(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マスキング範囲の始点及び終点を特定するための複数の系統からなる始点マーク及び終点マークを含んだ書式を用いて作成された、マスキング処理の対象となる元文書を入力する入力部と、入力された前記元文書を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記元文書について、該元文書に含まれている複数の系統からなる前記始点マーク及び前記終点マークを読取るマーク読取部と、前記マーク読取部によって読取られた前記始点マーク及び前記終点マークについて、系統ごとに該始点マークと該終点マークとのペアリングを行うペアリング処理部と、前記元文書について、前記ペアリング処理部によって系統ごとにペアリングが行われた前記始点マークと前記終点マークとの間に含まれる内容をマスキング処理するマスキング処理部と、を有し、前記マスキング処理部は、系統ごとにペアリングが行われた前記始点マークと前記終点マークとで指定されるマスキング範囲について、系統ごとにマスキング処理することを特徴とする文書マスキングシステム。
前記ペアリング処理部は、前記記憶部に記憶された前記元文書の全体を1つの座標系として、前記始点マークと前記終点マークとのペアリングを行う請求項1に記載の文書マスキングシステム。
前記ペアリング処理部は、前記元文書に含まれている始点マークを基準としてペアリング対象となる終点マークの数をカウントし、終点マークの数が1つだけである場合に該始点マークと該終点マークとのペアリングを行い、
次に、他の始点マークを基準としてペアリング対象となる終点マークの数をカウントし、終点マークの数が1つだけである場合に該始点マークと該終点マークとのペアリングを行う請求項1または請求項2に記載の文書マスキングシステム。
前記マスキング処理部が行うマスキング処理は、前記始点マークと前記終点マークとの間に含まれる内容を削除する処理である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の文書マスキングシステム。
前記マスキング処理部が行うマスキング処理は、前記始点マークと前記終点マークとの間に含まれる内容の上に、マスキングパターンを載せて表示する処理である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の文書マスキングシステム。
前記記憶部に記憶された前記元文書は、該元文書を構成する各ページの、ヘッダの位置を特定するためのヘッダマークまたはフッタの位置を特定するためのフッタマークを含み、前記マスキング処理部は、前記ヘッダマークによって特定されるヘッダの位置及び前記フッタマークによって特定されるフッタの位置を、前記マスキング処理の対象外とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の文書マスキングシステム。
前記マスキング処理部は、前記始点マークと前記終点マークとの間に含まれる内容を、他の部分とは異なる態様で表示した、マスキング範囲を確認するための範囲確認用文書を作成する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の文書マスキングシステム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発朋に係る文書マスキングシステムの実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は例示であり、発明の範囲がそれらに限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0021】
(文書マスキングシステムの構成例)
図 1は、本実施形態による文書マスキングシステムの構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態による文書マスキングシステム10は、入力部1と、制御部2と、表示部3と、記憶部4とを備えている。文書マスキングシステム10を構成する各部は、例えばコンピュータにより構成され、通常のコンピュータのハードウェアリソース、例えばROM、RAM、CPU、入力装置、出力装置、通信インターフェース、ハードディスク、記緑媒体及びその駆動装置によって実現される。
【0022】
入力部1は、マスキング処理の対象となる元文書を入力する。元文書は、例えば、ワープロソフト(ワードプロセッサソフトウェア)で作成された電子文書ファイルである。入力部1を備えることにより、外部から入力した元文書について、マスキング処理の対象とすることができる。
【0023】
制御部2は、 CPUなどによって構成され、本システムの各部を制御するとともに、文書マスキングプログラムを実行する。制御部2が文書マスキングプログラムを実行することにより、元文書に基づいて、全公開文書、部分公開文書及び範囲確認用文書を作成する処理を行う。制御部2は、マーク読取部21と、ペアリング処理部22と、マスキング処理部23とを備えている。これらの各部は、CPUなどが文書マスキングプログラムを実行することによって実現される。
【0024】
マーク読取部21は、入力部1が入力した元文書に含まれているマークを読み取る。
【0025】
ペアリング処理部22は、マーク読取部21が読み取ったマークについて、マスキング範囲の始点を意味するマーク(以下、適宜、始点マークと呼ぶ)と、マスキング範囲の終点を意味するマーク(以下、適宜、終点マークと呼ぶ)とのペアリングを行う。
【0026】
マスキング処埋部23は、ペアリング処理部22がペアリングを行った始点マーク及び終点マークに基づいて、マスキング処理を行う。
【0027】
表示部3は、制御部2によってマスキング処理された文書を表示する。文書マスキングシステム10は、編集及び改ざんが不可能な形式に変換した文書を表示部3に表示することが望ましい。文書マスキングシステム10は、表示部3に代えて、または表示部3と共に、マスキング処理された文書を印刷する印刷部を備えていてもよい。
【0028】
記憶部4は、制御部2による公開文書作成処理に必要な文書マスキングプログラムやデータを記憶する。記憶部4は、マスキング処理の対象となる元文書を記憶する。記憶部4は、例えば、入力部1により、外部から入力された元文書を記憶する。
【0029】
以上の構成により、本実施形態の文書マスキングシステム10は、元文書を入力し、公開文書を作成する処理を行う。本実施形態の文書マスキングシステム10は、元文書と同じ内容が記載された全公開文書、元文書に含まれている始点マーク及び終点マークに基づいてマスキング処理された部分公開文書、及び、マスキング範囲を確認するための範囲確認用文書を作成する。
【0030】
(マスキング範囲)
本実施形態の文書マスキングシステム10は、元文書に挿入されたマークに基づいてマスキング処理を行う範囲を特定する。より具体的には、本実施形態では、元文書の本文中に、マスキング処理を行う範囲を特定するための始点マーク及び終点マークが、予め挿入されている。始点マーク及び終点マークには、予め定めておいたキーワードや記号などを用いる。
【0031】
(公開文書作成処理の例)
図2は、本実形態による文書マスキングシステムによる公開文書作成処理の例を示すフローチャートである。公開文書作成処理は、元文書から部分公開文書、全公開文書、及び、範囲確認用文書を作成する処理である。
【0032】
図2において、元文書B1は、公文書作成処理の処理対象の元となる文書である。元文書B1には、部分開示対象者には見せたくない矩形のマスキング範囲の左上座標を示す始点の位置に始点マークを、右下座標を示す終点の位置に終点マークを、それぞれ予め挿入しておく。また、文書内のヘッダ部分及びフッタ部分について、マスキング範囲から除外する揚合には、ヘッダ部分の一番下を示すヘッダ下端マーク及びフッタ部分の一番上を示すフッタ上端マークを元文書B1の各ページに挿入しておく。
【0033】
始点マークまたは終点マークは、例えば、特別な記号、特定のキーワードや記号、またはマスキング位置を設定するための専用機能によるマーク、である。始点マークに用いる文字列は、例えば、「KOKOKARA1」、「KOKOKARA2」、「KOKOKARA3」のように、複数系統設定できる。終点マークに用いる文字列は、例えば、「KOKOMADE1」、「KOKOMADE2」、「KOKOMADE3」、のように複数系統設定できる。
上記のように複数系統設定された始点マーク及び終点マークにより、系統ごとにマスキング範囲を定義できる。例えば、始点マーク「KOKOKARA1」と終点マーク「KOKOMADE1」によるマスキング範囲を系統1、始点マーク「KOKOKARA2」と終点マーク「KOKOMADE2」によるマスキング範囲を系統2、始点マーク「KOKOKARA3」と終点マーク「KOKOMADE3」によるマスキング範囲を系統3として定義できる。
ヘッダマークに用いる文宇列は、例えば、「KOKOHED」である。フッタマークに用いる文字列は、例えば、「KOKOFUT」である。これらの他、各マークは、予め定めておくことにより、文字の組み合わせまたは特殊記号で表記することができる。
【0034】
本文中に登場しない文字列をマークとして用いることが好ましい。マークとして予め決めておいた文字列を、コピーアンドペースト操作によって、文書中に挿入して追加するようにしてもよい。また、文書作成用アプリケーションソフトウェアに、テキストボックスの機能があれば、その機能によって元文書に挿入したマークを始点マーク、終点マーク、ヘッダマークまたはフッタマークとしてもよい。テキストボックスとは、文書中の任意の位置に、文字や記号を配置するための領域である。
【0035】
図2のステップS201のマーク読取り処理では、記憶部4に記憶された元文書B1に含まれている、複数系統のマスキング範囲について、各系統のマスキング範囲の始点を示す始点マーク及び終点を示す終点マーク、ならびに、ヘッダ下端マーク及びフッタ上端マークの座標を読取る。
【0036】
ステップS202の始点マーク及び終点マークのペアリング処理では、読み取った系統ごとの始点マークと終点マークとをペアの対象として組み合わせ、マスキング範囲を特定するための処理を行う。
【0037】
ステップS203のマーク削除処理では、元文書B1に含まれていた各マークを削除する処理を行う。元文書B1に含まれていた各マークが削除された文書は、全公開文書B2となる。全公開文書B2は、全開示対象者向けに、元文書B1から作成された文書である。全公開文書B2は、元文書B1に含まれているマークを削除した文書であることが望ましい。
【0038】
ステップS204のマスキング処理では、部分公開文書B3a〜B3c、及び、範囲確認用文書B4を作成する。部分公開文書B3a〜B3cは、各マークを削除した元文書B1のマスキング範囲についてマスキング処理を行った、部分開示対象者向けの文書である。部分開示文書B3a〜B3cは各系統のマスキング範囲ごとに作成される。
【0039】
範囲確認用文書B4は、マークを削除した元文書B1の文字などはそのままとし、マスキング範囲に含まれる内容を、他の部分とは異なる態様で表示した文書である。範囲確認用文書B4は、元文書B1に正しくマスキング範囲を指定するマークを挿入できているか否かを確認するため、元文書B1の文字が視認できる形式で、マスキング範囲を表示した文書である。例えば、マスキング範囲に含まれる内容について、背景色を蛍光色などで表示したり、マスキング範囲を破線で囲んで表示したりした文書である。範囲確認用文書B4を参照することにより、正しいマスキング範囲を指定する始点マーク及び終点マークが元文書B1に正しく挿入されているか否かを確認することができる。全ての系統のマスキング範囲をひとつの範囲確認用文書B4に表示しても、各系統のマスキング範囲ごとに範囲確認用文書を表示してもよい。
【0040】
(始点マーク及び終点マークのペアリング処理)
本実施形態では、各系統の始点マーク及び終点マークごとに個別に追番を付与して区別することにより、系統ごとに始点マークと終点マークとのペアリング処理を行う。
元文書ヘの始点マーク及び終点マークの挿入を人手で行う揚合、各始点マーク及び各終点マークに番号を付加することは手間がかかる。
【0041】
そこで、本実施形では、少なくとも、始点マーク及び終点マークを付加すれば、系統ごとに始点マークと終点マークとのペアリング処理を自動的に行い、マスキング範囲を特定できるようにする。ただし、以下の条件を前提とする。すなわち、
(1)始点マークより終点マークは右方向にある。
(2)始点マークより終点マークは下方向にある。
(3)始点マークと終点マークとを結ぶ線を対角線とする矩形をマスキング範囲とする。
(4)同じ系統の複数のマスキング範囲はそれぞれ重ならない。
である。
【0042】
以上の前提条件のもとに、上述したステップS202の始点マーク及び終点マークのペアリング処理について
図3を参照して脱明する。
図3は、始点マーク及び終点マークのペアリング処理の例を示すフローチャートである。
【0043】
図3のステップS310では、各マークに、始点マーク番号を割り振る割り振り処理を行う。例えば、右下を開始位置として右から左、下から上の順に、始点マークに始点マーク番号を付与する。
【0044】
ステップS302では、ペアの対象となる始点マークを1つ選択する処理を行う。例えば、終点マークとペアになっていない始点マークのうち、始点マーク番号の小さいものをペアの対象として選択する。
【0045】
ステップS303では、ペアの対象となる終点マークをカウントする処理を行う。例えば、現在のペアの対象の始点マークの右下にある終点マークのうち、始点マークとペアになっていない終点マークをペア対象の終点マークとし、その個数を計数する。
【0046】
ステップS304では、ステップS303 のカウントの結果、ペアの対象となる終点マークの数が「1」であれば、ステップS305に進み、その始点マークと終点マークとをペアとする処理(ペアリング処理)を行う。ペアリング処理では、ペア対象の終点マークにペア対象の始点マークの始点番号と同じ番号を割り当てる。これにより、ペア対象の終点マークとペア対象の始点マークとで特定される矩形範囲をマスキング範囲とする。
【0047】
ステップS306では、終点マークとペアになっていない始点マークが存在するか否かを判断する。ステップS306の判断の結果、終点マークとペアになっていない始点マークがなければ(ステップS306においてNo)、処理は終了となる。一方、ステップS306の判断の結果、終点マークとペアになっていない始点マークがあれば、ステップS302に戻る。
【0048】
ステップS304のカウントの結果、ペアの対象となる終点マークの数が「2以上」であれば、ステップS307に進み、さらにペアの対象となる始点マークが存在するか判断する。ステップS307では、現在のペア対象の始点マークの始点番号よりも大きい番号の始点マークが存在するか否かを判断する。ステップS307の判断の結果、ペアの対象となる始点マークが存在すれば(ステップS307に詩いてYes)、ステップS308に進み、ペアの対となる始点マークの再選択処理が行われる。ステップS308の再選択処理では、終点マークとペアになっていない始点マークのうち、現在のペア対象の始点マークの始点番号よりも大きい番号の始点マークの中で最も始点マーク番号の小さいものをペア対象始点マークとして選択する。その後、ステップS303に戻る。これを、各系統の始点マーク、終点、マークについて行う。
【0049】
ステップS307において、ペアの対象となる始点マークが存在しない揚合(ステップS307においてNo)、ステップS309に進み、エラー処理が行われ、処理は終了となる。また、ステップS304のカウントの結果、ペアの対象となる終点マークの数が「0」 であれば、ステップS310に進み、エラー処理が行われる。エラー処理では、始点マークに対応する終点マークが存在しないため、マスキング処理及び公開文書作成処理全体が終了となる。
【0050】
エラー処理は、例えば、エラーの原因となった箇所を表示して利用者に提示してもよいし、エラーの解消の方法を利用者に提示してもよい。
【0051】
本実施形態では、元文書の全てのページを結合し、左上を原点とする1つの座標系として処理を行っている。また、本実施形態において、図面において用いる始点マーク、終点マーク、ヘッダマーク及びフッタマークを、表1に示すように定義する。
【0053】
なお、本実施形態において、元文書は、横書きの形式であるが、縦書きの形式であっても良い。その揚合、始点マークはマスキング範囲の右上、終点マークはマスキング範囲の左下、をそれぞれ特定することになる。また、元文書は、日本語に限らず、外国語を含む文書または外国語のみによる文書であってもよい。
【0054】
(ペアリング処理の例)
図4から
図7は、始点マークと終点マークとをペアとするペアリング処理の例を示す図である。
【0055】
図4において、工程P1では、マスキング範囲を規定するマークである、始点マークSP及び終点マークEPが含まれている元文書B1を処理対象として入力する。本実施例では、2系統の始点マーク、終点マークを入力した場合について示す。
【0056】
工程P2では、元文書B1の各始点マークSPについて、本例では右から左の方向へ、かつ、下から上の方向へ、番号を付与する。本例では、系統1の始点マークを1SP1、1SP2、系統2の始点マークを2SP1、2SP2とする。また、系統1の終点マークを1E、系統2の終点マークを2Eとする。なお、以降の脱明では、始点マーク1SP1、1SP2、2SP1、2SP2を、総称して始点マークSPNと呼ぶことがある。
【0057】
工程P3では、始点マークSPNから右方向に延びた直線及び下方向に延びた直線を想定する。そして、これらの直線を基準として、各始点マーク1SP1、1SP2、2SP1、2SP2の右方向かつ下方向すなわち右下方向に存在する終点マーク1E、2Eを処理の対象とする。
【0058】
図5に進み、工程P4では、各始点マーク1SP1、1SP2、について、右下方向に存在する終点マーク1Eの数をそれぞれカウントする。また、各始点マーク2SP1、2SP2についても、右下方向に存在する終点マーク2Eの数をそれぞれカウントする。
【0059】
カウントは、例えば、各終点マークの座標位置に基づいて、上から下方向へ探査し、かつ、左から右方向へ探査しつつ、終点マークを計数する。その結果、本例では、系統1について始点マーク1SP1の右下方向に終点マーク1Eが1つ (「1E1個」:終点マーク1Eの数が1個)、始点マーク1SP2の右下方向に終点マーク1Eが2つ(「1E3個」:終点マーク1Eの数が2個)、系統2について始点マーク2SP1の右下方向に終点マーク2Eが1つ(「2E1個」:終点マーク2Eの数が1個)、始点マーク2SP2の右下方向に終点マーク2Eが2つ(「2E2」:終点マーク2Eの数が2個)、となる。
【0060】
工程P5では、始点マークSPNのうち、終点マークの数が「1」であるものとその終点マークとをペアにする。本例では、系統1の始点マーク1SP1と終点マーク1EP1とをペアとし、図中の矩形1K1で示す。また、系統2の始点マーク2SP1と終点マーク2EP1とをペアとし、図中の2K1で示す。
【0061】
工程P6では、始点マークSPNのうち、いずれかの終点マークとペアになっていないものについて、その右下方向に存在する終点マークの数をカウントする。本例では、工程P5においてペアになった始点マーク1SP1及び終点マーク1EP1と、始点マーク2SP1及び終点マーク2EP1を除き、始点マーク1SP2、2SP2について、右下方向に存在する終点マークの数をそれぞれカウントする。その結果、本例では、始点マーク1SP2の右下方向に終点マークが1つ(「1E1個」:終点マーク1Eの数が1個)、始点マーク2SP2の右下方向に終点マーク2Eが 1つ(「2E1個」:終点マーク2Eの数が1個)、となる。
【0062】
図6 に進み、工程P7では、終点マークの数が「1」であるものとその終点マークとをペアにする。本例では、系統1の始点マーク1SP2と終点マーク1EP2とをペアとし、図中の矩形1K2で示す。また、系統2の始点マーク2SP2と終点マーク2EP2とをペアとし、図中の矩形2K2で示す。
【0063】
以上の処理によって、元文書B1に含まれている始点マーク1SP1、1SP2、2SP1、2SP2及び終点マーク1E、2Eについて、ペアリングが完了した。
【0064】
なお、以上の処理では、ペアリング処理部により、元文書に含まれている始点マークを基準としてペアリング対象となる終点マークの数をカウントし、終点マークの数が1つだけである場合に、その始点マークとその終点マークとのペアリングを行い、次に、他の始点マークを基準としてペアリング対象となる終点マークの数をカウントし、終点マークの数が1つだけである揚合にその始点マークとその終点マークとのペアリングを行う。この処理を繰り返し行うことによって、処理の対象を 1つずつ減らしてゆき、元文書に含まれているすべての系統の始点マーク及び終点マークについてペアリング処理を行うことができる。
【0065】
ところで、元文書B1に含まれている始点マークの数と終点マークの数とが一致していない揚合、エラー処理を行うことが望ましい。この揚合、ペアリング処理の過程において、例えば、右下方向に存在する終点マークの数が「1」である始点マークがなく、ペアリングできないため、エラー処理を行うことが望ましい。また、例えば、マスキング範囲同士が重なりあう場合も右下方向に存在する終点マークの数が「1」である始点マークがなく、ペアリングできないため、エラー処理を行うことが望ましい。
【0066】
右下方向に存在する終点マークの数が「1」である始点マークが複数あって、ペアとなる終点マークを 1つに決定できない揚合、エラー処理を行うことが望ましい。
【0067】
エラー処理は、例えば、エラーの内容をモニタの画面に表示して利用者に告知する、エラーの内容を音声として出力して利用者に告知する、という方法がある。このようなエラー処理を行うことによって、エラーの内容が告知された利用者は、エラーを認識し、始点マーク及び終点マークを設定し直すことができる。
【0068】
(マスキング処理を行った文書の例)
次に、
図7から
図12を参照して、マスキング処理の例について説明する。
図7は、マスキング範囲の例を示す図である。
図7において、始点マーク1SP1及び終点マーク1EP1によって規定されるマスキング範囲は、 2つのページに跨っている。
【0069】
図8は、始点マーク、終点マーク、ヘッダマーク及びフッタマークの座標位置を取得する処理の例を示す図である。
図8に示すように、元文書B1を構成する全ページを、本例では左端を揃えて連結して、X軸及びY軸による1つの座標系に配置した状態とする。この状態で、マスキング範囲について処理を進める。全ページを連結して処理することにより、ページを跨ったマスキング範囲を処理の対象とすることができる。また、全ページを連結して処理することにより、ヘッダ及びフッタの部分をマスキング範囲から除外することができる。これにより、利用者は、ヘッダ及びフッタの部分に含まれる情報を確認することができる。
【0070】
図9は、始点マーク、終点マーク、ヘッダマーク及びフッタマークを削除した後の全公開文書B2の例を示す図である。
図9に示すように、始点マーク、終点マーク、ヘッダマーク及びフッタマークは、削除されている。文書の利用者にとっては無意味であり、かつ、それらのマークがあると文書が見づらくなるため、それらのマークを削除する。これにより、文書が見づらくなることを防止できる。
【0071】
図10、11は、マスキング処理された、部分公開文書B3A、B3Bの例を示す図である。
図10に示すように、部分公開文書B3Aは、系統1の始点マーク1SP1及び終点マーク1EP1に基づいて指定されたマスキング範囲1MSにマスキング処理が施された状態になる。本例では、
図7に示す元文書B1において、系統1では、「3、根拠」から「3―2.社内実験データ」の棒グラフまでの部分がマスキング範囲1MSになり、視認されない状態になっている。
また、
図11に示すように、部分公開文書B3Bは、系統2の始点マーク2SP1及び終点マーク2EP1に基づいて指定されたマスキング範囲2MSにマスキング処理が施された状態になる。これにより、元文書B1に記載されている内容のうち、マスキング範囲2MSに対応する部分は、その内容が視認されない状態になる。本例では、
図7に示す元文書B1において、系統1では、「3−3.根拠」から「3―4.実機データ」の棒グラフまでの部分がマスキング範囲2MSになり、視認されない状態になっている。
【0072】
図12は、マスキング範囲を確認するための、範囲確認用文書B4の例を示す図である。範囲確認用文書B4は、部分公開文書B3Aのマスキング範囲1MS及び部分公開文書B3Bのマスキング範囲2MSに対応する部分が
図12の破線部分で示すように、他の部分と異なる態様で表示されている。マスキング範囲1MS、2MSに対応する部分を、他の部分となる態様で表示することにより、マスキング範囲1MS、2MSが適切であるか否かを容易に確認することができる。
【0073】
図12において、破線部分は、例えば、背景を蛍光色によって塗りつぶした表示とする。範囲確認用文書B4について、蛍光色に限らず、マスキング範囲1MS、2MSに対応する部分の背景を、他の部分とは異なる態様で表示すればよい。背景を塗りつぶした表示とする楊合に限らず、マスキング範囲1MS、2MSに対応する部分の文字の色を他の部分とは異なる態様で表示してもよい。このように、マスキング範囲1MS、2MSに対応する部分を他の都分とは異なる態様で表示することにより、マスキング範囲1MS、2MSを容易に確認することができる。
【0074】
(エラー処理)
図13A及び
図13Bは、エラー処理が行われる文書の例を脱明する図である。図 13Aに示す例では、同じ系列である、2つの始点マークSP11及びSP12と2つの終点マークEP11及びEP12とが文書に含まれている。このため、始点マークSP11と終点マークEP11とに基づいてマスキング範囲MS1が、始点マークSP12と終点マークEP12とに基づいてマスキング範囲MS2が、それぞれ設定されている。したがって、
図13Aに示す文書では、マスキング範囲MS1とマスキング範囲MS2とが重なっている。
【0075】
このようにマスキング範囲を設定すると、
図3に示すフローチャートによってエラー処理が行われる。すなわち、
図3に示すフローチャートのステップS304のカウントの結果、ペアの対象となる終点の数が「2以上」になるので、ステップS307に進む。ペアの対象となる始点があるので(ステップS307においてYes)、ペアの対象となる始点を再選択しても(ステップS308)、やはりペアの対象となる終点の数が「2以上」になるので(ステップS303、S304、S307)、ペアの対象となる始点が存在しないので(ステップS307においてNo)、ステップS309に進み、エラー処理が行われる。
【0076】
エラー処理が行われないためには、
図13Bに示すように、マスキング範囲同士が重ならないように、始点マークと終点マークとを設定する必要がある。すなわち、
図13Bに示す例では、始点マークSP11、SP12及びSP13と、終点マークEP11、EP12及びEP13とが文書に含まれている。このため、始点マークSP11と終点マークEP11とに基づいてマスキング範囲MS11が、始点マークSP12と終点マークEP12とに基づいてマスキング範囲MS2が、始点マークSP13と終点マークEP13とに基づいてマスキング範囲MS12が、それぞれ設定されている。したがって、
図13Bに示す文書では、マスキング範囲MS11、MS12、MS2は互いに重ならない。
【0077】
このようにマスキング範囲を設定すると、
図3に示すフローチャートのステップS304において、始点マークSP13に対するペア対象終点数が「1」であり、始点マークSP13と終点マークEP11とをペアとする処理を行う(ステップS306)。その後、始点マーク SP12と終点マークEP12とをペアとする処理、始点マークSP11と終点マークEP13をペアとする処理、が順に行われ、エラー処理は行われない。
【0078】
マスキング処理の方法として、マスキング範囲のデータを削除する(始点マークと終点マークとの間に含まれる内容を削除する)方法、データを削除せずに、マスキングパターンで覆って、マスキング範囲を表示部の表示画面において視認できなくする方法、のいずれを用いてもよい。前者の場合、例えば、同じ文字数の空白(スペース記号)で置換することによって実現でき、マスキング範囲の内容を確実に視認できなくすることができる。後者の場合、マスキング範囲の上の階層に、マスキングパターンを載せて表示することによって実現でき、表示部の表示画面において視認できなくすることができる。
【0079】
全公開文書では、マークを削除しておくことが好ましい。マスキング範囲を明示する必要はないと考えられるからである。
【0080】
部分公開文書では、マーク自体をマスキング範囲に含めて見えないようにしてもよいし、マークを削除した後、削除前のマークの位置に基づく範囲をマスキング範囲として見えないようにしてもよい。
【0081】
(文書マスキング方法)
上述した文書マスキングシステムにおいて用いている文書マスキング方法は、マスキング範囲の始点及び終点を特定するための複数系統の始点マーク及び終点マークを含み、マスキング処理の対象となる元文書を記憶部に記憶する工程と、上記記憶部に記憶された上記元文書について、該元文書に含まれている上記始点マーク及び上記終点マークをマーク読取部によって読取る工程と、上記マーク読取部によって読取られた上記始点マーク及び上記終点マークについて、系統ごとに該始点マークと該終点マークとのペアリングをペアリング処理部によって行う工程と、上記元文書について、上記ペアリング処理部によってペアリングが行われた上記始点マークと上記終点マークとの間に含まれる内容をマスキング処理部によって系統ごとにマスキング処理する工程と、を有する。この方法によれば、元文書の改訂によって文書の体裁が変わってもマスキング処理する位置を示す位置情報を再度設定する必要がなく、かつ、図形などの面像についてもマスキングの対象とし、さらに、異なるマスキング範囲の複数の部分開示文書を容易に作成することができる。
【0082】
(文書マスキングプログラム)
上述した文書マスキングシステムにおいて用いている文書マスキングプログラムは、マスキング範囲の始点及び終点を特定するための複数系統の始点マーク及び終点マークを含み、マスキング処理の対象となる元文書を記憶部に記憶するステップと、上記記憶部に記憶された上記元文書について、該元文書に含まれている各系統の上記始点マーク及び上記終点マークをマーク読取部によって読取るステップと、上記マーク読取部によって読取られた上記始点マーク及び上記終点マークについて、該始点マークと該終点マークとのペアリングをペアリング処理部によって系統ごとに行うステップと、上記元文書について、上記ペアリング処理部によってペアリングが行われた上記始点マークと上記終点マークとの間に含まれる内容をマスキング処理部によって系統ごとにマスキング処理するステップと、をコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムを用いれば、元文書の改訂によって文書の体裁が変わってもマスキング処理する位置を示す位置情報を再度設定する必要がなく、かつ、図形などの面像についてもマスキングの対象とし、さらに、異なるマスキング範囲の複数の部分開示文書を容易に作成することができる。
【0083】
(まとめ)
文書マスキングシステム10は、元文書の本文中に始点マーク及び終点マークを挿入しておくので、本文に追記や改訂があった揚合でも、指定範囲のマスキング処理を継続して行うことができる。すなわち、マスキング範囲を指定するための別のデータを用意するのではなく、本文中に始点マーク及び終点マークを挿入しておくので、本文のマスキング範囲の大きさが変化してもマークの位置が迫従するので、マスキング範囲を適切に維持することができる。
【0084】
マスキング範囲を、例えば、始点マーク及び終点マークを基準とする矩形で指定することにより、マスキング処理部23は、マスキング範囲を任意の色で塗りつぶし、文字や記号だけでなく、図形や画像などについてもマスキング処理を行うことができる。
【0085】
本システムによれば、元文書の本文中に、マスキングする範囲の始点と終点とを意味するマークが含まれているので、元文書の本文について追記または改訂があっても、指定範囲のマスキング処理を継続して行うことができる。また、始点と終点を複数系統指定することで、異なるマスキング範囲の複数の部分開示文書を容易に作成できる。
【0086】
元文の本文中にマークが記述されていれば、マスキング範囲に含まれている文章や図形の大きさが変化しても予め設定した始点マーク及び終点マークに基づいてマスキング範囲を設定するので、文書の内客について改変(文字または記号の追加、変更、削除)が頻繁に行われたとしても、改変前後においてマークの位置が追従し、適切なマスキング範囲を維持することができる。
【0087】
マスキング範囲を、始点及び終点を基準とする矩形によって指定することにより、マスキング範囲を任意の色で塗りつぶした表示を行うことができる。また、文字または記号に限らず、図形または写真などの画像をマスキングの対象にすることができる。マスキング範囲が複数ページに跨る場合に、ヘッダの下端及びフッタの上端にマークを記戴することにより、文書のヘッダ及びフッタをマスキング処理の対象外(マスキング範囲から除外)とすることができる。
【0088】
すなわち、マスキング範囲が複数のページに跨る場合に、ヘッダの下端の位置、フッタの上端の位置をそれぞれ特定するためのヘッダマーク、フッタマークを元文書に設けておくことにより、ヘッダの部分及びフッタの部分をマスキング処理の対象外とすることもできる。ヘッダやフッタには、ページ番号や文の名称などの情報が含まれていることがあり、これらの情報はマスキング処理されずに表示される。これにより、利用者は、ヘッダ及びフッタに含まれている情報を視認することができる。
【0089】
マスキング処理部23は、マスキング処理の前に、始点マーク、終点マーク、ヘッダマーク及びフッタマークを削除し、部分公開文書や全公開文書に表示しないようにすることが好ましい。また、マスキング範囲の文字などが視認できる態様で、マスキング範囲を蛍光色などで表示した範囲確認用文書を表示できるようにすることが好ましい。また、マスキング範囲を確認しやすいのであれば、マスキング範囲の表示色は蛍光色に限定されない。すなわち、マスキング範囲を蛍光色などの黒以外の色で表示することにより、マスキング範囲の文字が見えるように表示した範囲確認用文書を表示できるようにしてもよい。
【0090】
(変形例)
本実施形態による文書マスキングシステムについては、以下のような変形例が考えられる。
【0091】
予め決めておいた始点マーク、終点マーク、ヘッダマーク及びフッタマークを、印刷した元文書に手書きで記入しておき、記入したものをイメージスキャナで読取った後、各マークを認識するようにしてもよい。
【0092】
本システムと文書管理システムとを組み合わせてもよい。例えば、元文書を文書管理システムに記憶しておき、文書を閲覧するりクエストがあった揚合に、本システムによってマスキング処理がなされた文書を作成し、それを利用者に提示するようにしてもよい。このようにすれば、元文書の他にマスキング処理がなされた文書を記憶しておく必要がないので、記憶部の記憶容量を節約することができる。
【0093】
本システムは、 1つの装置ブロックとしたが、制御部及び記憶部と、入力部及び表示部と、を別体とし、通信ネットワークを介して両者を接続していてもよい。また、 1つの制御部及び記憶部に対して、複数の入力部及び表示部を備えていてもよい。つまり、サーバに制御部及び記憶部を設け、パーソナルコンピュータに入力部及び表示部を設けて、通信ネットワークを介して両者を接続してもよい。
【0094】
本発朋の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。