特許第6384015号(P6384015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384015
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】パンチングメタルドラムスクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/06 20060101AFI20180827BHJP
   B01D 24/38 20060101ALI20180827BHJP
   B01D 33/70 20060101ALI20180827BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B01D33/18 A
   B01D33/38
   C02F11/12 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-100938(P2018-100938)
(22)【出願日】2018年5月25日
【審査請求日】2018年6月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】尾田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】萩本 寿生
(72)【発明者】
【氏名】菅野 稔
(72)【発明者】
【氏名】代田 博文
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−213828(JP,A)
【文献】 特開平10−156111(JP,A)
【文献】 特開昭58−137415(JP,A)
【文献】 米国特許第5733450(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D33/00−33/82
C02F11/00−11/20
B30B9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸が略水平方向に配置され且つ壁面がパンチングメタルで形成された円筒形の胴部と、
前記中心軸の近傍を除き前記胴部の一端側を閉塞する第一閉塞板と、
前記中心軸上に配置され、前記第一閉塞板を介して被処理液を供給する被処理液導入管と、
前記被処理液導入管に接続され、前記被処理液を受ける供給部と、
前記胴部の他端側を閉塞する第二閉塞板と、
前記中心軸を中心として前記胴部を回転可能に支持する支持体と、
前記胴部を回転させる駆動手段と、を有し、
前記第二閉塞板の近傍を除き前記壁面には複数の孔が形成され、
前記第二閉塞板の近傍の前記壁面には前記孔より大きな複数の塊状物排出口が形成され、
前記供給部は、略台形の案内板と前記略台形の底辺を除く辺に接続した変流板とを備え、前記変流板で前記被処理液の流れを前記胴部の径方向外方に変えるとともに、前記被処理液を前記案内板の上で分散し、前記第一閉塞板の近傍を少なくとも含む前記壁面に、前記底辺から前記分散した被処理液を落下させることを特徴とするパンチングメタルドラムスクリーン装置。
【請求項2】
前記被処理液は、繊維を含む汚泥であり、
前記供給部は、前記回転により上方へ移動する前記壁面に前記被処理液を落下させ、
前記駆動手段は、前記胴部の内部で前記繊維をロール状に成長させる回転速度で前記胴部を回転することを特徴とする請求項1に記載のパンチングメタルドラムスクリーン装置。
【請求項3】
前記被処理液は、凝集剤が混入された汚泥であり、
前記駆動手段は、前記胴部の内部で前記被処理液をロール状に成長させない回転速度で前記胴部を回転することを特徴とする請求項1に記載のパンチングメタルドラムスクリーン装置。
【請求項4】
前記塊状物排出口に通じる排出管に設けられて、前記塊状物排出口を通じて排出された前記被処理液の汚泥もしくは水分流量を検出する流量センサと、
前記被処理液導入管に設けられた流量調整手段と、
前記流量センサの検出値が所定値より大きい場合には、前記流量調整手段を制御して前記被処理液の供給量を減少させ、または前記駆動手段を制御して前記胴部の回転速度を増加させる制御装置と、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパンチングメタルドラムスクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンチングメタルで形成されたドラムスクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿、浄化槽汚泥等の有機性廃水は、汚泥再生処理施設にて処理されている。汚泥再生処理施設では、有機性廃水の処理の効率化のために、有機性廃水の中から繊維分を分離する処理や汚泥濃縮の処理が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1、特許文献2に記載の従来技術では、ウェッジワイヤーやパンチングメタルで形成されたドラムスクリーンを備えた繊維除去装置で汚泥に含まれる繊維を分離している。
【0004】
一方、特許文献3、及び特許文献4に記載の従来技術では、ウェッジワイヤーやパンチングメタルで形成されたドラムスクリーンを備えた汚泥濃縮装置で汚泥濃縮を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−192615号公報
【特許文献2】韓国特許第10−0904283号公報
【特許文献3】特開2007−330920号公報
【特許文献4】特開2002−177712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、多数の貫通孔が形成されたドラムスクリーンに被処理液を供給する際、ドラムスクリーンの外部に被処理液が漏れてドラムスクリーンの外部に配置された別の装置の汚染を回避するため、ドラムスクリーンの端部は避けて内部に被処理液を供給しており、このためドラムスクリーンの有効長を十分に活用できず、ドラムスクリーンが大型化する恐れがあった。また、被処理液は、被処理液を供給する管の開口と実質的に同一の寸法でドラムスクリーンの一箇所に集中して落下するため、ドラムスクリーンの貫通孔当たりの被処理液の流量が過剰になり、被処理液を適切に処理できない恐れがあった。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ドラムスクリーンの有効長を最大限に活用して装置の小型化を可能とするとともに、ドラムスクリーンへ落下する被処理液の流量を緩和して被処理液を適切に処理することを可能とするパンチングメタルドラムスクリーン装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパンチングメタルドラムスクリーン装置は、中心軸が略水平方向に配置され且つ壁面がパンチングメタルで形成された円筒形の胴部と、前記中心軸の近傍を除き前記胴部の一端側を閉塞する第一閉塞板と、前記中心軸上に配置され、前記第一閉塞板を介して被処理液を供給する被処理液導入管と、前記被処理液導入管に接続され、前記被処理液を受ける供給部と、前記胴部の他端側を閉塞する第二閉塞板と、前記中心軸を中心として前記胴部を回転可能に支持する支持体と、前記胴部を回転させる駆動手段と、を有し、前記第二閉塞板の近傍を除き前記壁面には複数の孔が形成され、前記第二閉塞板の近傍の前記壁面には前記孔より大きな複数の塊状物排出口が形成され、前記供給部は、略台形の案内板と前記略台形の底辺を除く辺に接続した変流板とを備え、前記変流板で前記被処理液の流れを前記胴部の径方向外方に変えるとともに、前記被処理液を前記案内板の上で分散し、前記第一閉塞板の近傍を少なくとも含む前記壁面に、前記底辺から前記分散した被処理液を落下させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、胴部の端から被処理液の処理ができるので、パンチングメタルドラムスクリーン装置を小型化することができる。また、被処理液を供給部の変流板と案内板で分散してから胴部の壁面へ被処理液を落下させるので、被処理液と胴部壁面の接触面積を増加するとともに、各孔に対する被処理液の流量を緩和し、被処理液を適切に処理することができる。
【0010】
上記パンチングメタルドラムスクリーン装置では、被処理液は、繊維を含む汚泥であり、供給部は、回転により上方へ移動する胴部の壁面に被処理液を落下させ、駆動手段は、胴部の内部で繊維をロール状に成長させる回転速度で胴部を回転する構成としてよい。
この構成によれば、パンチングメタルドラムスクリーン装置は自己洗浄するので、ドラムスクリーンの目詰まりを取り除くための清掃作業を定常的に実施する必要がなく、また、ブラシ等の洗浄装置を別途設置する必要もないため、製造コストやメンテナンスコストの観点で優れたパンチングメタルドラムスクリーン装置を提供することができる。
【0011】
上記パンチングメタルドラムスクリーン装置では、被処理液は、凝集剤が混入された汚泥であり、駆動手段は、胴部の内部で被処理液をロール状に成長させない回転速度で胴部を回転する構成としてよい。
この構成によれば、被処理液と胴部の壁面との接触面積を大きくし、汚泥濃縮を効率良く行うことが可能となる。
また、上記パンチングメタルドラムスクリーン装置では、塊状物排出口に通じる排出管に被処理液の水分流量を検出する流量センサと、被処理液導入管に設けられた流量調整手段とを設け、流量センサの検出値が所定値より大きい場合には、流量調整手段を制御して被処理液の供給量を減少させ、または駆動手段を制御して胴部の回転速度を増加させる制御装置をさらに備える構成としてもよい。
この構成によれば、必要以上の被処理液が供給されている又は胴部の回転速度が遅すぎる場合に、制御装置により自動的に最適な被処理液の供給量または最適な胴部の回転速度に調整されるので、繊維除去や汚泥濃縮などの用途において、被処理液を適切に処理することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドラムスクリーンの有効長を最大限に活用して装置の小型化を可能とするとともに、ドラムスクリーンへ落下する被処理液の流量を緩和して被処理液を適切に処理することを可能とするパンチングメタルドラムスクリーン装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のパンチングメタルドラムスクリーン装置を示す概略構成図である。
図2】被処理液導入管の先端に接続した供給部を示す斜視図である。
図3図1のIII-III線断面から供給部を見た断面図である。
図4】変形例のパンチングメタルドラムスクリーン装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態のパンチングメタルドラムスクリーン装置100(以下、ドラムスクリーン装置100という)について図1図3を参照して説明する。なお、ドラムスクリーン装置100は、繊維除去装置または汚泥濃縮装置として使用することができる。
【0015】
図1は、本発明のドラムスクリーン装置100を示す概略構成図である。ドラムスクリーン装置100は、両端に閉塞板20A及び20Bを備えた円筒形の胴部10と、胴部10の内部へ被処理液Aを導入する直管状の被処理液導入管11と、被処理液導入管11の先端に接続されて被処理液Aの流れを変える供給部17と、胴部10を回転可能に支持する支持体12(12a及び12b)と、胴部10を一方向へ回転させる駆動手段13を有する。
【0016】
胴部10は、壁面14がパンチングメタルで形成された筒状体である。胴部10の中心軸10A(仮想の軸)は略水平方向に配置されている。胴部10は、図1に示したとおり、被処理液Aが導入される被処理液導入部αと、被処理液Aから水分の一部(汚泥もしくは水分W)が除去される分離液排出部βと、分離液排出部βで被処理液Aから汚泥もしくは水分Aが除去された塊状物Sを排出する塊状物排出部γの3つの部分に分けられる。すなわち、胴部10の全長は、被処理液導入部α、分離液排出部β、及び塊状物排出部γの中心軸10Aに沿った長さの和となる。
なお、ドラムスクリーン装置100を繊維除去装置として使用する場合には、被処理液Aは繊維を含む汚泥であり、且つ、塊状物Sは繊維である。また、ドラムスクリーン装置100を汚泥濃縮装置として使用する場合には、被処理液Aは凝集剤が注入された汚泥であり、且つ、塊状物Sは濃縮汚泥となる。
胴部10の回転に伴い、被処理液導入部αに導入された被処理液Aは、被処理液導入部αから塊状物排出部γに向かって汚泥もしくは水分Wが次第に除去されながら進行する。
被処理液導入部α、すなわち胴部10の一端側には、被処理液Aを連続的に供給する被処理液導入管11が、中心軸10A上に配置されている。被処理液導入管11は、胴部10の内部においては直線状の管であるが、胴部10の外部においては適宜屈曲した管でありうる。
後述するとおり、胴部10の内部の被処理液導入管11の先端には供給部17が設置されており、供給部17は、中心軸10Aに沿って直進する被処理液Aの流れを曲げ、胴部10の径方向外方に導く。
被処理液導入部αの壁面14には、パンチングにより多数の円形の孔15が均等に配置されており、分離液排出部βと同様、胴部10の回転に伴い、孔15から胴部10の外部かつ下方へ汚泥もしくは水分Wが排出される。孔15の直径は、約1mmとしてよい。このような小径の孔15が形成されたパンチングメタルは、方形の孔が開くように編まれたウェッジワイヤーに比べ、被処理液Aに含まれる夾雑物や繊維が絡み付きにくい。すなわち、孔15の目詰まりが発生しにくい。
被処理液導入部αの端部には、中心軸10Aと同軸の円形の開口を備え、当該開口を除いて胴部10の径方向を全て閉塞する閉塞板20Bが配置されている。当該開口は、被処理液導入管11を胴部10の内部へ挿通するのに必要かつ十分な大きさであり、被処理液Aが当該開口から胴部10の外部へ流出しない程度の大きさである。
支持体12aは、閉塞板20Bと接続し、中心軸10Aと同軸の円筒状の部材である。当該円筒の内径は、被処理液導入管11を胴部10の内部へ挿通するのに必要かつ十分な大きさである。
【0017】
分離液排出部βは、被処理液導入部αと塊状物排出部γの間に配置され、被処理液導入部αと同様に多数の孔15が均等に配置されている。従って、胴部10の回転に伴い、孔15から胴部10の外部かつ下方へ汚泥もしくは水分Wが排出される。
なお、分離液排出部15及び被処理液導入部αの下方には、汚泥もしくは水分Wを受ける第1排出管16が設けられている。
塊状物排出部γの端部には、胴部10の径方向を全て閉塞する閉塞板20Aが配置されている。閉塞板20Aと上述の閉塞板20Bにより、胴部10の内部に供給された被処理液Aが胴部10の外部に配置された周辺機器に飛散することを回避できるので、周辺機器の汚染や腐食を防止することができる。
また、閉塞板20Aと分離液排出部βの間には、塊状物排出部γの壁面14の周方向に、多数の方形(例えば、長方形)の排出口22が均等に配置されている。従って、胴部10の回転に伴い、排出口22から胴部10の外部かつ下方へ塊状物Sが排出される。排出口22は、孔15より大きな開口面積を有する。例えば、排出口22の寸法を12cm×15cmとしてよい。孔15と同様、排出口22もパンチングにより開孔されてよい。
排出口22は胴部10の周方向寸法を、より大きくすることが好ましい。周方向寸法を大きくすることで、ドラムスクリーン装置の長さをコンパクトにでき且つ多量の塊状物Sを一度に排出できる。
なお、塊状物排出部γの下方には、排出口22の寸法より大きな開口寸法で塊状物Sを受ける第2排出管23が設けられている。
支持体12bは、閉塞板20Aと接続し、中心軸10Aと同軸の円柱状の部材である。
【0018】
支持体12(支持体12a及び12b)は、これらを回転可能に支持する部材(図示略)で支持される。また、図1に示すように、支持体12を回転させるモータ等の駆動手段13が設けられている。駆動手段13が支持体12を回転させることで、支持体12と一体に接続された胴部10も回転する。
駆動手段13から支持体12への駆動伝達手段はチェーンとスプロケットなど既知の適当な手段を用いることができる。
【0019】
では、図2及び図3を用いて、被処理液導入管11に接続した供給部17を詳述する。
図2に示すように、供給部17は、略台形の案内板19と、上記台形の上辺に接続した変流板18Aと、被処理液導入管11に接続し、且つ、変流板18A及び案内板19に接続した変流板18Bと、変流板18Bに対向し、且つ、変流板18A及び案内板19に接続した変流板18Cを有する。上記台形の上辺は、底辺よりも短く、底辺よりも中心軸10Aに近い位置に配置される。
変流板18Bには、被処理液導入管11から案内板19上に被処理液Aを導入するための開口が形成されているが、被処理液導入管11は当該開口を貫通して変流板18Bに接続してもよいし、被処理液導入管11の端部である導入管開口部11Aを当該開口に接続してもよい。
変流板18(18A、18B、18C)は、案内板19と垂直に接続している。また、変流板18の高さは、被処理液Aが変流板18を越えて流れることができない高さに設定されている。
変流板18Aは、中心軸10Aに略平行に配置される。変流板18Bは、中心軸10Aに沿って被処理液導入管11を流れる被処理液の流れ方向(イ)と逆方向に、中心軸10Aに垂直な方向から角度θ1だけ傾いて、略台形の案内板19の右辺に接続している。変流板18Cは、上記被処理液の流れ方向(イ)と同方向に、中心軸10Aに垂直な方向から角度θ2だけ傾いて、略台形の案内板19の左辺に接続している。角度θ1と角度θ2は同じ角度でもよいし、異なる角度でもよい。被処理液の性状や流速に応じて、0°<θ1≦60°、0°<θ2≦60°で適宜設定される。
図3は、図1のIII-III線断面から供給部17を見た断面図である。案内面19は、胴部10の中心軸10Aの鉛直方向かつ下方から、胴部10の回転方向に角度θ3だけ傾いて配置される。角度θ3は、0°<θ3≦60°の範囲に設定される。また、図3において、胴部10の径方向における供給部17の中心軸10Aからの長さLは、胴部10の半径をrとしたとき、1/2r≦L≦4/5rの範囲に設定される。
ドラムスクリーン装置100を繊維除去装置として使用する場合には、被処理液Aが壁面14に衝突して飛び散らない程度に緩やかに被処理液Aを胴部10内に導入できれば良いので、Lの寸法は短めに設定してよく、例えばL≒1/2rとしてよい。一方、ドラムスクリーン装置100を汚泥濃縮装置として使用する場合には、凝集剤が混入されて汚泥フロックが大径化した被処理液Aが上記衝突で破壊・細分化しないように、繊維除去装置として使用する場合よりもさらに緩やかに壁面14へ被処理液Aを供給する必要があることから、Lの寸法はできるだけ長めに設定する必要があり、3/4r≦L≦4/5rとするのが望ましい。少なくとも、L≒3/4rであれば、汚泥濃縮装置として十分に機能することが可能である。もちろん、ドラムスクリーン装置100を繊維除去装置として使用する場合においても、3/4r≦L≦4/5rの範囲に設定してもよく、L≒3/4rとしてもよい。
ここで、図2及び図3を用いて、供給部17における被処理液Aの流れを説明する。
被処理液導入管11の内部を流れた被処理液Aは、導入管開口部11Aから方向(イ)に向かって放出される。放出された被処理液Aは、供給部17の変流板18Cに衝突し、方向(イ)から大きく方向転換される。すなわち、放出された被処理液Aの一部は、案内板19上かつ変流板18Cに沿って流れ、また、被処理液Aの一部は変流板18Cで跳ね返ることで案内板19上かつ変流板18Bに沿って流れ、さらに変流板18Cで跳ね返った被処理液Aの一部は、変流板18Aを越えて流れることはできず、案内板19上かつ変流板18Cと変流板18Bの間を流れる。
言い換えれば、供給部17は、略台形の案内板19の底辺から流れ落ちる被処理液Aの流量が、当該底辺のいずれの箇所でもほぼ均等になるよう分散して、壁面14に向かって被処理液Aを放出し、被処理液Aを当該壁面上に落下させる。
例えば、供給部17を設置せず、被処理液導入管11の先端を下方へ90°曲げて被処理液Aを壁面14へ放出する場合には、導入管開口部11Aと実質的に同じ面積で、壁面14へ被処理液Aが衝突するため、壁面14のうち被処理液Aが落下する箇所の各孔15当たりの流量が過剰となり、被処理液Aの繊維除去もしくは汚泥濃縮ができなくなるとともに汚泥もしくは水分Wを孔15から適切に排出することができない恐れがある。しかしながら、供給部17は、変流板18で被処理液Aの流れを変え且つ案内板19上で被処理液Aを分散するので、被処理液導入管11の開口である導入管開口部11Aよりも大幅に広い面積で被処理液Aを壁面14に衝突させることができる。従って、規則的に配置された複数の孔15の1つ当たりの被処理液Aの流量を少なく、しかも各孔15のそれぞれに対する流量を均一化することができるため、被処理液Aの汚泥もしくは水分Wを孔15から適切に排出することができる。
また、案内板19上かつ変流板18Bに沿って流れた被処理液A、すなわち、方向(イ)と逆方向かつ下方に流れを変えた被処理液Aは、被処理液導入部αにおける閉塞板20Bと壁面14の接続箇所近傍に落下するよう設計される。従って、孔15が形成された胴部10の最も端の部分から被処理液Aの汚泥もしくは水分Wを排出できるので、胴部10の有効長を十分に活用することが可能となる。
【0020】
なお、ドラムスクリーン装置100では、胴部10を回転自在に支持する支持体12(12a、12b)を、胴部10の両側に配置したが、強度上の問題がなければ、支持体12を片側のみに設け、胴部10を片持ちで支持しても良い。
(変形例)
本発明の変形例であるドラムスクリーン装置101について、図4を参照して説明する。ここでは、上述した図1のドラムスクリーン装置100との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図4のドラムスクリーン装置101は、図1の支持体12bに代わり、胴部10の他端側に、胴部10を下方から回転自在に支持する支持体30を配置している。支持体30は、胴部10の中心軸10Aと平行な軸を中心として回転するころ(ローラ部材)である。
図4では、駆動手段13は支持体12aを回転させる構成としているが、駆動手段13は支持体30を回転させてもよい。
支持体30は、閉塞板20Aと塊状物排出口22との間に設置されるため、塊状物排出口22から塊状物Sが排出される際に、塊状物Sが支持体30に接触することがなく、支持体30の腐食又は回転障害などのトラブルの発生を抑えることができる。なお、胴部10の両端を複数の支持体30のみで支持する構成としてもよい。
【0021】
ドラムスクリーン装置101は、第2排出管23に設置された流量センサ41と、被処理液導入管11に設置された流量調整手段42と、流量センサ41の検出信号を受信し、当該検出信号に応じて流量調整手段42及び駆動手段13を制御する制御装置40を有する。
流量センサ41は、第2排出管23に排出された汚泥や水分の流量を検出し、当該流量に対応する検出信号を発信する。
流量調整手段42は、例えば電動弁やポンプである。制御装置40は、流量調整手段42を制御して、被処理液Aの供給量を増加または減少させることができる。
制御装置40は、電動モータ等の駆動手段13を制御して、胴部10の回転速度(単位時間当たりの回転数)を増加または減少させることができる。
また、図4には、流量調整手段42より下流かつ胴部10の上流において、被処理液導入管11に設置された添加装置50が図示されている。添加装置50は、被処理液導入管11を介して被処理液A中に凝集剤Gを連続的に注入する装置である。従って、ドラムスクリーン装置101を繊維除去装置として使用する場合、添加装置50は不要である。すなわち、添加装置50は、ドラムスクリーン装置101を汚泥濃縮装置として使用する場合に設置される。
【0022】
では、図4の制御装置40によるドラムスクリーン装置101の制御につき、ドラムスクリーン装置101を繊維除去装置として使用する場合と汚泥濃縮装置として使用する場合に分けて、説明する。
まず、ドラムスクリーン装置101を繊維除去装置として使用する場合について説明する。上述のとおり、この場合、図4の添加装置50は設置されない。
作業員が、例えば電源スイッチを入れることで、ドラムスクリーン装置101を起動すると、制御装置40は、駆動手段13を制御して胴部10を所定の回転速度で一定方向へ回転させるとともに、流量調整手段42を制御して、所定の流量で被処理液Aを被処理液導入管11に流す。これにより、被処理液導入部αに配置された供給部17から、被処理液Aが胴部10の内部へ供給される。
被処理液Aは、被処理液導入部αから塊状物排出部γへ向かって流れてゆくが、その過程で、分離液排出部βにおいて被処理液Aの大部分の汚泥(例えば、95%以上の汚泥)が排出され、実質的に被処理液Aに含まれる繊維のみが塊状物Sとして塊状物排出部γから排出される。
ただし、被処理液Aの性状によっては、上記所定の流量、上記所定の回転速度では、塊状物排出部γから多量の汚泥が排出され、流量センサ41の検出値が所定値より大きくなる場合がありうる。この場合は、被処理液導入管11から必要以上の被処理液Aが供給されているか又は回転速度が遅すぎるので、制御装置40は、流量調整手段42を制御して被処理液Aの供給量を減少させ、または、胴部10の回転速度を増加させる。
この際、制御装置40は、被処理液Aに含まれる繊維が胴部10の長さ方向に円柱状(ロール状)に成長する回転速度の範囲で、適宜、回転速度を制御する。例えば、回転速度を線速度0.1m/s以上とするとよい。上記所定の回転速度も、当該範囲内である。
供給部17が、回転する壁面14のうち上方に向かって移動する壁面に向かって被処理液Aを落下させ、かつ、胴部10の回転速度を適切に設定することで、被処理液Aに含まれる繊維を円柱状(ロール状)に成長させることができる。なお、回転する壁面14のうち下方に向かって移動する壁面に向かって被処理液Aを落下させた場合には、被処理液Aに含まれる繊維をロール状に成長させることができない。
胴部10の回転に伴い、ロール状の繊維が孔15に絡まった繊維を絡め取って成長(巨大化)する。従って、ドラムスクリーン装置101の運転中、壁面14の孔15に目詰まりが発生することを防止できる。よって、胴部10の自己洗浄(セルフクリーニング)がなされるので、ドラムスクリーン装置101の清掃作業を長期間定常的に行う必要がない。すなわち、ドラムスクリーン装置101はメンテナンスフリーであり、さらに製造コストやメンテナンスコストの観点で優れた装置といえる。
【0023】
次に、ドラムスクリーン装置101を汚泥濃縮装置として使用する場合について説明する。
上述のとおり、この場合、図4の添加装置50が設置され、被処理液Aに凝集剤Gが注入される。
作業員が、例えば電源スイッチを入れることで、ドラムスクリーン装置101を起動すると、制御装置40は、駆動手段13を制御して胴部10を所定の回転速度で一定方向へ回転させるとともに、流量調整手段42を制御して、所定の流量で被処理液Aを被処理液導入管11に流す。また、作業員がドラムスクリーン装置101を起動すると、添加装置50が起動し、被処理液導入管11を流れる被処理液Aに凝集剤Gが混入される。これにより、被処理液導入部αに配置された供給部17から、凝集剤Gにより汚泥フロックが大径化した凝集汚泥、すなわち凝集剤Gが混入した被処理液Aが胴部10の内部へ供給される。
被処理液Aは、被処理液導入部αから塊状物排出部γへ向かって流れてゆくが、その過程で、分離液排出部βにおいて被処理液Aの水分が排出され、塊状物Sとして濃縮した凝集汚泥Sが塊状物排出部γから排出される。
ただし、被処理液Aの性状によっては、上記所定の流量、上記所定の回転速度では、塊状物排出部γから設定以上の多量の水分が排出され、流量センサ41の検出値が所定値より大きくなる場合がありうる。この場合は、被処理液導入管11から必要以上の被処理液Aが供給されているか又は回転速度が遅すぎるので、制御装置40は、流量調整手段42を制御して被処理液Aの供給量を減少させ、または、胴部10の回転速度を増加させる。
なお、ドラムスクリーン装置101を汚泥濃縮装置として使用する場合は、繊維除去装置として使用する場合と異なり、制御装置40は、被処理液Aが円柱状(ロール状)に成長しない回転速度の範囲で制御する。上記所定の回転速度も、当該範囲内である。汚泥濃縮の場合は、汚泥フロックが大径化した被処理液Aの胴部10への接触面積が大きい方が、効果的に処理を行うことができるからである。
【0024】
以上のように、本発明の実施形態及び変形例のドラムスクリーン装置100、101は、供給部17によって、孔15が形成された胴部10の最も端の部分から被処理液Aの汚泥もしくは水分Wを排出できる。従って、胴部10の有効長を最大限に活用することが可能となる。
また、被処理液Aを供給部17で分散してから胴部10の壁面14へ被処理液Aを落下させるので、各孔15に対する被処理液Aの流量を緩和し、被処理液Aを適切に処理することができる。
【0025】
なお、ドラムスクリーン装置101では、制御装置40が被処理液Aの供給量及び胴部10の回転速度を制御できるようにしたが、制御装置40を設置せず、流量センサ41で得た検出値に基づき、作業員が手動で流量調整手段42を操作して被処理液Aの供給量を変更し、または作業員が手動で駆動手段13を操作して胴部10の回転速度を変更しても良い。また、流量センサ41としては、例えば電磁式、超音波式など種々のセンサを使用することができる。また、ドラムスクリーン装置101では、被処理液導入管11の道中に添加装置50を設けているが、流量調整手段42の前段の別途反応槽(図示無し)で汚泥フロックを大径化する凝集操作を行っても良い。
【0026】
以上、本発明の実施形態および変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10 胴部
10A 中心軸
11 被処理液導入管
11A 導入管開口部
12a、12b 支持体
13 駆動手段
14 壁面
15 孔
16 第1排出管
17 供給部
18A、18B、18C 変流板
19 案内板
20A、20B 閉塞版
22 塊状物排出口
23 第2排出管
30 支持体(ローラ部材(ころ))
40 制御装置
41 流量センサ
42 流量調整手段
50 添加装置
100 パンチングメタルドラムスクリーン装置
101 パンチングメタルドラムスクリーン装置
A 被処理液
G 凝集剤
S 塊状物
W 汚泥もしくは水分
【要約】
【課題】装置の小型化を可能とするとともにドラムスクリーンへ落下する被処理液の流量を緩和して被処理液を適切に処理することを可能とするパンチングメタルドラムスクリーン装置を提供する。
【解決手段】中心軸が略水平方向に配置され且つ壁面がパンチングメタルで形成された円筒形の胴部と、胴部の一端側を閉塞する第一閉塞板と、第一閉塞板を介して被処理液を供給する被処理液導入管と、被処理液導入管に接続され、被処理液を受ける供給部と、胴部の他端側を閉塞する第二閉塞板と、中心軸を中心として胴部を回転可能に支持する支持体と、胴部を回転させる駆動手段とを有する。供給部は、被処理液の流れを胴部の径方向外方に変えるとともに分散し、第一閉塞板の近傍を少なくとも含む壁面に、被処理液を落下させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4