(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記線状部の幅Wが0.7mm以上2mm以下に設定され、かつ奥行きTが2mm以上6mm以下に設定された上で、T÷Wが2倍以上5倍以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の吸気音低減装置。
前記整流ネット部は、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の吸気音低減装置。
前記整流ネット部は、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部と、前記中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部とによって、網目が形成されることを特徴とする請求項3に記載の吸気音低減装置。
【背景技術】
【0002】
吸気管内には、吸気量を制御するためにスロットルバルブが設けられている。ここで、スロットルバルブが急激に開いた際に、異音が発生する問題がある。この異音が発生するメカニズムについて、
図8を参照して説明する。
図8は吸気管内においてスロットルバルブの開き始めの空気の流れを説明する図である。図示のように、吸気管200内にはスロットルバルブ300が設けられている。一般的に、スロットルバルブ300は水平方向に伸びるように設置された回転軸を中心に回転するように構成されている。そのため、スロットルバルブ300の開き始めの状態においては、吸気管200内の上部側の空気の流れX1と、下部側の空気の流れX2が生じる。この上部側の空気の流れX1と下部側の空気の流れX2が合流する際に異音が発生すると考えられている。
【0003】
そこで、従来、上記のような異音が発生することを抑制するために、網目状に設けられた線状部により構成される整流ネットを設けることで、空気の流れを整流させる技術が知られている。また、この整流ネットを、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケットに設ける技術も知られている(特許文献1参照)。
【0004】
このような技術においては、整流ネットは金属などの剛性の高い材料により構成され、ガスケットはゴムなどの弾性体により構成される。この場合、コストが高くなるため、整流ネットも弾性体により構成し、整流ネットとガスケットを一体に構成することが考えられる。これにより、金型によって、整流ネット部とガスケット部を一体に備える吸気音低減装置を成形可能なため、コストを削減することが可能となる。しかしながら、整流ネット部が弾性体により構成される場合には、空気の流れに伴って整流ネット部が変形することで、整流機能が低下してしまうことが懸念される。また、整流ネット部の変形を抑制するために、線状部を太くすることも考えられるが、単に線状部を太くしただけだと、網目が狭くなり、気体の流れを阻害してしまう。この場合には、吸気量の低下により燃焼効率の低下の原因となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、整流ネット部を弾性体により構成しても、整流ネット部の変形を抑制することにより整流機能の低下を抑制しつつ、吸気量の低下を抑制可能な吸気音低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の吸気音低減装置は、
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記線状部は、幅をWとし、奥行きをTとした場合に、T÷Wが2倍以上5倍以下に設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、整流ネット部を構成する網目状に設けられた線状部は、幅Wに比べて、奥行きTが2倍以上5倍以下に設定されている。従って、幅Wが狭くても奥行きTが広いため、網目を狭くすることなく、空気の流れによって線状部が変形してしまうことを抑制することができる。
【0010】
例えば、前記線状部の幅Wが0.7mm以上2mm以下に設定され、かつ奥行きTが2mm以上6mm以下に設定された上で、T÷Wが2倍以上5倍以下に設定されていることにより、好適に、網目を狭くすることなく、空気の流れによって線状部が変形してしまうことを抑制することができる。
【0011】
前記整流ネット部は、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成されるとよい。
【0012】
スロットルバルブの開き始めにおいては、スロットルバルブの回転軸から最も離れた2箇所からの空気の流れが主流となる。すなわち、背景技術の中でも説明したように、回転軸が水平方向に伸びるように設けられた場合には、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れが主流となる。そして、本発明においては、スロットルバルブの下流側に配置された整流ネット部の網目が、吸気管内の流路の中央付近が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて粗くなるように構成されている。そのため、空気は網目の粗いところに流れやすいため、吸気管内のうち中央付近から遠い領域ほど多く流れるように整流される。従って、2箇所からの空気の流れの合流を抑制することができる。
【0013】
前記整流ネット部は、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部と、前記中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部とによって、網目が形成されるとよい。なお、本発明における「同心円状の線状部」は、完全な円形状の場合だけではなく、半円などの円弧状の場合も含む。
【0014】
これにより、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成される整流ネット部を実現できる。また、整流ネット部は、変形量が抑制されるものの、ある程度は弾性的に変形する。しかし、上記のように構成される整流ネット部を、空気の流れる方向に投影した形状は、変形前も変形後も変化が少ない。そのため、安定的に整流機能が発揮される。また、整流ネット部が空気の流れにより弾性変形した際には、放射状の線状部に対して均一的な力が働き、整流ネット部全体に対して均一的な力が働く。そのため、耐久性に優れる。
【0015】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、整流ネット部を弾性体により構成しても、整流ネット部の変形を抑制することにより整流機能の低下を抑制しつつ、吸気量の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
(実施例1)
図1〜
図4を参照して、本発明の実施例1に係る吸気音低減装置について説明する。
【0020】
<吸気音低減装置>
図1及び
図2を参照して、本実施例に係る吸気音低減装置の構成について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の平面図である。
図2は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。なお、
図2中の吸気音低減装置は、
図1におけるAA断面図である。
【0021】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、整流ネット部110と、環状のガスケット部120とから構成される。整流ネット部110は、ガスケット部120の内側(径方向の内側)に一体に設けられる。また、吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成される。なお、金型成形によって、整流ネット部110とガスケット部120とを一体に備える吸気音低減装置100を成形することができる。金型成形に関する技術は公知であるので、その説明は省略する。
【0022】
そして、整流ネット部110は、網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる役割を担っている。ガスケット部120は、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する役割を担っている。
【0023】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、吸気管内においてスロットルバルブ300の下流側(吸気の際において、空気が流れる方向の下流側)に配置される。また、本実施例においては、吸気管を構成するインテークマニホールド210(一方の管)とスロットルボディ220(他方の管)との接続部付近に、吸気音低減装置100が配置される。なお、本実施例においては、スロットルバルブ300の回転軸は水平方向に伸びるように設置される。また、このスロットルバルブ300は、
図2中矢印方向に回転することで、弁を開くように構成されている。以上の構成により、スロットルバルブ300の開き始めの状態においては、吸気管内の上部側の空気の流れと、下部側の空気の流れが生じる。この点については、背景技術の中で、
図8を参照して説明した通りである。
【0024】
本実施例においては、吸気管の管は円筒形状である。そのため、ガスケット部120は
円環形状となっている。このガスケット部120は、インテークマニホールド210の端面の内周に沿って形成された環状の切り欠き211に配置される。これにより、ガスケット部120は、インテークマニホールド210の端面と、スロットルボディ220の端面との間に挟み込まれることで、これらの端面間の隙間を封止する機能を発揮する。
【0025】
整流ネット部110は、平面形状が円形のガスケット部120の内側に設けられている。そして、整流ネット部110は、ガスケット部120の円の中心から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gと、上記円の中心から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部112a,112b,112c,112dとから構成される。以下、説明の便宜上、放射状の線状部111a,111b,111c,111d,111e,111f,111gについては、適宜、ローマ字の添え字を省略して「放射状の線状部111」又は「線状部111」と称する。また、同様に、同心円状の線状部112a,112b,112c,112dについては、適宜、「同心円状の線状部112」又は「線状部112」と称する。
【0026】
これら複数の放射状の線状部111と、複数の同心円状の線状部112によって、網目が形成される。なお、ガスケット部120の円の中心は、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された場合に、吸気管内の流路の中央付近に位置する。つまり、整流ネット部110は、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部111と、吸気管内の流路の中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部112とから構成されると言うこともできる。
【0027】
上記のように構成された整流ネット部110においては、ガスケット部120の円の中心付近の網目が細かく、中心から遠ざかるにつれて網目が粗く構成される。つまり、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された状態においては、整流ネット部110の網目は、吸気管内の流路の中央付近が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて粗く構成される。なお、本実施例においては、複数の放射状の線状部111は、隣り合う放射状の線状部111の間の角度がほぼ等しく設定されている。また、複数の同心円状の線状部112は、隣り合う同心円状の線状部112の径方向の間隔がほぼ等しく設定されている。これにより、整流ネット部110の網目は、ガスケット部120の円の中心付近が細かく、中心から遠ざかるにつれて粗くなっている。
【0028】
また、本実施例においては、
図2に示すように、スロットルバルブ300と整流ネット部110との間隔が、スロットルバルブ300のバルブ本体部分の長さよりも短い。そのため、スロットルバルブ300が整流ネット部110に突き当たらないように、整流ネット部110は、平面形状が円形であるガスケット部120の内側のほぼ半分の領域を占めるように設けられている。なお、残りのほぼ半円形の領域は空洞となっている。そして、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された状態においては、整流ネット部110が設けられている半円形の領域が上部に配置され、空洞状の半円形の領域が下部に配置される。これにより、スロットルバルブ300が完全に開いた状態においても、スロットルバルブ300が整流ネット部110に突き当たることはない(
図2参照)。
【0029】
<線状部の詳細>
特に、
図3及び
図4を参照して、整流ネット部110を構成する線状部について、より詳細に説明する。
図3及び
図4は、それぞれ線状部の断面形状の一例を示したものである。なお、
図3は、
図1中のBB断面図にも相当するし、CC断面図にも相当する。
図4も同様に、
図1中のBB断面図にも相当するし、CC断面図にも相当する。本実施例においては、放射状の線状部111と同心円状の線状部112の断面形状及び寸法は同一である。
【0030】
本実施例に係る整流ネット部110は、上記の通り、弾性体により構成される。そのため、整流ネット部110は、本来的には、弾性的に変形する性質を有している。背景技術の中でも説明したように、吸気管内を流れる空気の流れによって整流ネット部110が変形すると整流機能が低下してしまうことが懸念される。そこで、本実施例においては、線状部111,112の形状及び寸法を工夫することで、空気の流れを起因とする線状部111,112の変形を抑制可能としている。これにより、整流ネット部110の変形を抑制し、整流機能の低下を抑制することを可能としている。
【0031】
図3及び
図4に示すように、線状部(放射状の線状部111及び同心円状の線状部112)は、幅に比べて奥行き(表面から裏面までの距離)が広くなるように構成されている。つまり、線状部111,112の断面は、奥行き側に細長い形状となる。なお、
図3では、線状部111,112について、表面側の端部と裏面側の端部が湾曲面により構成される場合の断面を示している。また、
図4では、線状部111,112について、表面側の端部と裏面側の端部が鋭利な形状となるように構成される場合の断面を示している。ただし、本発明における線状部については、幅に比べて奥行きが広く、その断面が奥行き側に細長い形状となるような構成であれば良い。従って、線状部の断面形状は、
図3に示される形状や
図4に示される形状には限定されない。
【0032】
そして、線状部111,112については、幅をWとし、奥行きをTとした場合に、T÷Wが2倍以上5倍以下に設定されている。より具体的には、線状部111,112の幅Wが0.7mm以上2mm以下に設定され、かつ奥行きTが2mm以上6mm以下に設定された上で、T÷Wが2倍以上5倍以下に設定されると好適である。例えば、
図3に示す例では、幅Wを1mmとして、奥行きTを3mmに設定することができる。また、
図4に示す例では、幅Wを1mmとして、奥行きTを3mmに設定し、両側面における平行な面の部分の奥行き方向の幅T1を1.5mmに設定することができる。
【0033】
ここで、吸気管内を流れる空気は、線状部111,112の幅Wが狭いほど流れ易く、幅Wが広いほど、抵抗が大きくなり、また、網目が狭くなるため流れ難くなる。このように、空気の流れ易さの観点においては、線状部111,112の幅Wは狭い方が良い。一方、線状部111,112の幅Wが狭いほど、強度が低くなり、線状部111,112が変形し易く、整流ネット部110が変形し易くなってしまう。そこで、線状部111,112の強度に問題が生じない範囲で、極力、幅Wを狭くなるように、上記の通り、幅Wは0.7mm以上2mm以下に設定すると良い。
【0034】
そして、本実施例においては、空気の流れによって、線状部111,112が変形し難くなるように、線状部111,112の幅Wに比べて奥行きTが広くなるように構成している。奥行きTが広いほど、線状部111,112は変形し難くなる。また、奥行きTが広いほど、整流効果が大きくなる。一方、奥行きTが広すぎると、吸気音低減装置100を金型により成形する際の成形性が低下してしまう。そこで、成形性に悪影響が生じない範囲で、極力、幅Wに対する奥行きTの比率を大きくし、かつ奥行きTが広くなるように、上記の通り、T÷Wは2倍以上5倍以下に設定し、奥行きTは2mm以上6mm以下に設定すると良い。
【0035】
<本実施例に係る吸気音低減装置の優れた点>
本実施例に係る吸気音低減装置100によれば、整流ネット部110を構成する網目状に設けられた線状部111,112は、幅Wに比べて、奥行きTが2倍以上5倍以下に設定されている。従って、幅Wが狭くても奥行きTが広いため、網目を狭くすることなく、空気の流れによって線状部111,112が変形してしまうことを抑制することができる。特に、本実施例においては、線状部111,112の幅Wが0.7mm以上2mm以下に設定され、かつ奥行きTが2mm以上6mm以下に設定された上で、T÷Wが2倍以上
5倍以下に設定されている。これにより、好適に、網目を狭くすることなく、空気の流れによって線状部111,112が変形してしまうことを抑制することができる。つまり、空気の流れによって、整流ネット部110が変形してしまうことを抑制することができる。以上により、整流機能の低下を抑制しつつ、吸気量の低下を抑制することが可能となる。
【0036】
ここで、スロットルバルブ300の開き始めにおいては、スロットルバルブ300の回転軸から最も離れた2箇所からの空気流れが主流となる。すなわち、本実施例においては、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れが主流となる。そして、本実施例に係る吸気音低減装置100においては、スロットルバルブ300の下流側に配置された整流ネット部110の網目が、吸気管内の流路の中央付近が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて粗くなるように構成されている。これにより、空気は網目の粗いところに流れやすいため、吸気管内のうち中央付近から遠い領域ほど多く流れるように整流される。ただし、本実施例においては、吸気管内のうち、上半分の領域に整流ネット部110が配置されているので、上部側の空気の流れについて、上記のように空気の流れが整流される。つまり、上部側の空気の流れについて、下方に向かう流れを少なくすることができる。従って、上部側の空気の流れと下部側の空気の流れの合流を抑制することができる。これにより、異音を抑制させることができる。
【0037】
また、本実施例に係る整流ネット部110は、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部111と、中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部112とによって、網目が形成される。これにより、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成される整流ネット部110を実現できる。
【0038】
更に、本実施例においては、整流ネット部110は、変形量が抑制されるものの、ある程度は弾性的に変形する。しかし、上記のように、複数の放射状の線状部111と、複数の同心円状の線状部112とにより網目が形成されるため、整流ネット部110を空気の流れる方向に投影した形状は、変形前も変形後も変化が少ない。従って、安定的に整流機能が発揮される。また、弾性的に整流ネット部110が変形した場合には、放射状の線状部111に対して均一的な力が働き、整流ネット部110全体に対して均一的な力が働くため、耐久性に優れる。
【0039】
図5及び
図6を参照して、吸気音の低減効果に関する試験及び試験結果について説明する。
図5は音圧の推移を測定する装置の模式的断面図である。
図6は吸気音低減装置を用いない場合における音圧の推移の測定結果を示すグラフである。
【0040】
図5に示すように、試験用のスロットルボディ220Xと、このスロットルボディ220Xの先端に固定される樹脂製の有底円筒状部材210Xとからなる試験装置を用いて、吸気音の低減効果を試す試験を行った。この試験装置においては、スロットルボディ220Xの端部と有底円筒状部材210Xの端部との間に試験サンプル100Xが装着されるように構成されている。スロットルボディ220X及び有底円筒状部材210Xの内径は60mmに設定され、スロットルバルブ300Xから試験サンプル100Xまでの距離は24mmに設定されている。また、音圧を測定するためのマイクロフォン400は、試験サンプル100Xから軸線方向に30mmだけ離れた位置であって、有底円筒状部材210Xの外周面から100mmだけ離れた位置に配置されている。
【0041】
以上のように構成された試験装置を用い、以下の試験を行った。まず、スロットルバルブ300Xを閉じて有底円筒状部材210Xの内部を密閉状態とし、この密閉された空間の内部を−70kPaに維持する。そして、1800〜2400deg/sの角速度で9
0°回転するまでスロットルバルブ300Xを開くと共に、マイクロフォン400によって、音圧を測定し、経過時間に対する音圧の変化をグラフ化する。
【0042】
ここでは、整流ネット部を備えていないガスケットの場合と、従来例の場合と、比較例の場合と、本実施例に係る吸気音低減装置100の場合について、それぞれ試験を行った。なお、従来例に係る試験サンプル100Xとして、格子状の金属製の整流ネット部をゴム製のガスケット部の内側に備える吸気音低減装置を用いた。より具体的には、整流ネット部がガスケット部の内側の全領域に亘って設けられており、格子を形成する線状部材は、外径が0.5mmで断面が円形のものを用いた。また、格子は縦横が6mmの正方形となっているものを用いた。比較例に係る試験サンプル100Xとして、平面形状は
図1に示す構成で、幅と奥行きがいずれも1mmの線状部で構成されたゴム製の整流ネット部をゴム製のガスケット部の内側に備える吸気音低減装置を用いた。本実施例に係る吸気音低減装置100として、幅Wが1mmで奥行きTが3mmの線状部111,112で構成されたゴム製の整流ネット部110をゴム製のガスケット部120の内側に備える吸気音低減装置100を用いた。
【0043】
図6は、試験サンプル100Xとして、整流ネット部を備えていないガスケットを用いた場合の経過時間と音圧の変化を示すグラフである。この場合の測定結果に基づくオーバーオール値を1とした場合に、従来例はオーバーオール値が約0.7で、比較例はオーバーオール値が約0.8で、本実施例に係る吸気音低減装置100はオーバーオール値が約0.6となった。以上より、本実施例に係る吸気音低減装置100においては、吸気音を効果的に低減できることが分かった。また、本実施例に係る吸気音低減装置100の方が、金属製の整流ネット部を備える従来例よりも、吸気音を低減できることが分かった。
【0044】
(実施例2)
図7には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、整流ネット部がガスケット部の内側の略半円形の領域に設けられる場合を示した。本実施例においては、整流ネット部がガスケット部の内側の全領域に亘って設けられる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0045】
本実施例に係る吸気音低減装置100においても、上記実施例1の場合と同様に、整流ネット部110と、ガスケット部120とから構成される。また、吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成されており、整流ネット部110とガスケット部120とは一体となっている。
【0046】
そして、本実施例における整流ネット部110は、上記実施例1の場合と同様に、平面形状が円形であるガスケット部120の円の中心から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部111と、上記円の中心から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部112とから構成される。上記実施例1の場合、整流ネット部110は、平面形状が円形であるガスケット部120の内側のほぼ半分の領域を占めるように設けられているのに対して、本実施例の場合には、ガスケット部120の内側の全領域に亘って整流ネット部110が設けられている。線状部111,112の形状(断面形状等)に関する構成、及びその他の構成については、上記実施例1で示した構成と同一である。
【0047】
本実施例においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。そして、本実施例の場合には、ガスケット部120の内側の全領域に亘って整流ネット部110が設けられているので、下部側の空気の流れについても、上部側の空気の流れと同様に、空気の流れを整流させることができる。従って、より一層、異音を抑制させることができる。従って、スロットルバルブ300が突き当たらない位置に吸気音低減装置100が配置
される場合には、本実施例に係る吸気音低減装置100を採用すると良い。
【0048】
(その他)
上記各実施例においては、吸気管の管が円筒形状で構成される場合を示した。これに伴い、吸気音低減装置100におけるガスケット部120は円環形状で構成される場合を示した。しかしながら、本発明に係る吸気音低減装置は、吸気管の管が円筒形状でない場合にも適用できる。例えば、吸気管の管が、空気の流れ方向に対して垂直な断面で見た場合に矩形の場合には、ガスケット部120も、平面形状が矩形となるように構成すればよい。なお、この場合にも、ガスケット部120の内側に設けられる整流ネット部110については、上記実施例1,2で示す構成と同様のものを用いることができる。ただし、この場合には、複数の同心円状の線状部について、外側のいくつかの同心円状の線状部は、半円形や円形にはならず、円弧状になることは言うまでもない。
【0049】
また、上記各実施例では、整流ネット部110の網目が、吸気管内の流路の中央付近から外側に向かって放射状に伸びる複数の放射状の線状部と、中央付近から同心円状に設けられる複数の同心円状の線状部とによって形成される場合の構成を示した。このような構成を採用することで、整流ネット部110を空気の流れる方向に投影した形状は、変形前も変形後も変化が少ないという長所がある。ただし、本実施例では、線状部111,112の形状及び寸法を工夫したことにより、整流ネット部110の変形は抑制される。従って、線状部の配置に関する構成については、その他の構成を採用してもよい。ただし、2箇所の空気の流れの合流を効果的に抑制するためには、整流ネット部が、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗く構成するのが望ましい。例えば、縦横に伸びる複数の線状部によって格子状の網目を形成する場合には、縦横の間隔を均一にするのではなく、吸気管内の流路の中央付近ほど間隔を狭くすることで、吸気管内の流路の中央付近の網目が細かく、中央付近から遠ざかるにつれて網目が粗い整流ネット部を得ることができる。