特許第6384059号(P6384059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384059
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 15/00 20060101AFI20180827BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20180827BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20180827BHJP
   H03B 5/30 20060101ALI20180827BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H03B15/00
   H01L29/82 Z
   H01L43/08 Z
   H03B5/30 Z
   H03B5/32 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-24290(P2014-24290)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-154139(P2015-154139A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦恭
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 裕二
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−103717(JP,U)
【文献】 特開平03−178207(JP,A)
【文献】 特開2007−184923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 15/00
H01L 29/82
H01L 43/08
H03B 5/30
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のピン層、第1の非磁性スペーサ層および磁化の方向が変化可能である第1のフリー層を有する第1の磁性発振素子と、
第2のピン層、第2の非磁性スペーサ層および磁化の方向が変化可能である第2のフリー層を有し、前記第1の磁性発振素子の発振周波数と異なる発振周波数を出力する第2の磁性発振素子と、
前記第1の磁性発振素子および前記第2の磁性発振素子の出力信号をミキシングするためのミキサを備え、
前記第1のピン層の磁化方向と前記第2のピン層の磁化方向が平行となるように配置され、
前記第1の磁性発振素子の発振周波数と前記第2の磁性発振素子の発振周波数との差、或いは和の周波数を出力することを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記第1の磁性発振素子のアスペクト比と前記第2の磁性発振素子のアスペクト比が異なることを特徴とする請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
前記第1の磁性発振素子のアスペクト比と前記第2の磁性発振素子のアスペクト比がいずれも1よりも小さく、
前記第1の磁性発振素子の長辺と前記第2の磁性発振素子の長辺が平行となるように配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発振器。
【請求項4】
前記第1の磁性発振素子および第2の磁性発振素子の短辺側に前記ミキサを配置することを特徴とする請求項に記載の発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振子として磁性発振素子を利用した発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル機器の進化に伴い、種々のデジタル信号が有線或いは無線で伝達されるようになっている。この際、デジタル信号の送り手と受け手の間で、正確なデータ転送が行われる条件として、双方が同じタイミングでデータを送受することが必須であり、そのためのタイミングデバイスとしての発振器の重要性が増してきている。この発振器としては、温度などの外部環境の影響を受けにくく、高い周波数安定度が要求される。また、最近の移動体通信機器の小型化に伴い、小型・低背化の要求も強くなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−214222号公報
【特許文献2】特開2007−184923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、温度に対する周波数変化率の違う2つのVCO(電圧制御発振器)をミキサに接続した発振器が開示されている。この発振器では、2つの周波数をミキシングして周波数の和分、或いは差分を出力することにより、出力周波数の温度特性を安定させることを可能にしている。しかしながらこの手法では、VCOを構成するLC発振回路、可変容量ダイオードなどの多くの部品が必要になることから、発振器の大型化、コストの増加といった問題を避けられない。また、更に周波数安定度を高めるためには、発信源として水晶振動子を使用し、2つのVCOの温度に対する周波数変化率の差を1倍以上3倍以下にする必要がある。そのため、更なるコストの増加も問題となる。
【0005】
特許文献2には、発振子として磁性発振素子を利用し、更に周波数調整用の磁場印加機構を備えた発振器が開示されている。この発振器では、磁性発振素子に加える磁場の強度を調整することにより、発振周波数を可変させることが出来る。また、薄膜で作製できるので発振器の小型化を可能にしている。しかしながらこの手法では、磁性発振素子の特性上、外部磁場ノイズの影響による周波数安定度の劣化といった問題を避けられない。また、外部磁場ノイズの影響を低減させるために、印加磁場を調整しようとすると、別のフィードバック回路が必要となり、発振器の大型化、コストの増加も問題となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてされたものであって、簡易な回路構成で動作可能であり、しかも小型で温度或いは外部磁場ノイズの影響を受けない、磁性発振素子を利用した発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明による発振器は、第1のピン層、第1の非磁性スペーサ層および磁化の方向が変化可能である第1のフリー層を有する第1の磁性発振素子と、
第2のピン層、第2の非磁性スペーサ層および磁化の方向が変化可能である第2のフリー層を有し、第1の磁性発振素子の発振周波数と異なる発振周波数を出力する第2の磁性発振素子と、第1の磁性発振素子および第2の磁性発振素子の出力信号をミキシングするためのミキサを備え、第1の磁性発振素子の発振周波数と第2の磁性発振素子の発振周波数との差、或いは和の周波数を出力することを第1の特徴とする。
【0008】
上記特徴の本発明によれば、出力周波数は第1の磁性発振素子と第2の磁性発振素子との発振周波数の差分で規定されるため、外部磁場ノイズの影響をキャンセルさせることが可能となる。つまり、外部磁場ノイズの影響で第1の磁性発振素子の発振周波数が高周波側にシフトする場合、第2の磁性発振素子の発振周波数も高周波側にシフトし、その差分は変化しない。反対に、外部磁場の影響で低周波側にシフトする場合でも同様に、その差分も変化することはない。また、第1、第2の磁性発振素子およびミキサは薄膜プロセスで1チップに作製することが可能なので、小型化・低背化の発振器を実現できる。
【0009】
さらに、本発明に係る発振器は、第1のピン層の磁化方向と第2のピン層の磁化方向が平行となるように配置されたことを第2の特徴とする。
【0010】
上記特徴の発振器によれば、第1のピン層の磁化方向と第2のピン層の磁化方向が平行であるために、任意の外部磁場ノイズに対する、第1のフリー層の磁化方向と第1のピン層の磁化方向との角度は、第2のフリー層の磁化方向と第2のピン層の磁化方向との角度と同一になる。つまり第1および第2の磁性発振素子の外部磁場ノイズに対する発振周波数のシフト量を、高精度で同一にすることが出来て、外部磁場ノイズに対する影響度を低減することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明に係る発振器の第1および第2の磁性発振素子は、第1の磁性発振素子のアスペクト比と第2の磁性発振素子のアスペクト比が異なることを第3の特徴とする。
【0012】
上記特徴の発振器によれば、第1および第2の磁性発振素子の発振周波数の差を素子のアスペクト比(素子の長辺の長さに対する短辺の長さの比率)を変えることにより調整している。つまり発振周波数が素子の形状で決定される。素子形状は薄膜プロセスの露光・エッチングで決まるため、高精度で制御可能である。このことにより、発振器としての周波数安定度の向上が可能となる。
【0013】
さらに、本発明に係る発振器の第1の磁性発振素子のアスペクト比と第2の磁性発振素子のアスペクト比がいずれも1よりも小さく、第1の磁性発振素子の長辺と第2の磁性発振素子の長辺が平行となるように配置されたことを第4の特徴とする。
【0014】
上記特徴の発振器によれば、第1および第2のフリー層の容易軸が平行になるために、任意の外部磁場ノイズに対する、第1のフリー層の磁化方向と第1のピン層の磁化方向との角度は、第2のフリー層の磁化方向と第2のピン層の磁化方向との角度と同一になる。つまり2つの磁性発振素子の外部磁場ノイズに対する発振周波数のシフト量を、高精度で同一にすることが出来て、外部磁場ノイズに対する影響度を低減することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る発振器の第1の磁性発振素子および第2の磁性発振素子の短辺側にミキサを配置することを第5の特徴とする。
【0016】
上記特徴の発振器によれば、ミキサから発生するノイズの磁場方向と、第1および第2の磁性発振素子の長辺との角度は0°から±90°の範囲に限定される。また、第1および第2のピン層の磁化方向は、それぞれの磁性発振素子の長辺と平行であるため、ノイズの磁場方向と、第1および第2のピン層の磁化方向との角度も0°から±90°に範囲に限定される。このことにより、ノイズ磁場方向の変化に伴う、第1および第2のフリー層の磁化方向の変化は、第1および第2のピン層の磁化方向に対して、垂直方向(角度0°)を基準とするため、磁場ノイズに対する感度を鈍化させることが出来て、発振器の安定度向上が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な回路構成で動作可能であり、しかも小型で温度或いは外部磁場ノイズの影響を受けない、磁性発振素子を利用した発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係る発振器の基本構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る発振器の第1のピン層と第2のピン層との磁化方向の角度と磁場ノイズによる発振周波数の変化量との関係を示したグラフである。
図3】第1の実施形態に係る発振器の磁性発振素子のアスペクト比と規格化発振周波数との関係を示したグラフである。
図4】第1の実施形態に係る発振器の磁性発振素子のアスペクト比の差と規格化発振周波数の差分との関係を示したグラフである。
図5】第1の実施形態に係る発振器の磁性発振素子の配置方向を示した模式図である。
図6】第1の実施形態に係る発振器の磁性発振素子とミキサの位置関係を示した模式図である。
図7】第1の実施形態に係る発振器の外部磁場ノイズの大きさと規格化発振周波数の差分の変化量との関係を示したグラフである。
図8】第2の実施形態に係る発振器を示すブロック図である。
図9】第3の実施形態に係る発振器を示すブロック図である。
図10】第4の実施形態に係る発振器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための好適な形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の1実施形態に係る発振器について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る発振器の基本構成を示すブロック図である。図1に示すように、第1の磁性発振素子2aと第2の磁性発振素子2bとがミキサ3に接続され、ミキシングされた信号が出力される構造になっている。
【0021】
第1の磁性発振素子2aおよび第2の磁性発振素子2bは、ピン層、非磁性スペーサ層および磁化の方向が変化可能であるフリー層を有する。ピン層は、強磁性体材料で構成されており、磁化方向は積層方向に対して垂直な一方向に固定されている。ピン層には、Fe、Co、Ni、NiとFeの合金、FeとCoの合金、またはFeとCoとBの合金などで構成することが出来る。また、ピン層の磁化を固定するためにピン層に接するように反強磁性層、中間層、または磁性層などを付加してもよい。或いは、結晶構造、形状などに起因する磁気異方性を利用して固定してもよい。反強磁性層には、FeO、CoO、NiO、CuFeS、IrMn、FeMn、PtMn、Cr、Mnなどを用いることが出来る。
【0022】
第1および第2の磁性発振素子2a、2bの非磁性スペーサ層は、Cu、Ag、Au、Ruなどの非磁性導電材料、AlOxやMgOなどの絶縁層材料、または絶縁層に電流狭窄パスとしてのCu、Ag、Au、Ruなどの非磁性導電材料を構成した材料を用いることが出来る。
【0023】
第1および第2の磁性発振素子2a、2bのフリー層には、ピン層を構成する磁性材料と同様の強磁性材料を用いることが出来る。
【0024】
また、ピン層、非磁性スペーサ層、フリー層の各層の上部、または下部にキャップ層、シード層、バッファ層などを含んでいてもよく、Ru、Ta、Cu、Crなどを用いることができる。
【0025】
尚、磁性発振素子の大きさは、一辺が100nm程度、或いは100nm以下にすることが望ましい。素子サイズが100nm程度と小さい場合、スピントランスファー効果が大きくなり、高出力の発振が得られる。
【0026】
ミキサとしては、アクティブミキサ、或いはパッシブミキサが用いられる。アクティブミキサはトランジスタで構成され、パッシブミキサはダイオードで構成される。すなわち、どちらのミキサも薄膜プロセスで作製可能であることから、磁性発振素子と組み合わせた場合でも、小型・低背化の発振器を作製することが可能である。そのため、小型の発振器への応用が適していると言える。
【0027】
また、第1および第2の磁性発振素子2a、2bの近傍には、発振を誘起するためにバイアス磁界を印加する機構が配置されている。この印加機構は、永久磁石または電流による磁場発生構造のどちらでもよい。これらの構造により、任意の磁場を磁性発振素子に印加し、発振のための歳差運動を励起することが可能となる。
【0028】
さらに、第1および第2の磁性発振素子2a、2bは、第1のピン層の磁化方向8aと第2のピン層の磁化方向8bが平行となるように配置されるのが好ましい。これらの構造により、任意の外部磁場ノイズに対する、第1のフリー層7aの磁化方向と第1のピン層の磁化方向8aとの角度は、第2のフリー層7bの磁化方向と第2のピン層の磁化方向8bとの角度と同一になる。つまり2つの磁性発振素子の外部磁場ノイズに対する発振周波数のシフト量を、高精度で同一にすることが出来て、外部磁場ノイズに対する影響度を低減することが可能となる。
【0029】
図2に第1と第2のピン層磁化方向8a、8bの角度と磁場ノイズによる発振周波数の変化量の関係を示したグラフを示す。この図の縦軸は磁場ノイズによる発振周波数の変化量 (amount of change frequency at magnetic noise)、横軸は第1と第2のピン層の磁化方向の角度(magnetized direction angle between no1 PIN layer and no2 PIN layer)を表している。
【0030】
例えば、本例の第1の磁性発振素子2aのサイズを100nm×150nm、第2の磁性発振素子2bのサイズを100nm×200nmとし、また、第1と第2のピン層の磁化方向8a、8bをそれぞれ素子の長辺9a、9bに平行な方向とする。第1の磁性発振素子2aと第2の磁性発振素子2bとの配置角度と、磁場ノイズによる発振周波の変化量との関係を計算すると、図2が示す様なグラフになる。第1と第2の磁性発振素子のピン層磁化方向8a、8bのなす角度が0°、つまり平行の場合は、外部磁場ノイズによる2つの磁性発振素子の発振周波数の差分が同一になるため、ミキシングして出力された発振周波数の変化が最小になる。また、角度が大きくなるにつれて、発振周波数の変化も増大し、90°で変化量が最大となる。
【0031】
さらに、第1および第2の磁性発振素子2a、2bは、それぞれ長辺9a、9bと短辺10a、10bと厚さを有する直方体形状であって、第1の磁性発振素子2aのアスペクト比(素子の長辺の長さに対する短辺の長さの比率)と第2の磁性発振素子2bのアスペクト比を変えることにより、第1の磁性発振素子2aの発振周波数と第2の磁性発振素子2bの発振周波数が同一でないことが好ましい。また、第1の磁性発振素子2aと第2の磁性発振素子2bのいずれかの形状が長辺と短辺を有する長方形(正方形を含む)から構成されない場合は、磁性発振素子に最小の面積で外接する長方形(正方形を含む)の長辺と短辺を、それぞれ磁性発振素子の長辺と短辺と定義する。そして、磁性発振素子に最小の面積で外接する長方形の長辺の長さに対する短辺の長さの比率をアスペクト比と定義する。これらの構造により、磁性発振素子の発振周波数は、薄膜プロセスの露光・エッチングで決まり、高精度で制御出来るようになる。このことにより、発振器としての周波数安定度の向上が可能となる。
【0032】
図3に磁性発振素子のアスペクト比と発振周波数の関係を示したグラフを示す。この図の縦軸は規格化発振周波数(standardization of oscillatory frequency)、横軸は磁性発振素子のアスペクト比(aspect ratio of STO shape)を表している。
【0033】
例えば、本例の磁性発振素子の形状を1辺の長さが100nmの正方形とする。この場合のアスペクト比は1となる。この素子の1辺の長さを固定し、もう1辺の長さを25nmから100nmまで変化させた場合の発振周波数を計算する。この際、アスペクト比1の素子の発振周波数を1として規格化すると、アスペクト比と発振周波数との関係は、図3が示すように、素子のアスペクト比が大きくなるにつれて、発振周波数が低くなることが分かる。また、アスペクト比が0.25以上1以下の変化に対して、発振周波数の変化は2倍以上であり、アスペクト比を制御することにより、十分な周波数選択性を確保することが可能となる。
【0034】
図4にアスペクト比の差と規格化発振周波数の差分との関係を示したグラフを示す。この図の縦軸は第1および第2の磁性発振素子の規格化発振周波数の差分(difference of oscillatory frequency between no1 STO and no2 STO)、横軸は第1および第2の磁性発振素子のアスペクト比の差(difference of aspect ratio between no1 STO and no2 STO)を表している。
【0035】
例えば、本例の第1の磁性発振素子2aの形状を1辺の長さが100nmの正方形とする。この場合のアスペクト比は1となる。また、第2の磁性発振素子2bの1辺の長さを100nmに固定して、もう1辺の長さを10nmから100nmまでの範囲で変化させ、それぞれの発振周波数を計算する。この際、アスペクト比1の素子の発振周波数を1として規格化すると、アスペクト比の差と規格化発振周波数の差分との関係は、図4が示すように、アスペクト比の差が大きくなるにつれて、規格化発振周波数の差分も大きくなることが分かる。また、実際に発振器の出力として要求される規格化発振周波数は2以下であり、規格化発振周波数2以下では直線性の良いグラフであるため、発振器として応用した場合、発振周波数の安定性の向上が可能となる。
【0036】
さらに、第1の磁性発振素子2aのアスペクト比と第2の磁性発振素子2bのアスペクト比がいずれも1よりも小さく、第1および第2の磁性発振素子2a、2bは、第1の磁性発振素子の長辺9aと第2の磁性発振素子の長辺9bが平行となるように配置されるのが好ましい。図5は、第1の磁性発振素子2aと第2の磁性発振素子2bの配置方向の一例である。図5に示すように、第1の磁性発振素子2aの長辺9aは短辺10aよりも長く、第2の磁性発振素子2bの長辺9bは短辺10bよりも長くなっており、それぞれのアスペクト比は1よりも小さい。また、第1の磁性発振素子の長辺9aと第2の磁性発振素子の長辺9bが平行となるように、形成させている。これらの構造により、任意の外部磁場ノイズに対する、第1のフリー層7aの磁化方向と第1のピン層の磁化方向8aとの角度は、第2のフリー層7bの磁化方向と第2のピン層の磁化方向8bとの角度と同一になる。つまり2つの磁性発振素子の外部磁場ノイズに対する発振周波数のシフト量を、高精度で同一にすることが出来て、外部磁場ノイズに対する影響度を低減することが可能となる。
【0037】
さらに、第1および第2の磁性発振素子の短辺10a、10b側にミキサ3が配置されるのが好ましい。また、第1および第2の磁性発振素子2a、2bの短辺端がずれている場合は、最外辺の短辺を短辺側と定義する。図6は、第1および第2の磁性発振素子2a、2bとミキサ3との位置関係の一例である。図6に示すように、第1の磁性発振素子の短辺10aと第2の磁性発振素子の短辺10bの隣側にミキサ3が形成されている。この際、X軸をミキサから発生するノイズの磁場方向(direction of magnetic noise)、Y軸を第1および第2の磁性発振素子の短辺方向(direction of short side)と定義する。これらの構造により、ミキサ3から発生するノイズの磁場方向と、第1および第2の磁性発振素子の長辺9a、9bとの角度は0°から±90°の範囲に限定される。また、第1および第2のピン層の磁化方向8a、8bは、それぞれの磁性発振素子の長辺9a、9bと平行であるため、ノイズの磁場方向と、第1および第2のピン層の磁化方向8a、8bとの角度も0°から±90°に範囲に限定される。このことにより、ノイズ磁場方向の変化に伴う、第1および第2のフリー層7a、7bの磁化方向の変化は、第1および第2のピン層の磁化方向8a、8bに対して、垂直方向(角度0°)を基準とするため、磁場ノイズに対する感度を鈍化させることが出来て、発振器の安定度向上が可能となる。
【0038】
図7に外部磁場ノイズの大きさと規格化発振周波数の差分の変化量との関係を示したグラフを示す。この図の縦軸は第1および第2の磁性発振素子の規格化発振周波数の差分の変化量(amount of change frequency that difference of between no1 STO and no2 STO)、横軸は外部磁場ノイズの大きさ(amount of external magnetic noise)を表している。
【0039】
例えば、本例の第1の磁性発振素子2aの形状を100nm×100nmの正方形とし、第2の磁性発振素子2bの形状を100nm×64nmの長方形とする。この場合アスペクト比の差は0.36であり、規格化周波数の差分は1となる。この条件で外部磁場ノイズを10−10Tから1Tまでの範囲で第1および第2の磁性発振素子2a、2bに印加し、規格化周波数の差分の変化量を計算すると、図7が示すようになる。外部磁場が10−4Tまでの範囲では変化量が0であることが分かる。また、外部磁場が10−4T以上の範囲では、変化量が徐々に増加するため、発振器として利用する場合、外部磁場が10−4T以下の範囲で使用することが望ましい。
【0040】
(第2の実施形態)
図8に第2の実施形態に係る発振器のブロック図を示す。図1に示す第1の実施形状に係る発振器と異なる点は、第1の磁性発振素子2aとミキサ3との間、および第2の磁性発振素子2bとミキサ3との間に、それぞれ第1および第2のアンプ11a、11bが配置されている点である。第1および第2の磁性発振素子2a、2bの後段に増幅のためのアンプを配置することにより、磁性発振素子の出力を増幅してミキサに入力することが出来る。このことにより、磁性発振素子の出力が小さい場合でも、ミキシングするために必要な閾値以上の信号を入力することが出来るため、安定した発信出力を実現することが可能となる。
【0041】
(第3の実施形態)
図9に第3の実施形態に係る発振器のブロック図を示す。図1に示す第1の実施形状に係る発振器と異なる点は、ミキサ3と出力端子4との間に、第3のアンプ11cが配置されている点である。ミキサ3の後段に増幅のための第3のアンプ11cを配置することにより、ミキサ3から出力された信号を第3のアンプ11cにより増幅し、高出力の発振信号を出力することが出来る。このことにより、磁性発振素子の出力が小さい場合でも、1つのアンプを使用して、安定した発信出力を実現することが可能となる。
【0042】
(第4の実施形態)
図10に第4の実施形態に係る発振器のブロック図を示す。図1に示す第1の実施形状に係る発振器と異なる点は、ミキサ3と出力端子4との間に、フィルタ12が配置されている点である。ミキサ3の後段に周波数選択のためのフィルタ12を配置することにより、第1の磁性発振素子2aと第2の磁性発振素子2bの発振周波数の和分、或いは差分のどちらかを選択して出力することが出来る。このことにより、1つの周波数を出力する安定した発振器を実現することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記で説明した実施形態以外にも変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る発振器は、簡易な制御回路を用いて、温度、或いは外部磁場ノイズといった外部環境の影響を受けない、小型・低背化の特徴を有する。この発振器により、発振器の小型化、部品点数の削減などが可能となり、スマートフォンなのどの移動通信機器の付加価値を大きく向上させることが出来る。
【符号の説明】
【0045】
1 電圧供給端子
2a 第1の磁性発振素子、2b 第2の磁性発振素子
3 ミキサ
4 出力端子
5a 第1のピン層、5b 第2のピン層
6a 第1の非磁性スペーサ層、6b 第2の非磁性スペーサ層
7a 第1のフリー層、7b 第2のフリー層
8a 第1のピン層の磁化方向、8b 第2のピン層の磁化方向
9a 第1の磁性発振素子の長辺、9b 第2の磁性発振素子の長辺
10a 第1の磁性発振素子の短辺、10b 第2の磁性発振素子の短辺
11a 第1のアンプ、11b 第2のアンプ、11c 第3のアンプ、
12 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10