(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最終曲げ用ロールスタンドの直前の段のロールスタンドにおいて、最終成形製品の曲げ部に対応する箇所の曲げの曲率半径よりも大きい曲率半径で、前記逆曲げ部を形成して、前記撓み部分を形成することを特徴とする請求項3に記載のロール成形方法。
前記最終曲げ用ロールスタンドの直前の段のロールスタンドにおいて、最終成形製品の曲げ部に対応する撓み部分の曲げ角度が、製品の曲げ部の曲げ角度と等しいか又はそれより大きくなるように成形することを特徴とする請求項3、請求項4のいずれかの請求項に記載のロール成形方法。
【背景技術】
【0002】
長さ方向に直交する方向の断面の形状として1以上の曲り部を有しかつその曲り部が長さ方向に連続する金属板製品としては、長さ方向に対して直交する断面の形状がハット型のもの、あるいはC型もしくはコ型のもの、M型のものなどがあり、一般にこの種の金属板製品は、チャンネル材(溝型鋼)と称されている。また最も単純な形状の製品としては、長さ方向に対して直交する断面の形状がV型(L形を含む)のもの、すなわちいわゆるV型鋼がある。そしてこれらのチャンネル材やV型鋼は、自動車などの輸送用機器、建材、あるいは機械構造用部品などにおいて広く使用されている。
【0003】
V型鋼、すなわち長さ方向LDに対して直交する断面がV型もしくはL形の鋼材製品10Aの一例を
図10に示す。
このV型鋼製品10Aは、帯板状の母材鋼板が、その幅方向の例えば中央部分において、長さ方向に沿って、所定の曲率半径R
1、所定の曲げ角度θ
1でV状あるいはL状に折り曲げられた形状をなすものであり、長さ方向に連続する一対の平坦な側板部11A、11Bと、その側板部11A、11Bを結ぶ曲げ部13とを有してなる。
【0004】
またチャンネル材の一例として、長さ方向LDに対して直交する断面がハット型のチャンネル材10Bを
図11に示す。
このチャンネル材10Bは、その長さ方向に連続する平坦な底板部12の幅方向両端から、図の例えば上方に所定のθ
2で曲げられて、縦壁部14A、14Bが形成され、更にその縦壁部14A、14Bのそれぞれの上端が、角度θ
3で水平方向外側に曲げられてフランジ部16A、16Bが形成されている。ここで、底板部12から角度θ
2で曲げられた箇所を、底板側曲げ部18A、18Bと称し、縦壁部14A、14Bから角度θ
3で曲げられた箇所を、フランジ側曲げ部19A、19Bと称することとする。
【0005】
上述のようなV型鋼や、ハット型断面などを有するチャンネル材は、断面形状として少なくとも1以上の曲げ部を有し、かつその曲げ部が長さ方向に連続するところから、一般には、複数段のロールスタンドによって連続的に成形するロール成形が適用されている(例えば特許文献1、2、非特許文献1参照)。
すなわち、帯板状の素材鋼板を、複数段のロールスタンドに連続的に逐次噛み込ませ、各ロールスタンドの上下の成形用ロールによって製品の曲げ部となるべき部位の曲げ角度を逐次増大させるとともに曲げ半径を逐次減少させ、最終的に
図10あるいは
図11に示すような、所定の曲げ角度、所定の曲率半径の曲げ部を有する製品形状に仕上げるのが通常である。
【0006】
図10に示すような、断面がV型もしくはL形の製品(V型鋼)10Aをロール成形法によって得るための複数段のロールスタンドのうちのあるロールスタンドの上下のロール形状の例について
図12に示す。
図12に示すように、上型ロール21は外周面の中央部がV状に突出し、下型ロール22は、外周面の中凹部が逆V状に窪んでおり、これらの上下ロールの凹凸の間に素材鋼板を噛み込ませることによって、曲げ部13が形成されていく。
【0007】
このようなロールを用いて断面がV型もしくはL形の製品10Aを成形する場合の従来の例について、
図13を参照して説明する。なおここでは、6段のロールスタンドを用いた例として示している。
【0008】
初段(第1段)のロールスタンドS1において、先ず素材鋼板23における製品10A(
図10)の曲げ部13となるべき箇所を、比較的小さい角度θ
11で曲げる。さらに第2〜第5段のロールスタンドS2〜S5において、順次曲げ角度θ
12〜θ
15を大きくし、最終段(第6段)のロールスタンドS6において、最終的な製品10Aにおける曲げ角度θ
16(=θ
1)に仕上げる。また各段のロールスタンドS1〜S5においては、曲げ部の曲率半径R
11〜R
15も順次小さくいき、最終ロールスタンドS6によってR
16(=R
1)に仕上げるのが通常である。
具体的な各ロールスタンドS1〜S6の各段階における曲げ部の角度及び曲率半径の例の例を、表1に示す。なお表1において、曲率半径については、板厚中心での曲率半径を示している。
【0009】
【表1】
【0010】
また、
図11に示すような断面がハット型のチャンネル材10Bをロール成形法によって得る場合に使用される複数段のロールスタンドのうちのあるロールスタンドの上下のロール形状の例について
図14に示す。
図14に示すように、上側ロール21と下側ロール22とは、その外周面の凹凸が互いに対応する形状をなす、いわゆる穴型ロールとされ、このような上側ロール21と下側ロール22との間に素材鋼板を噛み込ませることにより、各曲げ部(底板側曲げ部18A、18Bおよびフランジ側曲げ部19A、19B)が形成されていく。この例では、上型ロール21の胴部中央部が半径方向が外方に凸型(外径Dt)となり、下型ロール22の胴部中央部が半径方向に凹型(内径Db)となって、その間においてチャンネル材の底板部が形成されるようになっている。
【0011】
このようなロールを用いて断面ハット型のチャンネル材10Bを、例えば6段のロールスタンドS1〜S6を用いた従来のロール成形法によって製造する場合、
図15に示しているように、初段(第1段)のロールスタンドS1において、先ず素材鋼板23における製品(
図11)の底板側曲げ部18A、18Bとなるべき箇所を、比較的小さい角度θ
21で曲げ、次の第2段のロールスタンドS2において、底板側曲げ部18A、18Bとなる箇所の曲げ角度をθ
22に増大させると同時に、フランジ側曲げ部19A、19Bとなる箇所を、比較的小さい角度θ
32で曲げる。続く第3段のロールスタンドS3において、底板側曲げ部18A、18Bとなる箇所の曲げ角度をθ
33に増大させると同時に、フランジ側曲げ部19A、19Bとなる箇所の曲げ角度をθ
23に増大させる。以下順次同様の過程を繰り返し、最終段(第6段)のロールスタンドS6により、底板側曲げ部18A、18Bとなる箇所の曲げ角度をθ
26(=θ
2)に仕上げる同時に、フランジ側曲げ部19A、19Bとなる箇所の曲げ角度をθ
36(=180度−θ
3)に仕上げる。また各ロールスタンドS1〜S5においては、曲げ部の曲率半径(R
21〜R
25;R
32〜R
35)も順次減少させ、最終ロールスタンドS6によってR
26(=R
2)、R
36(=R
3)に仕上げるのが通常である。
【0012】
具体的な各ロールスタンドS1〜S6の各段階における底板側曲げ部18A、18Bおよびフランジ側曲げ部19A、19Bの角度の例、及び上型ロール21の胴部中央部の外径Dt、下型ロール22の胴部中央部の内径Dbの例を、表2に示す。なお、表2において、各曲げ部の曲率半径については、それぞれの曲げ部の板厚中心での曲率半径を示している。
【0013】
【表2】
【0014】
このように、
図13あるいは
図15に示す従来方法の場合、各段のロールスタンドでは、製品における曲げ部となる部分について、曲げ角度を順次増大させるとともに、曲げの曲率半径を順次小さくするのが一般的である。
【0015】
ところで上述のようなロール成形で得られるV型鋼や、ハット型などのチャンネル材は、自動車などの輸送用機器、あるいは建材、機械構造用材料、そのほか種々の分野で広く使用されているが、高強度が要求される部材の場合、素材鋼板としても、高強度を有する鋼板、したって通常は延性が低い鋼板を使用することが多い。また場合によっては、素材鋼板の厚みをある程度大きくせざるを得ないことも多い。さらに、外観上の理由あるいは他部材との組み合わせなどの観点から、曲げ部の曲率半径を小さくすることが望まれることがある。
【0016】
しかるに、延性の低い鋼板を素材とした場合、板厚tと曲率半径Rとの比(t/R)が大きくなれば、ロール成形において、曲げ部に割れが発生しやすくなることが知られている。特にロール成形の過程の最終段のロールスタンドでは、曲げが最もきつくなって、曲げの曲率半径が最も小さくなるから、最終段のロールスタンドで曲げが発生しやすい。
【0017】
上述のようなロール成形における曲げ部の割れ(以下曲げ割れと記す)の発生を防止するためには、素材鋼板の材質として、延性が高いものを選択したり、あるいは板厚を抑えたり、あるいは曲げ部の曲率半径を大きくしたりする、などの方策があるが、実際上は、これらの方策を適用することが困難であることが多かったり、あるいはこれらの方策を適用することが望まれないことも多い。そこで、ロール成形方法自体として、曲げ割れの発生を防止し得る方法の開発が強く求められている。
【0018】
また一方、従来の一般的な曲げ成形のためのロール成形方法では、通板方向の先端部(噛み込み側の端部)と、長さ方向中間部分と、通板方向の後端部(噛み出し側の端部)とでは、成形後のスプリングバック量が異なるのが通常であり、そのため成形製品の形状が通板方向に大きく異なってしまうことが多い。したがってロール成形後には、先端部分と後端部分を切り落としてスクラップとし、形状性が良好な中間部分のみを成形製品として出荷せざるを得なかった。そのため、従来はロール成形の歩留まりが悪く、コスト削減にも限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、素材の鋼板などの金属板の材質を延性の高いものに変更したり、その厚みを薄くしたり、あるいは曲げ部の曲率半径を大きくしたりするなどの手法を適用せずに、ロール成形自体の過程を工夫することによって曲げ割れを発生しにくくした(あるいは仮にこれらの手法を適用したとしてもその程度が小さいままで曲げ割れを発生しにくくした)、ロール成形方
法を提供することを課題としている。
さらに、ロール成形後における通板方向でのスプリングバック量のばらつきを少なくして、通板方向での形状のばらつきを小さくし、これによってスクラップとして切り落とすべき長さを短くし、ロール成形の歩留まりを向上させることをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述の課題を達成するべく、本発明者等が種々実験・研究を重ねたところ、複数段によって行うロール成形における曲げ過程を、従来とは異ならせることによって、ロール成形過程での曲げ割れを防止し得るか、又は少なくとも曲げ割れのその発生の程度もしくは頻度を軽減し得ることを見い出し、本発明をなすに至った。
【0023】
すなわち本発明者等が、先ずロール成形によって金属板を曲げる際に曲げ部に割れが発生する原因について鋭意検討したところ、
図16に示すように上下のロール21、22に素材鋼板23が押し込まれる際には、曲げ変形だけではなく、幅方向への引張Tが生じており、この引張Tが曲げ割れを生じやすくさせていることが判明した。そして各段のロールスタンドのうち、曲げ部の曲げ角度、曲率半径を最終製品の曲げ角度、曲率半径に仕上げるためのスタンド、すなわち最も曲げがきつく、曲げ割れが発生しやすいロールスタンド(通常は最終スタンド)において、上述のような板幅方向への引張が生じないようにすることが、曲げ割れ発生の防止に有効であることを見い出した。
【0024】
なお、後に改めて説明するように、製品の曲げ部となるべき箇所の曲げ角度、曲率半径を製品の曲げ角度、曲率半径に仕上げるためのスタンドは、一般には、最終的に板全体を製品形状に仕上げるための最終スタンドである場合がほとんどである。しかしながら、例えば複数の曲げ部を有するチャンネル材を成形する場合は、ある箇所の曲げ部については、最終スタンドよりも前の段階で、最終製品での曲げ角度、曲率半径に仕上げることがある。そこで以下の説明では、ある曲げ部について、製品の曲げ角度、曲率半径に仕上げるためのスタンドについて、最終スタンドとは称さず、最終曲げ用ロールスタンドと称している。そしてまたその最終曲げ用ロールスタンドの直前のロールスタンドを、最終曲げ直前スタンドと称して説明を進めることとする。
【0025】
前述のように、最終スタンドで幅方向の引張が生じないようにするためには、最終曲げ用ロールスタンドに噛み込まれる板、すなわち最終曲げ直前の板(最終曲げ直前ロールスタンドでの成形が終了した段階の板、これを、以下「最終曲げ直前中間曲げ製品」と称する)の形状を適切に調整しておくことによって、最終スタンドで、前述のような板幅方向への引張が生じないようにすること、あるいはその引張の程度を小さくすることが可能となることを見い出した。
【0026】
具体的には、例えば最終曲げ直前スタンドでの成形を、製品の曲げ部となるべき部位の曲げの増大(曲げ角度の増大、曲率半径の減少)のための成形ではない、特殊な態様での成形を施して、製品での曲げ部の頂点となる位置から幅方向の少なくとも一方の箇所に、製品の曲げ部の曲り方向とは逆方向に曲がる逆曲げ部を形成し、この逆曲げ部によって、逆曲げ部から製品での曲げ部の頂点となる位置までの領域に、製品での曲げ部付近の形状よりも曲げ外側に撓んだ(膨らんだ)部分を有する状態とした最終曲げ直前中間曲げ製品を得、その最終曲げ直前中間曲げ製品を、最終曲げ用スタンドに噛み込ませて製品の曲げ部を仕上げることによって、前述のような板幅方向への引張が生じないようにすることが可能となるか、又は少なくともその引張の程度を小さくすることが可能となり、ひいては板厚tと曲げ部の曲率半径との比t/Rが大きくても、最終曲げ用スタンドで曲げ割れが生じにくくなることを見い出し、本発明をなすに至った。
【0027】
ここで、上記のような撓んだ部分を有する状態とは、一方の側の逆曲げ部における板幅方向縁部側の逆曲げ開始位置から、成形製品の曲り部の頂点となる位置までの長さが、製品での対応する領域の長さよりも長い状態で、外側に撓んだ部分を意味する。そしてこのような撓んだ部分を有する状態で最終曲げ用スタンドに噛み込ませれば、撓み部分が上下のロール間で圧潰されて、ランダムに圧縮されることになり、その結果前述のような引張が生じず、曲げ割れが発生しないか、又は少なくともこのような撓み部分を形成せずに単純に曲げた場合よりも、曲げ割れが発生しにくくなることを知見したのである。
【0028】
さらに、上述のように最終曲げ直前中間曲げ製品に撓み部分を形成しておき、その最終曲げ直前中間曲げ製品を最終曲げ用スタンドで成形して製品の曲げ部を形成する手法を適用すれば、ロール成形後における通板方向でのスプリングバック量のばらつきを少なくし得ること、ひいては通板方向での形状のばらつきを小さくし得ることをも見い出し、本発明をなすに至ったのである。
【0029】
具体的には、本発明の基本的な態様(第1の態様)のロール成形方法は、
複数段のロールスタンドに
、板厚0.4〜2.0mmの980〜2000MPa級鋼板からなる帯板状の素材金属板を順次通過させて、ロールスタンドの各段で、長さ方向に直交する面内に、長さ方向に沿った曲げを順次加えていき、最終的に、長さ方向に直交する方向の断面形状として1以上の曲げ部を有しかつその曲げ部が長さ方向に連続する成形製品を得るためのロール成形方法において、
前記曲げ部を最終的な成形製品における曲り角度及び曲率半径に仕上げるための最終曲げ用ロールスタンドよりも前のいずれか1以上の段のロールスタンドで、前記曲げ部の頂点となる位置から幅方向の少なくとも一方の側に所定長さだけ離れた箇所に、前記曲げ部の曲げ方向とは逆方向に曲がる逆曲げ部が形成されるように成形して、
前記最終曲げ用ロールスタンドに噛み込まれる直前の段階の最終曲げ直前中間曲げ製品の形状として、前記逆曲げ部から製品での曲げ部の頂点位置に至る領域に、製品での曲げ部の曲率半径より大きな曲率半径で撓む撓み部分を有し、かつ前記逆曲げ部の曲率半径が製品の曲げ部の曲率半径よりも大きい形状とし、
かつ前記最終曲げ直前中間曲げ製品の撓み部分を、前記逆曲げ部における板幅方向縁部側の逆曲げ開始位置から、製品での曲り部の頂点までの領域として、その撓み部分の領域の長さを、製品で対応する領域の長さの101〜110%とし、
最終曲げ用ロールスタンドにおいて、前記最終曲げ直前中間曲げ製品の撓み部分を、最終的な成形製品における曲げ部の曲り角度及び曲率半径に仕上げると同時に、前記逆曲げ部の曲げを戻して平坦化することを特徴とするものである。
【0032】
また本発明の
第2の態様のロール成形方法は、前記第
1の態様のロール成形方法において、
最終曲げ直前中間曲げ製品における、最終成形製品の曲げ部に対応する箇所の曲げ角度が、製品の曲げ部の曲げ角度と等しいか又はそれより大きいことを特徴とするものである。
【0033】
また本発明の
第3の態様のロール成形方法は、前記第1
、第2のいずれかの態様のロール成形方法において、
前記逆曲げを付与する段のロールスタンドが、前記最終曲げ用ロールスタンドの直前の段のロールスタンドであることを特徴とするものである。
【0034】
また本発明の
第4の態様のロール成形方法は、前記
第3の態様のロール成形方法において、
前記最終曲げ用ロールスタンドの直前の段のロールスタンドにおいて、最終成形製品の曲げ部に対応する箇所の曲げの曲率半径よりも大きい曲率半径で、前記逆曲げ部を形成して、前記撓み部分を形成することを特徴とするものである。
【0035】
また本発明の
第5の態様のロール成形方法は、前記
第3、第4のいずれかの態様のロール成形方法において、
前記最終曲げ用ロールスタンドの直前の段のロールスタンドにおいて、最終成形製品の曲げ部に対応する撓み部分の曲げ角度が、製品の曲げ部の曲げ角度と等しいか又はそれより大きくなるように成形することを特徴とするものである。
【0036】
また本発明の
第6の態様のロール成形方法は、前記第1〜
第5のいずれかの態様のロール成形方法において、
長さ方向に直交する方向の断面形状が、一つの曲げ部を有するV型もしくはL形で、その断面形状が長さ方向に連続する成形製品を得ることを特徴とするものである。
【0037】
また本発明の
第7の態様のロール成形方法は、前記第1〜
第5のいずれかの態様のロール成形方法において、
長さ方向に直交する方向の断面形状として二つ以上の曲げ部を有し、その断面形状が長さ方向に連続するチャンネル状の成形製品を得ることをとするものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明のロール成形法によれば、複数段のロールスタンドによって、長さ方向に直交する方向の断面形状として1以上の曲げ部を有しかつその曲げ部が長さ方向に連続する成形製品を成形するにあたって、素材の板厚tと曲げ部の曲率半径との比t/Rが大きくても、その成形過程における最終曲げ用スタンドで曲げ割れが生じにくくなる効果が得られ、そのため、特に素材を薄肉化したり、曲げの曲率半径を大きくしたりせずに、曲げ割れを生じることなく成形することができるとともに、素材の選定についてもその制約が少なくなり、自動車部品などに使用されるロール成形製品として、例えば従来より軽量化を図ることができるとともに、曲率半径の小さい曲げ部を有する製品を成形可能になるなど、各種のメリットを得ることができる。
さらに本発明のロール成形法によれば、ロール成形時における通板方向でのスプリングバック量のばらつきを少なくすることができ、そのため通板方向での形状のばらつきが小さい成形製品を得ることができるから、スクラップとして切り落とすことが必要となる形状不良部分(通販方向の先端部分及び後端部分)の長さを短くして。歩留まりを向上させることもできるという、副次的な効果も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
図1には、本発明のロール成形方法の第1の実施形態として、複数段のロールスタンド、例えば7段のロールスタンドS1〜S7を用いて、素材鋼板23をV状もしくはL状の曲げ部13を有する成形製品10A(
図10参照)に成形する際の成形過程(鋼板の変形過程)を、各段のロールスタンドS1〜S7に対応して段階的に示す。
【0044】
第1の実施形態においては、初段(第1段)のロールスタンドS1から第5段のロールスタンドS5までの成形過程は、
図13に示した従来法と同様である。具体的には、第1段のロールスタンドS1では、製品10Aの曲げ部13となる箇所に角度θ
11、曲率半径R
11で曲げを付与し、更に第2段から第5段のロールスタンドS2〜S5においては、その曲げを順次増大させている。すなわち、これらのスタンドS2〜S5では、順次、曲げ角度θ
12〜θ
15を増大させるとともに曲率半径R
12〜R
15を順次減少させている。
【0045】
そして第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6においては、次に
図2を参照して詳細に説明するように、製品10Aの曲げ部13となる箇所を含み、曲げ部13の頂点C0から板幅方向両側にそれぞれ所定長さだけ離れた位置までの領域に、撓み部分31が形成されるように成形するという特殊な成形(曲げ角度θp、曲率半径Rp)を施し、その後の第7段のロールスタンドS7を最終曲げスタンドとして、曲げ部13を、曲げ角度θ
16(=θ
1)、曲率半径R
16(=R
1)に仕上げる。従って本実施形態のロール成形方法の場合、
図13に示したロール成形方法における第5段のスタンドS5と最終曲げスタンドS6との間に、新たに、撓み部分形成のための別のロールスタンド(本実施形態における第6段ロールスタンドS6すなわち最終曲げ直前スタンドS6)を介挿したもの、と言うことができる。
【0046】
上述のように、第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6での成形について、
図2を参照して、より具体的に説明する。なお
図2には、第5段のロールスタンドS5、最終曲げ直前スタンドとしての第6段のロールスタンドS6、及び最終曲げスタンドとしての第7段のロールスタンドS7での成形過程を示しており、各段において、それぞれ実線は該当するスタンドでの曲げ形状を示し、破線は次のスタンドでの曲げ形状を示している。
【0047】
図2において、第5段のスタンドS5までは、従来の
図13と同様であり、第5段のスタンドS5での成形が終了した段階では、製品10Aの曲げ部13となる箇所の曲げ半径はR
15、曲げ角度はθ
15となっている。
【0048】
このような中間製品をさらに第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)によって成形するに当たっては、製品10Aの曲げ部13の頂点となる位置C0から幅方向の両側にそれぞれ所定長さだけ離れた箇所に、前記曲げ部の曲り方向とは逆方向に曲がる逆曲げ部32A、32Bを形成するように成形する。この逆曲げ部32A、32Bの曲率半径Rpは、製品10Aの曲げ部13の曲率半径R
16(=R
1)よりも大きい値とする。なおこのとき、製品10Aの曲げ部13となる部位も、製品10Aの曲げ部13の曲率半径R
16(=R
1)よりも大きい曲率半径Rpとする。なお、この際、曲げ角度θpは、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)と等しいか、又はそれより大きい角度とすることが好ましい。そこで本実施形態では、曲げ角度θpは、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)と等しい角度としている。
【0049】
このような第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6での成形によって、各逆曲げ部32A、32Bにおける板幅方向端部位置(逆曲げ開始位置)C1、C2から、製品10Aの曲げ部13の頂点C0に至るまでの各領域は、それぞれ製品10Aの曲げ部13よりもその曲げ外側に膨らんだ状態で撓んだ撓み部分31となる。
【0050】
このようにして、第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6において撓み部分31を有する中間製品(最終曲げ直前中間曲げ製品)35とした後、その最終曲げ直前中間曲げ製品35を、第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7に噛み込ませ、最終的な製品10Aの曲げ部13に仕上げる。すなわち曲げ部13の曲率半径をR
16(=R
1)に仕上げるとともに、逆曲げ部32A、32Bを平坦化(曲率半径≒∞)して、曲げ部頂点両側の撓みを消失させ、同時に曲げ部13の曲げ角度をθ
16(=θ
1)に仕上げる。
【0051】
以上の成形過程において、第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6で得られた最終曲げ直前中間曲げ製品35を、第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7に噛み込ませたときの材料変形挙動を、
図3に模式的に示す。
【0052】
最終曲げ直前中間曲げ製品35における撓み部分31は、その曲率半径Rqが、最終的な製品10Aの曲げ部13の曲率半径R
16(=R
1)よりも大きい。ここで、第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7では、上下のロール21,22間のギャップ23の曲率半径は製品10Aの曲げ部13の曲率半径R
1と同等であるから、最終曲げ直前中間曲げ製品35がロールギャップ間に噛み込まれて、ロール中心直下に到達する際には、撓み部分31の曲率半径がロールギャップの曲率半径よりも大きい分だけ、ロールギャップの曲り部分に材料が押し込まれることになる。このとき、材料は上下のロールによって押し潰され(圧潰され)ながらロールギャップの曲り部分に材料が押し込まれるから、材料は圧縮変形することになる。但しその圧縮方向は、比較的ランダムとなる。このような変形過程では、材料は、
図16に示した従来方法の場合のような引張Tは生じないことになる。また、仮に部分的に引張Tが生じても、その程度は小さく、また上述のようなランダムな圧縮によって、打ち消されることになる。
このようにして、上下のロール間で実質的に材料の引張が生じない結果、曲げ割れが発生しにくくなるのである。すなわち、板厚tと曲率半径Rとの比(t/R)が大きくても、曲げ部に割れが発生しにくくなるのである。
【0053】
なお本実施形態では、前述のように最終曲げ直前中間曲げ製品35の曲げ角度θpは、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)と等しい角度としている。このことは、最終曲げスタンドS7の上下のロール間のギャップにおける曲げ部頂点の直近を除く部分の傾斜角度が、最終曲げ直前中間曲げ製品35の撓み部31よりも板幅方向外側の部分の角度と同等であることを意味する。そのため、最終曲げ直前中間曲げ製品35が最終曲げスタンドS7の上下のロール間に噛み込まれる際には、ギャップにおける曲げ部頂点の直近以外の部分には曲げが実質的に加わらないことになる。そしてその結果、曲げ割れが、より確実に発生しにくくなっているのである。
【0054】
ところで、背景技術の項で説明したように、従来の一般的な曲げ成形のためのロール成形方法では、通板方向の先端部(噛み込み側の端部)と、長さ方向中央部分と、通板方向の後端部(噛み出し側の端部)とでは、スプリングバック量が異なるのが通常であり、そのため成形製品の形状が通板方向に大きく異なってしまうことが多かったが、本実施形態のロール成形方法によれば、通板方向のスプリングバック量のばらつきを小さくすることができる。その理由は次の通りである。
【0055】
すなわち、従来の通常のロール成形法で、通板方向の先端部分、中間部分、後端部分でスプリングバック量に差が生じていた原因は、曲げ成形時に付与される引張りなどの余計な歪みの量が、最初にロール間に噛み込まれる板先端(自由端)近傍の部分と、定常的な成形が行われる中間部分と、ロール間から噛み出される板後端(自由端)近傍の部分とで異なっていることに起因すると考えられる。例えば、通板方向の中間部分では、それより先端側、後端側の部分によって長さ方向に拘束されているのに対し、板先端及び板後端は、長さ方向に拘束されない自由端となっており、そのため、曲げ成形時に通板していく板の長さ方向(通板方向)に作用する引張などの歪みも、板先端近くの部分、中間部分、板後端近くの部分で異なってしまい、その結果、残留応力もそれらの部分でばらついてしまい、スプリングバック量に差が生じてしまうと考えられる。
【0056】
しかるに本実施形態では、撓み部分31が形成された状態の最終曲げ直前中間曲げ製品35が、第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7に噛み込まれて最終的な曲げ部形状が形成される。この際、曲げ部付近では、従来の通常のロール成形とは異なり、材料が潰されて、大きな圧縮変形が生じる。この圧縮変形によって、前述のような先端部分、中間部分、後端部分での余分な引張変形などの余計な歪みが消失してしまうか、又は少なくとも軽減される。その結果、スプリングバック量のばらつきの原因となる通販方向での余分な歪みのばらつきも解消され、成形後の製品のスプリングバック量の通板方向のばらつきも解消もしくは軽減される。そのため、成形製品として、その長さ方向の形状のばらつきも少なくなる。その結果、成形後に出荷するために切り落とすべき形状不良部分(先端部分、後端部分)の長さも短くすることが可能となるのである。
【0057】
ここで、最終曲げ直前中間曲げ製品35の撓み部分31の板幅方向への長さの好ましい条件について、
図4を参照して説明する。
図4に示しているように、最終曲げ直前中間曲げ製品35における、撓み部分31の板幅方向の一端の位置(逆曲げ部の曲げ開始位置に相当)C1、C2から、製品曲げ部13の頂点対応位置C0に至るまでの各領域の板厚中心での長さ(実長)を、それぞれLpとする。一方、その最終曲げ直前中間曲げ製品35を最終曲げ用スタンドS7によって成形した後の製品10Aにおける、上記の最終曲げ直前中間曲げ製品35での領域に対応する領域(以下、“対応領域”と記す)の板幅方向への板表面の長さをLoとする。なお、この“対応領域”とは、最終製品10Aにおける、最終曲げ直前中間曲げ製品35での撓み部分31の板幅方向の一端および他端の位置(逆曲げ部の曲げ開始位置に相当)C1、C2に相当する位置から、曲げ部13の頂点位置C0に至るまでの領域を意味する。なおここで板表面の長さLp、Loは、いずれも製品曲げ部13の板厚中心での板幅方向への実長とする。
【0058】
このように長さLp、Loを定義したとき、最終曲げ直前中間曲げ製品35での撓み部分31の存在により、Lp/Loの比(実長比)は、当然1.0を超えた値となるが、1.01〜1.10の範囲内の実長比Lp/Loとすることが好ましい。実長比Lp/Loが1.01未満では、最終曲げ成形時において曲げ部付近(最終曲げ直前中間曲げ製品35での撓み部分31)に十分な圧縮変形が与えられず、そのため曲げ割れ防止効果が充分に得られなくなるおそれがある。また実長比Lp/Loが1.10を越えれば、最終曲げ成形時において曲げ部付近にシワなどの異常変形が発生し、成形不良や外観不良を招いてしまうおそれがある。
【0059】
前述の第1の実施形態では、最終曲げ直前中間曲げ製品35の曲げ角度θpは、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)と等しい角度としているが、前述のように必ずしもそれに限定されず、最終曲げ直前中間曲げ製品35の曲げ角度θpを、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)よりも大きい角度としてもよい。その場合においても、最終曲げ直前中間曲げ製品35に最終曲げを施すにあたって、前述のようなロール直下での引張の発生を防止して、曲げ割れの発生を防止することができる。
【0060】
このように最終曲げ直前中間曲げ製品35における曲げ角度を、製品曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)よりも大きい角度θq´とした実施形態における成形過程の要部を、第2の実施形態として
図5に示し、その場合の板の変形挙動について
図6に示す。なおこの場合も、第1の実施形態に倣って、7段のロールスタンドによって成形するものとしている。
【0061】
図5において、第5段のロールスタンドS5までの成形過程は、
図1、
図2に示した第1の実施形態と同様であり、第5段のロールスタンドS5によって成形された板は、製品10Aの曲げ部13に対応する箇所が、曲率半径R
15、曲げ角度θ
15で曲げられている。そして第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6では、第1の実施形態と同様に、製品10Aの曲げ部13の頂点となる位置C0から幅方向の両側に所定長さだけ離れた箇所に、それぞれ製品曲げ部13の曲り方向とは逆方向に曲がる逆曲げ部32A、32Bを形成すると同時に、製品曲げ部13に相当する箇所の曲げ角度を、製品曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)より大きい角度θq´とする。なお逆曲げ部32A、32Bの曲率半径Rpは、第1の実施形態と同様に、製品曲げ部13の曲率半径R
16(=R
1)よりも大きい値とする。また、製品曲げ部13に相当する箇所の曲率半径Rq´も、第1の実施形態と同様に、製品曲げ部13の曲率半径R
16(=R
1)よりも大きい値とする。さらにこの第2の実施形態では、最終曲げ直前スタンドS6における製品の曲げ部13に相当する箇所の曲率半径Rq´は、その前の第5段のロールスタンドS5による曲率半径R
15よりも小さくしている。
【0062】
上述のようにして得られた最終曲げ直前中間製品35は、第1の実施形態の場合と同様に、各逆曲げ部32Aにおける板幅方向端部位置(逆曲げ開始位置)C1、C2から、製品10Aの曲げ部13の頂点C0に至るまでの各領域が、それぞれ製品曲げ部13付近よりもその曲げ外側に膨らんだ状態で撓んだ撓み部分31となっている。
続いて第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7では、最終的な製品10Aの曲げ部13を仕上げる。すなわち曲げ部13の曲率半径をR
16(=R
1)に仕上げるとともに、逆曲げ部32A、32Bを平坦化(曲率半径≒∞)して、曲げ部頂点両側の撓みを消失させ、同時に曲げ角度をθ
16(=θ
1)に仕上げる。
【0063】
このように第2の実施形態の場合、最終曲げ直前中間製品35では、製品曲げ部13に相当する箇所の曲げ角度が、製品曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)より大きい角度θq´となっている。この最終曲げ直前中間製品35を、最終曲げスタンドS7の上下のロール間に噛み込ませれば、最終曲げ直前中間製品35の板がロール中心直下位置に到達する直前の段階で、
図6に示しているように、板の角度θq´が、ロールギャップの両側の傾斜角度(=θ
16(=θ
1))よりも大きいため、最終曲げ直前中間製品35の板における撓み部分31よりも外側の部分が、材料押し込みにより広がる方向(曲げ角度θq´が小さくなる方向)に変形する。しかしながらこの際の変形は、最終曲げ直前中間製品35の板の幅方向両端側の箇所を押し下げながらの曲げ変形であり、したがって製品曲げ部13に相当する部位に引張は生じない。そしてロール中心直下位置に到達する段階では、既に述べた第1の実施形態の場合と同様に、撓み部分31が押し潰されて圧縮変形する。したがってその段階でも引張は生じず、その結果、曲げ割れが生じないか、または少なくとも曲げ割れが生じにくくなる。
【0064】
なお、最終曲げ直前中間製品35における、製品曲げ部13に相当する箇所の曲げ角度θq´を、製品曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)より大きい角度とする場合、その曲げ角度θq´の好ましい上限は、板幅や製品曲げ部13の曲げ角度、材料強度などによって適切な値が異なるから、一概には決められないが、一般的には、製品曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)に対するθq´の角度(度数)の比で、1.2程度以下、1.0以上とすることが好ましい。
【0065】
なお、上記の第2の実施形態の場合とは逆に、最終曲げ直前中間曲げ製品35の曲げ角度θp´を、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)よりも小さい角度とすることも考えられる。しかしながらその最終曲げ直前中間製品35を、最終曲げスタンドS7の上下のロール間に噛み込ませれば、最終曲げ直前中間製品35の板がロール中心直下位置に到達する直前の段階で、
図6に示した第2実施形態とは逆に、板の角度θq´が、ロールギャップの両側の傾斜角度(=θ
16(=θ
1))よりも小さいため、最終曲げ直前中間製品35の板における撓み部分31の頂点が上型ロール21により押し下げながら(したがって撓み部分31の曲げ変形が行われながら)、撓み部分31よりも外側の部分が、材料押し込みにより狭まる方向(曲げ角度θq´が大きくなる方向)に変形することになる。このように、ロール中心直下位置に到達する前の段階で、撓み部分31の曲げ変形が開始されてしまうため、その際に引張は生じ、その結果、曲げ割れが生じやすくなってしまうおそれがある。したがって、最終曲げ直前中間曲げ製品35の曲げ角度θp´を、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)よりも小さい角度とすることは、好ましくない。但し、最終曲げ直前中間曲げ製品35の曲げ角度θp´を、製品10Aの曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)よりもわずかだけ小さい角度の場合は、上記のような最終曲げ直前中間製品35の板がロール中心直下位置に到達する直前の段階での引張は少なく、したってθp´がθ
16(=θ
1)よりもわずかだけ小さいことは許容される。例えば、製品曲げ部13の曲げ角度θ
16(=θ
1)に対するθq´の角度(度数)の比で、0.9程度以上、1.0未満とすることは許容される。
【0066】
以上の各実施形態では、V型もしくはL型の断面を有する成形製品(例えばV型鋼)、したがって長さ方向に連続する一つの曲げ部を有する製品をロール成形する場合の例として説明したが、長さ方向に連続する曲げ部が2以上有する成形製品を得る場合にも適用できることはもちろんである。すなわち、2以上の曲げ部を有する製品をロール成形するにあたって、各曲げ部となる箇所に、例えば第1もしくは第2の実施形態で説明したような、本発明のロール成形方法による成形過程を適用することができる。その場合、最終的な成形製品における、2以上の曲げ部のすべてに対して、本発明のロール成形方法による成形過程を適用しても、あるいはすべての曲げ部ではなく、曲げ割れの発生が懸念される一部の曲げ部のみに本発明のロール成形方法による成形過程を適用してもよい。
【0067】
長さ方向に連続する2以上の曲げ部を有する成形製品の代表的なものとしては、断面形状がハット型をなす、いわゆるハット型チャンネル材、あるいは断面形状がC型もしくはコ型のいわゆるC型チャンネル材、更にはリップ付きのC型チャンネル材などがあり、これらのいずれにおいても、その2以上の曲げ部のうち、一部の曲げ部もしくは全部の曲げ部に、本発明のロール成形方法の成形過程を適用することができる。そこで、ハット型チャンネル材10B(例えば
図11参照)を成形するにあたって、すべての曲げ部に本発明の成形過程を適用する場合の例を、第3の実施形態として
図7〜
図9に示す。
【0068】
ハット型チャンネル材10Bは、
図11を参照して説明したように、底板部12から角度θ
2で曲げられた一対の底板側曲げ部18A、18Bと、縦壁部14A、14Bから角度θ
3で曲げられた一対のフランジ側曲げ部19A、19Bを有している。そして本実施形態では、一対の底板側曲げ部18A、18Bと一対のフランジ側曲げ部19A、19Bのすべて(4ヶ所)の曲げ部に、本発明の成形過程を適用することとしている。
このハット型チャンネル材10Bを、7段のロールスタンドS1〜S7によって成形する過程の全体を
図7に示し、その成形過程の要部、すなわち第5段のロールスタンドS5、第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6、及び第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7における成形過程を
図8に示し、更に
図9に、
図8に示す成形過程での各曲げ部の形状について詳細に示す。なお
図8、
図9において実線は当該スタンドでの成形上がりの形状を示し、破線は、次段のスタンドでの成形上がりの形状を示す。
【0069】
図7において、初段(第1段)のロールスタンドS1から第5段のロールスタンドS5までの成形過程は、
図15示した、ハット型チャンネル材製品10Bの従来の成形方法と同様である。すなわち、初段(第1段)のロールスタンドS1において、素材鋼板23における製品の底板側曲げ部18A、18Bとなるべき箇所を、比較的小さい曲げ角度θ
21、比較的大きい曲率半径R
21で曲げ、次の第2段のロールスタンドS2において、底板側曲げ部18A、18Bとなる箇所について、曲げ角度をθ
22に増大させるとともに曲率半径をR
22に減少させ、同時にフランジ側曲げ部19A、19Bとなる箇所について、曲げ角度を角度θ
32、曲率半径R
32で曲げる。更に第3段から第5段のロールスタンドS3〜S5においては、各曲げ部の曲げを順次大きくしている。すなわち、これらのスタンドS3〜S5では、順次、各曲げ部18A、18B;19A、19Bについて、曲げ角度θ
12〜θ
15を順次増大させるとともに曲率半径R
12〜R
15を順次減少させる。したがって、第5段のスタンドS5での成形が終了した段階では、製品10Bの底板側曲げ部18A、18Bとなる箇所の曲げ半径はR
25、曲げ角度はθ
25となっており、また製品10Bのフランジ側曲げ部19A、19Bとなる箇所の曲げ半径はR
35、曲げ角度はθ
35となっている。
【0070】
上述のような第5段のロールスタンドS5での成形が終了した板(最終曲げ直前中間製品)35は、次いで第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6での成形に供される。
最終曲げ直前スタンドS6においては、製品10Bの底板側曲げ部18A、18Bとなる箇所の頂点から、例えば底板部12の側に所定長さだけ離れた箇所に、底板側曲げ部18A、18Bの曲り方向とは逆方向に曲がる逆曲げ部53A、53Bを形成するとともに、フランジ側曲げ部19A、19Bとなる箇所から例えばフランジ部16A、16Bの側に所定長さだけ離れた箇所に、フランジ側曲げ部19A、19Bの曲り方向とは逆方向に曲がる逆曲げ部53C、53Dを形成する。ここで、底板側曲げ部18A、18Bの近傍の逆曲げ部53A、53Bの曲率半径Raは、製品10Aの底板側曲げ部18A、18Bの曲率半径R
26(=R
2)よりも大きい値とし、またフランジ側曲げ部19A、19Bの近傍の逆曲げ部53C、53Dの曲率半径Rcは、製品10Aのフランジ側曲げ部19A、19Bの曲率半径R
36(=R
3)よりも大きい値とする。またこのとき、製品10Aの底板側曲げ部18A、18Bとなる部位も、最終製品10Aの底板側曲げ部18A、18Bの曲率半径R
26(=R
2)よりも大きい曲率半径Rbとなるように成形し、またフランジ側曲げ部19A、19Bとなる部位も、最終製品10Aのフランジ側曲げ部19A、19Bの曲率半径R
36(=R
3)よりも大きい曲率半径Rdとなるように成形する。またこの際、最終製品底板側曲げ部18A、18Bに相当する箇所の曲げ角度θpaは、最終製品底板側曲げ部18A、18Bの曲げ角度θ
26(=θ
2)と等しいか、又はそれより大きい角度とすることが好ましい。そして本実施形態では、曲げ角度θpaは、最終製品底板側曲げ部18A、18Bの曲げ角度θ
26(=θ
2)と等しい角度としている。また、最終製品フランジ側曲げ部19A、19Bに相当する箇所の曲げ角度θpbは、最終製品フランジ側曲げ部19A、19Bの曲げ角度θ
36(=180°−θ
3)と等しいか、又はそれより大きい角度とすることが好ましい。そして本実施形態では、曲げ角度θpbは、最終製品フランジ側曲げ部19A、19Bの曲げ角度θ
36(=θ
3)と等しい角度としている。
【0071】
このような第6段のロールスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6での成形によって、最終製品底板側曲げ部18A、18Bの頂点となる位置の片側に、それぞれ最終製品底板側曲げ部18A、18Bよりもその曲げ外側に膨らんだ状態で撓んだ撓み部分31が形成され、同時に最終製品フランジ側曲げ部19A、19Bの頂点となる位置の片側に、それぞれ最終製品フランジ側曲げ部19A、19Bよりもその曲げ外側に膨らんだ状態で撓んだ撓み部分31が形成された中間製品(最終曲げ直前中間曲げ製品)35が得られる。
【0072】
その後、最終曲げ直前中間曲げ製品35を、第7段のロールスタンド(最終曲げスタンド)S7に噛み込ませ、最終的な製品10Bの底板側曲げ部18A、18B、フランジ側曲げ部19A、19Bを仕上げる。すなわち底板側曲げ部18A、18Bの曲率半径をR
26(=R
2)に仕上げるとともに、その近傍の逆曲げ部53A、53Bを平坦化(曲率半径≒∞)し、同時に曲げ角度をθ
26(=θ
2)に仕上げ、同時にフランジ側曲げ部19A、19Bの曲率半径をR
36(=R
3)に仕上げるとともに、その近傍の逆曲げ部53C、53Dを平坦化(曲率半径≒∞)し、同時に曲げ角度をθ
36(=180°−θ
3)に仕上げる。
【0073】
以上のようにして、最終製品底板側曲げ部18A、18Bの頂点となる位置の片側の領域に撓み部分31を有しかつ最終製品フランジ側曲げ部19A、19Bの頂点となる位置の片側の領域に撓み部分31を有する最終曲げ直前中間曲げ製品35を、最終曲げスタンドS6で最終曲げ形状に仕上げることによって、前述の第1の実施形態について述べたと同様に、各曲げ部18A、18B;19A、19Bでは、上下のロール間で材料が潰されて圧縮変形が生じる。すなわち引張が作用せず、その結果、これらの曲げ部で曲げ割れが生じることを防止できる。
【0074】
なお、以上の各実施形態では、製品の曲げ部となるべき箇所の曲げ角度、曲率半径を製品の曲げ角度、曲率半径に仕上げるためのロールスタンド(最終曲げ用スタンド)は、複数のロールスタンドのうちの最終のスタンド、例えば全7段のスタンドを用いた各実施形態における第7段目のスタンドS7としている。しかしながら、例えば複数の曲げ部を有するチャンネル材を成形する場合は、ある箇所の曲げ部については、最終スタンドよりも前の段階で、最終製品での曲げ角度、曲率半径に仕上げることがある。その場合には、当該曲げ部を最終の曲げ部形状に仕上げるためのスタンド(最終スタンドよりも前のスタンド)が、本明細書で言う最終曲げ用スタンドに相当する。そしてその場合、最終曲げ直前中間曲げ製品とするための最終曲げ直前スタンドとは、更にその前のスタンドに相当することになる。
【0075】
また一方、本発明において、最終曲げ直前中間曲げ製品を得るためのロールスタンドは、要は最終曲げ用スタンドより前の1又は2以上のスタンドであればよく、最終曲げ用スタンドの直前のスタンドに限られるものではない。例えば、最終曲げ用スタンドより2段以上前の段のスタンドで、最終曲げ直前中間曲げ製品の曲げ部のベースとなる形状(最終曲げ直前中間曲げ製品の曲げ部の曲げ角度及び/又は曲率半径には至っていない中間的な形状)を形成し、最終曲げ用スタンドの直前のスタンドにおいて、曲げ部を、最終曲げ直前中間曲げ製品の曲げ部に必要な曲げ角度及び/又は曲率半径に仕上げてもよい。
但し、実際に適用されるロール成形方法としては、スタンド段数の過剰な増加や生産性(成形能率)の低下を避けるために、前記各実施例に示したように、最終スタンドを最終曲げ用スタンドとし、その直前のスタンドを、最終曲げ直前中間製品に成形するためのスタンドとすることが好ましい。
【0076】
なお、本発明のロール成形法が適用される金属板の材質は特に限定されないが、通常の炭素鋼板(普通鋼板)や高張力鋼板、そのほかめっき鋼板など各種の表面処理鋼板、更にはステンレス鋼板、またアルミニウム板、アルミニウム合金板、チタン板などにも適用可能である。
【0077】
また、本発明のロール成形方法が適用される金属板の厚みtは特に限定されないが、例えば鋼板の場合、通常は0.4mm以上が好適である。厚みtが0.4mm未満では、撓みを潰す際に生じる圧縮変形によって座屈が生じ、シワとなるおそれがある。
【0078】
また、本発明のロール成形方法が適用される金属板の強度は特に限定しないが、鋼板の場合、270MPa級から2000MPa級程度の強度のものに適用することが適当である。
【0079】
さらに、本発明のロール成形方法によって得られる成形製品は、自動車や鉄道車両、航空機、船舶などの輸送用機器、あるいは建材、屋内外装置品、機械構造用部品、電気・電子機器部品、そのほか種々の用途に使用することができる。
【0080】
本発明の作用・効果を検証するため、以下の実施例に示すような実験を行った。
【実施例】
【0081】
幅が80mm、長さが1500mmの帯板状の980MPa級鋼板であって、厚みtが1.0mm、1.5mm、2.0mmの3種の板厚の鋼板を素材とし、6段もしくは7段のロールスタンドからなるライン(ロールスタンド間隔:450mm)によって連続的にV型断面の成形製品(V型鋼)もしくはハット型断面の成形製品(ハット型チャンネル材)をロール成形によって得る成形試験を、次の成形試験例1〜4に示すように、成形過程を異ならしめた条件で行った。なおロール径は、各段上下とも250mmφであり、また成形速度は、いずれも1mm/secとした。なお、以下の各成形試験例において、各部の曲率半径は、いずれも板厚中心での曲率半径を意味するものとする。
【0082】
〔成形試験例1〕
従来法(
図13参照)に倣い、6段のロールスタンドS1〜S6を用いて断面がV型もしくはL形の成形製品をロール成形によって得る成形試験を行った。各ロールスタンドS1〜S6における曲げ角度θ
11〜θ
16、曲率半径R
11〜R
16を、表3に示す。なおここでは、最終的な曲率半径R
16(=R
1)を、表1に示した従来の一般的な成形の場合よりも小さくした。これは、表1の場合よりも曲げ割れが発生しやすい条件であることを意味する。
【0083】
【表3】
【0084】
〔成形試験例2〕
本発明の第1の実施形態(
図1、
図2参照)の方法に従い、7段のロールスタンドS1〜S7を用いて断面がV型もしくはL形の成形製品をロール成形によって得る成形試験を行った。各ロールスタンドS1〜S6における曲げ角度θ
11〜θ
15、θp、θ
16、及び曲率半径R
11〜R
15、Rp、R
16を、表4に示す。なお、第6段のスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6による逆曲げ部32A、32Bの曲率半径Rpは4.8mm、同じく第6段のスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6による、製品曲げ部13相当箇所の曲率半径Rqも4.8mmと、いずれも製品曲げ部13の曲率半径(2.0mm)より大きく設定した。また、この場合の撓み部分31の前述の線長比Lp/Loを幾何学的に計算したところ、製品曲げ部の板厚中心で1.04であった。
【0085】
【表4】
【0086】
〔評価〕
以上の成形試験例1(従来法)、成形試験例2(本発明法)によって得られたV型断面を有する成形製品(V型鋼)について、曲げ割れの発生状況を目視により観察したところ、表5に示す結果が得られた。なお表5において、○印は、最終段まで割れが認められなかった場合を示し、×印は、最終段もしくはそれ以前の段で割れが発生してしまった場合を示す。
【0087】
【表5】
【0088】
表5から明らかなように、従来の方法に倣った成形試験例1では、肉厚が厚い場合(1.5mmのケース、及び2.0mmのケース)で、最終段もしくはそれ以前の段のスタンドで、割れが発生してしまった。
これに対して、本発明の方法に従った成形試験例2では、各肉厚の板で、最終段まで割れが発生しなかった。
この結果から、本発明のロール成形法によれば、板厚tと曲げ部の曲率半径との比t/Rが大きくても、曲げ割れが発生しにくいことが確認された。
【0089】
〔成形試験例3〕
従来法(
図15参照)に倣い、
図11に示すようなハット型の断面を有するチャンネル材をロール成形によって製造するにあたり、素材鋼板として成形試験例1、成形試験例2と同様な3種の肉厚のものを用い、6段のロールスタンドS1〜S6によって成形する成形試験を行った。各ロールスタンドS1〜S6における底板側曲げ部の曲げ角度θ
21〜θ
26、曲率半径R
21〜R
26、及びフランジ側曲げ部の曲げ角度θ
31〜θ
36、曲率半径R
31〜R
36を、表6に示す。なおここでは、最終的な曲率半径R
26(=R
2)、R
36(=R
3)は、表2に示した従来のハット型チャンネル材についての一般的な成形の場合よりも小さくした。これは、表2の場合よりも曲げ割れが発生しやすい条件であることを意味する。素材鋼板としては成形試験例1、成形試験例2と同様な3種の肉厚のものを用いた。
【0090】
【表6】
【0091】
〔成形試験例4〕
本発明の第3の実施形態(
図7、
図8参照)の方法にしたがって、
図11に示すようなハット型の断面を有するチャンネル材をロール成形によって製造するにあたり、素材鋼板として成形試験例1、成形試験例2と同様な3種の肉厚のものを用い、7段のロールスタンドS1〜S7によって成形する成形試験を行った。各ロールスタンドS1〜S7における底板側曲げ部の曲げ角度θ
21〜θ
26、θpa、曲率半径R
21〜R
26、Rb、及びフランジ側曲げ部の曲げ角度θ
31〜θ
36、θpb、曲率半径R
31〜R
36Rdを、表7に示す。なお、第6段のスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6による各逆曲げ部の曲率半径Ra、Rcはそれぞれ4.3mm、同じく第6段のスタンド(最終曲げ直前スタンド)S6による、各製品曲げ部相当箇所の曲率半径Rb、Rdもそれぞれ4.3mmと、いずれも各製品曲げ部の曲率半径R
26、R
36(各2.0mm)より大きく設定した。また、この場合の各撓み部分13の前述の線長比Lp/Loを幾何学的に計算したところ、曲げ外側の板表面で1.05であった。
【0092】
【表7】
【0093】
これらの成形試験例3(従来法)及び成形試験例4(本発明法)によって得られた成形製品について、前述の評価の方法と同様にして、曲げ割れ防止効果を評価した。その結果、成形試験例4(本発明法)の場合は、各肉厚の板で、いずれの曲げ部でも最終段まで割れが発生しないことが確認された。一方、成形試験例3(従来法)の場合は、肉厚が厚い場合(1.5mmのケース、及び2.0mmのケース)で、最終段もしくはそれ以前の段のスタンドで、割れが発生してしまった。このような結果から、ハット型チャンネル材などの、複数の曲げ部を有するロール成形製品の成形にも、本発明の方法が有効であることが明らかである。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。