特許第6384078号(P6384078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384078
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】インストルメントパネル
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20180827BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B60K37/00 C
   B60K37/00 E
   B60K37/00 Z
   B62D25/08 J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-59742(P2014-59742)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182542(P2015-182542A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】淺井 邦人
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−146111(JP,A)
【文献】 特開2001−163084(JP,A)
【文献】 特開2012−140093(JP,A)
【文献】 特開平09−263162(JP,A)
【文献】 特開2002−200931(JP,A)
【文献】 特開2006−008113(JP,A)
【文献】 特開平11−170953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結されるインパネアッパーとインパネロアとから成り、
前記インパネアッパーは、天井壁と、前記天井壁の後下方の上部前壁と、前記天井壁の横下方の上部側壁とを一体に備え、
前記インパネロアは、前記上部前壁の下方に配置される下部前壁と、前記上部側壁の下方に配置される下部側壁とを一体に備え、
サイドブラケットを介して車体側部に固定されたステアリングサポートメンバに支持されるインストルメントパネルであって、
前記サイドブラケットに延設された被固定部に、前記インパネロアの下部側壁の上端部に設けられた固定部が固定されているインストルメントパネル。
【請求項2】
前記固定部は締結部材によって前記被固定部に締結されており、前記締結部材の締結方向が車両前後方向である請求項1記載のインストルメントパネル。
【請求項3】
前記インパネアッパーとインパネロアの一方が他方に対して車幅方向に移動することを規制する規制手段が、前記固定部と被固定部から成る固定構造に隣接して設けられ、
前記規制手段は、前記一方に設けられた係合部と、他方に設けられた被係合部とから成る請求項1又は2記載のインストルメントパネル。
【請求項4】
前記固定部と被固定部は前記インパネアッパーに覆われている請求項1〜3のいずれか一つに記載のインストルメントパネル。
【請求項5】
前記車体側部に当接する前記サイドブラケットの本体部から車幅方向内側に張り出すフランジが設けられ、
前記フランジに前記被固定部が設けられている請求項1〜4のいずれか一つに記載のインストルメントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
互いに連結されるインパネアッパーとインパネロアとから成り、
前記インパネアッパーは、天井壁と、前記天井壁の後下方の上部前壁と、前記天井壁の横下方の上部側壁とを一体に備え、
前記インパネロアは、前記上部前壁の下方に配置される下部前壁と、前記上部側壁の下方に配置される下部側壁とを一体に備え、
サイドブラケットを介して車体側部に固定されたステアリングサポートメンバに支持されるインストルメントパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネルを上記のように上下2分割型構造に構成すると、インパネアッパーとインパネロアを互いに異なる色に設定できてインテリア性を向上させることができる。さらに、インパネアッパーとインパネロアの少なくとも一方を複雑な形状に設定できて多機能性を持たせることもできる。このように、インストルメントパネルの商品価値を向上させたい場合等に、インストルメントパネルを上下2分割型の構造に構成している。
【0003】
従来、この種の上下2分割型のインストルメントパネルにおいては、特許文献1に開示されているように、インパネロアの車幅方向中間部に設けた複数の固定部を、ステアリングサポートメンバの車幅方向中間部に設けた複数の被固定部に各別に固定してあった。
【0004】
しかしながら、上記従来の固定構造によれば、インパネロアの車幅方向の端部と、インパネアッパーの車幅方向の端部とのステアリングサポートメンバ等に対する固定強度が十分ではなかった。
【0005】
一般に、インパネロアの車両後方側の端部には、オーディオ機器等の重量物が取り付けられて、前記車両後方側の端部が重くなる。そのために、上記の固定強度が十分でない構造では、インパネロアの車幅方向の端部が垂れ下がりやすかった。そして、インパネアッパーの車幅方向の端部もインパネロアによって車両後方側下方に引きずられやすかった。
【0006】
その結果、インパネアッパーの車幅方向の端部とインパネロアの車幅方向の端部の合わせ部や、インストルメントパネル全体の車幅方向の端部とフロントピラーとの合わせ部に隙間が生じ、インストルメントパネルの質感や外観品質が低下するという問題があった。
【0007】
この問題を解消するために、特許文献2に開示されている非分割型のインストルメントパネルの固定構造を上下2分割型のインストルメントパネルに適用することが考えられる。特許文献2の固定構造とは、前記サイドブラケットの下端部から車両後方側に被固定部を延出し、インストルメントパネルの車幅方向の端部の下端部に設けた固定部を前記被固定部に、取り付けボルトで車幅方向に固定する構造である。
【0008】
この固定構造を上下2分割型のインストルメントパネルに適用して、サイドブラケットの下端部から車両後方側に延出した被固定部に、インパネロアの車幅方向の端部の下端部に設けた固定部を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−146111号公報
【特許文献2】特開2001−163084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献2の固定構造を上下2分割型のインストルメントパネルに適用しても、インパネロアの車幅方向の端部の下端部を、サイドブラケットを介してステアリングサポートメンバに強く固定することができるだけであった。
【0011】
そのために、前記オーディオ機器等の重量物によりインパネロアの上端部に加わる力によって、インパネロアが、前記取り付けボルトの軸芯(横軸芯)周りで車両後方側に回転し、インパネロアの車幅方向の端部が垂れ下がりやすかった。また、インパネアッパーもインパネロアによって車両後方側下方に引きずられやすかった。
【0012】
インパネアッパーとインパネロアの合わせ部に多数の係合部と被係合部を振分け配設することも考えられるが、この構造では、部品点数が増加するとともに、組み付け作業の作業性が低下するという新たな問題が生じる。
【0013】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、部品点数の増加や組み付け作業の作業性の低下を招くことなく、質感や外観品質を向上させることができる上下2分割型のインストルメントパネルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の特徴は、
互いに連結されるインパネアッパーとインパネロアとから成り、
前記インパネアッパーは、天井壁と、前記天井壁の後下方の上部前壁と、前記天井壁の横下方の上部側壁とを一体に備え、
前記インパネロアは、前記上部前壁の下方に配置される下部前壁と、前記上部側壁の下方に配置される下部側壁とを一体に備え、
サイドブラケットを介して車体側部に固定されたステアリングサポートメンバに支持されるインストルメントパネルであって、
前記サイドブラケットに延設された被固定部に、前記インパネロアの下部側壁の上端部に設けられた固定部が固定されている点にある。(請求項1)
【0015】
この構成によれば、前記固定部が前記被固定部に固定されることで、インパネロアの下部側壁の上端部が、剛性の高いステアリングサポートメンバにサイドブラケットを介して固定される。これにより、下記の(1)〜(3)の作用を奏することができる。
(1) ステアリングサポートメンバに対するインパネロアの車幅方向の端部の上端部の固定強度を上げることができて、インパネロアの車幅方向の端部の垂れ下がりを防止することができる。また、前記固定部と被固定部は、インパネアッパーの車幅方向の端部とインパネロアの車幅方向の端部との合わせ部に位置するから、前記合わせ部に隙間が形成されることを防止することができる。その結果、インストルメントパネルの質感を向上させることができる。
(2) インパネアッパーがインパネロアに引きずられて車両後方側に垂れ下がることを防止できる。従って、インパネアッパーとインパネロアを合わせたインストルメントパネル全体の車幅方向の端部の垂れ下がりを防止することができ、インストルメントパネルの車幅方向の端部とフロントピラーの合わせ部に隙間が生じることを防止することができる。これにより、前記合わせ部の外観品質を向上させることができる。
(3) これまでステアリングサポートメンバに固定されておらず剛性が低かったインパネロアの下部側壁の上端部がステアリングサポートメンバに固定されたことで、インパネロアの垂れ下がりを効果的に防止することができる。その結果、インパネアッパーとインパネロアの合わせ部に多数の係合部と被係合部を振分け配設する必要がなく、組み付け性の低下を回避することができる。
【0016】
本発明において、
前記固定部は締結部材によって前記被固定部に締結されており、前記締結部材の締結方向が車両前後方向であると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0017】
インパネロアが垂れ下がる場合、インパネロアの車幅方向の端部に、この端部を車両後方側に剥がす方向の力が加わって垂れ下がる。本発明の上記構成によれば、前記固定部は前記被固定部に締結部材によって車両前後方向に固定されているから、例えば、前記固定部が前記被固定部に締結部材によって車幅方向に固定されている構造に比べると、固定部と被固定部の固定構造を、前記剥がす方向の力に対して強い構造にすることができる。
その結果、インパネロアとインパネアッパーを合わせたインストルメントパネル全体の垂れ下がりを防止することができ、インストルメントパネルの車幅方向の端部とフロントピラーの合わせ部に隙間が生じることを確実に防止することができる。これにより、前記合わせ部の外観品質をより向上させることができる。(請求項2)
【0018】
本発明において、
前記インパネアッパーとインパネロアの一方が他方に対して車幅方向に移動することを規制する規制手段が、前記固定部と被固定部から成る固定構造に隣接して設けられ、
前記規制手段は、前記一方に設けられた係合部と、他方に設けられた被係合部とから成ると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0019】
インパネアッパーの車幅方向の端部とインパネロアの車幅方向の端部との一方が他方に対して車幅方向に位置ずれすることを防止することができる。つまり、前記一方が他方に対して車両上下方向と車幅方向のいずれの方向に位置ずれすることも防止することができ、インストルメントパネルの外観品質を向上させることができる。(請求項3)
【0020】
本発明において、
前記固定部と被固定部は前記インパネアッパーに覆われていると、インストルメントパネルの外観品質を向上させることができる。(請求項4)
【0021】
本発明において、
前記車体側部に当接する前記サイドブラケットの本体部から車幅方向内側に張り出すフランジが設けられ、
前記フランジに前記被固定部が設けられていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0022】
前記被固定部が設けられたブラケットを、サイドブラケットとは別個に設ける必要がなく、前記被固定部を設ける手段として、既設のサイドブラケットの一部分を変更するだけでよい。従って、サイドブラケットに、別部材から成るブラケットを組み付ける必要がなく、組み付け作業の作業性を向上させることができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品点数の増加や組み付け作業の作業性の低下を招くことなく、質感や外観品質を向上させることができる上下2分割型のインストルメントパネルを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車体側部とインストルメントパネルとフロントピラーを示す斜視図
図2図1のX部の拡大斜視図
図3図1のY部の拡大斜視図
図4】ステアリングサポートメンバの斜視図
図5】サイドブラケットの斜視図
図6】インストルメントパネルの分解斜視図
図7】(a)は、係合爪と係合孔の係合構造を示す斜視図(b)は、スクリュー挿通孔と係合孔を示す固定部の斜視図(c)は、係合爪を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、インストルメントパネル1の左側の部分と、このインストルメントパネル部分に隣接するフロントピラー2の左側の部分と、車体側部7とを示してある。インストルメントパネル1は、自動車の車室内のほぼ全幅にわたる長さの合成樹脂製の成形品であり、運転席及び助手席の車両前方側Frに配置されている。前記インストルメントパネル1は、車幅方向に沿うパイプ状のステアリングサポートメンバ3(図4参照)に支持されている。
【0026】
[ステアリングサポートメンバ3の構造]
図4図5に示すように、ステアリングサポートメンバ3の車幅方向の両端部にサイドブラケット4が固着されている。そして、サイドブラケット本体6(サイドブラケットの本体部に相当)の車幅方向外側W2を向く面6Mが車体側部7に重ね合わされてボルト固定されている。サイドブラケット4は、サイドブラケット本体6の板面が車幅方向を向く金属板から成る。
【0027】
このように、ステアリングサポートメンバ3はサイドブラケット4を介して車体側部7に固定されている。ステアリングサポートメンバ3の長手方向中間部には、インストルメントパネル1を連結させる複数の連結ブラケット5が設けられている。各連結ブラケット5は、ステアリングサポートメンバ3から下側や斜め後上方に延びている。
【0028】
[サイドブラケット4の構造]
前記車体側部7に当接するサイドブラケット本体6から車幅方向内側W1にサイドブラケットフランジ9が張り出している。これにより、サイドブラケット4の剛性を向上させることができる。そして、前記サイドブラケットフランジ9の上端部に、インストルメントパネル1側の後述の固定部30を重ね合わせて固定する被固定部40が、上方に向かって延設されている。被固定部40にはスクリュー孔41が形成され、被固定部40の固定面は車両後方側Rrを向いている。
【0029】
[インストルメントパネル1の構造]
図6にも示すように、前記インストルメントパネル1は、互いに上下に連結されるインパネアッパー10とインパネロア20とから成る上下2分割型に構成されている。インストルメントパネル1を上下2分割型に構成することで、インパネアッパー10とインパネロア20を互いに異なる色に設定してインテリア性を向上させることができる等の効果を得ることができる。
【0030】
[インパネアッパー10の構造]
インパネアッパー10は、天井壁11と、天井壁11の後下方の上部前壁12と、天井壁11の横下方の上部側壁13とを一体に備えている。前記天井壁11の壁面は上下方向を向き、上部前壁12の壁面は車両前後方向を向き、上部側壁13の壁面は車幅方向を向く。
【0031】
[インパネアッパー10の上部前壁12の構造]
前記上部前壁12は下側ほど車室内側(車両後方側Rr)に位置するように緩やかに傾斜している。また、天井壁11と上部前壁12の間の接続部は緩やかに円弧状に折曲している。上部前壁12の車幅方向の一端部には、空気調整機で温度調整された空気を吹き出す長方形状の空気吹き出し口12H(図6参照)が形成され、この空気吹き出し口12Hにルーバー12R(図1参照)が取り付けられている。
【0032】
そして、上部前壁12の下端部に、車両前方側Frに凹む段差状の下側第1連結部12Aが設けられている。この下側第1連結部12Aは、インパネロア20の上側第1連結部22Aに連結される。
【0033】
[インパネアッパー10の上部側壁13の構造]
前記上部側壁13は天井壁11の車幅方向の一端部と、上部前壁12の車幅方向の一端部とに連なっている。また、上部側壁13の車両前方側Frの端部に、車幅方向外側W2に張り出す第1側部フランジ13Fが、上下方向全長にわたって設けられている。
【0034】
図7(a),図7(c)に示すように、第1側部フランジ13Fの下端部から裏側(車両前方側Fr)に係合爪33(係合部に相当)が突出している。係合爪33は、車幅方向視で車両前方側Frに向かって窄まる台形状の爪本体33Aと、爪本体33Aの車幅方向外側W2側の面に突設された上下一対の車両前後方向に沿うリブ33Bとから成る。
【0035】
[インパネロア20の構造]
図1図6に示すように、インパネロア20は、インパネアッパー10の上部前壁12の下方に配置される下部前壁22と、前記上部側壁13の下方に配置される下部側壁23とを一体に備えている。下部前壁22の壁面は車両前後方向を向き、下部側壁23の壁面は車幅方向を向く。インパネロア20はステアリングサポートメンバ3の連結ブラケット5に連結されている。下部前壁22の車幅方向の中央部には、オーディオ機器等の重量物(図示せず)が取り付けられる。
【0036】
[インパネロア20の下部前壁22の構造]
下部前壁22の上端部に、車両前方側Frに凹む段差状の上側第1連結部22Aが設けられている。この上側第1連結部22Aは、インパネアッパー10の下側第1連結部12Aに連結される。
【0037】
[インパネロア20の下部側壁23の構造]
下部側壁23の車両前方側Frの端部に、車幅方向外側W2に張り出す第2側部フランジ23Fが、上下方向全長にわたって設けられている。また、下部側壁23の上端部に、車幅方向内側W1に凹む段差状の上側第2連結部23Aが設けられている。この上側第2連結部23Aは、インパネアッパー10の上部側壁13の下端部に覆われる。
【0038】
そして、図6に示すように、上側第2連結部23Aの車両前方側Frの端部に、車幅方向外側W2に張り出すフランジ状の固定部30が設けられている。この固定部30は、第2側部フランジ23Fの上端部に連なり、固定部30の車幅方向外側W2の端縁と、第2側部フランジ23Fの車幅方向外側W2の端縁とは、車幅方向でほぼ同じ位置に位置する。
【0039】
また、固定部30の車幅方向内側W1の部分に、横に長い長孔状のスクリュー挿通孔31が形成され、固定部30の車幅方向外側W2の部分に、縦に長い長方形の長孔状の係合孔32(被係合部に相当)が形成されている。つまり、スクリュー挿通孔31と係合孔32が車幅方向で隣接している。車幅方向における係合孔32の長さA(図7(b)参照)と、車幅方向における前記係合爪33の長さB(図7(c)参照)とはほぼ同一に設定されている。
【0040】
[インパネアッパー10とインパネロア20との組み付け構造]
インパネロア20がステアリングサポートメンバ3の連結ブラケット5(図4参照)に連結される。そして、図6に示すように、インパネアッパー10の下側第1連結部12Aが、インパネロア20のインパネロア20の上側第1連結部22Aに連結される。図1に示すように、下側第1連結部12Aと上側第1連結部22Aは、車幅方向に細長いカバー部材16で覆われる。
【0041】
図6に示すように、インパネロア20の前記固定部30が、前記サイドブラケット4の前記被固定部40に車両後方側Rrから重ね合わされ、スクリュー17(締結部材に相当)が固定部30のスクリュー挿通孔31に車両後方側Rrから挿通されて、被固定部40のスクリュー孔41に螺合される。
【0042】
また、インパネアッパー10の第1側部フランジ13Fの下端部が、インパネロア20の前記固定部30に車両後方側Rrから重ね合わされ、第1側部フランジ13Fの下端部から車両前方側Frに突出する係合爪33が、前記固定部30の係合孔32に挿通係合される(図7(a)参照)。インパネアッパー10とインパネロア20との組み付け状態で、第1側部フランジ13Fと第2側部フランジ23Fとは上下に連続した状態になる。
【0043】
上記のように、前記固定部30は前記被固定部40にスクリュー17によって車両前後方向に固定されている。また、前記係合爪33と係合孔32が係合することで、インパネアッパー10とインパネロア20の一方が他方に対して車幅方向に移動することを規制している。つまり、インパネアッパー10とインパネロア20の一方が他方に対して車幅方向に移動することを規制する規制手段18を前記係合爪33と係合孔32とで構成している。上記のように、前記規制手段18は、前記固定部30と被固定部40から成る固定構造19に隣接して設けられている。
【0044】
図3に示すように、前記固定部30と被固定部40はインパネアッパー10に車両後方側Rrから覆われている。これにより、インストルメントパネル1の外観品質を向上させることができる。
【0045】
本発明によれば、前記固定部30が前記被固定部40に固定されることで、インパネロア20の下部側壁23の上端部が、剛性の高いステアリングサポートメンバ3にサイドブラケット4を介して固定される。その結果、下記の(1)〜(3)の作用を奏することができる。
(1) ステアリングサポートメンバ3に対するインパネロア20の車幅方向の端部の上端部の固定強度を上げることができて、インパネロア20の車幅方向の端部の垂れ下がりを防止することができる。また、前記固定部30と被固定部40は、インパネアッパー10の車幅方向の端部とインパネロア20の車幅方向の端部との合わせ部に位置するから、前記合わせ部に隙間が形成されることを防止することができる。従って、インストルメントパネル1の質感を向上させることができる。
【0046】
(2) インパネアッパー10がインパネロア20に引きずられて車両後方側Rrに垂れ下がることを防止できる。従って、インパネアッパー10とインパネロア20を合わせたインストルメントパネル1全体の車幅方向の端部の垂れ下がりを防止することができ、インストルメントパネル1の車幅方向の端部とフロントピラー2の合わせ部に隙間が生じることを防止することができる。これにより、前記合わせ部の外観品質を向上させることができる。
【0047】
(3) これまでステアリングサポートメンバ3に固定されておらず剛性が低かったインパネロア20の下部側壁23の上端部がステアリングサポートメンバ3に固定されたことで、インパネロア20の垂れ下がりを効果的に防止することができる。その結果、インパネアッパー10とインパネロア20の合わせ部に多数の係合部と被係合部を振分け配設する必要がなく、組み付け性の低下を回避することができる。
【0048】
(4) 前記固定部30は前記被固定部40にスクリュー17によって車両前後方向に固定されているから、次の作用を奏することができる。すなわち、インパネロア20が垂れ下がる場合、インパネロア20の車幅方向の端部に、この端部を車両後方側Rrに剥がす方向の力(図3のZ方向の力)が加って垂れ下がる。
本発明の上記構成によれば、前記固定部30は前記被固定部40にスクリュー17によって車両前後方向に固定されているから、例えば、前記固定部30が前記被固定部40にスクリュー17によって車幅方向に固定されている構造に比べると、固定部30と被固定部40の固定構造19を、前記剥がす方向の力に対して強い構造にすることができる。
その結果、インパネロア20とインパネアッパー10を合わせたインストルメントパネル1全体の垂れ下がりを防止することができ、インストルメントパネル1の車幅方向の端部とフロントピラー2の合わせ部に隙間が生じることを確実に防止することができる。これにより、前記合わせ部の外観品質をより向上させることができる。
【0049】
(5) 前記規制手段18が、前記固定部30と被固定部40から成る固定構造19に隣接して設けられているから、インパネアッパー10の車幅方向の端部とインパネロア20の車幅方向の端部との一方が他方に対して車幅方向に位置ずれすることを防止することができる。つまり、前記一方が他方に対して車両上下方向と車幅方向のいずれの方向に位置ずれすることも防止することができる。これにより、インストルメントパネル1の外観品質を向上させることができる。
【0050】
(6) 前記サイドブラケット4に前記被固定部40が一体に設けられているから、前記被固定部40が設けられたブラケットを、サイドブラケット4とは別個に設ける必要がなく、前記被固定部40を設ける手段として、既設のサイドブラケット4の一部分を変更するだけでよい。従って、サイドブラケット4に、別部材から成るブラケットを組み付ける必要がなく、組み付け作業の作業性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
3 ステアリングサポートメンバ
4 サイドブラケット
6 サイドブラケットの本体部(サイドブラケット本体)
7 車体側部
9 フランジ(サイドブラケットフランジ)
10 インパネアッパー
11 天井壁
12 上部前壁
13 上部側壁
17 締結部材(スクリュー)
18 規制手段
19 固定構造
20 インパネロア
22 下部前壁
23 下部側壁
30 固定部
32 被係合部(係合孔)
33 係合部(係合爪)
40 被固定部
W1 車幅方向内側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7