特許第6384093号(P6384093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384093
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】地震計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/28 20060101AFI20180827BHJP
   G07F 9/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G01V1/28
   G07F9/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-75599(P2014-75599)
(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-197375(P2015-197375A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直之
(72)【発明者】
【氏名】坂上 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3176590(JP,U)
【文献】 特開2007−298448(JP,A)
【文献】 特開平09−105665(JP,A)
【文献】 特開2002−243531(JP,A)
【文献】 特開2003−344550(JP,A)
【文献】 特開平11−231064(JP,A)
【文献】 特開2000−266859(JP,A)
【文献】 特開2013−224869(JP,A)
【文献】 特開2006−337191(JP,A)
【文献】 特開平06−324160(JP,A)
【文献】 特開昭60−254211(JP,A)
【文献】 特開2012−037436(JP,A)
【文献】 米国特許第06265979(US,B1)
【文献】 気象庁告示第4号,気象業務法施行規則,1986年 2月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−15/00
G07F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動販売機に設けられた地震計測装置であって、
前記自動販売機に設けられ、予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度からなる三次元加速度を検出する加速度センサと、
前記自動販売機における前記予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々と、前記自動販売機の設置箇所における前記予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々との比を補正係数として記憶する記憶装置と、
前記加速度センサで検出された三次元加速度の各加速度をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
前記フーリエ変換部でフーリエ変換された三次元加速度の各加速度を前記補正係数で補正する補正部と、
前記補正部で補正された三次元加速度の各加速度に対し、地震波の周期による影響を補正するための予め設定されたフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理が施された三次元加速度の各加速度を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、
前記逆フーリエ変換された三次元加速度の各加速度をベクトル的に合成する加速度合成部と、
前記合成されたベクトル波形から予め設定された算出方法によって計測震度を算出する震度算出部と
を備え
前記記憶装置は、前記比に関して、前記自動販売機の圧縮機が作動中の比と前記圧縮機が非作動中の比とを記憶し、
前記補正部は、前記自動販売機の圧縮機が作動しているときには前記記憶装置に記憶されている前記圧縮機が作動中の比を補正係数として用い、前記自動販売機の圧縮機が作動していないときには前記記憶装置に記憶されている前記圧縮機が非作動中の比を補正係数として用いることを特徴とする地震計測装置。
【請求項2】
地震発生検出時に前記圧縮機の作動状態を保持し、地震振動終了時に前記圧縮機作動状態の保持を解除することを特徴とする請求項に記載の地震計測装置。
【請求項3】
前記震度算出部で算出された計測震度をネットワークを通じて通信することを特徴とする請求項1又は2に記載の地震計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の震度を算出する地震計測装置に関するものであり、例えば高密度な多地点の震度情報を広範囲にわたって取得するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
地震発生時には、その情報をできるだけ広範囲に且つ早期に知らしめることが重要である。そのため、地震情報を例えばテレビジョン放送に重畳して送信するといった対応がなされている。しかしながら、テレビジョン放送は、一般的に屋内で視聴するものであり、地震を感知しにくい屋外では、テレビジョン放送に重畳された地震情報を取得しにくいという問題がある。そこで、例えば下記特許文献1に記載される災害情報端末装置では、自動販売機にディスプレイやスピーカを設け、それらから地震情報を報知することで、屋外の人々に対し、広範囲に且つ早期に地震情報を知らしめるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−11500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地震による震度は、例えば100mという比較的短い距離でも、場所によって異なることが分かってきている。従って、これからは高密度な多地点の震度情報を広範囲にわたって取得することが重要と考えられる。そのためには、前記特許文献1と同様に、自動販売機に地震計を取付けることが考えられる。しかしながら、現状の地震計は極めて複雑で且つ高価であることから、安易に自動販売機に取付けられるものでもないし、また容易に普及するものでもない。
本発明はこれらの諸問題を解決すべくなされたものであり、簡易な構造にして、高密度な多地点の震度情報を広範囲にわたって取得することが可能な地震計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明のある態様に係る地震計測装置は、自動販売機に設けられた地震計測装置であって、前記自動販売機に設けられ、予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度からなる三次元加速度を検出する加速度センサと、前記自動販売機における前記予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の補正係数を記憶する記憶装置と、前記加速度センサで検出された三次元加速度の各加速度をフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記フーリエ変換部でフーリエ変換された三次元加速度の各加速度を前記補正係数で補正する補正部と、前記補正部で補正された三次元加速度の各加速度に対し、地震波の周期による影響を補正するための予め設定されたフィルタ処理を施すフィルタ処理部と、前記フィルタ処理が施された三次元加速度の各加速度を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換部と、前記逆フーリエ変換された三次元加速度の各加速度をベクトル的に合成する加速度合成部と、前記合成されたベクトル波形から予め設定された算出方法によって計測震度を算出する震度算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
また、この地震計測装置において、前記記憶装置は、前記自動販売機における前記予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々と前記自動販売機の設置箇所における前記予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々との比を補正係数として記憶することが望ましい。
また、この地震計測装置において、前記記憶装置は、前記比に関して、前記自動販売機の圧縮機が作動中の比と前記圧縮機が非作動中の比とを記憶し、前記補正部は、前記自動販売機の圧縮機が作動しているときには前記記憶装置に記憶されている前記圧縮機が作動中の比を補正係数として用い、前記自動販売機の圧縮機が作動していないときには前記記憶装置に記憶されている前記圧縮機が非作動中の比を補正係数として用いることが望ましい。
また、この地震計測装置において、地震発生検出時に前記圧縮機の作動状態を保持し、地震振動終了時に前記圧縮機作動状態の保持を解除することが望ましい。
また、この地震計測装置において、前記震度算出部で算出された計測震度をネットワークを通じて通信することが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
而して、本発明の地震計測装置によれば、自動販売機に設けられた加速度センサによって、予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度からなる三次元加速度を検出する。一方、各自動販売機において、予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の補正係数を記憶装置に記憶する。そして、加速度センサで検出された三次元加速度の各加速度をフーリエ変換部でフーリエ変換する。補正部は、フーリエ変換された三次元加速度の各加速度を、記憶装置に記憶された補正係数で補正する。このように補正された三次元加速度の各加速度に対し、地震波の周期による影響を補正するための予め設定されたフィルタ処理をフィルタ処理部で施し、フィルタ処理が施された三次元加速度の各加速度を逆フーリエ変換部で逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換された三次元加速度の各加速度をベクトル的に加速度合成部で合成し、合成されたベクトル波形から震度算出部で予め設定された算出方法によって計測震度を算出する。そのため、簡易な構造にして、自動販売機設置箇所の震度を取得することができることから、高密度な多地点の震度を広範囲にわたって取得することができる。なお、三次元加速度データの夫々をフーリエ変換し、地震波の周期による影響をフィルタ処理で補正し、逆フーリエ変換された三次元加速度データをベクトル的に合成し、予め設定された算出方法で震度を算出する過程は、気象庁によって規定された震度算出過程である。
【0008】
また、自動販売機における予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々と自動販売機の設置箇所における予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々との比を補正係数として記憶する。自動販売機で検出される水平直交二方向及び鉛直方向の各加速度と自動販売機設置箇所で検出される水平直交二方向及び鉛直方向の各加速度とには、周波数帯域毎に特定の比が存在する。そのため、フーリエ変換された三次元加速度の各加速度を、自動販売機で検出される加速度と自動販売機設置箇所で検出される加速度との比で補正すれば、自動販売機設置箇所の震度を適正に算出することが可能となる。
【0009】
また、自動販売機の圧縮機が作動中の三次元加速度の比と圧縮機が非作動中の三次元加速度の比とを記憶し、自動販売機の圧縮機が作動しているときには圧縮機が作動中の比を補正係数として用い、自動販売機の圧縮機が作動していないときには圧縮機が非作動中の比を補正係数として用いる。自動販売機の圧縮機が作動しているときと作動していないときとでは、自動販売機で検出される三次元加速度と自動販売機設置箇所で検出される三次元加速度との比が異なる。そのため、フーリエ変換された三次元加速度を補正するに際し、自動販売機の圧縮機が作動しているときには圧縮機が作動中の比を補正係数として用い、圧縮機が作動していないときには圧縮機が非作動中の比を補正係数として用いることで、自動販売機設置箇所の震度をより適正に算出することが可能となる。
また、地震発生検出時に圧縮機の作動状態を保持し、地震振動終了時に圧縮機作動状態の保持を解除することにより、震度算出処理環境を維持することができ、算出震度の確度を向上することができる。
また、算出された計測震度をネットワークを通じて通信することにより、避難経路や地域のどこに避難すべきかといった情報を、早期に且つ広範囲に知らしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の地震計測装置の一実施形態を示すネットワーク概略構成図である。
図2図1の自動販売機における商品冷却加熱装置の概略構成図である。
図3図1の自動販売機における制御装置のブロック図である。
図4図3の地震震度演算部で行われる演算処理のフローチャートである。
図5】自動販売機で検出される加速度と自動販売機設置箇所で検出される加速度の説明図である。
図6】自動販売機で検出される幅方向加速度の説明図である。
図7】自動販売機で検出される奥行き方向加速度の説明図である。
図8】自動販売機で検出される高さ方向加速度の説明図である。
図9】予め規定されている地震の周期による影響を補正するフィルタ処理の説明図である。
図10】合成された加速度データの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の地震計測装置の一実施形態を示すネットワーク概略構成図である。このネットワークは、データセンター1と複数の無線基地局2とを光ファイバーケーブル3で接続し、各無線基地局2と複数又は単一の自動販売機4とが無線LANで接続されている。本実施形態の地震計測装置は、このネットワークに無線LANで接続される各自動販売機4に設けられている。なお、ネットワークの端末である自動販売機4同士が相互に通信できるようにすることも可能である。また、以下の説明では、ネットワークに接続される全ての自動販売機4を同一のものとしているが、勿論、個々の自動販売機は個別のものであって構わない。
【0012】
自動販売機4自体は、既存の自動販売機と同等のものである。このような自動販売機4としては、例えば本出願人が先に提案した特許第4985751号公報に記載されるものがある。図2は、前記特許公報に記載される自動販売機4の商品冷却加熱装置であり、例えば区画された3つの商品収容庫5a〜5cのうち、商品収容庫5aでは商品を専ら冷却し、残りの2つの商品収容庫5b、5cでは商品の冷却と加熱を切換えることができるように構成されている。
自動販売機4内において商品収容庫5a〜5cの下方に設けられた機械室6には、冷媒を圧縮する圧縮機(コンプレッサー)7、図示しないガスクーラファンを備えて、圧縮機7で圧縮された冷媒を冷却するガスクーラ8、ガスクーラ8で冷却された冷媒を用いて後述する蒸発器内の冷媒と熱交換を行う内部熱交換器9の他、後述する蒸発器用のバルブ10a〜10c、図示しない膨張弁やキャピラリチューブなども配置されている。商品冷却専用の商品収容庫5aには、エジェクタ11や気液分離器12と共に、図示しない蒸発器ファンを備えた第1蒸発器13aが配置されている。また、加熱冷却切換え可能な商品収容庫5b、5cには、夫々、図示しない蒸発器ファンを備えた第2蒸発器13b、第3蒸発器13cが配置され、各蒸発器13b、13cの夫々にはヒーター14が設けられている。
【0013】
図3は、自動販売機4内に設けられた制御装置のブロック図である。図に示す制御装置のうち、冷媒回路制御部15については、前記特許公報に記載されるものとほぼ同様であるから、その構成について簡潔に説明するに留め、作用については説明を省略する。冷媒回路制御部15は、マイクロコンピュータのような演算処理装置で構成され、冷媒回路用メモリ16に格納されたプログラムやデータに従って、前述した圧縮機7や、バルブ10a〜10c、各蒸発器13a〜13cに設けられた蒸発器ファン17a〜17c、ガスクーラ8に設けられたガスクーラファン18の作動状態を制御する。一方、これらを制御するための制御入力として、例えば圧縮機7とガスクーラ8の間や、エジェクタと気液分離器12の間、或いは膨張弁と各蒸発器13a〜13cの間に設けられた圧力センサ19、ガスクーラ8の出口に設けられたガスクーラ出口温度センサ20、外気温度を検出する外気温度センサ21、各蒸発器13a〜13cの入口に設けられた蒸発器入口温度センサ22a〜22c、各蒸発器13a〜13cの出口に設けられた蒸発器出口温度センサ23a〜23c、区画された3つの商品収容庫5a〜5cの夫々に設けられた庫内温度センサ24a〜24c、及び内部熱交換器9の出口に設けられた内部熱交換器出口温度センサ25を備えている。
【0014】
本実施形態では、この制御装置内部に地震震度演算部26を配置している。この地震震度演算部26も、マイクロコンピュータのような演算処理装置で構成され、震度演算用メモリ27に格納されたプログラムやデータに従って、自動販売機4が設置されている箇所の震度を算出する。また、この地震震度演算部26は、冷媒回路制御部15や同じく制御装置内に設けられた無線送受信部28と相互通信を行い、無線送受信部28を介して前記無線基地局2と無線LAN通信を行う。無線LAN通信では、例えばデータセンター1から地震の発生を受信したり、後述するようにして算出した地震の震度を無線基地局2に送信したりする。また、例えば各無線基地局2で受信された各自動販売機4の設置箇所の震度情報はデータセンター1に送信され、震度マップの作成や避難経路の導出などに使用される。
【0015】
本実施形態では、自動販売機4の設置箇所における地震の震度を計測するために、自動販売機4に加速度センサ29a〜29cを配置している。本実施形態の加速度センサは、予め設定された水平一方向、例えば自動販売機4の幅方向への加速度を検出する第1水平加速度センサ29aと、前記水平一方向と直交する水平他方向、例えば自動販売機4の奥行き方向への加速度を検出する第2水平加速度センサ29bと、鉛直方向、即ち自動販売機4の高さ方向への加速度を検出する鉛直加速度センサ29cとを備えて構成される。このような三次元加速度データを取得する加速度センサ29a〜29cとしては、例えば直交する水平二方向及び鉛直方向の振動加速度を静電容量変化で検出するMEMS(Micro Electro Mechanical Sensor)センサを用いることができる。本実施形態では、加速度センサによる加速度のサンプリング周波数を200Hzとすることが地震振動計測上望ましい。
【0016】
前述のように自動販売機4に加速度センサ29a〜29cを搭載し、自動販売機4の設置箇所における地震震度を計測する場合、加速度センサ29a〜29cで検出される加速度には自動販売機4自体或いは自動販売機4の設置状態に起因する特性のあることが判明した。図5は、自動販売機4と設置箇所Aを模式的に示したものであるが、例えば設置箇所Aを特定の周波数の加速度で加振したときに自動販売機4で検出される加速度は、周波数毎に、特定の増幅比で増幅されている。そこで、加速度センサ29a〜29cと同じ方向の加速度を検出することができる設置箇所用加速度センサBを設置箇所Aに配置し、両者で検出される加速度の比を計測した。図6には、設置箇所Aと自動販売機4で検出される自動販売機幅方向加速度の比(スペクトル比)を、図7には、設置箇所Aと自動販売機4で検出される自動販売機奥行き方向加速度の比を、図8には、設置箇所Aと自動販売機4で検出される自動販売機高さ方向加速度の比を示す。夫々の図中に破線で示す特性曲線は、自動販売機4の圧縮機7が作動していないときのものであり、図中に実線で示す特性曲線は、自動販売機4の圧縮機7が作動しているときのものである。
【0017】
図から明らかなように、圧縮機7が作動しているときに自動販売機4で検出される加速度は、圧縮機7が作動していないときに対して、自動販売機幅方向で約4倍であり、自動販売機奥行き方向で約3倍である。また、圧縮機7が作動しているときに自動販売機4で検出される高さ方向の加速度は、全体的に、圧縮機7が作動していないときの約2倍であるが、周波数5.2Hzで約8倍のピークが存在する。一方、圧縮機7が作動していない場合であっても、設置箇所Aで検出される加速度に対して自動販売機4で検出される加速度は、自動販売機幅方向及び奥行き方向で約2倍、高さ方向で1.6倍になっている。従って、検出された三次元加速度の各加速度(データ)をフーリエ変換して周波数特性を求め、三次元加速度データの夫々に対し、周波数帯域毎に、予め記憶された三次元方向の補正係数で補正を行うことで、設置箇所Aにおける三次元加速度データを求めることができる。このように設置箇所Aにおける三次元加速度データが得られたら、気象庁が定める規定算出方法で震度Iを算出すればよい。
【0018】
前記補正係数としては、自動販売機4の圧縮機7が作動しているときと作動していないときとで、明らかに加速度の増幅比が異なるので、圧縮機7の作動時と非作動時とで補正係数を切換えるべきである。具体的には、圧縮機7が作動していないときには、自動販売機幅方向の加速度データを1/2倍し、自動販売機奥行き方向の加速度データを1/2倍し、自動販売機高さ方向の加速度データを1/1.6倍する。一方、圧縮機7が作動しているときには、自動販売機幅方向の加速度データを1/4倍し、自動販売機奥行き方向の加速度データを1/3倍する。また、圧縮機7が作動しているときの自動販売機高さ方向の加速度データに対しては、全体的に1/2倍するが、周波数帯域3.6Hz〜5.8Hzでは、5.2Hzをピークとして、周波数毎に、1/2倍〜1/8倍〜1/2倍の補正を行う。震度演算用メモリ27は、これらの補正係数を加速度データ補正係数として記憶している。
【0019】
図4は、前述した地震震度演算部26で行われる地震震度算出のための演算処理のフローチャートである。この演算処理は、例えば0.1秒毎にタイマ割込処理によって行われ、まずステップS1で、前記無線送受信部28によるデータセンター1との送受信で地震が発生しているか否かを判定し、地震が発生している場合にはステップS2に移行し、そうでない場合には処理を終了して復帰する。なお、本実施形態では、後述のように自動販売機4の設置箇所Aにおける地震震度を算出することができるので、算出された震度が予め設定された値以上である場合に、自ら地震発生であると判定するようにしてもよい。
【0020】
ステップS2では、加速度センサ29a〜29cによって検出される三次元加速度データを前記所定サンプリング周波数でサンプリングする。
次にステップS3に移行して、ステップS2でサンプリングした三次元加速度データの夫々をフーリエ変換する。
次にステップS4に移行して、冷媒回路制御部15との相互通信によって、圧縮機7が作動中であるか否かを判定し、圧縮機7が作動中である場合にはステップS5に移行し、そうでない場合にはステップS7に移行する。
ステップS5では、震度演算用メモリ27に記憶されている圧縮機作動中の加速度データ補正係数を読込んでからステップS6に移行する。
【0021】
ステップS6では、フーリエ変換された三次元加速度データの夫々を圧縮機作動中の加速度データ補正係数の夫々で補正してからステップS9に移行する。
一方、ステップS7では、震度演算用メモリ27に記憶されている圧縮機非作動中の加速度データ補正係数を読込んでからステップS8に移行する。
ステップS8では、フーリエ変換された三次元加速度データの夫々を圧縮機非作動中の加速度データ補正係数の夫々で補正してからステップS9に移行する。
ステップS9では、フーリエ変換され且つ補正された三次元加速度データの夫々に対し、予め設定されたローカットフィルタ処理、ハイカットフィルタ処理、周期効果フィルタ処理を施す。このローカットフィルタ処理、ハイカットフィルタ処理、周期効果フィルタ処理は、気象庁が定めるフィルタ処理であって図9に示すような総合特性を有し、地震波の周期による影響を補正することを目的としている。なお、ローカットフィルタ、ハイカットフィルタ、周期効果フィルタの夫々は、夫々、下記1〜3式で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
次にステップS10に移行して、フィルタ処理が施された三次元加速度データの夫々を逆フーリエ変換する。
次にステップS11に移行して、逆フーリエ変換された三次元加速度データ(波形)をベクトル的に合成する。三次元加速度データをベクトル的に合成する方法としては、三次元加速度データの各加速度の二乗和平方根を用いる。合成された三次元加速度のベクトル合成波形は、例えば図10のように表れる。
次にステップS12に移行して、ステップS11で合成されたベクトル合成波形の絶対値が或る値a以上となる時間の合計計算でちょうど0.3秒となるような或る値aを求める。この或る値aの求め方は気象庁で定める。具体的には、三次元加速度データのサンプリング周期をΔtとしたとき、ベクトル合成波形を絶対値の大きい順に並べて、0.3/Δt番目の値を或る値aとする。
【0024】
次にステップS13に移行して、ステップS12で求めた或る値aから、下記4式に従って計測震度Iを算出する。
I=2・loga+0.94 ……… (4)
但し、求めた計測震度Iは、小数第3位を四捨五入、小数第2位を切捨てる。この計測震度Iの算出方法は気象庁で定める。なお、気象庁の規定する震度階級表に従って、求めた計測震度Iを震度階級、例えば「震度3」といったように換算してもよい。
なお、前述したように、三次元加速度データをフーリエ変換し、地震波の周期による影響を補正するフィルタ処理を施し、逆フーリエ変換された三次元加速度データをベクトル的に合成し、ベクトル合成波形から震度Iを算出する方法は気象庁の定めるものである。
【0025】
この演算処理によれば、地震発生時には、自動販売機4で検出される三次元加速度データをサンプリングし、サンプリングされた三次元加速度データの夫々をフーリエ変換する。この三次元加速度データのサンプリングしたときが圧縮機7の作動中であれば、震度演算用メモリ27に記憶されている圧縮機作動中加速度データ補正係数を読込み、圧縮機7が作動していないときであれば圧縮機非作動中加速度データ補正係数を読込む。そして、フーリエ変換された三次元加速度データの夫々を読込まれた加速度データ補正係数で補正し、補正された三次元加速度データを逆フーリエ変換し、そのベクトル合成波形を合成する。このように三次元加速度データのベクトル合成波形が合成されたら、気象庁の規定に従って或る値aを求め、その或る値aから計測震度Iを算出する。算出された震度Iは、例えば無線送受信部28を介してネットワークに伝送され、必要に応じてデータセンター1で受信される。その際、自動販売機4で検出された三次元加速度データを圧縮機作動中加速度データ補正係数又は圧縮機非作動中加速度データ補正係数で補正することにより、自動販売機設置箇所Aにおける三次元加速度データを得ることができるので、自動販売機設置箇所Aにおける地震震度Iを適正に算出することができる。そして、このような適正な地震震度Iを広範囲にわたり、高密度且つ多地点で得ることにより、高精度の震度マップを作成したり、適正な避難経路を導出したりすることができる。
【0026】
このように本実施形態の地震計測装置では、自動販売機4に設けられた加速度センサ29a〜29cによって、予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度からなる三次元加速度を検出する。一方、各自動販売機4において、予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の補正係数を震度演算用メモリ(記憶装置)27に記憶する。そして、加速度センサ29a〜29cで検出された三次元加速度の各加速度をフーリエ変換する。また、フーリエ変換された三次元加速度の各加速度を、震度演算用メモリ(記憶装置)27に記憶された補正係数で補正する。このように補正された三次元加速度の各加速度に対し、地震波の周期による影響を補正するための予め設定されたフィルタ処理を施し、フィルタ処理が施された三次元加速度の各加速度を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換された三次元加速度の各加速度をベクトル的に合成し、合成されたベクトル波形から予め設定された算出方法によって計測震度Iを算出する。そのため、簡易な構造にして、自動販売機設置箇所の震度を取得することができることから、高密度な多地点の震度を広範囲にわたって取得することができる。
【0027】
また、自動販売機4における予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々と自動販売機4の設置箇所Aにおける予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々との比を補正係数として記憶する。自動販売機4で検出される水平直交二方向及び鉛直方向の各加速度と自動販売機設置箇所Aで検出される水平直交二方向及び鉛直方向の各加速度とには、周波数帯域毎に特定の比が存在する。そのため、フーリエ変換された三次元加速度の各加速度を、自動販売機4で検出される加速度と自動販売機設置箇所Aで検出される加速度との比で補正すれば、自動販売機設置箇所Aの震度を適正に算出することが可能となる。
【0028】
また、自動販売機4の圧縮機7が作動中の三次元加速度の比と圧縮機7が非作動中の三次元加速度の比とを記憶し、自動販売機4の圧縮機7が作動しているときには圧縮機7が作動中の比を補正係数として用い、自動販売機4の圧縮機7が作動していないときには圧縮機7が非作動中の比を補正係数として用いる。自動販売機4の圧縮機7が作動しているときと作動していないときとでは、自動販売機4で検出される三次元加速度と自動販売機設置箇所Aで検出される三次元加速度との比が異なる。そのため、フーリエ変換された三次元加速度を補正するに際し、自動販売機4の圧縮機7が作動しているときには圧縮機7が作動中の比を補正係数として用い、圧縮機7が作動していないときには圧縮機7が非作動中の比を補正係数として用いることで、自動販売機設置箇所Aの震度をより適正に算出することが可能となる。
【0029】
また、算出された計測震度Iをネットワークを通じて通信することにより、避難経路や地域のどこに避難すべきかといった情報を、早期に且つ広範囲に知らしめることができる。
なお、前記図4の演算処理のステップS1で地震発生を検出した場合、圧縮機7の作動状態を保持する指令を冷媒回路制御部15に送信して圧縮機7の作動状態を保持するようにしてもよい。この圧縮機7の作動状態の保持とは、圧縮機7が作動している場合には作動を保持し、圧縮機7が非作動状態である場合には非作動状態を保持する。また、地震振動が終了したと判断できる場合に、圧縮機7の作動状態保持指令を解除する。このようにすることで、先に記載した震度算出処理環境を維持することができ、これにより算出震度の確度を向上することができる。
【0030】
また、前述したようにネットワークの端末である自動販売機4同士が相互に通信できるようにすることにより、例えばデータセンター1からのネットワークが遮断されたような場合であっても、例えば町内レベルといった狭い地域で地震震度情報を共有することが可能となる。
また、前述した自動販売機4における予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々と自動販売機4の設置箇所Aにおける予め設定された互いに直交する水平二方向及び鉛直方向の各加速度の夫々との比は、実際に自動販売機4が設置されている設置箇所Aにおける三次元加速度との比を用いるのが好ましいが、例えば自動販売機4の製造工程で予め計測した自動販売機設置箇所における三次元加速度との比を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 データセンター
2 無線基地局
3 光ファイバーケーブル
4 自動販売機
5a〜5c 商品収容庫
6 機械室
7 圧縮機
8 ガスクーラ
9 内部熱交換器
10a〜10c バルブ
11 エジェクタ
12 気液分離器
13a〜13c 蒸発器
14 ヒーター
15 冷媒回路制御部
16 冷媒回路用メモリ
17a〜17c 蒸発器ファン
18 ガスクーラファン
19 圧力センサ
20 ガスクーラ出口温度センサ
21 外気温度センサ
22a〜22c 蒸発器入口温度センサ
23a〜23c 蒸発器出口温度センサ
24a〜24c 庫内温度センサ
25 内部熱交換器出口温度センサ
26 地震震度演算部
27 震度演算用メモリ
28 無線送受信部
29a〜29c 加速度センサ
図1
図2
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図10