcが設けられている。
【0037】
図5に戻り、バックアップロール103eは誘電体フィルム2を介して版ロール103dと対向し、誘電体フィルム2の面2bに当接する。
【0038】
絶縁マージン形成部102及びパターン形成部103を通過した誘電体フィルム2は蒸着部104へと搬送される。
【0039】
蒸着部104は、金属蒸気生成部104a、104bと、金属蒸気生成部104a、104bに誘電体フィルム2を介して対向する冷却ロール104cとを備える。金属蒸気生成部104aは、金属蒸着電極3の材料である金属を熱して蒸発させて金属蒸気を発生し、発生させた金属蒸気を誘電体フィルム2の面2aに蒸着させる。金属蒸気生成部104bは、電極取り出し部12の材料である金属を熱して蒸発させて金属蒸気を発生し、金属蒸気生成部104aによって誘電体フィルム2の面2a上に形成された大電極部21上に重ねて蒸着される。これにより、電極取り出し部12部分の金属蒸着膜は、それ以外の部分の金属蒸着膜よりも厚くなり、ヘビーエッジ構造が形成される。なお、金属蒸気生成部104a、104bで発生した金属蒸気は、誘電体フィルム2の面2a上に形成されたオイルマスク以外の部分に付着することで金属蒸着電極3を形成する。冷却ロール104cは誘電体フィルム2に当接して誘電体フィルム2を冷却する。
【0040】
誘電体フィルム2に蒸着部104で金属蒸着電極3が形成されることで形成された金属化フィルム1は、巻き取りロール105に搬送され巻き取られる。
【0041】
このように、実施の形態における製造装置を用いた製造方法により、誘電体フィルム2の面2a上に所望の金属蒸着電極3を形成できる。
【0042】
3.素子幅金属化フィルム10の製造方法
図7は、素子幅金属化フィルム10の製造方法を示した図である。素子幅金属化フィルム10の製造においては、
図7に示すように、金属化フィルムロール1Rから金属化フィルム1を巻き出して、切断刃150により各絶縁マージン11及び各電極取り出し部12のフィルム幅方向中央で切断する。そして、切断により得られた複数の素子幅金属化フィルム10をそれぞれロール状に巻き取り、素子幅金属化フィルムロール10Rとして製造する。その場合において、素子幅金属化フィルムロール10Rの材料となる金属化フィルムロール1Rにおいて型入りが抑制されているため、金属化フィルムロール1Rから得られる素子幅金属化フィルムロール10Rについても、良好な品質が得られることとなる。
【0043】
4.比較例
図8は、比較例における金属化フィルムの構成を示した平面図である。比較例における金属化フィルム200は、本実施の形態同様に、10個の素子幅金属化フィルム部210pを有するとともに、素子幅金属化フィルム部210pは、それぞれ大電極部221、分割電極部222を有する点では同じであるが、本実施の形態の傾斜マージン31,32に代えて、フィルム幅方向に平行に延びる横マージン231,232が設けられている点で異なる。
【0044】
図9は、比較例における問題点を説明した図である。比較例における金属化フィルムロール200Rを、
図5で説明した本実施の形態の製造方法と同様の製造方法で製造した。なお、パターン形成部の版ロールに設けられているパターンは
図8の電極パターンにあわせて、当然ながら異なる。比較例では、誘電体フィルムの厚さが薄い場合(一例として1.0〜3.0μm、特に1.5〜2.9μm)に、
図9で模式的に示すように、金属化フィルムロール200Rの胴面(外周面)に金属化フィルム200の縦マージンに沿って型入りが発生した。型入りとは、製造された金属化フィルムロールの胴面(外周面)に周方向に沿って筋状に凹むことで段差が生じることである。型入りは、金属化フィルムにおける非金属蒸着部(特に縦マージン)と、金属蒸着部との微細な厚み差により生じる。より具体的には、金属化フィルム200において厚みが局所的に薄くなっている縦マージン部分が、フィルム幅方向の同位置で巻き重なることで発生するものと考えられる。型入り部では段差により金属化フィルム200が伸びた状態となっているため、程度によっては後工程でのシワ入りや金属蒸着層の破壊の原因となる。そのため、コンデンサとしての電気特性の低下につながるため、コンデンサの作製には利用できない場合が生じる。
【0045】
5.本実施の形態における効果
図10は、実施の形態1における効果を説明した図である、本実施の形態では、金属化フィルム1のフィルム幅方向中央から端部に向かって左右対称に傾斜マージン(31,32)が設けられている。このような構成によると、誘電体フィルム2に金属蒸着電極(3)を形成して得られた金属化フィルム1の巻き取り時に当該金属化フィルム1に加わる力が、フィルム幅方向中央からフィルム幅方向の両方の端部側に傾斜マージンに沿って、白抜き矢印で示すように斜め方向に分散しやすくなる。そのため、金属化フィルム1の巻き取り時に当該金属化フィルム1をフィルム幅方向の両方の端部側に伸ばす効果が得られる。したがって、金属化フィルム1(誘電体フィルム2)を薄膜化しても、金属化フィルムロール1Rの巻取り胴面に段差が生じにくくなり、型入り(段差部でのフィルムの伸び)が発生しにくくなる。そのため、金属化フィルムロール1R及びそれに巻き取られている金属化フィルム1の品質を向上させることができるとともに、これらの生産性を向上させることができる。また、金属化フィルム1の品質が向上することで、それを裁断して得られる素子幅金属化フィルム10の品質や素子幅金属化フィルム10を利用して作成されるコンデンサの品質も向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、第1縦マージン41及び第2縦マージン42を一直線状でなく、上述のように互い違いにジグザグ状に形成したことで、第1縦マージン41同士、及び第2縦マージン42同士がそれぞれ重なりにくくなり、これにより第1縦マージン41部分,及び第2縦マージン42部分における型入りが一層生じにくくなる。
【0047】
また、本実施の形態では、誘電体フィルム2を走行させながら版ロール103dで電極パターンのオイルマスクを形成する際に、版ロール103dが
図6の矢印で示す方向に回転すると、凸版部103daにおいて傾斜マージン31,32用のオイルマスクを形成するリブ状の凸部103db,103dcにより、版ロール103dの幅方向中央から両方の端部に向かって、移動中の誘電体フィルム2のシワを伸ばす方向の力が誘電体フィルム2に作用する。そのため、電極パターンのオイルマスク形成時における誘電体フィルム2のシワ入りが軽減されるとともに、印刷性が向上する。
【0048】
6.本実施の形態における素子幅金属化フィルムを利用して構成されたコンデンサ
図11は、実施の形態1における素子幅金属化フィルム10を用いた金属化フィルムコンデンサの外観を模式的に示した斜視図である。
【0049】
図11に示すように、金属化フィルムコンデンサ60は、コンデンサ素子61と、メタリコン電極62と、リード線63とを備える。
【0050】
コンデンサ素子61は、2枚の素子幅金属化フィルム10を後述するように重ねて巻回し、さらにプレス処理して得られる。
【0051】
メタリコン電極62は、コンデンサ素子61のフィルム幅方向の両方の端部に金属溶射を行った後、熱エージングを行うことで形成されている。熱エージングとは、真空下で高温下(例えば70〜150℃)で素子を熱硬化させることである。真空とするのは、フィルムの空気を抜き、フィルムを酸化させないためである。
【0052】
リード線63は、上記のようにして形成されたメタリコン電極62に対して例えば半田又は溶接によって接続される。
【0053】
図12は、実施の形態1における素子幅金属化フィルム10を用いて巻回したコンデンサ素子の一部展開斜視図である。
図13は、実施の形態1における素子幅金属化フィルム10を用いた金属化フィルムコンデンサの構成を模式的に示した図である。(a)図は第1素子幅金属化フィルム10(10A)の平面図、(b)図は第2素子幅金属化フィルム10(10B)の平面図、(c)図は重ね合わせた状態の第1素子幅金属化フィルム10(10A)及び第2素子幅金属化フィルム10(10B)の平面図、(d)図は(c)図のC−C断面を模式的に説明した図である。なお、電極取り出し部12は前述のようにヘビーエッジ構造を有しているが、
図13(d)は模式的な図であるため、金属蒸着膜の厚さの差について特には示していない。
【0054】
ここで、(a)図の第1素子幅金属化フィルム10(10A)は、
図3の金属化フィルム1において破線Aで示す部分に相当し、(b)図の第2素子幅金属化フィルム10(10B)は、
図3の金属化フィルム1において破線Bで示す部分に相当する。これらは上述の通り対称な構成を有する。
【0055】
コンデンサ素子61は、
図13(a)、
図13(b)に示すような2枚の素子幅金属化フィルム10(10A),10(10B)を、
図12、
図13(c)、
図13(d)に示すように、絶縁マージン11がフィルム幅方向で互いに逆側に位置する状態で重ね合わせて巻回し、扁平化することで形成される。この構成によると、一方の素子幅金属化フィルム10の分割電極部22と他方の素子幅金属化フィルム10の大電極部21とが重なる。そのため、2枚の素子幅金属化フィルム10が重なった状態では、素子幅金属化フィルム10の全面において、分割電極部22による保安機構が構成され、保安性に優れた金属化フィルムコンデンサ60が提供されることとなる。
【0056】
7.まとめ
本実施の形態において、n個(nは2以上の偶数)のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルム2の片面に金属を蒸着してなるn個の電極部20が並列形成されている金属化フィルム1が提供される。
各電極部20には、フィルム幅方向に対して角度をなして延びる非金属蒸着部である複数の傾斜マージン31,32がフィルム長さ方向に一定間隔で設けられている。
フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線Lcを境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部20の傾斜マージン31と、フィルム幅方向他方側に位置する電極部20の傾斜マージン32とは、中心線Lcについて線対称となるように、逆方向に傾斜している。
【0057】
これにより、複数素子幅を有する金属化フィルム1において、薄膜化しつつ型入りを抑制できる。
【0058】
また、本実施の形態において、
各電極部20には、誘電体フィルム2のフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である縦マージン41が設けられている。
各電極部20は、縦マージン41によりフィルム幅方向に大電極部21(第1電極部)と分割電極部22(第2電極部)に区分されている。
大電極部21(第1電極部)には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして延びる第1傾斜マージン31がフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
分割電極部22(第2電極部)には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなして延びる第2傾斜マージン32がフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい。
第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい。
【0059】
これにより、さらに、電極部20における非金属蒸着部の面積の増大を抑制しつつ、型入りを抑制できる。
【0060】
また、本実施の形態において、
縦マージン41は、フィルム長さ方向において一直線状にならないように、所定長さ毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされている。
【0061】
これにより、巻回された金属化フィルム1において縦マージン41部分が一直線状に重ならない。そのため、縦マージン41部分における型入りをより一層抑制することができる。
【0062】
また、本実施の形態において、
1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルム2の片面に金属を蒸着してなる電極部20が形成された素子幅金属化フィルム10が提供される。
電極部20には、誘電体フィルム2のフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である縦マージン41が設けられている。
電極部20は、縦マージン41によりフィルム幅方向に大電極部21(第1電極部)と分割電極部22(第2電極部)に区分されている。
大電極部21(第1電極部)には、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして延びる非金属蒸着部である第1傾斜マージン31がフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
分割電極部22(第2電極部)には、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなす方向に延びる非金属蒸着部である第2傾斜マージン32がフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい。
第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい。
【0063】
また、本実施の形態において、
n個(nは2以上の偶数)のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルム2の片面に金属を蒸着してなるn個の電極部20が並列形成された金属化フィルム1における非金属蒸着部を形成するためのオイルマスクを形成するのに用いられる版ロール103dが提供される。
非金属蒸着部は、各電極部20においてフィルム幅方向に対して角度をなして延び、フィルム長さ方向に一定間隔で設けられた複数の傾斜マージン31,32である。
フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線Lcを境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部20の傾斜マージン31,32と、フィルム幅方向他方側に位置する電極部20の傾斜マージン31,32とは、中心線Lcについて線対称となるように、逆方向に傾斜している。
当該版ロール103dの外周面に、複数の傾斜マージン31,32のオイルマスクを形成するための凸版部103daが周方向に間隔を空けて設けられている。
凸版部103daは、ロール幅方向中央から左右の端部に向かって対称となるように設けられている。
【0064】
これにより、誘電体フィルム2を走行させながら電極パターンのオイルマスクを形成する際に、版ロール103dの中央部から端に向かって誘電体フィルム2のシワを伸ばす方向の力が誘電体フィルム2に作用する。そのため、電極パターンのオイルマスク形成時における誘電体フィルム2のシワ入りが軽減されるとともに、印刷性が向上する。
【0065】
(実施の形態2)
実施の形態2について図面を参照して説明する。
【0066】
1.金属化フィルムの構成
図14は、実施の形態2における金属化フィルムの構成を示した平面図である。
図15は、
図14の破線Dで示す部分の拡大図である。実施の形態2では、
図14に示すように、素子幅金属化フィルム部10pに、第1大電極部21A及び第2大電極部21Bの2つの大電極部と、第1分割電極部22A及び第2分割電極部22Bの2つの分割電極部とがフィルム幅方向において交互に設けられている。以下、実施の形態1との相違点を中心として詳しく説明する。
【0067】
図15に示すように、実施の形態2における素子幅金属化フィルム部10pのフィルム幅方向の一端部及び他端部には、実施の形態1と同様の絶縁マージン11及び電極取り出し部12が配置されている。そして 、好適には、素子幅金属化フィルム部10pには、第1縦マージン41、第2縦マージン42、第3縦マージン43、複数の第1傾斜マージン31、複数の第2傾斜マージン32、複数の第3傾斜マージン33、複数の第4傾斜マージン34が設けられている。
【0068】
絶縁マージン11は、素子幅金属化フィルム部10pのフィルム幅方向の一端部においてフィルム長さ方向に直線状に延びる。
【0069】
第1縦マージン41は、例えば第2縦マージン42と電極取り出し部12とのフィルム幅方向のほぼ中間でフィルム長さ方向に延びる。
【0070】
第2縦マージン42は、例えば素子幅金属化フィルム部10pのフィルム幅方向のほぼ中央でフィルム長さ方向に延びる。
【0071】
第3縦マージン43は、例えば第2縦マージン42と絶縁マージン11のフィルム幅方向の中間付近でフィルム長さ方向に延びる。
【0072】
第1傾斜マージン31は、例えば第1縦マージン41と電極取り出し部12との間で、一例としてフィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして直線状に延びる。複数の第1傾斜マージン31は、一例としてフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
【0073】
第2傾斜マージン32は、例えば第1縦マージン41と第2縦マージン42との間で、一例としてフィルム幅方向に対して第2角度θ2をなして直線状に延びる。複数の第2傾斜マージン32は、一例としてフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。好適には、第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい間隔である。また、好適には、第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい角度に設定されている。
【0074】
第3傾斜マージン33は、例えば第2縦マージン42と第3縦マージン43との間で、一例としてフィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして直線状に延びる。複数の第3傾斜マージン33は、一例としてフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
【0075】
第4傾斜マージン34は、例えば第3縦マージン43と絶縁マージン11との間で、一例としてフィルム幅方向に対して第2角度θ2をなして直線状に延びる。複数の第4傾斜マージン34は、一例としてフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。好適には、第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい間隔である。また、好適には、第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい角度に設定されている。
【0076】
第1縦マージン41、第2縦マージン42、第3縦マージン43、第1傾斜マージン31、第2傾斜マージン32、第3傾斜マージン33、及び第4傾斜マージン34の幅は、好適には、それぞれ50〜300μm(より好適には100〜200μm)である。
【0077】
上記各種のマージンにより、素子幅金属化フィルム部10pの第1縦マージン41の電極取り出し部12側に第1大電極部21Aが形成され、第1縦マージン41と第2縦マージン42との間に複数の第1分割電極39Aを有する第1分割電極部22Aが形成される。第2縦マージン42と第3縦マージン43との間には、第2大電極部21Bが形成される。第3縦マージン43の絶縁マージン11側には複数の第2分割電極39Bを有する第2分割電極部22Bが形成される。電極取り出し部12は、第1大電極部21Aにおいて後述するメタリコン電極が接合可能な部分である。なお、本実施形態では、第1大電極部21Aに第1傾斜マージン31が設けられていることで、メタリコン電極が接合された状態では、第1大電極部21Aも複数の電極38Aに分割され、第1大電極部21Aにおいても保安機構が構成される。また、第2大電極部21Bに第3傾斜マージン33が設けられていることで、第2大電極部21Bも複数の電極38Bに分割され、第2大電極部21Bにおいても保安機構が構成される。なお、第1傾斜マージン31及び第3傾斜マージン33の配置間隔である第1間隔L1は、第2傾斜マージン32及び第4傾斜マージン34の配置間隔である第2間隔L2よりも大きいため、分割して得られる電極38A及び38Bの大きさ(面積)は、第1分割電極39A及び第2分割電極39Bの大きさ(面積)よりも大きい。
【0078】
第1縦マージン41上には、第1大電極部21Aと第1分割電極39Aとを電気的に接続する複数の第1ヒューズ51が設けられている。各第1ヒューズ51は、第1大電極部21Aと第1分割電極39Aとを接続する蒸着金属からなる電気通路であり、第1分割電極39Aで絶縁欠陥が発生した際に流れる電流で蒸発する。これにより、絶縁欠陥の発生した第1分割電極39Aを隣接する第1大電極部21Aから電気的に切り離す。
【0079】
第2縦マージン42上には、第1分割電極39Aと第2大電極部21Bとを電気的に接続する複数の第2ヒューズ52が設けられている。各第2ヒューズ52は、第1分割電極39Aと第2大電極部21Bとを接続する蒸着金属からなる電気通路であり、第1分割電極39Aで絶縁欠陥が発生した際に流れる電流で蒸発する。これにより、絶縁欠陥の発生した第1分割電極39Aを隣接する第2大電極部21Bから電気的に切り離す。
【0080】
第3縦マージン43上には、第2大電極部21Bと第2分割電極39Bとを電気的に接続する第3ヒューズ53が設けられている。第3ヒューズ53は、第2大電極部21Bと第2分割電極39Bとを接続する蒸着金属からなる電気通路であり、第2分割電極39Bで絶縁欠陥が発生した際に流れる電流で蒸発する。これにより、絶縁欠陥の発生した第2分割電極39Bを隣接する第2大電極部21Bから電気的に切り離す。
【0081】
また、本実施の形態では、好適には、第1縦マージン41、第2縦マージン42、及び第3縦マージン43は、それぞれ、フィルム長さ方向において一直線状にならないように分割電極39A,39Bの1個毎にフィルム幅方向に互い違いにずらされ、ジグザグ状に延びている。この形状については、実施の形態1と同様であり、詳しい説明は省略する。
【0082】
ここで
図14に戻り、上述した金属蒸着電極3において、フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線Lcを境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部20の傾斜マージン31,32,33,34と、フィルム幅方向他方側に位置する電極部20の傾斜マージン31,32,33,34とは、中心線Lcについて線対称となるように、逆方向に傾斜している。
【0083】
実施の形態2における金属化フィルム1は、実施の形態2における金属化フィルム1と同様の製造方法により製造可能である。
【0084】
図16は、実施の形態2における素子幅金属化フィルム10を用いた金属化フィルムコンデンサの構成を模式的に示した図である。(a)図は第1素子幅金属化フィルム10(10A)の平面図、(b)図は第2素子幅金属化フィルム10(10B)の平面図、(c)図は重ね合わせた状態の第1素子幅金属化フィルム10(10A)及び第2素子幅金属化フィルム10(10B)の平面図、(d)図は(c)図のF−F断面を模式的に説明した図である。なお、電極取り出し部12は前述のようにヘビーエッジ構造を有しているが、
図16(d)は模式的な図であるため、金属蒸着膜の厚さの差について特には示していない。
【0085】
ここで、(a)図の第1素子幅金属化フィルム10(10A)は、
図14の金属化フィルム1において破線Dで示す部分に相当し、(b)図の第2素子幅金属化フィルム10(10B)は、
図14の金属化フィルム1において破線Eで示す部分に相当する。これらは上述の通り対称な構成を有する。
【0086】
コンデンサ素子61は、
図16(a)、
図16(b)に示すような2枚の素子幅金属化フィルム10(10A),10(10B)を、
図16(c)、
図16(d)に示すように、絶縁マージン11がフィルム幅方向で互いに逆側に位置する状態で重ね合わせて巻回し、扁平化することで形成される。この構成によると、一方の素子幅金属化フィルム10の第1分割電極部22A及び第2分割電極部22Bと他方の素子幅金属化フィルム10の第1大電極部21A及び第2大電極部21Bとが重なる。そのため、2枚の素子幅金属化フィルム10が重なった状態では、素子幅金属化フィルム10の全面において、第1分割電極部22A及び第2分割電極部22Bによる保安機構が構成され、保安性に優れたコンデンサが提供されることとなる。
【0087】
2.まとめ
本実施の形態において、
各電極部20には、誘電体フィルム2のフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である第1、第2及び第3縦マージン41,42,43がフィルム幅方向に離間させて設けられている。
各電極部20は、第1、第2及び第3縦マージン41,42,43によりフィルム幅方向に第1大電極部21A(第1電極部)、第1分割電極部22A(第2電極部),第2大電極部21B(第3電極部)、第2分割電極部22B(第2電極部)に区分されている。
第1大電極部21A(第1電極部)には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして延びる第1傾斜マージン31がフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
第1分割電極部22A(第2電極部)には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなして延びる第2傾斜マージン32がフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
第2大電極部21B(第3電極部)には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして延びる第3傾斜マージン33がフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
第2分割電極部22B(第4電極部)には、傾斜マージンとして、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなして延びる第4傾斜マージン34がフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい。
第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい。
【0088】
これにより、さらに、電極部20における非金属蒸着部の面積の増大を抑制しつつ、型入りを抑制できる。
【0089】
また、本実施の形態において、
1個のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルム2の片面に金属を蒸着してなる電極部20が形成された素子幅金属化フィルム10が提供される。
電極部20には、誘電体フィルム2のフィルム長さ方向に延びる非金属蒸着部である第1、第2及び第3縦マージン41,42,43がフィルム幅方向に離間させて設けられている。
電極部20は、縦マージン41によりフィルム幅方向に第1大電極部21A(第1電極部)、第1分割電極部22A(第2電極部),第2大電極部21B(第3電極部)、第2分割電極部22B(第2電極部)に区分されている。
第1大電極部21A(第1電極部)には、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして延びる非金属蒸着部である第1傾斜マージン31がフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
第1分割電極部22A(第2電極部)には、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなす方向に延びる非金属蒸着部である第2傾斜マージン32がフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
第2大電極部21B(第3電極部)には、フィルム幅方向に対して第1角度θ1をなして延びる非金属蒸着部である第3傾斜マージン33がフィルム長さ方向において第1間隔L1で設けられている。
第2分割電極部22B(第4電極部)には、フィルム幅方向に対して第2角度θ2をなす方向に延びる非金属蒸着部である第4傾斜マージン34がフィルム長さ方向において第2間隔L2で設けられている。
第2間隔L2は第1間隔L1よりも小さい。
第2角度θ2は第1角度θ1よりも小さい。
【0090】
(他の実施の形態)
実施の形態1、2では、金属化フィルムが縦マージンを有している。しかし、請求項1に係る発明の金属化フィルムでは縦マージンは必須ではない。例えば、並列形成されたn個の電極部の各々をフィルム幅方向に第1電極部と第2電極部とに区分(例えば大電極部と分割電極部とに区分)しない構成の金属化フィルムでは、縦マージンはなくてもよいが、このような金属化フィルムにも、請求項1に係る発明の金属化フィルムを好適に用いることができる。また、例えば、並列形成されたn個の電極部の各々をフィルム幅方向に第1電極部と第2電極部とに区分(例えば大電極部と分割電極部とに区分)するが、第1電極部と第2電極部との間にヒューズ等の保安機構を設けない構成の金属化フィルムでは、縦マージンはなくてもよいが、このような金属化フィルムにも、請求項1に係る発明の金属化フィルムを好適に用いることができる。
【0091】
実施の形態1、2では、各縦マージンが、フィルム長さ方向において一直線状にならないように、所定長さ単位でフィルム幅方向に互い違いにずらされジグザグ状に延びている。しかし、請求項1、2、4、6、8に係る発明の金属化フィルムでは、各縦マージンがジグザグ状であることは必須でなく、縦マージンはフィルム長さ方向において例えば一直線状に延びていてもよい。
【0092】
実施の形態1では、素子幅金属化フィルム及び金属化フィルムは、いずれも分割電極部をフィルム幅方向において2つに区分する第2縦マージン42を有している。しかし、本発明の素子幅金属化フィルム及び金属化フィルムでは、いずれも第2縦マージン42は必須でなく、分割電極部はフィルム幅方向において2つに区分されていなくてもよい。
【0093】
実施の形態1、2では、大電極部の傾斜マージンの傾斜と、分割電極部の傾斜マージンの傾斜とは異なっている。しかし、請求項1に係る発明の金属化フィルムでは、大電極部の傾斜マージンの傾斜と、分割電極部の傾斜マージンの傾斜とは同じであってもよい。
【解決手段】金属化フィルム1は、n個(nは2以上の偶数)のコンデンサ素子分のフィルム幅を有する誘電体フィルム2の片面に金属を蒸着してなるn個の電極部20が並列形成されている。各電極部20には、フィルム幅方向に対して角度をなして延びる非金属蒸着部である複数の傾斜マージン31,32がフィルム長さ方向に一定間隔で設けられている。フィルム幅方向中央でフィルム長さ方向に仮想的に延設した中心線Lcを境としてフィルム幅方向一方側に位置する電極部20の傾斜マージン31と、フィルム幅方向他方側に位置する電極部20の傾斜マージン32とは、中心線Lcについて線対称となるように、逆方向に傾斜している。