(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384134
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】電動式パワーステアリング装置用の軸連結機構
(51)【国際特許分類】
F16D 3/68 20060101AFI20180827BHJP
F16D 3/12 20060101ALI20180827BHJP
B62D 5/04 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
F16D3/68
F16D3/12 A
!B62D5/04
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-120984(P2014-120984)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-1028(P2016-1028A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
(72)【発明者】
【氏名】山口 修市
(72)【発明者】
【氏名】中川 昇
【審査官】
尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−183676(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/073526(WO,A1)
【文献】
特開2010−196863(JP,A)
【文献】
特開2004−068943(JP,A)
【文献】
特開昭61−218832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/68
F16D 3/12
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回転軸の回転を第二の回転軸に伝達するように第一及び第二の回転軸の間に配されて第一及び第二の回転軸を連結する軸連結機構であって、第一の回転軸に連結される第一の連結基体と、第二の回転軸に連結される第二の連結基体と、回転伝達部材と、この回転伝達部材に軸方向において重ね合わされた弾性部材とを具備しており、第一の連結基体は、第一の連結基部と、この第一の連結基部から軸方向に一体的に突出した第一の軸方向突部とを具備しており、第二の連結基体は、第二の連結基部と、この第二の連結基部から軸方向に一体的に突出した第二の軸方向突部とを具備しており、回転伝達部材は、円筒状の第一の内周面及び第一の外周面を有した第一の基部と、軸心周りの方向において互いに離間していると共に第一の外周面から径方向に伸びた少なくとも一対の第一の径方向突部とを有しており、弾性部材は、軸方向において第一の基部に重ね合わされていると共に円筒状の第二の内周面及び第二の外周面を有した第二の基部と、軸方向において回転伝達部材の第一の径方向突部に重ね合わされていると共に第二の外周面から径方向に伸びた少なくとも一対の第二の径方向突部とを有しており、第一の連結基体及び第二の連結基体のうちの少なくとも一方は、その軸方向の一方の端面の中央部から軸方向に伸びると共に回転伝達部材及び弾性部材の第一の内周面及び第二の内周面で規定される貫通孔に貫通した軸を具備しており、第一の軸方向突部は、軸心周りの方向における一対の第一の径方向突部間のうちの一方の第一の径方向突部間及び軸心周りの方向における一対の第二の径方向突部間のうちの一方の第二の径方向突部間に配されており、第二の軸方向突部は、軸心周りの方向における一対の第一の径方向突部間のうちの他方の第一の径方向突部間及び軸心周りの方向における一対の第二の径方向突部間のうちの他方の第二の径方向突部間に配されており、第二の基部は、第一の基部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、一対の第二の径方向突部の夫々は、一対の第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、且つ、当該第二の径方向突部に軸方向において重ね合わされている第一の径方向突部における軸心周りの方向の幅よりも大きな幅を有しており、第二の内周面は、第一の内周面の径よりも小さな径を有している軸連結機構。
【請求項2】
回転伝達部材は、第一及び第二の回転伝達部材を具備しており、弾性部材は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材間に配されており、第一及び第二の回転伝達部材の夫々は、前記第一の基部及び前記一対の第一の径方向突部を有しており、第二の基部は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部間に配されており、且つ、当該第一及び第二の回転伝達部材の夫々の第一の基部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、一対の第二の径方向突部は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材の第一の径方向突部間に配されており、第一及び第二の回転伝達部材の夫々の一対の第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、且つ、当該第二の径方向突部を軸方向において間に配した第一の径方向突部における軸心周りの方向の幅よりも大きな幅を有しており、第二の内周面は、第一及び第二の回転伝達部材の第一の内周面の径よりも小さな径を有している請求項1に記載の軸連結機構。
【請求項3】
第一及び第二の回転伝達部材を相互に結合する結合手段を更に具備しており、結合手段は、第一の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の一方の端面から第二の回転伝達部材の第一の基部に向かって伸びて第一の回転伝達部材の第一の基部に一体的に設けられていると共に先端で第二の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の一方の端面において当該第二の回転伝達部材の第一の基部に引っ掛けられた第一の結合部材と、第二の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の他方の端面から第一の回転伝達部材の第一の基部に向かって伸びて第一の回転伝達部材の第一の基部に一体的に設けられていると共に先端で第一の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の他方の端面において引っ掛けられた第二の結合部材とを具備しており、第二の内周面には、軸心周りの方向において互いに離間していると共に第一及び第二の結合部材の夫々が嵌合された凹所が設けられている請求項2に記載の軸連結機構。
【請求項4】
第一及び第二の結合部材の夫々は、軸方向に伸びて第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部のうちの対応の基部に一体的に設けられていると共に対応の凹所に嵌合された結合基体と、この結合基体の径方向外側の面に一体的に設けられていると共に第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部のうちの対応の基部の軸方向の他方の端面において引っ掛けられた鉤とを有しており、各結合基体は、凹所の深さより小さい径方向の厚みを有している請求項3に記載の軸連結機構。
【請求項5】
凹所の夫々は、第二の内周面で開口した第一の凹所と、この第一の凹所に連通すると共に対応の結合基体が嵌合された第二の凹所とを有しており、各結合基体は、第一の凹所の深さと第二の凹所の深さとの和より小さい径方向の厚み又は第二の凹所の深さと同一の若しくは第二の凹所より小さい径方向の厚みを有している請求項4に記載の軸連結機構。
【請求項6】
第一及び第二の軸方向突部は、軸心周りの方向のその各側面で、第一及び第二の回転軸の一定以下の相対回転では、軸心周りの方向において対面する第二の径方向突部の軸心周りの方向の側面に接触している一方、軸心周りの方向において対面する第一の径方向突部の軸心周りの方向の側面に、第一及び第二の回転軸の一定以下の相対回転では非接触となり、第一及び第二の回転軸の一定以上の相対回転では接触するようになっている請求項1から5のいずれか一項に記載の軸連結機構。
【請求項7】
軸は、第一の連結基体及び第二の連結基体のうちの少なくとも一方の軸方向の端面の中央部に一体的に設けられた軸部からなっている請求項1から6のいずれか一項に記載の軸連結機構。
【請求項8】
軸は、第一の回転軸及び第二の回転軸のうちの少なくとも一方の軸方向の軸端部からなっている請求項1から6のいずれか一項に記載の軸連結機構。
【請求項9】
第二の外周面は、第一の外周面の径よりも大きな径を有している請求項1から8のいずれか一項に記載の軸連結機構。
【請求項10】
第一の軸方向突部及び第二の軸方向突部の夫々は、第二の外周面に接触する径方向の内面を有している請求項1から9のいずれか一項に記載の軸連結機構。
【請求項11】
電動式パワーステアリング装置用の軸連結機構であって、第一の回転軸は、電動モータの出力回転軸に連結されるようになっており、第二の回転軸は、自動車のステアリング軸に連結されるようになっている請求項1から10のいずれか一項に記載の軸連結機構。
【請求項12】
第一の回転軸の回転を第二の回転軸に伝達するように第一及び第二の回転軸の間に配されて第一及び第二の回転軸を連結する軸連結機構であって、第一の回転軸に連結される第一の連結基体と、第二の回転軸に連結される第二の連結基体と、相互に結合されている第一及び第二の回転伝達部材と、この第一及び第二の回転伝達部材間に配されている弾性部材とを具備しており、第一の連結基体は、第一の連結基部と、この第一の連結基部から軸方向に一体的に突出した第一の軸方向突部とを具備しており、第二の連結基体は、第二の連結基部と、この第二の連結基部から軸方向に一体的に突出した第二の軸方向突部とを具備しており、第一及び第二の回転伝達部材の夫々は、円筒状の第一の内周面及び第一の外周面を有した第一の基部と、軸心周りの方向において互いに離間していると共に第一の外周面から径方向に伸びた少なくとも一対の第一の径方向突部とを有しており、弾性部材は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部間に配されていると共に円筒状の第二の内周面及び第二の外周面を有した第二の基部と、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材の第一の径方向突部間に配されていると共に第二の外周面から径方向に伸びた少なくとも一対の第二の径方向突部とを有しており、第一の連結基体及び第二の連結基体のうちの少なくとも一方は、その軸方向の一方の端面の中央部から軸方向に伸びると共に第一及び第二の回転伝達部材の第一の内周面並びに弾性部材の第二の内周面で規定される貫通孔に貫通した軸を具備しており、第一の軸方向突部は、軸心周りの方向における各対の第一の径方向突部間のうちの一方の第一の径方向突部間及び軸心周りの方向における一対の第二の径方向突部間のうちの一方の第二の径方向突部間に配されており、第二の軸方向突部は、軸心周りの方向における各対の第一の径方向突部間のうちの他方の第一の径方向突部間及び軸心周りの方向における一対の第二の径方向突部間のうちの他方の第二の径方向突部間に配されており、第二の基部は、第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、一対の第二の径方向突部の夫々は、第一及び第二の回転伝達部材の夫々の一対の第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、且つ、当該第二の径方向突部を軸方向において間に配した第一の径方向突部における軸心周りの方向の幅よりも大きな幅を有しており、第二の内周面は、第一及び第二の回転伝達部材の第一の内周面の径よりも小さな径を有している軸連結機構。
【請求項13】
第二の外周面は、第一及び第二の回転伝達部材の第一の外周面の径よりも大きな径を有している請求項12に記載の軸連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式パワーステアリング装置における電動モータ等の回転源側の回転軸と自動車のステアリング軸等の作動側の回転軸とを連結するに適した軸連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式パワーステアリング装置は、手動操作されるステアリングホイール(ハンドル)の回転に基づく回転力に電動モータの出力回転軸の回転に基づく回転力を付加してステアリングホイールの手動による操舵を容易に行い得るようにするものであって、斯かる電動式パワーステアリング装置においては、ステアリングホイール側のステアリング軸と電動モータの出力回転軸側の回転軸とを軸連結機構(カップリング)を介して連結している。
【0003】
軸連結機構を介してステアリング軸と回転軸とを連結する場合、電動モータの出力回転軸の反転時の衝撃、電動モータのブラシ振動が軸連結機構及びステアリング軸を介してステアリングホイールに伝達されて運転者に不快な操舵感を生じさせる虞があり、これを回避するために軸連結機構にゴム又は軟質樹脂等のスペーサを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−518242号公報
【特許文献2】特開2004−148990号公報
【特許文献3】特開2004−149070号公報
【特許文献4】特開2006−183676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献4には、電動モータ側の回転軸とステアリング側の回転軸との間に配されていると共に電動モータ側の回転軸の回転をステアリング側の回転軸に伝達する一対の剛性の回転伝達部材とこの一対の回転伝達部材間に配されている弾性の弾性部材とが回転軸に装着された軸連結機構が開示されているが、斯かる軸連結機構では、両回転軸間において軸心変位(心ずれ)が生じて回転軸と回転伝達部材とが径方向において衝突すると、これら回転軸と回転伝達部材とが互いに剛性であるために、異音(衝突音)が生じ、斯かる軸連結機構が自動車の電動式パワーステアリング装置に用いられると、自動車の乗員に不快感、特に、運転者に不快な操舵感覚を与えることになる。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、回転軸と回転伝達部材との径方向の衝突を回避でき、運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止できる電動式パワーステアリング装置用の軸連結機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の回転軸の回転を第二の回転軸に伝達するように第一及び第二の回転軸の間に配されて第一及び第二の回転軸を連結する本発明による軸連結機構は、剛性の回転伝達部材と、この回転伝達部材に軸方向において重ね合わされた弾性部材とを具備しており、回転伝達部材は、円筒状の第一の内周面及び第一の外周面を有した第一の基部と、軸心周りの方向において互いに離間していると共に第一の外周面から径方向に伸びた少なくとも一対の第一の径方向突部とを有しており、弾性部材は、軸方向において第一の基部に重ね合わされていると共に円筒状の第二の内周面及び第二の外周面を有した第二の基部と、軸方向において回転伝達部材の第一の径方向突部間に配されていると共に第二の外周面から径方向に伸びた少なくとも一対の第二の径方向突部とを有しており、第二の基部は、第一の基部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、一対の第二の径方向突部の夫々は、一対の第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、且つ、当該第二の径方向突部に軸方向において重ね合わされている第一の径方向突部における軸心周りの方向の幅よりも大きな幅を有しており、第二の内周面は、第一の内周面の径よりも小さな径を有している。
【0008】
本発明による軸連結機構によれば、弾性部材の第二の内周面が剛性の回転伝達部材の第一の内周面の径よりも小さな径を有しているために、第二の内周面で規定される貫通孔に第一の回転軸及び第二の回転軸のうちの一方の回転軸が挿入された場合に、第一の回転軸及び第二の回転軸間において軸心ずれが生じても、剛性の回転伝達部材の第一の内周面への一方の回転軸の接触、衝突を弾性部材で阻止でき、而して、回転軸と回転伝達部材との径方向の衝突を回避でき、運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止できる。
【0009】
加えて、本発明による軸連結機構によれば、一対の第二の径方向突部の夫々は、回転伝達部材の一対の第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、且つ、当該第二の径方向突部に軸方向において重ね合わされている第一の径方向突部における軸心周りの方向の幅よりも大きな幅を有しているために、一方の回転軸の回転の他方の回転軸への伝達が弾性部材の一対の第二の径方向突部の弾性変形を介して行われる結果、一方の回転軸の微小な回転の他方の回転軸への伝達を弾性部材の一対の第二の径方向突部の弾性変形で低減又は阻止できると共に一方の回転軸の他方の回転軸に対する大きな相対回転の他方の回転軸への伝達を弾性部材の一対の第二の径方向突部よりも大きな剛性を有している回転伝達部材を介してそのまま行い得、しかも、弾性部材の一対の径方向突部における軸心周りの方向の一定以上の弾性変形では大きい剛性をもった回転伝達部材で弾性部材の一対の径方向突部の大きな変形を阻止できるために、弾性部材の大きな変形による機械的疲労を低減でき、弾性部材に対して柔軟性のある剛性の小さい樹脂材料を用いた場合には、樹脂材料のクリープによる弾性部材の永久的な変形をも低減できる。
【0010】
本発明において、回転伝達部材は、好ましくは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の硬質の樹脂から形成されるが、その他の剛性を呈する硬質の樹脂から形成されていてもよく、一方、弾性部材は、その全体がウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体から形成されているとよいが、これに代えて、回転伝達部材と同様の硬質の樹脂から形成された芯部と、この芯部を覆ていると共にウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴムからなる被覆部とを有した、所謂、二色成形体からなっていてもよく、例えば、弾性部材の第二の基部は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の剛性を呈する硬質の樹脂から形成された芯部と、第一の基部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であるウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体からなって、芯部を覆う被覆部とを有していてもよく、斯かる第二の基部の被覆部で、剛性の回転伝達部材の第一の内周面への一方の回転軸の接触、衝突を弾性的に阻止するようにしてもよく、同様に、弾性部材の一対の第二の径方向突部の夫々は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等の硬質の樹脂から形成された芯部と、第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であるウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体からなって、芯部を覆う被覆部とを有していてもよく、斯かる一対の第二の径方向突部の夫々の被覆部の弾性変形で、一方の回転軸の微小な回転の他方の回転軸への伝達を低減又は阻止するようにしてもよく、また、一対の第二の径方向突部の全体又はその被覆部がウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体から形成されている必要はなく、例えば、軸心周りの方向で弾性撓み変形できるように、径方向に伸びた隙間をもって一対の第二の径方向突部の夫々が形成されていてもよい。
【0011】
本発明の軸連結機構の好ましい例では、回転伝達部材は、第一及び第二の回転伝達部材を具備しており、弾性部材は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材間に配されており、第一及び第二の回転伝達部材の夫々は、前記第一の基部及び前記一対の第一の径方向突部を有しており、第二の基部は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部間に配されており、且つ、当該第一及び第二の回転伝達部材の夫々の第一の基部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、一対の第二の径方向突部は、軸方向において第一及び第二の回転伝達部材の第一の径方向突部間に配されており、第一及び第二の回転伝達部材の夫々の一対の第一の径方向突部の剛性よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であり、且つ、当該第二の径方向突部を軸方向において間に配した第一の径方向突部における軸心周りの方向の幅よりも大きな幅を有しており、第二の内周面は、第一及び第二の回転伝達部材の第一の内周面の径よりも小さな径を有している。
【0012】
斯かる好ましい例では、弾性部材が軸方向において第一及び第二の回転伝達部材に挟まれていると共に弾性部材の第二の内周面が第一及び第二の回転伝達部材の第一の内周面の径よりも小さな径を有しているために、第二の内周面で規定される貫通孔に軸が挿入された場合に、第一の回転軸及び第二の回転軸間において軸心ずれが生じても、第一及び第二の回転伝達部材の第一の内周面への軸の接触、衝突を弾性部材で阻止でき、而して、回転軸と回転伝達部材との径方向の衝突を回避でき、運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止できる上に、第一及び第二の回転伝達部材からなる二つの回転伝達部材で第一の回転軸の回転を第二の回転軸に伝達でき、耐久性を向上し得る。
【0013】
上記の好ましい例では、第一及び第二の回転伝達部材を相互に結合する結合手段を更に具備していてもよく、この結合手段は、好ましい例では、第一の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の一方の端面から第二の回転伝達部材の第一の基部に向かって伸びて第一の回転伝達部材の第一の基部に一体的に設けられていると共に先端で第二の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の一方の端面において当該第二の回転伝達部材の第一の基部に引っ掛けられた第一の結合部材と、第二の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の他方の端面から第一の回転伝達部材の第一の基部に向かって伸びて第一の回転伝達部材の第一の基部に一体的に設けられていると共に先端で第一の回転伝達部材の第一の基部の軸方向の他方の端面において引っ掛けられた第二の結合部材とを具備しており、この例では、第二の内周面には、軸心周りの方向において互いに離間していると共に第一及び第二の結合部材の夫々が嵌合された凹所が設けられていてもよい。
【0014】
第一及び第二の回転伝達部材を具備した本発明の軸連結機構の好ましい例において、上記のように、第一及び第二の回転伝達部材が結合手段を介して相互に結合されていると、組み付け性を向上できると共に弾性部材の弾性変形による第一及び第二の回転伝達部材の軸方向の相互の離反をなくし得て第一及び第二の回転伝達部材の軸方向の広がりを一定に抑えることができ、しかも、軸心周りの方向において互いに離間して第二の内周面に設けられた凹所に、第一及び第二の結合部材の夫々が嵌合されていると、第一及び第二の結合部材を介して弾性部材が第一及び第二の回転伝達部材に対して位置決めされる結果、第一及び第二の回転軸の相対的な両方向の回転に対して弾性部材による効果を均等に得ることができる。
【0015】
第一及び第二の結合部材の夫々の好ましい例は、軸方向に伸びて第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部のうちの対応の基部に一体的に設けられていると共に対応の凹所に嵌合された結合基体と、この結合基体の径方向外側の面に一体的に設けられていると共に第一及び第二の回転伝達部材の第一の基部のうちの対応の基部の軸方向の他方の端面において引っ掛けられた鉤とを有しており、各結合基体は、凹所の深さより小さい径方向の厚みを有しており、凹所の夫々は、第二の内周面で開口した第一の凹所と、この第一の凹所に連通すると共に対応の結合基体が嵌合された第二の凹所とを有しており、各結合基体は、第一の凹所の深さと第二の凹所の深さとの和より小さい径方向の厚み又は第二の凹所の深さと同一の若しくは第二の凹所より小さい径方向の厚みを有しており、このように各結合基体が凹所の深さより小さい径方向の厚み、好ましくは、第一の凹所の深さと第二の凹所の深さとの和より小さい径方向の厚み、より好ましくは、第二の凹所の深さと同一の若しくは第二の凹所より小さい径方向の厚みを有していると、各結合基体の凹所からの径方向内方への突出をなくし得、結合基体の一方の回転軸への接触、衝突を回避できる。
【0016】
本発明による軸連結機構は、軸心周りの方向のスペーサとして二つの回転軸の間に配した回転伝達部材と弾性部材とを少なくとも一個具備していればよいのであるが、好ましい例では、第一の回転軸に連結される第一の連結基体と、第二の回転軸に連結される第二の連結基体とを具備しており、第一の連結基体は、第一の連結基部と、この第一の連結基部から軸方向に一体的に突出した第一の軸方向突部とを具備しており、第二の連結基体は、第二の連結基部と、この第二の連結基部から軸方向に一体的に突出した第二の軸方向突部とを具備しており、第一の連結基体及び第二の連結基体のうちの少なくとも一方は、その軸方向の一方の端面の中央部から軸方向に伸びると共に回転伝達部材及び弾性部材の第一の内周面及び第二の内周面で規定される貫通孔に貫通した軸を具備しており、第一の軸方向突部は、軸心周りの方向における各対の第一の径方向突部間のうちの一方の第一の径方向突部間及び軸心周りの方向における一対の第二の径方向突部間のうちの一方の第二の径方向突部間に配されており、第二の軸方向突部は、軸心周りの方向における各対の第一の径方向突部間のうちの他方の第一の径方向突部間及び軸心周りの方向における一対の第二の径方向突部間のうちの他方の第二の径方向突部間に配されており、この場合、一方の回転軸の他方の回転軸に対する相対的な初期回転で遊びが生じないようにするために、第一及び第二の軸方向突部は、軸心周りの方向のその各側面で、第一及び第二の回転軸の一定以下の相対回転では、軸心周りの方向において対面する第二の径方向突部の軸心周りの方向の側面に接触している一方、軸心周りの方向において対面する第一の径方向突部の軸心周りの方向の側面に、第一及び第二の回転軸の一定以下の相対回転では非接触となり、第一及び第二の回転軸の一定以上の相対回転では接触するようになっているとよく、第一の連結基体は、一方の回転軸に直接的に連結されて固着されていてもよいが、歯車機構等の他の回転伝達機構を介して一方の回転軸に間接的に連結されていてもよく、第二の連結基体の他方の連結基体も同様である。
【0017】
上記の例で、軸は、第一の連結基体及び第二の連結基体のうちの少なくとも一方の軸方向の端面の中央部に一体的に設けられた軸部からなっていても、第一の回転軸及び第二の回転軸のうちの少なくとも一方の軸方向の軸端部からなっていてもよく、第二の外周面は、第一の外周面の径よりも大きな径を有していてもよく、斯かる径を第二の外周面が有していると、第一の回転軸及び第二の回転軸間において軸心ずれが生じても、第一の軸方向突部及び第二の軸方向突部の夫々の径方向の内面の第一の外周面への接触、衝突を弾性部材で阻止でき、而して、第一の軸方向突部及び第二の軸方向突部と第一の基部との径方向の衝突を回避でき、これによっても運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止できる。
【0018】
本発明では、第一の軸方向突部及び第二の軸方向突部の夫々は、第二の外周面に接触する径方向の内面を有していてもよい。
【0019】
好ましい例では、軸方向において弾性部材の突部に対面する回転伝達部材の突部の夫々は、軸心周りの方向のその中央部では、対面する弾性部材の突部と接触する一方、軸心周りの方向のその縁部では、対面する弾性部材の突部との間で空所を形成するように、軸心周りの方向において中高になっており、斯かる空所が形成されていると、弾性変形での弾性部材の一対の突部における軸心周りの方向の縁部の膨らみを空所で吸収できる結果、回転伝達部材の軸方向において互いに対面する突部の相互離反を避けることができ、而して、安定した回転力の伝達を行い得る。
【0020】
本発明の軸連結機構は、電動式パワーステアリング装置用のものであってもよく、この場合、第一の回転軸は、電動モータの出力回転軸に連結されるようになっており、第二の回転軸は、自動車のステアリング軸に連結されるようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、回転軸と回転伝達部材との径方向の衝突を回避でき、運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止できる電動式パワーステアリング装置用の軸連結機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す例の回転伝達部材と弾性部材との組み合わせ右側面説明図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すVI−VI線矢視断面説明図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す例の電動モータ側の連結基体の左側面説明図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すVIII―VIII線矢視断面説明図である。
【
図9】
図9は、
図1に示す例のステアリング軸側の連結基体の右側面説明図である。
【
図11】
図11は、
図1に示す例の電動モータ側の回転伝達部材の右側面説明図である。
【
図13】
図13は、
図1に示す例のステアリング軸側の回転伝達部材の右側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0024】
図1から
図17において、本例の電動式パワーステアリング装置用の軸連結機構1は、回転軸2に連結された連結基体3と、回転軸4に連結された連結基体5と、両連結基体3及び5を介して回転軸2と回転軸4との間に配されていると共に回転軸2の軸心Oを中心としたR方向の回転を回転軸4に伝達する一対の剛性の回転伝達部材6及び7からなる回転伝達部材8と、回転伝達部材6及び7間に配されていると共に回転伝達部材6及び7に軸方向において重ね合わされて当該回転伝達部材6及び7に結合された弾性部材9と、一対の回転伝達部材6及び7を相互に結合する結合手段10とを具備している。
【0025】
回転軸2は、電動式パワーステアリング装置の電動モータ側の回転軸であり、例えば、電動モータの出力回転軸に連結されるようになっており、回転軸4は、自動車のステアリング軸側の回転軸であり、例えば、自動車のステアリング軸に連結されるようになっている。
【0026】
剛性の連結基体3は、円環状の連結基部11と、連結基部11の一方の環状面12に当該環状面12から軸方向、即ち、A方向に突出して一体的に形成されていると共に軸心O周りの方向、即ち、R方向に90°の等角度間隔で配された二対の軸方向突部13と、回転軸2の一端部がキー及びキー溝を介して嵌着された貫通孔14とを具備しており、剛性の連結基体5は、円形の連結基部16と、連結基部16のA方向の一方の円形の端面17に当該端面17からA方向に突出して一体的に形成されていると共にR方向に90°の等角度間隔で配された二対の軸方向突部18と、連結基部16の端面17の中央部に当該端面17の中央部からA方向に伸びて突出して一体的に設けられた軸としての軸部19と、回転軸4の一端部がキー及びキー溝を介して嵌着された凹所20とを具備している。
【0027】
軸方向突部13の夫々は、R方向において一対の剛性回転伝達面としての側面21及び22を有しており、軸方向突部18の夫々もまた、R方向において一対の剛性回転伝達面としての側面23及び24を有しており、軸方向突部13及び18の夫々は、径方向、即ち、B方向に伸びた内面25及び26を有している。
【0028】
ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等から一体に形成されている剛性の回転伝達部材6は、連結基部11と同心に配されていると共に円筒状の内周面31及び外周面32を有した円環状の基部33と、基部33の円筒状の外周面32からB方向に伸びて基部33に一体的に設けられていると共にR方向において45°の等角度間隔で互いに離間して配された四対の径方向突部34と、基部33の円筒状の内周面31にA方向に伸びると共にR方向において90°の等角度間隔で互いに離間して設けられた四個の同一の深さを有した溝35と、各溝35の一端に連接されていると共に基部33の内周面31であって環状面12に対面する基部33のA方向の一方の円環状の端面36に設けられた四個の係止溝37とを具備している。
【0029】
各径方向突部34は、R方向において一対の剛性回転伝達面としての側面38及び39を有しており、各径方向突部34のA方向における弾性部材9に対面する面40は、R方向において中高になっている。
【0030】
回転伝達部材6と同様にポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂等から一体に形成されていると共に回転伝達部材6と同様に形成された剛性の回転伝達部材7は、連結基部16と同心に配されていると共に円筒状の内周面51及び外周面52を有した円環状の基部53と、基部53の円筒状の外周面52からB方向に伸びて基部53に一体的に設けられていると共にR方向において45°の等角度間隔で互いに離間して配された四対の径方向突部54と、基部53の円筒状の内周面51にA方向に伸びると共にR方向において90°の等角度間隔で互いに離間して設けられた四個の同一の深さを有した溝55と、各溝55の一端に連接されていると共に基部53の内周面51であって端面17に対面する基部53のA方向の一方の端面56に設けられた四個の係止溝57とを具備して回転伝達部材6と同一に構成されている。
【0031】
各径方向突部54は、R方向において一対の剛性回転伝達面としての側面58及び59を有しており、各径方向突部54のA方向において弾性部材9に対面する面60は、R方向において中高になっている。
【0032】
回転伝達部材6と回転伝達部材7とは、弾性部材9を間にして、基部33と基部53とが、径方向突部34の夫々と径方向突部54の夫々とが夫々A方向において互いに対面するようにして同心に配されている。
【0033】
回転伝達部材6及び7よりも小さな剛性を有すると共に弾性変形可能であってウレタンゴム、ポリエステルエラストマー等のゴム弾性体から一体形成されている弾性部材9は、A方向において基部33及び53に重ね合わされて当該基部33及び53と同心であってA方向において当該基部33及び53間に配されていると共に内周面31及び51の径R1よりも小さな径r1を有している円筒状の内周面71並びに外周面32及び52の径r2よりも大きな径R3を有している円筒状の外周面72を有した円環状の基部73と、基部33及び53の剛性よりも小さな剛性を有して弾性変形可能である基部73の円筒状の外周面72からB方向に伸びて基部73に一体的に設けられていると共にR方向において45°の等角度間隔で互いに離間してA方向において径方向突部34及び54間に配されており、且つ、これら径方向突部34及び54の剛性よりも小さな剛性を有して弾性変形可能であり、しかも、重ね合わされている径方向突部34及び54におけるR方向の幅dよりも大きな幅Dを有した四対の径方向突部74と、R方向において45°の等角度間隔で互いに離間していると共に内周面71で開口した凹所75及び凹所75に連通する凹所76を有して内周面71に設けられた八個の凹所77とを具備しており、一対の回転伝達部材6及び7に挟まれて、しかも、これらにA方向の面で互いに接触して配されており、外周面72は、軸方向突部13及び18の内面25及び26に接触している。
【0034】
弾性部材9は、A方向において回転伝達部材6に対面する面78及び回転伝達部材7に対面する面79で平坦になっており、各径方向突部74をA方向において間に配した径方向突部34及び54におけるR方向の幅dよりも大きな幅Dを有した当該各径方向突部74は、R方向において側面81及び82を有している。
【0035】
回転伝達部材6及び7と回転伝達部材6及び7間に挟まれた弾性部材9とは、基部33及び53と基部73とが、径方向突部34及び54の夫々と径方向突部74の夫々とが夫々A方向において互いに対面してA方向に一列に配列されるようにして、しかも、溝35及び凹所76と溝55及び凹所76との夫々がA方向に一列に配列されるようにして、同心に配されている。
【0036】
軸部19は、挿入隙間を残して内周面71の径r1と同一の径をもっており、内周面71に接して内周面31及び51並びに内周面71で規定される貫通孔83を貫通して貫通孔83に挿入されている。
【0037】
結合手段10は、基部33のA方向の他方の端面91から凹所76を通って基部53に向かって伸びてR方向において90°の等角度間隔で互いに離間して基部33に一体的に設けられていると共に先端で基部53のA方向の端面56の係止溝57において当該基部53に引っ掛けられた四個の結合部材92と、基部53のA方向の他方の端面93から凹所76を通って基部33に向かって伸びてR方向において90°の等角度間隔で互いに離間して基部53に一体的に設けられていると共に先端で基部33のA方向の端面36の係止溝37において当該基部33に引っ掛けられた四個の結合部材94とを具備している。
【0038】
結合部材92の夫々は、A方向に伸びて基部33に一体的に設けられていると共に対応の凹所76及び溝55にぴったりと嵌合された結合基体95と、結合基体95の径方向外側の面96に一体的に設けられていると共に対応の係止溝57において基部53の端面56に引っ掛けられた鉤97とを有しており、結合基体95は、凹所76及び溝55の深さと同一の径方向の厚みを有していると共に内周面31及び51と面一の内周面98を有しており、結合部材94の夫々は、A方向に伸びて基部53に一体的に設けられていると共に対応の凹所76及び溝35にぴったりと嵌合された結合基体99と、結合基体99の径方向外側の面100に一体的に設けられていると共に対応の係止溝37において基部33の端面36に引っ掛けられた鉤101とを有しており、結合基体99は、凹所76及び溝35の深さと同一の径方向の厚みを有していると共に内周面51及び31と面一の内周面102を有しており、これら溝35及び55並びに凹所76は、互いに同一の深さを有している。
【0039】
このように内周面71には、R方向において45°の等角度間隔で互いに離間していると共に結合部材92及び94の結合基体95及び99の夫々が嵌合されていると共に同一の深さをもった凹所76が設けられており、結合基体95及び99の夫々は、凹所76の深さより小さい径方向の厚みを有している。
【0040】
弾性部材9と、弾性部材9を間にしてしかも結合手段10により相互に結合された回転伝達部材6及び7とにおいて、連結基体3の軸方向突部13の夫々は、R方向において、回転伝達部材6及び7の各対の径方向突部34及び54間のうちの一方の径方向突部34及び54間、すなわち一つおきの径方向突部34及び54間及び弾性部材9の各対の径方向突部74間のうちの一方の径方向突部74間、すなわち一つおきの径方向突部74間に配されており、連結基体5の軸方向突部18の夫々は、R方向において、回転伝達部材6及び7の各対の径方向突部34及び54間のうちの他方の径方向突部34及び54間、すなわち残る一つおきの径方向突部34及び54間及び弾性部材9の各対の径方向突部74間のうちの他方の径方向突部74間、すなわち残る一つおきの径方向突部74間に配されており、回転軸2及び4の一定以下のR方向の相対回転(捩じり)では、連結基体3の各軸方向突部13は、R方向のその各側面21及び22で、R方向において対面する弾性部材9の各径方向突部74のR方向の側面81及び82に夫々接触している一方、R方向において対面する回転伝達部材6及び7の径方向突部34及び54の側面38及び58並びに39及び59に夫々非接触となっており、連結基体5の各軸方向突部18は、R方向のその各側面23及び24で、R方向において対面する弾性部材9の各径方向突部74のR方向の側面81及び82に夫々接触している一方、R方向において対面する回転伝達部材6及び7の径方向突部34及び54の側面38及び58並びに39及び59に夫々非接触となっている。
【0041】
A方向において弾性部材9の径方向突部74に対面すると共にR方向において中高になっている回転伝達部材6及び7の径方向突部34及び54の夫々は、R方向のその中央部では、対面する弾性部材9において対応の径方向突部74の面78及び79の夫々と接触する一方、R方向のその縁部では、対面する弾性部材9において対応の径方向突部74の面78及び79の夫々との間で空所111を形成している。
【0042】
以上の回転軸2のR方向の回転を回転軸4に伝達するように回転軸2及び4を相互に連結する軸連結機構1を具備した電動式パワーステアリング装置では、ステアリングホイールが運転者により手動操作されると、回転軸4がR方向に回転されて、回転軸4のR方向の回転は、図示しない歯車等の伝達機構を介してドラッグ・リンク等に往復動として伝達されて操向輪(車輪)に対する操舵力を与える。運転者によるステアリングホイールの手動操作において、ステアリングホイールに加えられるトルクを検出するトルク検出器からの検出信号により制御される電動モータが作動されると、回転軸2がR方向に回転されて、軸方向突部13による径方向突部74のR方向の変形後における側面38及び58への側面21の接触又は側面39及び59への側面22の接触に基づく軸方向突部13による径方向突部34及び54のR方向への押圧を介して連結基体3のR方向の回転が連結基体5の軸方向突部18に伝達されて、これにより回転軸4のR方向の回転力に対して回転軸2のR方向の回転力を付加して運転者によるステアリングホイールの手動操作を補助するようになっている。
【0043】
軸連結機構1では、ステアリングホイールが運転者により手動操作されないで回転軸4がR方向に回転されない状態又はステアリングホイールが運転者により手動操作されて回転軸4がR方向に回転される状態のいずれの状態においても、回転軸4に対する回転軸2のR方向の相対回転が幅Dと幅dとの差の半分程度以内の微小なものである場合には、径方向突部74が容易に圧縮変形する結果、斯かる回転軸2の微小なR方向の相対回転は回転軸4には殆ど伝達されず、而して、軸連結機構1及び回転軸4を介する電動モータの反転時の衝撃、ブラシ振動のステアリングホイールへの伝達を低減でき操舵感覚を不快にさせないようにできる上に、径方向突部74の一定以上の圧縮変形後、側面38及び58への側面21の接触又は側面39及び59への側面22の接触が生じて径方向突部74のそれ以上の圧縮変形を抑止できる結果、径方向突部74の夫々のクリープによるへたりを防止でき、軸方向突部13及び18と径方向突部74とのR方向における側面21及び22並びに23及び24と側面81及び82との互いの接触を長期に亘って維持でき、回転軸4と回転軸2との間にR方向についてのガタが生じ難いことになり、回転伝達部材6及び7は、ステアリングホイールの運転者による手動操作で回転軸4がR方向に回転されると共に電動モータの作動で回転軸2がR方向に回転されて回転軸4に対して回転軸2が一定以上、すなわち幅Dと幅dとの差の半分程度以上にR方向に相対回転されようとする場合には、側面38及び58への側面21の接触又は側面39及び59への側面22の接触に基づく軸方向突部13による径方向突部34及び54のR方向への押圧でもって斯かる一定以上のR方向の相対回転に応答して回転軸2のR方向の回転を回転軸4に伝達して回転軸4の回転を補助するようになる。
【0044】
以上のように軸連結機構1によれば、回転伝達部材6及び7間に配されている弾性部材9がA方向において回転伝達部材6及び7の径方向突部34及び54間の夫々に配されていると共に径方向突部34及び54の夫々のR方向の幅dよりも大きな幅Dをもった径方向突部74を有しており、弾性部材9の各径方向突部74が回転伝達部材6及び7の径方向突部34及び54の夫々の剛性よりも小さな剛性を有している結果、回転軸2のR方向の回転の回転軸4への伝達が弾性部材9の径方向突部74の弾性変形を介して行われるために、回転軸2のR方向の微小な回転の回転軸4への伝達を弾性部材9の径方向突部74の弾性変形で低減又は阻止できると共に回転軸2の回転軸4に対する大きなR方向の相対回転の回転軸4への伝達を弾性部材9の径方向突部74よりも大きな剛性を有している回転伝達部材6及び7を介してそのまま行い得、しかも、回転軸4に対する回転軸2のR方向の一定以上の相対回転では大きい剛性をもった回転伝達部材6及び7で弾性部材9の径方向突部74の大きな弾性変形を阻止できるために、弾性部材9に対して柔軟性のある剛性の小さい樹脂材料を用いてもクリープによる弾性部材9の永久的な変形を低減でき、その上、一対の回転伝達部材6及び7が結合手段10を介して相互に連結されているために、組み付け性を向上できると共に弾性部材9の弾性変形による一対の回転伝達部材6及び7のA方向の相互の離反をなくし得て一対の回転伝達部材6及び7のA方向の広がりを一定に抑えることができ、而して、電動モータの反転時の衝撃、ブラシ振動のステアリングホイールへの伝達を低減できる上に回転軸2及び4間のR方向についてのガタをなくし得て、操舵感覚を不快にさせないと共に耐久性に優れ特性の安定したものとし得る。
【0045】
また、軸連結機構1によれば、弾性部材9が結合手段10の両結合部材92及び94を介して一対の回転伝達部材6及び7に対してR方向に関して位置決めされているために、回転軸2及び4の相対的なR方向の両方の回転に対して弾性部材9による効果を均等に得ることができる。
【0046】
加えて、軸連結機構1によれば、空所111が形成されているために、弾性部材9の各径方向突部74におけるR方向の縁部の圧縮変形されて潰れた膨らみを空所111で吸収できる結果、一対の回転伝達部材6及び7のA方向において互いに対面する径方向突部34及び54の相互離反を避けることができる上に、圧縮変形されて潰れた弾性部材9の径方向突部74の一部が径方向突部34及び54の側面38及び39並びに58及び59に展延して径方向突部34及び54の側面38及び39並びに58及び59を覆うことがなくなる結果、弾性部材9の各径方向突部74のクリープによるへたりをより効果的に防止でき、而して、一対の回転伝達部材6及び7のR方向の剛性を維持でき、安定した回転力の伝達を行い得る。
【0047】
加えて、軸連結機構1によれば、弾性部材9の内周面71が回転伝達部材6及び7の内周面31及び51の径R1よりも小さな径r1を有しているために、回転軸2及び4間において軸心ずれが生じても、剛性の回転伝達部材6及び7の内周面71への軸部19の接触、衝突を弾性部材9で阻止でき、而して、運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止でき、各結合基体99が凹所76及び溝35の深さと同一の径方向の厚みを有しているため、各結合基体99の凹所76及び溝35からのB方向内方への突出をなくし得、結合基体99の軸部19への接触、衝突を回避でき、これによっても、運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止でき、外周面72が外周面32及び52の径r2よりも大きな径R3を有しているために、回転軸2及び4間において軸心ずれが生じても、軸方向突部13及び18の内面25及び26の外周面32及び52への接触、衝突を弾性部材9で阻止でき、而して、軸方向突部13及び18と基部33及び53とのB方向の衝突を回避でき、これによっても運転者に不快な操舵感覚を与える異音の発生を抑止できる。
【0048】
上記の例の軸連結機構1は、一個の弾性部材9からなっているが、これに代えて、二個以上の弾性部材9からなっていてもよく、回転伝達部材6及び7の夫々もまた二個以上からなっていてもよい。また、連結基体3及び5の軸方向突部13及び18、回転伝達部材6及び7の径方向突部34及び54、弾性部材9の径方向突部74、結合手段10の結合部材92及び94並びに弾性部材9の凹所75は、上記の個数に限らないのであり、また、軸部19を連結基部11に設けてもよく、更には、軸部19は、回転軸2又は4のうちの少なくとも一方の軸方向の軸端部からなっていてもよく、一方、各結合基体99は、凹所75の深さと凹所76の深さとの和、即ち、凹所77の深さより小さいB方向の厚みを有していてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 軸連結機構
2、4 回転軸
3、5 連結基体
6、7、8 回転伝達部材
9 弾性部材
10 結合手段