特許第6384060号(P6384060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384060
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20180827BHJP
   H02M 5/458 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   H02M7/48 F
   H02M5/458
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-27429(P2014-27429)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-154633(P2015-154633A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 奨
(72)【発明者】
【氏名】関本 守満
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智勇
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓郎
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−255305(JP,A)
【文献】 特開2004−282926(JP,A)
【文献】 特開2005−312202(JP,A)
【文献】 特開2005−160257(JP,A)
【文献】 特開2006−33934(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/146446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 5/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8a〜8c)と、
上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、
上記制御部(8a〜8c)は、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換え
上記二相変調方式を用いるスイッチングによって上記モータ(7)で発生する鉄損と上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失が上記三相変調方式を用いるスイッチングによって上記モータ(7)で発生する鉄損と上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に上記スイッチングにおいて上記二相変調方式を用い、該期間(Ta)以外の期間(Tb)に上記スイッチングにおいて上記三相変調方式を用いることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8a)と、
上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、
上記制御部(8a)は、
上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、上記電源電圧(Vin)の位相(θin)に基づいて、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8b)と、
上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、
上記制御部(8b)は、
上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、直流電圧(Vdc)の大きさに基づいて、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換え、
上記直流電圧(Vdc)は、上記交流電源(1)の上記電源電圧(Vin)を全波整流することにより得られる、脈動する直流の電圧である
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、
上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8c)と、
上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、
上記制御部(8c)は、
上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、上記電源電圧(Vin)の大きさに基づいて、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1つにおいて、
上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、
上記コンバータ回路(2)の出力端間に接続された上記コンデンサ(3)を有し、上記交流電源(1)の上記電源電圧(Vin)を全波整流することにより得られる、脈動する直流電圧(Vdc)、を出力する直流リンク部(4)と、
上記直流リンク部(4)から出力された上記直流電圧(Vdc)を上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによって交流に変換して、上記モータ(7)に供給するインバータ回路(6)とを備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1または請求項4において、
上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)を上記スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによって所定の電圧及び周波数の電力に変換して、上記モータ(7)に供給するように構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特に、モータに電力を供給する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、インバータ回路を備えた電力変換装置が知られている。ここで、インバータ回路は、トランジスタのスイッチング制御により、直流電力を可変周波数や可変電圧の交流電力に高効率変換する回路である。そのため、インバータ回路は、例えば、モータの回転数やトルクを制御する必要がある家電機器や産業機器などに広く応用されている。
【0003】
一般的なインバータ回路を備えた電力変換装置では、交流電源から出力された交流電力を整流する整流回路として、簡単な構成のダイオードブリッジ回路が採用され、整流後の出力電圧リプルを低減するために、大容量の平滑コンデンサが設けられていると共に、交流電源の力率低下や高調波発生の問題を低減するために、リアクトルが設けられている。
【0004】
そこで、インバータ回路を備えた電力変換装置において、小型化やコストダウンを図るために、電解コンデンサからなる大容量の平滑コンデンサやリアクトルを省略し、整流回路のコンデンサ容量を小容量化すると共に、モータを適切に制御することにより、電源側の力率低下や高調波発生の問題を低減する、いわゆる、単相コンデンサレスインバータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、インバータ回路の制御方式としては、三相変調方式及び二相変調方式が知られている。ここで、三相変調方式は、1キャリア内で三相の3アームともスイッチングするものである。また、二相変調方式は、1キャリア内で三相のうち1アームのスイッチを固定して、残りの2アームでスイッチングする方式である。二相変調方式は、例えば、特許文献2及び3に記載されているように、同じキャリア周波数で動作させた三相変調方式と比較して、スイッチング回数が2/3に低減するので、トランジスタ(スイッチング素子)で発生するスイッチング損失の低減に有効である。そのため、スイッチング損失は、インバータ回路に入力される直流電圧の大きさにほぼ比例して増加するので、直流電圧が高いときほど三相変調方式よりも二相変調方式を用いた方がスイッチング損失をより低減することができる。しかしながら、スイッチングによって発生する損失としては、上記スイッチング損失だけでなく、モータで発生する鉄損も考慮する必要がある。ここで、スイッチングによってモータで発生する鉄損は、インバータ回路に入力される直流電圧の大きさに応じて大きくなるものの、その大きさは、モータの特性によって異なる。なお、一般的なインバータ回路では、直流電圧が一定であるので、使用する直流電圧の大きさやモータの特性によって、三相変調方式又は二相変調方式を選択すればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−289985号公報
【特許文献2】特開平1−274669号公報
【特許文献3】特開2006−38432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記単相コンデンサレスインバータでは、交流電源の電源電圧の位相に同期して直流電圧が変動し、それに合わせてモータのトルクも変動するので、スイッチングによってモータで発生する鉄損とスイッチング素子で発生するスイッチング損失との合計損失を低減させようとしても、適切な変調方式を選択することが困難であり、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スイッチングによってモータで発生する鉄損とスイッチング素子で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、単相の交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えるようにしたものである。
【0010】
具体的に第1の発明は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8a〜8c)と、上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、上記制御部(8a〜8c)は、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換え、上記二相変調方式を用いるスイッチングによって上記モータ(7)で発生する鉄損と上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失が上記三相変調方式を用いるスイッチングによって上記モータ(7)で発生する鉄損と上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に上記スイッチングにおいて二相変調方式を用い、該期間(Ta)以外の期間(Tb)に上記スイッチングにおいて三相変調方式を用いることを特徴とするものである。
【0011】
発明では、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給するためのスイッチングを行うスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)と、スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)と、スイッチングを制御する制御部(8a〜8c)とを備えている。そして、制御部(8a〜8c)は、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えるように構成されている。ここで、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングに用いる変調方式として、二相変調方式は、一般的に、同じキャリア周波数で動作させた三相変調方式と比較して、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチング回数が2/3に低減するので、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)に入力される電圧が高いほど、スイッチングによってスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失を有効に低減させることができる。しかしながら、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)に入力される電圧の大きさに対して、二相変調方式及び三相変調方式のどちらが有効なのかは、スイッチングによってスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失だけでなくモータ(7)で発生する鉄損を加えた合計損失によって決まる。そして、スイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損は、図14及び図15に示すように、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に入力される直流電圧の大きさに比例して大きくなるものの、その大きさは、モータ(7)の特性によって異なる。ここで、図14及び図15は、モータの特性をそれぞれ示し、スイッチング素子に入力する直流電圧とスイッチングによって発生する損失との関係の第1及び第2の例をそれぞれ示すグラフである。そのため、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換える変調方式の切り換えを制御部(8a〜8c)で行うことによって、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも低減され易いので、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【0012】
特に、上記第の発明では、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)にスイッチングにおいて二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に上記スイッチングにおいて三相変調方式を用いる変調方式の切り換えを制御部(8a〜8c)で行うので、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも具体的に低減され易くなる。
【0013】
の発明は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8a)と、上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、上記制御部(8a)は、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、上記電源電圧(Vin)の位相(θin)に基づいて、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えることを特徴とするものである。
【0014】
上記第の発明では、制御部(8a)が電源電圧(Vin)の位相(θin)に基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替えるので、例えば、直流リンク部(4)の電圧波形の形状から電源電圧(Vin)の位相(θin)を算出して、その算出された位相(θin)が予め設定した所定の範囲に入るか否かで変調方式を選択することになり、単純な構成で制御部(8a)を実現することができる。
【0015】
の発明は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8b)と、上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、上記制御部(8b)は、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、直流電圧(Vdc)の大きさに基づいて、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換え、前記直流電圧(Vdc)は、前記交流電源(1)の前記電源電圧(Vin)を全波整流することにより得られる、脈動する直流の電圧であることを特徴とするものである。
【0016】
上記第の発明では、制御部(8b)が直流電圧(Vdc)の大きさに基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替えるので、直流電圧(Vdc)の大きさを測定して、その測定された直流電圧(Vdc)が予め設定した閾値(Vt)よりも大きいか否かで変調方式を選択することになり、単純な構成で制御部(8b)を実現することができる。
【0017】
の発明は、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流電力を所定の電圧及び周波数の交流電力に電力変換して、出力側に接続されたモータ(7)に供給する電力変換装置であって、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8c)と、上記スイッチングにより生じるリプルを平滑化するコンデンサ(3)とを備え、上記制御部(8c)は、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、上記電源電圧(Vin)の大きさに基づいて、上記スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えることを特徴とするものである。
【0018】
上記第の発明では、制御部(8c)が電源電圧(Vin)の大きさに基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替えるので、電源電圧(Vin)の大きさを測定して、その測定された電源電圧(Vin)の絶対値が予め設定した閾値(Vt)よりも大きいか否かで変調方式を選択することになり、単純な構成で制御部(8c)を実現することができる。
【0019】
の発明は、上記第1〜第の何れか1つの発明において、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、上記コンバータ回路(2)の出力端間に接続された上記コンデンサ(3)を有し、前記交流電源(1)の前記電源電圧(Vin)を全波整流することにより得られる、脈動する直流電圧(Vdc)、を出力する直流リンク部(4)と、上記直流リンク部(4)から出力された前記直流電圧(Vdc)を上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによって交流に変換して、上記モータ(7)に供給するインバータ回路(6)とを備えていることを特徴とするものである。
【0020】
上記第の発明では、単相の交流電源(1)の電源電圧(Vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、コンバータ回路(2)の出力端間に接続されたコンデンサ(3)を有し、脈動する直流電圧(Vdc)を出力する直流リンク部(4)と、直流リンク部(4)から出力された直流電圧(Vdc)をスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによって交流に変換して、モータ(7)に供給するインバータ回路(6)とを備えているので、コンバータ回路(2)、直流リンク部(4)及びインバータ回路(6)により、いわゆる、単相コンデンサレスインバータが構成される。ここで、単相コンデンサレスインバータでは、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の位相に同期して直流電圧(Vdc)が変動するものの、インバータ回路(6)を制御する制御部(8a,8b)によって、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に三相変調方式を用いる変調方式の切り換えを行うことにより、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも低減され易いので、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【0021】
の発明は、上記第1または第4の発明において、上記交流電源(1)の電源電圧(Vin)を上記スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによって所定の電圧及び周波数の電力に変換して、上記モータ(7)に供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
上記第の発明では、交流電源(1)の電源電圧(Vin)をスイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによって所定の電圧及び周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給するように構成されているので、単相マトリクスコンバータが構成される。ここで、単相マトリクスコンバータでは、制御部(8c)によって、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に三相変調方式を用いる変調方式の切り換えを行うことにより、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも低減され易いので、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、単相の交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えるので、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1に係る電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
図2】実施形態1に係る電力変換装置を構成する制御部の動作を示すフローチャートである。
図3】実施形態1に係る電力変換装置における電源電圧及び直流電圧、並びにそれに対応するトルクを示すグラフである。
図4】実施形態1に係る電力変換装置を構成する電源位相推定部の回路構成を示すブロック図である。
図5】実施形態1に係る電源位相推定部の動作を示すフローチャートである。
図6】実施形態1に係る電源位相推定部の動作を説明するための概略図である。
図7】実施形態2に係る電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
図8】実施形態2に係る電力変換装置を構成する制御部の動作を示すフローチャートである。
図9】実施形態2に係る電力変換装置における電源電圧及び直流電圧、並びにそれに対応するトルクを示すグラフである。
図10】実施形態3に係る電力変換装置の回路構成を示す回路図である。
図11】実施形態3に係る電力変換装置を構成するスイッチング素子の構成例を示す回路図である。
図12】実施形態3に係る電力変換装置を構成する制御部の動作を示すフローチャートである。
図13】実施形態3に係る電力変換装置における電源電圧を示すグラフである。
図14】スイッチング素子に入力する直流電圧とスイッチングによって発生する損失との関係の第1の例を示すグラフである。
図15】スイッチング素子に入力する直流電圧とスイッチングによって発生する損失との関係の第2の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0026】
《発明の実施形態1》
図1図6は、本発明に係る電力変換装置の実施形態1を示している。ここで、図1は、本実施形態の電力変換装置(20a)の回路構成を示す回路図である。また、図2は、電力変換装置(20a)を構成する制御部(8a)の動作を示すフローチャートである。また、図3は、電力変換装置(20a)における電源電圧(Vin)及び直流電圧(Vdc)、並びにそれに対応するモータ(7)のトルクを示すグラフである。また、図4は、電力変換装置(20)を構成する電源位相推定部(10)の回路構成を示すブロック図である。また、図5は、電源位相推定部(10)の動作を示すフローチャートである。また、図6は、電源位相推定部(10)の動作を説明するための概略図である。
【0027】
電力変換装置(20a)は、図1に示すように、コンバータ回路(2)、直流リンク部(4)、インバータ回路(6)、制御部(8a)及び電源位相推定部(10)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、三相交流のモータ(7)に供給するように構成されている。なお、モータ(7)は、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられた圧縮機を駆動するためのものである。
【0028】
コンバータ回路(2)は、図1に示すように、複数(例えば、4つ)のダイオード(Da〜Dd)がブリッジ状に結線されたダイオードブリッジ回路と、そのダイオードブリッジ回路及び交流電源(1)の間に設けられたリアクトル(9)とを備え、交流電源(1)の電源電圧(Vin)を全波整流するように構成されている。
【0029】
直流リンク部(4)は、図1に示すように、コンバータ回路(2)の出力側と、インバータ回路(6)の入力側との間に設けられている。また、直流リンク部(4)には、図1に示すように、コンバータ回路(2)の出力端間に接続されたコンデンサ(3)が設けられている。ここで、コンデンサ(3)は、インバータ回路(4)の後述するトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)がスイッチングする際に、スイッチング周波数に対応して生じるリプル電圧(電圧変動)だけを平滑化するような程度の静電容量を有し、例えば、フィルムコンデンサが好適に用いられる。すなわち、コンデンサ(3)は、コンバータ回路(2)によって整流された電圧(電源電圧に起因する電圧変動)を平滑化するような静電容量を有さない小容量のコンデンサである。なお、本実施形態では、単相の交流電源(1)であるので、直流リンク部(4)の直流電圧(Vdc)は、電源周波数(例えば50Hz)の2倍の周波数で脈動し、且つ、その最大値がその最小値の2倍以上となるような大きな脈動を有している。
【0030】
インバータ回路(6)は、図1に示すように、入力側が直流リンク部(4)のコンデンサ(3)に接続され、出力側が三相交流のモータ(7)に接続されている。また、インバータ回路(6)は、複数のスイッチング素子がブリッジ状に結線されて構成されている。そして、インバータ回路(6)には、図1に示すように、電力を三相交流のモータ(7)に出力するために、6つのトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)が複数のスイッチング素子として設けられている。具体的に、インバータ回路(6)は、図1に示すように、2つのトランジスタを互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグを備え、各スイッチングレグにおける上アームのトランジスタ(Su,Sv,Sw)と下アームのトランジスタ(Sx,Sy,Sz)との中点がモータ(7)の各相のコイル(不図示)にそれぞれ接続されている。そして、インバータ回路(6)は、各トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、入力された直流リンク部(4)の直流電圧(Vdc)をスイッチングして所定の周波数の三相交流電圧に変換し、その電圧をモータ(7)に出力するように構成されている。なお、本実施形態では、各トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対して、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。
【0031】
制御部(8a)は、インバータ回路(6)のスイッチング(オンオフ動作)を制御し、そのスイッチング制御によって、インバータ回路(6)の出力電流、つまり、モータ(7)に流れるU、V、Wの各相の電流が制御されるように構成されている。また、制御部(8a)は、後述するように、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えるように構成されている。
【0032】
電源位相推定部(10)は、図4に示すように、制御部(8a)で用いる電源電圧(Vin)の位相(θin)を、直流リンク部(4)の直流電圧(Vdc)の波形から推定するように構成されている。ここで、電源位相推定部(10)は、図4に示すように、周波数算出部(11)、演算部(12)及び位相算出部(13)を備えている。
【0033】
周波数算出部(11)は、直流電圧(Vdc)の波形の周期から電源周波数(ωs)を推定するように構成されている。
【0034】
演算部(12)は、周波数算出部(11)で推定した電源周波数(ωs)を積分することによって、電源電圧(Vin)の位相(θin)(以下、「推定電源位相(θin)」とも称する)を推定するように構成されている。
【0035】
位相算出部(13)は、演算部(12)で推定した推定電源位相(θin)と直流電圧(Vdc)の位相との位相ずれを算出し、その位相ずれに基づいて、推定電源位相(θin)を補正する。そして、この補正後の推定電源位相(θin)は、制御部(8a)で用いる電源電圧(Vin)の位相(θin)として出力される。
【0036】
ここで、位相算出部(13)の動作について、図5及び図6を参照して詳細に説明する。
【0037】
まず、図5のステップST1では、演算部(12)で推定された推定電源位相(θin)の所定時間(例えば、0〜90degの期間)に対する直流電圧(Vdc)の積分値C1が算出される。また、図5のステップST2では、演算部(12)で推定された推定電源位相(θin)の所定時間(例えば、90〜180degの期間)に対する直流電圧(Vdc)の積分値C2が算出される。ここで、積分値C1及びC2は、図6に示すように、直流電圧(Vdc)の波形における所定時間に対する面積である。
【0038】
続いて、図5のステップST3では、積分値C1及びC2の大小が比較判定される。ここで、C1がC2よりも大きい場合(C1>C2の場合)は、推定電源位相(θin)が直流電圧(Vdc)の位相に対して遅れていると判断して、推定電源位相(θin)が進み方向に補正される(図5のステップST4)。一方、図6(a)に示すように、C1がC2よりも小さい場合(C1<C2の場合)は、推定電源位相(θin)が直流電圧(Vdc )の位相に対して進んでいると判断して、推定電源位相(θin)が遅れ方向に補正される(図5のステップST5)。なお、それぞれの位相の補正量は、C1とC2との差分に対応した位相量である。そして、図5のステップST4及び5で補正された推定電源位相(θin)は、制御部(8a)で用いる正弦値の絶対値(|sin(θin)|)の「位相(θin)」として出力される。このように、位相算出部(13)では、演算部(12)で推定された推定電源位相(θin)の位相ずれの算出と、その位相ずれに基づく補正とが連続して行われる。なお、図5において図示しないが、図6(b)に示すように、C1とC2とが同じである場合(C1=C2の場合)には、演算部(12)で推定された推定電源位相(θin)は、位相ずれが無いとしてそのまま出力される。
【0039】
次に、制御部(8a)の動作について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態においては、モータ(7)の特性を予め測定した結果、例えば、図14に示すように、直流電圧(Vdc)が相対的に高いときに、三相変調方式よりも二相変調方式を用いることにより、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失の低減が可能であり、直流電圧(Vdc)が相対的に低いときに、二相変調方式より三相変調方式を用いることにより、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失の低減が可能である、ということが判明したので、図2及び図3の制御動作を採用している。
【0040】
まず、図2のステップST1では、上述した電源位相推定部(10)の動作により、電源電圧(Vin)の位相(θin)が算出される。
【0041】
続いて、図2のステップST2では、電源位相推定部(10)で算出された位相(θin)と、予め設定された範囲(A1〜A2)との大小が比較判定される。ここで、位相(θin)がA1よりも大きくA2よりも小さい場合(A1<θin<A2の場合)は、図3に示すように、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)と判断して、二相変調方式が選択される(図2のST3)。一方、位相(θin)がA1以下又はA2以上である場合は、図2のST4に進む。
【0042】
そして、図2のステップST4では、電源位相推定部(10)で算出された位相(θin)と、予め設定された範囲(B1〜B2)との大小が比較判定される。ここで、位相(θin)がB1よりも大きくB2よりも小さい場合(B1<θin<B2の場合)は、図3に示すように、上記期間(Ta)と判断して、二相変調方式が選択される(図2のST3)。一方、位相(θin)がB1以下又はB2以上である場合は、図3に示すように、上記期間(Ta)以外の期間(Tb)と判断して、三相変調方式が選択される(図2のST5)。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置(20a)によれば、単相の交流電源(1)の電源電圧(Vin)を全波整流するコンバータ回路(2)と、コンバータ回路(2)の出力端間に接続されたコンデンサ(3)を有し、脈動する直流電圧(Vdc)を出力する直流リンク部(4)と、直流リンク部(4)から出力された直流電圧(Vdc)をトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによって交流に変換して、モータ(7)に供給するインバータ回路(6)とを備えているので、コンバータ回路(2)、直流リンク部(4)及びインバータ回路(6)により、いわゆる、コンデンサレスインバータが構成される。そして、制御部(8a)は、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失が
三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に三相変調方式を用いるように構成されている。ここで、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングに用いる変調方式として、二相変調方式は、一般的に、同じキャリア周波数で動作させた三相変調方式と比較して、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング回数が2/3に低減するので、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に入力される直流電圧(Vdc)が高いほど、スイッチングによってトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失を有効に低減させることができる。しかしながら、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に入力される直流電圧(Vdc)の大きさに対して、二相変調方式及び三相変調方式のどちらが有効なのかは、スイッチングによってトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失だけでなくモータ(7)で発生する鉄損を加えた合計損失によって決まる。そして、スイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損は、図14及び図15に示すように、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に入力される直流電圧(Vdc)の大きさに比例して大きくなるものの、その大きさは、モータ(7)の特性によって異なる。ここで、コンデンサレスインバータでは、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の位相に同期して直流電圧(Vdc)が変動するものの、上述したように、インバータ回路(6)を制御する制御部(8a)によって、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に三相変調方式を用いる変調方式の切り換えを行うことにより、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも低減され易いので、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【0044】
また、本実施形態の電力変換装置(20a)によれば、制御部(8a)が電源電圧(Vin)の位相(θin)に基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替えるので、直流リンク部(4)の電圧波形の形状から電源電圧(Vin)の位相(θin)を算出して、その算出された位相(θin)が予め設定した所定の範囲に入るか否かで変調方式を選択することになり、単純な構成で制御部(8a)を実現することができる。
【0045】
《発明の実施形態2》
図7図9は、本発明に係る電力変換装置の実施形態2を示している。ここで、図7は、本実施形態の電力変換装置(20b)の回路構成を示す回路図である。また、図8は、電力変換装置(20b)を構成する制御部(8b)の動作を示すフローチャートである。また、図9は、電力変換装置(20b)における電源電圧(Vin)及び直流電圧(Vdc)、並びにそれに対応するモータ(7)のトルクを示すグラフである。なお、以下の各実施形態において、図1図6と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
上記実施形態1では、電源電圧(Vin)の位相(θin)に基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替える電力変換装置(20a)を例示したが、本実施形態では、直流電圧(Vdc)の大きさに基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替える電力変換装置(20b)を例示する。
【0047】
電力変換装置(20b)は、図7に示すように、コンバータ回路(2)、直流リンク部(4)、インバータ回路(6)、制御部(8b)及び電源位相推定部(10)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流の電力を所定の周波数の電力に変換して、三相交流のモータ(7)に供給するように構成されている。
【0048】
制御部(8b)は、インバータ回路(6)のスイッチング(オンオフ動作)を制御し、そのスイッチング制御によって、インバータ回路(6)の出力電流、つまり、モータ(7)に流れるU、V、Wの各相の電流が制御されるように構成されている。また、制御部(8b)は、後述するように、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えるように構成されている。
【0049】
電源位相推定部(10)は、上記実施形態1のものと実質的に同じであるが、制御部(8b)において、電源位相推定部(10)で算出された電源電圧(Vin)の位相(θin)を積極的に制御に利用しないように構成されている。
【0050】
次に、制御部(8b)の動作について、図8及び図9を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態においても、モータ(7)の特性を予め測定した結果、例えば、図14に示すように、直流電圧(Vdc)が相対的に高いときに、三相変調方式よりも二相変調方式を用いることにより、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失の低減が可能であり、直流電圧(Vdc)が相対的に低いときに、二相変調方式より三相変調方式を用いることにより、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失の低減が可能である、ということが判明したので、図8及び図9の制御動作を採用している。
【0051】
まず、図8のステップST1では、直流電圧(Vdc)の大きさが測定される。
【0052】
続いて、図8のステップST2では、測定された直流電圧(Vdc)と、予め設定された閾値(Vt)との大小が比較判定される。ここで、直流電圧(Vdc)が閾値(Vt)よりも大きい場合(Vdc>Vtの場合)は、図9に示すように、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)と判断して、二相変調方式が選択される(図8のST3)。一方、直流電圧(Vdc)が閾値(Vt)以下である場合(Vdc≦Vtの場合)は、図9に示すように、上記期間(Ta)以外の期間(Tb)と判断して、三相変調方式が選択される(図8のST4)。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置(20b)によれば、上記実施形態1の電力変換装置(20a)と同様に、コンバータ回路(2)、直流リンク部(4)及びインバータ回路(6)により、いわゆる、コンデンサレスインバータが構成される。そして、インバータ回路(6)を制御する制御部(8b)は、上記実施形態1の電力変換装置(20a)の制御部(8a)と同様に、二相変調方式を用いるスイッチングの際にモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に三相変調方式を用いるように構成されているので、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも低減され易くなる。そのため、トランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とトランジスタ(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【0054】
また、本実施形態の電力変換装置(20b)によれば、制御部(8b)が直流リンク部(4)の直流電圧(Vdc)の大きさに基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替えるので、直流電圧(Vdc)の大きさを測定して、その測定された直流電圧(Vdc)が予め設定した閾値(Vt)よりも大きいか否かで変調方式を選択することになり、単純な構成で制御部(8b)を実現することができる。
【0055】
《発明の実施形態3》
図10図13は、本発明に係る電力変換装置の実施形態3を示している。ここで、図10は、本実施形態の電力変換装置(20c)の回路構成を示す回路図である。また、図11は、電力変換装置(20c)を構成するスイッチング素子(Sa〜Sf)の構成例を示す回路図である。また、図12は、電力変換装置(20c)を構成する制御部の動作を示すフローチャートである。また、図13は、電力変換装置(20c)における電源電圧を示すグラフである。
【0056】
上記実施形態1、2では、インバータを用いた電力変換装置(20a,20b)を例示したが、本実施形態では、単相マトリクスコンバータを構成する電力変換装置(20c)を例示する。
【0057】
電力変換装置(20c)は、図10に示すように、コンデンサ(3)、6つのスイッチング素子(Sa〜Sf)及び制御部(8c)を備え、単相の交流電源(1)から供給された交流の電力を所定の電圧及び周波数の電力に変換して、三相交流のモータ(7)に供給するように構成されている。
【0058】
コンデンサ(3)は、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングにより生じるリプル電圧を平坦化するような程度の静電容量を有している。
【0059】
6つのスイッチング素子(Sa〜Sf)は、図10に示すように、入力側がコンデンサ(3)に接続され、出力側が三相交流のモータ(7)に接続されている。また、6つのスイッチング素子(Sa〜Sf)は、図10に示すように、ブリッジ状に結線されている。また、各スイッチング素子(Sa〜Sf)は、図11に示すように、双方向スイッチを採用することができる。
【0060】
制御部(8c)は、各スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチング(オンオフ動作)を制御し、そのスイッチング制御によって、モータ(7)に流れるU、V、Wの各相の電流が制御されるように構成されている。また、制御部(8c)は、交流電源(1)の電源電圧(Vin)の半周期内において、スイッチングに用いる変調方式を二相変調方式と三相変調方式との間で切り換えるように構成されている。
【0061】
次に、制御部(8c)の動作について、図12及び図13を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態においても、モータ(7)の特性を予め測定した結果、例えば、図14に示すように、直流電圧(Vdc)に相当する電源電圧(Vin)の絶対値が相対的に高いときに、三相変調方式よりも二相変調方式を用いることにより、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失の低減が可能であり、直流電圧(Vdc)に相当する電源電圧(Vin)の絶対値が相対的に低いときに、二相変調方式より三相変調方式を用いることにより、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失の低減が可能である、ということが判明したので、図12及び図13の制御動作を採用している。
【0062】
まず、図12のステップST1では、電源電圧(Vin)の大きさが測定される。
【0063】
続いて、図12のステップST2では、測定された電源電圧(Vin)の絶対値と、予め設定された閾値(Vt)との大小が比較判定される。ここで、電源電圧(Vin)の絶対値が閾値(Vt)よりも大きい場合は、図13に示すように、二相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)と判断して、二相変調方式が選択される(図12のST3)。一方、電源電圧(Vin)の絶対値が閾値(Vt)以下である場合は、図12に示すように、上記期間(Ta)以外の期間(Tb)と判断して、三相変調方式が選択される(図12のST4)。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置(20c)によれば、交流電源(1)の電源電圧(Vin)をスイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによって所定の電圧及び周波数の電力に変換して、モータ(7)に供給するように構成されているので、単相マトリクスコンバータが構成される。そして、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングを制御する制御部(8c)は、上記実施形態1の電力変換装置(20a)の制御部(8a)及び上記実施形態2の電力変換装置(20b)の制御部(8b)と同様に、二相変調方式を用いるスイッチングの際にモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失が三相変調方式を用いるスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失よりも小さい期間(Ta)に二相変調方式を用い、期間(Ta)以外の期間(Tb)に三相変調方式を用いるように構成されているので、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失は、二相変調方式又は三相変調方式を一貫して用いる場合よりも低減され易くなる。そのため、スイッチング素子(Sa〜Sf)のスイッチングによってモータ(7)で発生する鉄損とスイッチング素子(Sa〜Sf)で発生するスイッチング損失との合計損失を可及的に低減させることができる。
【0065】
また、本実施形態の電力変換装置(20c)によれば、制御部(8c)が電源電圧(Vin)の大きさに基づいてスイッチングに用いる変調方式を切り替えるので、電源電圧(Vin)の大きさを測定して、その測定された電源電圧(Vin)の絶対値が予め設定した閾値(Vt)よりも大きいか否かで変調方式を選択することになり、単純な構成で制御部(8c)を実現することができる。
【0066】
また、上記各実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物又はその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、スイッチングによる損失とモータの鉄損との合計損失を低減させることができるので、いわゆる、コンデンサレスインバータやマトリクスコンバータなどの電力変換装置について有用である。
【符号の説明】
【0068】
Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz トランジスタ(スイッチング素子)
Sa〜Sf スイッチング素子
1 交流電源
2 コンバータ回路
3 コンデンサ
4 直流リンク部
6 インバータ回路
7 モータ
8a,8b,8c 制御部
20a,20b,20c 電力変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15