特許第6384003号(P6384003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6384003金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384003
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/40 20060101AFI20180827BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20180827BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20180827BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180827BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   C23C16/40
   H01L31/04
   H05B33/02
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-163055(P2013-163055)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-37626(P2014-37626A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年8月5日
【審判番号】不服2017-8967(P2017-8967/J1)
【審判請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0088536
(32)【優先日】2012年8月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502411241
【氏名又は名称】コーニング精密素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】Corning Precision Materials Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】ユ ヨン ゾ
(72)【発明者】
【氏名】キム ソ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ペク イル ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユン グン サン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ウン ホ
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 馳平 憲一
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−231361(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0094577(US,A1)
【文献】 特開2001−059175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板;及び
前記ベース基板上に形成され、光を散乱させる複数の空洞(voids)が内部に形成されている金属酸化物薄膜;
を含み、
前記空洞の幅は、50〜400nmであり、
前記金属酸化物薄膜が、有機発光素子のアノードと接する内部光取り出し層として用いられていることを特徴とする金属酸化物薄膜基板であって、
前記金属酸化物薄膜は、
前記ベース基板上に形成され、表面に第1テクスチャリングが形成されている第1金属酸化物薄膜、及び
前記第1金属酸化物薄膜上に形成され、表面に第2テクスチャリングが形成されている第2金属酸化物薄膜であって、該第2金属酸化物薄膜は単位体の組み合わせを含み、該単位体の各々の幅が、第2金属酸化物薄膜が前記第1金属酸化物薄膜とともに前記空洞を形成するように、上端に向かって広くなっている、第2金属酸化物薄膜を含み、
前記複数の空洞は、前記ベース基板と平行な方向に沿って互いに連結されていることを特徴とする
金属酸化物薄膜基板
【請求項2】
前記金属酸化物薄膜は、散乱特性を増大するように前記空洞の屈折率(1.0)よりも高い屈折率を有する物質からなることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項3】
前記金属酸化物薄膜は、ZnO、SnO、SiO、TiO及びNiOから選択されたいずれか一種からなることを特徴とする請求項に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項4】
前記金属酸化物薄膜は、n型またはp型ドーパントによってドープされていることを特徴とする請求項に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項5】
前記金属酸化物薄膜は、Ga、Al及びFの少なくとも一種以上がドープされたn型のZnO、FがドープされたSnO、電子ドナー(donor)またはホール(hole)元素がドープされたSiO、電子ドナー元素がドープされたTiO及び電子ドナー元素がドープされたNiOから選択されたいずれか一種からなることを特徴とする請求項に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項6】
前記金属酸化物薄膜は、CuAlO、CuGaO、CuInO、SrCu及びLaCuOM(Mは酸素族元素)を含む金属酸化物群から選択されたいずれか一種の金属酸化物からなることを特徴とする請求項に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項7】
前記金属酸化物薄膜の面抵抗は、2〜20Ω/□であることを特徴とする請求項に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項8】
前記金属酸化物薄膜のヘイズ値は、3〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物薄膜基板。
【請求項9】
ベース基板上に、表面に第1テクスチャリングが形成された第1金属酸化物薄膜を成長させる第1ステップ;及び
前記第1金属酸化物薄膜上にインサイチュ工程で、表面に第2テクスチャリングが形成された第2金属酸化物薄膜を形成するステップであって、該第2金属酸化物薄膜は単位体の組み合わせを含み、該単位体の各々の幅が、第2金属酸化物薄膜が前記第1金属酸化物薄膜とともに複数の空洞を形成するように、上端に向かって広くなっており、前記空洞の幅は、50〜400nmであ前記複数の空洞は、前記ベース基板と平行な方向に沿って互いに連結されている、第2ステップ;
を含み、
常圧化学気相蒸着法(APCVD)によって前記第1及び第2ステップが実施され、
前記第1金属酸化物薄膜及び第2金属酸化物薄膜が有機発光素子のアノードと接する内部光取り出し層として用いられることを特徴とする
金属酸化物薄膜基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1金属酸化物薄膜及び前記第2金属酸化物薄膜にドーパントをドープするステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の金属酸化物薄膜基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子に係り、より詳しくは、光閉じ込めまたは光取り出し効率を向上することができる金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、透明な金属酸化物薄膜は、その伝導性の有無によって光電池の透明伝導性酸化物電極に、または有機発光素子の光取り出し効率の向上のための光取り出し層に用いられ得る。
【0003】
光電池の透明伝導性酸化物電極と有機発光素子の光取り出し層をなす金属酸化物薄膜に用いられる物質のうちの代表的な物質としては、酸化亜鉛(ZnO)がある。ここで、酸化亜鉛(ZnO)は、例えば、スパッタリングまたは高いコーティング速度と高い生産性のために量産工程に好適な常圧化学気相蒸着法(atmosphere pressure chemical vapor deposition;APCVD)にてガラス基板上に薄膜コートされて、光電池の透明伝導性酸化物電極に形成されるか、または有機発光素子の光取り出し層に形成される。
【0004】
このような金属酸化物薄膜は、そのヘイズ(haze)値が高いほど、優れた光効率を示し、このようなヘイズ値は、金属酸化物薄膜の表面に形成されるテクスチャリング(texturing)に左右される。しかしながら、金属酸化物薄膜が光電池の透明伝導性酸化物電極に用いられる場合、電気伝導度の向上のためには外部元素のドーピングが要求される。しかし、ドーピングは、テクスチャリングの表面形状を緩和させるため、金属酸化物薄膜のヘイズ特性の低下をもたらすようになる。逆に、光効率の向上のために金属酸化物薄膜の表面のテクスチャリング形状を制御して、金属酸化物薄膜のヘイズ値を高めると、金属酸化物薄膜の面抵抗(Ω/□)が増大し、これにより、金属酸化物薄膜の電気的特性が劣化するという問題があった。
【0005】
また、金属酸化物薄膜が有機発光素子の光取り出し層に用いられる場合、特に高いヘイズ値が必要となる。しかしながら、表面のテクスチャリングだけで散乱特性を向上させる場合、3μm以上の厚さが必要となるが、この場合、光の吸収が増大し、結局、光の透過を減少させて、光取り出し効率が劣化するという問題があった。
すなわち、従来のように表面構造の制御だけでは散乱特性の向上には限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、光閉じ込めまたは光取り出し効率を向上することができる金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子を提供することである。
また、本発明の他の目的は、光閉じ込め及び光取り出し効果をいずれも実現することができる金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子を提供することである。
また、本発明のまた他の目的は、光学特性と電気的特性をいずれも向上することができる金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明は、ベース基板;及び前記ベース基板上に形成され、光を散乱させる複数の空洞(voids)が内部に形成されている金属酸化物薄膜を含むことを特徴とする金属酸化物薄膜基板を提供する。
ここで、前記金属酸化物薄膜は、前記ベース基板上に形成され、表面に第1テクスチャリングが形成されている第1金属酸化物薄膜、及び前記第1金属酸化物薄膜上に形成され、及び、その表面に第2テクスチャリングが形成されている第2金属酸化物薄膜であって、該第2金属酸化物薄膜は単位体の組み合わせを含み、該単位体の各々の幅が、第2金属酸化物薄膜が前記第1金属酸化物薄膜とともに前記空洞を形成するように、上端に向かって広くなっている、第2金属酸化物薄膜を含んでいてよい。
このとき、前記複数の空洞は、前記ベース基板と平行な方向に沿って互いに連結されていてよい。
また、前記空洞の幅は、50〜400nmの幅であってよい。
さらには、前記金属酸化物薄膜は、散乱特性を増大するように前記空洞の屈折率(1.0)よりも高い屈折率を有する物質からなるものであってよい。
このとき、前記金属酸化物薄膜は、ZnO、SnO、SiO、TiO及びNiOから選択されたいずれか一種からなるものであってよい。
また、前記金属酸化物薄膜は、n型またはp型ドーパントによってドープされていてよい。
このとき、前記金属酸化物薄膜は、Ga、Al及びFの少なくとも一種以上がドープされたn型のZnO、FがドープされたSnO、電子ドナー(donor)またはホール(hole)元素がドープされたSiO、電子ドナー元素がドープされたTiO及び電子ドナー元素がドープされたNiOから選択されたいずれか一種からなるものであってよい。
そして、前記金属酸化物薄膜は、CuAlO、CuGaO、CulnO、SrCu及びLaCuOM(Mは酸素族元素)を含む金属酸化物群から選択されたいずれか一種の金属酸化物からなるものであってよい。
さらに、前記金属酸化物薄膜の面抵抗は、2〜20Ω/□であってよい。
また、前記金属酸化物薄膜のヘイズ値は、3〜100%であってよい。
一方、本発明は、ベース基板上に第1金属酸化物薄膜を成長させる第1ステップ;及び前記第1金属酸化物薄膜上にインサイチュ工程で第2金属酸化物薄膜を形成するステップであって、該第2金属酸化物薄膜は単位体の組み合わせを含み、該単位体の各々の幅が、第2金属酸化物薄膜が前記第1金属酸化物薄膜とともに前記空洞を形成するように、上端に向かって広くなっている、第2ステップを含むことを特徴とする金属酸化物薄膜基板の製造方法を提供する。
ここで、金属酸化物薄膜基板の製造方法では、常圧化学気相蒸着法(APCVD)によって前記第1及び第2ステップを実施していてよい。
また、金属酸化物薄膜基板の製造方法は、前記第1金属酸化物薄膜及び前記第2金属酸化物薄膜にドーパントをドープするステップをさらに含んでいてよい。
一方、本発明は、前記金属酸化物薄膜基板を透明電極基板として具備する光電池を提供する。
また、本発明は、前記金属酸化物薄膜基板を光取り出し層基板として具備する有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、層をなす金属酸化物薄膜間の境界に空洞構造を形成させて光散乱を増大させることにより、光閉じ込めまたは光取り出し効率を向上することができる。
また、本発明によれば、光電池の透明電極への適用時に光電池の光閉じ込め効率を向上することができ、また、有機発光素子の光取り出し層への適用時に有機発光素子の光取り出し効率を向上することができる。
すなわち、本発明による金属酸化物薄膜基板は、光閉じ込め及び光取り出し効果をいずれも実現することができ、且つ、電気的特性をも向上することができる。
また、本発明によれば、透過特性を劣化することなく、散乱特性を向上することができ、且つ、厚さもまた低減させることができる。
また、本発明によれば、常圧化学気相蒸着法(APCVD)によるインサイチュ(in−situ)工程で製造することにより、工程時間を短縮することができる。
また、本発明によれば、従来用いられていたITOよりも相対的に低廉な金属酸化物を光閉じ込め及び光取り出し用薄膜の形成に用いることで、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板を示す断面図である。
図2】光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板を透過電子顕微鏡で撮像した写真及び立体図である。
図3】有機発光素子の光取り出し層基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板を透過電子顕微鏡で撮像した写真である。
図4】光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の電気的特性を示す図である。
図5】光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板と従来技術に係る金属酸化物薄膜基板の光学的特性を示す図である。
図6】有機発光素子の光取り出し層基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の光学的特性を示す図である。
図7】光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜のXRDグラフである。
図8】有機発光素子の光取り出し層基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜のXRDグラフである。
図9】光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板と従来技術に係る金属酸化物薄膜基板の波長帯別の光散乱効果を測定して得られるシミュレーション結果を示す図である。
図10】本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板、その製造方法、これを含む光電池及び有機発光素子について詳述する。
なお、本発明を説明するにあたって、関連公知機能あるいは構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にし得ると判断された場合、その詳細な説明は省略することにする。
【0011】
図1ないし図3に示すように、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100は、ベース基板110及び金属酸化物薄膜120を含んでなる。ここで、図2は、光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板を透過電子顕微鏡で撮像した写真及び立体図であり、図3は、有機発光素子の光取り出し層基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板を透過電子顕微鏡で撮像した写真である。このとき、図2の金属酸化物薄膜と図3の金属酸化物薄膜とでは成膜厚だけが異なる。すなわち、図2の光電池の透明電極に適用される金属酸化物薄膜は1μm以下の膜厚で形成されていてよく、図3の有機発光素子の光取り出し層に適用される金属酸化物薄膜は、略2μm以上の膜厚で形成されていてよい。
【0012】
ベース基板110は、片面に形成される金属酸化物薄膜120を支持する基板である。このようなベース基板110は、透明基板であって、光透過率に優れ且つ機械的な物性に優れているものであればその種類に特に制限はない。例えば、ベース基板110としては、熱硬化またはUV硬化が可能な有機フィルム等の高分子系の物質や化学強化ガラスであるソーダライムガラス(SiO−CaO−NaO)またはアルミノシリケート系ガラス(SiO−Al−NaO)が用いられてよい。ここで、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100を、例えば光取り出し層基板として採用する有機発光素子が照明向けである場合、ソーダライムガラスが用いられていてよく、また、有機発光素子がディスプレイ向けである場合、アルミノシリケート系ガラスが用いられていてよい。また、ベース基板110としては、金属酸化物や金属窒化物からなる基板が用いられてもよい。
【0013】
一方、本発明の実施例において、ベース基板110としては、厚さ1.5mm以下の薄板ガラスが用いられていてよく、このような薄板ガラスは溶融(fusion)工法またはフローティング(floating)工法にて製造されていてよい。
【0014】
金属酸化物薄膜120は、ベース基板110の片面に形成される。このとき、金属酸化物薄膜120は、常圧化学気相蒸着(APCVD)にてベース基板110の片面に蒸着されていてよく、これについては、後述する金属酸化物薄膜基板の製造方法のところでより詳述することにする。
【0015】
本発明の実施例において、金属酸化物薄膜120の内部には複数の空洞(voids)130が形成される。ここで、空洞130は、金属酸化物薄膜120と互いに異なる屈折率を有し、金属酸化物薄膜120を通る光を散乱させる役割をする。例えば、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100が光電池の透明伝導性酸化物電極基板として採用される場合、前記空洞130による乱反射、すなわち、光散乱効果によって光電池の光閉じ込め効率を向上することができ、また、金属酸化物薄膜基板100が有機発光素子の光取り出し層基板として採用される場合、前記空洞130による光散乱効果によって有機発光素子の光取り出し効率を向上することができる。このように、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100は、前記空洞130を通じて光閉じ込め及び光取り出し効果をいずれも実現することができる。
【0016】
ここで、空気層である空洞130の屈折率は1.0であるので、散乱特性を向上するためには金属酸化物薄膜120が空洞130の屈折率よりも高い屈折率を有する物質からなるものであってよい。例えば、金属酸化物薄膜120は、ZnO、SnO、SiO、TiO及びNiOのいずれか一種からなるものであってよい。このとき、金属酸化物薄膜120には、電気的特性の向上のためにn型またはp型ドーパントがドープされていてよい。例えば、金属酸化物薄膜120は、Ga、Al及びFの少なくとも一種以上がドープされたn型のZnO、FがドープされたSnO、電子ドナー(donor)またはホール(hole)元素がドープされたSiO、電子ドナー元素がドープされたTiO及び電子ドナー元素がドープされたNiOから選択されたいずれか一種からなるものであってよい。その他、金属酸化物薄膜120は、p型のCuAlO、CuGaO、CulnO、SrCu及びLaCuOA(A=chalcogen)のうちのいずれか一種の金属酸化物からなるものであってよい。このとき、金属酸化物薄膜120がn型またはp型酸化物からなる場合、金属酸化物薄膜120は、2〜20Ω/□の面抵抗を有していてよい。
【0017】
ここで、空洞130は、多層をなして形成される金属酸化物薄膜120の構造的な要因によって生成され得る。これについて具体的に説明すれば、金属酸化物薄膜120は、第1金属酸化物薄膜121及び第2金属酸化物薄膜122の積層構造からなるものであってよい。ここで、第1金属酸化物薄膜121は、ベース基板110上に形成され、金属酸化物薄膜120の基底層をなす。このとき、第1金属酸化物薄膜121の表面にはテクスチャリング(texturing)121aが形成され、これは、常圧化学気相蒸着工程の際に自然発生的に形成され得る。このようなテクスチャリング121aは、空洞130と同様に、金属酸化物薄膜120を通る光を散乱させる役割をする。すなわち、テクスチャリング121aによって金属酸化物薄膜120のヘイズ値が増大する。本発明の実施例において、テクスチャリング121aは、棒、ハーフヘキサゴンまたは六角プリズムなどの多様な多面体形態で形成されていてよく、またはランダムな形態で形成されていてもよい。
【0018】
また、第2金属酸化物薄膜122は、第1金属酸化物薄膜121上に形成される。このとき、図示したように、第2金属酸化物薄膜122は、上端に行くほど幅広となる形態の単位体122aの組み合わせからなるものであってよい。単位体は、図1に示すように、垂直断面が略逆台形の形態を有していてよく、水平断面が略多角形、例えば六角形の形態を有していてよい。このように、第2金属酸化物薄膜122が形成されると、第1金属酸化物薄膜121を底面とする、隣接する単位体122aによって壁面が画成される複数の空洞130が形成される。このとき、複数の空洞130は、ベース基板110と平行な方向に沿って互いに連結されていてよい。例えば、基板の上方から見て、空洞は略メッシュ形態で連結されていてよい。そして、空洞130は、単位体122aによって断面が略三角形の形態で画成されていてよい。例えば、三角形断面形態で底側の幅は約50nm〜400nmの範囲で形成されていてよい。これは、可視光線域の波長を散乱させることができるサイズである。ここで、50nmは、可視光線域の光を散乱させる上で小さすぎるように思われる数値であるが、実際は空洞130が2次元的に連結されており、十分な散乱特性を示すことができる。また、空洞130の高さは、成長される単位体122aの形態によって変わり得る。
【0019】
一方、第2金属酸化物薄膜122をなす単位体122aは、上端が互いに水平方向に重なり合う形態をなす。そして、単位体122aの上面は、凸状または尖った形状に形成される。これによって、第2金属酸化物薄膜122の上端表面には、第1金属酸化物薄膜121の表面と同様に、金属酸化物薄膜120を通る光を散乱させるテクスチャリング122bが形成される。
【0020】
すなわち、金属酸化物薄膜120は、第1金属酸化物薄膜121の表面に形成されるテクスチャリング121a、空洞130及び第2金属酸化物薄膜122の表面に形成されるテクスチャリング122bによって光散乱経路が極めて複雑に変化して、優れた光効率、すなわち光閉じ込め或いは光取り出し効率を示すことができる。このとき、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜120は、3〜100%のヘイズ値を有していてよい。
【0021】
前記したように、ベース基板110と金属酸化物薄膜120からなる金属酸化物薄膜基板100は、テクスチャリング121a、122bと空洞130構造を通じて金属酸化物薄膜120を通る光の散乱経路を多変化或いは増大させて、これを採用する光電池または有機発光素子の光閉じ込めまたは光取り出し効率を向上することができ、また、ドーパントを所定の割合で添加することにより、電気的特性をも向上することができる。
【0022】
図4は、光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の電気的特性、すなわち面抵抗測定結果を示す図であって、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜は、約8Ω/□以下の優れた面抵抗を有することが確認された。
【0023】
また、図5は、光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板と従来技術に係る金属酸化物薄膜基板の光学的特性を示す図であって、波長に対する透過率及びヘイズ値の変化を示している。グラフから分かるように、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板(a)は、従来技術に係る金属酸化物基板(b)に比べて、透過率が低減することなく高いヘイズ値を示すことが確認された。このとき、従来技術に係る金属酸化物基板(b)、すなわち表面だけにテクスチャリングが形成された基板は、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板(a)よりも可視光線域の波長帯において相対的に低いヘイズ値を示すことが確認された。
【0024】
そして、図6は、有機発光素子の光取り出し層基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の光学的特性を示す図であって、光電池の透明電極基板に適用される金属酸化物薄膜基板よりも厚く形成されることによって、全透過率は相対的に低いものの、高いヘイズ値を有しており、優れた光取り出し効率を示すことが確認された。
【0025】
一方、図7及び図8は、それぞれ光電池の透明電極基板及び有機発光素子の光取り出し層基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜のXRDグラフであって、ZnOからなる金属酸化物薄膜に対するXRD測定結果である。同グラフに示すように、ZnOは、c軸方向が主成長方向であり、右側のグラフはc軸である(0002)ピークをカイ走査(chi−scan)した結果を示すもので、c軸は基板に対して垂直方向に成長した成分と基板に対して傾いて成長した成分とが混在された構造をなす。これを通じて、層をなす金属酸化物薄膜及びその形状を類推することができ、グラフ上において、シャープな部分は第1金属酸化物薄膜(図1の121)を示し、また、ブロードな部分は第2金属酸化物薄膜(図1の122)を示す。
【0026】
また、図9は、光電池の透明電極基板に適用される本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板と従来技術に係る金属酸化物薄膜基板の波長帯別の光散乱効果を測定することによって得られたシミュレーション結果であって、上側が本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板であり、下側は従来の金属酸化物薄膜基板である。ここで、図9のシミュレーションは、波長帯別の光が通る際の散乱経路を示すものであって、青色が相対的に少ない光が散乱された部分で、赤色が散乱が集中した部分であり、シミュレーションでは全方向が考慮された。各波長帯別に比べてみると、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板は、従来技術の薄膜基板よりも、すべての波長帯において赤色領域が広く分布していることが確認できる。これは、光の散乱経路が変化され及び増大したことを意味する。
【0027】
このような特性を有する本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100は、図2に示す形状を備えるように形成され、光電池の透明伝導性酸化物電極に用いられ得る。ここで、光電池は、光エネルギー、例えば太陽エネルギーを直接電気へ変換させる光発電素子である。
【0028】
具体的に図示していないが、このような光電池は、カバーガラス/緩衝部材/電池セル/緩衝部材/裏面シートの積層構造からなるものであってよい。ここで、カバーガラスは、湿気、塵埃、破損などの外部環境から電池セルを保護する役割をする。また、緩衝部材は、湿気の浸透などの外部環境から電池セルを保護し、電池セルとカバーガラスとを貼り合わせて封止する役割をする層であって、エチレン酢酸ビニル(EVA)からなるものであってよい。そして、電池セルは、例えば太陽光を受けて電圧と電流を発生させる発電素子から構成される。例えば、電池セルは、透明伝導性酸化物電極、光吸収層、裏面電極層、及び絶縁膜を含んでなるものであってよい。ここで、光吸収層は、その材料に応じて単結晶または多結晶シリコン、セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)またはテルル化カドミウム(CdTe)を用いる半導体化合物、多孔質膜のナノ粒子の表面に可視光の吸収で電子が励起する光感応染料分子が吸着された染料感応体、非晶質シリコンなどからなるものであってよい。本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100のうちの金属酸化物薄膜120は、電池セルを構成する透明伝導性酸化物電極として適用されてよく、また、ベース基板110は、透明導電性酸化物電極を支持する支持基板としての役割をする。
【0029】
また、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100は、図3に示す形態を取るように形成され、有機発光素子の光取り出し層として用いられてよい。
【0030】
具体的に、金属酸化物薄膜基板100のベース基板110は、有機発光素子を形成する、互いに対向して配置される封止基板のうちのいずれか一方の基板となり、その片面に形成されている金属酸化物薄膜120自体が光取り出し層としての役割をする。このとき、金属酸化物薄膜120は、外部光取り出し層として用いられてよく、有機発光素子のアノードと接する形態の内部光取り出し層として用いられてよい。金属酸化物薄膜120が有機発光素子の内部光取り出し層として用いられる場合、表面のテクスチャリング122bがアノードの表面に転写されることでリーク電流が発生することがあるため、金属酸化物薄膜120が有機発光素子の内部光取り出し層として用いられる場合は、アノードと金属酸化物薄膜120との間に平坦膜が形成されてよい。
【0031】
ここで、図示していないが、有機発光素子について簡略に説明すると、有機発光素子は、互いに対向するように配置される封止基板の間に配置されるアノード、有機発光層及びカソードの積層構造からなる。このとき、アノードは、正孔注入が起こりやすい仕事関数の大きい金属としてのAu、In、SnまたはITOのような金属または酸化物からなるものであってよく、また、カソードは、電子注入が起こりやすいように仕事関数の小さいAl、Al:LiまたはMg:Agの金属薄膜からなるものであってよく、トップエミッション(top emission)構造である場合、有機発光層から発せられた光が透過しやすいようにAl、Al:LiまたはMg:Agの金属薄膜の半透明電極(semitransparent electrode)とインジウムスズ酸化物(indium tin oxide;ITO)のような酸化物透明電極(transparent electrode)薄膜の多層構造からなるものであってよい。そして、有機発光層は、アノード上に順に積層される正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層を含んでなる。このような構造によって、アノードとカソードとの間に順方向電圧が印加されると、カソードから電子が電子注入層及び電子輸送層を介して発光層へと移動し、アノードから正孔が正孔注入層及び正孔輸送層を介して発光層へと移動する。そして、発光層内に注入された電子と正孔は、発光層で再結合して励起子(exciton)を生成し、このような励起子が励起状態(excited state)から基底状態(ground state)に遷移しながら光を放出するようになり、このとき、放出される光の明るさは、アノードとカソードとの間を流れる電流量に比例する。
【0032】
このように、光散乱効果が増大した金属酸化物薄膜基板100を薄膜型太陽電池の透明伝導性酸化物電極または有機発光素子の光取り出し層に適用すると、これらの素子の光学的特性、すなわち光閉じ込めまたは光取り出し効率をさらに向上することができるようになる。
【0033】
以下、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の製造方法について、図10を参照して説明することにする。
【0034】
図10に示すように、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板の製造方法は、先ず、ベース基板110上に第1金属酸化物薄膜121を成長させる。このとき、第1金属酸化物薄膜121としては、ZnO、SnO、SiO、TiO、NiOのいずれか一種、またはGaがドープされたn型のZnO、SnO、SiO、TiO、NiOのいずれか一種、またはGa、Al及びFの少なくとも一種以上がドープされたn型のZnO、FがドープされたSnO、電子ドナー(donor)またはホール(hole)元素がドープされたSiO、電子ドナー元素がドープされたTiO及び電子ドナー元素がドープされたNiOから選択されたいずれか一種、若しくは、p型のCuAlO、CuGaO、CulnO、SrCu及びLaCuOM(Mは酸素族元素)のうちのいずれか一種の金属酸化物を用いてよく、常圧化学気相蒸着法にて前記した金属酸化物からなる第1金属酸化物薄膜121を蒸着させる。
【0035】
ここで、常圧化学気相蒸着法では、先ず、処理チャンバにベース基板110を装入してから所定の温度にて加熱する。次いで、第1金属酸化物薄膜121を形成する前駆体ガスと酸化剤ガスを処理チャンバ(図示せず)の内部へ供給する。このとき、前駆体ガスと酸化剤ガスとが処理チャンバ(図示せず)の内部に供給される前に事前混合されることを防止するために、それぞれ別のガス供給経路を介して供給されるように制御することが好ましく、化学反応を活性化させるために前駆体ガスと酸化剤ガスとをあらかじめ加熱して供給すればよい。このとき、前駆体ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴンといった不活性ガスからなるキャリアガスによって処理チャンバ(図示せず)の内部に供給されていてよい。
【0036】
このように、常圧化学気相蒸着法にて第1金属酸化物薄膜121を蒸着させると、第1金属酸化物薄膜121の表面には、テクスチャリング121aが自然発生的に形成される。
【0037】
次いで、インサイチュ(in−situ)工程で第1金属酸化物薄膜121上に、これと同じ物質からなる第2金属酸化物薄膜122を蒸着させる。このとき、前駆体ガスと酸化剤ガスとの割合、前駆体の量、成長温度などを制御して、第1金属酸化物薄膜121上に複数の単位体122aの組み合わせからなる第2金属酸化物薄膜122を成長させる。第1金属酸化物薄膜を蒸着させる際に比べて、第2金属酸化物薄膜を蒸着させる際は、前駆体ガスと酸化剤ガスの量を増大し且つ成長温度を高めることで成長速度を増大させて空洞を形成させる。このような形態で第2金属酸化物薄膜122を成長させると、第1金属酸化物薄膜121と第2金属酸化物薄膜122との境界にベース基板110と平行な方向に沿って複数の空洞130が形成される。このとき、常圧化学気相蒸着にて第2金属酸化物薄膜122の表面にもテクスチャリング122bが形成される。
【0038】
このように、常圧化学気相蒸着によるインサイチュ工程でベース基板110上に第1金属酸化物薄膜121と第2金属酸化物薄膜122とを連続蒸着させると、本発明の実施例に係る金属酸化物薄膜基板100の製造が完了する。
【0039】
以上のように、本発明を限定された実施例や図面に基づいて説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から種々の修正及び変形が可能である。
したがって、本発明の範囲は前述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲や特許請求の範囲と均等なものなどによって決められるべきである。
【符号の説明】
【0040】
100 金属酸化物薄膜基板
110 ベース基板
120 金属酸化物薄膜
121 第1金属酸化物薄膜
121a 第1テクスチャリング
122 第2金属酸化物薄膜
122a 単位体
122b 第2テクスチャリング
130 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10