(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱硬化性樹脂組成物が、式(1)のジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサン100質量部に対し、エポキシ樹脂用硬化剤を50〜120質量部含有する請求項1又は2記載の光反射性異方性導電接着剤。
熱硬化性樹脂組成物が、酸無水物系硬化剤100質量部に対し、イミダゾール系硬化促進剤を0.20〜2.00質量部含有する請求項5記載の光反射性異方性導電接着剤。
光反射性絶縁粒子が、酸化チタン、窒化ホウ素、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
光反射性絶縁粒子の屈折率(JIS K7142)が、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きい請求項1〜7のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
導電粒子が、金属材料で被覆されているコア粒子と、その表面に酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子から選択された少なくとも一種の無機粒子から形成された光反射層とからなる光反射性導電粒子である請求項1〜10のいずれかに記載の光反射性異方性導電接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<<光反射性異方性導電接着剤>>
本発明は、発光素子を配線板に異方性導電接続するために使用する光反射性異方性導電接着剤であって、熱硬化性樹脂組成物、導電粒子及び光反射性絶縁粒子を含有する光反射性異方性導電接着剤である。まず、バインダーである熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0023】
<熱硬化性樹脂組成物>
(ジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサン)
本発明において、熱硬化性樹脂組成物は、式(1)で表されるジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンと、エポキシ樹脂用硬化剤とを含有する。式(1)で表されるジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンを含有することにより、熱や光により異方性導電接着剤が変色してしまうことを防止でき、しかも実用上十分なダイシェア強度を実現することができる。
【0025】
式(1)中、Rは炭素数1〜6の低級アルキル基等のアルキル基、又は炭素環式芳香族基、複素環式芳香族等のアリール基である。アルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基を挙げることができ、特に好ましいアルキル基としてはメチル基を挙げることができる。また、アリール基の好ましい具体例としては、フェニル基を挙げることができる。nは3〜40の整数であり、好ましくは3〜20の整数、より好ましくは4である。
【0026】
従って、特に好ましい式(1)のジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンは、以下の式(A)で表される化合物である。
【0028】
式(1)で表されるジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンの熱硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると光反射性異方性導電接着剤の接着性能が低下する傾向があり、多すぎると未硬化エポキシ成分量が過多となる傾向があるので、好ましくは45〜65質量%、より好ましくは50〜60質量%である。
【0029】
<ジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンの製造方法>
式(1)で表されるジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンは、以下の反応式に示すように、式(a)のハイドロジェン環状ポリシロキサンと、式(b)の1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレートとを、窒素などの不活性ガス雰囲気下、適当な溶媒中で、好ましくは無溶媒で均一に混合した後、ハイドロシリル化を触媒可能な白金触媒の存在下で、好ましくは室温〜150℃に加熱し、ハイドロシリレーション反応させることにより製造することができる。反応混合物からは、常法(濃縮処理・カラム処理等)により式(1)の化合物を単離することができる。なお、反応式中の置換基は、既に式(1)に関連して説明したとおりである。
【0031】
<白金触媒濃度>
ここで、ハイドロシリレーション反応の際の白金触媒の濃度は、20ppm以下、好ましくは15ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。なお、白金触媒の好ましい下限濃度は、少なくとも1.0ppmである。白金触媒の濃度がこの範囲であれば、ハイドロシリレーション反応をスムーズに進行させ、また、光反射性異方性導電接着剤の熱や光による着色を、接着性を損なわずに抑制することができる。この白金触媒の濃度は、反応開始時点のハイドロジェン環状ポリシロキサンと末端不飽和アルケニル基を有するエポキシ基含有イソシアヌレートとの混合物中の濃度である。具体的には、白金触媒の濃度(Pt)は、ハイドロジェン環状ポリシロキサンや末端不飽和アルケニル基を有するエポキシ基含有イソシアヌレートに対し非常に微量であるため、ハイドロジェン環状ポリシロキサンの質量をW1、末端不飽和アルケニル基を有するエポキシ基含有イソシアヌレートの質量をW2、使用された白金触媒の固形分の質量をW3としたときに、以下の数式で定義される。通常は、“ppm”単位で表現される。
【0033】
なお、白金触媒は、反応混合物の単離・精製方法などによりエポキシ基含有イソシアヌリル変性環状ポリシロキサン中にも残存してしまう場合があるが、着色の点から、白金触媒残存濃度は、好ましくは20ppm以下、より好ましくは15ppm以下となるようにする。これにより着色のない無色透明な樹脂の取得が可能となる。なお、エポキシ基含有イソシアヌリル変性環状ポリシロキサン中の残存白金触媒濃度は、市販の誘導結合プラズマ発光分析装置)(例えば、Agilent 7500cx ICP−MS、アジレント・テクノロジー(株))を用いて測定することができる。
【0034】
(白金触媒例)
ハイドロシリル化を触媒可能な白金触媒としては、マイナスの電荷を帯びた錯体、0価、2価または4価の白金化合物および白金コロイドが挙げられる。マイナスの電荷を帯びた錯体としては、白金カルボニルクラスターアニオン化合物、例えば、[Pt
3(CO)
6]
2−、[Pt
3(CO)
6]
22−、[Pt
3(CO)
6]
42−が例示される。0価の白金化合物としては、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金(0)テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、白金(0)エチレン錯体、白金(0)スチレン錯体が例示される。2価の白金化合物としては、Pt(II)Cl
2,Pt(II)Br
2、ビス(エチレン)Pt(II)Cl
2、(1,5−シクロオクタジエン)Pt(II)Cl
2、白金(II)アセチルアセトナート、ビス(ベンゾニトリル)Pt(II)Cl
2が例示される。4価の白金化合物としては、Pt(IV)Cl
4、H
2Pt(IV)Cl
6、Na
2Pt(IV)Cl
6、K
2Pt(IV)Cl
6が例示される。中でも、カールステッド(Karstedt)白金触媒(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)錯体)を好ましく使用できる。これらは、必要に応じてキシレンなどの溶媒に溶解させた溶液として使用することができる。
【0035】
(その他のエポキシ化合物)
熱硬化性樹脂組成物は、式(1)のジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンの他に、発明の効果を損なわない範囲で、複素環系エポキシ化合物や脂環式エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物などを含有することができる。
【0036】
複素環系エポキシ化合物としては、トリアジン環を有するエポキシ化合物を挙げることができ、例えば、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(換言すれば、トリグリシジルイソシアヌレート)を挙げることができる。
【0037】
脂環式エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。中でも、硬化物にLED素子の実装等に適した光透過性を確保でき、速硬化性にも優れている点から、グリシジルヘキサヒドロビスフェノールA、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを好ましく使用することができる。
【0038】
水素添加エポキシ化合物としては、前述の複素環系エポキシ化合物や脂環式エポキシ化合物の水素添加物や、その他公知の水素添加エポキシ樹脂を使用することができる。
【0039】
これらの脂環式エポキシ化合物や複素環系エポキシ化合物や水素添加エポキシ化合物は、式(1)のジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンに対し、単独で併用してもよいが、2種以上を併用してもよい。また、これらのエポキシ化合物に加えて本発明の効果を損なわない限り、他のエポキシ化合物を併用してもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、ジアリールビスフェノールA、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、クレゾール、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ベンゾフェノン、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビキシレノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテル;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、チレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル;アミノフェノール、アミノアルキルフェノールから得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル;アミノ安息香酸から得られるグリシジルアミノグリシジルエステル;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホンなどから得られるグリシジルアミン;エポキシ化ポリオレフィン等の公知のエポキシ樹脂類が挙げられる。
【0040】
(エポキシ樹脂用硬化剤)
エポキシ樹脂用硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。例えば、アミン系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリスルフィド系硬化剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体系硬化剤、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等の中から選択して使用することができる。中でも、光透過性、耐熱性等の観点から酸無水物系硬化剤を好ましく使用することができる。
【0041】
酸無水物系硬化剤としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
【0042】
酸無水物系硬化剤等のエポキシ樹脂用硬化剤の熱硬化性樹脂組成物中の配合量は、式(1)で表されるジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサン100質量部に対して、少なすぎると未硬化エポキシ成分量が過多となる傾向があり、多すぎると余剰の硬化剤の影響で被着体材料の腐食が促進される傾向があるので、好ましくは、50〜120質量部、より好ましくは60〜100質量部である。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、硬化反応を円滑に、かつ短時間で完了させるために、公知の硬化促進剤を含有することができる。好ましい硬化促進剤としては、第四級ホスホニウム塩系硬化促進剤やイミダゾール径硬化促進剤が挙げられる。具体的には、第四級ホスホニウムのブロマイド塩(「U−CAT5003」(商標)、サンアプロ(株)製)、2−エチル−4−メチルイミダゾール等を挙げることができる。特に、酸無水物系硬化剤用の硬化促進剤としては、イミダゾール系硬化促進剤を好ましく使用することができる。この場合、イミダゾール系硬化促進剤の添加量は、少なすぎると硬化が不十分となる傾向があり、多すぎると熱・光に対する変色が大きくなる傾向があるので、酸無水物系硬化剤100質量部に対し、イミダゾール系硬化促進剤を好ましくは0.20〜2.00質量部、より好ましくは0.60〜1.00質量部である。
【0044】
以上説明した熱硬化性樹脂組成物は、なるべく無色透明なものを使用することが好ましい。異方性導電接着剤中の光反射性導電粒子の光反射効率を低下させず、しかも入射光の光色を変えずに反射させるためである。ここで、無色透明とは、異方性導電接着剤の硬化物が、波長380〜780nmの可視光に対して光路長1cmの光透過率(JIS K7105)が80%以上、好ましくは90%以上となることを意味する。
【0045】
<光反射性絶縁粒子>
本発明の光反射性異方性導電接着剤が含有する光反射性絶縁粒子は、異方性導電接着剤に入射した光を外部に反射するためのものである。
【0046】
なお、光反射性を有する粒子には、金属粒子、金属粒子を樹脂被覆した粒子、自然光の下で灰色から白色である金属酸化物、金属窒素化物、金属硫化物等の無機粒子、樹脂コア粒子を無機粒子で被覆した粒子、粒子の材質によらず、その表面に凹凸がある粒子が含まれる。しかし、これらの粒子の中で、本発明で使用できる光反射性絶縁粒子には、絶縁性を示すことが求められている関係上、絶縁被覆されていない金属粒子は含まれない。また、金属酸化物粒子のうち、ITOのように導電性を有するものは使用できない。また、光反射性且つ絶縁性を示す無機粒子であっても、SiO
2のように、その屈折率が使用する熱硬化性樹脂組成物の屈折率よりも低いものは使用できない。
【0047】
このような光反射性絶縁粒子の好ましい具体例としては、酸化チタン(TiO
2)、窒化ホウ素(BN)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化アルミニウム(Al
2O
3)からなる群より選択される少なくとも一種の無機粒子が挙げられる。中でも、高屈折率の点からTiO
2を使用することが好ましい。
【0048】
光反射性絶縁粒子の形状としては、球状、鱗片状、不定形状、針状等でもよいが、反射効率を考慮すると、球状、鱗片状が好ましい。また、その大きさとしては、球状である場合、小さすぎると反射率が低くなり、大きすぎると異方性導電接続を阻害する傾向があるので、好ましくは0.02〜20μm、より好ましくは0.2〜1μmであり、鱗片状である場合には、長径が好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜50μm、短径が好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μm、厚さが好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0049】
無機粒子からなる光反射性絶縁粒子は、その屈折率(JIS K7142)が、好ましくは熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)よりも大きいこと、より好ましくは少なくとも0.02程度大きいことが好ましい。これは、屈折率差が小さいとそれらの界面での反射効率が低下するからである。
【0050】
光反射性絶縁粒子としては、以上説明した無機粒子を使用してもよいが、鱗片状又は球状金属粒子の表面を透明な絶縁性樹脂で被覆した樹脂被覆金属粒子を使用してもよい。金属粒子としては、ニッケル、銀、アルミニウム等を挙げることができる。粒子の形状としては、不定形状、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。特に、好ましいものは、光の反射率の点から鱗片状銀粒子である。
【0051】
光反射性絶縁粒子としての樹脂被覆金属粒子の大きさは、形状によっても異なるが、一般に大きすぎると、異方性導電接続を阻害するおそれがあり、小さすぎると光を反射しにくくなるので、好ましくは球状の場合には粒径0.1〜30μm、より好ましくは0.2〜10μmであり、鱗片状の場合には、長径が好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは1〜50μmで厚みが好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。ここで、光反射性絶縁粒子の大きさは、絶縁被覆されている場合には、その絶縁被覆も含めた大きさである。
【0052】
このような樹脂被覆金属粒子における当該樹脂としては、種々の絶縁性樹脂を使用することができる。機械的強度や透明性等の点からアクリル系樹脂の硬化物を好ましく利用することができる。好ましくは、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物などのラジカル開始剤の存在下で、メタクリル酸メチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとをラジカル共重合させた樹脂を挙げることができる。この場合、2,4−トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤で架橋されていることがより好ましい。また、金属粒子としては、予めシランカップリング剤でγ−グリシドキシ基やビニル基等を金属表面に導入しておくことが好ましい。
【0053】
このような樹脂被覆金属粒子は、例えば、トルエンなどの溶媒中に金属粒子とシランカップリング剤とを投入し、室温で約1時間撹拌した後、ラジカルモノマーとラジカル重合開始剤と、必要に応じて架橋剤とを投入し、ラジカル重合開始温度に加温しながら撹拌することにより製造することができる。
【0054】
以上説明した光反射性絶縁粒子の、光反射性異方性導電接着剤中の配合量は、少なすぎると十分な光反射を実現することができず、また多すぎると併用している導電粒子に基づく接続が阻害されるので、光反射性異方性導電接着剤中に光反射性絶縁粒子を好ましくは1〜50体積%、より好ましくは5〜25体積%で含有している。
【0055】
<導電粒子>
本発明の光反射性異方性導電接着剤を構成する導電粒子としては、異方性導電接続用の従来の導電粒子において用いられている金属の粒子を利用することができる。例えば、金、ニッケル、銅、銀、半田、パラジウム、アルミニウム、それらの合金、それらの多層化物(例えば、ニッケルメッキ/金フラッシュメッキ物)等を挙げることができる。中でも、金、ニッケル、銅は、導電粒子を茶色としてしまうことから、本発明の効果を他の金属材料よりも享受することができる。
【0056】
また、導電粒子として、樹脂粒子を金属材料で被覆した金属被覆樹脂粒子を使用することができる。このような樹脂粒子としては、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが挙げられる。樹脂粒子を金属材料で被覆する方法としても従来公知の方法を採用することができ、無電解メッキ法、電解メッキ法等を利用することができる。また、被覆する金属材料の層厚は、良好な接続信頼性を確保するに足る厚さであり、樹脂粒子の粒径や金属の種類にもよるが、通常、0.1〜3μmである。
【0057】
また、樹脂粒子の粒径は、小さすぎると導通不良が生じ、大きすぎるとパターン間ショートが生じる傾向があるので、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μm、特に好ましくは3〜5μmである。この場合、コア粒子1の形状としては球状が好ましいが、フレーク状、ラクビーボール状であってもよい。
【0058】
好ましい金属被覆樹脂粒子は球状形状であり、その粒径は大きすぎると接続信頼性の低下となるので、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
【0059】
特に、本発明においては、上述したような導電粒子に対し光反射性を付与し、光反射性導電粒子とすることが好ましい。
図1A、
図1Bは、このような光反射性導電粒子10、20の断面図である。まず、
図1Aの光反射性導電粒子から説明する。
【0060】
光反射性導電粒子10は、金属材料で被覆されているコア粒子1と、その表面に酸化チタン(TiO
2)粒子、窒化ホウ素(BN)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子又は酸化アルミニウム(Al
2O
3)粒子から選択された少なくとも一種の無機粒子2から形成された光反射層3とから構成される。酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子は、太陽光の下では白色を呈する無機粒子である。従って、それらから形成された光反射層3は白色〜灰色を呈する。白色〜灰色を呈しているということは、可視光に対する反射特性の波長依存性が小さく、且つ可視光を反射しやすいことを意味する。
【0061】
なお、酸化チタン粒子、窒化ホウ素粒子、酸化亜鉛粒子又は酸化アルミニウム粒子のうち、硬化した異方性導電接着剤の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の光劣化が懸念される場合には、光劣化に対して触媒性がなく、屈折率も高い酸化亜鉛を好ましく使用することができる。
【0062】
コア粒子1は、異方性導電接続に共されるものであるので、その表面が金属材料で構成されている。ここで、表面が金属材料で被覆されている態様としては、前述したように、コア粒子1そのものが金属材料である態様、もしくは樹脂粒子の表面が金属材料で被覆された態様が挙げられる。
【0063】
無機粒子2から形成された光反射層3の層厚は、コア粒子1の粒径との相対的大きさの
観点からみると、コア粒子1の粒径に対し、小さすぎると反射率の低下が著しくなり、大
きすぎると導通不良が生ずるので、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは1〜25
%である。
【0064】
また、光反射性導電粒子10において、光反射層3を構成する無機粒子2の粒径は、小さすぎると光反射現象が生じ難くなり、大きすぎると光反射層の形成が困難となる傾向があるので、好ましくは0.02〜4μm、より好ましくは0.1〜1μm、特に好ましくは0.2〜0.5μmである。この場合、光反射させる光の波長の観点からみると、無機粒子2の粒径は、反射させるべき光(即ち、発光素子が発する光)が透過してしまわないように、その光の波長の50%以上であることが好ましい。この場合、無機粒子2の形状としては無定型、球状、鱗片状、針状等を挙げることができるが、中でも、光拡散効果の点から球状、全反射効果の点から鱗片状の形状が好ましい。
【0065】
図1Aの光反射性導電粒子10は、大小の粉末同士を物理的に衝突させることにより大粒径粒子の表面に小粒径粒子からなる膜を形成させる公知の成膜技術(いわゆるメカノフュージョン法)により製造することができる。この場合、無機粒子2は、コア粒子1の表面の金属材料に食い込むように固定され、他方、無機粒子同士が融着固定されにくいから、無機粒子のモノレイヤーが光反射層3を構成する。従って、
図1Aの場合、光反射層3の層厚は、無機粒子2の粒径と同等乃至はわずかに薄くなると考えられる。
【0066】
次に、
図1Bの光反射性導電粒子20について説明する。この光反射性導電粒子20においては、光反射層3が接着剤として機能する熱可塑性樹脂4を含有し、この熱可塑性樹脂4により無機粒子2同士も固定され、無機粒子2が多層化(例えば2層あるいは3層に多層化)している点で、
図1Aの光反射性導電粒子10と相違する。このような熱可塑性樹脂4を含有することにより、光反射層3の機械的強度が向上し、無機粒子の剥落などが生じにくくなる。
【0067】
熱可塑性樹脂4としては、環境低負荷を意図してハロゲンフリーの熱可塑性樹脂を好ましく使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリスチレン、アクリル樹脂等を好ましく使用することができる。
【0068】
このような光反射性導電粒子20も、メカノフュージョン法により製造することができる。メカノフュージョン法に適用する熱可塑性樹脂4の粒子径は、小さすぎると接着機能が低下し、大きすぎるとコア粒子に付着しにくくなるので、好ましくは0.02〜4μm、より好ましくは0.1〜1μmである。また、このような熱可塑性樹脂4の配合量は、少なすぎると接着機能が低下し、多すぎると粒子の凝集体が形成されるので、無機粒子2の100質量部に対し、好ましくは0.2〜500質量部、より好ましくは4〜25質量部である。
【0069】
本発明の光反射性異方性導電接着剤中の光反射性導電粒子等の導電粒子の配合量は、少なすぎると導通不良が生じる傾向があり、多すぎるとパターン間ショートが生ずる傾向があるので、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、光反射性導電粒子等の導電粒子の配合量は、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
【0070】
<光反射性異方性導電接着剤の製造>
本発明の光反射性異方性導電接着剤は、以上説明した光反射性絶縁粒子と導電粒子と熱硬化性樹脂組成物とを、常法に従って均一に混合することにより製造することができる。また、光反射性異方性導電接着フィルムとする場合には、それらをトルエン等の溶媒とともに分散混合し、剥離処理したPETフィルムに所期の厚さとなるように塗布し、約80℃程度の温度で乾燥すればよい。
【0071】
<光反射性異方性導電接着剤の反射特性>
本発明の光反射性異方性導電接着剤の反射特性は、発光素子の発光効率を向上させるために、光反射性異方性導電接着剤の硬化物の波長450nmの光に対する反射率(JIS K7105)が、少なくとも30%であることが望ましい。このような反射率とするためには、使用する光反射性絶縁粒子の反射特性や配合量、熱硬化性樹脂組成物の配合組成などを適宜調整すればよい。通常、反射特性の良好な光反射性絶縁粒子の配合量を増量すれば、反射率も増大する傾向がある。
【0072】
また、光反射性異方性導電接着剤の反射特性は屈折率という観点から評価することもできる。即ち、その硬化物の屈折率が、導電粒子と光反射性絶縁粒子とを除いた熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率よりも大きいと、光反射性絶縁粒子とそれを取り巻く熱硬化性樹脂組成物の硬化物との界面での光反射量が増大するからである。具体的には、光反射性粒子の屈折率(JIS K7142)から、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の屈折率(JIS K7142)を差し引いた差が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.2以上であることが望まれる。なお、通常、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化性樹脂組成物の屈折率は約1.5である。
【0073】
<発光装置>
次に、本発明の発光装置について
図2を参照しながら説明する。発光装置200は、基板21上の接続端子22と、発光素子としてLED素子23のn電極24とp電極25とのそれぞれに形成された接続用のバンプ26との間に、前述の本発明の光反射性異方性導電接着剤を塗布し、基板21とLED素子23とがフリップチップ実装されている発光装置である。ここで、光反射性異方性導電接着剤の硬化物100は、光反射性絶縁粒子や導電粒子、好ましくは光反射性導電粒子10が熱硬化性樹脂組成物の硬化物11中に分散してなるものである。なお、必要に応じて、LED素子23の全体を覆うように透明モールド樹脂で封止してもよい。また、LED素子23に従来と同様に光反射層を設けてもよい。
【0074】
このように構成されている発光装置200においては、LED素子23が発した光のうち、基板21側に向かって発した光は、光反射性異方性導電接着剤の硬化物100中の光反射性絶縁粒子や光反射性導電粒子10で反射し、LED素子23の上面から出射する。
従って、発光効率の低下を防止することができる。
【0075】
本発明の発光装置200における光反射性異方性導電接着剤以外の構成(LED素子23、バンプ26、基板21、接続端子22等)は、従来の発光装置の構成と同様とすることができる。また、本発明の発光装置200は、本発明の光反射性異方性導電接着剤を使用すること以外は、従来の異方性導電接続技術を利用して製造することができる。なお、発光素子としては、LED素子の他、本発明の効果を損なわない範囲で公知の発光素子を適用することができる。
【実施例】
【0076】
参考例1〜6(ジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンの製造)
窒素気流中、還流冷却管と磁気撹拌子とを備えた100ml三口フラスコに、29.82g(104.36mmol)の1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート(MADGIC、四国化成工業(株))と、5.11g(21.25mmol)の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(Gelest Inc.)とを投入し、混合物を80℃で均一に溶融するまで撹拌した。続いて、この溶融混合物に2%Karstedt白金触媒溶液(キシレン溶液)を以下の濃度となるように添加し、撹拌しながら140℃になるまで加熱し、溶融混合物の温度が140℃に到達してから、その温度を6時間保持して、1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとを反応させた。
【0077】
反応終了後、反応混合物を冷却し、カラムクロマトグラフィ(坦体:シリカゲル、溶出液;酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒)で処理することにより、耐熱性、耐光性に優れ、着色の少ない参考例1の式(A)のジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンを得た。同様に参考例2〜6の式(A)のジグリシジルイソシアヌリル変性環状ポリシロキサンを得た。
【0078】
参考例7〜8
(側鎖型のジグリシジルイソシアヌリル変性ポリシロキサンの製造)
窒素気流中、還流冷却管と磁気撹拌子とを備えた1000ml三口フラスコに、235.21g(836.25mmol)の1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート(MADGIC、四国化成工業(株))と、125.00g(442.27mmol)の1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(東京化成工業(株))]とを投入し、混合物を80℃で均一に溶融するまで撹拌した。続いて、この溶融混合物に2%Karstedt白金触媒溶液(キシレン溶液)を表1の量[μL]で添加し、撹拌しながら140℃になるまで加熱し、溶融混合物の温度が140℃に到達してから、その温度を6時間保持して、1−アリル−3,5−ジグリシジルイソシアヌレートと1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサンとを反応させた。なお、反応時の白金触媒濃度の計算値を表1に示す。
【0079】
反応終了後、反応混合物を冷却し、カラムクロマトグラフィ(坦体:シリカゲル、溶出液;酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒)で処理することにより、参考例1,2の式(A1)で示す側鎖型のジグリシジルイソシアヌリル変性ポリシロキサンを得た。なお、各参考例で得られたジグリシジルイソシアヌリル変性ポリシロキサン中の残存白金触媒濃度を、誘導結合プラズマ発光分析装置)(Agilent 7500cx ICP−MS、アジレント・テクノロジー(株))を用いて測定した。測定された残存白金触媒濃度も併せて表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【化6】
【0082】
【化7】
【0083】
実施例1〜6,比較例1〜2
表2に示す配合組成の成分を、エポキシ基/酸無水物の官能基数の比が1/1.1となるように、エポキシ化合物と酸無水物系硬化剤とを配合し、均一に混合することにより光反射性異方性導電接着剤を調製した。
【0084】
【表2】
【0085】
(評価)
得られた光反射性異方性導電接着剤のダイシェア強度を以下に説明するように測定した。また、光反射性異方性導電接着剤から光反射性絶縁粒子と導電粒子とを除いた残りの熱硬化性樹脂組成物について、以下に説明するように、耐熱試験と耐熱光試験とを行った。得られた結果を表3に示す。
【0086】
<ダイシェア強度試験>
金バンプ(高10μm、径80μm、ピッチ190μm)が形成された10μm厚の銀ベタ電極を有するLED用ガラスエポキシ基板(特注品、関西電子工業(株))に、径が4mmとなるように光反射性異方性導電接着剤を塗布し、そこへ0.3mm角のフリップチップ型LED素子(GM35R460G、昭和電工(株))を載せ、フリップチップ型LED素子が表側となるようにガラスエポキシ基板を80℃に保持されたホットプレートに置き、2分間加熱してLED素子をLED用ガラスエポキシ基板に仮固定した。このLED素子が仮固定されたLED用ガラスエポキシ基板を熱圧着装置に適用し、LED素子に80gf/chipの圧力を印加しながら230℃で15秒間熱圧着処理を行うことにより、LED用ガラスエポキシ基板にLED素子が実装されたLED装置を作成した。
【0087】
このようにして作成したLED装置について、ダイシェア強度(gf/chip)を測定した。実用上、200gf/chip以上を良好「○」と評価し、200gf/chip未満を不良「×」と評価した。
【0088】
<耐熱試験>
1mm高さのスペーサが四隅に配置された2枚のアルミニウム平板(長100mm×幅50.0mm×厚0.500mm)で熱硬化性樹脂組成物を挟み、まず120℃で30分加熱し、続いて140℃で1時間加熱することにより硬化樹脂シートを作成した。
【0089】
得られた硬化樹脂シートを、150℃に設定されたオーブン内に1000時間放置し、放置前後の分光特性(L
*、a
*、b
*)を、分光測色計(CM−3600d、コニカミノルタ(株))を用いて測定し、得られた測定値から色差(ΔE)を算出した。実用上、ΔEが20以下を非常に良好「◎」、20超35以下を良好「○」と評価し、35超を不良「×」と評価した。
【0090】
<耐熱光試験>
耐熱試験に供した硬化樹脂シートと同様の硬化樹脂シートを作成し、それを、温度120℃で光強度16mW/cm
2に設定された熱光試験機(スーパーウインミニ、ダイプラ・ウィンテス(株);メタルハライドランプ使用)内に1000時間放置し、得られた硬化樹脂シートを、150℃に設定されたオーブン内に1000時間放置し、外観着色の有無を観察すると共に、放置前後の分光特性(L
*、a
*、b
*)を、分光測色計(CM−3600d、コニカミノルタ(株))を用いて測定し、得られた測定値から色差(ΔE)を算出した。実用上、ΔEは30以下であることが望まれる。併せて耐熱光試験後の外観の着色の有無を目視観察し、着色が観察されなかった場合を良好「○」と評価し、観察された場合を不良「×」と評価した。
【0091】
【表3】
【0092】
表3から解るように、実施例1〜6の光反射性異方性導電接着剤は、ダイシェア強度、耐熱試験及び耐熱光試験の結果がいずれも実用上好ましいものであった。
【0093】
なお、白金触媒濃度と外観着色との関係を評価するために、側鎖型のジグリシジルイソシアヌリル変性ポリシロキサンを用い、ハイドロシリレーション反応時の白金触媒濃度が20ppmを超え、しかも残存白金触媒量が24ppmまたは54ppmであった比較例1及び2の光反射性異方性導電接着剤を作成し評価したところ、耐熱試験結果が不良であり、しかも外観着色してしまい、使用できないものであった。