特許第6384009号(P6384009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384009
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】トルク変動吸収装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/139 20060101AFI20180827BHJP
   F16F 15/137 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F16F15/139 B
   F16F15/137 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-41652(P2015-41652)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-161079(P2016-161079A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】安部 浩也
(72)【発明者】
【氏名】長尾 翔太
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−065637(JP,A)
【文献】 特開2011−149534(JP,A)
【文献】 特開2009−287729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16H 45/02
F16D 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に結合される一対のホルダプレート(5,6)と、それらのホルダプレート(5,6)との間での動力伝達を可能として一対の前記ホルダプレート(5,6)間に同軸に配置されるドリブンプレート(7)とを備え、一対の前記ホルダプレート(5,6)および前記ドリブンプレート(7)が、少なくとも前記ホルダプレート(5,6)側への入力トルク変動が大きい状態で高ヒステリシスを発生するように相対回転することを可能としたトルク変動吸収装置において、
一対の前記ホルダプレート(5,6)のうち少なくとも一方のホルダプレート(6)に相対回転不能に取付けられる駆動リング(31)と、前記ドリブンプレート(7)に相対回転不能に取付けられて前記駆動リング(31)と同軸に配置される従動リング(32)と、周方向複数箇所で前記駆動リング(31)および前記従動リング(32)間に配置される浮動中子(33)とを有する高ヒステリシス発生機構(30)が、前記ホルダプレート(5,6)側への入力トルク変動が大きい状態で前記駆動リング(31)とともに回転する前記浮動中子(33)を前記従動リング(32)に押しつけることで高ヒステリシスを生じさせるようにして、前記少なくとも一方のホルダプレート(6)および前記ドリブンプレート(7)間に配置され
前記高ヒステリシス発生機構(30)は、前記駆動リング(31)を同軸に囲繞する前記従動リング(32)の内周面が、前記浮動中子(33)を摺接させるようにしつつ前記ドリブンプレート(7)の回転中心を中心とした仮想円に沿うように形成され、前記駆動リング(31)の外周の周方向複数箇所に、前記従動リング(32)の内周に向けて半径方向外方に突出する突部(35)と、その突部(35)を周方向両側から挟む一対の凹部(36,37)とがそれぞれ形成され、前記浮動中子(33)が、前記駆動リング(31)および前記従動リング(32)の半径方向で前記突部(35)および前記従動リング(32)の内周面間の第1長さ(L1)よりも大きな直径(D)を有して前記凹部(36,37)および前記従動リング(32)間にそれぞれ配置される一対の円盤部(33a,33b)と、前記半径方向で前記第1長さ(L1)よりも小さな第2長さ(L2)を有して前記円盤部(33a,33b)間を連結する連結部(33c)とを一体に有するとともに、重心(G)が前記連結部(33c)の中心に在るように形成されることを特徴とするトルク変動吸収装置。
【請求項2】
前記高ヒステリシス発生機構(30)が、一対の前記ホルダプレート(5,6)のうちの一方のホルダプレート(6)および前記ドリブンプレート(7)間に設けられており、
前記ドリブンプレート(7)に接触する接触面(26)を有しつつ該接触面(26)を前記ドリブンプレート(7)側に押しつける弾発力を発揮するように構成される低ヒステリシス発生機構(25)が、前記ホルダプレート(5,6)側への入力トルク変動が小さい状態で低ヒステリシスを発生するようにして一対の前記ホルダプレート(5,6)のうち他方のホルダプレート(5)および前記ドリブンプレート(7)間に設けられることを特徴とする請求項1に記載のトルク変動吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に結合される一対のホルダプレートと、それらのホルダプレートとの間での動力伝達を可能として一対の前記ホルダプレート間に同軸に配置されるドリブンプレートとを備え、一対の前記ホルダプレートおよび前記ドリブンプレートが、少なくとも前記ホルダプレート側への入力トルク変動が大きい状態で高ヒステリシスを発生するように相対回転することを可能としたトルク変動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低トルク振動を減衰するとともにエンジン始動および停止時に生じる大きなトルク変動を吸収するために、エンジンから動力が伝達される一対のホルダプレートと、ミッション側に連結されるドリブンプレートとを備え、一対のホルダプレートおよびドリブンプレートが2段階のヒステリシスを発生するように相対回転することを可能として、エンジンおよびミッション間に設けられるようにしたトルク変動吸収装置が、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−218347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されるものでは、トルク変動が大きいときに高ヒステリシスを発生させるためのヒステリシス発生機構が、一方のホルダプレートおよびドリブンプレート間に配置される高荷重出力皿ばねを有するように構成されており、部品点数が多くなるとともに軸方向の大型化が避けられない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数を少なくした構成でトルク変動が大きいときに高ヒステリシスを発生させることを可能とするとともに、軸方向の大型化を回避し得るようにしたトルク変動吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、相互に結合される一対のホルダプレートと、それらのホルダプレートとの間での動力伝達を可能として一対の前記ホルダプレート間に同軸に配置されるドリブンプレートとを備え、一対の前記ホルダプレートおよび前記ドリブンプレートが、少なくとも前記ホルダプレート側への入力トルク変動が大きい状態で高ヒステリシスを発生するように相対回転することを可能としたトルク変動吸収装置において、一対の前記ホルダプレートのうち少なくとも一方のホルダプレートに相対回転不能に取付けられる駆動リングと、前記ドリブンプレートに相対回転不能に取付けられて前記駆動リングと同軸に配置される従動リングと、周方向複数箇所で前記駆動リングおよび前記従動リング間に配置される浮動中子とを有する高ヒステリシス発生機構が、前記ホルダプレート側への入力トルク変動が大きい状態で前記駆動リングとともに回転する前記浮動中子を前記従動リングに押しつけることで高ヒステリシスを生じさせるようにして、一対のホルダプレートの少なくとも一方および前記ドリブンプレート間に配置され、前記高ヒステリシス発生機構は、前記駆動リングを同軸に囲繞する前記従動リングの内周面が、前記浮動中子を摺接させるようにしつつ前記ドリブンプレートの回転中心を中心とした仮想円に沿うように形成され、前記駆動リングの外周の周方向複数箇所に、前記従動リングの内周に向けて半径方向外方に突出する突部と、その突部を周方向両側から挟む一対の凹部とがそれぞれ形成され、前記浮動中子が、前記駆動リングおよび前記従動リングの半径方向で前記突部および前記従動リングの内周面間の第1長さよりも大きな直径を有して前記凹部および前記従動リング間にそれぞれ配置される一対の円盤部と、前記半径方向で前記第1長さよりも小さな第2長さを有して前記円盤部間を連結する連結部とを一体に有するとともに、重心が前記連結部の中心に在るように形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
さらに本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記高ヒステリシス発生機構が、一対の前記ホルダプレートのうちの一方のホルダプレートおよび前記ドリブンプレート間に設けられており、前記ドリブンプレートに接触する接触面を有しつつ該接触面を前記ドリブンプレート側に押しつける弾発力を発揮するように構成される低ヒステリシス発生機構が、前記ホルダプレート側への入力トルク変動が小さい状態で低ヒステリシスを発生するようにして一対の前記ホルダプレートのうち他方のホルダプレートおよび前記ドリブンプレートの他面間に設けられることを第の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、高ヒステリシス発生機構が、ホルダプレートに相対回転不能に取付けられる駆動リングと、ドリブンプレートに相対回転不能に取付けられて前記駆動リングと同軸に配置される従動リングと、周方向複数箇所で前記駆動リングおよび前記従動リング間に配置される浮動中子とを有して、一対のホルダプレートの少なくとも一方およびドリブンプレート間に配置されており、高ヒステリシス発生機構を、少ない部品点数で構成することができるとともに、径方向での接触に伴う摩擦によって高ヒステリシスを発生するようにしていることから軸方向の大型化を回避することができる。しかも高ヒステリシス発生機構は皿ばね等による高荷重を必要としないので、軸回りの高剛性化は不要である。
【0009】
また前記高ヒステリシス発生機構は、駆動リングの外周の周方向複数箇所に突部ならびにその両側の凹部とが形成され、浮動中子が、凹部および従動リング間にそれぞれ配置される一対の円盤部と、それらの円盤部間を連結する連結部とを一体に有するように形成され、駆動リングおよび従動リングの半径方向で突部および従動リングの内周面間の第1長さよりも大きな直径を円盤部が有し、第1長さよりも小さな第2長さを連結部が有するように設定されるので、大きなトルク変動に応じて駆動リングが従動リングに対して大きく相対回転すると、浮動中子が備える一対の円盤部のうち駆動リングの回転方向に沿う前方側の円盤部が前記突部で押されることで、浮動中子が、その重心を前記突部よりも前記回転方向に沿う後方に配置して後方側の円盤部の一部が後方側の凹部に入り込むように姿勢を変化させ、回転方向前方側の円盤部が従動リングの内周面に押しつけられることで接触面圧が大きくなり、簡単な構造で高ヒステリシスを発生することができる。
【0010】
さらに本発明の第の特徴によれば、高ヒステリシス発生機構が、一対のホルダプレートの一方およびドリブンプレート間に設けられ、低ヒステリシス発生機構が、一対のホルダプレートの他方およびドリブンプレート間に配置されるので、ドリブンプレートの両側に、高ヒステリシス発生機構および低ヒステリシス発生機構をコンパクトに配置して、入力トルク変動が小さい状態での低ヒステリシスと、入力トルク変動が大きい状態での高ヒステリシスとを発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】トルク変動吸収装置の縦断面図であって図2の1−1線断面図である。
図2図1の2−2線断面図である。
図3図2の要部を小トルク変動時(a)および大トルク変動時(b)で対比して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図1図3を参照しながら説明すると、先ず図1において、このトルク変動吸収装置は、車両に搭載されるパワーユニットのエンジンおよびミッション間に設けられるものであり、前記エンジンから動力が伝達される第1および第2のホルダプレート5,6と、前記ミッション側に連結されるドリブンプレート7とを備え、第1および第2のホルダプレート5,6と、前記ドリブンプレート7とは2段階のヒステリシスを発生するように相対回転することが可能である。
【0013】
前記エンジン側に配置される第1のホルダプレート5の外周部ならびに前記ミッション側に配置される第2のホルダプレート6の外周部間にはマスリング8が挟まれており、第1および第2のホルダプレート5,6の外周部と、それらの外周部間に挟まれる前記マスリング8とは、周方向に間隔をあけて配置されるリベット9で相互に締結される。また前記マスリング8には、第1および第2のホルダプレート5,6の外周よりもさらに半径方向外方に張り出すようにように形成されており、この第1および第2のホルダプレート5,6の外方で前記マスリング8には、エンジン側回転軸10に複数のボルト11で締結されるドライブプレート12の外周部が、周方向に間隔をあけて配置される複数のボルト13で締結される。
【0014】
前記ドリブンプレート7の内周部は、ミッション側回転軸14に同軸に固定される円筒状のボス部材15の外周に溶接等で固着され、前記ドリブンプレート7は、第1および第2のホルダプレート5,6との間での動力伝達を可能として第1および第2のホルダプレート5,6間に同軸に配置される。
【0015】
図2を併せて参照して、前記ドリブンプレート7の外周の周方向に間隔をあけた複数箇所には、半径方向外方に突出した規制突部16が一体に設けられ、前記マスリング8の内周には、前記規制突部16を収容する規制凹部17が形成される。前記規制凹部17は、前記マスリング8の周方向に沿って前記規制突部16よりも大きく形成されており、前記規制突部16が、前記マスリング8の周方向に沿う前記規制凹部17の両端に当接することで、前記マスリング8に対する前記ドリブンプレート7の相対回動範囲、すなわち第1および第2のホルダプレート5,6に対する前記ドリブンプレート7の相対回動範囲が規制されることになる。
【0016】
第1および第2のホルダプレート5,6には、相互に軸方向に並んで対をなす外側ガイド孔18,19が周方向に複数個ずつ設けられ、それらの外側ガイド孔18,19間に配置される内側ガイド孔20が前記ドリブンプレート7に設けられる。
【0017】
前記外側ガイド孔18,19および前記内側ガイド孔20には、それらのガイド孔18,19,20間に跨がるとともに周方向に離隔して配置される一対のばね受け部材21が摺動可能に嵌装されており、それらのばね受け部材21間にコイル状のダンパスプリング22が縮設される。
【0018】
第1および第2のホルダプレート5,6の少なくとも一方と、前記ドリブンプレート7との間、この実施の形態では第2のホルダプレート6および前記ドリブンプレート7の一面7a間には、第1および第2のホルダプレート5,6側への入力トルク変動が大きい状態で高ヒステリシスを発生する高ヒステリシス発生機構30が配置される。また第1および第2のホルダプレート5,6の他方である第1のホルダプレート5と、前記ドリブンプレート7の他面7bとの間には、第1および第2のホルダプレート5,6側への入力トルク変動が小さい状態で低ヒステリシスを発生する低ヒステリシス発生機構25が設けられる。
【0019】
前記低ヒステリシス発生機構25は、前記ドリブンプレート7の前記他面7bに接触する接触面26を有するリング状の低摩擦部材27と、この低摩擦部材27および第1のホルダプレート5間に介装される皿ばね28とを有し、前記接触面26を前記ドリブンプレート7側に押しつける弾発力を発揮するように構成される。
【0020】
前記低摩擦部材27は、前記内側ガイド孔20よりも半径方向内方で前記ドリブンプレート7の前記他面7bに接触する前記接触面26を形成するリング板部27aと、そのリング板部27aの内周部に直角に連なる円筒状の支持筒部27bとを有しており、前記支持筒部27bは、第1のホルダプレート5の中心部にスライド可能に嵌合される。
【0021】
前記高ヒステリシス発生機構30は、第2のホルダプレート6に相対回転不能に取付けられる駆動リング31と、前記ドリブンプレート7に相対回転不能に取付けられて前記駆動リング31と同軸に配置される従動リング32と、周方向複数箇所で前記駆動リング31および前記従動リング32間に配置される浮動中子33とを有しており、第1および第2のホルダプレート5,6側への入力トルク変動が大きい状態で前記駆動リング31とともに回転する前記浮動中子33を前記従動リング32に押しつけることで高ヒステリシスを生じさせるように構成され、前記駆動リング31、前記従動リング32および前記浮動中子33は合成樹脂によって形成される。
【0022】
前記従動リング32は、この実施の形態では前記駆動リング31を同軸に囲繞するように配置されるものであり、前記従動リング32の前記ドリブンプレート7側に臨む面の周方向複数箇所に突設される支持突部32aが、前記ドリブンプレート7の周方向複数箇所に設けられる支持孔34に嵌合することで、前記ドリブンプレート7に前記従動リング32が相対回転不能に取付けられる。一方、前記駆動リング31は、前記従動リング32で囲繞されるようにして第2のホルダプレート6および前記ドリブンプレート7間に配置されるリング板部31aと、そのリング板部31aの内周部に直角に連なる支持突部31bとを一体に有し、前記支持突部31bが、第2のホルダプレート6の中心部に相対回転不能として結合される。
【0023】
前記従動リング32の内周面は、前記浮動中子33を摺接させるようにしつつ前記ドリブンプレート7の回転中心を中心とした曲率半径R1の仮想円に沿うように形成される。また前記駆動リング31における前記リング板部31aの外周の周方向複数箇所たとえば4箇所には、前記従動リング32の内周に向けて半径方向外方に突出する突部35と、その突部35を周方向両側から挟む一対の凹部36,37とがそれぞれ形成される。
【0024】
図3を併せて参照して、前記浮動中子33は、前記駆動リング31および前記従動リング32の半径方向で前記突部35および前記従動リング32の内周面間の第1長さL1よりも大きな直径Dを有して前記凹部36,37および前記従動リング32間にそれぞれ配置される一対の円盤部33a,33bと、前記半径方向で前記第1長さL1よりも小さな第2長さL2を有して前記円盤部33a,33b間を連結する連結部33cとを一体に有するとともに重心Gが前記連結部33cの中心に在るように形成される。しかも前記従動リング32の内周面に対向する前記浮動中子33の外周面は、前記従動リング32の内周面の曲率半径R1よりも小さな曲率半径R2で湾曲するように形成される。
【0025】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、第1および第2のホルダプレート5,6のうちの少なくとも一方である第2のホルダプレート6に相対回転不能に取付けられる駆動リング31と、前記ドリブンプレート7に相対回転不能に取付けられて前記駆動リング31と同軸に配置される従動リング32と、周方向複数箇所で前記駆動リング31および前記従動リング32間に配置される浮動中子33とを有する高ヒステリシス発生機構30が、第1および第2のホルダプレート5,6側への入力トルク変動が大きい状態で前記駆動リング31とともに回転する前記浮動中子33を前記従動リング32に押しつけることで高ヒステリシスを生じさせるようにして、第2のホルダプレート6および前記ドリブンプレート7の一面7a間に配置されるので、高ヒステリシス発生機構30を、少ない部品点数で構成することができるとともに、径方向での接触に伴う摩擦によって高ヒステリシスを発生するようにしていることから軸方向の大型化を回避することができる。しかも高ヒステリシス発生機構30は皿ばね等による高荷重を必要としないので、軸回りの高剛性化は不要である。
【0026】
また前記駆動リング31を同軸に囲繞する前記従動リング32の内周面が、前記浮動中子33を摺接させるようにしつつ前記ドリブンプレート7の回転中心を中心とした仮想円に沿うように形成され、前記駆動リング31の外周の周方向複数箇所に、前記従動リング32の内周に向けて半径方向外方に突出する突部35と、その突部35を周方向両側から挟む一対の凹部36,37とがそれぞれ形成され、前記浮動中子33が、前記駆動リング31および前記従動リング32の半径方向で前記突部35および前記従動リング32の内周面間の第1長さL1よりも大きな直径Dを有して前記凹部36,37および前記従動リング32間にそれぞれ配置される一対の円盤部33a,33bと、前記半径方向で前記第1長さL1よりも小さな第2長さL2を有して前記円盤部33a,33b間を連結する連結部33cとを一体に有するとともに、重心Gが前記連結部33cの中心に在るように形成される。
【0027】
したがって第1および第2のホルダプレート5,6が図3の矢印40で示す方向に回転している状態で、第1および第2のホルダプレート5,6側への入力トルク変動が小さい状態では、前記駆動リング31および前記従動リング32に対する前記浮動中子35の姿勢は図3(a)で示す状態となっており、駆動リング31および従動リング32間で摩擦力が生じることはないが、前記入力トルク変動が大きくなって駆動リング31が従動リング32に対して大きく相対回転すると、図3(b)で示すように、浮動中子33が備える一対の円盤部33a,33bのうち駆動リング31の回転方向40に沿う前方側の円盤部33aが前記突部35で押されることで、浮動中子33が、その重心Gを前記突部35よりも前記回転方向40に沿う後方に配置して後方側の円盤部33bの一部が回転方向40に沿う後方側の凹部37に入り込むように姿勢を変化させ、回転方向前方側の円盤部33aが従動リング32の内周面に押しつけられることで接触面圧が大きくなり、簡単な構造で高ヒステリシスを発生することができる。
【0028】
さらにドリブンプレート7に接触する接触面26を有しつつ該接触面26を前記ドリブンプレート7側に押しつける弾発力を発揮するように構成される低ヒステリシス発生機構25が、第1および第2のホルダプレート5,6側への入力トルク変動が小さい状態で低ヒステリシスを発生するようにして第1および第2のホルダプレート5,6の他方である第1のホルダプレート5および前記ドリブンプレート7の他面7b間に設けられるので、ドリブンプレート7の両側に、高ヒステリシス発生機構30および低ヒステリシス発生機構25をコンパクトに配置して、入力トルク変動が小さい状態での低ヒステリシスと、入力トルク変動が大きい状態での高ヒステリシスとを発生することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0030】
5,6・・・ホルダプレート
7・・・ドリブンプレート
25・・・低ヒステリシス発生機構
26・・・接触面
30・・・高ヒステリシス発生機構
31・・・駆動リング
32・・・従動リング
33・・・浮動中子
33a,33b・・・円盤部
33c・・・連結部
35・・・突部
36,37・・・凹部
D・・・直径
G・・・重心
L1・・・第1長さ
L2・・・第2長さ
図1
図2
図3