特許第6384081号(P6384081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許6384081気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法
<>
  • 特許6384081-気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法 図000002
  • 特許6384081-気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法 図000003
  • 特許6384081-気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法 図000004
  • 特許6384081-気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法 図000005
  • 特許6384081-気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法 図000006
  • 特許6384081-気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384081
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】気密封止パッケージの製造方法、および赤外線検知器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   H01L23/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-63300(P2014-63300)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-185794(P2015-185794A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】西村 望
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06566170(US,B1)
【文献】 特開2008−180629(JP,A)
【文献】 特開2012−049252(JP,A)
【文献】 特開2011−146514(JP,A)
【文献】 特表2007−512739(JP,A)
【文献】 特開2003−133452(JP,A)
【文献】 特開2014−067895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02−10
G01J 1/02−08
H03H 9/02−12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスが収容された収容空間、該収容空間の外側に位置する支持部、および、前記支持部の外側に位置し前記支持部よりも高さが高い突出部を有する基板と、該基板に接合される蓋部材と、を用いて気密封止パッケージを製造する方法であって、
前記基板の前記支持部上に、前記収容空間の全周を連続的に囲む枠状の第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、
前記基板の前記支持部上に、前記第1の金属層の外側を非連続的に囲む、前記第1の金属層よりも高さが高い第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、
前記蓋部材を、前記第1の金属層に接触させずに前記第2の金属層の上に載置する載置工程と、
前記基板の前記突出部の内周縁と前記蓋部材の外周縁との間から、前記蓋部材と前記第1の金属層との間の隙間を介して吸引して、前記収容空間内を排気する排気工程と、
前記第1の金属層と前記第2の金属層を溶融させて、前記第2の金属層の高さを低くし、該第2の金属層の上に載置されている前記蓋部材を前記第1の金属層に当接するまで下降させ、溶融状態の前記第1の金属層と前記蓋部材とを接合して、接合された前記第1の金属層と前記蓋部材とによって前記収容空間を封止する封止工程と、を含み、
前記載置工程において、前記第2の金属層の外周縁は前記突出部の内周縁によって外側から支持されており、
前記第2の金属層形成工程において、前記第2の金属層を、前記蓋部材が載置される載置支持部と、前記載置支持部の外側に位置し前記載置支持部よりも高さが高く、前記蓋部材の外周縁に当接して該外周縁を外側から支持する外側支持部とを有するL字型に形成する、気密封止パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記第2の金属層の材料の融点が、前記第1の金属層の材料の融点よりも高く、
前記排気工程を、前記第1の金属層の材料の融点よりも高く前記第2の金属層の材料の融点よりも低い温度環境下で行う、請求項1に記載の気密封止パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記基板には、環状のメタライズ層が予め形成されており、
前記第2の金属層形成工程において、前記第2の金属層は、前記環状のメタライズ層上に形成される、請求項1または2に記載の気密封止パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記封止工程において、前記蓋部材の高さが、前記突出部と同じ高さかまたは前記突出部よりも低くなるように、前記第1の金属層と前記蓋部材とを接合する、請求項1から3のいずれか1項に記載の気密封止パッケージの製造方法
【請求項5】
赤外線検知デバイスと、該赤外線検知デバイスが収容された収容空間、該収容空間の外側に位置する支持部、および、前記支持部の外側に位置し前記支持部よりも高さが高い突出部を有する基板と、該基板に接合される蓋部材と、を用いて赤外線検知器を製造する方法であって、
前記基板の前記支持部上に、前記収容空間の全周を連続的に囲む枠状の第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、
前記基板の前記支持部上に、前記第1の金属層の外側を非連続的に囲む、前記第1の金属層よりも高さが高い第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、
前記蓋部材を、前記第1の金属層に接触させずに前記第2の金属層の上に載置する載置工程と、
前記基板の前記突出部の内周縁と前記蓋部材の外周縁との間から、前記蓋部材と前記第1の金属層との間の隙間を介して吸引して、前記収容空間内を排気する排気工程と、
前記第1の金属層と前記第2の金属層を溶融させて、前記第2の金属層の高さを低くし、該第2の金属層の上に載置されている前記蓋部材を前記第1の金属層に当接するまで下降させ、溶融状態の前記第1の金属層と前記蓋部材とを接合して、接合された前記第1の金属層と前記蓋部材とによって前記収容空間を封止する封止工程と、を含み、
前記載置工程において、前記第2の金属層の外周縁は前記突出部の内周縁によって外側から支持されており、
前記第2の金属層形成工程において、前記第2の金属層を、前記蓋部材が載置される載置支持部と、前記載置支持部の外側に位置し前記載置支持部よりも高さが高く、前記蓋部材の外周縁に当接して該外周縁を外側から支持する外側支持部とを有するL字型に形成する、赤外線検知器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密封止パッケージの製造方法およびその気密封止パッケージを備える赤外線検知器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの一つである赤外線検知デバイスは、検知した赤外線エネルギーを熱に変換して温度を計測することによって、検知対象物の温度を非接触で瞬時に測定できる機能を持つ。当該機能を十分に発揮するためには、赤外線検知デバイスから大気を通じた放熱を阻止することが望ましい。そのため、赤外線検知デバイスは、真空状態で封止された気密封止パッケージ内に収納されることが望ましい。パッケージ内部が真空状態に維持されると、大気を通じた放熱が減少するので、赤外線検知デバイスの感度が上昇する。
【0003】
電子デバイスを気密封止するための技術が特許文献1〜3に開示されている。特許文献1、2には、電子デバイスを搭載した基板と、蓋部材とをはんだで接合することによって、電子デバイスの収容空間を封止する技術が記載されている。
【0004】
特許文献3に記載の技術では、基板に、電子デバイスを連続的に囲む枠状の第1の金属層が形成されている。さらに、第1の金属層の外側には、第1の金属層を非連続的に囲む第2の金属層が形成されている。第2の金属層の高さ(厚さ)は、第1の金属層よりも高い。この基板に蓋部材を接合する際には、まず、第2の金属層上に蓋部材を載置する。このとき、第2の金属層よりも低い第1の金属層は、蓋部材と接触していないので、これらの間に隙間が形成される。次に、当該隙間を介して電子デバイスの収容空間を排気する。その後、第2の金属層を溶融させると、第2の金属層が濡れ広がるので第2の金属層の高さが次第に低くなる。これにより、蓋部材は、基板に向かって徐々に下降していき、溶融状態の第1の金属層に接合する。その結果、電子デバイスの収容空間が封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007‐512739号公報
【特許文献2】特開2008‐298708号公報
【特許文献3】特開2007‐67400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載の技術では、蓋部材を基板に積層する際、蓋部材は、積層方向でしか第2の金属層と当接していない。すなわち、蓋部材は、積層方向でしか基板に支持されていない。そのため、蓋部材を基板に積層する際の蓋部材の固定が不十分であり、蓋部材の位置がずれやすい。蓋部材の位置がずれると、第1の金属層と蓋部材との接合が不十分になり、封止不良が起こる可能性が高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、封止不良を起こりにくくすることが可能な気密封止パッケージの製造方法および赤外線検知器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の気密封止パッケージの製造方法は、電子デバイスが収容された収容空間、該収容空間の外側に位置する支持部、および、前記支持部の外側に位置し前記支持部よりも高さが高い突出部を有する基板と、該基板に接合される蓋部材と、を用いて気密封止パッケージを製造する方法であって、前記基板の前記支持部上または前記蓋部材に、前記収容空間の全周を連続的に囲む枠状の第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、前記基板の前記支持部上に、前記第1の金属層の外側を非連続的に囲む、前記第1の金属層よりも高さが高い第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、前記蓋部材を、前記第1の金属層に接触させずに前記第2の金属層の上に載置する載置工程と、前記基板の前記突出部の内周縁と前記蓋部材の外周縁との間から、前記蓋部材と前記第1の金属層との間の隙間を介して吸引して、前記収容空間内を排気する排気工程と、前記第1の金属層と前記第2の金属層を溶融させて、前記第2の金属層の高さを低くし、該第2の金属層の上に載置されている前記蓋部材を前記第1の金属層に当接するまで下降させ、溶融状態の前記第1の金属層と前記蓋部材とを接合して、接合された前記第1の金属層と前記蓋部材とによって前記収容空間を封止する封止工程と、を含み、前記載置工程において、前記第2の金属層の外周縁は前記突出部の内周縁によって外側から支持されており、前記第2の金属層形成工程において、前記第2の金属層を、前記蓋部材が載置される載置支持部と、前記載置支持部の外側に位置し前記載置支持部よりも高さが高く、前記蓋部材の外周縁に当接して該外周縁を外側から支持する外側支持部とを有するL字型に形成する
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の赤外線検知機器の製造方法は、赤外線検知デバイスと、該赤外線検知デバイスが収容された収容空間、該収容空間の外側に位置する支持部、および、前記支持部の外側に位置し前記支持部よりも高さが高い突出部を有する基板と、該基板に接合される蓋部材と、を用いて赤外線検知器を製造する方法であって、前記基板の前記支持部上または前記蓋部材に、前記収容空間の全周を連続的に囲む枠状の第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、前記基板の前記支持部上に、前記第1の金属層の外側を非連続的に囲む、前記第1の金属層よりも高さが高い第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、前記蓋部材を、前記第1の金属層に接触させずに前記第2の金属層の上に載置する載置工程と、前記基板の前記突出部の内周縁と前記蓋部材の外周縁との間から、前記蓋部材と前記第1の金属層との間の隙間を介して吸引して、前記収容空間内を排気する排気工程と、前記第1の金属層と前記第2の金属層を溶融させて、前記第2の金属層の高さを低くし、該第2の金属層の上に載置されている前記蓋部材を前記第1の金属層に当接するまで下降させ、溶融状態の前記第1の金属層と前記蓋部材とを接合して、接合された前記第1の金属層と前記蓋部材とによって前記収容空間を封止する封止工程と、を含み、前記載置工程において、前記第2の金属層の外周縁は前記突出部の内周縁によって外側から支持されており、前記第2の金属層形成工程において、前記第2の金属層を、前記蓋部材が載置される載置支持部と、前記載置支持部の外側に位置し前記載置支持部よりも高さが高く、前記蓋部材の外周縁に当接して該外周縁を外側から支持する外側支持部とを有するL字型に形成する
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、封止不良を起こりにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の気密封止パッケージの一実施形態を示す断面図である。
図2図2図1に示す基板の平面図である。
図3図1に示すメタライズ層7の変形例である。
図4図1に示す気密封止パッケージの製造方法を説明するための図である。
図5】第2の金属層形成工程後の基板の平面図である。
図6】載置工程後の基板および蓋部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の気密封止パッケージの一実施形態を示す断面図である。以下、本発明の気密封止パッケージを赤外線検知器に適用した実施形態について説明する。
【0015】
図1に示す気密封止パッケージ100は、電子デバイス1が搭載される基板3と、基板3に接合される蓋部材4とを、有する。電子デバイス1は、ワイヤ8で基板3に接続される。本実施形態では、電子デバイス1は、検知した赤外線エネルギーを熱に変換して温度を計測する赤外線検知デバイスである。
【0016】
基板3は、セラミック基板であり、支持部9aと、支持部9bと、突出部10とを有する。支持部9aには、電子デバイス1が搭載されている。支持部9bには、メタライズ層6aおよびメタライズ層7が形成されている。メタライズ層7は、メタライズ層6aの外側に形成されている。突出部10は、支持部9bの外側に位置し、支持部9bよりも高さが高い。本実施形態では、支持部9aの高さが支持部9bよりも低い構造であるが両者は、同じ高さであってもよい。蓋部材4は、ゲルマニウム、シリコン、サファイヤなどの赤外線を透過可能な材料で構成された円板状部材である。
【0017】
基板3と蓋部材4との間には、電子デバイス1を収容するための収容空間2が形成される。この収容空間2は、第1の金属層5により真空状態に封止されている。第1の金属層5には、電子デバイス1の耐熱温度に応じてSnAg系はんだやSnBi系はんだなどを適用できる。本実施形態では、第1の金属層5は、SnAg系はんだである。第1の金属層5は、メタライズ層6aと、メタライズ層6aに対向するメタライズ層6bとの間に挟まれている。メタライズ層6bは、蓋部材4に形成されている。本実施形態では、メタライズ層6a、6bは、枠状の一形態である環状に形成されている。メタライズ層6aは、Mo、Mn、Ti、Agなどの導電性パターン上にNi、Auなどのメッキを施すことによって形成される。一方、メタライズ層6bは、例えば、Cr、Cu、Ni、Ag、Auなどの導電性パターンで形成される。
【0018】
図2は、図1に示す基板の平面図である。図2に示すように、本実施形態では、メタライズ層7は、メタライズ層6aを連続的に囲む環状に形成されているが、メタライズ層7の形状は環状に限定されない。図3は、図1に示すメタライズ層7の変形例である。図3に示すように、メタライズ層7の形状は、メタライズ層6aを非連続的に囲む島状であってもよい。図3ではメタライズ層7がメタライズ層6aの外側の4箇所に形成されているが、メタライズ層7の数は特に制限されない。メタライズ層7には、図1に示すように、第2の金属層11が付着している。本実施形態では、第2の金属層11は、第1の金属層5と同じくSnAg系はんだである。
【0019】
本実施形態では、蓋部材4は突出部10とほぼ同じ高さとなる位置で基板3に接合されているが、蓋部材4の高さは突出部10の高さと同じかまたは突出部よりも低いことが望ましい。蓋部材4の高さが前述した範囲内に制限されると、第1の金属層5の高さ(厚さ)のばらつきにより蓋部材4の高さが変動してもパッケージの外形サイズに及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0020】
以下、本実施形態の気密封止パッケージの製造方法について説明する。図4は、図1に示す気密封止パッケージの製造方法を説明するための図である。
【0021】
まず、図4(a)に示す搭載工程が実施される。この搭載工程は、メタライズ層6a、7が形成された基板3に電子デバイス1を搭載し、電子デバイス1と基板3をワイヤ8で電気的に接続する工程である。
【0022】
次に、図4(b)に示す第1の金属層形成工程および第2の金属層形成工程が実施される。第1の金属層形成工程は、メタライズ層6a上に第1の金属層5を形成する工程である。具体的には、板状のはんだを載置して溶融させることによってメタライズ層6aの全周に第1の金属層5を付着させる。なお、本実施形態では、第1の金属層5は、メタライズ層6aに形成されているが、蓋部材4のメタライズ層6bに形成されていてもよい。
【0023】
一方、第2の金属層形成工程は、第1の金属層形成工程後に第2の金属層11をメタライズ層7上に載置する工程である。当該工程では、図4(b)に示すように、L字型の第2の金属層11が、第1の金属層5の外側を中断部7aを挟んで非連続的に囲む。このとき、第2の金属層11の外周縁は突出部10に当接しており、溶融していない。第2の金属層11は、載置支持部11aと、載置支持部11aの外側に位置し載置支持部11aよりも高さが外側支持部11bと、を備える。図4(b)に示すように、載置支持部11aの高さh2は、第1の金属層5の高さh1よりも高い。本実施形態では、金型成型によりL字型の第2の金属層11が形成される。しかし、第2の金属層11の形成方法は特に制限されない。
【0024】
図5は、第2の金属層形成工程後の基板3の平面図である。図5に示すように、第2の金属層11は、第1の金属層5の外側を非連続的に囲むように形成されている。また、後述する封止工程で溶融した第2の金属層11がメタライズ層7上で濡れ広がるために、この時点でメタライズ層7の平面に占める第2の金属層11の平面積は、非常に小さい。
【0025】
次に、図4(c)に示す載置工程が実施される。この載置工程は、蓋部材4を基板3に載置する工程である。この載置工程では、第2の金属層11の載置支持部11aが積層方向で蓋部材4に当接する。これにより、蓋部材4は、積層方向で載置支持部11aを介してメタライズ層7に支持される。また、第2の金属層11の外側支持部11bが、積層方向に直交する方向で蓋部材4の外周縁に当接する。これにより、蓋部材4は、積層方向に直交する方向にも外側支持部11bを介して基板3の突出部10に支持される。
【0026】
図6は、載置工程後の基板3および蓋部材4の平面図である。蓋部材4は、第1の金属層5に接触していない。そのため、第1の金属層5と蓋部材4との間に隙間12(図4(c)参照)が形成される。第2の金属層11を介して互いに積層された基板3および蓋部材4は、真空チャンバ20内に設置される。
【0027】
次に、排気工程が実施される。この排気工程は、突出部10の内周縁と蓋部材4の外周縁との隙間13から、中断部7a(図5参照)と、上述した隙間12を介して吸引して収容空間2内を排気する工程である。
【0028】
最後に図4(d)に示す封止工程が実施される。この封止工程では、真空チャンバ20内で、基板3を第2の金属層11の融点以上の温度で加熱する。このとき、第2の金属層11と融点が同じ第1の金属層5も溶融し始める。第2の金属層11は、自身の溶融に伴ってメタライズ層7上を濡れ広がる。これにより、載置支持部11aの高さh2が次第に低くなり、蓋部材4が基材3に向かって徐々に下降し始める。その後、蓋部材4に設けられたメタライズ層6bが、溶融した第1の金属層5でメタライズ層6aに接合される。その結果、電子デバイス1の収容空間2が真空状態で封止される。
【0029】
上述した本実施形態の製造方法では、第2の金属層形成工程において、載置支持部11aと外側支持部11bとを備えるL字型の第2の金属層11がメタライズ層7上に設置される。そして、載置工程において、基板3は、載置支持部11aを介して蓋部材4の内面を支持するだけでなく、外側支持部11bを介して蓋部材4の外周縁を支持する。そのため、蓋部材4の内面だけを支持する支持形態に比べて蓋部材4の位置ずれが起こりにくくなる。これにより、第1の金属層5と蓋部材4が正常に接合されるので、収容空間2の封止不良が起こりにくくなる。
【0030】
上述した本実施形態の気密封止パッケージ100では、メタライズ層7が環状に形成されている。そのため、メタライズ層7には、第2の金属層11の平面積よりもはるかに大きな平面積が確保されている。そのため、第2の金属層11の設置に関し、高い位置精度が要求されない。そのため、第2の金属層11をメタライズ層7上に設置するための設備について、設備費用を抑制することが可能となる。また、第2の金属層11が濡れ広がったときに、蓋部材4が第1の金属層5と確実に接合できるように第2の金属層11の高さを十分低くすることが可能となる。さらに、メタライズ層7を環状に形成することによって、基板3を大型化することなくメタライズ層7の広い平面積が確保されている。そのため、パッケージを大型化させることなく第1の金属層5で蓋部材4と基板3を確実に接合することが可能となる。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されない。つまり、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良をしたものも本願発明に含まれる。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ、置換ないし選択が可能である。
【0032】
例えば、上述した本実施形態の気密封止パッケージ100では、第2の金属層11の材料が、第1の金属層5の材料と同じであるが、本発明はこれに限定されない。第2の金属層11は、第1の金属層5よりも融点の高い材料で構成されていてもよい。具体的には、第1の金属層5がSnAg系はんだで構成され、第2の金属層11がSnSb系はんだで構成されていてもよい。この場合、排気工程は、第1の金属層5の材料の融点よりも高く第2の金属層11の材料の融点よりも低い温度環境下で行う。これにより、比較的高い温度で真空排気されるので、電子デバイス1の収容空間2が所定の真空度に達するまでの時間が短縮される。したがって、上記排気工程の時間短縮が可能となる。
【0033】
また、上述した本実施形態の気密封止パッケージ100では、電子デバイス1が赤外線検知デバイスであるが、本発明はこれに限定されない。電子デバイス1は、例えば水晶デバイスや焦電デバイスのように気密封止された状態でその機能を十分に発揮できるものであればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 赤外線検知デバイス
2 収容空間
3 基板
4 蓋部材
5 第1の金属層
6a、6b、7 メタライズ層
8 ワイヤ
9a、9b 支持部
10 突出部
11 第2の金属層
11a 載置支持部
11b 外側支持部
12 隙間
20 真空チャンバ
100 気密封止パッケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6