(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、第1実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、第1実施形態におけるエンドキャップの正面図及び背面図である。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)は、第1実施形態における潤滑剤容器の正面図、側面図及び背面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、第1実施形態における潤滑剤容器の背面図及び側面図である。なお、
図4(b)中の点線は潤滑剤容器の内部構造を示している。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)及び
図5(d)は、第1実施形態における潤滑剤容器の一方の蓋の側面図、正面図、他方の蓋の側面図及び正面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、第1実施形態における潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図(
図2(a)のA−A断面図)及び
図6(a)の部分拡大図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、第1実施形態におけるスライダ本体の側面図及びスライダ本体の端面を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態におけるサイドシールを示す図である。
【
図9】
図9(a)〜
図9(c)は、第1実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、第2実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図11】
図11(a)、
図11(b)及び
図11(c)は、第2実施形態における潤滑剤容器の正面図、側面図及び背面図である。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、第2実施形態における潤滑剤容器の断面図及び側面図である。なお、
図12(b)中の点線は潤滑剤容器の内部構造を示している。
【
図13】
図13(a)及び
図13(b)は、第2実施形態における潤滑剤容器に保持された潤滑部材を示す図及び潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図(第1実施形態の
図6(a)に相当する断面図)である。
【
図14】
図14(a)〜
図14(c)は、第2実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【
図15】
図15(a)及び
図15(b)は、第3実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図16】
図16(a)、
図16(b)及び
図16(c)は、第3実施形態における潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図、潤滑部材が変形する様子を示す図及び変形した潤滑部材が復元する様子を示す図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態における潤滑剤容器の背面図であり、凹部に潤滑部材及び押さえ部品を収容した様子を示している。
【
図18】
図18(a)〜
図18(c)は、第3実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【
図19】
図19(a)、
図19(b)及び
図19(c)は、第3実施形態の変形例において、潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図、潤滑部材が変形する様子を示す図及び変形した潤滑部材が復元する様子を示す図である。
【
図20】
図20(a)及び
図20(b)は、第4実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図21】
図21(a)、
図21(b)及び
図21(c)は、第4実施形態における潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図、潤滑部材が変形する様子を示す図及び変形した潤滑部材が復元する様子を示す図である。
【
図22】
図22(a)〜
図22(c)は、第4実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【
図23】
図23(a)、
図23(b)及び
図23(c)は、第4実施形態の変形例において、潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図、潤滑部材が変形する様子を示す図及び変形した潤滑部材が復元する様子を示す図である。
【
図24】
図24(a)及び
図24(b)は、第5実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図25】
図25は、第5実施形態における潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図である。
【
図26】
図26(a)〜
図26(c)は、第5実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【
図27】
図27は、第5実施形態の変形例において、潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図である。
【
図28】
図28(a)及び
図28(b)は、第6実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図29】
図29は、第6実施形態における潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図である。
【
図30】
図30(a)及び
図30(b)は、第6実施形態におけるエンドキャップの正面図及び背面図である。
【
図31】
図31(a)、
図31(b)及び
図31(c)は、第6実施形態における潤滑剤容器の正面図、背面図及び側面図である。なお、
図31(c)中の点線は潤滑剤容器の内部構造を示している。
【
図32】
図32(a)〜
図32(c)は、第6実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図である。
【
図33】
図33(a)〜
図33(c)は、第6実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【
図34】
図34(a)及び
図34(b)は、第7実施形態のリニアガイド装置の外観図及び側面図である。
【
図35】
図35(a)及び
図35(b)は、第7実施形態における潤滑剤容器をエンドキャップに取り付けた様子を示す図及び
図35(a)の部分拡大図である。
【
図36】
図36(a)及び
図36(b)は、第7実施形態におけるエンドキャップの正面図及び背面図である。
【
図37】
図37(a)、
図37(b)及び
図37(c)は、第7実施形態における潤滑剤容器の正面図、背面図及び側面図である。なお、
図37(c)中の点線は潤滑剤容器の内部構造を示している。
【
図38】
図38(a)及び
図38(b)は、第7実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図である。
【
図39】
図39(a)〜
図39(c)は、第7実施形態におけるスライダを組み立てる様子を順に示す図(スライダの端面及び側面を示す図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の各実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置を添付図面に基づいて説明する。
本明細書においては、リニアガイド装置の案内レールを水平にした状態において、案内レールの長手方向に対して水平方向へ直角に交差する方向を幅方向とし、長手方向及び幅方向に対して垂直に交差する方向を上下方向とする。また、案内レールの長手方向へ延在する上側の面、下側の面及び幅方向側の面をそれぞれ上面、下面及び側面とし、長手方向の端部側の面を端面とする。
【0012】
はじめに、本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置の全体的な構成について
図1を参照して説明する。
図1に示す本実施形態のリニアガイド装置1は、数値制御工作機や数値制御測定機等に好適なものであり、案内レール2と、案内レール2に沿って移動可能なスライダ3とからなる。
案内レール2は、略四角型の部材からなり、その両側面には長手方向へ延びる転動溝2aが2本ずつ形成されている。
スライダ3は、スライダ本体4と、スライダ本体4の長手方向(
図1(b)の左右方向)の両端部に、スライダ本体4側から順に取り付けられたエンドキャップ5、潤滑剤容器7、及びサイドシール8とからなる。
【0013】
スライダ本体4は、
図1(a)及び
図7に示すように、案内レール2の長手方向へ延在し断面が略コ字状をした金属製部材からなり、案内レール2に跨嵌されている。
図7(b)に示すように、スライダ本体4において案内レール2の両側面に対向する部分、即ち両側の脚部の内側面には、案内レール2の転動溝2aと対向して長手方向へ延びる転動溝4aが2本ずつ形成されている。
斯かるスライダ本体4の転動溝4aと案内レール2の転動溝2aとは、不図示の転動体の転動路を形成している。なお、この転動路には転動体として複数のボールが装填されている。
図7(b)に示すように、スライダ本体4の両側の脚部には、スライダ本体4の長手方向(
図7(b)の紙面垂直方向)へ貫通しており、断面が円形の戻し路4bが2本ずつ形成されている。また、スライダ本体4の両端面にはネジ穴11、12が2箇所ずつ形成されている。
【0014】
エンドキャップ5は、樹脂製の部材であって、
図2に示すように略コ字状をしている。エンドキャップ5の正面、即ちスライダ本体4側の面には、
図2(a)に示すように、断面が円形の方向転換路5aが両側の脚部に2箇所ずつ形成されている。方向転換路5aは、上記転動路と戻し路4bとを連通するものであり、
図6(a)に示すように半円弧状をしている。また、エンドキャップ5には、スライダ本体4のネジ穴11、12に対向する位置に、円形の貫通穴13、14がそれぞれ形成されている。なお、エンドキャップ5は樹脂製に限らず、金属製でもよい。
【0015】
上記構成により、スライダ3は複数の転動体が上記転動路内を転動することによって案内レール2上を直線運動することができる。なお、複数の転動体は転動路、方向転換路5a、及び戻し路4bを循環することが可能である。
サイドシール8は、
図8に示すように略コ字状をした樹脂製又はゴム製の板部材であって、案内レール2の両側面及び上面に跨嵌する形状をしている。斯かる形状のサイドシール8により、スライダ3を案内レール2上で直線運動させた際に、案内レール2の両側面や上面に付着している塵、埃、ゴミ等の異物を除去することができる。なお、サイドシール8には、スライダ本体4のネジ穴12に対向する位置に、円形の貫通穴9がそれぞれ形成されている。
【0016】
次に、本実施形態において最も特徴的なリニアガイド装置用給油装置の構成について説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、スライダ3内へ潤滑剤を給油するものであり、エンドキャップ5と、潤滑剤容器7と、後述する潤滑部材15とによって構成されている。
エンドキャップ5の方向転換路5aには、
図6(a)に示すように、スライダ3の長手方向(
図6(a)の左右方向)へ延びる円形の貫通孔16が形成されている(
図2(a)も参照。)。
【0017】
潤滑剤容器7は、潤滑部材15を保持するためのものであり、エンドキャップ5と略同じ外形をした樹脂製の厚板部材であって、
図3に示すように略コ字状をしている。
図4(a)に示すように、潤滑剤容器7の背面、即ちスライダ3の長手方向外側の面には、エンドキャップ5の4つの貫通孔16に対向する位置に、略立方体形状の空間を形成する凹部18がそれぞれ設けられている。
潤滑剤容器7の正面には、
図3(a)に示すように、4つの凹部18に対向し、かつエンドキャップ5の4つの貫通孔16に対向する位置に、筒状部19がそれぞれ一体的に形成されている。筒状部19は、
図6(a)に示すように、スライダ3の長手方向内側(
図6(a)の右方向)へ延びており、エンドキャップ5における方向転換路5aの貫通孔16に嵌合する円筒形状をしている。筒状部19内の円形開口(中空部)は、対向する凹部18の底面を貫通している。
なお、潤滑剤容器7には、スライダ本体4の2つのネジ穴12に対向する位置に、円形の貫通穴20がそれぞれ形成されている。
【0018】
潤滑剤容器7の凹部18には、
図6(a)に示すように、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる潤滑部材15が保持されている。潤滑部材15は、凹部18に嵌合する略立方体形状をしており、筒状部19の円形開口に嵌合する円柱状の突起部21が一体的に形成されている。即ち、潤滑部材15は、潤滑剤容器7の凹部18と筒状部19とによって形成される空間内に隙間なく充填されている。
潤滑部材15を保持した凹部18は、
図3(c)に示すように、潤滑剤容器7の背面側より蓋22が取り付けられて密封される。蓋22は、
図5に示すように、潤滑剤容器7と同じ樹脂製の板部材からなり、潤滑剤容器7の2つの凹部18を一度に密封するために長方形状をしている。なお、蓋22には、潤滑剤容器7の貫通穴20に対向する位置に円形の貫通穴23が形成されている。
【0019】
上記構成により、
図6(a)に示すように、潤滑部材15を保持した潤滑剤容器7をエンドキャップ5に取り付けた際に、エンドキャップ5の方向転換路5aの貫通孔16に潤滑剤容器7の筒状部19を嵌合させることができる。そして、潤滑剤容器7の筒状部19と該筒状部19の円形開口に嵌合した潤滑部材15の突起部21とを方向転換路5a内へ露呈させることができる。
ここで、スライダ本体4の長手方向(
図6の左右方向)における潤滑剤容器7の筒状部19と潤滑部材15の突起部21となる凸部21の長さは、筒状部19及び突起部21とエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝との間に段差が生じないようにそれぞれ設計されている。そして、潤滑剤容器7の筒状部19の先端面及び潤滑部材15の突起部21の先端面は、
図6(b)に示すようにエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝に沿った曲面形状にそれぞれ加工されている。
【0020】
以下、本実施形態におけるスライダ3の組み立て手順について
図9を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器7は、各凹部18に潤滑部材15を挿入し、背面側より蓋22を取り付けて密封しておく。
【0021】
手順1:
図9(a)に示すように、スライダ本体4の長手方向の両端部に、エンドキャップ5を方向転換路5aが形成された面(正面)を向けて配置する。そして、ネジ24をエンドキャップ5の貫通穴13を通してスライダ本体4のネジ穴11に固定する(貫通穴13及びネジ穴11は
図9において不図示)。これにより、スライダ本体4に対するエンドキャップ5の取り付けが達成される。
【0022】
手順2:
図9(b)に示すように、各エンドキャップ5に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器7を筒状部19が形成された面(正面)を向けて取り付ける(筒状部19は
図9において不図示)。このとき、エンドキャップ5の各貫通孔16に潤滑剤容器7の筒状部19をそれぞれ挿入させる。これにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器7の位置決めが達成される。
【0023】
手順3:
図9(c)に示すように、各潤滑剤容器7に対して、スライダ本体4の長手方向外側からサイドシール8を配置する。そして、ネジ26をサイドシール8の貫通穴9、潤滑剤容器7の蓋22の貫通穴23、潤滑剤容器7の貫通穴20、及びエンドキャップ5の貫通穴14を順に通してスライダ本体4のネジ穴12に固定する(貫通穴9、20及びネジ穴12は
図7において不図示)。これにより、スライダ本体4に対する潤滑剤容器7及びサイドシール8の取り付けが達成される。
【0024】
以上の組み立て手順により、スライダ3を容易に組み立てることができる。特に、手順2において、上述のようにエンドキャップ5の4つの貫通孔16に潤滑剤容器7の筒状部19をそれぞれ挿入することで、エンドキャップ5に対する潤滑剤容器7の位置決めを行うことができる。このため、手順3において、スライダ本体4に対して潤滑剤容器7をサイドシール8とともに共通のネジ26で容易に固定することができる。また、上述のように潤滑剤容器7の4つの凹部18に潤滑部材15がそれぞれ保持される構成であるため、潤滑剤容器7によって4つの潤滑部材15を一度に取り扱うことができる。このため、スライダ3の組み立てが容易になるだけでなく、スライダ3のメンテナンスも容易となる。また、潤滑部材15を個々に扱うことができるため、スライダ3へ偏りなく給油することができる。
【0025】
以上の組み立て手順に基づいて組み立てたスライダ3において、潤滑剤容器7の筒状部19の先端及び潤滑部材15の突起部21の先端は、
図6に示すようにエンドキャップ5の方向転換路5a内に貫通孔16から露呈し、この貫通孔16内に方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成している。より詳細には、潤滑剤容器7の筒状部19の先端面及び潤滑部材15の突起部21の先端面は、方向転換路5aの転動溝とともに単一の曲面を形成している。
この構成により、スライダ3を案内レール2上で直線運動させた際に、方向転換路5aを転動する転動体が潤滑部材15の突起部21の先端面に接触して潤滑剤を塗布されることにより、スライダ3内へ給油することができる。
【0026】
また、前述のように潤滑剤容器7の筒状部19の先端及び潤滑部材15の突起部21の先端が、方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成していることにより、転動体が方向転換路5a内をスムーズに転動することができる。このため、上記従来技術のように転動体が潤滑部材15に衝突し、潤滑部材15が破損してその破片が方向転換路5aと転動体との間に異物として入り込んでしまうようなことがない。また、上記従来技術のように方向転換路5aと潤滑部材15との間に段差が生じ、この段差に転動体が衝突してちどり走行するおそれもない。したがって、転動体と方向転換路5aの損傷を防ぎ、スライダ3の故障や動作不良を防止することができる。
【0027】
(第2実施形態)
図10に示す第2実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置100について、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、エンドキャップ5と、潤滑剤容器70と、潤滑部材150とによって構成されている。
【0028】
本実施形態における潤滑剤容器70には、上記第1実施形態における潤滑剤容器7の筒状部19に代えて、
図11(a)及び
図12(a)に示すように、4つの凹部18に対向し、かつエンドキャップ5の4つの貫通孔16に対向する位置に、該貫通孔16と同径の円形開口25がそれぞれ形成されている。
図13(a)に示すように、潤滑剤容器7の凹部18に保持される潤滑部材150は、凹部18に嵌合する略立方体形状をしており、スライダ30の長手方向内側(
図13(a)の右方向)へ延在し潤滑剤容器70の円形開口25から外部へ突き出る突起部210が一体的に形成されている。突起部210は、
図13(b)に示すように、潤滑剤容器70の円形開口25及びエンドキャップ5の貫通孔16に嵌合する円柱形状をしている。
【0029】
上記構成により、潤滑部材150を保持した潤滑剤容器70をエンドキャップ5に取り付けた際に、
図13(b)に示すように、エンドキャップ5の方向転換路5aの貫通孔16に潤滑部材150の突起部210を嵌合させることができる。そして、潤滑部材150の突起部210を方向転換路5a内へ露呈させることができる。
ここで、スライダ本体4の長手方向(
図13(b)の左右方向)における潤滑部材150の突起部210の長さは、該突起部210とエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝との間に段差が生じないように設計されている。そして、潤滑部材150の突起部210の先端面は、
図13(b)に示すようにエンドキャップ5の方向転換路5aの転動溝に沿った曲面形状に加工されている。
【0030】
以下、本実施形態におけるスライダ30の組み立て手順について
図14を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器70は、各凹部18に潤滑部材150を挿入し、背面側より蓋22を取り付けて密封しておく。
手順1:上記第1実施形態におけるスライダ3の組み立て手順の手順1と同様である(
図14(a)を参照。)。
【0031】
手順2:
図14(b)に示すように、各エンドキャップ5に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器70を円形開口25が形成された面(正面)を向けて取り付ける(円形開口25は
図12において不図示)。このとき、エンドキャップ5の各貫通孔16に潤滑部材150の突起部210をそれぞれ挿入させる。これにより、エンドキャップ5に対して潤滑剤容器70の位置決めが達成される。
手順3:上記第1実施形態におけるスライダ3の組み立て手順の手順3と同様である(
図14(c)を参照。)。
【0032】
以上の組み立て手順により、スライダ30を容易に組み立てることができる。特に、手順2において、前述のようにエンドキャップ5の4つの貫通孔16に潤滑部材150の突起部210をそれぞれ挿入することで、エンドキャップ5に対する潤滑剤容器70の位置決めを行うことができる。このため、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0033】
以上の組み立て手順に基づいて組み立てたスライダ30において、潤滑部材150の突起部210の先端が、
図13(b)に示すようにエンドキャップ5の方向転換路5a内に貫通孔16から露呈し、この貫通孔16内に方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成している。より詳細には、潤滑部材150の突起部210の先端面は、方向転換路5aの転動溝とともに単一の曲面を形成している。この構成により、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0034】
特に、本実施形態における潤滑剤容器70は、上記第1実施形態における潤滑剤容器7の筒状部19を有していないため、筒状部19の加工精度に起因して筒状部19の先端と方向転換路5aとの間に僅かなガタも生じるおそれがない。これにより、転動体が方向転換路5a内をよりスムーズに転動することができる。したがって、転動体と方向転換路5aの損傷を効果的に防ぎ、スライダ3の故障や動作不良を効果的に防止することができる。
【0035】
上記各実施形態では、エンドキャップ5の方向転換路5aの貫通孔16は円形であり、これに対応するように、第1実施形態では潤滑剤容器7の筒状部19を円筒形状とし、潤滑部材15の突起部21を円柱形状としている。また、第2実施形態では潤滑剤容器70に円形開口25を設け、潤滑部材150の突起部210を円柱形状としている。しかしこれに限られず、方向転換路5aの貫通孔16を例えば矩形とし、これに対応するように潤滑剤容器7、70及び潤滑部材15、150の各部を構成してもよい。
【0036】
また、上記各実施形態において潤滑剤容器7、70は、エンドキャップ5の方向転換路5aの4つの貫通孔16に対応して4つの潤滑部材15、150を備えている。しかしながらこれに限られず、例えば突起部21、210を2つ備えた潤滑部材を2つ用意し、この2つの潤滑部材を保持する2つの凹部を備えた潤滑剤容器を構成してもよい。
なお、潤滑剤容器7、70及び蓋22はともに樹脂製であるが、これに限られず金属製としてもよい。
【0037】
また、上記各実施形態では、潤滑剤容器7、70の各凹部18に、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる潤滑部材15、150を保持する構成である。しかしながらこれに限られず、潤滑剤容器7、70の各凹部18に、グリースや潤滑油等の潤滑剤そのものを保持する構成としてもよい。具体的には、第1実施形態では、潤滑剤容器7の凹部18と筒状部19とによって形成される空間内に潤滑剤を充填する構成としてもよい。また、第2実施形態では、潤滑剤容器70の凹部18、円形開口25、及びエンドキャップ5における方向転換路5aの貫通孔16によって形成される空間内に潤滑剤を充填する構成としてもよい。
【0038】
また、上記各実施形態では、潤滑部材15、150として潤滑剤を含浸した多孔質成形体を用いているが、これに限られず、潤滑部材15、150として弾性変形可能な多孔質成形体(以下、「多孔質弾性体」という)に潤滑剤を含浸したものを用いることもできる。これにより、方向転換路5aを走行する転動体が潤滑部材15、150に接触した際に、潤滑部材15、150が弾性変形することができる。このため、潤滑部材15、150の磨耗や方向転換路5a内への脱落を防止し、スライダ3の作動性の悪化や寿命の低下を防止することができる。
【0039】
上記各実施形態では、潤滑剤容器7、70の材料として合成樹脂、具体的には耐薬品性の高いポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)を用いることが好ましい。なお、エンドキャップ5は、スライダ本体4へ取り付けやすいように弾性のあるPOMを材料として用いることが好ましい。このため、潤滑剤容器7、70も、エンドキャップ5へ取り付けやすく、かつスライダ3、30が案内レール2と案内レール2との継ぎ目を通過する際に断続的に発生する微小振動を吸収できるようにPOMを材料として用いることが特に好ましい。
【0040】
また、上記各実施形態では、潤滑部材15、150の材料として高分子材料、特にポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンを用いることが好ましい。
ポリオレフィンは比重が1以下で軽量である。したがって、潤滑部材15、150をポリオレフィンで構成することにより、潤滑部材15、150から潤滑剤容器7、70へかかる負荷が小さくなるため、潤滑剤容器7、70に対して有効である。
また、ポリオレフィンは絶縁性が高い。したがって、スライダ3、30が案内レール2上を走行した時にエンドキャップ5の方向転換路5aと転動体との摩擦により静電気が生じた場合でも、ポリオレフィンで構成した潤滑部材15、150で絶縁することができる。このため、静電気によって潤滑剤容器7、70が破損してしまうことを防止することができる。
【0041】
図6(b)に示したように上記第1実施形態では、エンドキャップ5の方向転換路5aに露呈した潤滑剤容器7の筒状部19と潤滑部材15の突起部21は、方向転換路5aの転動溝と面一になっている。このため、潤滑部材15の突起部21は転動体が衝突しても破壊されることはない。POMは前述のように弾性があるため、潤滑部材15をPOMで構成すれば斯かる効果を最大限に発揮し、潤滑部材15を良好に保護することができる。なお、このことは上記第2実施形態における潤滑部材150の突起部210においても同様である。
また、
図6(b)に示したように潤滑剤容器7の筒状部19と潤滑部材15の突起部21とを嵌合させる構成の場合、軟質であるPEを潤滑部材15の材料に用いることで、筒状部19に突起部21を嵌めやすくなるので好ましい。なお、PEに剛性をもたせるために、PEにPPをコンパウンドすることがより好ましい。
【0042】
また、潤滑部材15、150のその他の材料として羊毛等の動物の毛、アラミド、ガラス、セルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、レーヨン等を用いることもできる。なお、潤滑部材15、150はフェルトにして使用することも可能である。
【0043】
(第3実施形態)
図15に示す第3実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置101について、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図16(a)に示すように、エンドキャップ5と、潤滑剤容器7と、潤滑部材151とによって構成されている。
【0044】
本実施形態における潤滑部材151は、
図16(a)に示すように、潤滑剤容器7の凹部18の底面に嵌合する厚板部151aと、厚板部151aに一体的に形成されており、潤滑剤容器7の筒状部19の中空部に嵌合する突起部211とからなる。厚板部151a及び突起部211は、潤滑剤を含浸した多孔質弾性体からなる。なお、突起部211の長さや形状は上記第1実施形態における潤滑部材15の突起部21と同様である。
【0045】
潤滑部材151は、
図16(a)に示すように、潤滑剤容器7の凹部18に挿入された後、押さえ部品41がさらに挿入されることで凹部18内での位置が固定される。押さえ部品41は、
図17に示すように凹部18の側壁に内嵌する略角型の筒状部材であって、多孔質成形体からなる。潤滑部材151と押さえ部品41が挿入された凹部18には、潤滑剤42が隙間なく充填され、潤滑剤容器7の背面側より蓋22が取り付けられて密封される。なお、押さえ部品41の材料は多孔質成形体に限られない。
【0046】
以上の構成の下、本実施形態のリニアガイド装置101は、上記第1実施形態と同様の組み立て手順によってスライダ31を容易に組み立てることができ(
図18(a)〜
図18(c)を参照。)、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
前述のように、潤滑部材151は多孔質弾性体からなる。このため、
図16(a)に示すように方向転換路5aを走行する転動体43が潤滑部材151の突起部211の先端面に接触し、当該先端面が転動体43から力を受けた際に、潤滑部材151は
図16(b)に示すように弾性変形することができる。詳細には、潤滑部材151の厚板部151aがスライダ31の長手方向外側(
図16(b)の左方向)へ撓み、突起部211が潤滑剤容器7の筒状部19内へ押し込まれる。このとき、潤滑部材151は潤滑剤容器7の凹部18内で押さえ部品41によって位置が固定されているため、位置ずれが生じることはない。斯かる構成により、潤滑部材151、特に突起部211の磨耗、損傷、及び方向転換路5a内への脱落を防止することができ、スライダ31の作動性の悪化や寿命の低下を効果的に防止することができる。なお、方向転換路5aを走行する転動体43が潤滑部材151の突起部211の先端面を通過した後は、潤滑部材151は
図16(c)に示すように元の形状に復元する。
【0048】
また、前述のように、押さえ部品41は多孔質成形体からなる。このため、スライダ31への給油に伴い潤滑剤容器7の凹部18内の潤滑剤42が減少し、潤滑剤42と潤滑部材151が直接接触できない状態になった場合でも、スライダ31の姿勢にかかわらず押さえ部品41を介して潤滑剤42を潤滑部材151へ導くことができる。このため、凹部18内の潤滑剤42がなくなるまで、スライダ31への給油をより長期間安定して続けることができる。
【0049】
なお、本実施形態における潤滑部材151、押さえ部品41及び潤滑剤42は、上記第2実施形態のリニアガイド装置100に適用することもできる(
図19(a)〜
図19(c)を参照。)。
また、本実施形態では潤滑剤容器7の凹部18に潤滑部材151と押さえ部品41が挿入された後、潤滑剤42が隙間なく充填される。しかしこれに限られず、潤滑剤42の代わりに潤滑剤を含浸した多孔質成形体や潤滑剤を含浸した多孔質弾性体を凹部18に隙間なく配置する構成としてもよい。なおこのことは、後述する第4実施形態においても同様である。
【0050】
(第4実施形態)
図20に示す第4実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置102について、上記第2、第3実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図21(a)に示すように、エンドキャップ5と、潤滑剤容器70と、潤滑部材152とによって構成されている。
【0051】
本実施形態における潤滑部材152は、
図21(a)に示すように、潤滑剤容器70の凹部18の底面に嵌合する厚板部152aと、スライダ32の長手方向内側(
図21(a)の右方向)へ延在し潤滑剤容器70の円形開口25から外部へ突き出る突起部212とからなる。厚板部152aは潤滑剤を含浸した多孔質弾性体からなり、突起部212は厚板部152aよりも空孔率の小さい多孔質弾性体からなる。なお、突起部212の長さや形状は上記第2実施形態における潤滑部材150の突起部210と同様である。
【0052】
潤滑部材152は、
図21(a)に示すように、潤滑剤容器70の凹部18に挿入された後、押さえ部品41がさらに挿入されることで凹部18内での位置が固定される。そして、潤滑部材152と押さえ部品41が挿入された凹部18には、潤滑剤42が隙間なく充填され、潤滑剤容器70の背面側より蓋22が取り付けられて密封される。
【0053】
以上の構成の下、本実施形態のリニアガイド装置102は、上記第2実施形態と同様の組み立て手順によってスライダ32を容易に組み立てることができ(
図22(a)〜
図22(c)を参照。)、上記第2、第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0054】
前述のように、潤滑部材152の厚板部152aは潤滑剤を含浸した多孔質弾性体からなり、突起部212は厚板部152aよりも空孔率の小さな多孔質弾性体からなる。このため、突起部212は潤滑剤を保持できる単位体積当たりの量が厚板部152aよりも小さい。この構成により、厚板部152aは潤滑剤を保持する保持部として機能することができる。また、突起部212は、厚板部152aに保持されている潤滑剤がエンドキャップ5の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布する塗布部として機能することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態における潤滑部材152、押さえ部品41及び潤滑剤42は、上記第1実施形態のリニアガイド装置1に適用することもできる(
図23(a)〜
図23(c)を参照。)。また、突起部212の材料は多孔質弾性体に限られず、厚板部152aよりも空孔率の小さな多孔質成形体としてもよい。
【0056】
(第5実施形態)
図24に示す第5実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置103について、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図25に示すように、エンドキャップ5と、潤滑剤容器73と、潤滑部材153とによって構成されている。
【0057】
本実施形態における潤滑部材153は、
図25に示すように、上記第1実施形態における潤滑部材15の突起部21をテーパー形状にしたものである。即ち、潤滑部材153の突起部213は、根元から先端へ向かって直径が小さくなっている。
潤滑剤容器73は、
図25に示すように、上記第1実施形態における潤滑剤容器7の筒状部19内の中空部を、潤滑部材153の突起部213が嵌合できるようにテーパー形状にしたものである。
【0058】
斯かる構成の下、本実施形態のリニアガイド装置103は、上記第1実施形態と同様の組み立て手順によってスライダ33を容易に組み立てることができ(
図26(a)〜
図26(c)を参照。)、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0059】
前述のように、潤滑部材153は突起部213がテーパー形状をしている。このため、潤滑剤がエンドキャップ5の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0060】
なお、潤滑部材153の材料は多孔質成形体に限られず、多孔質弾性体としてもよい。これにより、上記第3実施形態のリニアガイド装置101と同様に、潤滑部材153、特に突起部213の磨耗や損傷を防止し、スライダ33の作動性の悪化や寿命の低下を効果的に防止することができる。
また、本実施形態における潤滑部材153は、上記第2実施形態のリニアガイド装置100に適用することもできる(
図27を参照。)。この場合、第2実施形態における潤滑剤容器70の円形開口25及びエンドキャップ5の貫通孔16を潤滑部材153の突起部213が嵌合できるようにテーパー形状とする。
【0061】
(第6実施形態)
図28に示す第6実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置104について、上記第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図29に示すように、エンドキャップ54と、潤滑剤容器74と、潤滑部材154とによって構成されている。
【0062】
本実施形態におけるエンドキャップ54は、
図29及び
図30に示すように、方向転換路5aにスライダ34の長手方向(
図29の左右方向)へ延びる円形の貫通孔164が3つ並んで形成されている。なお、3つの貫通孔164の直径はいずれも同じ大きさである。また、3つの貫通孔164が並ぶ方向(
図29(a)中のC方向)は、
図29(a)において方向転換路5aが延びる方向(
図29(a)中のD方向)に対して傾いている。なお、エンドキャップ54の4つの方向転換路5aに貫通孔164が3つずつ形成されているため、貫通孔164の合計数は12である。
【0063】
潤滑剤容器74は、上記第2実施形態における潤滑剤容器70の円形開口25に代えて、
図29及び
図31に示すように、エンドキャップ54の12個の貫通孔164に対向する位置に、該貫通孔164と同径の円形開口254がそれぞれ形成されている。そして、潤滑剤容器74は、
図29及び
図31(a)に示すように、潤滑剤容器74の正面、即ちスライダ34の長手方向内側の面であって、各円形開口254に対向する位置に円形凹部44がそれぞれ設けられている。円形凹部44は、後述するOリング45を嵌め込むための凹部であって、円形開口254と同芯かつ円形開口254よりも大径である。斯かる構成の潤滑剤容器74の凹部18には、潤滑剤42が隙間なく充填され、背面側より蓋22が取り付けられる。
【0064】
潤滑部材154は、
図29に示すように、エンドキャップ54の貫通孔164に嵌合可能な円柱形状をしており、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる。潤滑部材154の一方の先端面は、上記第2実施形態における潤滑部材150の突起部210の先端面と同様に、エンドキャップ54の方向転換路5aの転動溝に沿った曲面形状に加工されている。
なお、潤滑部材154の長さは、後述するように潤滑部材154にOリング45を装着してエンドキャップ54の貫通孔164に挿入した際に、潤滑部材154とエンドキャップ54の方向転換路5aの転動溝との間に段差が生じないように設計されている。具体的には、潤滑部材154の長さは、エンドキャップ54の貫通孔164の長さよりもOリング45の厚み分だけ大きく設計されている。
【0065】
以下、本実施形態におけるスライダ34の組み立て手順について
図32及び
図33を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器74は、各凹部18に潤滑剤42を充填し、背面側より蓋22を取り付けておく。
手順1:
図32(a)に示すように、樹脂製で断面が円形のOリング45に潤滑部材154を挿入する。そして、潤滑部材154の上述した曲面形状に加工された先端面と反対側の端部にOリング45を配置する。
【0066】
手順2:
図32(b)に示すように、Oリング45を装着した潤滑部材154をエンドキャップ54の各貫通孔164に挿入する。これにより、潤滑部材154の先端は、エンドキャップ54の方向転換路5a内に貫通孔164から露呈し、この貫通孔164内に方向転換路5aの転動溝に沿って曲面を形成する。即ち、潤滑部材154の先端面は、方向転換路5aの転動溝とともに単一の曲面を形成する。
手順3:上記第2実施形態におけるスライダ30の組み立て手順の手順1と同様である(
図33(a)を参照。)。
【0067】
手順4:
図33(b)に示すように、各エンドキャップ54に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器74を円形凹部44が形成された面(正面)を向けて取り付ける(円形凹部44は
図33において不図示)。このとき、
図32(c)に示すように、潤滑剤容器74の各円形凹部44に、エンドキャップ54の各貫通孔164に挿入された潤滑部材154のOリング45を嵌め込む。これにより、エンドキャップ54に対して潤滑剤容器74の位置決めが達成される。
手順5:上記第2実施形態におけるスライダ30の組み立て手順の手順3と同様である(
図33(c)を参照。)。
【0068】
本実施形態のリニアガイド装置104は、以上の組み立て手順によってスライダ34を容易に組み立てることができ、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0069】
前述のように、エンドキャップ54の各方向転換路5aに貫通孔164が3つずつ設けられている。このため、方向転換路5aを走行するそれぞれの転動体に対して3箇所ずつ潤滑剤を塗布することができ、スライダ34内への給油を安定して行うことができる。
【0070】
特に、
図30に示し前述したように、エンドキャップ54の方向転換路5aの3つの貫通孔164が並ぶ方向(
図29(a)中のC方向)は、
図29(a)において方向転換路5aが延びる方向(
図29(a)中のD方向)に対して傾いている。このため、方向転換路5aを走行する転動体に対して、方向転換路5aが延びる方向(
図29(a)中のD方向)に垂直な方向において位置が異なる3箇所に潤滑剤を塗布することができ、スライダ34内への給油をより安定して行うことができる。
【0071】
なお、エンドキャップ54の方向転換路5aの貫通孔164の数は3つに限られない。例えば、各方向転換路5aに2つ又は4つ以上の貫通孔164を設け、潤滑部材154と潤滑剤容器74を当該貫通孔164の数に対応した構成としてもよい。
【0072】
また、前述のように、潤滑剤容器74の各円形凹部44にはOリング45が嵌め込まれている。このため、エンドキャップ54の方向転換路5aを走行する転動体が潤滑部材154の先端面に接触し、当該先端面が転動体から力を受けた際に、この力をOリング45の弾性によって解消することができる。この構成により、潤滑部材154の磨耗、損傷、及び方向転換路5a内への脱落を防止することができ、スライダ34の作動性の悪化や寿命の低下を効果的に防止することができる。
【0073】
また、潤滑剤容器74の各円形凹部44に嵌め込まれたOリング45により、潤滑剤容器74の円形開口254とエンドキャップ54の貫通孔164の繋ぎ目部分から潤滑剤が漏洩することを防止できる。したがって、当該繋ぎ目部分から漏洩した潤滑剤がスライダ34やその周辺を汚染することを防止できるとともに、潤滑剤を不必要に消費することも防止できる。
【0074】
(第7実施形態)
図34に示す第7実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置を備えたリニアガイド装置105について、上記第6実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るリニアガイド装置用給油装置は、
図35(a)に示すように、エンドキャップ55と、潤滑剤容器75と、潤滑部材155とによって構成されている。
【0075】
本実施形態における潤滑剤容器75は、
図35(a)及び
図37に示すように、上記第6実施形態における潤滑剤容器74から円形凹部44を排除したものである。
【0076】
エンドキャップ55は、
図35(a)、
図36及び
図38(b)に示すように、上記第6実施形態のエンドキャップ54において、各貫通孔164の方向転換路5a側の端部に大径部46を設けたものである。大径部46は、後述するチューブ47を収納するための円形の凹部であって、貫通孔164と同芯かつ貫通孔164よりも大径である。
【0077】
潤滑部材155は、
図35に示すように、潤滑剤容器75の円形開口254及びエンドキャップ55の貫通孔164に嵌合可能な円柱形状をしており、潤滑剤を含浸した多孔質成形体からなる。潤滑部材155は、潤滑剤容器75の凹部18の底面からエンドキャップ55の大径部46内まで延在する長さに設計されている。
【0078】
潤滑部材155の先端には、
図35及び
図38(b)に示すように円筒状のチューブ47が外嵌されている。チューブ47は、潤滑部材155を構成する多孔質成形体と同様に潤滑剤を含浸可能で、かつ弾性変形可能な高分子材料からなる。チューブ47の先端は、エンドキャップ55の方向転換路5aの転動溝に沿った形状に加工されている。なお、チューブ47の長さは、エンドキャップ55の大径部46の長さよりもわずかに長く設計されている。本実施形態では斯かる構成のチューブ47が、潤滑部材75に保持されている潤滑剤42をエンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体に塗布する塗布部として機能する。
【0079】
以下、本実施形態におけるスライダ35の組み立て手順について
図38及び
図39を参照して説明する。
なお、予め潤滑剤容器75は、各凹部18に潤滑剤42を充填し、背面側より蓋22を取り付けておく。
手順1:
図38(a)に示すように、潤滑部材155の一端にチューブ47を装着する。
【0080】
手順2:
図38(b)に示すように、チューブ47を装着した潤滑部材155をエンドキャップ55の各貫通孔164に背面側より挿入する。これにより、チューブ47が貫通孔164の大径部46に収納されるとともに、チューブ47の先端がエンドキャップ55の方向転換路5a内にわずかに突出する。このとき、チューブ47の先端は、上述のように方向転換路5aの転動溝に沿った形状であるため、転動溝に沿ってわずかに方向転換路5a内に突出した状態となる。
手順3:上記第6実施形態におけるスライダ34の組み立て手順の手順3、即ち上記第2実施形態におけるスライダ30の組み立て手順の手順1と同様である(
図39(a)を参照。)。
【0081】
手順4:
図39(b)に示すように、各エンドキャップ55に対して、スライダ本体4の長手方向外側から、潤滑剤容器75を円形開口254が形成された面(正面)を向けて取り付ける(円形開口254は
図39において不図示)。このとき、潤滑剤容器75の各円形開口254に、エンドキャップ55の各貫通孔164に取り付けられた潤滑部材155を挿入する。これにより、エンドキャップ55に対して潤滑剤容器75の位置決めが達成される。
手順5:上記第6実施形態におけるスライダ34の組み立て手順の手順5、即ち上記第2実施形態におけるスライダ30の組み立て手順の手順3と同様である(
図39(c)を参照。)。
【0082】
本実施形態のリニアガイド装置105は、以上の組み立て手順によってスライダ35を容易に組み立てることができ、上記第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0083】
前述のように、チューブ47は弾性変形可能な高分子材料からなり柔軟性が高い。このため、上記手順2においてチューブ47を装着した潤滑部材155を、エンドキャップ55に設けられた径の小さな貫通孔164に対して、チューブ47を弾性変形させながら簡単に挿入することができる。
【0084】
また、本実施形態においてチューブ47の先端は、
図35b(b)に示すようにエンドキャップ55の方向転換路5aの転動溝に沿いながらわずかに方向転換路5a内に突出している。この構成により、エンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体に対して、転動体の走行を妨げることなく潤滑剤を確実に塗布することができる。なお、チューブ47は、前述のように柔軟性が高く弾性変形可能であるため、エンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体が衝突した際に、衝撃を吸収することができ破損もしにくい。
【0085】
また、前述のように本実施形態はエンドキャップ55の方向転換路5aを走行する転動体に円筒状のチューブ47を接触させて潤滑剤を塗布する構成である。このため、潤滑剤がエンドキャップ55の方向転換路5a内へ流出することを防止しながら、適量の潤滑剤を転動体に塗布することができる。したがって、潤滑剤を短期間に大量消費することを抑え、給油を長期間安定して行うことができる。
【0086】
なお、チューブ47の材料には、ポリオレフィン、ウレタン、フッ素樹脂、塩化ビニル等の高分子材料、中でもポリオレフィンを用いることが好ましい。ポリオレフィンは上述のように比重が1以下で軽量である。したがって、チューブ47をポリオレフィンで構成することにより、潤滑部材155から潤滑剤容器75へかかる負荷が小さくなるため、潤滑剤容器75に対して有効である。
【0087】
また、ポリオレフィンは上述のように絶縁性が高い。したがって、スライダ35が案内レール2上を走行した時にエンドキャップ55の方向転換路5aと転動体との摩擦により静電気が生じた場合でも、ポリオレフィンで構成したチューブ47と潤滑部材155で絶縁することができる。このため、静電気によって潤滑剤容器75が破損してしまうことを防止することができる。
【0088】
また、ポリオレフィンのうち、ポリエチレンは軟質である。このため、チューブ47の材料にポリエチレンを用いれば、上記手順2においてチューブ47を装着した潤滑部材155をエンドキャップ55の貫通孔164により簡単に挿入することができる。なお、ポリエチレンに剛性をもたせるために、ポリエチレンにポリプロピレンをコンパウンドすることがより好ましい。
【0089】
また、上記各実施形態のリニアガイド装置用給油装置は、スライダ本体4の両端部に備えられているが、これに限られずスライダ本体4の一方の端部のみに備える構成としてもよい。
また、上記各実施形態では、転動体としてボールを備えたリニアガイド装置1、100〜105を示しているが、これに限られず、転動体としてころを備えたリニアガイド装置を構成することもできる。