特許第6383967号(P6383967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6383967
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】情報表示画面用の保護部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20180827BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20180827BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20180827BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20180827BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20180827BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20180827BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180827BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C09J7/20
   C09J7/29
   C09J7/38
   C09J183/04
   C09J133/00
   B32B7/02 101
   B32B27/00 D
   G09F9/00 302
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-115354(P2014-115354)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-229700(P2015-229700A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】城下 知輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 貢如
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/151221(WO,A1)
【文献】 特開2004−292493(JP,A)
【文献】 特開2009−175266(JP,A)
【文献】 特開2001−234129(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/044229(WO,A1)
【文献】 特開2015−067712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイパネルの情報表示画面に貼着されるための保護部材であって、前記保護部材は、透明保護カバー上に、アクリル系粘着剤層、基材フィルム及びシリコーン系吸着層を順次積層してなり、前記アクリル系粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率(A)が、1.0×10〜1.0×10Paであり、かつ前記シリコーン系吸着層の25℃における貯蔵弾性率(B)が、1.0×10〜3.5×10Paであり、前記アクリル系粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率(A)と前記シリコーン系吸着層の25℃における貯蔵弾性率(B)の比(B)/(A)が、0.9以上、60以下であることを特徴とする保護部材。
【請求項2】
前記アクリル系粘着剤層の厚みが、10〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の保護部材。
【請求項3】
前記シリコーン系吸着層の厚みが10〜50μmであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の保護部材。
【請求項4】
前記透明保護カバーが、厚さ100〜1,000μm、光透過率80%以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂から選ばれる硬質樹脂板又はガラス板であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の保護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネルの情報表示画面等の被着体に、貼り付けたり、取り外しが可能な情報表示画面用の保護部材に関するもので、より詳細には、各種電子・電気機器の表示装置として使用される液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL等の情報表示画面の保護及び視認性の向上を目的として、この情報表示画面に、ガラスまたは樹脂板からなる硬質の透明保護カバー上に、粘着剤層、基材フィルム、吸着層及びセパレータを順次積層した積層体からなる情報表示画面用の保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶等の表示画面の視認性向上を目的として、セパレータ、粘着剤層、基材シート、シリコーンゲル層、セパレータの順に積層されているシリコーンゲル粘着シートを液晶表示装置の液晶セルの周辺部と拡散板の周辺部及び/又は押え枠との間に挟み込む方法が知られている。(特許文献1)。前記のシリコーンゲル粘着シートの粘着剤層と、ガラスやアクリル等の硬質板である従来の透明部材を貼り合わせて積層した表面保護部材においては、ディスプレイパネルの情報表示画面に貼り付ける際に、前記シリコーンゲル層表面の凹凸に沿って、貼着面に気泡を巻き込み易かった。
【0003】
また、液晶等の表示画面の保護及び視認性向上を目的として、透明ゲルを介して透明部材をディスプレイパネルの情報表示画面に密着させる方法が知られている。(特許文献1)。前記の方法によると、ディスプレイパネルのガラス基板と、ガラスやアクリル等の硬質板である従来の透明部材の接合では、ガラス基板と硬質板の透明部材が面接触して貼り合わされるため、貼り合わせ時に気泡を巻き込み易いだけでなく、一旦貼り合わせてしまうと巻き込んだ気泡を逃がすことが難しかった。気泡を巻き込んだ場合、前記気泡によりディスプレイの輝度、明るさ、色が不均一となり表示むらが発生するため、貼り直しや気泡の押し出しなどの作業が必要になる。巻き込んだ気泡を押し出すために、透明部材の表面から気泡を指で強く押し出したり、貼り直しを繰り返すうちにディスプレイ表面の外観を損なうことがあった。
【0004】
また、上記の気泡の巻き込みを抑制する手段として、表示体を成す被着面上に、アクリル系又はウレタン系樹脂を主成分としてなる応力緩和層を配置し、前記応力緩和層の片面に親水性液状層を介してガラス又は樹脂板から成る透明保護体を前記被着面に対して貼着する表示装置の保護体が知られている。(特許文献3)。前記の保護体は、表示体を成す被着面上に、前記応力緩和層、親水性液状層及び透明保護体を積層するという工程が必要となる、そのため高価な製造装置が必要となり、工程も複雑なものとなるので、結果として高価なものになってしまう欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−200221号公報
【特許文献2】特開2003−295780号公報
【特許文献3】特開2011−167862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被着体としてのディスプレイパネルの情報表示画面等のガラス基板に、貼り付けたり、取り外しが可能であり、硬質の保護部材を貼着する場合であっても、貼り付け時に気泡の巻き込みが発生しにくく、視認性に優れた、情報表示画面用の保護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、ディスプレイパネルの情報表示画面と、ガラスやアクリル等の硬質板からなる透明保護カバー上に、粘着剤層、基材フィルム、吸着層を順次積層した積層体からなる保護部材を貼着させる場合において、前記粘着剤層及び前記吸着層の貯蔵弾性率をそれぞれに規定した。前記粘着剤層の貯蔵弾性率を前記吸着層の貯蔵弾性率よりも小さくすることによって、前記保護部材において、前記粘着剤層が前記透明保護カバーのガラス表面の凹凸を吸収するとともに、前記粘着剤層が塑性変形して、前記基材フィルムを介して、前記吸着層表面の凹凸を吸収することで、最終的に被着体に貼着させる時の前記吸着層の平滑性を高くさせる作用を有することを見出した。これにより、前記保護部材を用いて、ディスプレイパネルの表示画面に貼着させる場合においても、貼り付け時に気泡の巻き込みを生じにくく、かつ視認性も良好である、情報表示画面用の保護部材を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
第1発明は、ディスプレイパネルの情報表示画面に貼着されるための保護部材であって、前記保護部材は、透明保護カバー上に、アクリル系粘着剤層、基材フィルム及びシリコーン系吸着層を順次積層してなり、前記アクリル系粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率(A)が、1.0×10〜1.0×10Paであり、かつ前記シリコーン系吸着層の25℃における貯蔵弾性率(B)が、1.0×10〜3.5×10Paであり、前記アクリル系粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率(A)と前記シリコーン系吸着層の25℃における貯蔵弾性率(B)の比(B)/(A)が、0.9以上、60以下であることを特徴とする保護部材である。
【0009】
第2発明は、前記アクリル系粘着剤層の厚みが、10〜100μmであることを特徴とする第1発明に記載の保護部材である。
【0010】
第3発明は、前記シリコーン系吸着層の厚みが10〜50μmであることを特徴とする、第1発明または第2発明に記載の保護部材である。
【0011】
第4発明は、前記透明保護カバーが、厚さ100〜1,000μm、光透過率80%以上であり、かつ、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂から選ばれる硬質樹脂板又はガラス板であることを特徴とする、第1発明〜第3発明のいずれかに記載の保護部材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保護部材は、透明保護カバー上に、粘着剤層、基材フィルム及び吸着層を順次積層してなり、前記粘着剤層及び前記吸着層の貯蔵弾性率をそれぞれ規定した。前記粘着剤層の貯蔵弾性率を規定し、かつ前記吸着層の貯蔵弾性率よりも小さい値にすることによって、前記透明保護カバーのガラス表面の凹凸を吸収し、かつ前記粘着剤層が塑性変形し、前記基材フィルムを介して前記吸着層表面の凹凸を吸収することで、最終的に被着体に貼着させる時の前記吸着層表面の平滑性を高くさせる作用を有する。それによって、ディスプレイパネルの情報表示画面に前記保護部材を貼着させる際、面接触して貼着させる条件でありながら、貼着界面において空気を逃がしながら貼着することが容易となり、貼り付け時に気泡の巻き込みを生じにくくするものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の両面粘着フィルム及びそれを用いた情報表示画面用の保護部材を、その構成要素に基づいて、さらに詳しく説明する。
【0014】
(全体構成)
本発明の情報表示画面用の保護部材は、透明保護カバー上に、粘着剤層、基材フィルム及び吸着層を順次積層してなり、セパレータを前記吸着層に貼り合わせた状態、あるいは前記透明保護カバーと、基材フィルムの一方の面に、吸着層を積層し、もう一方の面に粘着剤層を積層してなり、前記吸着層に貼り合わされたセパレータからなる両面粘着フィルムとを、前記粘着剤層を介して貼着した状態で提供されるものである。
【0015】
(透明保護カバー)
本発明の情報表示画面用の保護部材の構成部材のうち、前記透明保護カバーは、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂から選ばれる硬質樹脂板又はガラス板を用いることが出来る。
【0016】
前記透明保護カバーとしては、情報表示画面の表面部材であるガラス基板の屈折率に近い屈折率を有するものを選択することが好ましく、より好ましくは屈折率が1.2〜1.6のものを使用することが好ましい。屈折率の近い材料同士を密着させることによって、界面での反射光を低減させることができるからである。
【0017】
また前記透明保護カバーとしては、波長が380〜780nmの領域の可視光の全光線透過率が80%以上のものを使用することが好ましい。透過率が80%未満の場合には、画面から発せられた光が透明部材を透過しにくくなるので、視認性が低下するからである。
【0018】
(全光線透過率の測定方法)
ここでの全光線透過率は、JIS−K7105に準じ、積分球式濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)により測定した。
【0019】
前記透明保護カバーの厚みは、硬さと断裁加工性の観点から100〜1,000μmの範囲であることが好ましい。前記透明保護カバーの厚みが100μmより小さいと、前記透明保護カバーを情報表示画面に貼着する際の作業性が低下する場合がある。一方、前記透明保護カバーの厚みが1,000μmを超えると、コストアップとなり、透過率が低下して視認性が低下する場合がある。
【0020】
前記透明保護カバーは、さらに表面粗さが中心線表面粗さRaで5.0μm以下であることが好ましい。中心線表面粗さRaが5.0μmより大きいと、前記透明保護カバーを情報表示画面に貼着させる際に、気泡の巻き込みが生じやすくなるからである。
【0021】
前記透明保護カバーには、場合により、光反射防止層を設けることができ、透明保護カバーの片面に光反射防止剤としてITO、SiO、TiO、ZnO等の酸化金属の膜を形成する。このような膜の形成は、例えばITOなどをスパッタリングすることにより行っても良く、この方法によって光反射防止層を形成する場合には、透明性など信頼性が高いものが得られる。
【0022】
また、光反射防止層の形成は、コストの点で好ましい方法として、例えばITO、SiO、TiO、ZnO等の酸化金属の微粉末にアクリル系又はアクリル系樹脂のバインダーを加え溶液化又はエマルジョン化し、これをグラビアコーター、スピンコーターなどで塗布するウエット法で形成しても良い。ウエット法における反射防止剤として使用する前記酸化金属の微粉末の粒径は、透視性の点から微細である程好ましく、10〜500nmとすることが好ましいが、この粒径とする場合には、分散性の悪さと二次凝集によって歩留まりが悪くなることから、粒径1.0μmまでのものが好ましい。
【0023】
(両面粘着フィルム)
本発明の情報表示画面用の保護部材に用いる両面粘着フィルムは、基材フィルムの一方の面に吸着層を積層し、もう一方の面に粘着剤層を積層してなり、前記吸着層にセパレータを貼り合わせ、さらに前記粘着剤層にカバーフィルムを貼り合わせた状態で提供されるものである。
【0024】
(基材フィルム)
本発明で使用する基材フィルムは、各種のプラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。シリコーンゴムの熱架橋時の取り扱い性、コストの面からポリエステルフィルムやポリカーボネートフィルムが好ましい。透明性の点では、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常5〜400μm、特に20〜250μmの範囲であるのが好ましい。
【0025】
基材フィルムは、その表面をコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理したり、必要に応じてアンカー層等を設けてもよい。アンカー層等を積層する方法としては、製膜時に積層するいわゆるインライン法、または製膜したフィルムに積層するいわゆるオフライン法のいずれでもよい。
【0026】
(粘着剤層)
本発明の粘着剤層には、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、シリコーン系、ゴム系等の各種粘着剤を使用することができる。保護部材の全光線透過率が80%以上になるような高透明粘着剤が得やすい等の理由から、各種アクリルモノマー及び/またはオリゴマーを共重合して得られるアクリル系粘着剤やアクリル系高分子粘着剤(エマルションタイプ)などが好適に使用することができる。
【0027】
このアクリル系粘着剤は、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸アルキルエステルと、これらのアクリル酸アクリルエステル又は、メタクリル酸アルキルエステルに、酢酸ビニル、ビニルエーテル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニル基含有化合物や、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ヒドロキシルエチル、メタクリル酸ヒドロキシルエチル、アクリル酸プロピレングリコール、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−tert−ブチルアミノエチルなど共重合したものが用いられる。
【0028】
このアクリル系粘着剤に用いられるアクリル共重合体としては、重量平均分子量が10万〜100万の範囲内のものが好ましく用いられる。重量平均分子量が10万より小さいと、粘着力が高くなり、カバーフィルムの剥離が困難になるといった不具合が発生する。また、重量平均分子量が100万を超えると溶液粘度が高くなり、塗工時に平滑な粘着剤塗工外観が得難い問題がある。また、このアクリル共重合体のガラス転移点(Tg)は、−20℃以下のものが好ましく使用できる。−20℃よりTgが高いと粘着剤が硬くなり、透明保護カバーに対して適度な粘着力が得られなくなる。
【0029】
前記アクリル系粘着剤に用いられる架橋剤としては、イソシアネート系、メラミン系、エポキシ系等、公知の架橋剤を用いることができる。イソシアネート系の架橋剤としては、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびこれらポリイソシアネート化合物の3量体、上記ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー、これらのポリイソシアネート化合物、これらポリイソシアネート化合物の3量体が挙げられる。多価イソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,5−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどが挙げられる。また、アルミニウムやチタンなどの金属キレート化合物、多官能エポキシ化合物、メラミン樹脂、アマイド樹脂を用いてもよい。
【0030】
前記架橋剤の添加量としては、アクリル系粘着剤に対して0.005〜20重量部、特に0.01〜10重量部の割合で添加されるとよい。
【0031】
本発明における粘着剤層の厚みは、通常10〜100μm、好ましくは10〜50μmとすることが適当である。ここでの粘着剤層の形成方法としては、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤を塗布する方法や水に分散し塗布する方法等の公知の方法を用いることができるが、架橋型アクリル系粘着剤の形成方法としては、有機溶剤に溶解し粘度を調整した粘着剤を塗布する方法が一般的である。
【0032】
アクリル系の粘着剤組成物として紫外線重合型のものを使用する場合、粘着剤組成物には、主剤であるアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーの他、光重合開始剤、紫外線架橋促進剤(増感剤)、希釈剤などの補助材料が配合される。
【0033】
前記粘着剤の補助材料としては、他に、フィラー等を含めるものとしても良く、このようなフィラーとしては、光反射防止剤としての無機金属フィラー、硬度や接着性の調整を目的として添加される酢酸ビニル、スチレン、タッキファイヤー(粘着付与剤)等を配合しても良い。ただし、前記補助材料の添加は、得られた粘着剤層の厚み方向における光の複屈折を発生させて透視性を低下させので、特に粘着剤層の厚みを10〜100μmに形成する本発明では、透視性の低下が著しくなることから、これらの添加は行わないか、比較的少量に止めることが好ましい。
【0034】
前記粘着剤の粘着付与剤は、アクリル系粘着剤に粘着性の向上を目的として所望量が添加され、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂などが挙げられる。
【0035】
なお、前記粘着剤の希釈剤としては特に制限無く用いることができる。特に、希釈剤としては有機溶剤が望ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、酢酸エチル、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロルメタン、クロロホルムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
(粘着剤層の貯蔵弾性率の測定方法)
粘着剤層の動的粘弾性は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:ソリキッドメーターMR−300)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片(厚み約1.5mm)を挟み込み、周波数1Hzで25℃での貯蔵弾性率(G’)を測定する。
【0037】
本発明の保護部材ないし、両面粘着シートを構成する粘着剤層は、その貯蔵弾性率が、周波数1Hzにおいて、25℃で1.0×10〜1.0×10Paであることが好ましい。前記粘着剤層の貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満であると、保護部材の打ち抜き加工時の、粘着剤のはみ出しの原因となる。一方、前記粘着剤層の貯蔵弾性率が1.0×10Paを超える場合には、粘着剤層の応力緩和性が低下し、保護部材を情報表示画面に貼着する際に、気泡を巻きこみ易くなってしまう。
【0038】
本発明の粘着剤層のコーティング法としては、溶液型、無溶剤型いずれもコンマナイフコーター、ダイコーター、リーバースコーターなどが挙げられる。無溶剤型ならば押出法、カレンダー法でも構わないが、気泡混入防止の点からからダイコーターが好適である。
【0039】
(カバーフィルム)
本発明に用いる両面粘着フィルムには、粘着剤層面にポリエステル系樹脂フィルムをカバーフィルムとして貼り合わせることが好ましい。カバーフィルムの中心線表面粗さは0.20μm以下であることが好ましい。より好ましくは、カバーフィルムの表面粗さが0.10μm以下であることが好ましい。中心線表面粗さが0.20μmより大きくなるとカバーフィルム表面の粗さが粘着剤層に転写し、粘着剤層の粗さによる光散乱が発生し、透明保護カバーに両面粘着フィルムを貼り付け、情報表示画面用の保護部材として用いたときの視認性が低下するといった問題が発生する場合がある。
【0040】
カバーフィルムとして使用されるポリエステル系樹脂フィルムとして、寸法安定性、透明性、硬さの点で、二軸延伸ポリエステル系フィルムの使用が好ましい。カバーフィルムとなるポリエステル系樹脂フィルムの厚みは10〜200μmの範囲、硬さと断裁加工性から25〜100μmの範囲のものが好ましい。前記の厚みが10μmより薄いとフィルム強度が不足し、カバーフィルム剥離時に破れたり、両面粘着フィルムに貼り合わせる際に、シワが入り易い等の問題が発生する。また、前記厚みが200μmより厚いと、フィルム自体が高価になる等の問題が発生する。
【0041】
また前記両面粘着フィルムを前記の透明保護カバーに粘着剤層を介して貼着する場合には、カバーフィルムを剥離して使用するものであり、前記粘着剤層からカバーフィルムを剥離する際の剥離力を調整するために、前記カバーフィルムの粘着剤層貼合面に、シリコーン系剥離剤を塗布しておくことが好ましい。
【0042】
(吸着層)
本発明の保護部材ないし、両面粘着シートを構成する吸着層は、保護部材をディスプレイパネルの情報表示画面等の被着体に貼り付けた後には、経時でずれたりすることなく密着しているが、前記保護部材を貼り直したり、前記被着体から取り外したりする場合には、容易に再剥離することが可能なものである。
【0043】
本発明の吸着層を形成するための材料としては、特に制限されないが、シリコーン樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体などの公知の材料が挙げられる。これらの材料は、単独または2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0044】
本発明の吸着層を形成するための材料としては、上記の中でも、シリコーン樹脂であることが好ましい。シリコーン樹脂は、透明性、耐久性に極めて優れているとともに柔軟性を有しているので、ディスプレイパネルの情報表示画面等の被着体への密着性に優れているからである。
【0045】
本発明の吸着層に用いるシリコーン樹脂の性状としては、透明性が高く、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面に対しても、吸着層の面が被着体表面に沿うことが求められる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で、容易に剥離できることが求められる。また、少なくとも厚み10μm以上で、目付け加工の方法を用いることなく、塗布及び加熱処理だけで架橋吸着層を設けるためには、シリコーン組成物の硬化反応に際して、白金触媒等のもとで、150℃以下の低温短時間で深部まで架橋し、透明で耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れかつ低粘度で液状タイプである、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと架橋剤としてSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応により熱架橋する付加反応型液状シリコーン組成物の使用が好ましい。
【0046】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとしては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、末端にのみビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ジオルガノポリシロキサンとから選ばれる少なくとも1種を用いると良い。
【0047】
これらのジオルガノポリシロキサンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンで、下記一般式(化1)で表わされる化合物である。
【0048】
【化1】
【0049】
(式中Rは下記の有機基、nは整数を表す。)
【0050】
【化2】
【0051】
(式中Rは下記の有機基、n、mは整数を表す。)
【0052】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種、または異種の非置換または置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で、好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0053】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化2)で表わされる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンは、上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0054】
1分子中に2個以上のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量としては、20,000〜700,000の範囲のものが好ましい。前記のジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が20,000未満であると、硬化性が低下したり、被着体への粘着力が低下してしまう。また、700,000を超えてしまうと、組成物の粘度が高くなりすぎて製造時の撹拌が困難になる。
【0055】
ここで架橋反応に用いる架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。分子の形状としては、直鎖状、分岐状、環状のものを使用できる。
【0056】
前記アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン中のアルケニル基(A)に対する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基(B)のモル比(A)/(B)が1.0〜2.0の範囲となるように配合することが好ましい。モル比(A)/(B)が1.0未満では架橋密度が不足して、これに伴い凝集力、保持力が低くなってしまうことがあり、逆に2.0を超えると架橋密度が高くなり、適度な粘着力及びタック性が得られず、気泡の混入も発生しやすくなる。
【0057】
架橋反応に用いる付加反応触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニル基含有シロキサン錯体、ロジウム錯体、ルテニウム錯体などが挙げられる。また、これらのものをイソプロパノール、トルエンなどの溶剤や、シリコーンオイルなどに溶解、分散させたものを用いてもよい。架橋反応した吸着層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0058】
添加量はシリコーン組成物の合計100重量部に対し、貴金属分として5〜2,000ppm、特に10〜500ppmとすることが好ましい。5ppm未満では硬化性が低下し、架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、2,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0059】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。なかでも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。但し、無溶剤型であっても、所望の膜厚を得るための粘度調節のために、必要に応じてトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1、4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、またはこれらの混合溶剤などが使用される。
【0060】
添加量はシリコーン組成物の合計100重量部に対し、20〜1,000重量部、特に25〜900重量部とすることが好ましい。20重量部未満では、吸着層と基材の密着性が低下してする場合があり、1,000重量部を超えると、シリコーン組成物の塗工液の粘度が低くなりすぎるので、塗工後から硬化までの間に、塗工された吸着層が一部流動し、吸着層表面の均一性が低下してしまう。
【0061】
前述のごとく、吸着層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体への貼着時に被着体の表面の凹凸に追従して密着力を確保することが求められる。そして、例えば前記情報表示画面の保護部材として両面粘着フィルムを使用する場合、吸着層の膜厚は、被着体に対する吸着層の密着面方向の剪断力を確保するために少なくとも10μm以上、通常は10〜100μmが好ましい。本発明の場合、気泡の混入を防止し、気泡吸収性を確保するために、吸着層の厚みとしては、20〜100μmであることがより好ましい。10μm未満であると被着体に対する保護部材の密着面方向の剪断力が確保できず、特に長期貼り付け時には、保護部材が被着体から剥がれ易い。また、吸着層の厚みが100μmを超える場合には、シリコーン組成物の使用量が多くなり、両面粘着フィルムの製造コストの上昇を招いてしまう。
【0062】
(吸着層の貯蔵弾性率の測定方法)
吸着層の動的粘弾性は、粘着剤層の動的粘弾性と同様に、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:ソリキッドメーターMR−300)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片(厚み約1.5mm)を挟み込み、周波数1Hzで25℃での貯蔵弾性率(G’)を測定する。
【0063】
本発明の保護部材ないし、両面粘着シートを構成する吸着層は、その貯蔵弾性率が、周波数1Hzにおいて、25℃で1.0×10〜3.5×10Paであることが好ましい。前記吸着層の貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満であると、保護部材の打ち抜き加工時の、粘着剤のはみ出しの原因となる。一方、前記吸着層の貯蔵弾性率が3.5×10Paを超える場合には、粘着剤層の応力緩和性が低下し、保護部材を情報表示画面に貼着する際に、気泡を巻きこみ易くなってしまう。
【0064】
本発明において、粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率(A)と吸着層の25℃における貯蔵弾性率(B)の比(B)/(A)が、0.9以上、60以下であることが好ましい。
さらに前記(B)/(A)が、0.9以上、5.0以下であることが特に好ましい。前記(B)/(A)が、0.9未満の場合は、粘着剤層に対して吸着層が相対的に柔軟な層となり、前記粘着層が塑性変形しにくくなり、前記吸着層の凹凸が解消されず、結果として保護部材の表示画面への貼り付け時に、微小気泡の巻き込みが発生してしまう。一方、前記(B)/(A)が60を超える場合には、前記吸着層の保護部材の表示画面への密着力が低下し、経時的に保護部材が剥がれたりする可能性が高くなる。
【0065】
(アンカー層)
本発明においては、基材フィルムと吸着層との接着力の向上、および被着体への保護部材の貼着後、前記保護部材を再剥離する際に、前記吸着層と基材フィルム間で剥離することなく、被着体からスムーズに剥離できることを目的として、前記基材フィルムと吸着層との間にアンカー層を設けてもよい。
【0066】
アンカー層の材料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。中でもアクリル系樹脂が好ましく、特にアクリルポリオール樹脂が、帯電防止性や被膜特性の観点から好ましい。
【0067】
また、アンカー層には、その他配合材料として帯電防止剤を添加し帯電防止機能を付与することができる。ノニオン系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。またエチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3、4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。
【0068】
アンカー層の厚みは0.01〜5.0μmの範囲、より好ましくは0.10〜3.0μmの範囲が好適である。アンカー層の厚みが、前記厚みが0.01μm未満であると熱架橋された吸着層が基材フィルムより離脱し易くなる。さらに帯電防止性能が安定しない。一方前記厚みが5.0μmを超えるとアンカー層の柔軟性が無くなり硬い層となり、基材フィルムへの密着性が悪くなる。
【0069】
アンカー層塗工液、吸着層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等公知の方法が適宜使用される。
【0070】
(セパレータ)
本発明においては、吸着層の表面の汚れや異物付着を防いだり、両面粘着フィルムのハンドリングを向上させるため、そして特に前記両面粘着フィルムを透明保護カバーに貼り合わせて情報表示画面の保護部材として用いたときに、気泡の混入を抑える目的で、プラスチックフィルムからなるセパレータを吸着層面に貼り合わせて用いる。
【0071】
本発明の両面粘着フィルムのセパレータには、プラスチックフィルムが用いられる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等を挙げることができる。これらの中で、生産性、加工性に優れるポリエステルフィルムが好ましく使用できる。また、このようなポリエステルフィルムには二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムがあり、そのいずれも使用できるが、特に二軸延伸フィルムが汎用的であり好ましく使用できる。プラスチックフィルムの厚さとしては、25〜200μmが好ましく用いられる。25μmより薄いとフィルム強度が不足し、十分な保護性能が得られない。剥離時にフィルムが破れる等の問題が発生する。また、200μmより厚いとフィルム自体が高価になる等の問題が発生する。
【0072】
前記吸着層面に貼り合わせるセパレータの中心線表面粗さRaは0.20μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、セパレータの中心線表面粗さが0.10μm以下である。前記中心線表面粗さが0.2μmより大きくなると、セパレータ表面の粗さが吸着層面に転写し、粘着剤層の粗さによる光散乱が発生し、透明保護カバーに両面粘着フィルムを貼り付け、情報表示画面用の保護部材として用いたときの視認性が低下するといった問題が発生する。また、両面粘着フィルムを用いて、ガラスやアクリル等の硬質板である透明保護カバーと前記粘着剤層を介して積層した保護部材としてディスプレイパネルの情報表示画面へ貼り付けた時に、気泡の混入が発生しやすくなるといった問題がある。
【0073】
(中心線表面粗さの測定方法)
本発明における中心線表面粗さの測定は、接触型表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、AY−22)を用いて行い、測定した得られた中心線平均粗さRaを用いる。具体的には、
セパレータをSUS板に2kgのハンドローラーを用いて一往復にて貼り付ける。貼り付けたセパレータの吸着層側となる面の中心線平均粗さRa(μm)を、JIS B0601(2001)に準じ、触針先端径2μm、測定長4mm、カットオフ0.8mmにて測定する。
【0074】
また、吸着層からのセパレータの剥離力は、0.01〜1.15N/25mmが好ましい。より好ましくは、0.01〜0.50N/25mmである。セパレータの剥離力が1.15N/25mmより大きいと、セパレータの剥離作業性が悪化する、セパレータのスムーズな剥離ができず粘着フィルムに折れシワや吸着層表面に段差が発生する等の問題が発生する。
【0075】
吸着層からのセパレータの剥離力は、両面粘着フィルムを25mm幅にカットし、前記両面粘着フィルムの吸着層をセパレータに2Kgのローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で24時間放置した。次に、引っ張り試験機を用いて、前記セパレータを180°の剥離角度、剥離速度:1,200mm/minで剥離し、両面粘着フィルムのセパレータの剥離力(N/25mm)を測定した。
【実施例】
【0076】
以下、実施例と比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、各実施例中の「部」は特に断ることのない限り重量部を示したものである。
【0077】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記アンカー層塗工液をグラビアコーターで塗工、乾燥して、厚み2.0μmのアンカー層を形成した。
【0078】
(アンカー層塗工液)
アクリルポリオール樹脂 20部
(東レファインケミカル製、コータックスLH455、固形分:50%)
ポリチオフェン 27部
(信越ポリマー製、セプルジーダOC−SC100、固形分:3%)
MEK 40部
トルエン 13部
【0079】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
前記のアンカー層の上に、表1に記載の各吸着層塗工液を、表3に記載の吸着層の厚みとの組み合わせで、ダイコーターにて塗工して設けた後、オーブンにて150℃、100秒で加熱、乾燥させて、各実施例及び比較例の吸着層を形成した。
【0080】
【表1】
【0081】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
前記の吸着層が形成された各粘着フィルムの吸着層面に、厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン系剥離剤を塗工したセパレータを2本のゴムロールにて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせた後、プラズマ処理された厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に吸着層、セパレータが積層された粘着フィルムを得た。
【0082】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
前記の粘着フィルムの、吸着層が形成された面とは反対側の面に、表2に記載の各粘着剤層層塗工液を、表3に記載の粘着剤層の厚みとの組み合わせで、ダイコーターで塗工し、100℃で2分間加熱、乾燥して、各実施例及び比較例の粘着剤層を形成した。
【0083】
【表2】
【0084】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
前記の粘着剤層が形成された各粘着フィルムの粘着剤面に、厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにシリコーン系剥離剤を塗工したカバーフィルムを2本のゴムロールにて挟み込み、空気を逃がしながら両者を貼り合わせた後、本発明の両面粘着フィルムを得た。
【0085】
各実施例、比較例の評価結果を表3に、各評価方法を下記に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
(評価方法)
【0088】
(粘着剤層及び吸着層の貯蔵弾性率)
吸着層の貯蔵弾性率測定は、厚みが50μmのフッ素樹脂製シートの片面に、表1に記載の各吸着層成分を、乾燥後の厚みで約1.5mmとなるように吸着層を設けた後、ギアオーブンにて150℃、100秒で加熱、乾燥させた。得られた各吸着層を前記のフッ素樹脂製シートから剥がし取り、粘弾性測定用の試験片を作製した。
【0089】
粘着剤層の貯蔵弾性率測定は、厚みが50μmのフッ素樹脂製シートの片面に、表2に記載の各粘着剤層成分を、乾燥後の厚みで約1.5mmとなるように粘着剤層を設けた後、ギアオーブンにて100℃で、2分間加熱、乾燥させた。得られた各粘着剤層を前記のフッ素樹脂製シートから剥がし取り、粘弾性測定用の試験片を作製した。
【0090】
次に粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:ソリキッドメーターMR−300)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片(厚み約1.5mm)を挟み込み、周波数1Hzで25℃の吸着層及び粘着剤層の貯蔵弾性率(G’)をそれぞれ測定した。
【0091】
(吸着性能評価)
上記作成した両面粘着フィルムを25mm幅にカットし、吸着層のセパレータを剥離した。次いで、前記吸着層を厚み3mmのソーダ石灰ガラス板に2Kgのハンドローラーを1往復させる方式で圧着し、圧着後室温で24時間放置した。次に、引張り試験機を用いて、180°の剥離角度、剥離速度:1200mm/minで剥離し、吸着フィルムのガラス板剥離力(mN/25mm)を測定した。
吸着性能の評価基準
◎:ガラス板剥離力が25mN/25mm以上、150mN/25mm未満
○:ガラス板剥離力が150mN/25mm以上、400mN/25mm未満
×:ガラス板剥離力が25mN/25mm未満、400mN/25mm以上
【0092】
(粘着剤のはみ出し評価)
上記作成した両面粘着フィルムを120mm×55mmにカットし、予め表面に光反射材層が設けられた、厚み0.4mm、サイズ120mm×55mmの透明保護カバー(ガラス板)に前記両面粘着フィルムを粘着剤層を介して貼り合わせ、前記両面粘着フィルムの表面側から、2kgのハンドローラを用いて荷重をかけて2往復させた後、常温(25℃)で、24時間放置して、本発明の情報表示画面用の保護部材を得た。前記保護部材を、60℃で96時間保存した後、24時間常温で放置する。24時間放置後の、前記保護部材の端面の状態を目視確認した。
評価基準
○:端面よりの粘着剤のはみ出しなし
×:端面よりの粘着剤のはみ出しあり
【0093】
(微細気泡の混入評価)
保護部材の作成方法は上記と同じ。前記保護部材を厚み3mm、サイズ150mm×100mmのソーダ石灰ガラス板に貼り合わせ、微細気泡の混入を目視確認した。
評価基準
◎:気泡の混入が全くない
○:気泡の大きさが2mm以下のものが、5個未満である
×:気泡の大きさが2mm以下のものが、5個以上ある
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】本発明の情報表示画面用の保護部材の断面説明図である。
図2】本発明の両面粘着シートの断面説明図である。
【符号の説明】
【0095】
1 基材フィルム
10 両面粘着フィルム
2 アンカー層
20 透明保護カバー
3 吸着層
30 情報表示画面用の保護部材
4 セパレータ
5 粘着剤層
6 カバーフィルム
7 透明保護カバー(硬質樹脂板またはガラス板)
8 光反射防止層
図1
図2