(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポンプ制御装置が、設定された目標循環量に基づいて複数の前記電動ポンプの少なくとも1つを制御する通常駆動モードと、前記混入判定処理部での混入判定処理及び前記空気排出処理部での空気排出処理を制御する空気排出モードとを実行可能に構成されている請求項1記載の冷却システム。
前記ポンプ制御装置が、設定された目標循環量に基づいて複数の前記電動ポンプの少なくとも1つを制御しつつ前記混入判定処理部での混入判定処理を制御する通常駆動モードと、前記空気排出処理部での空気排出処理を制御する空気排出モードとを実行可能に構成されている請求項1記載の冷却システム。
前記電動ポンプがブラシレス直流モータを備えて構成され、前記ポンプ制御装置がデューティ比の設定により前記ブラシレス直流モータの回転数を調節する電力供給部を備えて構成され、
前記空気排出処理部は、前記混入判定処理部で混入状態と判定された前記電動ポンプのデューティ比を、前記混入判定処理部による処理により正常状態と判定された前記電動ポンプのデューティ比より低く設定する請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷却システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車のようにエンジンとラジエータとの間の流路を循環する冷却水に空気が含まれる場合には冷却効率を低下させるものである。特に、冷却水を交換した直後には冷却水に空気が含まれることも多く、冷却水から空気を排出する作業も必要となる。
【0007】
このような課題に対して、特許文献2では、電動ポンプを間歇的に駆動することにより流路を循環する冷却水の水量を繰り返して増減させ、冷却水に含まれる空気のラジエータキャップへの移動を促進している。
【0008】
しかしながら、例えば、インペラを駆動回転させる電動ポンプでは、インペラの部位の冷却水に空気が存在する場合には、インペラと冷却水との接触を空気が妨げるため、電動ポンプを駆動してもインペラの回転力を冷却水に作用させることができず、冷却水の循環効率を低下させるものであった。
【0009】
このような理由から、ポンプ内に空気が存在する状況では、特許文献2に示されるように冷却水の循環量を増減させる制御を実行しても電動ポンプの駆動時には冷却水の循環を効率的に行えず空気の排出を行い難いものであった。
【0010】
本発明の目的は、ポンプ内の冷媒に空気が混入する場合でも、混入した空気の排出を良好に行える冷却システムを構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、熱源と放熱器との間に冷媒を循環させる冷媒流路に対して直列に配置される複数の電動ポンプと、複数の前記電動ポンプを個別に制御するポンプ制御装置とを備え、前記ポンプ制御装置が、前記電動ポンプ内の冷媒に空気が混入しない正常状態と、前記電動ポンプ内の冷媒に空気が混入した混入状態と、において設定電力が供給された場合の前記電動ポンプの回転数の差から空気の混入の有無を
複数の前記電動ポンプの各々に対して判定する混入判定処理部を備えると共に、複数の前記電動ポンプのうち前記混入判定処理部で混入状態と判定された
電動ポンプを、複数の
前記電動ポンプのうち前記混入判定処理部で正常状態と判定された
電動ポンプの回転数より低回転で駆動する又は停止する又は逆転駆動する空気排出処理部を備えている点にある。
【0012】
例えば、インペラを有する電動ポンプの内部の冷媒に空気が混入する状況で、この電動ポンプを駆動した場合には、空気がインペラと冷媒との直接的な接触を妨げ、冷媒の排出機能が低下すると同時にインペラに作用する負荷が低下するため電動ポンプの回転数は上昇する。この現象を利用することにより混入判定処理部では、ポンプ内に空気が混入する
電動ポンプと、空気が混入しない
電動ポンプとの判定が可能となる。また、混入判定処理部での判定により、複数の電動ポンプのうちポンプ内に空気が混入する混入状態にある
電動ポンプが特定された場合には、空気排出処理部により、ポンプ内
に空気が混入しない正常状態の電動ポンプが所定の回転数で駆動され、ポンプ内に空気が混入する混入状態の電動ポンプが
正常状態の電動ポンプの回転数より低回転で駆動する又は停止する又は逆転駆動する。
【0013】
この空気排出処理部は、正常状態の電動ポンプを所定回転数で駆動することにより、冷媒流路に対して冷媒を所定の流速で流す。また、混入状態の電動ポンプを正常状態の電動ポンプ
の回転数より低回転で駆動する又は停止する又は逆転駆動することにより
、混入状態の電動ポンプのインペラの回転数と、冷媒の流速との相対速度を大きくすることになり、その結果、インペラ等に付着する状態で空気が存在していても、その空気をインペラ等から剥がし取るように分離して冷媒流路に送ることが可能となる。
従って、電動ポンプの回転数からポンプ内への空気の混入を判定した場合には、複数の電動ポンプの制御により空気の排出を良好に行える冷却システムが構成された。特に、電動ポンプにセンサレスブラシレス直流モータを用いた場合には、センサレスのため低回転に限界があり、冷媒に混入した空気が排出し難い不都合を招くものであったが、複数の電動ポンプを用いることにより低速回転を行わすとも良好に空気を排出できる。
【0014】
本発明は、前記ポンプ制御装置が、設定された目標循環量に基づいて複数の前記電動ポンプの少なくとも1つを制御する通常駆動モードと、前記混入判定処理部での混入判定処理及び前記空気排出処理部での空気排出処理を制御する空気排出モードとを実行可能に構成されても良い。
【0015】
これによると、例えば、メンテナンスで冷媒流路の冷媒を交換した直後のように、冷媒に空気が含まれる可能性が高い場合には、ポンプ処理装置において空気排出モードを実行する。これにより、混入判定処理部での混入判定処理によりポンプ内に空気が含まれる電動ポンプが特定される。この後に空気排出処理部での空気排出処理によりポンプ内の空気が排出される。
【0016】
本発明は、前記ポンプ制御装置が、設定された目標循環量に基づいて複数の前記電動ポンプの少なくとも1つを制御しつつ前記混入判定処理部での混入判定処理を制御する通常駆動モードと、前記空気排出処理部での空気排出処理を制御する空気排出モードとを実行可能に構成されても良い。
【0017】
これによると、通常駆動モードを実行することにより、混入判定処理部での混入判定処理により冷媒を循環させる過程で複数の電動ポンプのうちポンプ内に空気が混入する混入状態にあるものの特定が可能となる。また、この混入判定処理によって混入状態にある電動ポンプの存在が判定された場合には、空気排出モードを実行することにより空気排出処理部での空気排出処理により空気の排出が可能となる。
【0018】
本発明は、前記ポンプ制御装置が、前記正常状態で前記設定電力が供給された際における複数の前記電動ポンプの回転数を基準回転数として記憶しており、
前記混入判定処理部が、前記設定電力が複数の前記電動ポンプに供給された際の回転数を計測回転数として取得し、複数の前記電動ポンプのうち、取得した前記計測回転数が前記基準回転数より大きいものを前記混入状態として判定しても良い。
【0019】
これによると、電動ポンプに対して設定電力を供給した状況において電動ポンプの回転数を計測回転数として取得し、この計測回転数と基準回転数とを比較する簡単な演算によりポンプ内に対する空気の混入の有無の判定を行える。
【0020】
本発明は、前記電動ポンプがブラシレス直流モータを備えて構成され、前記ポンプ制御装置がデューティ比の設定により前記ブラシレス直流モータの回転数を調節する電力供給部を備えて構成され、
前記空気排出処理部は、前記混入判定処理部で混入状態と判定された前記電動ポンプのデューティ比を、前記混入判定処理部による処理により正常状態と判定された前記電動ポンプのデューティ比より低く設定しても良い。
【0021】
これによると、電動ポンプがブラシレス直流モータを用いて構成されるものでも、電動ポンプのデューティ比の設定により、複数の電動ポンプの回転数を調節してポンプ内に混入した空気の排出が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔冷却システムの構成〕
図1に示すように、乗用車等の車両に備えられるエンジンEのウォータジャケット1(熱源の一例)の冷却水(冷媒の一例)をラジエータ2(放熱器の一例)に送り、放熱の後にウォータジャケット1に戻す循環型の冷媒流路Rが構成されている。この冷媒流路Rに冷却水を循環させる2つの電動ポンプPを備え、これらを個別に制御するポンプ制御装置10を備えてエンジン冷却システムが構成されている。
【0024】
エンジンEは4サイクル型等の一般的な内燃機関であり、冷媒流路Rは、ウォータジャケット1から冷却水を送り出す供給管3と、ラジエータ2で放熱した冷却水をエンジンEのウォータジャケット1に戻す還元管4とを備えている。供給管3には冷却水の温度を計測する温度センサTSを備えている。
【0025】
ラジエータ2の上部にはラジエータキャップ2Aが備えられ、この近傍にリザーバタンク5が備えられ、ラジエータキャップ2Aと一体形成されたプレッシャーバルブを介してリザーバタンク5との間で冷却水を給排する給排管6が備えられている。
【0026】
2つの電動ポンプPは還元管4において冷媒流路Rの冷却水の循環方向(
図1に矢印で示す方向)に沿って直列に配置されている。各々の電動ポンプPは、ブラシレス直流モータで成るモータMと、インペラWとを有する遠心ポンプ型に構成されている。
【0027】
モータMは、永久磁石で構成されるロータと、これを取り囲む位置に配置される界磁コイルとを有し、ロータの回転位相を検知する複数のホール素子の検知に基づいて界磁コイルに供給する電力を切り換える制御回路を内蔵している。
【0028】
このモータMでは、ホール素子の検知信号を出力できるように構成され、ポンプ制御装置10は、2つのモータMの検知信号からモータMの回転数(電動ポンプPの単位時間あたりの回転数)を計測できるように構成されている。尚、このエンジン冷却システムでは、ロータの回転数を検知するために専用のセンサを備えても良く、モータMが三相モータとして構成されるものでは、ポンプ制御装置10において各相の電圧を取得し、ゼロクロスのタイミングからロータの回転数を検知するように構成しても良い。
【0029】
電動ポンプPは、インペラWと、これらを収容するハウジングとの内部に間隙が形成され、2つの電動ポンプPの一方が停止する状況においても他方を駆動することにより、還元管4での冷却水の循環が可能となる。また、2つの電動ポンプPが同時に駆動された場合には供給管3の圧力上昇に伴い流量が増大する。
【0030】
〔制御構成〕
このエンジン冷却システムでは、2つの電動ポンプPが等しい性能のものが使用されている。具体的には、2つの電動ポンプPの各々が、最高効率で駆動した際の消費電力と、効率循環量とが等しい性能のものが使用されている。また、電源11から電源ライン12を介して供給される電力を、各々の電動ポンプPのモータMに対し電力供給ライン13を介して個別に供給する電力供給部14を備えている。これらの電力供給部14は、PWM信号のデューティ比の設定により電圧を変更してモータMの回転数を調節するように機能する。
【0031】
ポンプ制御装置10は、温度センサTSの計測信号が入力すると共に、2つのモータMのホール素子の検知信号が入力する。更に、ポンプ制御装置10は、各々の電力供給部14に対して目標電力信号を出力するように構成されている。
【0032】
ポンプ制御装置10は、マイクロプロセッサやDSP(digital signal pocessor )を用いることによりECUとして構成されるものであり、循環量設定部10Aと、駆動モード設定部10Bと、混入判定処理部10Cと、空気排出処理部10Dと、記憶部10Eとを備えている。
【0033】
循環量設定部10Aは、温度センサTSの計測信号に基づいて冷媒流路Rでの冷却水の目標循環量(単位時間あたりの水量)を設定する。駆動モード設定部10Bは、設定された目標循環量に基づいて電動ポンプPを制御する通常駆動モードと、冷却水に混入する空気を排出する空気排出モードとを実行可能に構成されている。
【0034】
混入判定処理部10Cは、電動ポンプPのポンプ内への空気の混入(厳密にはポンプ内の冷却水に対する空気の混入)を判定する処理を行う。空気排出処理部10Dは、2つの電動ポンプPを駆動することによりポンプ内の空気を排出する処理を行う。
【0035】
記憶部10Eは、EEPROM等の不揮発性メモリで構成され、温度センサTSで計測される冷却水温に対応して目標循環量を設定するテーブル、あるいは、演算により目標循環量を設定する関数や係数等の情報を記憶している。このテーブルあるいは情報は、電力供給部14に出力される目標電力信号としたものであり、例えば、テーブルから読み出した目標電力信号を電力供給部14に出力することにより、電動ポンプPに電力を供給し、目標循環量の循環を得るようにデータ構造が設定されている。
【0036】
更に、記憶部10Eは、ポンプ内に空気が混入しない正常状態の電動ポンプPに設定電力が供給された際における複数の電動ポンプPの単位時間における回転数を基準回転数Rbとして記憶している。
【0037】
循環量設定部10Aと、駆動モード設定部10Bと、混入判定処理部10Cと、空気排出処理部10Dとはソフトウエアで構成されるものであるが、これらをロジック等のハードウエアで構成しても良い。
【0038】
自動車のエンジン冷却システムでは、冷却水を交換した場合には冷却水に空気が混入することがあり、空気が混入した場合には冷却水の循環を妨げ、冷却性能を低下させることになる。特に、電動ポンプPのポンプ内の冷却水に空気が混入した場合には電動ポンプPの駆動による冷却水の循環性能が低下する。このため、本発明のエンジン冷却システムでは、ポンプ制御装置10の混入判定処理部10Cが、冷却水に対する空気の混入の有無を判定し、空気の混入が判定された場合に、空気の排出を促進する制御を行えるように構成されている。
【0039】
〔第1の制御形態〕
ポンプ制御装置10の第1の制御形態の通常駆動モードの概要を
図2のフローチャートに示し、空気排出モードの概要を
図3のフローチャートに示している。
図2に示す通常駆動モードでは、循環量設定部10Aが温度センサTSで計測される冷却水の水温に基づいて冷媒流路Rに循環させる目標循環量を設定し、目標循環量と効率循環量とが比較され、この比較結果に基づいて電動ポンプPが制御される(#101〜#103ステップ)。
【0040】
この制御では、目標循環量が「0」である場合には、駆動モード設定部10Bが双方の電動ポンプPを停止状態に維持する。また、目標循環量が1つの電動ポンプPの効率的な駆動による効率循環量未満である場合には、1つの電動ポンプPを駆動する。目標循環量が1つの電動ポンプPの効率循環量を超える場合には一方の電動ポンプPを最良の効率が得られる状態で駆動すると共に、余剰分の循環量を供給するように他方の電動ポンプPを駆動する等の制御形態での制御が実行される。更に、目標循環量が2つの電動ポンプPの効率循環量を超える場合には目標循環量を2等分し、この2等分された循環量を供給するように2つの電動ポンプPを等しく駆動する。
【0041】
この制御によりウォータジャケット1とラジエータ2との間に冷却水を循環させエンジンEを適正な温度に維持する。
【0042】
また、
図3に示す空気排出モードでは、混入判定処理部10Cが、2つの電動ポンプPに対して設定電力を供給するとともに、各々の電動ポンプPの単位時間あたりの回転数を計測回転数Rmとして取得する(#201、#202ステップ)。
【0043】
次に、記憶部10Eに記憶されている計測回転数Rmと、基準回転数Rbとの回転数差Rdを演算し、各々の電動ポンプPの回転数差Rdと設定値Cとを比較する(#203、#204ステップ)。
【0044】
つまり、インペラWを有する電動ポンプPの内部の冷却水に空気が混入する状況で、この電動ポンプPを駆動した場合には、空気がインペラと冷却水との直接的な接触を妨げ、冷却水の排出機能が低下すると同時に、インペラWに作用する負荷が低下するため電動ポンプPの回転数は増大する。このような現象を利用することにより混入判定処理部10Cでは、ポンプ内に空気が混入しない正常状態の電動ポンプPと、ポンプ内に空気が混入する混入状態の電動ポンプPとを判定する。
【0045】
この混入判定処理部10Cでは、ポンプ内への空気の混入量が多いほど回転数差Rdが大きくなり、この回転数差Rdから空気の混入の程度を把握することも可能である。
【0046】
この比較により、少なくとも何れか一方の電動ポンプPの回転数差Rdが設定値Cを超えて大きい場合には、その電動ポンプPが混入状態にあると判定する(#205ステップ)。
【0047】
この#201〜#205までの処理が本発明の混入判定処理の具体例である。これにより一方の電動ポンプPが混入状態にあることを判定した場合には、正常状態の電動ポンプPを第1規定回転数で駆動し、混入状態の電動ポンプPを、第1規定回転数より低回転(逆転や停止も含む)で駆動する。この判定により双方の電動ポンプPが混入状態にあることを判定した場合には、空気の混入が少ない側の電動ポンプPを第2規定回転数で駆動し、空気の混入が多い側の電動ポンプPを第2規定回転数より低回転(逆転や停止も含む)で駆動する(#206ステップ)。
【0048】
また、この判定により各々の電動ポンプPのポンプ内の冷却水に空気が混入していない場合には、制御を終了する。
【0049】
#206ステップの処理が空気排出処理の具体例であり、この#206ステップの処理は設定時間が経過するまで継続的に行われる。この設定時間が経過した後には、#201ステップに移行することにより、空気の混入を再び判定し、空気の混入が認められない状態に達するまで処理が反復して行われる。
【0050】
#206ステップの処理(空気排出処理)では、一方の電動ポンプPが正常状態にあり、他方の電動ポンプPが混入状態にある状況では、正常状態の電動ポンプPが第1規定回転数で駆動することにより、冷媒流路Rに対して冷却水が所定の流速で循環する。この状態で混入状態の電動ポンプPを第1規定回転数より低回転で駆動することにより、混入状態の電動ポンプPのインペラWの回転速度と、冷却水の流速との相対速度が大きくなる。
これにより、例えば、インペラWに付着する状態で空気が存在していても、その空気をインペラWから剥がし取るように分離して冷媒流路Rに送り出すことが可能となる。
【0051】
このように回転数差を設定するため、例えば、正常状態の電動ポンプPに電力を供給する電力供給部14において70%のデューティ比が設定され、混入状態の電動ポンプPに電力を供給する電力供給部14において30%のデューティ比が設定される。
【0052】
また、#206ステップの処理(空気排出処理)では、空気の混入量が多いほど(回転数差Rdが大きいほど)空気排出処理での2つの電動ポンプPの相対回転数差を大きくするように制御形態を設定しても良い。この相対回転数差を設定する場合に、混入判定処理で取得した回転数差Rdが予め設定された値を超えた場合に、混入状態の電動ポンプPを逆転させるように制御形態を設定しても良い。
【0053】
更に、#206ステップの処理(空気排出処理)において、双方の電動ポンプPが混入状態にある状況では、空気の混入量が少ない側を第2規定回転数で駆動し、空気の混入が多い側を第2規定回転数より低回転で駆動する。これにより、前述と同様に、インペラWに付着する状態で空気が存在していても、その空気をインペラWから剥がし取るように分離して冷媒流路Rに送り出すことが可能となる。
【0054】
この制御では、第1規定回転数と比較して第2規定回転数を低回転に設定するものを想定しており、これらを任意の値に設定しても良い。
【0055】
この空気排出処理を反復して行うことにより、電動ポンプPのポンプ内の空気の排出が可能となる。このように排出された空気は、冷却水とともにラジエータ2に送られてラジエータ2の上部に留まり、最終的にはリザーバタンク5に排出される。
【0056】
尚、空気排出処理を繰り返して行った場合でも、ポンプ内の冷却水に空気が僅かに混入する状態が継続することも想定され、空気排出処理を繰り返して行うことは処理時間が長くなり電力が無駄に消費されるため、空気排出処理の反復回数を予め設定しても良い。
【0057】
このように第1の制御形態の空気排出モードは、例えば、メンテナンスにおいてエンジンEの冷却水を交換した直後に実行されるものを想定している。従って、この空気排出モードを実行することにより、混入判定処理部10Cにより混入判定処理の実行の後に、空気排出処理部10Dによる空気排出処理を実行するシーケンスにより、ユーザ等が空気を排出するための特別の操作を行う必要がない。また、混入判定処理により空気の混入が小さくなるまで混入判定処理と空気排出処理とが繰り返して行われるため、空気の排出が確実となる。これにより、冷却水を交換した場合のように、冷却水の空気が混入する可能性が高い場合には、空気排出モードの実行が有効となる。
【0058】
〔第2の制御形態〕
この第2の実施形態では、通常駆動モードで電動ポンプPを駆動する際に、混入判定処理部10Cによる空気混入の判定を行い、この判定の後に、ユーザ等が人為的に空気排出モードを実行することにより空気の排出を実現するものである。
【0059】
また、この第2の実施形態では、通常駆動モードの概要を
図4のフローチャートに示し、空気排出モードの概要を
図5のフローチャートに示している。
図4に示す通常駆動モードでは、循環量設定部10Aが温度センサTSで検知される冷却水の水温に基づいて冷媒流路Rに循環させる目標循環量を設定し、目標循環量と効率循環量とが比較され、この比較結果に基づいて電動ポンプPが制御される(#101〜#103ステップ)。
【0060】
この第2の制御形態でも第1の実施形態と同様に目標循環量が「0」である場合には、駆動モード設定部10Bが双方の電動ポンプPを停止状態に維持する。また、目標循環量が1つの電動ポンプPの効率的な駆動による効率循環量未満である場合には、1つの電動ポンプPを駆動する。目標循環量が1つの電動ポンプPの効率循環量を超える場合には一方の電動ポンプPを最良の効率が得られる状態で駆動すると共に、余剰分の循環量を供給するように他方の電動ポンプPを駆動する等の制御形態での制御が実行される。更に、目標循環量が2つの電動ポンプPの効率循環量を超える場合には目標循環量を2等分し、この2等分された循環量を供給するように2つの電動ポンプPを等しく駆動する。
【0061】
また、通常駆動モードで冷却水を循環させる過程において混入判定処理部10Cが、各々の電動ポンプPの単位時間あたりの回転数を計測回転数Rmとして取得する。このように電動ポンプPの計測回転数Rmを取得するために、例えば、目標循環量が少なく1つの電動ポンプPを駆動する制御形態では、一方の電動ポンプPを駆動して(他方の電動ポンプPを停止して)計測回転数Rmを計測した後に、他方の電動ポンプPを駆動して(一方の電動ポンプPを停止して)計測回転数Rmを計測する処理が行われる。
【0062】
このように1つの電動ポンプPが駆動される場合には、供給される電力が決まっていないため、電動ポンプPに供給される電力(設定電力に対応する)に対する基準回転数Rbを取得するためのテーブルデータや演算式が記憶部10Eに記憶されている。
【0063】
これにより、電動ポンプPに供給される電力から、基準回転数Rbを取得し、この基準回転数Rbと計測回転数Rmとの回転数差Rdを演算し、各々の電動ポンプPの回転数差Rdと設定値Cとを比較し、この比較結果を記憶部10Eに記憶する(#304〜#306ステップ)。
【0064】
この通常駆動モードでは、複数の電動ポンプPの少なくとも1つを駆動することにより冷媒流路Rに対して冷却水を循環させる制御が行われる。この制御において#304〜#306ステップが混入判定処理の一部である。このように通常駆動モードの実行過程において混入判定処理の一部を実行することにより、各々の電動ポンプPに供給される電力と回転数との比較により空気の混入の判定が可能となり、比較結果が記憶部10Eに記憶される。
【0065】
尚、比較結果から空気の混入が認められる場合には、アラームを作動させることや報知ランプを点灯させることにより後述する空気排出モードの実行をユーザ等に勧めることも考えられる。
【0066】
また、
図5に示す空気排出モードでは、この空気排出モードが実行されることにより、記憶部10Eに記憶されている比較結果に基づいて混入の有無を判定し、混入判定処理部10Cが、何れかの電動ポンプPの回転数差Rdが設定値Cを超えて大きい場合には、その電動ポンプPが混入状態にあると判定する(#401、#402ステップ)。
【0067】
#401、#420ステップで混入判定処理の一部を構成しており、前述した#304〜#306ステップと併せて、混入判定処理による判定可能となる。この混入判定処理により、一方の電動ポンプPのポンプ内に空気が混入していることを判定した場合には、正常状態の電動ポンプPを第1規定回転数で駆動し、混入状態の電動ポンプPを、第1規定回転数より低回転(逆転や停止も含む)で駆動する。また、この判定により双方の電動ポンプPが混入状態にあることを判定した場合には、空気の混入が少ない側の電動ポンプPを第2規定回転数で駆動し、空気の混入が多い側の電動ポンプPを第2規定回転数より低回転(逆転や停止も含む)で駆動する(#403ステップ)。
【0068】
また、この判定により各々の電動ポンプPのポンプ内の冷却水に空気が混入していない場合には、制御を終了する。
【0069】
#403ステップの処理が空気排出処理の具体例であり、この#403ステップの処理は設定時間が経過するまで継続的に行われる。
【0070】
#403ステップの処理(空気排出処理)では、一方の電動ポンプPが正常状態にあり、他方の電動ポンプPが混入状態にある状況では、正常状態の電動ポンプPが第1規定回転数で駆動することにより、冷媒流路Rに対して冷却水が所定の流速で循環する。この状態で混入状態の電動ポンプPを第1規定回転数より低回転で駆動することにより、混入状態の電動ポンプPのインペラWの回転速度と、冷却水の流速との相対速度が大きくなる。これにより、例えば、インペラWに付着する状態で空気が存在していても、その空気をインペラWから剥がし取るように分離して冷媒流路Rに送り出すことが可能となる。
【0071】
このように回転数差を設定するため、例えば、に正常状態の電動ポンプPに電力を供給する電力供給部14において70%のデューティ比が設定され、混入状態の電動ポンプPに電力を供給する電力供給部14において30%のデューティ比が設定される。
【0072】
また、#403ステップの処理(空気排出処理)では、空気の混入量が多いほど(回転数差Rdが大きいほど)空気排出処理での2つの電動ポンプPの相対回転数差を大きくするように制御形態を設定しても良い。この相対回転数差を設定する場合に、混入判定処理で取得した回転数差Rdが予め設定された値を超えた場合に、混入状態の電動ポンプPを逆転させるように制御形態を設定しても良い。
【0073】
更に、#403ステップの処理(空気排出処理)において、双方の電動ポンプPが混入状態にある状況では、空気の混入量が少ない側を第2規定回転数で駆動し、空気の混入が多い側を第2規定回転数より低回転で駆動する。これにより、前述と同様に、インペラWに付着する状態で空気が存在していても、その空気をインペラWから剥がし取るように分離して冷媒流路Rに送り出すことが可能となる。
【0074】
この制御では、第1規定回転数と比較して第2規定回転数を低回転に設定するものを想定しており、これらを任意の値に設定しても良い。
【0075】
この空気排出処理が行われることにより、電動ポンプPのポンプ内の空気の排出が可能となる。このように排出された空気は、冷却水とともにラジエータ2に送られてラジエータ2の上部に留まり、最終的にはリザーバタンク5に排出される。
【0076】
このように第2の実施形態では、エンジンEの稼働時には#301〜#306ステップの処理が実行されるため、例えば、自動車を継続して使用することでウォータジャケット1等の空気が電動ポンプPの内部に蓄積される状況でも空気の混入を判定することができる。そして、混入が判定された後にはユーザ等が、空気排出モードを実行することにより電動ポンプPのポンプ内に混入した空気の排出が可能となる。
【0077】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0078】
(a)複数の電動ポンプPとして3つ以上の電動ポンプPを冷媒流路Rに備える。このように、3つ以上の電動ポンプPを備えた構成でも、混入判定処理により混入状態にあることが判定された電動ポンプPの回転数を、正常状態の電動ポンプPより低回転で駆動する、又は停止する、又は、逆転することにより空気の排出が可能となる。
【0079】
(b)電動ポンプPのモータMとして、誘導モータや同期モータを用いる。このように構成したものでも、ポンプ内に混入した空気の排出が可能となる。
【0080】
(c)実施形態のエンジン冷却システムでは、電動ポンプPから送り出された冷却水がエンジンEのウォータジャケット1に向かうように構成されている。この構成から空気排出モードでは、複数の電動ポンプPによる冷却水の循環方向を逆向きに設定すると共に、正常状態の電動ポンプPを設定回転数で駆動し、混入状態の電動ポンプPを設定回転数より低回転で駆動することによりポンプ内から空気を排出し、排出した空気をラジエータ2の方向に送り出すように制御形態を設定しても良い。